法務年鑑令和2年(保護局)

190 Views

October 26, 22

スライド概要

「法務省」「白書・統計・資料」「白書・統計」「白書」「法務年鑑」「法務年鑑(令和2年)」
https://www.moj.go.jp/content/001360274.pdf

profile-image

保護司会、更生保護女性会、BBS会のみなさん、それぞれが作成したスライドをタグ「更生保護」で共有しましょう。

シェア

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

Ⅴ 保 護 局 法務省設置法第3条,第4条 法務省組織令第2条,第7条,第12 条,第40条~第43条 法務省組織規則第13条~第15条 〈重要施策の概要〉 1 保護観察の充実強化 保護観察の充実強化策の一環として,特定の犯罪的傾向を改善するための専門的 処遇プログラムの実施,被害者のある重大な犯罪をした保護観察対象者に対する しょく罪指導の実施,規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に対する自発 的意思に基づく簡易薬物検出検査,ストーカー行為等に係る仮釈放者及び保護観察 付執行猶予者に関する警察との連携,担当保護司の複数指名等を実施している。 さらに,保護観察対象者に対し特性に応じた効果的な指導・支援を行うためのア セスメント・ツール(CFP:Case Formulation in Probation/Parole)を開発し, 令和3年1月から実施している。 2 生活環境の調整の充実強化 平成29年12月15日,再犯防止推進計画が閣議決定され,保護観察所が実施する受 刑者等の釈放後の生活環境の調整における地方更生保護委員会の関与を強化し,適 切な帰住先を確保するための取組の充実を図る旨が盛り込まれた。また,令和元年 12月23日には,犯罪対策閣僚会議において再犯防止推進計画加速化プランが策定さ れ,生活環境の調整を充実強化させて仮釈放の積極的な運用を図るほか,あわせて 満期釈放者に対する受け皿等の確保に努めることとされた。 更生保護官署においては,上記決定等を踏まえ,保護観察所における受刑者等の 釈放後の生活環境の調整が一層促進されるよう,地方更生保護委員会において更生 保護法第82条第2項及び第3項に基づく調査・調整を積極的に行うなどの取組を進 めている。 また,四国地方更生保護委員会においては,高松矯正管区と連携し,満期釈放予 定で帰住先がなく更生保護施設への帰住を希望する者について,管内の施設で入所 調整を行い,可能な者は釈放と同時に確実に受け入れる仕組みを,令和元年8月か ら開始した(四国ポータル・プラン) 。 3 自立更生促進センター及び就業支援センターの運営 特定の問題性に応じた重点的・専門的な社会内処遇を実施する自立更生促進セン ター及び主として農業等の職業訓練を行う就業支援センターを設置・運営している。 自立更生促進センターは, 福岡県北九州市の「北九州自立更生促進センター」 (平 成21年6月開所)及び福島県福島市の「福島自立更生促進センター」(平成22年8 月開所)の2か所,就業支援センターは,北海道雨竜郡沼田町の「沼田町就業支援 センター」 (平成19年10月開所) 及び茨城県ひたちなか市の 「茨城就業支援センター」 (平成21年9月開所)の2か所である。 4 薬物事犯者に対する処遇の充実強化 -157-

2.

覚醒剤の使用等の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対しては,平成20年6月 から,簡易薬物検出検査及び認知行動療法に基づく教育課程を一体のものとして運 用する覚せい剤事犯者処遇プログラムを特別遵守事項に定めて実施してきたところ, 平成28年6月からは,刑の一部の執行猶予制度の施行に伴い,名称を薬物再乱用防 止プログラムに変更し,特別遵守事項に定めて実施する対象を規制薬物等の自己使 用事案及び所持事案に拡大した。また,同プログラムの実施対象者以外の者や同プ ログラムを修了した者であって規制薬物に対する親和性・依存性が認められる者に ついては,自発的意思に基づいて,簡易薬物検出検査を実施している。さらに,薬 物依存のある保護観察対象者の処遇に関して,地域の医療・保健・福祉機関,民間 支援団体と保護観察所等の刑事司法機関との有効かつ緊密な連携体制を整備するた め,平成27年11月に法務省と厚生労働省との共同で「薬物依存のある刑務所出所者 等の支援に関する地域連携ガイドライン」 を策定し,平成28年4月から実施している。 5 就労支援の推進 ⑴ 更生保護就労支援事業等 刑務所出所者等に対する就労支援として,刑務所出所者等総合的就労支援対策 に加え,民間法人等に委託することで,矯正施設在所中から就職後の職場定着に 至るまで,専門家による継続的かつきめ細かな支援等を行う「更生保護就労支援 事業」を実施している。平成23年度は全国3か所において実施していたところ, 平成26年度からは対象地域を9か所に拡大して本格実施を開始し,令和2年度は 対象地域19か所(札幌,栃木,茨城,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,静岡, 岐阜,愛知,京都,大阪,兵庫,広島,岡山,香川,福岡及び沖縄)で実施した。 また,平成24年1月から,東日本大震災被災地域(岩手,宮城及び福島)におい て,被災地域の事情を踏まえた「更生保護被災地域就労支援対策強化事業」を開 始し,刑務所出所者等の更なる就労の確保を図った。 ⑵ 刑務所出所者等就労奨励金支給制度 平成27年度から,刑務所出所者等を雇用した協力雇用主に対し1年間で最大72 万円を支給する「刑務所出所者等就労奨励金支給制度」を導入し,協力雇用主の もとでの就労の拡大を図っている。 6 住居確保支援の推進 ⑴ 更生保護事業の適切な運営等について 平成30年から令和元年にかけて,全国103の更生保護施設について常勤補導職 員配置基準を1名増やすとともに,更生保護事業を営む者に対する助言,指導及 び監督に加え,薬物事犯者等の特定の類型に当たる者を受け入れた場合における 委託費の加算措置を通じて,更生保護施設における刑務所出所者等の受入れを促 進した。 また,平成29年5月16日から更生保護施設を退所するなどして地域にその生活 基盤を移行した保護観察対象者及び更生緊急保護対象者に対し,継続的に生活相 -158-

3.

