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July 15, 25
スライド概要
2025/07/12(土) 明治大学大学院特別公開講座で使用したスライド。
出身校に呼んでいただいたのは面白い経験でした。
発表者はゲーム開発者であり、研究者ではないのでそのあたりはご容赦ください。
「一開発者がながめてきた乙女ゲームの発展史」です。
お題はコーディネーターの藤本由香里先生(明治大学国際日本学部教授)からいただきました。
講義動画の公開予定はありません。
ゲームディレクター 女性向けゲーム/乙女ゲームが多いです コーエーテクモゲームス→CROOZ→DONUTS(現職)
乙女ゲームの発展史 ~女性向けゲーム開発者の視点から~
自己紹介 塚口綾子 明治大学理工学部数学科出身 1995年学部卒、1997年大学院卒 10 years ago
コンシューマ開発 コーエーテクモゲームス 1997年入社(株式会社光栄) 『アンジェリーク デュエット』1998年 『遙かなる時空の中で』2000年 サブプランナー 『遙かなる時空の中で2』2001年 『金色のコルダ』2003年 メインプランナー(全体概要、世界観、キャラ、シナリオ) ネオロマンス全般のモバイルサービス その他(女性向け以外) 勤務 15.5年 (新卒入社)
モバイルゲーム開発 株式会社クルーズ(2013年) ACRドリフト ※3Dの車のゲーム(開発後期のサポート) 株式会社Donuts(2014年) 『リゾートへようこそ ~総支配人は恋をする~』2013年 『ブラックスター –Theater Starless-』2019年 『ユアマジェスティ』2022年 『ブラックスター –Theater Starless-』(人員再配置による現職)
女性向けゲーム(乙女ゲーム)は ゲーム史において まだ居場所を見つけられていない
今日お話しすること 女性向ゲームの定義と歴史的変遷(AI調査に基づく) 女性向ゲームの定義と歴史的変遷(私見) (これまでの開発のこと)
女性向ゲームの定義と歴史的変遷 (AI調査に基づく)
乙女ゲーム/女性向ゲームの定義 女性プレイヤーをメインターゲットとし、複数の男性キャラクターと の恋愛を楽しむシミュレーションゲームやアドベンチャーゲーム。 ※女性プレイヤーをメインターゲットとするが、恋愛要素がないも のは「女性向けゲーム」 2周目あり
開発者の視点から見た特徴: 恋愛だけでなく、自己成長、友情、人間関係のドラマを重視。 感情移入を促すシナリオ、キャラクター造形、美麗なグラフィック、 豪華声優陣の重要性。 「女性向け」ならではのUI/UXデザインの工夫(操作性、テキスト表示 の配慮)。
乙女ゲーム黎明期
ジャンル誕生の背景と初期作品 なぜ生まれたのか?: 当時の女性のニーズ: 少女漫画・女性向け小説からの影響、ゲームにも「ロマンス」「理 想の男性像」を求める声。 市場の可能性: 男性向けゲームが主流の中での、未開拓だった女性市場への着目。 開発者の視点: 「自分たちが本当にプレイしたいゲームは何か?」という熱意から のジャンル創出。 2周目あり
初期の代表作とその影響: 『アンジェリーク』 (コーエー、1994年、スーパーファミコン) 世界初の乙女ゲーム 特徴と確立したフォーマット: 育成シミュレーションと恋愛アドベンチャーの融合。 複数の攻略対象キャラクター(守護聖)と魅力的な設定。 美麗なキャラクターデザイン、豪華声優陣の起用(当時画 期的)。 後の乙女ゲームの基本フォーマット(周回プレイ、選択肢 による分岐、エンディングの多様性)を確立。
開発秘話:(※AIによる提案) 「女性が楽しめるゲーム」を模索する中でのアイデア源泉。 当時の開発環境(SFCの技術的制約)での工夫と苦労。 社内での「女性向けゲーム」ジャンルへの理解獲得の試行錯誤。 同時期のその他作品(例:『卒業M』など、乙女ゲームとの関連性や違 い)。 2周目あり
