客員起業家(EIR)制度の活用に関するガイダンス

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June 13, 23

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下記のnote記事にて紹介しています。
・【実践】投資先不足に悩むVC必見、『客員起業家(EIR)制度』の活用ガイダンス(https://flag.jissui.jp/n/n6760906fa4d9
・【注目】企業の事業開発をドライブさせる『客員起業家(EIR)制度』の活用ガイダンス(https://flag.jissui.jp/n/n1118ee8b4743

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各ページのテキスト
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客 員 起 業 家 ( EIR) 制 度 E ntrepreneurs I n R esidence の活用に関するガイダンス 起業を志す個人と企業を繋げ、 更なるイノベーション創出へ Ver. 2023.6 − EIRとは − EIRの効果的な 運用のポイント − 制度設置者の 取組事例 発行元:経済産業省、委託:JISSUI、NRI

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目次 ▍本章 本ガイダンス策定の背景 P2 EIR(客員起業家)制度とは P3 EIR制度の活用方法 P4 EIR制度設置のプロセス・留意点 P7 ▍事例集 ジャフコグループ株式会社 P9 株式会社デライト・ベンチャーズ P11 株式会社ガイアックス P13 Studio Entre株式会社 P15 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 P17 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 P19 株式会社みらい創造機構 P21 南海電気鉄道株式会社 P23 三菱地所株式会社 P25 1

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本ガイダンス策定の背景 スタートアップ育成5か年計画の策定 ⚫ 政府は、2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、戦後の創業期に 次ぐ、第二の創業ブームの実現を目指しています。 ⚫ 同計画において、3本柱の1つに「スタートアップ創出に向けた人材・ネットワーク の構築」が位置付けられています。人材育成、起業家教育、支援組織の整備を通じて、 より多くのスタートアップ創出の後押しが求められています。 スタートアップ創出のボトルネック ⚫ 日本の開業率は、諸外国と比べて低い状況。その原因は様々挙げられているが、中で も、「新しいビジネスを始めるために必要な知識、能力、経験を持っていると思う人 の割合」は一貫して低い状況です。 新しいビジネスを始めるために必要な 知識、能力、経験を持っていると思う割合 開業率の国際比較*1 16 75 英国 フランス 米国 ドイツ 日本 12 8 米国 ドイツ 50 英国 フランス 25 4 日本 0 0 2016 2017 2018 2019 2020 *1 2015 2016 2017 2018 2019 : 国によって統計の性質が異なるため、単純に比較することはできない。 出所: 左図)日本:厚生労働省「雇用保険事業年報」、米国:United States Census Bureau 「The Business Dynamics Statistics」、英国・ドイ ツ・フランス:Eurostat. (右図)平成31年度グローバル・スタートアップ・エコシステム連携強化事業「起業家精神に関する調査報告書」 EIR制度を活用した、起業促進の可能性 ⚫ EIR(Entrepreneurs In Residence:客員起業家)制度とは、海外のVC(ベンチャー キャピタル)を中心に活用が進む、スタートアップ創出の新たな手法です。 ⚫ 起業を目指す人材が、VC・事業会社等に一定期間所属し、所属組織のネットワークを 活用しながら起業を目指します。 ⚫ 海外では起業経験者が採用される事例が多いとされていますが、①創業前からキャピ タリスト等と事業設計の相談ができる、②EIR活動期間中は起業準備に専念できる、 といった観点から、これから起業を目指す個人にとっても、有益な起業の形とも考え られます。 前職での業務 一般的な起業 EIRでの起業 起業準備 前職での業務 EIR活動(起業準備) 2 起業 起業

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EIR(客員起業家)制度とは EIR制度の基本的なスキーム ⚫ 起業を目指す人材が、VC・事業会社等に一定期間所属し、VC等のネットワークを活 用しながら起業を目指します。起業時には、所属組織から出資を受けるケースが一般 的です。 VC・事業会社等 出資 起業を 目指す人材 EIR 業務委託 契約等 スタートアップ 創業 EIR制度の活用類型 ⚫ EIR制度は、活用される組織によって、その期待される役割は大きく異なります。 ⚫ 本ガイダンスでは、採用されたEIRに期待される役割に応じて、AからDまでの4つ の類型に分類して、それぞれの特徴や事例を紹介します。 ▍ VCにおける活用類型 既存企業への投資だけでなく、これから起業を目指す人材の 掘り起こしにも注力し、確度の高い投資案件を育てたい。 投資案件 A. 組成型 「スタートアップスタジオ」のアイデアを事業化するにあた り、創業者候補となる人材を採用したい。 スタートアップ B. スタジオ型 大学や事業会社に眠る技術シーズと経営人材を結び、投資案 件を育てたい。 技術シーズ C. 活用型 ▍ 事業会社における活用類型 社内に眠る技術シーズと外部の経営人材を結び、技術シーズ の有効活用・事業化を促したい。 技術シーズ C. 活用型 社内起業も含めた新事業開発に向け、社内の人材に限らず、 社外からも起業家候補を探したい。 D.新事業創出型 3

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EIR制度の活用方法(1) A.投資案件組成型 導入主体:VC (参考)事業会社の新事業創出・スタートアップ連携の在り方 投資確度の高い ▍活動の概要 案件を育てる 主な 人材像 ⚫ 初期 中期 20-80時間/月 (2~5カ月程度) 主にフルコミット (6カ月程度) • 課題仮説の構築 • 収益モデル検証 • MVPの開発検証 • チーム組成 事業推進力を有し、PL管理や組織運営 の経験を有する人材 (起業準備領域の専門性を有すること が望ましい) 主な 契約形態 ⚫ 主な 人材像 ⚫ フルコミット (6カ月程度) • 会社設立 • 資金調達、採用 業務委託契約(投資可能性が高まった 中期フェーズで雇用契約の選択肢も存 在) B.スタートアップスタジオ型 スタジオの構想を 事業化して起業 後期 導入主体:VC(スタジオ運営企業) ▍活動の概要 初期 中期 20-80時間/月 (2~5カ月程度) 主にフルコミット (6カ月程度) • 事業構想の理解 • 課題仮説の構築 • 収益モデル検証 • MVPの開発検証 • チーム組成 事業推進力を有し、PL管理や組織運営 の経験を有する人材 (起業準備領域の専門性はスタジオが フォローすることも可能) 主な 契約形態 ⚫ 後期 フルコミット (6カ月程度) • 会社設立 • 資金調達、採用 業務委託契約(投資可能性が高まった 中期フェーズで雇用契約の選択肢も存 在) (参考)スタートアップスタジオとは ⚫ スタートアップスタジオとは、「同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織」(※1)です。 ⚫ 開発・デザイン等、事業アイデアを形にする機能・人材が整備された組織で、事業仮説を連続 的に構築・検証します。 ⚫ 検証が進む事業仮説の中で、事業化を検討する案件が出てきた際には、その創業者候補となる 事業推進人材をEIRとして採用し、事業化を進めます。 投資案件組成型 スタートアップ スタジオ型 EIR自身の事業構想 スタジオ内の 事業構想 事業化の検討 創業者候補探索開始 EIR採用 起業 EIR採用 起業 (※1)アッティラ・シゲティ,2017.『STARTUP STUDIO 連続してイノベーションを生む「ハリウッド型」プロ集団』 日経BP社. 4

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EIR制度の活用方法(2) C.技術シーズ活用型 大学・事業会社の 技術シーズ事業化 ⚫ 主な 人材像 導入主体:VC、事業会社 ▍活動の概要 初期 中期 後期 フルコミット (6カ月程度) フルコミット (6カ月程度) フルコミット (6カ月程度) • 投資実務の経験 • 技術理解の拡充 • 技術シーズ探索 • 事業仮説の構築 • 会社設立 • 資金調達、採用 技術に関心を持つ、事業開発/投資経 験者 主な 契約形態 ⚫ 有期雇用契約(初中期にはキャピタリ ストとしての活躍が期待) ⚫ 業務委託契約(研究者とのコネクショ ンが強く期待される人材) 技術シーズとEIRのマッチング方法 ⚫ 技術シーズ(研究者)との繋がりのアレンジ主体は、導入企業によって様々考えられる。 VCが研究者を紹介 独自の 繋がり VC 採 用 事業会社が研究者を紹介 研究者 事業会社 社内の 繋がり 採 用 事業化の 検討 EIRが研究者を紹介 研究者 VC 採 用 事業化の 検討 事業化の 検討 研究者 独自の 繋がり (参考)大学における経営人材不足 ⚫ 大きく成長する大学発スタートアップにとって、企業出身の経営者が重要です。一方、経営人 材を外部から採用するルートは限定的な状況です。EIR制度の活用により、学内のシーズと経 営人材をつなぐことで、大きく成長する大学発スタートアップの創出が期待されます。 大学発スタートアップのCEOの経歴 その他 10% 学生・ 教職員 44% 企業 出身 7% 20% 73% 46% 全体 大学発スタートアップのCEO獲得ルート 知人友人 関係 企業出身の CEOの確保が 成長に重要 大学・VC等 外部からの 紹介 IPO経験 71% 29% 外部からの 経営人材獲得 は限定的 出所:経済産業省「令和2年度大学発ベンチャー実態等調査」 5