談に応じ,又は生活指導を行うフォローアップ事業を,更生保護事業法に基づき 所要の手続を行った事業者(更生保護施設を設置・運営する者)に委託し,更生 保護施設を退所した者等に対する継続的な支援を行っている。 さらに,更生保護事業(施設整備事業)費補助金の交付を通じて更生保護施設 整備計画を推進するとともに,更生保護施設職員研修の実施による施設職員の資 質向上を図った。 ⑵ NPO法人等と連携した刑務所出所者等の住居確保について 更生保護施設における受入れを促進していくことに加え,あらかじめ保護観察 所に登録したNPO法人等が管理する住居を活用し,宿泊場所の供与と自立のた めの生活指導(自立準備支援)のほか,必要に応じて食事の給与を委託する「緊 急的住居確保・自立支援対策」を通じて,帰るべき場所のない刑務所出所者等の 多様な受入れ先を確保した。 7 高齢者・障害のある者等への支援の充実 高齢者・障害のある者等の支援については,矯正施設入所中からの矯正施設,保 護観察所および地域生活定着支援センターの連携による特別調整とこれに基づく出 所後の福祉関係機関等と連携した支援に引き続き努めたほか,平成30年から,保護 観察所19庁(令和2年4月現在23庁)に更生緊急保護対象者に継続的な生活指導や 助言を行う特別支援ユニットを整備し,起訴猶予となった高齢者・障害のある者等 に対する「入口支援」への取組を開始した。 8 地方公共団体と連携した再犯防止の推進 保護観察所において,地方検察庁,矯正施設と連携しながら,令和2年は,主に 都道府県,政令指定市を中心に再犯防止への取組に向けた協議や情報交換を重ね, 地方公共団体における地方再犯防止推進計画の策定や36か所の地方公共団体での地 域再犯防止推進モデル事業の実施及び効果検証に協力した。 9 保護司の適任者確保について 近年,保護司人員が減少傾向にあることに加え,保護司からも適任者の確保が困 難になっているとの声がある中,保護司の安定的確保は喫緊の課題となっている。 こうした状況を踏まえ, 「保護司の適任者確保のための緊急行動宣言」 (令和2年2 月27日)に基づき更生保護法人全国保護司連盟と共働し,保護司の適任者確保に向 けた取組を緊急的かつ強力に推進するための緊急対策本部を設けた。さらに,令和 2年度には,更生保護官署と保護司組織が,その緊密な連携の下,なしうる取組や 社会資源を総動員して,これまで以上に積極的に行動するため地方対策本部の設置 を進めた。 -159-

4.

〈会 同〉 月 日 件 名 協 議 会 事 項 4.17 地方更生保護委員会事務 1 保護司の適任者確保のための方策について 局長協議会(テレビ会議 2 再犯防止推進計画加速化プランに対する効 システム使用) 果的な取組方策について 6.4 地方更生保護委員会委員 1 新型コロナウイルスの感染状況を踏まえた 長・ 保 護 観 察 所 長 会 同 業務の現状及び課題と今後を見据えた対応策 (テレビ会議システム使 について 用) 2 重大な再犯の防止を徹底するための方策に ついて 3 犯罪被害者等の思いに応える制度運用につ いて 6.19 地方更生保護委員会委員 1 仮釈放の積極化の推進と82条調査・調整の 長会同(テレビ会議シス 拡充について テム使用) 2 新型コロナウイルス感染症による社会情勢 の変化を踏まえた今後の更生保護の在り方に ついて 3 その他当面する諸課題について 10.14・15 地方更生保護委員会委員 1 満期釈放者対策の推進について 長会同 2 コロナ禍における保護司適任者確保の取組 の推進について 3 その他当面する諸課題について 11.25・26 地方更生保護委員会事務 現下の課題を踏まえた満期釈放者対策の充実化 局長会同(テレビ会議シ 策について ステム使用) 12.1・3・ 地方更生保護委員会事務 1 新型コロナウイルスの感染状況を踏まえた 15・17・18 局首席・統括審査官等及 保護観察及び生活環境調整の在り方について び保護観察所首席・統括 2 特別調整対象者に対する仮釈放の適正な運 保護観察官会同(テレビ 用等について 会議システム使用) 総務課 1 法務省組織令第40条,第41条 法務省組織規則第13条 地方更生保護委員会及び保護観察所の管理 常時各庁の事務処理状況の把握に努め,職員の配置及び服務,予算執行等につい ての事務運用方針に関する必要な通達を発し,質疑に対する回答を行った。 -160-

5.

