令和3年版犯罪白書

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October 31, 22

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法務省
https://www.moj.go.jp/content/001365724.pdf

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各ページのテキスト
1.

令和3年版 犯罪白書 — 詐欺事犯者の実態と処遇 — 法務省 法務総合研究所 編

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令和3年版 犯 罪 白 書 - 詐欺事犯者の実態と処遇 - 法務総合研究所

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本書は再生紙を利用しております。

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はしがき 我が国の犯罪情勢は,刑法犯の認知件数が令和2年も戦後最少を更新するなど,全体としては改善 傾向が続いているが,個別に見ると,特殊詐欺,児童虐待,配偶者間暴力,サイバー犯罪等のように 検挙件数が増加傾向又は高止まり状態にある犯罪もある。さらに,若年層を中心とした大麻取締法違 反の検挙人員の急増,少年による家庭内暴力の認知件数の増加なども看過できない。また,出所受刑 者全体の2年以内再入率は,低下傾向にあり,令和元年の出所受刑者については初めて 16%を下回っ たが,満期釈放等による出所受刑者の再入率は仮釈放による出所受刑者よりも相当に高い状態で推移 しており,再犯防止対策の更なる充実強化が求められている。 近年の犯罪動向や再犯防止対策に関し,注目すべき犯罪類型の一つに,詐欺がある。中でも特殊詐 欺は,認知件数及び被害総額いずれも減少傾向にはあるが,令和2年の認知件数は1万 3,000 件を上 回り,検挙件数は平成 16 年以降最多となった。また,実質的な被害総額は 280 億円を超え,その被 害者は依然として高齢者が高い割合を占めている。出所受刑者の5年以内再入率を主要な罪名別に見 ても,詐欺は,覚醒剤取締法違反,窃盗,傷害・暴行に次いで高い。こうした情勢を踏まえ,近年, 刑事施設や少年院では,特殊詐欺事犯者を対象とした指導用教材や再非行防止指導の実施要領に基づ く実践がなされ,令和3年1月には,保護観察対象者に対する類型別処遇に「特殊詐欺」が新たな類 型として加えられるなど,処遇の充実が図られている。 法務総合研究所は,これまで犯罪白書において,主として刑法犯の動向の中で詐欺を取り上げ,平 成 16 年からはオレオレ詐欺を始めとする特殊詐欺について紹介してきた。しかし,詐欺が注目すべ き犯罪類型であると認識しながらも,高齢で無銭飲食を繰り返す者や,組織的な特殊詐欺を首謀する 者等,その態様及び手口が多岐にわたる詐欺事犯者の実情等を細やかに分析し,更なる対策を検討す るための素材を提供するまでには至っていなかった。そこで,本白書では,「詐欺事犯者の実態と処 遇」と題して特集を組むこととし(第8編),詐欺事犯全般,とりわけ特殊詐欺に焦点を当て,関連 する法令,詐欺事犯の動向や刑事司法の各段階における詐欺事犯者の処遇の現状,詐欺事犯者の再犯 の状況,詐欺被害者等を概観・分析するとともに,詐欺事犯者に関する特別調査を行い,その特徴を 明らかにした。これらを踏まえ,詐欺事犯の防止や詐欺事犯者の処遇・再犯防止対策の在り方につい て検討を行い,今後の議論の参考に供することとした。 令和2年は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により我が国の国民生活・経済・社会が大きな 変容を余儀なくされた年であるが,同感染症が我が国の犯罪動向・犯罪者処遇に与えた影響の有無・ 程度を判断することは尚早と言わざるを得ない。それでも,本白書では,過去のデータと比較・検討 する過程を通し,同感染症が与えた影響が間接的に浮き彫りになるように試みた。さらに,令和3年 3月には,同感染症の世界的流行により,第 14 回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が 約1年遅れで開催されたことから,コングレスの歴史や意義に触れ,京都コングレスの概要や成果に ついても紹介することとした(第7編)。 令和2年を中心とする最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を扱った本白書のルーティーン部分が, 犯罪情勢の定点観測を行うための素材として,効果的な刑事政策の立案の基盤となるとともに,特集 部分が,詐欺事犯者の実情を知り,詐欺事犯の防止や再犯防止対策等に関する様々な問題に取り組む 上での基礎資料として広く活用されれば幸いである。 終わりに,本白書の作成に当たり,最高裁判所事務総局,内閣府,警察庁,総務省,外務省,財務 省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省その他の関係各機関から多大な御協力を頂いたことに対 し,改めて謝意を表する次第である。 令和3年 12 月  法務総合研究所長 上 冨 敏 犯罪白書 伸 2021

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凡 例 【罪名・用語・略称】 第1 罪名等の定義 罪名等の定義は,特に断らない限り,次のとおりとするほか,各統計資料の区分による(特別 法の略称は,第3,1参照)。 1 刑法犯 「刑法犯」は,刑法(明治 40 年法律第 45 号)及び次の特別法に規定する罪をいう。ただし, 後記2及び3に該当する刑法の罪を除く。[注1] (ア)㋐,㋑, (イ)㋐, (ウ)㋐及び(エ)㋐参照 ①爆発物取締罰則(明治 17 年太政官布告第 32 号)②決闘罪に関する件(明治 22 年法律第 34 号)③印紙犯罪処罰法(明治 42 年法律第 39 号)④暴力行為等処罰法(大正 15 年法律第 60 号) ⑤盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和5年法律第9号)⑥航空機の強取等の処罰に関す る法律(昭和 45 年法律第 68 号)⑦人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(昭和 45 年 法律第 142 号)⑧航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和 49 年法律第 87 号) ⑨人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和 53 年法律第 48 号)⑩組織的犯罪処罰法 (平成 11 年法律第 136 号) (1)刑法犯の基本罪名には,次の罪を含む。[注1] (ア)㋒~㋔及び(ウ)㋑参照 ①未遂 ②予備 ③教唆及び幇助 ④強盗致死傷等の結果的加重犯 ⑤業務,目的,身分等によ る刑法上の加重減軽類型 ⑥盗犯等の防止及び処分に関する法律による加重類型 (ア)㋒,㋓,(ウ)㋑及び(エ)㋑参照 (2)次に掲げる刑法犯の罪名には,括弧内の罪名を含む。[注1] ①殺人(自殺関与,同意殺人)②強盗(事後強盗,昏酔強盗,強盗殺人,強盗・強制性交等) ③傷害(現場助勢)④脅迫(強要)⑤窃盗(不動産侵奪)⑥公務執行妨害(封印等破棄)⑦ 偽造(刑法第2編第 16 章から第 19 章までの罪における文書等の各偽造(不実記載・不正作 出等を含む。)及び同行使(供用等を含む。))⑧職権濫用(特別公務員暴行陵虐)⑨強制性 交等(準強制性交等,監護者性交等,強姦(平成 29 年法律第 72 号による改正前の刑法 177 条及び 178 条2項に規定する罪をいう。))⑩強制わいせつ(準強制わいせつ,監護者わいせ つ) 2 危険運転致死傷 「危険運転致死傷」は,自動車運転死傷処罰法(平成 25 年法律第 86 号)2条,3条,6条1 項及び2項に規定する罪並びに平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定す る罪をいう。[注1] (ア)㋑, (イ)㋐及び(ウ)㋐ 3 過失運転致死傷等 「過失運転致死傷等」は,自動車運転死傷処罰法4条,5条,6条3項及び4項に規定する罪 並びに自動車運転過失致死傷(平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条2項に規定す る罪をいう。以下同じ。),業務上(重)過失致死傷をいう。[注1] (ア)㋕及び(イ)㋑ 4 特別法犯 「特別法犯」は,前記1ないし3以外の罪をいい,条例・規則違反を含む。[注1](ア)㋐及び(エ) ㋐参照 (1) 「道交違反」は,道路交通法(昭和 35 年法律第 105 号)及び保管場所法(昭和 37 年法律第 145 号)の各違反をいう。 (2) 「交通関係4法令違反」は,道交違反に,道路運送車両法(昭和 26 年法律第 185 号)及び自 動車損害賠償保障法(昭和 30 年法律第 97 号)の各違反を加えたものをいう。 (3) 「交通法令違反」は,交通関係4法令違反に,道路運送法(昭和 26 年法律第 183 号),道路 犯罪白書 2021 i