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EIR制度の活用方法(3) D.新事業創出型 事業会社内で 社内起業含め検討 主な 人材像 導入主体:事業会社 ▍活動の概要 初期 中期 20-80時間/月 (2~5カ月程度) 主にフルコミット (6カ月程度) • 課題仮説の構築 • 収益モデル検証 • MVPの開発検証 • チーム組成 ⚫ 事業推進力を有し、PL管理や組織運営の経験を 有する人材 ⚫ 事業会社リソースを活用した事業案を有する人材 ⚫ 起業のみではなく、企業内起業も選択肢に残した い人材 主な 契約形態 後期 フルコミット (6カ月程度) • 会社/事業部設立 • 資金調達、採用 ⚫ 業務委託契約(投資が行わ れる後期フェーズで雇用契 約(転職)) (参考)事業会社の新事業創出・スタートアップ連携の在り方 ⚫ 新事業創出型のEIRは、主に、社内起業プログラムを運営する事業会社が、外部の事業推進力 のある人材も同プログラムに参画させることで、より一層のイノベーション創出を目指す際に 活用されることが想定されます。 ⚫ 事業会社とスタートアップの協業としては、事業会社の課題と、(企業化後の)スタートアッ プとをマッチングする「アクセラレーションプログラム」が多くの企業で活用されていますが、 新事業創出型のEIRは、より早い段階で外部の起業家との協業を実現する方法と言えます。 共同研究 EIR M&A CVC経由の出資 外部人材活用 社内起業 資本業務提携 企業化前の段階から外部人材と連携 アクセラレーションプログラム 事業展開の段階 (参考)Corporate-EIR ⚫ 先述のとおり、EIRは、VCや事業会社等に一定期間所属した後に起業する人材に対して付与さ れる役職ですが、海外では、当初から起業を目指さない人材に対して付与されるケースもあり ます。 ⚫ 具体的には、主に起業経験者が、①経営大学院等において起業家候補生へのアドバイスを行う 場合や、②事業会社において新事業創出やスタートアップ連携のための組織整備を行う場合が あります。(②は「Corporate-EIR」と呼ばれることもあります。) ⚫ 本ガイダンスでは、②を「Corporate-EIR」として、事例集において紹介します。 6

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EIR制度設置のプロセス・留意点 EIR制度設置のプロセス 制度設置にあたって、EIRに期待する役割によって、プロセス上の留意点も異なる。 事前にEIR活用の目的を明確にしたうえで、それに合致した制度を設計する必要がある。 (詳細については各事例を参照のこと) ⚫ 制度設計・企画 選考・契約 ① 社内起案 • ① 求める人物像の明確化 新たな起業促進策の推進にあたり、 どの類型でのEIR活用が適当かを検 討し、社内での承認を得る。 ② 受入体制の構築 • ③ • 必要なスキルセット、マインドセッ トを言語化する。 事業推進 ① 事業検証 • 受入チームと壁打ちし事業アイデア をブラッシュアップ。 • インタビュー・定量調査等で市場の 有無・規模を検証。制度設置者は調 査に必要な人手やリソース、インタ ビュー先等を提供する。 ② 募集・選考 主要担当者/メンター等を決定し、 チームを組成する。 契約等の諸条件の検討 • 業務委託契約/雇用契約の検討 • 副業兼業の可否、給与単価の検討 • ▶ 国内外でのタレント発掘 ▶ 投資/事業検証の双方を通じた育成 ☞ (C)東京大学協創プラットフォーム ☞ (C)京都大学イノベーションキャピ 開発 ③ • ▶ ステージゲートと連動した契約 公募/リファラルにより、候補者層 へのアプローチを実施。 タル 契約 ② 事業の評価 公募/リファラルにより、候補者層 へのアプローチを実施。 ☞ (A) ジャフコグループ ☞ (A) デライト・ベンチャーズ ▶ 活動自由度を確保した契約 ☞ (C)京都大学イノベーションキャピ タル ▶ 応募者に応じた契約体系を準備 ☞ (C) みらい創造機構 • ステージゲートごとに事業を検討。 • 事業化のめどがたった事業は、顧客 紹介等のハンズオン支援を実施する ほか、投資の検討を行う。 ▶ 評価基準の公開による 効率的・客観的評価 ☞ (A) デライト・ベンチャーズ 契約時の留意点 ⚫ 想定される契約形態は大きく2種類(業務委託 or 雇用)。EIRの働き方や期待する役 割によって取るべき契約形態を判断する必要がある(考え方は下記参照)。 ⚫ EIRが起業した際の株式持ち分は、両者にとってモチベーションを高める割合にする 必要がある。契約形態とあわせて、お互いに条件を事前に確認しておくことが重要。 業務委託契約 雇用契約 特 徴 • 基本的には短期(数ヶ月~6ヶ月以内)の契約期間 • 委託する業務内容はフェーズで異なり、適宜更新可能 (調査・検証→PoC→起業準備など) • 兼業・副業で起業の確度が不明瞭な状態でも開始しやすく、 また契約終了もしやすい。 • 基本的には長期(1-2年)の契約期間 • 契約時には業務内容を詳細まで設定する必要はない(技術 理解→キャピタリスト業務(Search&Evaluation)→起業 準備などの業務を包括的に担う) • 社員の立場により社内リソースへのアクセスが比較的容易。 適 し た 類 型 EIRの起業時期がまだ不明瞭で、比較的初期段階の事業検証 や外部ネットワーク獲得等の役割を担わせる場合に適する。 ✓ A 投資案件組成型 ✓ B スタートアップスタジオ型 ✓ D 新事業創出型 EIRにCXO候補としてフルコミットする明確な意志があり、 社内リソースも活用して起業準備を進める場合に適する。 ✓ C. 技術シーズ活用型 ✓ A・B・Dのうち、特にフルコミットや社内リソース活用 が必要となる終盤 7

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事例集 「令和3年度新たな学び直し・キャリアパス促進事業」において実証に取組んだ9事業者について EIR制度を導入した背景、制度設計のポイント、EIRに求める人物像や成果などを取り纏めとめた。 定義 類型 企業名 契約形態 ジャフコグループ株式会社 [P9] 業務委託 株式会社デライト・ベンチャーズ [P11] 業務委託/雇用 株式会社ガイアックス [P13] 業務委託 Studio Entre株式会社 [P15] 業務委託 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 [P17] 雇用 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 [P19] 業務委託 株式会社みらい創造機構 [P21] 雇用 南海電気鉄道株式会社 [P23] 業務委託 三菱地所株式会社 [P25] 業務委託 A. 投資案件組成型 B. スタートアップ スタジオ型 EIR C. 技術シーズ活用型 D. 新事業創出型 Corporate EIR 8

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事例集|ジャフコグループ株式会社 企業概要 業種:VC ジャフコ グループ株式会社(以下、ジャフコと称する)は、1973年創業のベンチャーキャピタルである。 ベンチャー投資及びバイアウト投資(企業買収)を手掛けており、北米(シリコンバレー)やアジアにも 拠点を持ち、グローバルな投資活動も行っている。 EIR導入の背景 類型:投資案件組成型 ▍ 戦略と課題 • ジャフコは、日本最大級のVCとして、投資やその後のファイナンス面・ 事業面におけるスタートアップへの支援において、それなりの充実度を 持って進めてきた。一方で、これまで支援を手掛けてきた主な領域は、あ くまでも起業以降が対象となっていた。 “ EIRを通じて今までに出会 えなかったタイプの起業家 • 企業のミッションとして、日本のスタートアップエコシステムの成長を掲 げている。そのためには、これまで十分に提供できていなかった起業前の 段階においても本格的に支援を提供していくことが重要と考えた。 (候補)の方との接点を持 つことが出来ました。 今後も取組を拡大し、更に スタートアップエコシステ ムの拡充に貢献できればと 考えています。 ▍ 目的 • 起業前の段階をジャフコの知見やネットワークを通じて支援することで、 日本のスタートアップエコシステムの成長を図る。それが、主要ターゲッ トである起業後の支援対象の拡充にも繋がる。 パートナー 坂 祐太郎 制度設計におけるポイント ◼ ジャフコの主要な収入源は、キャピタルゲインであるが、起業前領域の支援からキャピタルゲインに至るまで は、成功確度や期間の観点から不透明な要素が強く、成果としては設定しづらい。 ◼ よって、副次的な成果を設定すること、また、支援対象は長期的な支援を通じても成果が見込まれる質の高い 人材・事業アイデアに絞ることを制度設計のポイントとした。 取組詳細 ▍ 副次的な成果を短期的KPIとして設定し、EIR制度を短期的にも意義づけ • 上述の通り、起業前領域の支援では、本来ジャフコが想定している成果は得られづ らい。よって、副次的成果を短期的KPIとして設定することで、EIR制度の意義を キャピタルゲイン以外にも見出している。 ▶ 副次的成果を 短期的KPIとし て設定 • 具体的には、ジャフコは年間2,000社超のスタートアップとの接点を持っているが、 新たにEIR制度を通じて、200社/人のスタートアップ/起業家との新規接点の創出を 目指している。EIRが制度を通して実施した調査結果を活用したイベントを開催する ことで、さらなる起業家候補者との接点を創出する意図である。そのため、初期 フェーズの業務委託契約の名目も調査業務としている。 ▍ プレEIR期間の設定や短期契約を取ることで、集中的な支援を実現 • 短期的に直接的成果が得られづらいため、長期的に芽が出得る案件を見極め、そこ に特化した支援を提供していく必要がある。そこでジャフコでは、EIRを雇用した最 初の1カ月は、プレEIR期間として、リサーチ業務やディスカッションを集中的に行 うことで、双方のミスマッチを防ぐ仕組みを設けている。 • また、契約期間も1カ月として、各フェーズで細かくマイルストーン(競合調査、ヒ アリング調査、PoC等)を設定することで、事業進捗のマネジメント支援を提供で きるようにしている。 9 ▶ プレEIR期間に よる適正判断 ▶ 短期的マイルス トーンの設定に よるEIRの進捗 管理

