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January 15, 24

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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1.

基礎的な数式の構造理解に向けた 2種類の数式ハイライト⼿法の⽐較調査 植⽊⾥帆、中村聡史 明治⼤学 第206回 HCI研究会 2024/1/15(⽉)

2.

基礎計算の重要性 数学において基礎計算でミスをすることは致命的!! 正負の数、⽂字式の計算 • 基礎計算は中学校・⾼校数学の基盤となる • 基礎計算での計算ミスを早い段階で修正しないと 今後の学習に影響を及ぼす 2

3.

基礎計算の重要性 • テスト最初の計算問題でミスをする • ⽂章題で⽴式はできるのに計算ミスで点を落とす もったいないミスが多い 3

4.

基礎計算の重要性 注意⼒が計算スキルに関係する[Commodariら, 2014] ⼀度計算ができるようになっても 注意⽋陥による計算ミスは いつまでもつきまとう問題 Commodari, E., Melina,D.B.. The role of the different components of attention on calculation skill. Learning and Individual Differences, vol. 32, pp. 225-232, 2014 . 4

5.

数式の構造理解 • 数字 • 数学記号 • 符号 • 演算記号 • x,yなどの⽂字 • ⻑い式になればなるほど複雑化する 5

6.

数式の構造理解 複雑な数式を解くためには数式の構造を理解する能⼒である “構造感覚”が重要である [Maureenら, 2004] 例) 3𝑥 ! − 6 − 8𝑥 + 4 = −𝑥 ! − 2𝑥 3𝑥 ! − 6 − 8𝑥 + 4 +𝑥 ! +2𝑥 = 0 4𝑥 ! − 6𝑥 − 2 = 0 降べきの順(⾒慣れた形)にする Maureen, H., Tommy, D.. Structure Sense In High School Algebra: The Effect of Brackets. the 28th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education, vol. 3, pp. 49-56, 2004. 6

7.

数式の構造理解 複雑な数式を解くためには数式の構造を理解する能⼒である “構造感覚”が重要である [Maureenら, 2004] 数式の構造理解を⽀援することで正確で素早い計算が可能になるのではないか Maureen, H., Tommy, D.. Structure Sense In High School Algebra: The Effect of Brackets. the 28th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education, vol. 3, pp. 49-56, 2004. 7

8.

シンタックスハイライト • テキストの可読性を向上させるもの (例)プログラムのコードに⾊がつく拡張機能 8

9.

関連研究(シンタックスハイライト) • シンタックスハイライトありとシンタックスハイライトなしの コードについてタスクを⽤意し、被験者内で⽐較した • タスク完了時間が⼤幅に短縮 • この効果がプログラミングの経験の増加とともに弱まる [Advait, 2015] • プログラムの読みやすさと理解に対する⾊の影響を調査 • ⾊による強調がされている⽅がプログラムの理解をしやすいことを 明らかにした [Gerard, 1986] • Advait, S.. The impact of syntax colouring on program comprehension. Proceedings of the 26th Annual Conference of the Psychology of Programming Interest Group (PPIG 2015), pp.49-58, 2015. • Gerard, K. R.. The influence of color on program readability and comprehensibility. vol.18, no.1, pp.173-181, 1986. 9

10.

これまで取り組んできた研究 計算中の数式の特定箇所へハイライトをすることで 数式の構造理解を促す⼿法を提案 [HCI196] 【計算問題の正誤判定実験】 • ハイライト6条件を実験者内⽐較[HCGシンポジウム2022] • 対象:理⼯系⼤学⽣ • ハイライト2条件を実験者間⽐較[HCS研] • 対象:⼈⽂系⼤学⽣ 植⽊⾥帆, 中村聡史. 中学基礎計算の途中計算を促進する記号ハイライト⼿法の提案. HCI196, vol.2022-HCI196, no.4, pp.1-8, 2022 植⽊⾥帆, 中村聡史. 数学の基礎計算におけるミス防⽌のためのハイライト⼿法の⽐較検討. HCGシンポジウム2022, no.C-5-3, pp.1-8, 2022. 10 植⽊⾥帆, 中村聡史. 基礎計算のミス防⽌に向けた2種類の数式ハイライト⼿法の⽐較検討,HCS, Vol.123, No.188, HCS2023-64, pp.41-46, 2023.