2 法令の改正等 ⑴ 令和2年3月30日付け法務省令第15号をもって保護観察所組織規則の一部が改 正され,盛岡,東京及び大阪保護観察所にそれぞれ統括社会復帰調整官1人が増 設され,同年4月1日から適用された。また,令和2年3月30日付け法務省令第 16号をもって地方更生保護委員会事務局組織規則の一部が改正され,関東,中部 及び近畿地方更生保護委員会にそれぞれ調整指導官1人が増設され,同年4月1 日から適用された。 ⑵ 令和2年6月25日付け法務省令第41号をもって更生保護委託費支弁基準の一部 が改正され,委託事務費の単価が改められ,令和2年4月1日から適用された。 また,令和2年7月27日付け法務省令第44号をもって更生保護委託費支弁基準 の一部が改正され,令和2年度補正予算(第2号)において,更生保護施設にお ける新型コロナウイルス感染症拡大下での処遇体制を推進するための経費が予算 措置されたことに伴い,委託事務費の単価が改められたほか,同感染症の影響に より就業すること等が困難である被保護者を更生保護施設に委託した場合の委託 費の支弁について加算する旨の規定が新設され,令和2年6月12日から適用された。 3 保護司・更生保護法人役員等の表彰 長年,更生保護事業に従事し,功績のあった保護司・更生保護法人役員・更生保 護女性会役員・協力雇用主等に対する表彰として,令和2年は,叙勲231人,藍綬 褒章271人,法務大臣表彰1,000人の顕彰が行われた。 4 常時恩赦 令和2年中の常時恩赦の受理及び処理状況は,次の表のとおりである。 処 当 処 理 権 他 刑 の 赦 復 減 計 特 刑 権 赦 権 数 刑の執行の免除 理 相 不 復 減 - 計 特 復 刑 - 当 刑の執行の免除 相 そ 総 減 越 計 数 176 81 95 21 42 受 刑の執行の免除 数 総 赦 繰 分 特 総 区 理 新 未 常時恩赦の受理及び処理状況(令和2年) 受 6 26 118 7 - 7 110 20 72 6 12 1 58 - 17 11 6 - - - 6 - - 5 - 刑 事 施 設 138 75 63 17 42 4 - 94 - - - - - 93 16 72 5 - 1 44 検 2 9 13 1 - - - 1 12 1 7 - 保護観察所 察 庁 20 18 3 17 3 15 4 - 5 4 - 9 5 5 恩赦出願期間短縮 令和2年における恩赦出願期間短縮願は,受理総数9人,既済人員8人である。 6 即位の礼に当たり行われた特別基準恩赦 標記特別基準恩赦の受理及び処理状況は,次の表のとおりである(特別基準恩赦 の概要は,法務年鑑(令和元年)168, 169ページ参照)。 -161-

6.

特別基準恩赦の受理及び処理状況 上申期間 自 令和元年10月22日 至 令和2年7月21日 最終処理 受 区 分 総 総 理 処 相 数 当 刑の執行 の免除 計 令和2年12月18日 理 不 復 権 相 当 刑の執行 の免除 計 復 権 数 100 28 8 20 72 10 62 庁 100 28 8 20 72 10 62 保護観察所 - - - - - - - 検 7 察 医療観察 心神喪失者等医療観察法に基づく生活環境調査事件・生活環境調整事件・精神保 健観察事件の各処理状況の推移は,次の表のとおりである。 -162-

7.

医療観察における処理状況の推移(事件別)(平成23年~令和2年) 事件別 生活環境 調査事件 年 次 開始件数 終結件数 年末係属件数 平成23年 431 (16) 413 (19) 90 (1) 平成24年 375 (20) 403 (19) 62 (2) 平成25年 396 (8) 387 (8) 71 (2) 平成26年 367 (11) 368 (13) 70 平成27年 339 (13) 351 (10) 58 (3) 平成28年 362 (11) 353 (13) 67 (1) 平成29年 388 (21) 372 (20) 83 (2) 平成30年 308 (15) 335 (13) 56 (4) 令和元年 299 (8) 294 (11) 61 (1) 令和2年 336 (11) 321 (12) 76 平成23年 280 167 642 平成24年 263 237 668 平成25年 276 202 742 平成26年 267 239 770 生活環境 平成27年 調整事件 (居住地) 平成28年 261 303 728 243 246 725 平成29年 277 246 756 平成30年 246 264 738 令和元年 223 206 755 精神保健 観察事件 令和2年 239 201 793 平成23年 180 174 530 平成24年 226 206 550 平成25年 203 197 556 平成26年 234 200 590 平成27年 287 210 667 平成28年 239 220 686 平成29年 236 257 665 平成30年 257 266 656 令和元年 200 235 621 令和2年 202 247 576 注1 生活環境調査事件の欄の( )内は,法第33条第1項の申立て以外の処遇事件に係る件数であり, 内数である。 注2 事件移送による開始及び終結を除く。 -163-

8.

8 犯罪被害者等施策 ⑴ 実施状況 令和2年の実施状況は,次のとおりである。 実 施 状 況 意見等聴取制度 地方更生保護委員会が被害者等から仮釈放等に関する意 見等を聴取した件数 311件 心情等伝達制度 保護観察所が被害者等から被害に関する心情等を聴取し 保護観察中の加害者に伝達した件数 155件 更生保護における 地方更生保護委員会が仮釈放等審理について被害者等に 被害者等通知制度 通知した件数 3,938件 保護観察所が加害者の保護観察中の処遇状況等を被害者 等に通知した件数 7,206件 相談・支援 ⑵ 保護観察所が犯罪被害者等からの相談に応じ関係機関等 の紹介等の支援を実施した件数 1,473件 研修等の実施 ア 令和2年度新任被害者担当官等勉強会 令和2年6月,法務省において,全国の新任の被害者担当官等に対し,犯罪 被害者等施策に関する勉強会をテレビ会議システムを用いて実施した。 イ 令和2年度被害者担当保護司研修 令和2年9月,法務省において,全国の被害者担当保護司に対し,犯罪被害 者等への配慮の在り方等に関する研修をテレビ会議システムを用いて実施した。 9 更生保護制度についての調査研究 更生保護制度の充実を図るため,主要各国の更生保護制度等の情報及び資料の収 集整備その他の調査研究を行った。 更生保護振興課 1 法務省組織令第40条,第42条 法務省組織規則第14条 令和2年度保護司等中央研修会 令和2年9月9日,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,代表受領者 のみ法曹会館に参集し,功労者の顕彰が行われるとともに, 「令和時代の保護司へ の期待」をテーマに識者と対談が行われた。同研修会の様子は,YouTube にて生 配信された。 -164-

9.