この時期の開発における苦労と工夫: 「女性向け」ジャンル未確立の中でのターゲット層特定とマーケティ ング戦略の模索。 男性開発者が多い中での、女性プレイヤーの感性理解とシナリオ・ キャラクターへの落とし込みの難しさ。 2周目あり
発展期
プラットフォームの多様化と表現の深化 ゲーム機の進化と乙女ゲーム: PlayStation 2 (PS2), PlayStation Portable (PSP), ニンテンドーDSなどへ の展開。 携帯機(PSP, DS)での展開のインパクト: 「手軽さ」「どこでもプレイできる利便性」による幅広い年齢層への 普及。 通学・通勤時間など、日常の隙間時間でのプレイが可能になり、ユー ザー層拡大。 ハード性能向上によるグラフィック・サウンドの進化(フルボイス化、 高品質ムービー演出)。
多様化する表現とサブジャンル: 舞台設定の広がり: ファンタジー、学園、和風、歴史、現代、SF、異世界転生など。 恋愛以外の要素との融合: ミステリー、サスペンス、アイドルプロデュース、スポーツ、 職業シミュレーションなど、物語の深みと多様性。
代表作の紹介と、それがもたらした影響: 『遙かなる時空の中で』シリーズ 『ときめきメモリアル Girl’s Side』シ 『薄桜鬼』シリーズ 『うたの☆プリンスさまっ♪』シリー 2000年~ リーズ (アイディアファクトリー/オトメイ ズ 和風ファンタジーの確立、歴史・伝奇 KONAMI ト)2008年~ (ブロッコリー)2010年~ 要素導入による重厚な世界観。 本家(男性向け)のターゲット変更だ 伝奇+新選組題材、シリアスで切ない アイドルプロデュースという新機軸、 複雑な人間関係描写による多角的な物 けにとどまらない新しい学園恋愛シ ストーリー展開による新ファン層開拓。 音楽要素融合によるエンターテイメン 語体験。 --『金色のコルダ』シリーズ 2004年~ ミュレーションの定着。 「泣ける乙女ゲーム」ジャンル確立、 ト性追求。 感情に訴えかけるシナリオの重要性を ゲーム起点メディアミックス展開(ア 再認識。 ニメ、ライブ、グッズなど)で大ヒッ 音楽テーマと学園生活の融合。 クラシック音楽というニッチな題材を 持ち込んだ学園恋愛シミュレーション。 (コーエーテクモゲームス) 2002年~ ト、IP展開成功モデル確立。
ゲーム起点メディアミックス展開 アニメ、ライブ、グッズなどで大ヒット、IP展開成功モデル確立。
転換期
モバイル・ソーシャルゲームの台頭と 新たな展開 スマートフォン普及のインパクト: 2010年代前半からのスマホ普及によるゲーム市場の劇的変化。 手軽さ、無料プレイ(F2P)モデルによる新規ユーザー獲得: 従来のゲームユーザー以外へのリーチ。 プレイスタイルの変容: 場所を選ばない利便性(通勤・通学、休憩時間)が、日常に溶け込 むエンターテイメントとしての地位を確立。 新しいビジネスモデル: 従来のコンシューマーゲームとのビジネスモデルの違い (買い切り型から継続課金型へ)と、開発での考慮点。 2周目あり
ソーシャル恋愛ゲームの前夜: GREE/Mobageの台頭 2007年〜2012年頃: スマホアプリ普及前、フィーチャーフォン&ガラケー向けに ソーシャル恋愛ゲームが隆盛 プラットフォーム: GREE / Mobage / mixiなど 特徴: 短いシナリオ、課金アイテム、好感度システム、 カードバトル風コンテンツと恋愛要素の融合
代表的な作品 ボルテージ 『眠らぬ街のシンデレラ』 『誓いのキスは突然に』 『王子様のプロポーズ』 『鏡の中のプリンセス』 など多数 サイバード 『イケメン大奥』『イケメン夜曲』『イケメン戦国』 など“イケメ ンシリーズ”の前身 その他 『弾丸キス』『上司と秘密の2LDK』『旦那様が7人いる!』など 2周目あり
アプリストア時代の到来 「独立アプリ型」乙女ゲームの確立 アプリストア配信(2011年頃〜) スマートフォン普及に伴い、App Store / Google Play でのアプリ単 体配信が主流に ソーシャルゲームから“個別アプリ作品”への転換点 主な特徴 完全買い切り/チケット課金/ガチャ形式など課金方式の多様化 音声・映像演出の強化(フルボイス化/Live2Dなど) 長編シナリオ、複数ルート/キャラ別ストーリーの充実 イベント形式でシナリオ追加(期間限定ストーリーなど)