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事例集|ジャフコグループ株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ EIR制度では、ジャフコが想定する成果は短期的には得られづらいため、長期的に支援を続けて結果が 見込める質の高い人材、かつ、共にジャフコと協働して良い事業を作り上げられる人材をEIRとして雇 用することを目指した。 契 約 内 容 • 業務委託契約とし、会社員や副業・兼業者にとっても参画ハードルを低くすることを意図した。 • 契約期間は1ヵ月とし、各フェーズで細かくマイルストーンを設定した。 ☞ 狙い 参画ハードルは下げつつ、契約は短期にして、適性や質の見極めを行う • 公募形式で間口を広げ人材を募集した。 公 募 方 法 • 短期的KPIとしてEIRを起点に新たな起業家候補やスタートアップとの接点を増やすことを設定 していたため、既存ネットワーク外からの応募者にリーチできる方法を取った。 • SNSや会社のプレスリリースを通じて、広報を行った。 ☞ 狙い 既存ネットワーク以外からの応募を狙い、公募で間口広く人材を募集 • 詳細な審査項目を作成していたわけではなく、担当者3名で人柄を最優先に評価した。 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 理由は、初期フェーズということもありプロダクトやビジネスプランは変更になる可能性も高 いため、周囲からのFBを吸収し、ともに事業を構想できる人材を優先した。 ☞ 狙い 初期フェーズのため、事業アイデアよりも共に事業構想できる人材を優先 • 外資系コンサルや総合商社、メガベンチャー出身者。人柄の面でもスキルの面でも、質の高い 人材が集まった。 • タイミングの問題で採用には至らなかったが、シリアルアントレプレナーやMBA取得者等、母 集団としては、当初想定していた質の高い人材を形成することができた。 • 大学技術シーズとのマッチング支援を実施し、大学発ベンチャーの課題である経営人材の不足 を本事業で補完(JST START事業との繋ぎ込み)することを狙った。 EIRの成果と今後の改善方針 短期的KPIとして設定していた調査結果とそれを活用した新規接点の拡充 成 果 • EIR制度を通じて新たに調査が行われた領域は、主にカーボンオフセットやWeb3.0、NFT、 GPT-3など多岐にわたる。 • これらの調査結果を活用して4回のイベントを開催。累計参加者数は、400名弱となり、新 規接点の創出に貢献した。 EIRに対してジャフコが提供できる支援の精査・作成 改 善今 方後 針の • 起業前の領域でジャフコ側が何を提供すれば有益かを精査できていなかった。そのため、EIR に対する支援パッケージ(起業初期における契約で気を付けるポイント、PMF事例集、採用 を目的としたマッチングの機会創出など)を作成中である。 • また、EIRとジャフコの関係構築のために、対面での交流機会の創出や、ジャフコが提供し得 るリソース開示などの必要性を感じている。 • 2023年度4月以降も、継続4名、新規1名の起業家予備軍の参加者と検討を継続。更に、起業 家予備軍の参加者の検討促進のため、事業アイデアの検討プロセスの型化を進行中 10

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事例集|株式会社デライト・ベンチャーズ 企業概要 業種:VC デライト・ベンチャーズ(以降、デライトと称する)はDeNAをLPに持つVCであり、シード・アーリー期の スタートアップへの投資事業及び社会人の起業支援を行うベンチャー・ビルダー(EIR)事業を展開。ベン チャー・ビルダー(EIR)事業は、起業初期のリスクを下げ、日本にDeNA内外の社会人起業家を増やす役 割を持つ。 EIR導入の背景 類型:投資案件組成型 ▍ 戦略と課題 • スタートアップの飛躍的成長を目指すデライト・ベンチャーズは、日本に おける起業家の数が圧倒的に少ないというスタートアップ・エコシステム の課題を解決するために、起業時のリスクを抑え、かつ起業家にとって事 業成功時のリターンを最大化することの両立をかなえることで新しくス タートアップを創出する戦略を考えた。 “ DeNA社内外問わず起業を 検討されている優秀な社会 ▍ 目的 • そこで、DeNA社員はもちろん、DeNA内外の優秀な社会人を対象に、 ベンチャー・ビルダー(EIR)事業をVCのデライトで導入し、事業創出を支 援した。 • つまり、EIRを通じて、人材を引き寄せ、確度の高い新規事業を創出し、 投資案件等に繋げることがEIR導入の目的であった。 人の方々のために、起業の 上流工程に起こりがちなリ スクや失敗要素をコント ロールし、思いきり挑戦で きる環境と武器を提供でき ていると自負しています。 プリンシパル 坂東龍 制度設計におけるポイント ◼ 新規事業の創出のためには、成功確度の高い起業家候補と事業案を絞り込んだ上で、集中的に支援することが 必要だと考えたデライトは幅広く候補者を募集し、事業検討プロセスの中で候補者と事業案の可能性を確実に 見極めるための制度を設計した。 取組詳細 ▍ 成功確度の高い者のみをMVP開発に進ませ、集中的に支援 • ベンチャー・ビルダー プログラムでは①課題探索・企画、②開発前検証、③MVP開 発・検証、④運営・調達の4つのフェーズに分けて、多数の参加者に一定の活動資金 を提供しながら、新規事業の立ち上げを支援している。参加者にはフェーズごとに 評価を行いながら、次のフェーズに進む者を決定する。 ▶ 事業フェーズの 細分化とステー ジゲートによる 検証効率化 • ③MVP開発・検証においてはデライトとしても、かなりのリソースを投下して支援 を行うため、その前段階の審査は特に厳密に行い、事業失敗に伴う損失を抑えてい る。審査で成功確度が高いと評価された事業・参加者はデライトに有期雇用され、 累計2500万円の事業資金を使用しながら、スピンアウトを目指す。 ▍ 事業課題探索の効率化のために、事業案ストックと起業ノウハウを共有 • EIRはプログラムに参加後も②開発前検証の段階までは、他の企業に勤務しながら、 活動を行う。そのような参加者たちが事業検討を効率的に行えるように、デライト は、社内の事業案ストックを提供するとともに、新規事業立案のノウハウもドキュ メント形式に整理し、参加者に提供し、その事業検討を支援している。運営者に とっても、プログラムの運営負担を軽減することができる。 11 ▶ 教材活用による 初期検証の効率 化