2 地方別保護司代表者協議会 地方別保護司代表者協議会は,各地方において保護司の代表者の参集を求め,そ れぞれの地方において更生保護の活動を推進する上で当面する諸問題について研究 協議を行い,更生保護の一層の充実発展を図ろうとするものである。 3 第57回 “ 日本更生保護女性の集い ” 新型コロナウイルス感染拡大の影響により,令和2年6月9日,有楽町朝日ホー ルにおける第57回 “ 日本更生保護女性の集い ” の開催に代え,更生保護女性会活動 に功績のあった個人及び団体に対して日本更生保護女性連盟会長表彰の授与が個別 に行われた。 4 令和2年度更生保護女性会員中央研修 更生保護の意義を確かめ,今後の更生保護女性会活動の一層の充実発展を期すた め,東京都・アルカディア市ヶ谷私学会館において令和2年度更生保護女性会員中 央研修を実施する予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,中 止された。 5 BBS会におけるクラウドファンディングの活用の推進 再犯防止活動に対する民間資金の活用の一環として,BBS会におけるクラウド ファンディングを推進している。 具体的には,令和元年度中に行われたクラウドファ ンディングの成功事例などをマニュアルにまとめ,全国のBBS会に配布するとと もに,法務省ホームページに掲載した。また,BBS会員にクラウドファンディン グをより身近に感じてもらうために,クラウドファンディングに挑戦したBBS会 員が出演する教材動画を,BBS会の各種研修向けに作成した。 6 更生保護女性会・BBS会新会員研修 平成23年度から導入された,「更生保護女性会・BBS会新会員研修」は,地区 更生保護女性会又は地区BBS会に新たに入会した会員を対象として , 更生保護の 概要や保護観察対象者等との接し方等に関する基礎的知識及び技能を付与するとと もに , 保護観察所との連携を一層促進することで地区会活動の充実発展を図ること を目的とした研修であり , 令和2年度は地域の実情にあわせて各保護観察所におい て実施された。 7 “ 社会を明るくする運動 ” ~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカ ラ~ “ 社会を明るくする運動 ” ~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカ ラ~は,すべての国民が,犯罪や非行の防止と犯罪や非行を犯した人たちの更生に ついて理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない安全で 安心な明るい地域社会を築くための全国的な運動であり,法務省が主唱して,毎年 7月を強調月間として実施されている。 令和2年に第70回の節目を迎えた本運動は,新型コロナウイルス感染症感染拡大 の影響により,多くの人が参集したり対面したりする行事等の実施が困難となった -165-

10.

ものの,SNSを活用するなどの工夫により,いわゆる非接触型の活動を中心に, 各地で活発な運動が展開された。 なお,第70回運動から,従来の実施要綱が次のとおり大幅に改訂された。 ・ この運動が目指すこと (目標1) 犯罪や非行を防止し,安全で安心して暮らすことのできる明る い地域社会を築くこと (目標2) 犯罪や非行をした人が再び犯罪や非行をしないように,その立 ち直りを支えること ・ この運動において力を入れて取り組むこと ⑴ 犯罪や非行をした人の立ち直りを支え,再犯を防止することの大切さや, 更生保護の活動について,広く知ってもらい,理解を深めてもらうための 取組 ⑵ 保護司,更生保護女性会員,BBS会員,協力雇用主等の更生保護ボラ ンティアのなり手を増やすための取組 ⑶ 犯罪や非行の防止や,犯罪や非行をした人の立ち直りには様々な協力の 方法があることを示し,多くの人に支え手として加わってもらうための取 組 ⑷ 民間協力者と地方公共団体と国との連携を強化しつつ,犯罪や非行をし た人が,仕事,住居,教育,保健医療・福祉サービスなどに関し必要な支 援を受けやすくするためのネットワークをつくる取組 ⑸ 犯罪や非行が起こらないよう,若い人たちの健やかな成長を期する取組 各地においては,関係機関・団体で構成される推進委員会を設置し,各種行事等 を実施しているところ,その実施状況は次のとおりである。 ⑴ 推進委員会の設置状況 中央に127の関係機関・団体で構成された中央推進委員会が設置されたほか, 各都道府県を単位(北海道にあっては,道及び道内各保護観察所単位)とした都 道府県推進委員会が,また,市区町村等を単位とした地区推進委員会が設置され た。 -166-

11.

