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October 11, 25
スライド概要
2025年6月28日開催、CG WORLD主催のオンラインセミナーイベント「Level Designer's Matrix」
https://cgworld.jp/special/leveldesigners/
その中で、私が登壇したセッション「“外交官”としてのレベルデザイナー」のスライドの一部公開版です。
https://cgworld.jp/special/leveldesigners/session/session-03.html
■All Time Video Game Otaku ■Game Designer / ゲーム開発の研究家 ■1991年生 ■ゲームデザイン、ゲーム史、学術研究、開発者教育 ■CEDEC2024ゲームデザイン部門企画委員 ■日本デジタルゲーム学会No.486 ■レトロコンシューマ愛好会No.998 ■ゲーム保存協会会員 ■アイコン: @nitokiyoshi
“外交官”としてのレベルデザイナー ゲーム開発現場における役割と実践テクニック Level Designers: The Diplomats of Game Development ゲームデザイナー / ゲーム開発研究家 知久 温(テトラポッド葉山)
本セッションについて • 日本のゲーム業界では、「レベルデザイナー」どうしがノウハウを共有する 機会が限られていて、業務知識はクローズドなことが多い… • 本講演では、レベルデザインという仕事の進め方について、 理論と実践を合わせて体系的に紹介します 第1版~第2版の10年で、 日本語のレベルデザイン書籍は 1つも出なかった… • 多部門との協働プロセス • プロジェクト管理のノウハウ • プレイヤーを誘導する配置テクニック …など • 「非運営型でバトル要素のある3Dアクションアドベンチャー」を想定します • ゼルダの伝説、ラストオブアス、バイオハザード、ダークソウルなど • 資料は後ほど共有します “外交官”としてのレベルデザイナー
目次 • 第一部: 「ゲームデザイン」における「レベルデザイン」の位置づけ(15分) • こちら非公開パートです。ゴメンナサイ! • 第二部:“外交官”としてのレベルデザイナー(35分) • 第三部:”プレイヤー誘導“のテクニック(20分) • まとめ・質疑応答(15分) “外交官”としてのレベルデザイナー
第一部: 「ゲームデザイン」に おける 「レベルデザイン」の 位置づけ Defining Environment Language for Video Games https://80.lv/articles/defining-environment-language-for-video-games/ より引用、トリミング
そもそも「ゲームデザイン」って? 非公開パートです。 ゴメンナサイ! 面白い! ゲームプレイを通して“面白い”と感じる仕組みや展開を設計(design)する “外交官”としてのレベルデザイナー
第二部: “外交官”としての レベルデザイナー
レベルデザインとは ゲームプレイを通して“面白い”と感じる レベル(ステージ・クエスト・パズル)の 仕組みや展開を設計(design)すること ★要素の「構成」や「配置」によって 楽しいステージをたくさんつくる • 構成(Layout) • 戦場や街などのプレイヤーが活動する空間について、 • 地形や部屋、通路や出入口の構成を設計し、 充実したゲームプレイの進行を計画、実現する • 配置(Arrangement) 引用元: https://shmuplations.com/mario64/ • 敵や障害物、アイテム、物語、背景、エフェクトなど様々な要素をステージ上に配置/実装(がっちゃんこ)し、 • プレイヤーの移動を誘導/制限したり、戦闘やパズルや演出の場面を量産したりして、 • 快適かつ驚きのある挑戦や展開をプレイヤーに提供する “外交官”としてのレベルデザイナー
“外交官”としてのレベルデザイナー 私たちは世界の構築者である。 私たちは組み立て屋である。 私たちは外交官である。 『A Practical Guide to Level Design: From Theory to Practice, Diplomacy and Production』 (英語版)2023,バウアー、ベンジャミン(p.9)。CRC Press。Kindle版 より翻訳 • ゲームシステムや敵AI、エフェクトやサウンド、物語といった様々な要素を、 ステージ(Level)というキャンバスの上に組み立て(がっちゃんこ)て、 プレイヤーが体験する世界を構築する仕事 https://amzn.to/43WmxoL • そのためには、様々なセクションやアセットについての知識と、コミュニケーション 能力が求められます(=外交官) “外交官”としてのレベルデザイナー
