術前・術後の大腸癌化学療法(滋賀県立総合病院)

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December 01, 17

スライド概要

滋賀県立総合病院 消化器病棟勉強会
術前・術後の大腸癌化学療法
2017年12月

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滋賀県立総合病院 化学療法センター 腫瘍内科医

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各ページのテキスト
1.

術前・術後の大腸癌化学療法 院内がん勉強会 2017.12.1

2.

大腸癌の主要な診療ガイドライン 大腸癌研究会 ESMOコンセンサス NCCNガイドライン ガイドライン ガイドライン 2017.3.13 2016.7.5 2016.11.22

3.

術後化学療法とは何ですか? ▪ 手術でがんを全て切除しても一定の頻度で再発が起こる ◼ 大腸癌研究会の1991-1996年追跡調査によると全体の17%が再発 ▪ 目に見える腫瘍病変を全て切除したのに再発するのは、 目に見えないミクロな(細胞レベルの)がん細胞が すでに広がっているから ◼ 目に見えない、周囲に広がったがん細胞をどうやって押さえ込むか ▪ →手術後に、再発を抑える目的でを行う化学療法

4.

大腸癌の術後化学療法を受けるメリットは何ですか? ▪ 手術のみを行った場合と比べて、手術+術後化学療法は 再発する確率を低く抑えられる ▪ ステージIIIaの場合、 手術のみでは、3割の人が5年以内に再発 手術+術後化学療法では、2割の人が5年以内に再発 手術のみ 再発あり 再発なし 手術+ 術後化学療法 術後化学療法での改善幅=術後化学療法の恩恵を受ける群

5.

大腸癌の術後化学療法を受けるデメリットは何ですか? ▪ 化学療法による副作用が出現する ◼ ◼ 白血球減少・悪心嘔吐・皮膚障害(手足症候群) 末梢神経障害などのように化学療法終了後も残存する副作用もある ▪ 化学療法を行わなくても再発しない7割の人にとっては、 (結果的に)必要のない治療になってしまう ◼ ◼ 行わなくてもよかった無駄打ち・過剰治療となる ただし、手術終了時点では自分が7割に入るかどうかは 当然ながら患者本人にも主治医にもわからない! 手術+ 術後化学療法 再発あり 受けたのに再発した! 再発なし せっかく副作用のある治療をしたのに 結果的には必要なかった!

6.

術後化学療法と進行癌に対する化学療法は 何が違いますか? 切除手術後の術後補助化学療法 切除後の治癒率の向上を目指して行う QOLも重要だが一定の治療強度も必要 大腸癌であれば6ヶ月の術後化学療法が一般的 切除不能・再発がんに対する化学療法 基本的に治癒を期待して行うものではない 得られるベネフィットと毒性とのバランスを保ち QOLを保つことが重要

7.

術後化学療法の対象となるのは どのステージの大腸癌ですか? ▪ ステージIII or リスクの高いステージII ◼ リスクの高いステージIIとは次のいずれかに該当するものを指す ASCO 2004 ガイドライン ESMO ガイドライン リンパ節郭清数<12個 リンパ節郭清数<12個 T4症例 T4症例 腸穿孔 腸閉塞または腸穿孔 低分化腺癌 印環細胞癌 粘液癌 低分化腺癌 未分化癌 脈管侵襲 リンパ管侵襲 傍神経浸潤 ▪ 肝機能・腎機能が良好で、腫瘍が完全切除できた症例

8.

術後化学療法にはどんなレジメンを使いますか? ▪ ガイドラインにて推奨される6つのレジメン ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ 5-FU/LV静注 UFT/LV内服 カペシタビン(ゼローダ)内服 FOLFOX:5-FU/ロイコボリン/オキサリプラチン静注 XELOX:ゼローダ内服/オキサリプラチン静注 S-1(ティーエスワン)内服 ▪ 転移再発大腸癌で使われるFOLFIRIは再発抑制効果が sLV5FU2と差がないため、術後化学療法には使われない

9.

術後化学療法のレジメンによって 再発率に違いはありますか? ▪ FOLFOX=XELOX>ゼローダ>UFT/LV=5-FU/LV=S-1 と考えられている ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ ◼ FOLFOXとXELOXは同等 FOLFOXはゼローダより優れる ゼローダは5-FU/LVより優れる UFT/LVと5-FU/LVは同等 S-1は5-FU/LVとほぼ同等 S-1はカペシタビンよりやや劣る ▪ 直腸癌ではS-1>UFTが示されているが、データは少ない

10.

術後化学療法はどの時期に行うのがよいですか? ▪ 大腸癌治療ガイドラインでの記載は 「術後4~8週頃までに開始することが望ましい」 ▪ 投与期間6カ月を原則とする。 ◼ ◼ ◼ JFMC 33-0502試験 (UFT/LV [6ヵ月 vs. 12ヵ月]) JFMC 37-0801試験 (ゼローダ [6ヵ月 vs. 18ヵ月]) いずれも6ヶ月以上治療を継続しても 「それ以上、再発を抑制する効果は高まらない」という結果であった →現在は6ヶ月が妥当と考えられている

11.