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法(昭和 27 年法律第 180 号) ,高速自動車国道法(昭和 32 年法律第 79 号),駐車場法(昭 和 32 年法律第 106 号),土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特 別措置法(昭和 42 年法律第 131 号),タクシー業務適正化特別措置法(昭和 45 年法律第 75 号) ,貨物利用運送事業法(平成元年法律第 82 号),貨物自動車運送事業法(平成元年法律 第 83 号),スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(平成2年法律第 55 号)及び 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(平成 13 年法律第 57 号)の各違反を加えた ものをいう。 [注1]各統計資料による場合の特則 (ア)警察庁の統計による場合 ㋐ 「刑法犯」は,刑法(後記㋕に該当するものを除く。 )及び次の特別法に規定する罪をいう。 ①爆発物取締罰則 ②決闘罪に関する件 ③暴力行為等処罰法 ④盗犯等の防止及び処分に関 する法律 ⑤航空機の強取等の処罰に関する法律 ⑥航空の危険を生じさせる行為等の処罰 に関する法律 ⑦人質による強要行為等の処罰に関する法律 ⑧組織的犯罪処罰法 ⑨火炎び んの使用等の処罰に関する法律(昭和 47 年法律第 17 号)⑩流通食品への毒物の混入等の 防止等に関する特別措置法(昭和 62 年法律第 103 号)⑪サリン等による人身被害の防止 に関する法律(平成7年法律第 78 号)⑫公職にある者等のあっせん行為による利得等の 処罰に関する法律(平成 12 年法律第 130 号)⑬公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金 等の提供等の処罰に関する法律(平成 14 年法律第 67 号) ㋑ 第1編第1章,第3編第1章第1節並びに第4編第7章及び第8章における「刑法犯」 は,平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 ㋒ 「暴行」,「脅迫」及び「器物損壊」は,暴力行為等処罰法1条及び1条の3に規定する加 重類型を,「傷害」は,同法1条の2及び1条の3に規定する加重類型を,それぞれ含み, 「暴力行為等処罰法違反」は,同法2条及び3条に規定する罪をいう。 ㋓ 「窃盗」は,不動産侵奪を含まない。 ㋔ 「器物損壊」は,信書隠匿を含む。 ㋕ 「過失運転致死傷等」は,自動車運転死傷処罰法4条,5条,6条3項及び4項に規定す る罪並びに道路上の交通事故に係る自動車運転過失致死傷,過失致死傷及び業務上(重)過 失致死傷をいう。 (イ)検察統計年報による場合 ㋐ 「刑法犯」は,前記1の罪に加え,危険運転致死傷を含む。 ㋑ 「過失運転致死傷等」は,自動車又は原動機付自転車による交通犯罪以外の業務上(重) 過失致死傷を除く。 (ウ)矯正統計年報及び保護統計年報による場合 ㋐ 「刑法犯」は,前記1の罪に加え,危険運転致死傷を含む。 ㋑ 「暴行」は,凶器準備集合を含む。 (エ)司法統計年報による場合 ㋐ 「刑法犯」は,刑法及び次の特別法に規定する罪をいう。 ①爆発物取締罰則 ②決闘罪に関する件 ③暴力行為等処罰法 ④盗犯等の防止及び処分に関 する法律 なお,自動車運転死傷処罰法違反は,「特別法犯」に含まれる。 ㋑ 「偽造」は,刑法第2編第 16 章の罪(通貨偽造の罪)及び同編第 19 章の罪(印章偽造の 罪)を含まない。 ii 令和 3 年版 犯罪白書

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第2 用語の定義 本白書における用語の定義は,特に断らない限り,次のとおりとする。 1 警察等 (1) 「認知件数」 警察が発生を認知した事件の数をいう。[注2]参照 (2) 「発生率」 人口 10 万人当たりの認知件数をいう。 (3) 「検挙件数」 警察等が検挙した事件の数をいい,検察官に送致・送付した件数のほか,微罪 処分にした件数等を含む。[注2]参照 (4) 「検挙率」 検挙件数 × 100 の計算式で得た百分比をいう。 認知件数 なお,検挙件数には,前年以前に認知された事件に係る検挙事件が含まれることがあるた め,検挙率が 100%を超える場合がある。 (5) 「検挙人員」 警察等が検挙した事件の被疑者の数をいう。[注2]参照 2 検察・裁判 (1) 「検察庁新規受理人員」 検察官認知又は直受の事件及び司法警察員(特別司法警察員及び国 税庁監察官を含む。)から送致・送付された事件の人員をいう。 (2) 「起訴率」 起訴人員 × 100 の計算式で得た百分比をいう。 起訴人員+不起訴人員 (3) 「起訴猶予率」 起訴猶予人員 × 100 の計算式で得た百分比をいう。 起訴人員+起訴猶予人員 (4) 「公判請求率」 公判請求人員 × 100 の計算式で得た百分比をいう。 起訴人員+不起訴人員 (5) 「通常第一審」 地方裁判所及び簡易裁判所において行われる通常の公判手続をいい,略式手 続を含まない。 (6) 「終局処理」 検察統計年報による場合は,検察庁間の移送及び中止によるものを,司法統計 年報又は最高裁判所事務総局の資料による場合は,裁判所間の移送及び回付によるもの(第 3編第2章及び第8編第3章第1節においては,更に併合審理され,既済事件として集計し ないもの)を,それぞれ除外した事件処理をいう。 (7) 「全部執行猶予率」 3 全部執行猶予人員 × 100 の計算式で得た百分比をいう。 有期懲役・禁錮人員 矯正・更生保護 (1) 「入所受刑者」 裁判が確定し,その執行を受けるため,新たに入所するなどした受刑者をい い,矯正統計年報における「新受刑者」に相当する。 (2) 「初入者」 受刑のため刑事施設に入所するのが初めての者をいう。 (3) 「再入者」 受刑のため刑事施設に入所するのが2度以上の者をいう。 (4) 「満期釈放等」 出所受刑者の出所事由のうち,満期釈放及び一部執行猶予の実刑部分の刑期 終了をいう。 (5) 「仮釈放率」 仮釈放者 × 100 の計算 満期釈放者+一部執行猶予の実刑部分の刑期終了者+仮釈放者 式で得た百分比をいう。 (6) 「全部(一部)執行猶予者の保護観察率」 保護観察付全部(一部)執行猶予言渡人員 × 全部(一部)執行猶予言渡人員 100 の計算式で得た百分比をいう。 犯罪白書 2021 iii