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事例集|株式会社デライト・ベンチャーズ EIRの人物像と契約戦略 ◼ 起業家が関心・熱意を持てるテーマと、デライトが支援を得意とする領域とマッチする優秀な人材を確 保するために、デライトはVチャレ(ベンチャー・ビルダー・チャレンジ)というバッチ制プログラム に対して入口を幅広く設定し、集めた参加者が実際に事業を検討するプロセスを評価し、雇用する者を 絞り込むという戦略を取る。 契 約 内 容 • MVP開発より前段階では、Vチャレ参加者と秘密保持契約を結び、調査のための小規模予算(① 課題探索・企画段階では約10万円、②開発前検証では、約100万円)を提供。MVP開発に進む者 は、雇用契約を結び、累計2500万までの予算枠を与える。 ☞ 狙い 成功確度が不明確な段階で客員起業家への過度の投資を回避する • DeNAの社員やOBOGのみにとどまらず、幅広く社会人に一般公募を行う 公 募 方 法 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 一般公募においては起業に関連するイベント、起業意欲を持つ者が注目するメディアにおける プロモーション及び、SNS等を活用したデジタルマーケティング施策を積極的に実施する。 ☞ 狙い EIRの質と量の両方を担保する • 参加者に同一のフォーマットでの資料作成及び定期的なピッチを求めるこ とで、活動状況を把握・評価。フェーズ移行における審査では、顧客、課 題、ソリューション等の観点から作成した同一の評価項目に従って審査を 行う。それらの評価項目は参加者にも公開。 ▶ 評価基準の公開 による効率的・ 客観的評価 ☞ 狙い 多数の参加者への客観的かつ効率的な評価を実現する • DeNA出身者、未上場ベンチャーの元CXO、メガベンチャー経験者、商社出身者の参加者が多い • 特に③MVP開発まで進んだ参加者は、活動の自由度や保有できる株式比率の高さに魅力を感じ たインフラ企業の社内ベンチャー経験者、失敗確率を下げながら起業に取り組みたいIT企業の 子会社の経営者等が挙げられる。 EIRの成果と今後の改善方針 14社がVC調達を伴う独立・スピンアウトをしており案件の見極め・支援には成功 成 果 • 過去3年間のVチャレ運営期間の中で、過去に約750名の応募が集まり、約150名が実際にプ ログラムに参加した。 14社がVC調達を伴う独立・スピンアウトをしている。 • 成功確度の高い案件を見極めた上で、本格的支援を行うことで新規事業の創出に繋げるとい う狙いは機能し、新規事業の創出に貢献した。 参加人数の規模拡大に伴う担当者負担の軽減への施策が必要 改 善今 方後 針の • 参加者の増加により、デライトの担当社員の負担が増加し、個々の参加者の事業検討に対す る支援やアドバイスが十分にできなくなりつつあること。 • 今後は一人当たり社員の担当人数を限定することや参加者の自習資料の充実化を検討してい る。 12

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事例集|株式会社ガイアックス 企業概要 業種:VC(スタジオ運営企業) ガイアックスは若年層を中心とした起業家を輩出するスタートアップスタジオである。一方でそのビジネ スモデルはVCと事業会社の特性を併せ持っている。社内の既存事業の黒字事業から事業収益を確保し、新 規事業(社員によるカーブアウト制度もあり)や起業家、ガイアックスグループ内外の各投資先に投資す るという、ハイブリッド型の事業を展開している。 EIR導入の背景 類型:スタートアップスタジオ型 ▍ 戦略と課題 • 従来より起業家候補への出資は行っていた。ただしその検討対象は起業家 候補が持ち込んだアイデアが主であり、また起業家候補自信も学生である 等、事業化の確度が低く教育コストがかかっていた。 • またさらなる新規事業創出を進める上での課題は、アイデアの創出よりも 事業推進にあると感じていた。 • また社外取締役にウェルネス領域の専門家がいたことから、ガイアックス が業界No1の地位を築ける強みのある事業領域であると考え、ウェルネス 領域の新規事業創出を目指していた。 ▍ 目的 • アイデア創出はガイアックスが担い、事業推進をEIRに任せるアイデアス トック型のEIR制度を発案。これにより新規事業創出を加速させることが 今回のEIR活用の主な目的である。 “ EIRを採用した結果、他者 のアイデアであっても自 分ごととして事業推進で きる方が存在することを 確認できた。事業創出・ 検証支援に引き続き力を 入れていきたい。 アイデアス トック事業部 事業責任者 前田桜花 制度設計におけるポイント ◼ アイデア創出と事業推進の役割をガイアックスとEIRで分けた。EIRによる新規事業創出の成功率を上げるた め、事業アイデアについては市場規模の推計といった定量調査まで事前に実施。更に専門家と連携しながら綿 密に事業検証を行ったアイデアをEIRに提供し、事業推進を委託した。 取組詳細 ▍ リファラル採用により、事前にEIRの人柄やチームとの相性を把握したうえで受入 • 新規事業として開始するため運営に若干の不安要素があるといった場合、事業運営に も積極的に関与。協力してくれる人物であることが望ましい。 • そのためリファラル採用でEIRの人柄を把握したうえでチームとの相性の良い人材を 採用することも可能である。 ▶ チームとの相性 を重視したリ ファラル採用 ▍ ジョイン直後はEIRも事業検証フェーズに参加し、アイデアストックチームが並走 • スタジオの有するアイデアの検証状況にEIRがキャッチアップする必要があるため、 ジョイン直後には事業アイデアの検討フェーズ終盤にEIRも参加。検討状況をEIRと チーム間で同期することで、事業推進の肝要な点が把握できたほか、チームアップに も効果があった。 • 事業検証フェーズでは業務の繁閑が大きいため、業務委託での契約を結ぶことで兼業 先で生計を立てつつ企業準備をすることが可能である。 • また同領域で別アイデアを検討する際にも、EIRに参画してもらうことでアイデアの ブラッシュアップが可能。なお別アイデアを検討しておくことで、事業のピボット先 の確保も可能になる。 13 ▶ 事業アイデアの 検証にEIRも参 加

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事例集|株式会社ガイアックス EIRの人物像と契約戦略 ◼ 事業推進力、事業領域への関心といった条件を重視しつつも、プロトタイプ型の新規事業に参加しても らうことを考慮し、チームとの相性や、事業運営にもFBをもらえるかといった点も検討材料に追加。 ネットワークを広く持っている自負もあるため、リファラルで人柄が事前に分かっている起業家候補の 採用を選んだ。 契 約 内 容 公 募 方 法 審 査 方 法 • 6ヶ月強の業務委託契約を締結。初期の事業検証段階ではまずはライトに関わってもらうとい うことで、副業も可能な業務委託契約が適していると考えた。起業にフルコミットする際には 契約を見直すこととした。 ☞ 狙い 成功確度が不明確な段階では、EIRが事業にライトに関われるようにした • 条件を洗い出した上で、リファラルで条件に合致する人材を採用。 ☞ 狙い 既存ネットワーク以外からの応募を狙い、公募で間口広く人材を募集 • 事業推進経験があり、事業領域に関心が強いことを第一条件とした。その他誠実な性格、失敗 から学べることといったアントレプレナーシップの要素を定義し、選考基準を作成。 • またウェルネス領域を考えるにあたり、メンバーのジェンダーが男性に偏っていることに限界 を感じ、女性を採用した。 ☞ 狙い 事業領域を踏まえた既存チームでの不足スキルから、EIRに求める要素を検討 客 員 起 業 家 採 用 し た • 新規事業開発経験を有し、フリーランスでデジタルマーケティング等に携わっている。海外在 住。 • ガイアックスの事業開発メンバーの知人で、ウェルネス領域に関心が高く、チームとのフィッ ト感も高かった。 EIRの成果と今後の改善方針 成 果 改 善今 方後 針の 開始3ヶ月程度で36件以上の顧客ヒアリングを実施し、当初の目的である新規事業開発加 速に成功 • 市場調査に一部関与しながら徐々に主導権をEIRへ移行し、顧客ヒアリングやキャッシュ化 に動く段階から、EIRがハンドリングするようになった(採用から約3ヶ月)。 ガイアックスが提供するアイデアのストック数がボトルネックになるため、十分な数と質 を確保しておく必要がある • 2023年からアイデアストックを事業部化したこともあり、アイデア数の確保が課題。 • 現在検討している事業アイデアと同領域における別アイデアの検討をする場合、EIRがその検 証にも関わる等して、アイデアの質と数の担保を目指している。 14