⑵ 行事の実施状況 (中央推進委員会関係) 行 事 名 内 容 新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止 全国矯正展 第70回 “ 社会を明るく 7月1日,法務省において,本運動フラッグアーティ する運動 ” キックオフ ストの谷村新司氏や,吉本興業所属芸人「よしもと社 明アンバサダー」が出演するキックオフイベントを実 イベント 施した。 官邸イベント「ミライ 7月21日,首相官邸において,安倍晋三内閣総理大臣, 谷村新司氏,保護司及びBBS会員による官邸イベン の出会い」 ト「ミライの出会い~ウィズ・コロナ,ポスト・コロ ナにおける新しい『出会い』と『立ち直り』」を実施 した。 全国の小中学生150,725人が参加 作文コンテスト 保護観察官による更生 全国の福祉関係者等を主な対象として保護観察官によ る更生保護に関する講座を開催した。 保護出張講座 (地方推進委員会関係) 行 推 進 事 参加人員 27,366 等 13,081 128,070 等 2,948 62,235 等 1,536 63,910 等 8,081 293,575 C M 動 画 等 放 映 回 数 1,382,813 - 講 非 各 出 合 活 演 行 会 推進委員会 1,555 頭 員 回数 議 街 委 名 防 種 動 会 止 教 行 張 室 事 講 座 55 1,891 計 1,410,069 577,047 -167-

12.

8 保護区数及び保護司定数 令和2年末における保護観察所別の保護区数及び保護司定数は,次の表のとおり である。 庁名 札 函 旭 釧 幌 館 川 路 計 青 盛 仙 秋 山 福 森 岡 台 田 形 島 計 水 戸 宇都宮 前 橋 さいたま 千 葉 東 京 横 浜 新 潟 甲 府 長 野 静 岡 計 富 金 福 岐 名古 津 計 山 沢 井 阜 屋 保護 保護司 保護司 充足率 庁 名 保護 保護司 保護司 充足率 区数 定数 実数 区数 定数 実数 31 1,435 1,209 84.25% 大 津 9 498 473 94.98% 8 541 451 83.36% 京 都 22 1,232 1,045 84.82% 12 724 614 84.81% 大 阪 56 3,452 2,901 84.04% 16 860 771 89.65% 神 戸 34 2,151 1,848 85.91% 67 3,560 3,045 85.53% 奈 良 14 578 510 88.24% 和歌山 10 654 607 92.81% 11 630 549 87.14% 計 145 8,565 7,384 86.21% 14 667 611 91.60% 17 807 736 91.20% 鳥 取 8 390 370 94.87% 12 715 664 92.87% 松 江 9 510 507 99.41% 11 666 626 93.99% 岡 山 18 1,042 952 91.36% 18 1,010 929 91.98% 広 島 23 1,338 1,201 89.76% 83 4,495 4,115 91.55% 山 口 13 850 802 94.35% 計 71 4,130 3,832 92.78% 19 969 912 94.12% 13 927 815 87.92% 徳 島 9 506 475 93.87% 13 896 783 87.39% 高 松 9 590 544 92.20% 25 1,644 1,480 90.02% 松 山 12 804 753 93.66% 26 1,418 1,250 88.15% 高 知 15 600 512 85.33% 33 4,375 3,343 76.41% 計 45 2,500 2,284 91.36% 45 2,001 1,687 84.31% 21 1,055 930 88.15% 福 岡 30 2,157 1,821 84.42% 13 490 468 95.51% 佐 賀 8 550 514 93.45% 19 1,015 956 94.19% 長 崎 11 890 791 88.88% 28 1,495 1,323 88.49% 熊 本 16 1,043 977 93.67% 255 16,285 13,947 85.64% 大 分 12 660 599 90.76% 宮 崎 12 605 545 90.08% 11 605 558 92.23% 鹿 児 島 15 910 829 91.10% 8 552 492 89.13% 那 覇 8 615 568 92.36% 10 435 416 95.63% 計 112 7,430 6,644 89.42% 21 790 759 96.08% 42 2,389 2,198 92.01% 合 計 886 52,500 46,358 88.30% 16 764 684 89.53% 108 5,535 5,107 92.27% -168-

13.

9 更生保護事業を営む者 ⑴ 令和2年末における更生保護事業を営む者の数及び組織の状況は次の表のとお りである。 区 組 織 態 様 別 団 体 数 分 更生保護法人 非更生保護法人 更生保護 計 施 設 数 継続保護事業を営む 1 1 2 2 連絡助成事業を営む 15 1 16 … 一時保護事業を営む 1 - 1 … 継続保護事業及び一時保 護事業を営む 連絡助成事業及び一時保 護事業を営む 96 2 98 100 50 - 50 … 1 - 1 1 164 4 168 103 す べ て を 営 む ( 合計 ) ⑵ 天皇誕生日に際して,更生保護法人8団体(更生保護法人北見更生保護会,更 生保護法人清心寮,更生保護法人更新会,更生保護法人東京実華道場,更生保護 法人中協園,更生保護法人神戸学而園,更生保護法人佐世保白雲,更生保護法人 豊州保護会)が,事業奨励のための御下賜金を拝受した。 ⑶ 令和2年末における更生保護施設の状況は,次の表のとおりである。 地方別分布状況 区 分 全国 北海道 東北 更生保護施設数 103 収 容 定 員 2,402 ⑷ 8 191 6 126 関東 中部 近畿 中国 四国 九州 35 864 12 253 13 385 8 173 4 76 17 334 令和2年度の収容保護状況は,次の表のとおりである。 区分 総数 全国 実人員 7,206 延人員 560,785 ※実人員は,種別異動を除外している。 -169-

14.

