月探査と連携した 天文学・基礎物理の研究

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December 04, 22

スライド概要

2022年11月14日(月)に名古屋大学で開催された「2040年代のスペース天文学」での Moon Moisture Targeting Observatory (MoMoTarO) プロジェクトについての発表スライドです。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

月探査と連携した 天文学・基礎物理の研究 @teru_enoto 榎戸 輝揚 (京都大学/理化学研究所), 森本 健志 (近畿大), 吉浦 伸太郎, 本間 希樹 (国立天文台), 高橋 弘充 (広島大), 中澤 知洋 (名大), 長岡 央, 辻 直希, 加藤 陽, 谷口 絢太郎 (理 化学研究所), 晴山 慎 (聖マリアンナ医科大), 大竹 淑恵, 藤 田 訓裕, 岩本 ちひろ, 高梨 宇宙, 若林 泰生 (理化学研究 所), 小林 泰三 (立命館大学), 池永 太一, 中野 雄貴, 塚本 雄 士 (ソイルアンドロックエンジニアリング社), 草野 広樹 (量 研), 玉川 徹 (理化学研究所), 星野 健, 唐牛 譲, 上野 宗孝 (JAXA), 仏坂 健太(東大) 「2040年代のスペース天文学」研究会@名古屋大学、2022年11月14日(月) 14:25-14:45

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人類の月探査活動から、月での基礎科学への挑戦へ ファルコン9ロケットの着陸 (C) SpaceX • • • • 2 月周回ゲートウェイ・ステーション構想 (C) NASA 再利用ロケットSpaceX Falcon 9 に代表される民間企業のイノベーションと宇宙進出 アルテミス計画や月周回ゲートウェイ構想など、月面への有人探査の大きな潮流 X線天文学の応用で、雷で光核反応を発見。発生する中性子の検出器の開発を開始 銀河宇宙線による月の水探査を実施し、中性子寿命の測定と重力波宇宙論に貢献

3.

MoMoTarO (Moon Moisture Targeting Observatory) 中性子とガンマ線の放射線測定を軸とした、 月面・月周辺での多分野連携プロジェクト 1. 中性子を用いた水資源探査 (惑星科学) 2. 中性子の寿命測定 (素粒子物理学) 3 3. ガンマ線バースト (マルチメッセンジャー天文学)

4.

学際融合的な研究プロジェクト • コラボレーター (惑星科学・地球科学, 土木工学, 天文学, 素粒子・原子核物理学) • 榎戸輝揚, 長岡央, 辻直希, 加藤陽, 谷口絢太郎, 大竹淑恵, 藤田訓裕, 若林泰生, 岩本ちひろ, 高梨宇宙, 玉川徹 (理化学研究所), 晴山慎 (聖マリアンナ医科大), 小林泰三 (立命館大), 草野広樹 (量研), 池永太一, 中野雄貴, 塚本雄士 (ソイルアンドロックエンジニアリング社), 星野健, 唐牛譲, 上野宗孝 (JAXA), 本間希樹, 吉浦伸太 郎 (国立天文台), 森本健志 (近畿大学), 高橋弘充 (広島大学), 中澤知洋 (名古屋大学), 仏坂健太 (東京大学) • 議論・サポートいただいています: • 沼澤正樹 (都立大), 大野雅功, 山口弘悦 (JAXA), 坂本貴紀 (青山学院大学), 小高裕和 (東京大学), 岩切渉 (中央 大学), 寺澤敏夫 (国立天文台), 三澤浩昭 (Tohoku Univ.), 木坂将大 (広島大学) • 本プロジェクトは以下の財源にサポートされています。 • JAXA 宇宙探査イノベーションハブ・第6回 研究提案募集<A.課題解決型>小型・可搬型の地下水分センサ/地産地消 • • • 4 型探査技術「月面探査と土木建築でのデュアルユースを視野に入れた次世代型の中性子水モニタの開発」 JST 創発的研究支援事業「宇宙放射線の測定による月極域の水資源探査と月面天文学」 JAXA国際宇宙探査センター2021年度 月面での科学研究・技術実証ミッションにかかるフィジビリティスタディテーマ 「課題B:世界をリードする科学成果の月面活動からの創出」での「水資源探査とも連携した宇宙の暗黒時代に迫るガ ンマ線・低周波電波の月面天文台」 理化学研究所・理研白眉研究プロジェクト「高エネルギー大気物理学の開拓と次世代の宇宙観測への応用」

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1. 中性子を用いた水資源探査 (惑星科学) 5

6.