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4 少年 (1)少年 ① 「年少少年」 14 歳以上 16 歳未満の者をいう。 ② 「中間少年」 16 歳以上 18 歳未満の者をいう。 ③ 「年長少年」 18 歳以上 20 歳未満の者をいう。 (2)非行少年 ① 「犯罪少年」 罪を犯した少年(犯行時に 14 歳以上であった少年)をいう。 ② 「触法少年」 14 歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年をいう。 ③ 「ぐ犯少年」 保護者の正当な監督に服しない性癖等の事由があり,少年の性格又は環境に 照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年をいう。 (3) 「児童自立支援施設・児童養護施設送致」 家庭裁判所終局処理における児童自立支援施設・ 児童養護施設送致には,平成 10 年3月 31 日までの教護院・養護施設送致を含む。 (4) 「少年院入院者」 少年院送致の決定により新たに入院した者をいい,矯正統計年報における 「新収容者」に相当する。 5 その他 (1) 「pt」「ポイント」の略記。ポイントとは,比率の差をいう。 (2) 「人口比」 特定のグループに属する者の人口 10 万人当たりの人員をいう。 (3) 「女性比」又は「女子比」 男女総数のうち,女性又は女子(未成年の場合)の占める比率を いう。 (4) 「少年比」 少年・成人総数のうち,少年の占める比率をいう。 (5) 「高齢」・「高齢者」 65 歳以上の者をいう。 (6) 「来日外国人」 我が国にいる外国人のうち,特別永住者,永住者,在日米軍関係者及び在留 資格不明者以外の者をいう。ただし,警察庁の統計又は同庁刑事局の資料による場合,我が 国にいる外国人のうち,いわゆる定着居住者(永住者,永住者の配偶者等及び特別永住者), 在日米軍関係者及び在留資格不明者以外の者をいう。 (7) 「前科」 有罪の確定裁判を受けたことをいう。 (8) 「処遇」 警察等によって検挙された者が,その後,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階 で受ける取扱いをいう。 (9) 「全部執行猶予」 刑法 25 条に規定する刑の全部の執行猶予をいう。なお,本白書では,平 成 25 年法律第 49 号による改正前の刑法 25 条に規定する刑の執行猶予についても「全部執 行猶予」という。 (10) 「一部執行猶予」 刑法 27 条の2及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶 予に関する法律(平成 25 年法律第 50 号)3条に規定する刑の一部の執行猶予をいう。 (11) 「仮釈放」 一部執行猶予の実刑部分についての仮釈放を含む。 [注2] 特別法犯の「検挙件数」,「検挙人員」は,平成 28 年以前は「送致件数」,「送致人員」をいい, 過失運転致死傷等(前記[注1](ア)㋕参照)及び危険運転致死傷(平成 25 年法律第 86 号に よる改正前の刑法 208 条の2に規定する罪については,道路上の交通事故に係るものに限る。) は, 「送致件数」を「認知件数」及び「検挙件数」として,「送致人員」を「検挙人員」として, それぞれ計上している。 なお, 「送致件数」とは,警察が送致・送付した事件の数をいい,「送致人員」とは,警察が送 付・送致した事件の被疑者の数をいう。 iv 令和 3 年版 犯罪白書

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第3 1 略称 特別法の略称 我が国の主な特別法の略称は,次のとおりとする。なお,特別法に係る罪名については,図表 中では,表題・脚注を除き,「違反」を省略する。 [略称] [法令名] 医薬品医療機器等法� 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭 和 35 年法律第 145 号) 外為法������� 外国為替及び外国貿易法(昭和 24 年法律第 228 号) 海洋汚染防止法��� 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和 45 年法律第 136 号) 刑事収容施設法��� 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成 17 年法律第 50 号) 携帯電話不正利用防止法 � 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務 の不正な利用の防止に関する法律(平成 17 年法律第 31 号) 裁判員法������ 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成 16 年法律第 63 号) 再犯防止推進法��� 再犯の防止等の推進に関する法律(平成 28 年法律第 104 号) 私事性的画像被害防止法 � 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成 26 年法 律第 126 号) 児童買春・児童ポルノ禁止法� 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等 に関する法律(平成 11 年法律第 52 号) 児童虐待防止法��� 児童虐待の防止等に関する法律(平成 12 年法律第 82 号) 自動車運転死傷処罰法� 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成 25 年法律第 86 号) 銃刀法������� 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和 33 年法律第6号) 出資法������� 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和 29 年法律 第 195 号) 心神喪失者等医療観察法 � 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関す る法律(平成 15 年法律第 110 号) ストーカー規制法�� ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成 12 年法律第 81 号) 精神保健福祉法��� 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和 25 年法律第 123 号) 組織的犯罪処罰法�� 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成 11 年法律 第 136 号) 鳥獣保護管理法��� 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成 14 年法律第 88 号) 出会い系サイト規制法� インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に 関する法律(平成 15 年法律第 83 号) 毒劇法������� 毒物及び劇物取締法(昭和 25 年法律第 303 号) 特殊開錠用具所持禁止法 � 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成 15 年法律第 65 号) 独占禁止法����� 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54 号) 特定商取引法���� 特定商取引に関する法律(昭和 51 年法律第 57 号) 入管法������� 出入国管理及び難民認定法(昭和 26 年政令第 319 号) 入札談合等関与行為防止法� 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害 すべき行為の処罰に関する法律(平成 14 年法律第 101 号) 廃棄物処理法���� 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号) 犯罪白書 2021 v