レベルデザイナーのミッション • 要素をつなげて、お客さんに提供する • ゲームを構成する各要素をステージ上に集約し、お客さんのゲームプレイに“直に”接する役割 • ステージを完成させる • プロジェクト全体のクリティカルパスになりがち • 要素をそろえ、ステージを完成させるための責任を持つ! • 動くプレゼンテーションとしてのレベル • パブリッシャーや決裁者がプロジェクト進捗を確認するメディア これらを実現するために、 他職種との連携が重要!! Medium『The Last of Us』のレベルデザイン より引用 https://medium.com/@endresau/the-last-of-us-level-design-and-environment-art-study-ceddaa9fcc39 “外交官”としてのレベルデザイナー
レベルデザインはゲーム開発の中心! • ゲーム開発現場における職種横断的な連携のハブ • 受け身にならず、レベルデザイナーから積極的に連携・協働していくことが重要 • 時にはプロジェクト全体の成否を左右する重要な役割を担う いろんな職種 外交官 連携 プレイヤー 提供 レベル “外交官”としてのレベルデザイナー
連携すべき職種は多岐に渡る • ディレクター・プロデューサー • ゲームデザイナー • レベルデザインチーム • アクションチーム • ナラティブチーム • プログラマー • アーティスト • オーディオ • PM • QA “外交官”としてのレベルデザイナー
連携すべき主な職種① ディレクター・プロデューサー レベルデザインチーム • ゲーム全体のコンセプト • レベル全体の進行、ペーシング設計 • コアとなる基本システム • レギュレーションの周知 • 想定プレイ時間 • ステージごとの品質平準化 • コストをかけるべきポイントはどこか • ノウハウの共有、相互フィードバック • クオリティチェック、最終承認 • 使ってよいアセットや機能のナレッジ “外交官”としてのレベルデザイナー
連携すべき主な職種② アクションチーム ナラティブチーム ★LDの役割はコアの遊びの拡張! • シナリオ、登場キャラクター • プレイヤー基本仕様(3C) • 演出作業の開始時期 • 徒歩の速度やジャンプの高さ • ストーリーやクエストの進行システム • エネミーやNPCの役割や戦闘想定 • カットシーン挿入ポイント • プレイヤーの成長システムや報酬 • 世界観やテキストの発注、監修 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携すべき主な職種③ プログラマー アーティスト・オーディオ • スクリプトの機能発注、監修 ★特に背景アーティストとは一蓮托生! • エンジンやエディターの拡張 • ステージコンセプトのすりあわせ • 処理負荷やビルド時間の相談 • コリジョン設計や段差レギュレーション • システムやギミックの実装 • 配置アセットの発注 • ナビメッシュ、コリジョン、レベルファイルなどの相談 • ブラッシュアップ工程のスケジュール調整 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携すべき主な職種④ PM QA ★レベル制作がクリティカルパスになりがち! • チェック資料の保守 • ステージ制作スケジュール • デバッグ機能のとりまわし • ステージ担当者のアサイン計画 • コリジョン、スクリプト、進行停止バグ修正 • アセットや機能の納品スケジュール • テストプレイ実施 • 外注管理 “外交官”としてのレベルデザイナー
1つのステージができるまでの連携工程 ナラティブ アクション システム・エコノミー レベル アーティスト・プログラマー コンセプトメイキング(ゲームデザイン・世界観・アート) 物語進行設計 基本ルール 3C・コンバットFIX ジムレベル作成 ルック技術検証 レベル要件定義 動機づけ設計 レベル全体設計 プロトタイピング: ゲーム全体のコアの遊びを決める ステージごとの制作 おおむね… コンセプト ⇒コア ⇒全体設計 ⇒グレーボックス ⇒ビジュアル ⇒最適化 足場や壁の制作 ドキュメント アセット発注 グレーボクシング コンセプトアート アセット制作 イテレーション デバッグ ビジュアルFIX 最適化 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:コンセプト確認 to ディレクター or 各パートリーダー ゲームデザイン全体で達成すべき目標を明確にする • 体験価値 • ザクザク爽快バトル?ドキドキ緊迫ステルス? • じっくり論理パズル?ちまちまルート計画? など • プロトタイプで検証したコアのゲームデザイン • ゲームの目的 • 3C(キャラ・カメラ・コントロール) • 戦闘のルール、勝敗判定 • 遠距離攻撃はある?状態異常はある? • クリア条件は地点到達?