宇宙放射線の技術で「月の水資源」を見つけたい! 銀河宇宙線が月に衝突した際の核反応で生じる 中性子を用いて非接触で水資源を探し出す。 月面ローバー 銀河宇宙線 (陽子、ヘリウム) 熱中性子 水資源 高速中性子 核反応 ガンマ線 中性子捕獲

7.

月極域で見つかった水素濃集 (水の痕跡?) ometer (Lawrence et al. 2006) 月の南極 (緯度 70 以下)の水素分布 S < - 70degree • 太陽風や隕石、彗星が月に水を供給。 • 月極域の太陽が当たらない永久影には水が濃 集していると期待されている。 • 月周回機の中性子分光計は極域に濃集した水 等価水素量 (WEH) を観測した。 • WEH でサブ wt% の水が期待される、月表 面から数十 cm 以内の深さに存在? • 軌道上での測定は数+km 四方の平均的な水 濃度。ローカルには水が濃集している可能性 水素濃度 (ppm) Lawrence et al. 2006 Lunar Prospector Neutron Spectrometer Hydrogen (ppm) • 月面ローバーに搭載した中性子モニタで水資 源の詳細マッピングを実施したい 水等価水素量 (Water Equivalent Hydrogen; WEH) は、中性子で計測された水素量が全て水として存在すると仮定して推定した場合の量 [H]。 この 9 倍が含水量に対応 (i.e., [H2O] = [H] x 18/2)。図は WEH = enhancement = ([H]-[H]0) x 9 で、[H]0 は average non-polar level = 0.045% WEH 7

8.

"# ) Geant4 による月面の中性子伝搬シミュレーション 月面に照射される銀河宇宙線 (入力) Hayatsu et al. 2008 のパラメータ 月面から漏れ出す中性子スペクトル (出力) 熱中性子 10-3-0.5 eV 熱外中性子 0.5 eV - 0.5 MeV 高速中性子 0.5-10 MeV 含水率が小 含水率が大 H abundance • 含水率の違い、月面の元素組成(Fe, Ti, Gd, Sm 等)、空隙率や温度の影響評価。 • 水素含有量は熱外中性子に、組成の違いは熱・高速中性子に主に影響する。 草野、晴山、長岡ほかの計算結果, ref: Lawrence et al., 2013, Kusano et al. in preparation 8

9.

新たな中性子とガンマ線の測定技術 熱外中性子 高速中性子 反跳 • これまでの中性子の検出では、ヘ 陽子 α粒子 リウムのガス検出器が多用 • 価格の高騰、振動に弱い • リチウムを含むプラスチックシン 熱中性子 チレータとマルチピクセル型光検 電子 ガンマ線 6Li 散乱 トリチウム • 高速中性子:主に陽子(水素原子核)との弾性散乱でエネルギーを落と • • す。十分エネルギーを失って熱化され、6Liに捕獲される。 熱中性子:6Liに捕獲されると、(n,α)反応 (Q値: ~4.8 MeV) でα粒子 と3Hを放出する。 γ線:主にコンプトン散乱を起こす。 出器(SiPM) を使う新技術の活用 • ヘリウムに比べ安価 • 振動に強く、小型・省電力 • 中性子とガンマ線を同時測定 し弁別が可能 → 高感度化、 地中の元素組成を測定できる 9

10.

中性子とガンマ線を弁別するシンチレータの試験 hist 熱中性子・熱外中性子 700 高速中性子 300 センサー部 650 250 PSD 値 600 200 550 150 500 読み出し回路 中性子線源とセンサー間の距離 16 cm 450 400 100 ガンマ線 Entries Mean x Mean y 91927 283 580.3 Std Dev x 181.8 Std Dev y 34.78 Integral 9.147e+04 PSD (Pulse Shape Discrimination, 波形弁別) PSD値 = 波形テールの電荷量 / 波形全体の電荷量 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 100 50 0 波高値 (ADC channel) [エネルギーに対応) • 実験室モデルで中性子、高速中性子とガンマ線の弁別を確認 • 宇宙環境モデル(過酷な熱環境、放射線の影響、打ち上げの振動)の設計へ 長岡、加藤、辻、榎戸ほかの検討 10

11.