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事例集|Studio ENTRE株式会社 企業概要 業種:VC(スタジオ運営企業) Studio ENTREはエンターテインメント領域に特化したスタートアップスタジオ。音楽、芸能等エンター テインメント業界の知見が豊富なメンバーが在籍しており、特にエンターテック(エンターテインメント ✕テクノロジー)によるイノベーションを目指し、過去にもEIRを活用した取組を行っていた。 EIR導入の背景 類型:スタートアップスタジオ型 ▍ 戦略と課題 • 起業家候補者コミュニティの中から、希望者のアイデアを壁打ちし、有望 であれば初期テスト・試作品作成の段階に移行。半年最大500万円という 限定で事業部をたて、事業検証を行っていた。 • スタジオ初のスタートアップからのキャッシュインが生まれることで収益 を確保するビジネスモデルであるため、起業の成功確率を挙げていく必要 性を感じていた。 “ 2020年よりスタートアッ プスタジオという言い方 で、EIRと近い制度を模索 してきました。当事業は 事業進捗に応じた起業家 との関わり方を整理し、 見つめ直す機会になりま した。 ▍ 目的 • スタジオの業界知識豊富なメンバーが有するアイデアを実現するのに必要 な人材を確保することが主な目的。従来の起業家候補とは異なるような層 でも、起業にコミット可能な環境を提供した。 プロデューサー 中村ひろき 制度設計におけるポイント ◼ 日頃から開催しているイベント等で、起業家候補のプールを形成。その中から特に経営チームの組成のあてが 乏しい、あるいは専門スキルが未熟、といった起業に踏み切れなかった層を抽出。事業推進の役割を担っても らうことで、新事業の創出を加速させた。 取組詳細 ▍ 確度高く、かつ事業立ち上げをスムーズに行うため、既存のプールからEIRを採用 • 同社は、平時より得意のエンターテイメント領域において、興味を有する人材との タッチポイント創出のため、イベント等を開催し、起業家候補となる層のプールを 組成していた。 • 公募採用には広報・審査といった段階が必要。スムーズに事業を立ち上げるため、 既存プールの中事業推進力が見込まれ、当該ビジネス領域に対する知識や起業家精 神等を有する人材をリファラルで採用した。 • プロジェクト初期から「案件化契約書」と言うかたちでスピンアウト後の関わり方 (株式保有比率)について一定の取り決めをし、主体的かつ前向きな事業開発にコ ミットしてもらうインセンティブを設けた。 ▶ タッチポイント となる起業家候 補のプールを常 時より組成 ▶ 既存プールから EIRを採用する ことで適正を担 保 ▍ EIRのもつアイデアを、業界の知見が豊富な受入チームとともにブラッシュアップ • EIRに求める能力は事業推進力で、事業アイデアのブラッシュアップはスタジオ側に 豊富な知見があった。テーマ特化型のスタートアップスタジオとして蓄積したノウ ハウとEIRの希望をすりあわせながら、確度の高い事業案に仕上げた。 15 ▶ 受入チームによ る事業アイデア のブラッシュ アップ

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事例集|Studio ENTRE株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ エンターテインメント領域への知識・関心を有することを始めとする、求める人物像との合致を短期間 で見極める必要があったため、既存の起業家候補のプールから採用。 契 約 内 容 公 募 方 法 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 3~4ヶ月の業務委託契約を締結。市場と事業仮説をスタジオとともに綿密に検証しつつ、兼業・ 副業しながらでも起業できるという新しい起業の形を模索するため、ひと月あたり40~80時間程 度のコミット想定の業務委託契約(特に準委任契約)を選択。 ☞ 狙い 成功確度が不明確な段階では、EIRが事業にライトに関われるようにした • 条件を洗い出した上で、過去のイベント等で繋がりがあり、適正や人柄等がわかっている候補 者の中から条件に合致する人材を採用。 ☞ 狙い 既存のネットワークを活かし、リファレンスチェックも入れられるリファラルで採用 • 既存のネットワークで募集を呼びかけ、応募してきた人材の中から、過去の繋がりの中で見極 めた本人の適正等を見極めて採用。 • 過去に音楽活動をしていたが、その後民間企業に就職した。しかしその後も音楽業界(特にイ ンディーズアーティスト)のために何かをしたい、と言う思いがあり、Studio ENTREにコンタ クトを取っていた。 • アーティストと起業のマッチングプラットフォーム事業に取り組んでいる。 EIRの成果と今後の改善方針 選考基準、事業進捗フェーズ、プロジェクト要件等の明確化 • 成 果 過去に類似の事業を実施していたものの、選考基準や事業フェーズが曖昧に進んでしまって いたこともあった。EIR制度を通じこれらが明確化されたことで、起業家への説明も明確に できるようになった。 制度設置者とEIRのミスマッチの少ない採用で事業推進を円滑に進行 • 制度設置者とEIRは過去のイベント等ですでに繋がりがあり、EIR目線でも制度設置者の目 指すものや事業内容に理解があった。また制度設置者目線でも、EIRの能力・人柄を事前に わかっているため、事業開始後のミスマッチが起こらなかった。 既存の繋がり以外のネットワーク拡充 改今 善後 方の 針 • 現在つながりが無い起業家候補にもリーチし、多様なバックグラウンドを持つ起業家候補に エンターテインメント領域の起業に関心を持ってもらいたい。EIR活用がその一歩になると考 えている。 16

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事例集|京都大学イノベーションキャピタル株式会社 企業概要 業種:大学系VC 京都大学イノベーションキャピタル(以降、京都iCAPと称する)2014年に設立された、京都大学の100%出 資子会社のベンチャーキャピタル子会社。京都大学の研究成果を活用した大学発スタートアップ等に対し て、経営上の助言や資金供給を行う。産業界とアカデミアの橋渡し役として、高度な研究成果・技術等を 活用して次世代を担う新産業を創出することを目的に掲げる。 EIR導入の背景 類型:技術シーズ活用型 ▍ 戦略と課題 • 学内の技術シーズを生かしたスタートアップの創出・成長を目指 す京都iCAPにとって、技術シーズの事業化を推進できる経営者人 材が不足していることは長年の課題であった。首都圏ではないと いう地理的要因により、経営人材の確保はより困難であった。 • その解決のために、2017年に自社の起業家候補者プールである会 員制組織「ECC-iCAP」を設立し、事業創出を支援している。しか し、その中でも、起業家が起業準備に十分なリソースを割くこと ができないことにより、起業のタイミングを逸することが多く あった。 “ 副次的効果として、起業に向けた プロジェクト数が増加し、EIRの高 い意識が 社内全体を活性化して いる。EIRが始めた事業が成功する ことが本制度の最終目的であるが、 その第一歩となる「優秀なEIR」の 採用には成功したので、今後、EIR とともに勝てる事業の育成に努め てゆく。 ▍ 目的 • 今までの取り組みと比較し、EIR制度は候補者も京都iCAPも起業に 向けて、充分にリソースを投入できる制度であるため、経営者人 材の不足を補うことができる制度だと考え、導入を行った。 事業企画部 シニア・ マネジャー 八木信宏 制度設計におけるポイント ◼ 活動の自由度を確保して、優秀な起業家候補を引き寄せるために、株式持ち分や起業領域を起業前に京都 iCAPは指定しない。 ◼ 十分な能力と適性を持つEIRが起業できるように、起業前に投資業務への従事期間を設定することで、起業に 向けたEIRの成長促進及び、能力・適性の見極めを可能にする。 取組詳細 ▍ 最初の6カ月間は充実した育成・支援体制の下で、投資業務を学ぶ • この時期では、EIRにキャピタリストがメンターとして付き、EIR自身がキャピタリ ストとして活動することで、スタートアップの創業実務を経験するとともに、投資 家の視点を学ぶ。 • また、EIRが成長できるように、投資・起業に求められる財務、事業計画、資本政策 等幅広い内容に関する座学講座も提供する。メンターのみならず、スタッフ全員が 積極的にEIRとコミュニケーションを取りながら、投資に必要な知識をインプットし ていく。 ▶ キャピタリスト 業務を通じた、 育成と適性の見 極め ▶ 座学と実務の双 方を通じた育成 ▍ 7ヶ月目以降はEIRが熱意を持つテーマで起業準備に取り組む • この時期では、EIRはデータベース検索や学内研究者への直接訪問を通じて技術シーズを広く探索・調査し、 そこから起業を行うシーズを絞り込み、事業計画の策定を進める。また、起業に向けたチームアップ、事 業性調査等も随時行っていく。その起業テーマに関して京都iCAPは指定や強制は行わない。 • 起業準備が進み、起業の時期が近づくと、EIRは独立した起業家として京都iCAPと投資交渉を行う(この時 点から、EIRは投資を受ける立場に立って、投資家である京都iCAPと交渉を行う)。 • キャピタリストが投資に値する事業と判断した場合、京都iCAPは社内プロセスに則り、投資可否の機関決 定を行う。 • 最終的に、EIRは離職し、独立起業を行う。 17