敵殲滅? など • 創発性(プレイの工夫の幅、拡張性) • 立体的な移動は?環境利用できる?など • 『DEATH STRANDING DIRECTOR‘S CUT』Steamページより引用 https://store.steampowered.com/app/1850570/DEAT H_STRANDING_DIRECTORS_CUT/?l=japanese 目的、勝敗判定、動機付け、創発性の 幅…) • アートや世界観、キャラクター設定 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:レベル要件定義 to アクション、ナラティブ、システム、背景、プログラマー 量産の前提となる、レベル設計の基本パターンを確立する • 技術的制約 • ナビメッシュ敷設ルール、アセット配置量、レベルファイル構成など • メトリクス、背景のレギュレーション • • • • • ジャンプ高度⇒ 壁や段差、カバーポイントの高さ キャラサイズ⇒ 道やドアの大きさ 移動速度⇒ ダンジョンの広さ、スポットの配置間隔 IKやカメラの仕様⇒ 登攀可能角度、遮蔽透過の有無 配色ルール、敵の索敵条件、落下ダメージ など 『LD - In pursuit of better level』p.8 より引用 • 物語進行のしくみ • カットシーンではキャラ操作奪う?NPC同伴ある?など • 一方通行やゲーム外境界のしくみ • 扉や段差を使う?カットシーン前後でワープする? • 透明壁を配置?すごく急な坂や川で遮る? など “外交官”としてのレベルデザイナー
メトリクスを測るジムレベルの例 example metrics map with measurements by Tyler McCombs https://x.com/TylerDanger/status/1237529028401098752 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:レベル全体設計 to ディレクター、アクション、ナラティブ、システム、背景 ゲーム全体のステージ構成を決めて、ドキュメント化 以降、ゲームデザイナー全体のバイブルとする • ステージごとのコンセプト、立ち位置 • 難易度や緊張度のペーシング • 要素解放・初回登場タイミング • シナリオプロットでの立ち位置 • アートイメージ • 報酬イメージ [CEDEC 2017]「ゼルダの伝説BotW」の完璧なゲーム世界は, 任天堂の開発スタイルが変わったからこそ生まれた https://www.4gamer.net/games/341/G034168/20170901120/ より引用 • オープンワールドの場合、報酬の価値に合わせて配置密度を設計 • 想定プレイ時間 “外交官”としてのレベルデザイナー
ビートチャートの例(ノンリニアなゲーム) 『「レベルアップ」のゲームデザイン』 p.81 を参考にしながら、筆者の実務経験に基づいて作成 Level Design Book 『風ノ旅ビト』 The https://book.leveldesignbook.com/process/preproduction/pacing#beat-sheet より引用 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:ドキュメント to ディレクター、背景、プログラマー そのステージの構成や配置要素を決める レベルデザインチームの設計図やディレクター確認資料 • ステージコンセプトの詳細 • 進行チャート 『A Practical Guide to Level Design: From Theory to Practice, Diplomacy and Production』 (位置No.4742,4816)。 Kindle版より引用 • チャレンジ、ビート、イベントの発生順 • 上面図、ダイアグラム • 部屋や道の構成 • チャレンジ、ビート、イベント、アイテム、NPC等の配置箇所 • プレイヤーの理想の想定経路(ゴールデンパス) • 感情曲線 • 必要アセット、コンセプトアートの発注 “外交官”としてのレベルデザイナー
ドキュメント例 レベルダイアグラム 『レベルデザイナーになる本』 Chapter5 を参考にしながら、筆者の実務経験に基づいて作成 上面図にビートとゴールデンパスを記載 The Level Design Book https://book.leveldesignbook.com/process/layout/criticalpath より引用、訳注追加 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:グレーボクシング to ディレクター、背景、プログラマー、QA テクスチャのない簡易的なポリゴンを配置し、 ゲームプレイのみをスピーディーにテスト。 ※ビジュアルを作りこまない勇気 • メトリクスに沿った仮の足場や壁の配置 • 仮ギミック発注(後述) • テスト用のスクリプト機能発注 Level DesignerのBrian Baker氏がXで共有している『コール オブ デューティ モ ダン・ウォーフェア』(2019)のステージ ”Docks” https://x.com/JrBakerChee/status/1182384066881916928 より引用 • ギミック発火、SE再生、チェックポイント再開など • コンバットデザイン • アクション班と相談しながら、配置による戦闘バリエーションを検討 • そもそもコアの戦闘設計ができていることが前提! • テストプレイの手配 • 初見プレイや多人数プレイが必要な場合、人員と時間の確保 • アンケート項目やテレメトリ機能の作成も必要 “外交官”としてのレベルデザイナー
発注しておくと便利な仮ギミック • メトリクスに沿ったカバーポイント、柵、坂など • 背景アセットをタイリング配置できるようにモジュール化してもらう • あるいは、動的にメッシュを作成できるツール導入を相談 • 配色ルールに従って着色できるようにする • 誘導用の仮ギミック(詳細は第二部にて) • どこにでも置ける簡易的な焚き火、投光器、ネズミ、正解SEなど • トリガーボリュームへのOverlapで発火できるようにしておくと便利 Fab「Level Design Toolkit」より引用 https://www.fab.com/ja/listings/621f915e-ee76-454a-8c05d36adbe49047 • 進行制御ギミック • 一方通行の扉や段差 • 簡易エネミー • 単純な攻撃や移動をするだけのカカシ。 HPがゼロになると消滅 Fab「Portable Spotlight | Electronics | Game Ready | PBR」より引用 https://www.fab.com/ja/listings/ 6e470b61-7cf3-4673-8dd21aee61cf699a “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:ステージ制作のPM to ディレクター、背景、PM、QA ドキュメント⇒グレーボクシング⇒ビジュアル⇒デバッグ⇒最適化 このスケジュールがプロジェクト全体のクリティカルパスになる可能性が高い ※この工程が遅れると、プロジェクト全体が遅延する! • PMと相談しながら、以下のスケジュールを握ってガントチャート管理 • ドキュメント承認期限 • シーケンス接続完了日(戦闘やバランスは気にしない) • レベル以外のゲームデザイン要素の納品日 • エネミー、カットシーン、ギミック など • 戦闘やバランスのFIX日 • 背景アセット納品日 • ビジュアルFIX予定日(背景、ライティング) • 最終デバッグや最適化期間から逆算 • 期限を守るための人員アサイン・外注計画 “外交官”としてのレベルデザイナー
レベルデザインの前工程リスク レベルデザインだけで面白くしようとしない! あくまでコアの遊びを拡張・展開・量産するのがレベルデザインの役割 • 基本ルール • 3C(キャラ・カメラ・コントロール) • コンバット ↑これらが決まらないままレベルデザイン量産が先行するとヤバい 前提が覆れば大規模な手戻りが発生する可能性が高い ⇒プロジェクト全体において、 いつどのようにレベルデザインするのかはとても重要! “外交官”としてのレベルデザイナー
レベルデザインの後工程リスク レベルデザインのイテレーションが完了し、コリジョンや地形がFIXしないと、 以下が開始できず遅延する • 背景やライティングのビジュアル調整 • グレーボックスにテクスチャを貼るなど(メッシング) • 地形を変えてしまうと、ビジュアル調整しなおし • カットシーン • 背景やライトの影響を受ける • 地形が変わると絵作りが変化してしまう危険がある • QA • コリジョンチェックを開始できない • コリジョンを変えてしまうと、そのステージは最初からチェックし直し “外交官”としてのレベルデザイナー
特殊な連携:ボス戦・チュートリアル • ボス戦 • 特殊なエネミーやステージ、システムを採用することが多い • レベル、コンバット、システム、シナリオ、アートが綿密に連携して作成する • 通常のステージ作成とは工程が異なることがあるので、しっかりすりあわせたい • チュートリアル • プレイヤー操作やHUDを一部マスクするなど、特殊なスクリプトやギミックが必 要になることが多い • 専用ステージ上で何をどのように学習させるか、アクションやシステムと綿密に 相談する • 「頭ごなしに説明する」のではなく「このゲームの面白さを体験してもらう」 • テキストで「〇〇しろ」と命令するのではなく、自然に「〇〇したくなる」 「〇〇せざるを得ない」状況をつくる。成功したら明確に褒める • チューリアルステージは、要素が出揃うゲーム開発終盤に制作することが多い • 制作期間が短くなるため、スピーディかつ正確な連携と作業が求められ る Astro Bot Walkthrough & Guides Wiki より引用 https://game8.co/games/Astro-Bot/archives/471753 Splatoon – Tutorial より抜粋 https://www.youtube.com/watch?v=0cie8QxM3c8 “外交官”としてのレベルデザイナー