MoMoTarO で搭載する中性子・ガンマ線モニタ • • • • • キューブサット 1U サイズのモジュール化で搭載機会を増やし、スケーラブルに拡張 熱中性子・熱外中性子を測定する月の表面側に向いた中性子感度のあるシンチレータ ガンマ線バーストや月の元素組成の測定には深宇宙側のガンマ線感度のあるシンチレータ 相互の反同時計数、中性子シンチレータのパルス波形弁別(PSD)でバックグランド除去 キューブサットX線衛星 NinjaSat のノウハウを活用した読み出し電子回路ボード 月面ローバーに搭載した想像図 10 cm 深宇宙 10 cm NinjaSat DAQ ボード ガンマ線検出 (GAGG 7x7x1 cm) 月表面 10 cm 9.5 cm 熱外中性子 (EJ-270 7x7x3 cm) 11 熱中性子 (EJ-270 7x7x1 cm) BBM mockup 9.5 cm

12.

定常重力波の発見をサポートする NinjaSat 2023年度に打ち上げの超小型衛星 NinjaSat ガス検出器と荷電粒子モニタを搭載 技術基盤は MoMoTarO につながる 高速で自転する 中性子星からの重力波? 自転周期をX線で調べる 12 (C) NinjaSat team

13.

土木建築や橋梁検査など地上インフラへの応用 • 中性子水モニタの応用範囲は広い • 放射線源を使った水測定の応用例 • 土木工事(地盤調査、締固め) 重機で締固めた土(盛土) • コンクリート構造物の非破壊検査(橋梁、ダ ムなどの構造物、コンビナートなど) • 将来の日本のインフラ維持への貢献 • 例えば、国内の橋梁は73万橋。橋梁点検 は、5年に1回。塩分検査は10年に1回。 盛り土の状態を状のRI計器で検査 RI計器による建築現場(締固め)の検査 (提供: ソイルアンドロックエンジニアリング社) • 月探査用に開発した装置や技術ノウハウは、地上 小林、池永/SRE、大竹/RANS ほかを中心に計画中 でのインフラ検査などにも活用を進める。 13

14.

中性子を用いた含水率測定での計測対象の違い 中性子フラックス (neutron/cm2/s) 105 コンクリート (加速器による 中性子ビーム) 104 103 102 土木現場のRI計器活用 (252Cf 中性子源) 10 1.0 月表面 (銀河宇宙線による中性子) 0.1 10-2 雷 JAXA RFI の検出目標 0.1 1.0 質量含水率 (%) 10 100 太陽 フレア • 地上の測定対象に対し、月面では極低含水率を測定する必要がある。 14

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3)⽉⾯模擬⼟壌を使⽤したRI線源による⽔分計測 3)⽉⾯模擬⼟壌を使⽤したRI線源に 極低含水率の月シミュラントの測定法の確立 1) ⽔を含む⼟槽作り 3) ⼟槽からの中性⼦を測定 2) 線源と中性⼦検出器を設置 1) ⽔を含む⼟槽作り 2) 線源と中性⼦検出器を設置 1. 数%以下の含水率の月シ ミュラントを土槽に詰める 2. 土槽を中性子吸収剤で囲い、 ガス検出器(ヘリウム)を設置 3. カリフォルニウム線源 252Cf からの中性子の反射成分の測定 4) 測定結果 FJS-1 実測vsGeant4 • 2022年5月30日-6月3日まで立命館大学の小林 Geant4_1(実験後) Geant4 結果1 Geant4_2(実験後) Geant4 結果2 多項式 (Geant4_1(実験後)) Geant4 結果1 近似曲線 多項式 (Geant4_2(実験後)) Geant4 結果2 近似曲線 研で月シミュラント (FJS1) と真砂土で実施 50 45 極低の体積含水率で作成した6点の検査対象 40 に対して、中性子の計数率を測定する 計数率 (cps) • 35 シミュレーション • 同じセットアップをGeant4 30 25 で作成し、実験結果を再現する結果を得た 20 • 制御の難しい極低含水率のシミュラントの作 15 製手法を確立し、Geant4 での再現もできた 10 15 • 今後、開発した検出器を用いた測定を実施 0 5 Geant4_1(実験後) Geant4 結果1 多項式 (Geant4_1(実験後)) Geant4 結果1 近似曲線 計数率 (cps)(cps) 中性子の計数率 4) 測定結果 FJS-1 実測vsGeant4 50 Geant4_2(実験後) Geant4 結果2 多項式 (Geant4_2(実験後)) Geant4 結果2 近似曲線 実測値 実測値 測定値• モデル⼟槽中の容積含⽔率と中 性⼦計数率(He3計数管で測定) Geant4 シミュレーショ との関係 ンと内挿カーブ 実測値 実測値 45 40 35 30 線源強度の2種類の仮定で2つのカーブ • Geant4での数値シミュレー ションと実測した計数率を⽐較 25 20 15 • • • • • 実験結果との良い相関性を得た 10 FJS1 result 5 0 0.000% 0 2 2.000% • 今回の実験結果を踏まえ、さら 4.000% 6.000% 8.000% 10.000% 12.000% 14.000% 4にモデル計算の⾼精度化を⽬指 6 8 10 12 14 す 体積含水率 容積含水率 (%)(%) *Geant4の⼆種類の計算結果はCf線源の 長岡、小林、池永/SRE、晴山、若林、榎戸ほか 強度を公称値、出荷前計測値のそれぞれ *G 強 で

