入院中に発症したCOVID-19に対する抗ウイルス薬の 超早期投与による臨床効果の検討 P2-111 医療法人伯鳳会 赤穂中央病院 ○竹元 あい 永石 郁恵 勝平 真司 矢部 槙 祥吾 博樹 背景・目的 抗ウイルス薬の投与は重症化リスク・重症度などに応じて適切に使用することで予後の改善が期待される。特に入院中 にCOVID-19を発症した場合は、超早期治療介入が可能であり点滴投与できる場合はレムデシビルを3-5日間投与、点 滴困難な例では常用薬・腎機能を確認した上で同意を得、内服薬で治療介入した。今回、各種薬剤投与による治療効果 を調査したため報告する。 対象と方法 2022/1/1~2022/12/31の入院期間中にCOVID-19を発症した18歳以上の患者79名のうちニルマトレルビル/リ トナビル(N/L)、モルヌピラビル(M)、レムデシビル(R)を投与された患者58名を対象とし、発症から投与開始 までの期間と有熱期間、PCR:Ct値35以上を基準とした隔離期間、副作用と重症化などについて調査した。R投与中 に肺癌終末期で死亡した1名を除外した57名の平均年齢は77.8歳(45歳から98歳)。男性39名、女性18名であった。 結果 発症日より、平均0.8日で治療開始された。有熱期間の平均日数は(N/L)投与群で1.9日、(M)投与群で2.4日、(R)投 与群で3.4日となった。全症例の隔離期間を中央値で比較すると(N/L)投与群は11日、(M)投与群は11日、(R)投与 群は11.5日であった。中等症だけでみると(N/L)投与群は11日、(M)投与群は11日、(R)投与群は12日となった。 副作用としては、下痢で中止となった(M)投与患者が1名、投与後に腎機能障害の発現が疑われた(R)投与患者が1名 。嘔吐による内服困難で(N/L)から(R)へ治療変更された患者が1名みられた。また、重症化の進展が(N/L)投与群で 1名、(M)投与群で1名、(R) 投与群で3名みられたがすべて回復した。 28日以内の死亡例は4名(末期肺癌2名、脊髄小脳変性症1名、老衰1名)で原疾患による死亡と判断された。 ワクチン接種回数 〈ニルマトレルビル/リトナビルを投与した8名の経過〉 No 年齢 性別 基礎疾患 症状 Day0 1-5 慢性呼吸器疾患:2名 M3,F2 脂質異常症:2名 Day2 Day3 Day4 Day5 Day6 Day7 Day8 Day9 Day10 Day11 1ー2回 37.5℃以上 3ー4回 の発熱 Day12 Day13 Day14 Day15 隔離解除 軽症 解除 高血圧:1名 6 7 8 58 M 52 M 98 F 心血管疾患・高血圧 中等症1 脳血管疾患 中等症2 脂質異常症 中等症2 N/L 3回:2名 隔離期間(10日-12日) 解除 N/L day21 N/L 軽症例の5名の内訳 ワクチン接種回数 2回:1名 4回:2名 N/L 悪性腫瘍:1名 平均68.6 Day1 薬剤使用期間 未接種 解除 中央値11日、平均値11日 M投与後の呼吸不全進展:1名 〈モルヌピラビルを投与した19名の経過〉 No 年齢 性別 基礎疾患 症状 Day0 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5 Day6 Day7 Day8 Day9 Day10 Day11 Day12 Day13 Day14 Day15 隔離解除 M 悪性腫瘍:4名 ワクチン接種回数 心血管疾患:4名 1-14 平均79.2 慢性呼吸器疾患:2名 M7,F7 慢性腎臓病:2名 軽症 解除 未接種:2名 3回:5名 脳血管疾患:1名 糖尿病:1名 15 16 17 18 19 88 F 75 M 88 M 71 M 83 F なし M 中等症1 解除 M 悪性腫瘍 中等症1 なし 中等症1 慢性腎臓病 中等症2 悪性腫瘍 軽症→中等症2 解除 M 年齢 性別 基礎疾患 中央値11日、平均値11.8日 死亡 M 症状 day21 M Day0 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5 Day6 Day7 Day8 Day9 Day10 Day11 Day12 Day13 Day14 Day15 隔離解除 心血管疾患:6名 1-17 平均77.5 慢性呼吸器疾患:6名 M12,F5 慢性腎臓病:1名 N/L投与後の呼吸不全進展:1名 day21 R 悪性腫瘍:9名 2回:1名 4回:6名 隔離期間(9日-16日) 〈レムデジビルを投与した30名の経過〉 No 軽症例の14名の内訳 軽症 軽症例の17名の内訳 ワクチン接種回数 未接種:5名 3回:8名 4回:4名 解除 脳血管疾患:3名 糖尿病:1名 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 71 M 83 M 79 M 81 M 83 M 78 M 82 M 83 M 86 M 87 M 89 M 74 F 73 M R 高血圧・脂質異常症 中等症1 悪性腫瘍・高血圧 中等症1 慢性呼吸器疾患 中等症2 悪性腫瘍 中等症2 心血管疾患 中等症2 慢性呼吸器疾患 中等症2 心血管疾患・糖尿病 中等症2 心血管疾患 中等症2 悪性腫瘍 中等症2 脳血管疾患 中等症2 心血管疾患 中等症2 慢性腎臓病 中等症2 高血圧・糖尿病 軽症→中等症2 隔離期間(9日-38日) 解除 中央値11日、平均値13.6日 R 解除 R day21 R 3日投与:10名 4日投与:1名 5日投与:6名 解除 R 解除 R 解除 R R投与後の呼吸不全進展:3名 解除 R 解除 R day20 R 解除 R day25 R M レムデジビルの投与期間 解除 R day18 〈入院前・入院中に発症した患者の投与開始日別の有熱期間と隔離期間〉 入院前発症 平均1.8日 入院中発症 平均1.9日 入院前発症 平均3.2日 入院中発症 平均2.4日 入院前発症 平均4.1日 入院中発症 平均3.4日 有 熱 期 間 結語 入院前発症 中央値10日 入院中発症 中央値11日 入院前発症 中央値10日 入院中発症 中央値11日 入院前発症 中央値11日 入院中発症 中央値11.5日 隔 離 期 間 考察 発熱以外の咳嗽などの臨床症状はカルテ上で詳細が掴めず十分に経過を追えなかったため今回は有熱症状で検討した。 入院中に発症した患者の平均有熱期間はN/L群1.9日、M群2.4日、R群3.4日であり、各々で超早期投与による解熱短 縮効果がうかがわれた。COVID-19感染後のウイルス量はPCR(Ct値)の推移で推測できるとされており、今回Ct 値35以上で隔離解除を行った。COVID-19感染のため当院に入院した患者を含めた平均隔離期間15日と比較して短 縮傾向がみられたことから抗ウイルス薬の超早期投与によるウイルス排出期間の短縮が示唆された。なお、今回はワク チン未接種の症例数が少なく接種回数による比較はできなかった。重症化リスクの高い高齢者が多くを占めたが COVID-19感染症による死亡例がなく、抗ウイルス薬の超早期投与により重症化予防に効果があったと考えている。 結語 抗ウイルス薬の超早期投与は重症化予防に加えて、有熱期間・ウイルス排出期間の短縮に寄与することが示唆された。 (日本環境感染学会 COI開示)発表者:竹元 あい 永石 郁恵 演題発表に関連し,開示すべきCOI関係にある企業などはありません。