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配偶者暴力防止法�� 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成 13 年法 律第 31 号) 犯罪収益移転防止法� 犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 号) 風営適正化法���� 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和 23 年法律第 122 号) 不正アクセス禁止法� 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成 11 年法律第 128 号) 暴力行為等処罰法�� 暴力行為等処罰に関する法律(大正 15 年法律第 60 号) 暴力団対策法���� 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第 77 号) 保管場所法����� 自動車の保管場所の確保等に関する法律(昭和 37 年法律第 145 号) 麻薬特例法����� 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を 図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年 法律第 94 号) 麻薬取締法����� 麻薬及び向精神薬取締法(昭和 28 年法律第 14 号) 酩酊防止法����� 酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律(昭和 36 年法 律第 103 号) 労働者派遣法���� 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法 律(昭和 60 年法律第 88 号) 2 国名の略称等 (1)国名の略称は,各統計資料における略称のほか,外務省「国名表」を参考にした。 (2) 「中国」は,特に断らない限り,台湾及び香港等を含む。 【資料源】 第1 資料の種類 統計,図表その他の計数資料は,特に法務省の大臣官房司法法制部,刑事局,矯正局及び保護 局並びに出入国在留管理庁から提供を受けたもの及び関係諸機関の調査等に基づくもののほか, 以下の官庁統計によるものである。 警察庁の統計(警察庁刑事局) 検察統計年報(法務省大臣官房司法法制部) 司法統計年報(最高裁判所事務総局) 矯正統計年報(法務省大臣官房司法法制部) 保護統計年報(法務省大臣官房司法法制部) [注3] (1)警察庁の統計は,「令和(昭和又は平成)○年の犯罪(昭和 38 年まで「犯罪統計書」)」をい う。 (2)総務省統計局の人口資料は,同局の人口推計をいい,国勢調査実施年には,国勢調査人口を 含む。ただし,令和2年の総人口,男女別人口及び都道府県別人口は,2年度実施の国勢調 査の人口速報集計を,2年の成人の各年齢層の人口は同年 10 月1日現在の人口推計を,同 年の少年人口(年少・中間・年長の区分,14 歳以上の区分等)は,元年 10 月1日現在の人 口推計をそれぞれ用いた。 (3)昭和 47 年以前の統計資料には,同年5月 14 日以前の沖縄県該当分の数値を含まない。 (4)平成元年の統計資料には,昭和 64 年1月1日から同月7日までの数値を含む。 (5)令和元年の統計資料には,平成 31 年1月1日から同年4月 30 日までの数値を,令和元年度 の統計資料には,平成 31 年4月1日から同月 30 日までの数値をそれぞれ含む。 vi 令和 3 年版 犯罪白書

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第2 資料の範囲 統計資料は,原則として,令和3年7月末日までに入手し得た範囲内で,令和2年分までを集 録した。 令和2年までの統計の中で,後日,当該関係機関から異なる数値が公表される場合は,次年度 以降の犯罪白書において適宜訂正する扱いとする。 【図表の表示方法】 第1 図表番号 図及び表の番号は,編,章,節の数字の後に一連番号を付して表示した(例えば,2-2-1-1 図 は,第2編第2章第1節の第1図を示す。)。 第2 数字等の表示 1 表中の数字等は,次のように表示している。 (1) 「-」 該当数が0のとき又は非該当のとき (2) 「0」 該当数が四捨五入して1にならないとき (3) 「0.0」 四捨五入して 0.1 にならないとき (4) 「…」 資料のないとき又は母数が0のときの比率 2 図中の数字は,次のように表示している。 (1) 「0」 該当数が0のとき又は非該当のとき (2) 「0.0」 四捨五入して 0.1 にならないとき 【その他】 第1 計数処理方法 構成比,比率等は,それぞれ四捨五入した。したがって,構成比の和が 100.0 にならない場合 がある。 また,各比率間の和や差を求めるときは,四捨五入する前に各数値の和や差を算出し,得られ た数値を四捨五入する方法によっており,各数値を四捨五入した上で,和や差を算出する方法に よって得られる数値とは一致しないこともある。 例 12.76 と 7.53 の差を求めるとき 「12.76 - 7.53」で得られた「5.23」を四捨五入して「5.2」とする方法によっており, 「12.8 - 7.5」で得られる「5.3」とは一致しない。 第2 本白書の「資料編」は,CD-ROM 版にのみ掲載し,紙面からは省いている。 本白書にある「CD-ROM 資料○-○参照」とは,CD-ROM 版にある「資料編」のエクセル データを参照という趣旨である。 また,「CD-ROM 参照」とは,CD-ROM 版にある図表のエクセルデータを参照という趣旨で ある。 CD-ROM 版にある図表及び資料編のエクセルデータの一部については,「統計表における機 械判読可能なデータ作成に関する表記方法について」 (令和2年 12 月 18 日統計企画会議申合せ) に従って作成されたものも掲載している。 犯罪白書 2021 vii

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目 次 はしがき 第1編 第1章 犯罪の動向 刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 第1節 主な統計データ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1 認知件数と発生率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2 検挙人員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3 検挙率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第2節 主な刑法犯・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 1 窃盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2 強制性交等・強制わいせつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 3 その他の刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第2章 特別法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第1節 主な統計データ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第2節 主な特別法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第3章 諸外国における犯罪動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第1節 1 殺人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 2 強盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 3 窃盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 4 性暴力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 第2節 第2編 第1章 第2章 諸外国における犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 国外における日本人の犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 犯罪者の処遇 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 1 新規立法の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 2 法テラスの活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 第1節 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 第2節 被疑事件の受理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第3節 被疑者の逮捕と勾留・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 犯罪白書 2021

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第4節 第3章 被疑事件の処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第1節 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第2節 確定裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 第3節 第一審・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 1 終局裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 2 科刑状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 3 裁判員裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 4 即決裁判手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 5 公判前整理手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 6 勾留と保釈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 第4節 第4章 上訴審・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 成人矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第1節 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 1 刑事施設等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 2 刑事施設における処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第2節 刑事施設の収容状況・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 1 刑事施設の収容人員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 2 刑事施設の収容率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 3 入所受刑者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 4 出所受刑者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53 第3節 受刑者の処遇等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 1 処遇の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 2 作業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 3 矯正指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 4 就労支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 5 福祉的支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 6 受刑者の釈放等に関する情報の提供・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 第4節 刑事施設の運営等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 1 刑事施設視察委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 2 給養・医療・衛生等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 刑事施設における新型コロナウイルス感染症への対策・・・・・・・・・・・・・・ 62 3 民間協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 4 規律・秩序の維持・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 5 不服申立制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 コラム1 第5節 未決拘禁者等の処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 第6節 官民協働による刑事施設等の整備・運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 第5章 更生保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 第1節 令和 3 年版 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 1 更生保護における処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 2 更生保護の機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 犯罪白書