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事例集|京都大学イノベーションキャピタル株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ 地方に不足する優秀な経営人材を採用するために、京都iCAPは業務に自由度を与えつつ、充実した支援 体制を提供することでプログラムの魅力度を上げた上で、幅広く応募者を募った。 契 約 内 容 • 2年間の雇用契約をEIRと結び、初期はキャピタリストの投資業務を担当 させる。起業に取り組む事業の領域や起業後の株式持分に関する取り決め は事前には行われず、プログラムの期間中で、EIRと京都iCAPが議論を行 いながら決定していく。 ▶ 活動自由度の確 保によるEIR制度 の訴求力強化 ☞ 狙い 優秀な人物を幅広い地域から引き付ける 公 募 方 法 • 幅広い候補者を対象に一般公募を行った。それに加え、イベント集客サービスでの広報、ECCiCAPでの宣伝、説明会の実施、フェイスブックへの投稿を通じて、積極的に周知を行った。 ☞ 狙い 従来では接点を持たなかった人材にも幅広くアプローチする • 社員と同じ選考プロセスを実施し、書類選考後に、複数回の面接を行った。 審 査 方 法 • 選考基準としては、チームメンバーとして協力できる人間性、起業に必要な胆力と志、地頭の 良さ、専門知識(領域は限定せず)、研究者の研究成果を理解する意思と能力等を評価した。 ☞ 狙い 研究者と協力して、事業を推進できる人材を見出す • 現在30代のEIRを二名採用した。各自のバックグラウンド、応募理由等は以下の通り。 客 員 起 業 家 採 用 し た • 外資系金融・コンサル業界で勤務し、以前より強い起業志向を持つ者である。キャピタリスト としての経験、京大の研究成果を使用できることに魅力を感じて、応募した。 • 総合商社でディープテックスタートアップへの投資業務に従事した者であり、強い起業志向を 持ち、京大の技術シーズに魅力を感じて、応募した。 EIRの成果と今後の改善方針 要求水準に見合う優秀なEIRの採用に成功 成 果 • 腰を据えて起業準備を行う意思のある優秀な人材を採用することに成功しているため、起業 家が起業準備にリソースを注ぐことができないという課題に効果を発揮しつつある。 EIRと同じ立場にいる起業家とつながる機会の提供が必要 改今 善後 方の 針 • 通常のアクセラレーションプログラムと異なり、本プログラムではEIRは自らと同じ立場にい るEIRと日常的に繋がる機会が少なく、創業チームメンバーの候補も近くに存在しない。そこ で、同じ立場で相談できる起業家・起業家候補と繋がる機会をさらに提供する必要がある。 • 創業のチームビルディングに関して、ECC-iCAPという経営者プールから候補者をピックアッ プし、ピンポイントでアプローチをするだけではなく、EIRが自らのビジネスアイデアをプレ ゼンし、チームメンバーを募るイベントの開催など、よりアクティブな支援を行う必要があ る。 18

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事例集|東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 企業概要 業種:大学系VC 東京大学協創プラットフォーム開発(以降、東大IPCと称する)は東大ベンチャーエコシステム形成と発展 育成を目的として2016年に設立されたベンチャーキャピタル。現在2つのファンドを運用しており、東大 関連ベンチャーを中心に75社以上の投資実績を持つ。国立大学8大学と連携し、国内最大となる大学発ベ ンチャー創出エコシステムを構築している。 EIR導入の背景 類型:技術シーズ活用型 ▍ 戦略と課題 “ 投資前提の取り組みとし、 対象分野に精通するキャピ • 東大IPCは国内の大学が有する技術シーズを活かしたスタートアップを育 成/創出に取り組んでおり、その投資先は、グローバルでの展開を見据え ていることが多い。一方で、課題として、大学には有望な技術シーズが多 くあるにもかかわらず、大学教員と伴走しながら、その技術シーズを用い た事業開発を行うことができる経営者人材は著しく不足していた。特にア カデミアへの知見に欠ける人材が多かった。 ▍ 目的 • ユニークで市場性の高い知財や研究成果を活用したスタートアップの経営 を担える人材を見出し、更なる大学発ベンチャー創出を実現することが EIR制度の利用目的である。 タリストが裁量権を持つ仕 組みにしたのがKSFでした。 結果としてグローバル展開 の足掛かりにもなり、各国 で同様の展開が可能と考え ています。 パートナー 水本尚宏 制度設計におけるポイント ◼ キャピタリストのグローバルネットワークを生かして、要求水準に見合う人材を採用する。 ◼ 最初にEIRにリサーチ業務を担当させ、その適性を見極めた上で、起業準備段階に進ませることで、EIRの質 を確保し、起業の成功確度を向上させる。 取組詳細 ▍ S&E(Search & Evaluation)として適性を見極めた上で、起業の実施可否を判断 • EIRは最初にS&Eという職務で、興味関心に沿って大学データベースのサーチや教員 へのインタビューを実施しながら、有望技術シーズや大学教員のリサーチを実施さ せる。この業務でのパフォーマンスを通じて、キャピタリストはEIRの能力と適性を 判断する。 ▶ 調査業務を通じ た、適性の見極 め • EIRの適性と能力が認められた場合には、EIRは創業プロセスを進め、教員とのリ レーション構築、事業/資本計画作成に着手するという制度設計となっている。 ▍ S&E期間はEIRがその能力を最大限に発揮できるように、自由な活動環境を提供 • 現在はハーバード大学の博士課程に在籍する学生がS&Eとして採用されている。ボ ストンを活動拠点とするEIRに対して、東大IPC自身が実施できない事項の調査が依 頼されている。具体的には東大IPCがチームの活動方針を伝えたあと、EIRはその方 針に沿って現地のネットワーク等を活かしながら、自由に調査を実施する。 • その調査結果として、投資候補となりうる企業の情報、有望な技術発明、注目すべ き知財等多岐にわたる情報が東大IPCに共有される。共有された情報に基づいて、 EIRと東大IPCは一つのチームとして議論を重ね、そこから、投資等のアクションに 繋げる。このような制度を設けることで、東大IPC はEIRのアウトプットを最大限に 活用できると同時に、EIRの適性と能力を見極めることができる。 19 ▶ 活動自由度の確 保によるEIR制 度の訴求力強化

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事例集|東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ 「極めてユニークで且つグローバル展開が可能な大学発スタートアップ」のシーズをビジネスに昇華さ せることのできる人物の採用を目指した。それを満たす高いスキルセットを有する候補者を雇用するた めに、キャピタリストは自らのネットワークを通じて、グローバルでタレントを探索した。 契 約 内 容 公 募 方 法 • 前半フェーズでは短期間の業務委託契約を結び、有望なシーズや大学教員に関するリサーチ業 務を時給ベースで実施する。 • 後期では、フルタイムで業務委託として雇用し、創業に向けた具体的な準備を実施する。 ☞ 狙い EIR導入に伴うリスクを最大限に抑制する • 採用の優先順位として東大IPCが直接つながりのある人物、信頼できる人物のリファレンスが得 られる人物、一般公開募集で応募する人物の順で検討する。 • 要求水準を満たす国内人材の不在により、キャピタリストがアメリカでタレント探索を行い、 雇用に至る。 ☞ 狙い 基準を満たす質の高い人材を確保する ▶ 国内外での タレント探索 • 起業候補者にアプローチし、面談を通じて採用の可否を判断する。 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 候補者の選定基準としては、大学教員との密接なリレーション構築ができること、グローバル 視点でのビジネス開発が可能であることを基本としている。 ☞ 狙い 多数の参加者への客観的かつ効率的な評価を実現する • 東大に留学経験を持つ、ハーバード大学の化学系研究の博士課程に在学中の学生をEIRとして採 用する。 • 将来は自ら起業する事を志し、ボストンの起業家コミュニティにもネットワークを有する。 • 日本にある技術シーズ、東大IPCが持つノウハウ、ネットワークに魅力を感じ、EIRとして参加 する。 EIRの成果と今後の改善方針 EIRが期待以上の価値を発揮し、東大IPCの事業に貢献 成 果 • 技術、産業、アカデミアに全て通じているEIRの採用に成功した。 • EIRの調査結果を基に、投資チームはEIRとともに議論を行い、投資に関する意思決定を行 うため、投資チームの活動に大きな役割を果たしている。 • 当初の予想を上回る量・質の情報をEIRが提供できている。 要求水準に見合うEIR候補者の継続的な採用が肝要 改 善今 方後 針の • 東大IPCは投資対象である大学発スタートアップの経営者となり得る人物に対する要求水準が 極めて高い。そのため、一般公募、人材紹介業者等の活用では候補者を見つけることが困難。 現在のようにキャピタリストの人脈に基づく候補者探索も持続的なものではない。 • そのため、今後は要求水準に見合う候補者を継続的に採用する仕組み作りが求められる。 20