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2. 中性子の寿命測定 (素粒子物理学)

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素粒子物理に残された「中性子寿命のパズル」 • 中性子の寿命は、加速器を使うビーム法 (τbeam~888 sec) と冷却中性子のボトル法 • (τbottle~879 sec)の間で、△τ = τbeam - τbottle = 9 sec (1%) もの系統的な違いがある 中性子の寿命はビッグバン元素合成の重要。中性子が暗黒物質に崩壊する? 本提案で挑戦する方法 月 ビーム法 熱中性子 ボトル法 プラネット法 中性子の寿命 (秒) プラネット法 (先行研究) QCD 計算 銀河宇宙線 (主に陽子) 従来の方法 ビーム法 中性子ビーム ボトル法 冷却中性子 t 17 月周回機 (中性子を検出) 年 (year) t 陽子を検出 ビーム法 ボトル法

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宇宙放射線の技術で「月の水資源」を見つけたい! 銀河宇宙線が月に衝突した際の核反応で生じる 中性子を用いて非接触で水資源を探し出す。 月面ローバー 銀河宇宙線 (陽子、ヘリウム) 熱中性子 水資源 高速中性子 核反応 ガンマ線 中性子捕獲

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月周回機を用いた中性子寿命を測定する先行研究 Wilson et al., Physical Review C (2021) • 月表面から漏出する中性子を周回機で測定 することで中性子寿命を計測する • Lunar Prospector (LP) 搭載のガス検出器・ 中性子スペクトルメータのデータを再解析 し τplanet=887±14(stat.)+7/-3(syst) • 約2日間だけの楕円軌道から円軌道に遷移する9周 回分だけのデータを利用できた 高度は 7500 km 以下 • • 中性子検出の有効面積は約 70 cm2 • 中性子の寿命を誤差付きで評価できた大き 19 な成果だが、統計誤差も系統誤差も大き く、ビーム法とボトル法の寿命の切り分け に至っていない

20.

月周回機の MoMoTarO で寿命測定できるか? F (neutron s-1 cm-2) 0.3 0.2 • 月表面からの中性子漏出と、その後の深宇宙への伝搬 thermal neutron flux simulation (1 meV-0.5 eV) 0.1 過程を計算するフレームワークを構築した。 • 銀河宇宙線が月面に衝突した際の中性子生成と散乱 過程をGeant4で計算し、漏出時のスペクトル、放 出方向などを算出 • 月の重力ポテンシャルの中での中性子の運動を Feldman et al., JGR (1989) をもとに計算。中性子 寿命でのベータ崩壊も取り込む。 δF (10-4 n s-1 cm-2) 0.0 20 4 • • 2Uサイズの MoMoTarO 検出器でキューブサット衛星 3 での月周回を半年間の実験を行うと、中性子寿命を統 計的に区別できる。 2 1 0 熱中性子フラックスは ~0.1 cps/cm2 at 600 km Flux difference δF = Fsim(τBeam)-Fmodel(τBottle) 1000 2000 Altitude (km) • 月周回の軌道高度 20-2000 km 2 仮定した有効面積: 7x7 cm efficiency 80% を2台 • 谷口、草野、高梨、辻、榎戸、晴山ほか

21.

中性子イメージャ開発と中性子伝搬モデル精緻化 中性子イメージャ 国際宇宙ステーション暴露部 98 mm コーデッドマスク 電子回路部 95 mm GS-20 3.2 mm ピクセル 24 x 24 SiPM アレイ LAWRENCE ET AL.: IRON ABUNDANCES ON THE LUNAR SURFACE 13 - 15 キューブサット 単位で搭載可能 アクティブシールド 月の緯度 ( ) 月表面の元素組成の分布も組み込 んで精緻化し系統誤差の低減。 B4 アレイ状 シンチレータ • 熱中性子イメージャー開発に着 手。コーデッドマスク式でアクテ +90 ィブシールドで系統誤差を低減。 +45 • 国際宇宙ステーションか小型衛星 0 を用いた宇宙実証を行い技術成熟 度 (Technical Readiness Level, -45 TRL)を確認。 月面からの中性子フラックスの相対比 -90 -180 21 • 月面からの中性子漏出モデルを、 -90 0 月の経度 ( ) +90 Figure 16. Map of the temperature corrected, normalized neutron number density. +180 辻、谷口、長岡、榎戸ほか