代表的なモバイル乙女ゲームとその特徴: 代表作・レーベル ボルテージ:「誓いのキスは突然に」「眠らぬ街のシンデレラ」など多数の“ボル恋”アプリ サイバード:「イケメンシリーズ」(イケメン戦国/イケメンヴァンパイアなど) オトメイトモバイルアプリ化:「薄桜鬼」や「AMNESIA」のアプリ展開 coly、アカツキ、ジークレスト:A3!、スタマイ、魔法使いの約束 など新興勢力の参入 文化的意義 乙女ゲームの“日常アプリ化”=生活の中で継続的に楽しむ文化が根付く メディアミックス展開の“起点”がゲームアプリとなる時代へ(舞台/ライブなど)
クラウドファンディングや インディーゲームの可能性: 大手メーカーでは難しい、ニッチなテーマや表現に挑戦する小規模な がらもユニークな作品の誕生。 ユーザーとの距離の近さ、共創の可能性の拡大。
メディアミックスの更なる加速: アニメ化、舞台化、CDドラマ、キャラクターソング、グッズ展開など、 ゲームを起点とした多角的な展開が一般化し、IPのブランド価値を高 める。 ゲーム開発とメディアミックスの関係性、プロモーション戦略におけ る相乗効果。
2周目 女性向ゲームの定義と歴史的変遷 (私見)
乙女ゲーム/女性向ゲームの定義 女性プレイヤーをメインターゲットとし、複数の男性キャラクターとの恋愛を 楽しむシミュレーションゲームやアドベンチャーゲーム。 ※女性プレイヤーをメインターゲットとするが、恋愛要素がないものは「女性向け ゲーム」 個人的な定義は 「女性プレイヤーがメインターゲットなら ジャンルは問わない」 2周目
「乙女ゲーム」という名称について おそらくメディア発 2001~2002年あたりの雑誌らしい ネオロマンスシリーズでは当初、「乙女ゲーム」という名称を使わなかった 2周目
乙女ゲーム黎明期
2周目 ジャンル誕生の背景と初期作品 なぜ生まれたのか?: 当時の女性のニーズ: 少女漫画・女性向け小説からの影響、ゲームにも「ロマンス」「理想の男性像」を 求める声。 市場の可能性: 男性向けゲームが主流の中での、未開拓だった女性市場への着目。 開発者の視点: 「自分たちが本当にプレイしたいゲームは何か?」という熱意からのジャンル創出。 少年マンガがあって少女マンガがある ↓ 男性が主人公で恋愛するゲームがあるなら 女性が主人公で恋愛するゲームがあってもいい
開発秘話:(※AIによる提案) 「女性が楽しめるゲーム」を模索する中でのアイデア源泉。 当時の開発環境(SFCの技術的制約)での工夫と苦労。 社内での「女性向けゲーム」ジャンルへの理解獲得の試行錯誤。 同時期のその他作品(例:『卒業M』など、乙女ゲームとの関連性や違い)。 2周目 入社前なので伝聞でしか知らない SFC版の開発者はどのくらい残っているのか……
この時期の開発における苦労と工夫: 「女性向け」ジャンル未確立の中でのターゲット層特定とマーケティング戦略 の模索。 男性開発者が多い中での、女性プレイヤーの感性理解とシナリオ・キャラク ターへの落とし込みの難しさ。 2周目 入社前なので伝聞でしか知らない でも「男性の理解が得られない苦労」だけでもな かった気がする 「現在でも起きている」苦労と工夫はある
発展期
2周目 代表作の紹介と、それがもたらした影響: 『遙かなる時空の中で』シリーズ 『ときめきメモリアル Girl’s Side』シ 『薄桜鬼』シリーズ 『うたの☆プリンスさまっ♪』シリー 2000年~ リーズ (アイディアファクトリー/オトメイ ズ 和風ファンタジーの確立、歴史・伝奇 KONAMI ト)2008年~ (ブロッコリー)2010年~ 要素導入による重厚な世界観。 本家(男性向け)のターゲット変更だ 伝奇+新選組題材、シリアスで切ない アイドルプロデュースという新機軸、 複雑な人間関係描写による多角的な物 けにとどまらない新しい学園恋愛シ ストーリー展開による新ファン層開拓。 音楽要素融合によるエンターテイメン 語体験。 --『金色のコルダ』シリーズ 2004年~ ミュレーションの定着。 「泣ける乙女ゲーム」ジャンル確立、 ト性追求。 感情に訴えかけるシナリオの重要性を ゲーム起点メディアミックス展開(ア 再認識。 ニメ、ライブ、グッズなど)で大ヒッ 音楽テーマと学園生活の融合。 クラシック音楽というニッチな題材を 持ち込んだ学園恋愛シミュレーション。 (コーエーテクモゲームス) 2002年~ ト、IP展開成功モデル確立。