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事例集|株式会社みらい創造機構 企業概要 業種:大学系VC 東京工業大学と社会連携活動の推進に向けた組織的連携協定を2016年に締結しており、東工大関連ベン チャーを中心とた研究開発型ベンチャーに投資を行うVC。事業会社からの研修出向を受け入れることで、 その新規事業事業開発やオープンイノベーションを後押し。 EIR導入の背景 類型:技術シーズ活用型 ▍ 戦略と課題 • 東工大、高専関連の技術シーズを扱うスタートアップを中心に投資・事業 成長支援を行うみらい創造機構にとって、ディープテックを扱うことがで きる経営者人材の不足は長らく課題であった。 ▍ 目的 • 経営者人材の不足を補うために、今までもビジネス人材と研究者(投資先 /設立予定スタートアップ)のマッチング活動を行ってきたが、通常の転 職活動と違い、短期間でバックグラウンドの異なるビジネス人材と研究者 で信頼関係を作ることは容易ではないという課題に直面した。EIRは1年程 度の時間軸の中で候補者の適性や研究者との相性を見極めることが出来る ため、特に研究開発型スタートアップにとっては相性が良いと考え、経営 人材不足の改善を目的として導入された。 “ 既にEIRメンバーが大学発 ベンチャー設立に伴走して おり滑り出しは好調。また、 キャピタリスト採用では出 会えなかった人材の応募/ 引き合いが多数あり弊社と してのネットワークの幅も 広がっている。 取締役 金子大介 制度設計におけるポイント ◼ 制度の入口では幅広いバックグラウンドの候補者を受け入れる体制を整えた上で、EIR の能力・適性を投資業務への従事期間を通じて見極めることで経営者人材を確実に見出 す制度にしている。 ▶ キャピタリスト 業務を通じた、 育成と適性の見 極め 取組詳細 ▍ 4種類の契約のひな形を準備、幅広い背景のEIRの受入れ体制を整備 • みらい創造機構は契約のひな形を以下のように4 種類用意し、 EIRへの参加が想定 される多様な人物像の受入れに備えている。 ▶ 多様な契約 パッケージ − 勤務先を退職し、フルコミットで参加する社会人を契約社員として向かい入れる雇用型 − 大企業等に勤務し、副業として参加する業務委託型 − 大学技術の事業化に取り組む学生・研究者向けのアルバイト型 − 出向起業を目指して派遣される大企業の社員向けの研修出向型 ▍ 起業前に投資業務への従事期間を設け、EIRの育成と見極めを同時に達成 ▶ EIRの成長を促 すアサイン方針 • 技術シーズを用いた起業を行う前に、みらい創造機構は1年間、キャピタリストの業務に従事する期間 を設け、EIRとしての適性を見極めるための時期としている。 • また、この時期では、以下のアサイン方針によってEIRの成長を促すことも目指されている。 • EIRの業務の半分は、自らの起業に直結するシーズの発掘、事業立ち上げやハンズオン支援の 案件に入り、将来共に起業する可能性のある研究者に伴走しながら信頼構築を行う。 • 残りの業務では投資検討を行う案件に参加し、キャピタリストの思考法を学ぶ。投資側の考え を理解することで、将来起業家側として資金調達する際の糧とする。 21

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事例集|株式会社みらい創造機構 EIRの人物像と契約戦略 ◼ 研究者との合意決定がスムーズに行える人材を獲得するため、多様な人材向けに受け入れ体制を整えた 上で、リファラル採用を行い、投資業務を通じて、その適性を着実に見極める。 • 契約のひな型を4種類準備する。 契 約 内 容 • 現在のEIRとは、現在一年間の雇用契約を結び、最大一年間の延長が可能である。 • 業務内容は、研究シーズの発掘、研究開発型ベンチャーへの投資検討・投資実行等のキャピタ リスト業務である。 ☞ 狙い EIRの適性を業務を通じて見極める • リファラル採用を基本とし、人材紹介サービスを活用した公募も始めている。 公 募 方 法 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 現在在籍しているEIRは以前、研究開発型ベンチャーの経営者候補としてキャピタリストが勧誘 した人物であり、今回再度のアプローチを通じて採用に至った。 ☞ 狙い 採用するEIRの質を担保する • みらい創造機構とEIRの面談を通じて採用を決定している。 審査の基準は以下のような点が挙げられる。研究者との合意形成をスムーズに行うことができ る成熟さ、技術への興味、 PL責任を負った経験等である。 ☞ 狙い 研究者と連携しながら、技術シーズの事業化を推進できる人を見出す • 総合商社でJVの立ち上げを経験した30代半ばの方が参加。JVの立ち上げ経験から、スタート アップでの組織・プロダクトづくりに魅力を感じ、最先端のテクノロジーを利用した起業を志 すようになった。 • VCは最先端のテクノロジーの探索において非常に魅力的な環境であるため、EIRに参加する。 EIRの成果と今後の改善方針 新たな人材にリーチできるとともに、キャピタリストの採用プロセスとしても認識 • 従来の活動ではリーチできなかった人材に出会うことができるようになった。 成 果 • EIRとして参画し 1 年経過した後、EIRのみでなく、キャピタリストとしての適性があるかも 同時見極めることができるため、キャピタリストの採用プロセスの一つとして有効なのでは ないかと考えている。 成功例の創出や採用・教育コストの捻出のための施策が求められる 改今 善後 方の 針 • EIRとしての成功例・ロールモデルの創出することがよりEIR制度を広めるために必要。 • 採用、教育のためのコストの捻出が制度の継続のために必要と認識している。 • EIRのコミュニティを活性化させることが個々のEIRの活用によって有益である。 22

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事例集|南海電気鉄道株式会社 企業概要 業種:事業会社 南海電気鉄道(以下、南海電鉄と称する)は、大阪市と関西国際空港、和歌山県和歌山市や高野山を結ぶ 鉄道を経営する会社。鉄道事業、不動産事業が本業ながら、イノベーション人財・風土づくりと事業創造 を目的に、2019年から「新規事業部」を発足。 EIR導入の背景 類型:新事業創出型 ▍ 戦略と課題 “ 外部専門人材も活用し、内 部体制を強化しながら新事 • 南海電鉄は、事業形態が従来の鉄道会社のビジネスモデルに依存しすぎるこ とに経営層がリスクを感じ、新たな収益の柱の設立を目指して、2019年より 新規事業部※を設置。グループ全社員を対象とした事業創出支援プログラム を開始し、社員の自由な発想と情熱を事業化する取組を開始した。 • 本プログラムへ取組む社員は熱意のある者も多く、事業化に繋がる案件も生 まれてきた。一方で、自社社員のみでは新規事業のアイデアの幅やノウハウ には限界があり、支援方法を含めてプログラムの改善を進めていた。 ※)新規事業部は2023年4月よりイノベーション推進部に名称変更 ▍ 目的 • 社内向けプログラムの対象者を外部人材にまで拡げることで、自社社員に無 い発想・ノウハウを取り入れ、多様な新規事業を生み出すことを目指す。 • その過程において、推進力やチャレンジ精神を有する人材を内部化すること で、事業の成否に関わらず、社内の新規事業を担う人材確保も狙う。 業創出型を短期間で制度設 計・開始できたことは、当 社のイノベーション創出に おいて加速の後押しともな りました。今後も継続して EIRを活用した新規事業創 出とイノベーション人財の 確保に取り組んでいきます。 事業創出 支援プログ ラム事務局 制度設計におけるポイント ◼ 社内向けの事業創出支援プログラムを、外部人材に対象を拡げたEIR制度”beyond the Borderプログラム”を実施。 ◼ 募集にあたっては、特定の事業領域や自社アセット活用などを要件とせず、自由度を確保した要項とした。 ◼ 自己啓発での参画から徐々にコミットを増やしていくステージゲート制で、企業所属者の参加にも対応。 取組詳細 ▍ 外部専門人材を活用して、各案件のメンタリングやステージゲート審査を実施 • 応募者に起業経験者は少なく、資金調達への助言やメンタリングは別途必要。専門的なノウハウを有する 外部専門人材のプールを形成し、個別メンタリングやステージゲート審査を担当した。 ▍ ①既存事業部、②カーブアウト(出向起業)、の2つの出口戦略を用意 • 約1年間の事業検証・ステージゲート審査を通して、最終審査を通過した案件については、法人化(法人設 立)または、該当部門の新規事業として推進、のいずれかの形で事業を継続することとした。 • 南海電鉄は自社社員の新規事業案について、”出向起業※”の形でカーブアウトを行った実績あり。本件につ いても、新規事業の責任者としての自由度を確保するうえで、出向起業の出口を用意している。 ▍ 企業所属者の参加に配慮しつつ、自社での雇用をセーフティーネットとして提示 • 現在企業に所属する人材も含めて対象とし、業務時間外も活用しながら参加できる ようにプログラム内のメンタリング日時等についても配慮。 • 最終審査を通過したEIRは、原則南海電鉄で雇用。大手企業に雇用されながら起業が できるモデルとして、家庭等の事情によりセーフティーネット無しで起業に挑戦す ることが難しい層などへの訴求を狙ったものでもある。 ▶ 外部専門人材で 事務局を強化し、 新事業創出型を 実行 ▶ 大手企業による 雇用が出口戦略 ※) 出向起業とは、大企業内では育てにくい新事業について、当該大企業社員が、辞職せずに外部VCからの資金調達や個人資産の投下を 経て起業し、起業したスタートアップに自ら出向等を通じて事業開発を行うこと(https://co-hr-innovation.jp/) 23