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第2節 仮釈放等と生活環境の調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 1 仮釈放等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 2 生活環境の調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 第3節 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 1 保護観察対象者の人員等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 2 保護観察対象者に対する処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 3 保護観察対象者に対する措置等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 4 保護観察の終了・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 コラム2 新型コロナウイルス感染症の感染拡大下での更生保護・・・・・・・・・・・・・・ 82 第4節 応急の救護・更生緊急保護の措置等・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 第5節 恩赦・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 第6節 保護司,更生保護施設,民間協力者等と犯罪予防活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 第6章 1 保護司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 2 更生保護施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 3 自立準備ホーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 4 民間協力者及び団体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 5 更生保護協会等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 6 犯罪予防活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 刑事司法における国際協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 第1節 刑事司法における国際的な取組の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 1 国際組織犯罪対策及びテロ対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 2 薬物犯罪対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 3 マネー・ローンダリング対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 4 汚職・腐敗対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 5 サイバー犯罪対策・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 6 国際刑事裁判所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 第2節 犯罪者の国外逃亡・逃亡犯罪人の引渡し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 1 犯罪者の国外逃亡・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 2 逃亡犯罪人の引渡し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 第3節 捜査・司法に関する国際協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 1 捜査共助・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 2 司法共助・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 3 刑事警察に関する国際協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 第4節 矯正・更生保護分野における国際協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 99 1 国際受刑者移送・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 矯正・更生保護に関する国際会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 第5節 刑事司法分野における国際研修・法制度整備支援等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 1 国連アジア極東犯罪防止研修所における協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 2 法制度整備支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 3 矯正建築分野における協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 犯罪白書 2021

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第3編 第1章 少年非行の動向と非行少年の処遇 少年非行の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 第1節 少年による刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 1 検挙人員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 104 2 属性による動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105 3 罪名別動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 4 共犯事件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109 第2節 少年による特別法犯・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 1 検挙人員・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110 2 薬物犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 3 交通犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 第3節 ぐ犯少年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113 第4節 不良行為少年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 114 第5節 家庭と学校における非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 1 家庭内暴力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 2 校内暴力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116 3 いじめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 116 第2章 非行少年の処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 第1節 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117 1 家庭裁判所送致までの手続の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118 2 家庭裁判所における手続の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118 3 保護処分に係る手続の流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119 4 少年法等の改正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120 第2節 検察・裁判・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120 検察(家庭裁判所送致まで) 2 家庭裁判所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121 第3節 少年鑑別所・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124 1 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124 2 入所・退所の状況・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124 3 鑑別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127 4 観護処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128 5 非行及び犯罪の防止に関する援助・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129 第4節 少年院・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 1 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 2 少年院入院者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130 3 少年院における処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134 コラム3 少年院における新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に 配慮した教育活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 令和 3 年版 4 出院者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 140 5 少年院の運営等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141 犯罪白書

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第5節 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142 1 概説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142 2 少年の保護観察対象者・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142 3 少年の保護観察対象者に対する処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 145 4 少年の保護観察対象者に対する措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 5 少年の保護観察の終了・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147 第3章 少年の刑事手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 第1節 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 1 起訴と刑事裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 2 刑の執行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 3 仮釈放・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148 第2節 起訴と刑事裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149 1 検察庁での処理状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149 2 通常第一審の科刑状況・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150 第3節 少年の受刑者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151 第4編 第1章 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 交通犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 第1節 交通犯罪関係法令の改正状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 1 自動車運転死傷処罰法・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 2 道路交通法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 第2節 犯罪の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 1 交通事故の発生動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 2 過失運転致死傷等・危険運転致死傷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 3 ひき逃げ事件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158 4 道交違反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 159 第3節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160 1 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160 2 裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 162 3 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 164 4 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 164 第2章 薬物犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165 第1節 犯罪の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165 1 覚醒剤取締法違反・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165 2 大麻取締法違反等・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 167 3 危険ドラッグに係る犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 168 第2節 取締状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169 1 覚醒剤等の押収量の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169 犯罪白書 2021

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2 密輸入事案の摘発の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 170 3 麻薬特例法の運用・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 171 第3節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 172 1 検察・裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 172 2 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 173 3 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 175 第3章 第1節 組織的犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 176 第2節 暴力団犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 1 組織の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 2 犯罪の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 178 3 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182 第4章 財政経済犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 第1節 税法違反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 185 第2節 経済犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186 第3節 知的財産関連犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 189 第5章 サイバー犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 第1節 不正アクセス行為等・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 第2節 その他のサイバー犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191 第6章 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 第1節 児童虐待に係る犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192 第2節 配偶者間暴力に係る犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 193 第3節 ストーカー犯罪等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 1 ストーカー犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 198 私事性的画像被害に係る犯罪(リベンジポルノ等) 第7章 女性犯罪・非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199 第1節 犯罪・非行の動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 199 第2節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201 1 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201 2 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 202 3 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 206 第8章 令和 3 年版 組織的犯罪・暴力団犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 176 高齢者犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 第1節 犯罪の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 208 第2節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 210 1 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 210 2 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 211 3 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 213 犯罪白書

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第9章 外国人犯罪・非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 第1節 外国人の在留状況等・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 1 外国人新規入国者等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 2 不法残留者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 3 退去強制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215 第2節 犯罪の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 216 1 刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 216 2 特別法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 218 第3節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 219 1 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 219 2 裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 221 3 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222 4 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222 第4節 外国人非行少年の動向と処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 223 1 外国人犯罪少年の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 223 2 外国人非行少年の処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 224 第 10 章 精神障害のある者による犯罪等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 第1節 犯罪の動向・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 第2節 処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 1 検察・裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 2 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 3 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 226 第3節 心神喪失者等医療観察制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 226 1 審判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 227 2 指定入院医療機関による医療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 227 3 地域社会における処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 228 第 11 章 公務員犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 229 第5編 第1章 第2章 再犯・再非行 再犯防止推進法に基づく再犯防止施策・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232 1 再犯防止推進法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232 2 再犯防止推進計画・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232 3 再犯防止施策の取組状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 233 再犯・再非行の概況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 第1節 検挙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 1 刑法犯により検挙された再犯者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234 2 刑法犯により検挙された成人の有前科者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 235 犯罪白書 2021