男性向けのロジックを 追いかけているかもしれない 遙かなる時空の中で(2000年) 本家は男性向け 薄桜鬼(2008年) サクラ大戦を参考にした ときめきメモリアル Girl’s Side(2002年) 2周目 2000年代、男性向きに「泣きゲー」が一世風靡 うたのプリンスさまっ♪(2012年) THE IDOLM@STER(アーケード 2005年、PSP 2009年) ネオロマンス(遙か)以外は 個人的な印象論ないので聞き流してください
印象に残っている乙女ゲーム 1997~1998年の乙女ゲーム アルバレアの乙女(1997年)卒業M(1998年)Fantastic Fortune(1998年) エラン(1999年)SF、主人公が男女選べたはず…… 2000年代の BL (当時ボブゲと呼ばれていた気がする) 学園ヘヴン(2002年)咎狗の血(2005年) 星の王女(2003年)おそらく初のR18 Starry☆Sky(2009年?)CD発というのが面白かった 2周目
シチュエーションCD(ドラマCD) ※あいまいな記憶 1980~90年代に数多く見られたイメージアルバムやドラマCD このころは複数キャストによるお話が中心だった気がする 女性向きでは以下を ヴァイスクロイツ(1998年)声優・子安武人さん原案 セイントビースト(2003年)なにかのコンテンツのスピンオフ その後、シチュエーションCDに発展していく 乙女ゲーム化もよくあった Starry☆Sky(2009年) DIABOLIK LOVERS(2011年) 2周目
参考となるサイト “女性向けゲーム”の年表(1994年~2018年3月まで)/乙女ゲーム、BLゲーム、育 成ゲーム (電ファミニコゲーマー、2018年) ☆乙女ゲーム30年のあゆみ(Media Arts Current Contents、2024年)全2回
女性向けゲーム(乙女ゲーム)は ゲーム史において まだ居場所を見つけられていない とは思ってないが、 継続的な研究はこれからなのだと 感じています
これまでの開発のこと もし乙女ゲームを作りたいなら
乙女ゲームが好きかどうか 好きじゃなくても作れる 好きだと作れないこともある 正直にいうと、どんな人が向いてるのかはわからない めちゃめちゃ好きだけど作れない人 めちゃめちゃ好きだから作れる人 チームバランスによる (全員萌え語りをはじめるとしんどい、誰もいないとしんどい) 自分の「好き」が他人に通用するかどうかの判断軸は必要
大学でやった勉強は役にたった? たぶん、役に立ちました シナリオ構造を作る時に数学の教えが生きた プログラムの真似事をしていたので、ゼロからやるより楽 なんでも役に立たないことはない
仕事をしていてよかったこと よくなかったこと よかったこと いつも新しいチャレンジがある 新しい技術を身に着けるチャンスがある
仕事をしていてよかったこと よくなかったこと よかったこと いつも新しいチャレンジがある 新しい技術を身に着けるチャンスがある よくなかったこと やったことない仕事が目の前に横たわる 引き際についての見極めが難しい
AIはどうですか ゲームの現場に入ってきていますか たぶん入ってきてる あやふやな記憶をもとに何かを探してもらうのは便利 プレゼン原稿を最後まで作り切ってもらうには説明と時間が足りなかった スライド自動生成AI を使いこなせたら便利そう(今回は諦めた)
仕事で作った変わり種のデータ シナリオプロット (data.io) 歌詞制作(MIDIをもらってSynthesizerVで作詞)
ご清聴ありがとうございました