連携ポイント:その他もろもろ • スクリプト実装、フラグやセーブの仕様 • 背景アーティストとの連携、モジュールアセットの発注 • ライティングやエフェクトのレギュレーション • クエストのストーリーテリング、キャラ設計、世界観ルール • 簡易カットシーン制作や挿入ルール • ゲーム全体の色ルール、形状ルール、物理ルール • テストプレイの手配、分析 • デバッグ機能の発注(コリジョン可視化、無敵、敵情報表示など) • ステージ品質の平準化、ノウハウ共有 • QA資料の保守 …etc “外交官”としてのレベルデザイナー
必要なドメイン知識 • ゲームデザイン・レベルデザイン • 建築や心理学、生態学、カルチャー雑学、レベルエディタなど含む • プロジェクトマネジメント • カメラ • シナリオ理論 • 処理負荷、描画負荷 • ゲームエンジン、データベース • ナビメッシュ・スパーシャルAI • コリジョン、基本的な物理挙動 • 3Dオーディオ “外交官”としてのレベルデザイナー
第三部: ”プレイヤー誘導” のテクニック
”プレイヤー誘導”のテクニック • レベルデザインの主な役割の一つであ る”プレイヤー誘導”について、欧米で は様々なテクニックが確立され、活発に 議論が交わされている • 具体的な誘導テクニックをいくつか紹介 • ”外交官”としてどのように誘導テクニック を扱っていくのかについても説明。 パンくずをたどる:レベルデザインの基本テクニック より引用 https://medium.com/my-games-company/follow-the-breadcrumbs-the-basic-techniquesof-level-design-754820499a1b “外交官”としてのレベルデザイナー
レベルデザインの5大役割 課題提示(チャレンジ) 学習 誘導 世界観への没入 感情の起伏(ペーシング) “外交官”としてのレベルデザイナー
誘導ができていないと何がまずいか • 「前に進める推進力」がない • 迷子になる原因 • 目標を見失う • ⇒ 自律性・有能感の低下 • ⇒ 離脱要因に • コンセプトに関係のない情報がノイズとなる • 認知負荷が上がり、本来見せたかった情報が届かない • ペーシングの乱れ • 想定外のルートで迷子になり、体験を損なう “外交官”としてのレベルデザイナー
誘導設計のプロセス • まずはゴールデンパスを設計 • リニアな(一本道の)ゲームにおいて、 想定される理想的な最短動線のこと • ゴールデンパスにプレイヤーが導かれるように、誘導物を配置 • 色のついたグレーボックスや、 誘導用の仮ギミックなどを配置 • アーティストのビジュアル調整のタイミングで、 本番アセットに置き換え • アセット発注時の要件や、調整作業のスケジューリングは しっかりすり合わせる The Level Design Book より引用、訳注追加 https://book.leveldesignbook.com/process/layout/criticalpath • レベルデザイナーが 誘導設計をコントロールできるように準備 • 誘導物アセットの要件はしっかりすりあわせる • アクションやエコノミーとも握っておく The Level Design in Uncharted 4 より引用 https://medium.com/@endresau/the-level-design-in-uncharted-4-051a26cffb32 “外交官”としてのレベルデザイナー
視覚的誘導テクニック(直感的) 以下を満たすため、ギミックのルールをアーティストとすりあわせる • 色、光、動きによる誘目 • 暖色、高彩度、背景とのコントラストに目が行く習性 • 一貫した配色ルールを設計しておく • 明るいところの安心感 • 動いているものに目が行く習性 • パンくず (Breadcrumbs) 『魂斗羅ローグコープス』チュートリアルより • どこかへ導くために道中に配置された、目を引く小さなオブジェクト • コイン、石畳、壊れた柵、たいまつ、 横切るネズミ、黄色いペンキが付いた段差…etc. • アフォーダンス • • • • 形状を見て機能を想起させる ただの坂より、手すり付きの階段の方が登りたくなる ただの入口より、門や扉やゲートがある方がくぐりたくなる ↑これらが機能するようにアクション設計しておく 『LD - In pursuit of better levels』p38より引用 アンチャーテッドシリーズで、登れる箇所はしばしば白かったり強調されていたりする “外交官”としてのレベルデザイナー