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3 薬物犯罪により検挙された成人の同一罪名再犯者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 237 第2節 検察・裁判・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 238 1 起訴人員中の有前科者・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 238 2 全部及び一部執行猶予の取消し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 240 第3節 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 241 1 再入者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 241 2 出所受刑者の再入所状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 244 3 出所受刑者の再入率の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 247 4 再入者の再犯期間・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 249 第4節 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 249 1 保護観察開始人員中の有前科者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 249 2 保護観察対象者の再処分等の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 251 第5節 少年の再非行・再犯・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 255 1 少年の再非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 255 2 保護観察処分少年及び少年院入院者の保護処分歴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 256 3 少年院出院者の再入院等の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 257 4 少年の保護観察対象者の再処分の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 259 第6編 第1章 統計上の犯罪被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 262 第1節 被害件数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 262 第2節 生命・身体への被害・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 264 第3節 性犯罪被害・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 265 第4節 財産への被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 266 第5節 被害者と被疑者の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 267 第6節 国外における日本人の犯罪被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 268 第2章 令和 3 年版 犯罪被害者 刑事司法における被害者への配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 269 第1節 刑事手続における被害者の関与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 269 1 被害申告及び告訴・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 269 2 起訴・不起訴等に関する被害者等への通知・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 269 3 不起訴処分に対する不服申立制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 270 4 公判段階における被害者等の関与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 272 5 矯正・更生保護段階等における被害者等の関与・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 274 6 少年事件における被害者等への配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 275 7 法テラスによる被害者等に対する支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 275 8 地方公共団体における被害者支援に向けた取組・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277 第2節 犯罪被害者等に対する給付金の支給制度等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277 1 犯罪被害給付制度・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277 2 国外犯罪被害弔慰金等の支給制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277 犯罪白書

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3 被害回復給付金支給制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277 4 被害回復分配金支払制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278 5 自動車損害賠償保障制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278 6 地方公共団体による見舞金制度等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278 第3節 人身取引被害者保護・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278 第7編 第1章 京都コングレス コングレスの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 第1節 コングレスとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 1 コングレスの役割・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 2 国連におけるコングレスの位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 第2節 コングレスの歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 1 コングレス設立までの経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 282 2 コングレスの変遷・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 283 第3節 コングレスの意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 284 1 ・・・・・・・・・・・・・・・ 284 国連被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデラ・ルールズ) 2 拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い・ 又は刑罰を受けることからの全ての人の保護に関する宣言・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 285 3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 285 少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ) 4 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 285 非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルールズ) 5 バンコク宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 285 6 サルバドール宣言・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 285 7 ドーハ宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 286 第4節 コングレスに対する日本の貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 286 1 日本におけるコングレスの開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 286 2 コングレスで採択された基準規則等への関与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 286 3 UNAFEI によるワークショップの企画運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 287 第2章 京都コングレス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 288 第1節 京都コングレスの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 288 1 京都コングレス開催までの経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 288 2 京都コングレスの全体テーマ等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 288 3 コロナ禍における新たな形の国際会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 289 4 京都コングレスの成果・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 290 第2節 京都コングレスにおける各種イベント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 291 1 コラム4 世界保護司会議と京都保護司宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 291 コラム5 京都コングレス・ユースフォーラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 292 全体会合・ワークショップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 295 コラム6 2 ・ ・・・・・・ 295 ワークショップ2「再犯防止:リスクの特定とその解決策」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 299 附属会合(アンシラリーミーティング) 犯罪白書 2021

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コラム7 3 第8編 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 300 アンシラリーミーティング「実社会に役立つ研究」 展示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 301 詐欺事犯者の実態と処遇 第1章 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 304 第2章 詐欺に関連する法令・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 306 第1節 詐欺に関連する処罰法規・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 306 1 刑法・組織的犯罪処罰法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 306 2 詐欺と関係が深い特別法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 307 3 特殊詐欺対策関連の特別法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 308 4 その他の特別法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 308 第2節 詐欺被害者の救済に関する法律・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 309 1 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 309 2 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律・・・ 309 第3節 詐欺の捜査に関係する法律・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 309 1 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 309 2 合意制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 310 第3章 詐欺事犯の動向等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 311 第1節 詐欺事犯の動向等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 311 1 認知・検挙・取締り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 311 コラム8 新型コロナウイルス感染症に関連する詐欺事犯・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 324 コラム9 特殊詐欺撲滅に向けた官民の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 338 2 検察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 341 3 裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 346 4 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 349 5 更生保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 357 第2節 再犯・再非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 365 1 検挙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 365 2 検察・裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 367 3 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 368 4 保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 376 第3節 詐欺被害者・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 382 1 詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 382 2 特殊詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 384 3 被害回復・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 388 コラム 10 第4章 令和 3 年版 詐欺被害者の声・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 389 再犯防止に向けた各種施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 391 犯罪白書

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第1節 矯正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 391 1 刑事施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 391 コラム 11 2 少年院・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 392 コラム 12 第2節 函館少年刑務所における特殊詐欺再犯防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 391 多摩少年院及び新潟少年学院における特殊詐欺再非行防止指導・ ・ 393 更生保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 395 コラム 13 被害者から被害に関する心情等を伝達された 保護観察対象者に対する指導の実例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 396 第5章 特別調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 398 第1節 調査の概要・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 398 第2節 全対象者調査の結果・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 399 1 調査対象事件の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 399 2 全対象者の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 401 第3節 特殊詐欺事犯者の調査の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 408 1 特殊詐欺事件の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 408 2 特殊詐欺事犯者(確定記録調査対象者)の特徴・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 409 3 被害状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 418 4 科刑状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 421 第4節 再犯に関する調査の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 423 1 全対象者調査による再犯の有無・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 423 2 全部執行猶予者に対する再犯調査の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 428 第6章 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 431 第1節 詐欺事犯の動向等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 431 1 認知・検挙状況等・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 431 2 処理状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 432 3 少年による詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 432 4 再犯・再非行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 432 5 詐欺被害者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 433 第2節 特殊詐欺対策や詐欺事犯者処遇の経緯と現状・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 433 1 特殊詐欺撲滅に向けた取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 433 2 再犯防止に向けた取組・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 433 第3節 特別調査から判明した詐欺事犯者の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 434 1 全対象者の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 434 2 特殊詐欺事犯者調査の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 435 3 詐欺事犯者の再犯状況と再犯に関連する要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 436 第4節 特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇の在り方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 437 1 特殊詐欺の撲滅に向けた取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 437 2 詐欺事犯者の特性等を踏まえた処遇の充実・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 439 3 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 441 事項索引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 443 犯罪白書 2021