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水資源探査のための月周回衛星 “Izumi” • 第30回衛星設計コンテストで「設計大賞」「文部 科学大臣賞」を受賞。中性子ミラーでの撮像系 ⽔資源探査のための ⽉周回衛星“Izumi” ⾕⼝ 絢太郎1, 鶴⾒ 美和2, ⼩松 ⿓世3, ⼯藤 雷⼰4, 伊澤 梓実2, 海江⽥ 蒼5, 相澤 脩登4, 五味 篤⼤4, 永井 悠太郎6 1 早稲⽥⼤学⼤学院 2 ⻘⼭学院⼤学⼤学院 3 総合研究⼤学院 4 東京⼤学⼤学院 5 横浜国⽴⼤学⼤学院 6 京都⼤学⼤学院 2022/11/12 第30回衛星設計コンテスト最終審査会 @クロス⽇本橋 谷口絢太郎君 小松龍世君 構造系 - 機器配置 - 鶴見美和さん 各系の要求を満たすように 機器を配置した. 以下の要求を満たした. 1. 50 kg以下,500 mm四⽅に収まる 2. 各系の機器を要求を 満たすように搭載する 設計⽅針 l ハニカムパネルによる軽量な主構造 l 重⼼を下げるような構造配置 l タンクをパネルで囲った⾼剛性な構造 22 @comet_dragon32 谷口、鶴見、小松ほかより提供 36

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3. 天文学 — 月面でのガンマ線バースト観測 超強磁場の中性子星 マグネターからの多波長放射 (C) Ryuunosuke Takeshige and Teruaki Enoto (Kyoto University) 連星中性子星の合体 GW170817 Illustration of two merging neutron stars (C) NSF/LIGO/Sonoma State University/A. Simonnet

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The Astrophysical Journal Letters, 848:L12 (59pp), 2017 October 20 A マルチメッセンジャー天文学 • GW170817 — 歴史的な連星中性子星の重力波 • 2017年8月17日 12:41:04 UTC, 重力波干渉計 aLIGO & aVirgo が重力波信号を検出 • 1.7秒後、軌道上の INTEGRALや Fermi 衛星が ガンマ線バースト GRB 170817A を検出 • 11時間後、可視光の突発天体 AT 2017gfo が 40 Mpc の銀河 NGC 4993 に発見 • 光度距離 40±8 Mpc にある2つの中性子星が合体 で重力波を発生し、引き続いてショートガンマ線 バーストも発生。さらに、rプロセス元素の放射 性崩壊で輝くキロノバが形成された。 24 LIGO & Virgo Scientific Collaboration, ApJ (2017) Figure 2. Timeline of the discovery of GW170817, GRB 170817A, SSS17a/AT 2017gfo, and the follow-up observations are shown by messenger and

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GRB 到来方向の測定が重要 ̶ GW, GRB, & EM ournal Letters, 848:L12 (59pp), 2017 October 20 Abbott et al. • 重力波干渉計はGRB 発生源 (190 deg2) を天球上の 31 deg2 に限定 • ガンマ線衛星 Fermi/GBM (31 deg2) (1100 deg2) は、GRB 発生源を天球上で 1100 deg2 に限定 (90%信 頼区間) • INTEGRAL/SPI-ACSと Fermiの到来時間差では、天 球上で大きな円環領域で推定 • 可視光タイリング観測が必要 • e.g., Subaru/HSC 1.5 deg FoV (diameter) Moon ~0.5 deg of the gravitational-wave, gamma-ray, and optical signals. The left panel shows an orthographic projection of the 90% credible from • regions 2 green), the initial LIGO-Virgo localization (31 deg green), IPN triangulation from the ApJ time delay between Fermi and INTEGRAL (light LIGO &; dark Virgo Scientific Collaboration, (2017) 25 (dark blue). The inset shows the location of the apparent host galaxy NGC 4993 in the Swope optical discovery image at 10.9 hr after the