⑸ 令和2年度更生保護事業関係予算は,次の表のとおりである。 更 生 保 護 入 区 分 総 額 単 価 - (円) 金 額 5,430,965 (千円) 補 導 補 導 委託費… 委託費… (一般分) (加算分) 費 託 その他施設等 食事付… 宿泊費 緊急的住居確保分 宿泊費 委 託 事務費 支援計画… 書作成費 宿泊費 宿泊費 単 価 (円) 金 額 (千円) 自立準備… 支 援 費 128.70 2,037.43 702.98 5,935.38 8,500 1,500 1,213 2,000 88,753 16,652 1,034,182 63,321 3,547,377 25,883 176,400 102,232 235,200 生 保 護 委 託 費 通 所 委 託 薬物依存対策分 分 食 事 給与費 148.50 更 ⑹ 託 委 更生保護施設 入 所 委 託 その他施設等 区 委 所 食事費 給与費 通所等 通所等 補導援護費 補導援護費 補導援護費 処遇費 処遇費 自立準備… (薬物依存 (職業訓練 (薬物依存 支 援 費 (薬物依存回 (生活相 回復訓練分) 委託分) 回復訓練分) 復プログラム) 談支援) 更生保護… 事 業 費… 補助金 1,500 1,213 2,000 1,297 3,064 1,297 1,297 148.50 - 33,047 26,723 44,062 16,406 4,780 5,238 8,161 2,548 356,750 更生保護事業に関する地方別検討会(後期)の開催 全国を7ブロックに分け,令和2年2月12日から同月13日(東北) ,同月18日 から同月19日(北海道) , 同月20日から同月21日(中部), 同月27日から同月28日(中 国・四国)の日程で,標記地方別検討会が開催された。本地方別検討会は,平成 30年から令和元年にかけて実施された,これからの更生保護事業に関する有識者 検討会及び更生保護事業の在り方に関する意見交換会を踏まえ,保護局において 全国の更生保護事業者と意見交換を行い,これからの更生保護事業が進むべき方 向性を示すことを目的としており,各事業者の理事長・施設長等が出席した。 なお,関東,近畿及び九州ブロックについては,新型コロナウイルス感染症拡 大防止の観点から,令和2年9月18日にテレビ会議システムを用いて実施された。 ⓾ 刑務所出所者等に対する就労支援施策 平成18年度から,矯正局及び厚生労働省(労働局,公共職業安定所)と連携して, 刑務所出所者等の就職促進を図るため,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施 している。 -170-

15.

観察課 1 法務省組織令第40条,第43条 法務省組織規則第15条 仮釈放・仮退院 ⑴ 生活環境の調整 令和2年中に全国の保護観察所が新たに開始した収容中の者に対する生活環境 調整の人員は33,893人で, 前年の35,654人と比較して1,761人(4.9%)減少している。 これを,本人が収容されている矯正施設の種別に区分して対比すると,次の表の とおりである。 収容中の生活環境調整の開始人員 年 次 平成27年 28 29 30 令和元年 2 ⑵ 総 数 刑 務 所… 少年刑務所… 拘 置 所 少 院 婦人補導院 2 - 4,023 3,851 3,292 3,130 2,777 2,553 44,829 38,983 37,878 35,580 32,877 31,340 48,852 42,834 41,172 38,510 35,654 33,893 年 仮釈放 令和2年中に地方更生保護委員会が新たに仮釈放審理を開始した人員は, 11,995人で,前年の13,086人と比較して,1,091人(8.3%)減少している。次に, 同年中に地方更生保護委員会が仮釈放を許す旨の決定をした人員は11,234人で, 前年の11,976人と比較して742人(6.2%)減少している。 仮釈放率と仮釈放期間の推移については,次の表のとおりである。 H27 28 29 30 R1 R2 仮 釈 放 率( %) 57.6 57.7 58.0 58.4 58.3 59.2 仮釈放期間(月) 4.0 4.1 4.1 4.2 4.2 4.2 区 分 (注)1 「仮釈放率」とは,仮釈放者と満期釈放者の総数に占める仮釈放者数の割合である。 2 「仮釈放期間」とは,全仮釈放者の仮釈放期間の総和を仮釈放者数で除した月数である。 3 無期刑仮釈放者を除く。 ⑶ 少年院からの仮退院 令和2年中に地方更生保護委員会が新たに仮退院審理を開始した人員は1,737 人で,前年の2,006人と比較して269人(13.4%)減少している。次に,同年中に 地方更生保護委員会が仮退院を許す旨の決定をした人員は1,712人で,前年の2,019 人と比較し307人(15.2%)減少している。 なお,短期の矯正教育課程を実施する少年院の在院者については,できるだけ 早期に仮退院させ保護観察に移行することが本人の処遇上効果的であることから, -171-

16.

