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April 08, 24
スライド概要
違法薬物の使用に医療者が気づいたときの対応についてYouTubeで解説するのに使用した資料です。レクチャーなどでの使用OKです
精神科医、大学教員かつYouTuberです。資料は講義での使用OKです。 私がYouTubeで使用している資料につき公開をご希望の方がいたら、該当する動画のコメント欄でお知らせください。
やってみたくなる アディクション 診療・支援ガイド 編集:松本俊彦、佐久間寛之、蒲生裕司 文光堂
患者が 違法薬物を 使用していたら 通報すべき?
医療者の迷い
医療者の 守秘義務 通報しなかったからといって、犯罪を 隠匿したことで訴追されることはない
最高裁判例(最決平成17年7月19日刑集59巻6号600頁)によれば 犯罪に当たる行為が存在す る以上、守秘義務を放棄 する「正当な理由」があ ると捉えることも可能
警察に通報するか否かは 医療者の判断に委ねられ ている
警察への通報を 医療者に義務付ける 法令は存在しない
精神診療 プラチナ マニュアル
公務員 または、みなし公務員 だったら?
刑事訴訟法239条2項の公務員の犯罪告発義務 公的医療機関に勤務し、 犯罪告発義務を負う 公務員(または、みなし公 務員)だったら?
公務員の犯罪告発義務は すべての公務員 すべての状況 に対して無条件に課せられて ではない いるもの
職務上、正当と考えられる理 由があれば 守秘義務を優先さ せることは容認される
医療を本務とする公務員が 治療上の必要性から 患者の犯罪行為を告発しない のは正当な行為とみなしうる 薬物依存症患者の診療では、薬物使用自体が病気の症 状であって、再使用のたびに警察通報していたら診療にな らない
精神診療 プラチナ マニュアル
警察通報を 考慮すべき 場合は?
医療者には 治療環境を安全に保ち 他の患者の「治療を受 ける権利」を守る 責務もある
状況によっては、公益性の 強い要請があるとみなし、 医療者が守秘義務を放棄 する正当な理由になりうる
他の患者への違法薬物 の譲渡や販売、使用の 勧誘は治療環境の安全 性を脅かす場合
その患者が非常に興奮 し、患者自身や他の患 者、あるいは医療スタッ フに危害を及ぼすおそ れが切迫している場合
精神診療 プラチナ マニュアル
覚醒剤取締法ではなく 麻薬および向精神薬取り締 まり法:麻向法 という法律もある
麻向法 医師は診察の結果受診者 が麻薬中毒者であると診 断したときは、すみやかに都 道府県知事に届け出な ければならない
ここでいう「麻薬」は… 麻向法:モルヒネ、ヘロイン、 コカイン、MDMAなど 大麻取締法:大麻 あへん法:あへん
医師が麻薬中毒者を 届け出ると、2つのこと が行われる
麻向法による 措置入院 の要否判断を受ける 精神保健福祉法の措置入院とは別
環境浄化 薬物入手ルートを摘発し、患 者が薬物を入手できない環 境をつくる
そもそも 麻薬中毒者 という言葉
本来の用語の使い方からすれば 中毒:物質の悪影響が 出ている状態 依存:物質を止められ ずにいる状態
依存症の人のことを 中毒者と呼んじゃうぐ らい古い法
麻向法の届け出の制度 には2つの問題
麻向法の制度による 監督期間が十数年~ 数十年とすごく長期 保護観察などの刑事処分と比べてはる かに長期で、常軌を逸した人権侵害
麻向法の 中毒者=依存症患者 の定義は曖昧 →医師の判断しだい
麻向法の対象となる薬物に ついても、臨床的な意味を勘 案して判断することになる
やってみたくなる アディクション 診療・支援ガイド 編集:松本俊彦、佐久間寛之、蒲生裕司 文光堂