No3_Tactile_Thin and Flexible

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June 20, 23

スライド概要

1980年ごろから感圧素材として感圧導電ゴムを利用してきた。この素材は薄く柔らかく、抵抗値変化のため検出回路も非常に簡便であり、またハサミ切断できるなど加工が簡単、金槌でたたいても壊れず衝撃を緩和してくれるなど様々な利点がある。
但し、粘弾性のあるゴム素材のためヒステリシス特性があり定量的な測定には向かない欠点があった。そこで、新たな感圧素子を作ろうとした。
このとき素材開発はハードルが高いため、機構を工夫することで感圧性を持たせることに決めた。そこで試作したのが今回のものである。

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これまでに主に,ロボティクス・メカトロニクス研究,特にロボットハンドと触覚センシングの研究を行ってきました。現在は、機械系の学部生向けのメカトロニクス講義資料、そしてロボティクス研究者向けの触覚技術のサーベイ資料の作成などをしております。最近自作センサの解説を動画で始めました。https://www.youtube.com/user/shimojoster 電気通信大学 名誉教授 

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

私の好きな研究成果 開発センサ反省点その3 薄型フレキシブル位置センサ 新たな感圧素材を求めて 下 条 誠 電気通信大学名誉教授 https://researchmap.jp/read0072509/ The University of Electro-Communications Department of Mechanical Engineering and Intelligent System

2.

背景:感圧素子を作りたい 触覚センサの要である感圧素子を作りたい。 構造的な工夫によって感圧機構が作れる・・のでは? 空間的に感度分布を変えられる・・はず すると、おもしろい空間演算ができる・・はず と考えた。 2

3.

発想の原点:感圧機構 電気抵抗 ∝ 3 接触面積 圧力が加わるとフィルムが接触、電気抵抗が低下する 圧力 h d Spacer 面状抵抗体 Spacer 接触面 a 導電性薄膜塗布 フィルム 窓とスペーサ構造:接触面積が圧力によって変化する、 パラメータを変えることで圧力感度も可変にできるのでは? 下条誠、石川正俊、薄型フレキシブル位置覚センサとその応用、 計測自動制御学会論文集、 Vol.21、 No.11、 pp.1250-1252、 1985

4.

モデル化と解析(その1) 電気抵抗 接触面積 P h d ∝ 4 Spacer Spacer 2b 2a 接触面 面状抵抗体 r:円の中心からの半径、 w:膜のたわみ、 E:縦弾性係数、 ν:ポアソン比 1. この図は圧力Pのため面状抵抗体の直径2bの部分が下面に接触した 状態を表わしている 2. ここでウィンドの形は直径2aの円形、その上にかかる圧力Pは均一、 面状抵抗体の周囲は固定されているとした 3. 固定条件は、実際のセンサでは多数のウィンドが並びその対称性か ら仮定できる スペーサのウィンド径と圧力感度の関係を以下の条件の下で計算した。図に計算モデルをしめす。

5.

モデル化と解析(その1‘) 1. この図は圧力Pのため面状抵抗体の直 径2bの部分が下面に接触した状態を 表わしている 2. ここでウィンドの形は直径2aの円形、 その上にかかる圧力Pは均一、面状抵 抗体の周囲は固定されているとした 3. 固定条件は、実際のセンサでは多数 のウィンドが並びその対称性から仮 定できる 対称性 解析モデル 5

6.

モデル化と解析(その2) 6 薄膜モデルでの軸対称変形の解析を行う注 ⚫ 膜の軸対称曲げについての微分方程式 1𝑑 𝑑 𝑑 𝑟 𝑟 𝑟 𝑑𝑟 𝑑𝑟 𝑑𝑟 𝑑𝑤 𝑟 𝑑𝑟 𝑃 =0 𝐷 ・・・(1) r:円の中心からの半径 w:膜のたわみ E:縦弾性係数 n:ポアソン比 𝐷 = 𝐸ℎ3 Τ12 1 − 𝜈 2 ⚫ 境界条件(BC) 𝑤 𝑟=𝑎 𝑑𝑤 = 𝑑𝑟 𝑟=𝑎 𝑑𝑤 = 𝑑𝑟 =0 ・・・(2) 𝑟=𝑏 注)中原: 材科力学(下巻), 133/154, 養賢堂(1960)

7.