地方更生保護委員会における仮退院審理の迅速,効率化を図っている。また,仮 退院後の保護観察についても,短期間に集中的な処遇を実施することにより,成 績良好な者の保護観察を早期に終了させる「退院」の措置を積極的に採るように 努めている。 ⑷ 関係施策 ア 更生保護法第36条第1項の規定による調査 更生保護法第36条第1項(法第42条及び売春防止法第25条第4項において準 用する場合を含む。 )の規定による調査(以下「36条調査」という。 )とは,地 方更生保護委員会が仮釈放等の審理を開始するか否かを判断するための調査で, 委員又は地方更生保護委員会事務局所属の保護観察官は,本人と面接したり, 関係記録・資料等の閲覧,収集,整備,保護観察所と矯正施設の間の連絡,情 報交換を緊密に行うことにより,矯正施設被収容者の社会復帰の障害となるよ うな様々な問題の早期かつ的確な把握に努めている。 また,刑事施設における行状等に特段の問題はないと認められるものの , 釈 放後の帰住予定地が確保されていない受刑者ついては , 刑事施設と協議の上 , 積極的に36条調査の対象としている。 イ 更生保護法第82条第3項の規定による調査 刑の一部の執行猶予制度を定めた,刑法等の一部を改正する法律の施行によ り,更生保護法の一部が改正され,更生保護法第82条第3項の規定による調査 (以下「82条調査」という。)が新設された。地方更生保護委員会は,生活環 境の調整が有効かつ適切に行われるよう,保護観察所の長に対し必要な指導及 び助言を行うほか,生活環境の調整が複数の保護観察所において行われる場合 における当該保護観察所相互間の連絡調整を行い,これらの措置をとるに当 たって,必要があると認めるときは,収容中の者との面接,関係人に対する質 問その他の方法により,調査を行うことができるようになった。特に,薬物事 犯受刑者については,薬物への依存度や関連する精神障害等の特有の問題性に 焦点を当てた82条調査を行い,問題性に応じた出所後の生活環境の調整の充実 を図るとともに,出所後の保護観察処遇を始め薬物依存からの回復のための地 域支援の充実強化を図っている。 なお,札幌,宮城,府中,横浜,名古屋,京都,大阪,神戸,広島,高松, 福岡の各刑務所には,地方更生保護委員会事務局所属の観察官が駐在し,36条 調査や82条調査等の実施に当たっている。 ウ 長期刑受刑者の仮釈放審理の充実 長期刑(無期刑及び執行すべき刑期が10年以上の有期刑)受刑者は,拘禁期 間が長く,社会復帰に困難を伴う者が多いため,仮釈放の審理,決定において は特に慎重な配慮を要することから,仮釈放審理のための調査をできるだけ早 期に開始し,複数回の委員面接を実施したり,医師等の専門家の面接を実施す -172-

17.

るほか,検察官の意見を聞くなどして,その審理,決定の適正,充実を図って いる。また,これらの者を仮釈放したときは,その円滑な社会復帰に資するこ とを目的として長期刑仮釈放者に対する中間処遇(175ぺージ参照)を実施し ている。 2 保護観察 ⑴ 概況 令和2年中に保護観察に付された者の総数は,27,204人で,その種別の構成比 は,保護観察処分少年(1号観察)39.5%,少年院仮退院者(2号観察)6.2%, 仮釈放者(3号観察)41.2%,保護観察付執行猶予者(4号観察)13.2%であり, 婦人補導院仮退院者(5号観察)はなかった。保護観察開始人員の総数の推移は 次の表のとおりである。 保護観察種別開始人員歴年比較(平成23年~令和2年) (単位:人) 年 次 平成23年 24 25 26 27 28 29 30 令和元 2 保護観察処分少年 少 年 院 (うち交通短期) 仮退院者 23,580 (8,276) 3,601 22,557 (7,809) 3,421 20,811 (7,327) 3,428 19,599 (6,701) 3,122 18,202 (6,334) 2,871 16,304 (5,981) 2,743 14,465 (5,206) 2,469 12,945 (4,434) 2,146 11,827 (4,026) 2,053 10,733 (3,508) 1,692 仮釈放者 14,620 14,700 14,623 13,925 13,570 13,260 12,760 12,299 11,640 11,195 保護観察付 合 計 執行猶予者 3,398 45,199 3,376 44,056 3,255 42,117 3,348 39,995 3,460 38,103 3,034 35,341 2,843 32,538 3,455 30,845 3,667 29,187 3,584 27,204 (注) 婦人補導院仮退院者(5号観察)は,平成24年に2人, 26年及び29年はそれぞれ1人であった。 保護観察開始人員を類型別に見ると,無職等対象者,覚醒剤事犯対象者等,問 題性が大きいと認められる事案の係属事件数に占める割合は依然として高く(後 述「3⑵イ 類型別処遇」参照),今後とも保護観察及び生活環境の調整の充実, 強化を図る必要がある。 ⑵ 保護観察の充実強化に関する措置 ア CFP(Case Formulation in Probation/Parole) 保護観察対象者に対する一層効果的な処遇を実施するため,従前から実施し てきた段階別処遇を発展的に解消し,新たに令和3年1月からCFPを活用し たアセスメントに基づく保護観察を実施している。 CFPは,保護観察対象者に対して再犯防止のためのより効果的な指導・支 援を行うためのアセスメントツールであり,保護観察対象者の特性等の情報に ついて,再犯に結び付く要因と改善更生を促進する要因に焦点を当てて網羅的 -173-

18.