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資 料 編 目 次(※ CD-ROM 収録) 資料1-1 刑法犯 認知件数・発生率・検挙件数・検挙率・検挙人員 資料1-2 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙人員(罪名別) 資料1-3 刑法犯 検挙率(罪名別) 資料1-4 特別法犯 検察庁新規受理人員(罪名別) 資料2-1 検察庁新規受理人員(罪名別) 資料2-2 検察庁終局処理人員 資料2-3 検察庁終局処理人員(罪名別) 資料2-4 地方裁判所における死刑・懲役・禁錮の科刑状況(罪名別) 資料2-5 刑事施設の一日平均収容人員 資料2-6 年末在所懲役受刑者人員(刑期別) 資料2-7 仮釈放・少年院仮退院審理事件 審理開始・許可等人員 資料2-8 保護観察開始人員・全部又は一部執行猶予者の保護観察率 資料2-9 保護観察開始人員(罪名別,男女別) 資料3-1 少年・成人の刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 検挙人員・人口比・少年比 資料3-2 少年による刑法犯 検挙人員・人口比(年齢層別) 資料3-3 少年による刑法犯 検挙人員(罪名別) 資料3-4 触法少年による刑法犯 補導人員(非行名別) 資料3-5 少年による刑法犯 罪名別検挙人員(男女別,年齢層別) 資料3-6 少年による特別法犯 検挙人員(罪名別) 資料3-7 家庭裁判所終局処理人員(ぐ犯の態様別) 資料3-8 犯罪少年の検察庁新規受理人員・人口比(年齢層別) 資料3-9 犯罪少年の検察官処遇意見・家庭裁判所終局処理結果の各構成比(年齢層別) 資料3- 10 少年保護事件 家庭裁判所終局処理人員(処理区分別,非行名別) 資料3- 11 少年鑑別所入所者の人員・一日平均在所人員(男女別) 資料3- 12 少年入所受刑者の人員(男女別,年齢層別,刑期別) 資料4-1 交通事故 発生件数・死傷者数・死傷率等の推移 資料4-2 覚醒剤取締法違反等 検察庁終局処理人員 資料4-3 覚醒剤取締法違反 通常第一審における有罪(懲役)人員(刑期別) 資料4-4 財政経済犯罪 起訴・不起訴人員 資料4-5 財政経済犯罪 通常第一審における懲役刑科刑状況 資料4-6 サイバー犯罪 検察庁終局処理人員 資料4-7 外国人の検察庁終局処理人員 資料4-8 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理人員(罪名別) 資料4-9 被告人通訳事件 通常第一審における有罪人員・科刑状況(懲役・禁錮)の推移 資料4- 10 F 指標入所受刑者人員(国籍別) 資料4- 11 外国人の保護観察開始人員(国籍別) 資料5-1 再入者人員(罪名別,男女別) 資料5-2 入所受刑者の入所度数別人員(罪名別) 資料5-3 再入者の再犯期間別人員(前刑罪名別) 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 法務省赤れんが棟(右手前の建物) 【写真提供:法務省大臣官房秘書課】 1編 犯罪の動向 第 第1章 第2章 第3章 刑法犯 特別法犯 諸外国における犯罪動向

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第 1章 刑法犯 主な統計データ 第1章 刑法犯 第1節 令和2年における刑法犯の主な統計データは,次のとおりである。 なお,この節では,これまでの犯罪白書の統計との比較の便宜上,危険運転致死傷・過失運転致死 傷等に係る数値を参考値として掲載している(交通犯罪については,第4編第1章参照)。 令和2年の主な統計データ(刑法犯) 第1節 (前年比) ① [平成 13 年比] 認知件数 主な統計データ 刑法犯 614,231 件(- 134,328 件 , - 17.9%) [- 77.5%] 窃盗を除く刑法犯 196,940 件( - 19,054 件 , - 8.8%) [- 50.2%] (参考値) 刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 うち危険運転致死傷 うち過失運転致死傷等 ② ③ 914,920 件(- 202,821 件 , - 18.1%) [- 74.5%] 300,689 件( - 68,493 件 , - 18.6%) 730 件( + 64 件 , + 9.6%) 299,959 件( - 68,557 件 , - 18.6%) [- 64.5%] 検挙件数 刑法犯 279,185 件( - 15,021 件 , - 5.1%) [- 48.5%] 窃盗を除く刑法犯 108,498 件( - 4,811 件 , - 4.2%) [- 37.8%] 182,582 人( - 10,025 人 , - 5.2%) [- 43.9%] 検挙人員 刑法犯 窃盗を除く刑法犯 94,118 人( - 4,345 人 , - 4.4%) [- 39.8%] (参考値) 刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 うち危険運転致死傷 うち過失運転致死傷等 ④ 491,145 人( - 80,297 人 , - 14.1%) [- 58.9%] 308,563 人( - 70,272 人 , - 18.5%) 732 人( + 79 人 , + 12.1%) 307,831 人( - 70,351 人 , - 18.6%) [- 64.6%] 発生率 刑法犯 486.6 (- 106.7) [- 1,662.1] 窃盗を除く刑法犯 156.0 (- 15.2) [- 154.3] 刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 724.8 (- 161.1) [- 2,088.3] うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 238.2 (- 54.4) 0.6 (+ 0.1) 237.6 (- 54.5) (参考値) うち危険運転致死傷 うち過失運転致死傷等 ⑤ 注 2 令和 3 年版 [- 426.8] 検挙率 刑法犯 45.5% (+ 6.1pt) [+ 25.6pt] 窃盗を除く刑法犯 55.1% (+ 2.6pt) [+ 10.9pt] 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 犯罪白書

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第1 編 刑法犯の認知件数,検挙人員及び検挙率の推移(昭和 21 年以降)は,1-1-1-1 図のとおりである (CD-ROM 資料 1-1 参照)。 1-1-1-1 図 刑法犯 認知件数・検挙人員・検挙率の推移 (昭和 21 年~令和2年) (万件) (万人) 400 (%) 100 令和2年認知件数 刑法犯 90 614,231 件 窃盗 窃盗を除く刑法犯 417,291 件 196,940 件 危険運転致死傷・過失運転致死傷等 300,689 件 (参考値) 80 350 刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 914,920 件 300 70 250 刑法犯検挙率 60 検挙人員 認知件数 検 挙 率 200 50 45.5 40 30 150 検挙人員 (刑法犯・危険運転致死傷・ 過失運転致死傷等) 100 20 検挙人員 (窃盗を除く 刑法犯) 0 昭和 21 注 50 犯罪の動向 10 検挙人員 (刑法犯) 491,145 25 30 35 40 45 50 55 60平成元 5 10 15 20 25 30令和2 182,582 94,118 0 1 警察庁の統計による。 2 昭和 30 年以前は,14 歳未満の少年による触法行為を含む。 3 昭和 40 年以前の「刑法犯」は,業務上(重)過失致死傷を含まない。 4 危険運転致死傷は,平成 14 年から 26 年までは「刑法犯」に,27 年以降は「危険運転致死傷・過失運転致死傷等」に計上している。 1 認知件数と発生率 刑法犯の認知件数は,平成8年から毎年戦後最多を更新して,14 年には 285 万 4,061 件にまで達 したが,15 年に減少に転じて以降,18 年連続で減少しており,令和2年は 61 万 4,231 件(前年比 13 万 4,328 件(17.9%)減)と戦後最少を更新した。戦後最少は平成 27 年以降,毎年更新中である。 同年から令和元年までの5年間における前年比の減少率は平均 9.2%であったが,2年は前年より 17.9%減少した。平成 15 年からの認知件数の減少は,刑法犯の7割近くを占める窃盗の認知件数が 大幅に減少し続けた(本章第2節1項参照)ことに伴うものである。 刑法犯の発生率の動向は,認知件数の動向とほぼ同様である。平成8年(1,439.8)から毎年上昇 し,14 年には戦後最高の 2,238.7 を記録したが,15 年から低下に転じ,25 年からは毎年戦後最低を 記録している(1-1-1-1 図 CD-ROM 参照)。 犯罪白書 2021 3