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f Hurley et al. (2000b); Hurley et al. (2000c); Laros et al. (1998); Hurley et al. (1999a); Hurley et al. (2005); The Astrophysical Journal Supplement Series, 259:34 (10pp), 2022 April g h i j Laros et al. (1997); Hurley et al. (1999b); Pal’shin et al. (2013); Hurley et al. (2011b); Hurley et al. (2010); Hurley et al. (2011a); l Present catalog. 衛星間の到来時間差による「三角測量」 k terminated and new missions are introduced. During the period covered in the present catalog, the IPN consisted of Konus-Wind, at distances up to around 5 lt-s from Earth (Aptekar et al. 1995); Mars Odyssey, in orbit around Mars at up to 1250 lt-s GRB from Earth (Hurley et al. 2006); the International Gamma-Ray Hurley et al., ApJS (2013) Laboratory (INTEGRAL), in an eccentric Earth orbit at up to cos θ12=c∆t12/d12 0.5 lt-s from Earth (Rau et al. 2005); the Mercury Surface, 2-3 annulus Space Environment, Geochemistry, and Ranging mission (MESSENGER), launched in 2004 August, and in an eccentric θ12 orbit around Mercury beginning 2011 March 18, up to 690 lt-s d12 from Earth (Gold et al. 2001); and the Ramaty High Energy 1 2 The Astrophysical Journal Supplement Series, 259:34 (10pp), 2022 April Solar Spectroscopic Imager (RHESSI; Smith et al. 2002), Swift GRB 170206A Svinkin et al (Goldstein et al. 2012), Fermi (Meegan et al. Sivinkin 2009), Suzaku et al., ApJS (2022) 1-2 annulus (Takahashi et al. 2007; Yamaoka et al. 2009), and AGILE 3 (Marisaldi et al. 2008; Del Monte et al. 2008; Tavani et al. 2009), all in low Earth orbit. Figure 1. The triangulation technique. Each independent spacecraft pair is used•to 距離 derive D an annulus of location for the burst. Three spacecraft produce The detectors in the IPN vary widely in shape, composition, だけ離れた2つの衛星で GRB を ⊿T の時間差で検出したとき、円錐 two possible error boxes. The ambiguity can be eliminated by the addition of time resolution, and energy range. Also, onboard timekeeping a fourth, non-coplanar spacecraft by the anisotropic response of one of the の半値角 (half-angle) θ の円環状の天球領域に到来方向を制限できる techniques and accuracies are not the same from mission to misexperiments, or by the GBM localization. sion, and spacecraft ephemeris data are given only as predicts for some missions. Since the accuracy of the triangulation tech2. TECHNIQUE, INSTRUMENTATION, CALIBRATION, nique depends on all these parameters, end-to-end calibrations AND SENSITIVITY and sensitivity checksGRB are a constant necessity. For the current • 1994 年頃に始まった Inter Planetary Network (IPN) は、複数の衛星で IPN, we utilize the following method. For every burst for which The到来方向を測定している。現在、9 triangulation technique is illustrated in Figure 1. When 衛星が参加。ラグランジュ点 L1 にいる(XRT) detects an X-ray afterglow, we the Swift X-Ray Telescope a GRB arrives at two spacecraft with a delay δT , it may be search for495 GRBイベント。 detections in all the IPN experiments. If the burst localized to an annulus whose half-angle θ with respect to the Konus-Wind で検出したショートガンマ線バーストの総数は was detected by (1) Odyssey and Konus or by Odyssey and a nearvector joining the two spacecraft is given by 26 Earth mission, (2) MESSENGER and Konus or by MESSENGER

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地球から遠方にある衛星を使うメリット The Astrophysical Journal Supplement Series, 259:34 (10pp), 2022 April • 天球上の GRB 円環領域の幅 (誤差領域)は、 Svinkin et al. 0.12 deg2 時刻遅れの測定誤差 • 遠方で稼働している放射線モニタ搭載の衛星 11 deg2 • Konus-Wind (太陽-地球ラグランジュ点 L1) • 2つの検出器により全天をカバー • エネルギー帯域: 20-15 MeV • 検出感度 GRB fluence >10-6 erg s-1 cm-2 • Mars Odyssey (火星, unto ~1250 lt-s) • Messenger (水星, unto ~700 lt-s) aLIGO/aVirgo GW170817 Subaru HSC Fermi/GBM only GW170817 • 遠方の衛星を使うことで、誤差領域の幾何平均 27 は 1 桁ほど減少する。 • 11 deg2 (地球低軌道) • 0.12 deg2 (遠方にある衛星) Figure 4. Distributions of minimum sizes (left) and areas (right) of the IPN localizations. Blue dotted lines: 94 Konus short bursts observedetbyal., at least one distant s/c; Sivinkin ApJS (2022) red dashed lines: 105 bursts not observed by any distant s/c. The minimum region dimensions range from 0°. 033 (2 0) to 3°. 32 with a mean of 0°. 17, and a geometric