11.

過去の実験の課題点 • ⾊を問題ごとに変化させたことがノイズとなった • 数学の計算に対する抵抗が低い学⽣への実験だった どういった要因が正答率や解答時間に影響するのか 明らかにできていなかった 11

12.

目的 数式へハイライトをすることにより、構造理解を促し、 正確で素早い計算が可能になるかを明らかにする 12

13.

実験概要 • これまで同様 【計算問題の正誤を判定する実験】 • ハイライト条件は2種類 • Yahoo!クラウドソーシングで 1000名に実験依頼 13

14.

実験設計(問題選定) 構造理解が必要である「分配法則を利⽤して解く問題」を10問 単純な問題×6問 複雑な問題×4問 14

15.

実験設計(条件選定) • 分配法則では括弧で括られた数式をひとつのまとまりとして 意識することが重要 • ハイライト⾊はオレンジで統⼀ • ⾊覚多様性者に配慮 baseline条件 color条件 marker条件 15

16.

実験設計(不正解問題) 分配法則を⾏う際に、括弧でくくられた数式に対する まとまり意識の⽋如により発⽣しやすい 符号ミスと分配忘れの2種類を⽤意 符号ミス 分配忘れ 17

17.

実験設計(不正解問題) 不正解問題は分配法則を⾏う際に、括弧でくくられた数式に 対するまとまり意識の⽋如により発⽣しやすい 符号ミスと分配忘れの2種類を⽤意 符号ミス 分配忘れ 18

18.

実験設計(文字タイプ) • 計算時は計算過程を早く書きたいと思い雑な字になりがちである ため、きれいな字と雑な字で問題を⽤意 • 雑な字では構造理解がしにくく、ハイライトが効果的に働く? きれいな字 雑な字 19

19.

実験設計(不真面目対策) • クラウドソーシングでは監督者が直接監視できない問題 • 誰でも正解できる極端に簡単な問題2問を⽤意 • 解答できなければ不真⾯⽬な回答者とする 20

20.

実験の流れ ① Yahoo!クラウドソーシングから実験システムにアクセスする ② ランダムに各条件群に割り振られる ③ 12問(簡単2問+分配法則10問)の計算問題の正誤判定 ④ 解答後、アンケートに回答する ⑤ 最後の完了画⾯に表⽰されたIDと実験コードを Yahoo!クラウドソーシング画⾯に戻り⼊⼒する 21

21.

結果・考察 24

22.

分析の前処理(分析対象) 簡単な問題を除く10問中、合計正答数が8問未満の者のデータを 分析対象外にした →平均点から2SD以下に該当する7点以下 →そもそもの解き⽅がわかっていない可能性もある 分析対象者数 baseline群 283名 color群 270名 marker群 265名 計 818名 25

23.

結果(全問正解者の割合と解答時間) 全問正解者数の割合 平均解答時間[s] baseline群 48.8% 9.3 color群 51.1% 8.8 marker群 55.7% 8.6 28

24.

結果(全問正解者の割合と解答時間) 全問正解者数の割合 平均解答時間[s] baseline群 48.8% 9.3 color群 51.1% 8.8 marker群 55.7% 8.6 29

25.

結果(全問正解者の割合と解答時間) 全問正解者数の割合 平均解答時間[s] baseline群 48.8% 9.3 color群 51.1% 8.8 marker群 55.7% 8.6 30

26.

考察(最適な数式ハイライト手法の検討) marker条件の全問正解者の割合が最も多く、解答時間も短かった かっこ内にマーカーを引くと 数式の構造が理解しやすくなる可能性がある 33

27.

考察(最適な数式ハイライト手法の検討) 括弧の⾊を変えるよりマーカーの⽅が結果がいいのはなぜか • ⽂字⾊変えよりも背景⾊変えの⽅が⽬⽴つ[⼤久保ら,2015] • color条件よりもmarker条件の⽅が⽬⽴ったからではないか ⼤久保⼼織, 三末和男. ⽂字の視覚属性を利⽤した強調表現に関する研究. 筑波⼤学⼤学院博⼠課程システム情報⼯学研究科修⼠論⽂, pp. 1-65, 2015. 34

28.