に検討し,再犯リスクを踏まえた適切な処遇方針の決定に活用するものである。 保護観察の実施に当たっては,CFPを活用するなどして再犯又は再非行の リスク等に関するアセスメントを行い,これを踏まえて保護観察対象者をS, AA,A,B,Cの5つの処遇区分のいずれかに編入し,処遇区分に応じた処 遇密度(面接の頻度及び方法,指導監督,補導援護その他の処遇による介入の 程度をいう。)により,適正かつ効率的な処遇活動を行うほか,処遇の実施状 況等に即して処遇区分の変更,不良措置,良好措置等の措置を適期適切にとる こととしている。 イ 類型別処遇 令和3年1月から,保護観察の実効性を一層高めることを目的として,新た な「保護観察類型別処遇要領」 (以下「新要領」という。 )を定め,同要領に基 づき類型別処遇を実施している。 具体的には,昨今の犯罪・非行情勢等も踏まえて「ストーカー」 , 「特殊詐欺」 , 「嗜癖的窃盗」 , 「就学( 「中学生」は下位類型)」類型を新設するなど類型の区 分を見直したほか,保護観察対象者に対する各類型ごとの処遇指針として, 「類 型別処遇ガイドライン」を新たに定め,本ガイドラインをアセスメント,保護 観察の実施計画の作成及び処遇の実施等に活用し処遇を行っている。 また,令和2年末現在の類型別処遇(新要領制定前の旧要領による。 )にお ける類型認定状況は,交通短期保護観察及び10月以内の短期保護観察を除く全 係属保護観察対象者中, 無職等対象者が17.1%,覚せい剤事犯対象者が19.6%(令 和元年末はそれぞれ18.0%,17.1%)などとなっており,問題性が大きいと認め られる対象者の占める割合は,前年に引き続き高い割合を示している。 令和2年においては, 類型別処遇の充実を図るために, 地方更生保護委員会・ 保護観察所において,処遇協議会・研修会等の開催,各種集団処遇,特定類型 該当者の保護者会・引受人会等,多様な活動が実施された。 ウ 短期保護観察 短期保護観察は,非行性の進度がそれほど深くない少年に対して,重点的に 指導すべき領域を定め,これに対応する課題を設定して履行させることにより, 短期間でその社会適応の促進を図ろうとするものであり,概ね6~7月で解除 することを目指している。令和2年の保護観察開始人員は1,335人となっている。 エ 交通短期保護観察 交通短期保護観察の開始人員は,ここ数年減少傾向にあり,令和2年も前年 に比べて514人減少し3,508人であったが,保護観察事件全体の中で依然として 大きな比重を占めている。同年においては,視聴覚教材を活用するなどした集 団講習を実施するなどして,処遇内容の充実を図った。 オ 社会貢献活動 平成25年6月に公布された「刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律 -174-

19.

第49号)」において,保護観察の特別遵守事項の類型の一つとして社会貢献活 動に関する規定が加えられ,平成27年6月に施行された。平成30年度には , こ れまでの社会貢献活動の実施状況について検証し , より効果的な運用を図るこ とを目的として , 有識者を構成員とする検討会を設置し , 調査・検討を行った。 本検討会における検討結果を踏まえ , 実施対象者をより幅広く選定することや , 一律5回としていた活動の標準回数を3回(上限5回)に変更すること等によ る新たな運用を令和元年10月から開始している。令和2年度は延べ665人が活 動に参加した。 カ 保護観察官等の育成について 平成26年3月「更生保護官署職員育成要綱」が「保護観察官等育成要綱」に 改められ,同年4月から実施されている。本要綱は,更生保護の担い手である 更生保護官署職員一人一人の実力向上を図るため,保護観察官については,職 場における実務訓練(OJT)を重点的に実施するとともに,研修等を通じて, 保護観察処遇をより効果的に行うために必要な知識,技術等を身に付けさせる ものとしている。特に,新任保護観察官に対しては,新規補職から専修科研修 を修了する年度末までを育成期間と位置付け,指導的立場の保護観察官(主任 保護観察官)の下でOJTを行わせることにより,保護観察官に必要とされる 多様な実務経験を積ませている。 キ 長期刑仮釈放者に対する中間処遇 中間処遇制度とは, 長期刑 (無期刑及び執行すべき刑期が10年以上の有期刑) 受刑者はその犯した犯罪が重大であるほか,社会から長期間隔離されるなど社 会復帰上種々困難な多くの問題を有し,仮釈放後の保護観察の実施についても 特別な配慮が必要であることから,仮釈放当初の1か月程度更生保護施設に居 住させ,生活訓練を中心とした特別な処遇を集中的,計画的に実施することな どにより,円滑な社会復帰を図ることを目的とするものである。令和2年12月 31日現在,中間処遇を実施する施設として指定されている更生保護施設は,72 施設に及んでいる。 なお,中間処遇の実施状況は,次の表のとおりである。 中間処遇実施状況 年次 平成27年 28 29 30 令和元年 2 ク 実施者数 有期刑 94 95 80 63 49 54 無期刑 9 6 9 9 14 10 定期駐在と更生保護施設駐在 -175- 計 103 101 89 72 63 64

20.

保護観察官が,担当する保護区の公共施設や更生保護サポートセンター等に 定期的に出向き,そこに半日から1日程度駐在して保護観察対象者との面接, 保護観察対象者宅への訪問,保護司との処遇協議,関係機関との連絡等の業務 を行う定期駐在は,保護観察官の地域活動として極めて重要な機能を果たして いる。 また,更生保護施設においても,保護観察官が定期的に夜間駐在,宿泊駐在 をするなどして, 被保護者に対する夜間の集会指導, 個別の相談助言に当たった。 ケ 関係機関との連携 各地で家庭裁判所と少年保護関係機関(少年鑑別所,少年院,児童相談所, 児童自立支援施設等) , 教育関係機関 (教育委員会,高等学校, 中学校, 小学校等) 又は警察関係機関との連絡協議会が開催され,保護観察所の職員が出席した。 また,薬物依存のある保護観察対象者等に対して,必要な支援を円滑に実施 することができるよう,薬物依存からの回復に関係する機関・団体(精神保健 福祉センター,保健所,医療機関,地方公共団体主管課,ダルク等の自助グルー プ等)との連絡協議会を各地で開催している。 3 審査請求事件の処理 令和2年中に新たに受理した不服申立ての件数は15件あり,全て地方更生保護委 員会の行った処分等に対する審査請求であり,保護観察所の行った処分等に対して は行われなかった。 なお,審査請求の受理・処理状況は,次の表のとおりである。 審査請求の受理・処理状況 (令和2年) 受 理 処 理 翌年へ 前年繰越 本年新受 請求認容 請求棄却 請求却下 請求取下 繰 越 13 11 1 1 仮釈放取消決定処分 に対する不服 請求の内容 そ の 他 特別遵守事項の設定 - 1 1 - -176- 1 - - - 1