モデル化と解析(その3) 7 微分方程式を、境界条件の下で解くと次の解が得られる 𝑤 𝑟=𝑏 𝑃𝑎4 𝑏4 𝑏2 𝑏2 𝑏 𝑏2 𝑏2 𝑏 = 1 + 3 4 − 4 2 + 4 2 𝑙𝑜𝑔 + 16 2 2 𝑙𝑜𝑔 64𝐷 𝑎 𝑎 𝑎 𝑎 𝑎 𝑎 − 𝑏2 𝑎 2 ・・・(3) そしてこの解から、面状抵抗体(上面)が接触する最小圧力をP0とすると次のようになる 64𝐷𝑑 𝑃0 = 𝑎4 ・・・(4) ここで面状抵抗体が接触したときのコンダクタンスGについて考えてみる。 接触コンダクタンスGは接触面積に比例するとし、 G0をその最大値、 Gを圧力Pにお ける接触コンダクタンスとすると次式のように表わせる 𝐺 𝜋𝑏2 = =𝜆 𝐺0 𝜋𝑎2 ・・・(5) よってPとGの関係は次式のように表わせる 𝑃 𝜆 2 = 1 + 3𝜆 − 4𝜆 + 2𝜆 log 𝜆 + 4𝜆 log 𝜆 𝑃0 1−𝜆 2 ・・・(6)

8.

実験(試作したCoPセンサ) 電極 ⚫ センサは、スペーサを面状抵抗 体で挟んだ3層構造である ⚫ 面状抵抗はテフロンフィルム (厚さ75μm) に炭素粒子を塗布 したもの。 ⚫ スペーサはトレーシング紙(厚 さ45μm) に正方形のウインド を作ったもの 電極 CoPセンサ原理 https://www.youtube.com/watch?v=MFAem79rF1E 8

9.

実験(感圧特性) 9 次の2つの感圧特性実験を行った 1. 圧力PとコンダクタンスGの関係 2. ウインド径と圧力感度 1. 面状抵抗体:テフロンフィルム(厚 さ75μm) に炭素粒子を塗布 2. スペーサ:トレーシング紙(厚さ 45μm) にウインドを形成 3. 電極:シルク印刷した銀ペースト 試作センサは測定面が44mmの正方形、 ウインドは4.4mmの正方形である 試作したセンサ <これは内部構造が分かるように透明な面状抵抗体(酸化インジウム膜?)を使って試作したもの>

10.

圧力PとコンダクタンスGの関係 (d=45μm 2a=6mm) 解析では円形、実験では正方形の違いがある 10

11.

ウインド径と圧力感度 解析では円形、実験では正方形の違いがある 11

12.

実験結果(感圧特性) ① 圧力PとコンダクタンスGの関係はon-off型に近い特性を示し、 抵抗値が変化する範囲は意外と狭い ② on-offとなる圧力値のヒステリシス特性は±3%以内であった ③ ウインド径と圧力感度は、ウインドウ径の増加に従い、感度が 増加することが分かる ④ この結果は素材の、ウインド径、素材特性、厚み等がパラメー ターとなるため、必要とする圧力感度のセンサを作ることもあ る程度は可能であろう 12

13.

計測実験(CoPセンサ位置出力) 13 試作センサは接触物体の面心を検出する CoPセンサ位置出力 移動物体でのCoPセンサ位置出力 x軸およびy軸方向にプルーブを押し当てたとき の位置出力を示す。位置誤差は±1%、なお応答 周波数は1.5Khzである 15×10mm2のゴム体を約10Nの力で押付けながら移 動させたときの軌跡を示す

14.

(あとがき) 1980年ごろから感圧素材として感圧導電ゴムを利用してきた。この素材は 薄く柔らかく、抵抗値変化のため検出回路も非常に簡便であり、またハサ ミ切断できるなど加工が簡単、金槌でたたいても壊れず衝撃を緩和してく れるなど様々な利点がある。 但し、粘弾性のあるゴム素材のためヒステリシス特性があり定量的な測定 には向かない欠点があった。そこで、新たな感圧素子を作ろうとした。 このとき素材開発はハードルが高いため、機構を工夫することで感圧性を 持たせることに決めた。そこで試作したのが今回のものである。結果とし て、感圧特性はon-off特性のようなものとなり狙い通りには行かなかった。 結果として成果は不十分なものであったが、研究としては楽しいもので あった。材料力学(大学院?)の練習問題程度の理論で解析して論文がで きるんだなと認識した研究であった。 14