結果(文字タイプ別の不正解率) ⽂字タイプごとに分けた各条件の不正解率 きれいな字 雑な字 baseline条件 9.6% 10.5% color条件 9.6% 11.0% marker条件 9.1% 8.6% 38

29.

結果(文字タイプ別の不正解率) 分散分析を⾏ったところ、有意差は⾒られなかった きれいな字 雑な字 baseline条件 9.6% 10.5% color条件 9.6% 11.0% marker条件 9.1% 8.6% 39

30.

結果(文字タイプ別の不正解率) きれいな字 雑な字 baseline条件 9.6% 10.5% color条件 9.6% 11.0% marker条件 9.1% 8.6% 40

31.

考察(文字タイプの影響) • 雑な字では、marker条件の正答率がbaseline条件より⾼かった • 「⽂字が雑なほど構造理解が難しく、ハイライトが効果的に 働くのではないか」という我々の考えを⽀持する可能性 baseline条件 雑な字 marker条件 雑な字 marker条件 きれいな字 41

32.

考察(文字タイプの影響) • 雑な字の⽅が正答率の差が開き、marker条件の正答率が最も ⾼かった より雑な字を⽤いた場合、正答率の差が⼤きくなる可能性がある • 「⽂字が雑なほど構造理解が難しく、ハイライトが効果的に 働くのではないか」という我々の考えを⽀持する ⼈によって字のきれいさは異なるため、 ユーザ⾃⾝の字でハイライト効果を検証する必要がある baseline条件 雑な字 marker条件 雑な字 marker条件 きれいな字 42

33.

結果(計算ミス種類別の不正解率) 計算ミスの種類ごとに分けた各条件の不正解率 符号ミス 分配忘れ baseline条件 13.5% 6.6% color条件 13.3% 7.3% marker条件 12.4% 5.3% 全体平均 13.1% 6.4% 43

34.

結果(計算ミス種類別の不正解率) 符号ミスのある問題の⽅が不正解率が⾼く、 間違えを発⾒しにくかったことがわかる 符号ミス 分配忘れ baseline条件 13.5% 6.6% color条件 13.3% 7.3% marker条件 12.4% 5.3% 全体平均 13.1% 6.4% 44

35.

結果(計算ミス種類別の不正解率) 符号ミス 分配忘れ baseline条件 13.5% 6.6% color条件 13.3% 7.3% marker条件 12.4% 5.3% 全体平均 13.1% 6.4% 1.1% 1.3%減 45

36.

考察(計算ミス種類の違い) marker条件はどちらの計算ミスに おいてもbaseline条件より 正答率が⾼かった ハイライト上に計算ミスがある場合は、 マーカーを引くハイライトが効果的な 可能性がある ここの ⾜し算が 間違っている 過去の実験に⽤いた問題 ハイライト外の間違えに気づきにくかった 46

37.

結果(計算ミス種類の違い) 符号ミス baseline条件 13.5% 分配忘れ 6.6% 0.7%増 color条件 13.3% 7.3% marker条件 12.4% 5.3% 全体平均 13.1% 6.4% 47

38.

考察(計算ミス種類の違い) color条件では分配忘れにおける正答率は下がっていた 分配忘れにおいて括弧の⾊を変えるのは良くない可能性がある 48

39.

今後 • 分配法則以外の数式の構造理解を 必要とする問題を⽤いた実験 • ⻑く複雑な式の問題 • 同類項をまとめる計算や 移⾏の必要がある⽅程式 • より雑な字、ユーザ⾃⾝の字を⽤いた実験 • リアルタイムにハイライトした場合の 効果検証 • 本実験は⾒直し場⾯を想定するものだった 49

40.

まとめ 背景 基礎計算は⼤事なのに計算ミスをしてしまう ⽬的 数式の構造理解を促進する最適な数式ハイライト⼿法の調査 実験 クラウドソーシング上で3条件群にわけて正誤判定 結果・考察 marker条件の正答率が⾼く、解答時間が短かった 雑な字の問題は構造理解がしにくくハイライトが効果的な可能 性がある 今後 分配法則以外の数式の構造理解を必要とする問題を⽤いた実験 より雑な字を⽤いた実験 リアルタイムにハイライトしたシステムを実装し、⾒直しとの 差を調査 50