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事例集|南海電気鉄道株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ 南海電鉄に雇用され、出向起業や企業内起業による新規事業推進を目指したい外部人材の獲得を目指し た。そのような人物像は企業に所属しているケースが多いため、企業所属者の参加に配慮を行った。 ◼ 自社内では不足する多様な事業案や推進力のある人材の獲得が目的であるため、事業テーマ等の制限は 極力無くし、多様な応募を受け入れることを目指した。 契 約 内 容 • プログラムの参加及び提供の契約の締結。プログラム参加中の知財の所属は南海電鉄に帰属す ることを前提に、プログラムの最終ステージを通過し事業化することが決まった際には、南海 電鉄に転職する旨を合意。 • 検証Phに進んだ案件は月5万円の活動費支給+プロトタイプ開発費の南海電鉄負担を別途協議。 ☞ 狙い 参画ハードルの低減、企業所属者への訴求 公 募 方 法 審 査 方 法 客 員 起 業 家 採 用 し た • 南海電鉄のアセット利用の有無やテーマの制限なく、幅広く公募。社員からは構想されない多 様な事業アイデア、およびその構想を進める意欲のある多様な人材からの募集を狙った。 ☞ 狙い 事業アイデアの多様性、候補者の多様性 • 事業アイデア内容が一定水準にあることを前提として、30分程度の面談を実施し、熱意を持っ て事業検討に取組むことが可能な人材かどうかを含めて審査。 • 専門的な知見が必要な事業アイデアについては、外部専門家も面談に同席。 ☞ 狙い 中途採用の可能性を見据えて、自社に不足する部分を補う人物を選定 • 起業・新規事業には興味があるが、現在の会社では進められない、いきなり独立はハードルが 高いと感じている、フリーランス・会社員 • 事業特性上、どうしても安定志向が高い自社に不足しがちな、失敗しても何度もチャレンジで きる推進力のある人物(の採用を目指している) EIRの成果と今後の改善方針 外部人材から50件の応募あり。社内人材の案件と並行して出向起業を目指す。 成 果 • 50件の応募(8割企業所属者、2割フリーランス)が集まり、通過した5件が事業化に向け推進 中。新規事業の新たな可能性を探ることのできる一施策となった。既に社内人材では3件の カーブアウト(出向起業)を実現。本件の5件についてもその出口を目指し事業検証を進める。 本社機構の中では、新規事業経験者が10%まで増加 • 新規事業開発プログラムやbeyond the Borderプログラムに関わることで、新規事業に携わっ た人材は本社機構でも徐々に増えている。今後、EIRが立ち上げた新規事業案への関与、また はEIR自身の採用によって、新規事業経験者の比率を増やしていくことを目指す。 より尖った人材へのリーチ・参加前のコミュニティ形成 改 善今 方後 針の • プログラム参加前からアイデアの壁打ちなどを行える機会を設ける等により、より尖っ た人材にリーチできるコミュニティ形成等を目指す。 専門人材の多様化・内製化 • より幅広い支援の提供が可能な環境を整備する。具体的には、イノベーション領域で知見を 持つ弁護士や会計士を想定。将来的には一定内製化できることを目指す。 24

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事例集|三菱地所株式会社 企業概要 業種:事業会社 三菱地所は不動産をメイン事業としつつも、近年ではCVC設立などオープンイノベーションに向けた取組 を本格化させている。その一環として、大手町・丸の内・有楽町地域に集積する大企業と都市のリソース を組み合わせイノベーションを生み出すイノベーションプラットフォーム”TMIP”を運営。産官学を含む 51団体が参加し、街をフィールドとした実証実験やイベント、新技術活用等の取組を行っている。 EIR導入の背景 類型:新事業創出型 ▍ 戦略と課題 • 三菱地所がオープンイノベーションを更に推進していくうえで、短期的な シナジーを求める不動産事業周辺領域での協業を超えて、広くスタート アップエコシステムに入り込んでいく必要があった。 • TMIPの取組は、都心の大企業・スタートアップのネットワーキングを推 進してきた。近年では”地方”領域のニーズも強く、TMIPとして”大企業× 地方”のオープンイノベーションプラットフォーム事業を新規企画。 • 一方で、三菱地所としては地方に関する知見や人脈が不足。当該エコシス テムに接続でき、かつ企画自体を推進できる人材が必要だった。 ▍ 目的 • 地域の課題に精通しており、かつ自律的に地方で活動しているEIRととも に、当該プログラムの企画および地域エコシステムとの接続を目指した。 “ 経験豊富なEIRの方に新規 事業の立ち上げ段階から 関わっていただくことで、 大きく事業が進捗しまし た。EIRの推進力が社内の メンバーにも波及し、 チームの士気向上にもつ ながりました。 エリアマネジ メント企画部 専任部長 奥山博之 制度設計におけるポイント ◼ 過去の副業・兼業での新規事業開発における人材の募集等のノウハウを活かして契約 形態・詳細を検討。また過去の取組と対比してEIR活用の意義を整理した。 ▶ 過去の事業と対 比してEIR活用 の意義を整理 取組詳細 ▍ メインの事業内容は受入チームで作成し、雇用契約等の詳細は社内のバックオフィスと協業 • 契約時の留意点等、制度の詳細についての整理や設計は実行チームが作成した後、 バックオフィス部門に相談し全社の承認を取る流れにしている。これにより実態に 即しながら事業のリスクを低減した運営が可能になっている。例えば今回の事業で は、過去の類似事業で作成した、委託契約において雇用とみなされないための チェックリストが有効に活用できた。 ▶ 契約等の制度詳 細はバックオ フィスとも協業 ▍ “タスクを切り出す”のではなく、抽象度の高い課題を”一緒に検討する”ことで事業をピボット • 仕様を定めてタスクを発注する”受発注”の関係とは異なり、お互いに地方での新規事業を作っていくパート ナーとして契約。依頼事項の抽象度は高いが、EIRが自律的に考え、行動する自由度が確保されていた。 • 上記の関係性を前提として、EIRは地方自治体や地方スタートアップへのヒアリングやトライアルを実施し てニーズを検証。検証結果を踏まえて三菱地所・EIR間で議論を進めて、プログラム内容を再検討した結果、 当初想定していたプログラムでは求める結果が得られないと判断し、内容を大きくピボットしていった。 25

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事例集|三菱地所株式会社 EIRの人物像と契約戦略 ◼ 三菱地所は地域で新規事業をつくりたいが地方とのつながりがない、という特殊な条件があり、EIRに 求める条件としては地縁ネットワークを有することが必要だった。実績を豊富に有し、人柄もわかって いる人材をリファラルで採用した。 • 約5ヶ月半の業務委託契約を締結。 契 約 内 容 ▶ 社内での起案の通 しやすさの観点で 短期・委託で契約 • 新規事業開発業務を委託内容として設定。課題が明確になっていない状態 で社内の起案を通すため、スモールスタートとして、短期かつ委託契約で の発注とした。 ☞ 狙い 経験豊富なEIRが自律して活動できるよう、業務委託で契約 • 条件を洗い出した上で、リファラルで条件に合致する人材を採用。 公 募 方 法 審 査 方 法 • EIR制度の検討段階から、条件に合致すると考えていた候補5名程度に声掛け。コミット度合い 等を相談のうえ、候補を2名に絞り込んだ。 ☞ 狙い 既存のネットワークを活かし、リファレンスチェックも入れられるリファラルで採用 • 普遍的な条件としては抽象度の高いオーダーに応じて自らアクションできること、またEIR事業 では地域の課題を自分ごととして語られること、また地域・大企業等の異なるステークホル ダーの立場を理解できることと言った条件を設定した。 • 必要なスキルがEIR一人では不足しそうな場合には、EIRを複数人採用し不足を補い合うことも 検討していた。またリファラルでの採用が難しかった場合、ビズリーチを通じて公募すること も検討していたが、最低限の人数、かつリファラル採用で必要としていたEIRの確保に成功した。 ☞ 狙い EIRに求めるスキルを確実に確保するため、複数人の採用や複数手法を検討 採用した 客員起業家 • それぞれ九州地方に繋がりの強い地域を持ち、コンサル経験等も豊富に有する2名を採用。 EIRの成果と今後の改善方針 課題・タスクの検討から外部人材を巻き込む事業の発注実績ができた • 通常、三菱地所においては課題・タスクが明確になっていない事業は外部に発注するハード ルが高い。しかし今回の新規事業検討では課題の特定が最もキーとなる部分であり、外部に 検討を依頼する必要があった。経験豊富な起業家候補との伴走の中で新規事業を作り上げる EIR制度だからこそ、社内起案を通すことができた。 成 果 連携地域の開拓・地方エコシステムへの接続に成功 • EIR事業での目標であった、大企業を巻き込んだ地域プロジェクト組成に2地域で成功。先行 体験プログラムも実施しており、大企業7社が参加した。 • これまで、知見・人脈が不足していた地方エコシステムについて、三菱地所として具体的な 課題が認識でき、かつ直接やりとりができる地方プレーヤーと関係性を構築できた。 改今 善後 方の 針 リファラル採用のプールの拡充 • 社内で別途動いている地方創生に取り組んでいるグループのように、社内の個人に紐づいた 情報を統合し、プールを充実させる必要性を認識。 26

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発行元 経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 委託 一般社団法人社会実装推進センター 株式会社野村総合研究所