術後化学療法のFOLFOXやXELOXには 分子標的薬を上乗せしないのですか? ▪ 転移再発・進行大腸癌に対する全身化学療法では FOLFOXなどに抗VEGF・EGFR抗体を併用するが、 術後化学療法ではこれらの併用しても再発抑制効果が 上乗せされないため使用しない ◼ NSABP C-08試験(米国) ◼ ◼ AVANT試験(ヨーロッパ) ◼ ◼ FOLFOX/XELOXにBev上乗せで、再発率微増 NCCTG N0147試験 ◼ ◼ FOLFOXにBevを上乗せで、術後3年DFSに変化なし KRAS野生型でFOLFOXにCet上乗せで、3年DFSわずかに悪化 PETACC-08試験 ◼ KRAS野生型でFOLFOXにCet上乗せで、3年DFSに変化なし

12.

肝転移単発などの切除可能なステージ4大腸癌の 術後化学療法は確立されたものですか? ▪ 原発+肝転移、原発+肺転移の合併切除を行った場合の 術後化学療法は確立されたものではない ▪ 実臨床ではステージIIIの大腸癌術後化学療法に準じて 行われていることが多い ◼ ◼ ◼ 原発+肝転移の切除後の5年生存率は20-50% 原発+肺転移の切除後の5年生存率は30-50% 再発危険性はステージIIIの大腸癌より高く、 術後化学療法の必要性はありそう

13.

大腸癌の”術前”化学療法はどうなっていますか? ▪ 乳癌では、切除可能なものを対象に行われることが多い。 術前化学療法を行うことで術後化学療法と予後は 変わらないが、乳房温存率などが向上する。 乳癌診療ガイドライン 2015年版 総論 ▪ 大腸癌では、元々は切除不能なときに行われることが多い 生存期間を前向きに比較した試験はない。 肝または肺に限局した転移例で化学療法が 奏効して切除可能となった場合には切除を 考慮すべきである。 大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版 CQ9,11 ▪ 切除可否の判断は施設ごとの方針の違いが大きい

14.

Conversion手術とは何ですか? ▪ Conversion(コンバージョン)=変換する ◼ 切除不能大腸癌から切除可能大腸癌への変換 ▪ 化学療法前は切除不能であったものが、化学療法によって 縮小し切除可能となったものに対する手術 ◼ 始めから切除可能なものをよりよい状態で切除するための 乳癌などの「術前化学療法」とは異なる ▪ 最終的に切除に至ることを目指して化学療法を行う点は同じ ◼ Conversionを目指す場合は、スタートダッシュが重要 「OSが長いこと」よりも「奏効率・腫瘍縮小率」が重要

15.

大腸癌治療ガイドライン 医師用2016年版

16.

大腸癌の術前化学療法には どんなレジメンを用いますか? ▪ 術前化学療法としてのレジメンというものはない ▪ 転移再発大腸癌と同様のレジメンが使用されている ◼ ◼ ◼ FOLFOX(5-FU/LV/オキサリプラチン) XELOX(ゼローダ/オキサリプラチン) FOLFIRI(5-FU/LV/イリノテカン) ▪ RAS変異型の場合は抗EGFR抗体を併用する ◼ ◼ セツキシマブ(アービタックス®) パニツムマブ(ベクティビックス®) ▪ ただし手術の合併症リスクに関係する薬剤には注意する

17.

手術の合併症リスクに関わる薬剤は どのようなものがありますか? ▪ 出血傾向・血栓症・創傷治癒遅延 ◼ ◼ 血管新生などに作用する抗VEGF抗体(アバスチンなど)で出現 手術の前後4週間(可能なら6週間)、抗VEGF抗体の使用を避ける ▪ Blue liver ◼ ◼ 肝臓の類洞拡張によって生じる肝障害・肝切除後合併症 6コース以上のオキサリプラチン(FOLFOX,XELOX)使用歴で出現 ▪ Yellow liver ◼ ◼ ◼ 脂肪性肝炎によって生じる肝障害 イリノテカン(FOLFIRIなど)や、もともとの脂肪肝がリスク 脂肪肝炎そのものは5-FUなどフッ化ピリミジンによっても生じる

18.

オキサリプラチンによる末梢神経障害は 治療後何年くらい残るのですか? ▪ 6ヶ月のFOLFOX治療を行ったあと4年経過した時点で grade 1/2の末梢神経障害が残った患者が15%もいた。 MOSAIC試験 ▪ 6%の患者を再発から救うために、15%の患者に 「後遺症」とも言える症状を残すことは合理的か? ◼ ◼ 本当にオキサリプラチンは必要か? →ハイリスク症例の見極め 本当に6ヶ月の治療は必要なのか? →IDEA試験 ▪ 牛車腎気丸が末梢神経障害を軽減すると期待されたが 臨床試験では逆効果であることがわかったので 現在は使用されない。

19.

術後化学療法は今後 どのように変わってゆきますか? ▪ 治療期間の最適化 ◼ ◼ FOLFOX・XELOXが本当に6ヶ月必要なのか? 再発リスクが比較的少ない症例は3ヶ月に短縮できるかという検証 ▪ 治療対象の最適化 ◼ ◼ 同じステージでも再発リスクには差がある (RAS・BRAF遺伝子) がんのタイプによって抗がん剤への反応が異なる (MSI-Hという遺伝子異常があるタイプのがんには5-FUが効かない) ▪ 必要な治療は行い、必要ない治療は行わないという 治療選択の改善の余地はまだある