Effect of the difference in the thickness of the memory object on the ease of memory

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December 08, 20

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Effect of the difference in the thickness of the memory object on the ease of memory

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明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室

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各ページのテキスト
1.

記憶対象の文字の太さの違いが 記憶容易性に及ぼす影響 山﨑郁未(明治大学3年) 伊藤理紗 濱野花莉 中村聡史(明治大学) 掛晃幸 石丸築(株式会社ワコム)

2.

はじめに 教科書や資料、ノートで学習することが一般的 記憶効果をあげるために文字形状の 研究がされている

3.

はじめに 我々の過去の研究 • 読みにくい文字、自身に似ている文字が 記憶に残りやすい [Itoら、2020] • 男性的な手書き文字、読みにくい文字という条件が 揃うと記憶に残りやすい [山﨑ら、2020] 文字形状による記憶容易性の差が 明らかになった

4.

はじめに 重要項目が太字表記になっている

5.

関連研究:文字の太さについて • 太いフォントは目につきやすい [李ら、2017] • 細字のフォントは太いフォントよりも読みにくい [Ivanら、2016] • フォントサイズが小さいと、読みにくく 読む速さが遅くなる [阿久津ら、2010]

6.

関連研究:文字の太さについて • 太いフォントは目につきやすい [李ら、2017] • 細字のフォントは太いフォントよりも読みにくい [Ivanら、2016] • フォントサイズが小さいと、読みにくく 読む速さが遅くなる [阿久津ら、2010] このように文字の太さの変更は 様々な影響を及ぼす

7.

関連研究より • 読みにくい文字が記憶に残りやすい • 細字のフォントは読みにくい 記憶対象を読みやすい太字で表示するよりも 読みにくい細字で表示した方が覚えやすい

8.

関連研究より • 読みにくい文字が記憶に残りやすい • 細字のフォントは読みにくい 教科書の太字表記は 覚えにくい可能性 記憶対象を読みやすい太字で表示するよりも 読みにくい細字で表示した方が覚えやすい

9.

研究目的 暗記学習において記憶容易性を 向上させる文字の特徴を明らかにする 記憶対象の文字の太さを変更することで 記憶効果に差が生じるのかを検証する

10.

仮説 記憶対象を読みやすい太字で表示するよりも 読みにくい細字で表示した方が覚えやすい 記憶タスクを作成し特徴記憶実験を行う

11.

クラウドソーシングによる実験 Yahoo!クラウドソーシング • 膨大なユーザが登録されている • 簡単な作業を報酬を支払うことで 依頼することが可能 • データの信頼性が重要となる

12.

クラウドソーシングによる実験 信頼性の高いデータを得るための事前対策 • 実験協力者のスクリーニングをし 依頼対象から除く(664人) • 次に行う作業へ促すウェブシステムを開発

13.

実験:手順

14.

実験:手順

15.

クラウドソーシングによる実験 忘却フェイズで忘却しているかどうかわからない! • 過去の実験 • 本実験

16.

実験 特徴記憶実験 • 3種類の宇宙人の特徴をそれぞれ7つ 記憶してもらい、10項目を出題 • 実験参加者 300人 (男性:221人、女性:78人、不明:1名)

17.

実験 太さの条件 • 太–細条件 • 細–太条件 • 細–細条件 • 太–太条件

18.

実験 太さの条件 • 太–細条件 • 細–太条件 • 細–細条件 • 太–太条件

19.

実験 太さの条件 • 太–細条件 • 細–太条件 • 細–細条件 • 太–太条件

20.

実験 太さの条件 • 太–細条件 • 細–太条件 • 細–細条件 • 太–太条件

21.

実験:手順 ① 90秒間、画像を見て覚えてもらう ② 5分間クロスワードを解いてもらい、送信してもらう ③ テストを行う(記述式)

22.

実験:除外について 数値を除外する実験協力者(事後除外) • クロスワードを適切に行わなかった • 回答フェイズで、全ての問題にわからないと回答した →問題を見ていない可能性があるため

23.

実験:結果(文字の太さの条件) 100 (点) 90 80 70 ス 60 コ 50 ア 40 30 20 10 0 太−細条件 (N=69) 細−太条件 細−細条件 (N=61) (N=69) 太さの条件 • スコア平均はほぼ変わらない • 有意差は認められなかった 太−太条件 (N=62)

24.

実験:結果(宇宙人に着目した分析) ウベオータ(左) カガチャンム(中央) ロオキピキン(右) 正解率 0.52 0.64 0.58 N=261 • 「カガチャンム」の正解率が最も高い • 「ウベオータ」と「カガチャンム」との間にのみ 有意差が認められた • 宇宙人の難易度による差なのか、 表示位置による差であるのかがわからない

25.

実験:問題点 • 実験協力者内比較ができていない 例:太–細条件を解いた人は細–太条件を解いていない • 男性と女性の人数が等しくない • 記述式であったため、難しすぎた可能性 • 不真面目なユーザを完全に洗い出せていなかった 実験の再構成を行い実験協力者内比較実験

26.

実験協力者内比較実験 特徴記憶実験 • 3種類の宇宙人の特徴をそれぞれ7つ 記憶してもらい、12項目を出題 • 宇宙人によって太さの条件が異なる • 実験参加者 400人 (男性:200人、女性:200人)

27.

実験協力者内比較実験 太さの条件 • 太字条件 • 細字条件 • 極細条件

28.