28.
[beta]
月探査に連携した MoMoTarO の GRB観測
GRB の位置決定精度は 0.1-1 deg2 (<2 ms の時刻遅れの決定精度) ← 典型的に月の視直径、可視光 FoV

XDF (see Right panel)

1 deg
(C) T. Rector, I. Dell'Antonio/NOAO/AURA/NSF, Digitized Sky Survey
(DSS), STScI/AURA, Palomar/Caltech, and UKSTU/AAO

2.0’ = 0.033 deg

• 月面ローバー、月周回機ゲートウェイ、ラグランジュ点のキューブサット衛星の3台(サル、トリ、イヌ)
• 地球低軌道には大面積で高性能な観測装置が多数あると想定。動物三銃士は、惑星探査・多波長と連携。
• 要求性能:全天をカバー (vs. Swift/BAT 0.1 sky)、検出感度 fluence >5×10-8 erg s-1 cm-2 ,、

2.3’ = 0.038 deg
Hubble eXtreme Deep Field taken
5,500 galaxies in the image (2012)
(C) NASA; ESA; G. Illingworth, D. Magee, and P. Oesch, University of
California, Santa Cruz; R. Bouwens, Leiden University; and the HUDF09 Team

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重力波宇宙論への GRB 観測からの貢献 GW170817 キロノバ 力波と電磁波観測を組み合わせると重力 波宇宙論(宇宙の膨張史の測定)が可能! • 重力波 → 距離スケール (光度距離) • 対応天体 (銀河, キロノバ) → 赤方偏移 GW 標準サイレン (GW standard siren) ご ) し r は e d 距離 ce lad n a t s i D ( • 重力波信号を電磁波対応天体に紐付ける には、ガンマ線バーストによる位置測定 が鍵となる可能性がある。 • ショートガンマ線バーストを、広い視野 と <0.1-1 deg2 の位置決定精度が必要 • 月周辺の「距離」を活用したシンプルな 0 1 装置で実現できる 10 10 10 10 3 4 5 LVK ~2030 ~2040 Ia型超新星 Tully-Fisher メーザー セファイド偏光星 赤色巨星 食連星 年周視差 2 GRB ご r) し de は d 離 la 距 rse BAO 逆 ve レンズ (In • 従来の「距離はしご」とは独立な測定法 として、梯子に由来する不定性と無縁 z=2 CMB • マルチメッセンジャー天文学の時代に重 z=0.2 6 (C) 仏坂健太 (東大) 7 10 10 10 10 10 Distance from the SunDistance (pc) Co-moving (pc) 8 10 9 10 10 29

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宇宙論パズルへの挑戦 • The Hubble tension — ハッブル定数 H0 の測定値 • が「Ia型超新星による手法」と「CMBによる測 定」で系統的に異なる問題 ダークエネルギー問題 — 重力波宇宙論は宇宙論 パラメータ (H0, Ωm, w0) を測定することができる Although we report results for only one year of observations, a longer observing period is of course likely. For example, we find that with 5 years of observation, uncertainties on the cosmological parameters improve by a factor of about 1.5–2. 68% uncertainty of the cosmological parameter w0 30 2. CE Swift and Swift+: Similarly, only a few SGRB events ハッブル定数H0の測定 are sufficient to achieve comparable precision on (Ωm, w0) measurement as the CE VRO 600s or VRO 1800s scenarios. In addition to the benefit of the inclination angle constraint, the SGRB sample reaches higher redshifts than kilonovae in the CE era. 3. CE Swift++: Given the greater number of SGRBs and their larger detection distance, (Ωm, w0) can be measured to 20%–30% precision over one year of observations. Unlike in the kilonova case, even in the Swift++ scenario, we are not limited by the gamma-ray telescope time (though constraints on spectroscopic follow-up may be more severe; see below). 4.1. Uncertainties and Caveats 宇宙論 W0 の測定精度 Chen et al., ApJL (2021) Voyager Motivated empirically by observations with Swift, we have assumed that 30% of SGRBs detected by the gamma-ray satellite will have their redshift precisely determined. While it is potentially realistic to obtain spectroscopic follow-up of SGRB afterglows or host galaxies in the era of a few (or even a few dozen) events per year, our CE Swift++ scenario would require about 100 redshift measurements per year, possibly from 8etmal., class or (2021) larger spectroscopic telescopes (given the Valentino CQG large distances of SGRBs) by the 2040s when CE is