視覚情報の認知負荷を制限する 視覚情報を与えても、 その情報の認知負荷が高いとストレスに ※物量、表示時間、他情報のノイズなどがファクター • フィールド三角形の法則 [CEDEC 2017]「ゼルダの伝説BotW」の完璧なゲーム世界は, 任天堂の開発スタイルが変わったからこそ生まれた https://www.4gamer.net/games/341/G034168/20170901120/ より引用 (by ゼルダの伝説BotW) • 一度にたくさんの情報を出さず、認知できる範囲の物量で見せる • 山や壁の裏に隠しておくなど • ヴァンテージポイントから事前観察 • コンバットエリアに眺めの良いポイント(VP)を用意 • 戦闘前にエネミーの位置や行動を観察させる機会を設ける • 行き当たりばったりの機転を利かすゲームから、 綿密に計画を立てて遂行するゲームへと変わる In the Batman: Arkham series 『LD - In pursuit of better levels』 p31 より引用 “外交官”としてのレベルデザイナー
心理的誘導テクニック(意識的)① 以下を満たすため、ギミックのルールや経済設計をすりあわせる • 報酬による動機付け • オープンワールドやハクスラで有効 • POI(関心地点)に、プレイヤーの「引力」を持たせる • あのランドマークに向かえば何か報酬がある!という学習 [CEDEC 2017]「ゼルダの伝説BotW」の完璧なゲーム世界は, 任天堂の開発スタイルが変わったからこそ生まれた https://www.4gamer.net/games/341/G034168/20170901120/ より引用 “外交官”としてのレベルデザイナー
心理的誘導テクニック(意識的)② 以下を満たすため、ギミックのルールや経済設計をすりあわせる • 好奇心と「じらし」の技法 • メトロイドヴァニアや3Dプラットフォーマーなどで有効 • 鍵入手より先に扉を見せよう! • 扉を見つけたとき「どうしたら開けるのだろう?」と 自発的に考える • 鍵を見つけたとき「もしかしたこの前見た扉の鍵か?」 と自発的に考える • 先に鍵を入手してしまうと、発見や気付きの喜びが半減 • 手段(鍵)より先に目標(扉)を提示する “外交官”としてのレベルデザイナー
誘導効果の検証方法 • プレイの様子を録画 • 泥臭いが確実な方法 • テスター人数やプレイ時間が長くなると、確認が大変 あっ、右に何か見 えた!焚き火だ。 何かありそうだが 今は奥の建物が気 になるので後回し • 思考発話法 • プレイ中に思ったことを全て口に出す方法 • 録音してAIに整理してもらう • 発話する側に少しコツが必要 • ヒートマップ • プレイヤーの移動経路を記録し、可視化するツール • よく通る場所と、ほとんど通らない場所が明確になる • 特にマルチプレイやオープンワールドで有効 ゲームレベル分析のためのヒートマップガイド より引用 https://medium.com/@dariarodionovano/aheatmap-guide-for-game-level-analysis68cb6a7bcb2b “外交官”としてのレベルデザイナー
誘導テクニックがまとまっているサイト • パンくずをたどる:レベルデザインの基本テクニック • https://medium.com/my-games-company/follow-the-breadcrumbs-the-basic-techniques-of-level-design754820499a1b • ゲームレベルデザイン:プレイヤーを導く35の方法 • https://jacobryanwheeler.medium.com/game-level-design-35-ways-to-guide-the-player-4bbc324204f4 • オープンワールドマップでのガイダンスと方向付け • https://iuliu-cosmin-oniscu.medium.com/guidance-and-orientation-in-open-world-maps-c7ff78a12a05 • 『アラン ウェイク』に見る、レベルデザインでプレイヤーを楽々と導く7つの方法 • https://www.worldofleveldesign.com/categories/level_design_tutorials/alan-wake-guide-the-player.php • レベルデザインのケーススタディ - 『ゴッド・オブ・ウォー』の最初のレベルを再現 • https://www.sukhrajjohal.com/post/level-design-study-god-of-war • The Level Design Book – Wayfinding • https://book.leveldesignbook.com/process/blockout/wayfinding • LD - In pursuit of better levels - Navigation & distinction • https://docs.google.com/document/d/1fAlf2MwEFTwePwzbP3try1H0aYa9kpVBHPBkyIqcaY/edit?tab=t.0#heading=h.35edjbm7shmt “外交官”としてのレベルデザイナー