実験協力者内比較実験 太さの条件 • 太字条件 • 細字条件 • 極細条件

29.

実験協力者内比較実験 太さの条件 • 太字条件 • 細字条件 • 極細条件

30.

実験協力者内比較実験 宇宙人によって太さの条件が異なる 記憶タスクを提示

31.

実験協力者内比較実験 比較として全て細字条件を 解いてもらった実験協力者が36人いた

32.

実験協力者内比較実験:手順 ① 90秒間、画像を見て覚えてもらう ② 5分間クロスワードを解いてもらい、送信してもらう ③ テストを行う(選択肢式) 記述式では難しすぎた可能性があるため ④ アンケートに回答してもらう • 太さの条件、それぞれの読みやすさ • 太さの条件、それぞれの記憶のしやすさ • どのように記憶しようとしたか

33.

実験協力者内比較実験:除外について 数値を除外する実験協力者(事後除外) • クロスワードを適切に行わなかった • 全ての問題にわからないと回答した • トラップ質問に適切に回答しなかった →選択肢式であるため、問題を読まずに選択する 実験協力者がいる可能性

34.

実験協力者内比較実験 トラップ質問で実際に聞いた質問 • この設問では必ず「商店街」を選択してください • この設問では必ず「3000m」を選択してください • この設問では、回答せずに (つまりどの選択肢もクリックしないで) 次の設問に進んでください。

35.

実験協力者内比較実験

36.

実験協力者内比較実験:結果 読みやすい、読みにくいと答えた人数 読みやすい 読みにくい 太字条件 292 27 細字条件 139 180 極細条件 98 221 N=319 記憶しやすい、記憶しにくいと答えた人数 記憶しやすい 記憶しにくい 太字条件 304 15 細字条件 123 196 極細条件 57 262 N=319

37.

実験協力者内比較実験:結果 文字の太さの条件ごと 100(%) 90 80 70 正 60 解 50 40 率 30 20 10 0 太字条件 (N=283) 細字条件 (N=283) 極細条件 (N=283) 太さの条件 • 正解率はほぼ変わらない • 有意差は認められなかった 全て細字条件 (N=36)

38.

実験協力者内比較実験 • どの太さでも記憶効果は変わらない • 太字条件が記憶に残りやすいと思われている 記憶しやすいと思っている太字条件は 記憶に残りやすいわけではない

39.

実験協力者内比較実験 宇宙人ごとの正解率 ウベオータ 正解率 カガチャンム 0.65 ロオキピキン 0.68 0.70 N=319 • 正解率にほぼ差がなく、先程の実験と異なる結果 • 宇宙人の難易度は変わらない →表示位置による差がある可能性

40.

実験協力者内比較実験 表示位置ごとの正解率(女性) 女性 左(ウベオータ) 中央(カガチャンム) 右(ロオキピキン) 太–細–極 0.75 0.83 0.85 太–極–細 0.64 0.66 0.58 細–太–極 0.69 0.75 0.78 細–極–太 0.72 0.78 0.82 極–太–細 0.57 0.64 0.68 極–細–太 0.53 0.60 0.68 • 右側にいくにつれて正解率が高くなる N=128 • 極細条件において右側表示での正解率がかなり高い

41.

実験協力者内比較実験 表示位置ごとの正解率(男性) 男性 左(ウベオータ) 中央(カガチャンム) 右(ロオキピキン) 太–細–極 0.73 0.69 0.71 太–極–細 0.68 0.75 0.69 細–太–極 0.71 0.63 0.65 細–極–太 0.56 0.58 0.55 極–太–細 0.56 0.67 0.70 極–細–太 0.65 0.57 0.66 • 決まった表示位置の正解率が高いわけではない • 女性と同じ傾向が見られるのは極–太–細のみ N=155

42.

考察:記憶について • どの太さでも記憶容易性に差はなかった →仮説は棄却された • 個人差がある可能性 • 記憶しやすいと思っている太字条件でも 実際の記憶効果は変わらない • 表示位置による記憶 • 女性は表示が右側であるほど記憶効果が上がる • 男性は満遍なく見ている可能性

43.

考察:クラウドソーシングについて 数値を除外した実験協力者(実験協力者内比較) 100 (%) 90 80 70 正 60 解 50 率 40 30 20 10 0 適切に実験を行った クロスワード トラップ質問 (N=319) (N=21) (N=9) 実験協力者 →正解率が低いため、除外は適切であった

44.

展望 • クラウドソーシングでの追加実験 人による得意不得意が見つかる可能性 • 他のフォント、手書き文字で 記憶対象の太さを変更した実験の実施 • 記憶に適切な文字の特徴を見つけることで 記憶容易性を高めるノートの実現を目指す

45.

展望 記憶容易性を高めるノート、その他への発展 • 個人差がある可能性 →記憶の得意不得意に合わせたノート • 女性が右側になるにつれて記憶が良くなる →覚えさせたい商品・広告を右側に配置すると 覚えてもらえる可能性

46.

まとめ • 背景 記憶を中心とした学習を支援したい • 目的 記憶対象の文字の太さを変更することで 記憶効果に差が生じるのかを検証する • 実験 クラウドソーシングで記憶対象の文字の太さを変更した タスクを用いて特徴記憶実験を実施 • 結果 記憶しやすいと思っている条件でも実際の記憶効果は変わらない