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ガンマ線バースト月面天文台でのGRB位置推定 • • 時刻遅れの測定精度にガウス分布の不定性を仮定: σ1=0, σ2=σ3=8 ms (*note) • 地球-月間で遅れ決定精度が σ2=5 ms なら50%の GRB を0.5 deg 精度で、90%を3 deg 3台は、1=地球低軌道 (LEO), 2=地球-太陽L1点(Konus/Wind,1.5×106 km), 3=月面 で決定できる。 σ2=2 ms なら 50% GRB を 0.27 deg、90%を1.8 deg で決定できる。 • L1にある Konus-Wind (4倍遠い)より、4倍よい時間遅れの決定精度が理想。 • 時間分解能は 1 ms 以下で、地球へのアラートを即座にできるシステムが理想。 1. A ‘good’ scenario with a GRB originating from 𝜃 = 45, 𝜙 = 22.5, and the Moon at First Quarter (𝛼 = 90∘). 仏坂健太氏(東大)、Ethan van Woerkom 氏との議論、 および計算より 2. A ‘bad’ semidegenerate scenario with a GRB originating from 𝜃 = 45,𝜙 = 22.5, and a nearly Full Moon (𝛼 = 175∘). (*note) Konus-Wind から地球までの geometric mean time delay uncertainty は 29 ms 31

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(f) are photo index γ, Ecut and Epeak of the CPL model. The errors are given at the ence level.(see Methods for details of the saturation and the deadtime correction.) 低周波電波とガンマ線の連携観測 • 宇宙遠方の謎の電波バースト(Fast Radio Burst, FRB) は、宇宙最強の磁石星マ Rate (104 counts/s) • グネターなのか?→ 軟ガンマ線のバースト放射と電波の同時観測が鍵 月面なら、RFI と電離層の影響を避けた低周波電波の観測に有利! 8 6 Soft gamma rays (27-250 keV) HXMT-HE (a) 4 銀河系内のマグネターであり Fast Radio Burst 天体 SGR 1935+2154 の事例 2 0 -500 -400 -300 -200 -100 0 100 a (b) b (c) Frequency (MHz) 800 (Credit) NASA/JPL-Caltech 200 300 400 • (a) 軟ガンマ線のバースト (Li et Time (ms) Table 1 | Properties of the burst from SGR 1935+2154 al., Nature Astronomy, 2021) (d) Component 1STARE2 Component 2 • (b) 米国の電波望遠鏡 Parameter Dispersion measure (pc cm−3) 332.7206(9) (Bochenek et al., Nature, 2020) 0.759(8) Scattering timescale (ms) 264 Best-fit S/N • (c) カナダの CHIME 電波望遠鏡 (CHIME/FRB collaboration, 14:34:24.40858(2) 14:34:24.43755( Arrival time, 28 April 2020 (UTC, topocentric) Nature, 2020). Arrival time, 28 April 2020 (UTC, 14:34:24.42650(2) 14:34:24.45547( geocentric) • (d) マグネター表面のイメージ図 CHIME a 700 b 600 c 500 c,d Scattering-corrected width (ms) 400 –15 0 15 30 45 (ms) –15 Time 0 15 (Credit) NASA/GSFC, Chris Smith (USRA) 30 45 0.585(14) 0.335(7) 森本、本間、吉浦、高橋ほか −5.75(11) 3.61(8)32 Spectral indexa,b

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まとめ: 月探査を基礎科学につなげる MoMoTarO (Moon Moisture Targeting Observatory) は新開発の中性子・ガンマ線の 放射線モニターで、月面ローバー、月周回オービターなど多点展開を目指す。 (1) 月面ローバーに搭載し、銀河宇宙線が地中で発生させる熱・熱外中性子の測定に より、月面下の水資源を非接触に探索するのを主目的とする。 (2) ビッグバン元素合成やダークマターにも関わる未解決問題「中性子の寿命パズ ル」に、数百km高度の月周回機による熱中性子の高度プロファイル測定で挑む。 (3) 月までの長い距離を用いてガンマ線バーストの到来方向の高精度な測定を行い、 ハッブル定数問題やダークエネルギーの謎を解く重力波宇宙論に貢献する。 (4) ガンマ線と低周波電波の同時観測は、マグネターや高速電波バーストの謎など、 時間領域天文学にとって重要な月面天文台として活用できる。 33