まとめ
まとめ • レベルデザインとは、コアの ゲームプレイを展開・拡張するもの • コンセプトの確認やコンバットのFIXが大事 • レベルデザイナーは積極的にゲーム 開発現場の外交官として動くべき • 様々なゲーム要素をステージ上に がっちゃんこする役割だから • ステージ制作の完了が、プロジェクト全体スケ ジュールのクリティカルパスになりがちだから • 誘導デザインを活用にするためにも 他職種としっかり連携しよう “外交官”としてのレベルデザイナー
参考文献 ◆ Webサイト • • The Level Design Book • https://book.leveldesignbook.com/ • https://docs.google.com/document/d/1fAlf2MwEFTwe PwzbP3try1H0aYa9kpVBHPBkyIq-caY/edit 和訳:https://my-syumigame.hatenablog.com/entry/2023/10/21/050750 • LD - In pursuit of better levels • • ◆ 書籍 The Visual Guide to Multiplayer Level Design • https://www.gamedeveloper.com/design/the-visualguide-to-multiplayer-level-design • • ◆ 動画 • • • • Coloso『レベルデザインの基礎から無敵のポートフォリ オの完成まで』 • https://coloso.jp/products/leveldesigner-leeyongtae-jp • https://www.youtube.com/@GMTK • https://www.youtube.com/@LevelDesignLobby • https://www.youtube.com/@timdoesleveldesign Game Maker's Toolkit • レベルデザインの教科書 (Christopher W. Totten, 本山 博文訳,2025) • https://amzn.to/3T1oslJ • https://amzn.to/44lFEYq • https://amzn.to/4kWCJfM • https://amzn.to/4lp65TX A Practical Guide to Level Design: From Theory to Practice, Diplomacy and Production (Ben Bauer,2023) Video Game Level Design: How to Create Video Games with Emotion, Interaction, and Engagement (Michael Salmond,2021) Level Design: Concept, Theory, and Practice (Rudolf Kremers,2009) Level Design Lobby timdoesleveldesign “外交官”としてのレベルデザイナー
私の過去講演もご参考ください https://www.docswell.com/s/toylogic/ZDXJ85-2022-0825-145637 https://www.docswell.com/s/my_syumi_game/54Q778GameDesignAI#p1 https://www.docswell.com/s/my_syumi_game/ZR22VECEDEC2024_LevelDesignKeywords https://www.docswell.com/s/my_syumi_game/KV1N7JGDC2025_GameDesign/1 “外交官”としてのレベルデザイナー
最後に • 日本のゲームプランナーの在り方は 海外のGame Designerとも異なり、 会社ごとのカルチャー依存も強いのが現状です • 私もまだ知らないことばかりです。 皆さまのご経験やノウハウもぜひ共有いただけますと幸いです! • ぜひ一緒に日本のゲームデザイン・レベルデザイン業界を 盛り上げていきましょう! “外交官”としてのレベルデザイナー
ご清聴 ありがとう ございました