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令和2年における刑法犯の認知件数・発生率等を罪名別に見ると,1-1-1-2 表のとおりであるが, 窃盗の認知件数・発生率等の減少が著しい。 1-1-1-2 表 刑法犯 認知件数・発生率・検挙件数・検挙人員・検挙率(罪名別) (令和2年) 第1章 刑法犯 罪 名 認 総 数 知 件 数 発 生 率 検 殺 人 929 (- 21) 0.7 (- 0.0) 913 (- 32) 878 強 盗 1,397 (- 114) 1.1 (- 0.1) 1,358 (+ 32) 放 火 786 (- 54) 0.6 (- 0.0) 700 (+ 42) 強 制 性 交 等 1,332 (- 73) 1.1 (- 0.1) 1,297 凶 器 準 備 集 合 5 (+2) 0.0 (+ 0.0) 4 614,231 (- 134,328) 486.6 (- 106.7) 挙 件 数 検 279,185(- 15,021) 挙 人 員 検 182,582(- 10,025) 挙 率 45.5 (+ 6.1) (- 46) 98.3 (- 1.2) 1,654 (+ 50) 97.2 (+ 9.5) 582 (+ 63) 89.1 (+ 10.7) (- 14) 1,177 (-1) (+1) 22 (+ 17) 97.4 (+ 4.1) 80.0 (- 20.0) 第1節 主な統計データ 暴 行 27,637 (- 2,639) 21.9 (- 2.1) 24,315 (- 1,241) 24,883 (- 1,494) 88.0 (+ 3.6) 傷 害 18,963 (- 2,225) 15.0 (- 1.8) 16,890 (- 1,097) 18,826 (- 1,279) 89.1 (+ 4.2) 脅 迫 3,778 (+ 121) 3.0 (+ 0.1) 3,299 (+ 144) 2,862 (+ 98) 87.3 (+ 1.0) 恐 喝 1,446 (- 183) 1.1 (- 0.1) 1,256 (- 32) 1,515 (- 23) 86.9 (+ 7.8) 窃 盗 417,291 (- 115,274) 330.6 (- 91.5) 88,464 (- 5,680) 40.9 (+ 6.9) 詐 欺 30,468 (- 1,739) 24.1 (- 1.4) (- 517) 50.1 (+ 0.7) 横 170,687(- 10,210) 15,270 (- 632) 8,326 領 15,542 (- 1,712) 12.3 (- 1.4) 12,778 (- 1,287) 12,073 (- 1,203) 82.2 (+ 0.7) 遺 失 物 等 横 領 14,154 (- 1,703) 11.2 (- 1.4) 11,558 (- 1,451) 10,992 (- 1,367) 81.7 (- 0.4) 偽 造 2,090 (- 233) 1.7 (- 0.2) 1,558 (- 491) 1,023 (- 65) 74.5 (- 13.7) 賄 32 (-) 0.0 (- 0.0) 24 (-4) 38 (- 14) 75.0 (- 12.5) 任 62 (+7) 0.0 (+ 0.0) 58 (+ 13) 63 (+ 12) 93.5 (+ 11.7) 賭 博・ 富 く じ 118 (- 149) 0.1 (- 0.1) 112 (- 143) 495 (+ 43) 94.9 (- 0.6) 強制わいせつ 4,154 (- 746) 3.3 (- 0.6) 3,766 (- 233) 2,760 (- 166) 90.7 (+ 9.0) 公然わいせつ 2,463 (- 106) 2.0 (- 0.1) 1,784 (+ 14) 1,379 (- 85) 72.4 (+ 3.5) わいせつ物頒布等 988 (+ 14) 0.8 (+ 0.0) 887 (+7) 568 (+4) 89.8 (- 0.6) 公務執行妨害 2,118 (- 185) 1.7 (- 0.1) 2,072 (- 189) 1,666 (- 200) 97.8 (- 0.3) 贈 収 背 失 火 227 (- 28) 0.2 (- 0.0) 126 (+ 10) 99 (+4) 入 11,021 (- 1,832) 8.7 (- 1.5) 6,357 (+ 25) 3,682 (+ 226) 略取誘拐・人身売買 337 (+ 44) 0.3 (+ 0.0) 335 (+ 67) 266 盗品譲受け等 875 (- 14) 0.7 (- 0.0) 812 (- 22) 709 壊 64,089 (- 7,606) 50.8 (- 6.1) 8,576 (-6) 4,922 暴力行為等処罰法 20 (- 26) 0.0 (- 0.0) 20 (- 27) 25 他 6,063 (+ 443) 4.8 (+ 0.3) 3,931 (+ 284) 3,625 危険運転致死傷 730 (+ 64) 0.6 (+ 0.1) 730 (+ 64) 732 299,959 (- 68,557) 237.6 (- 54.5) 住 器 居 侵 物 そ 損 の 55.5 (+10.0) 57.7 (+ 8.4) (+ 31) 99.4 (+ 7.9) (- 36) 92.8 (- 1.0) (+ 132) 13.4 (+ 1.4) (- 31) 100.0 (- 2.2) 64.8 (- 0.1) (+ 79) 100.0 (-) 307,831(- 70,351) 100.0 (-) (+ 135) (参考値) 過失運転致死傷等 注 4 299,959(- 68,557) 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 「遺失物等横領」の件数・人員は,横領の内数である。 3 ( )内は,前年比である。 4 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 令和 3 年版 犯罪白書

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1-1-1-3 図 第1 編 令和2年における刑法犯の認知件数の罪名別構成比は,1-1-1-3 図のとおりである。 刑法犯 認知件数の罪名別構成比 (令和2年) 住 居 侵 入 1.8 そ 4.1 強制わいせつ 横 領 2.5 傷 害 3.1 詐欺 5.0 他 0.7 暴行 4.5 器物損壊 10.4 注 の 総 数 614,231 件 窃盗 67.9 1 警察庁の統計による。 2 「横領」は,遺失物等横領を含む。 2 検挙人員 刑法犯の検挙人員は,平成 13 年から増加し続け,16 年には 38 万 9,297 人を記録したが,17 年か ら減少に転じ,25 年からは毎年戦後最少を更新しており,令和2年は 18 万 2,582 人(前年比1万 25 人(5.2%)減)であった(1-1-1-1 図 CD-ROM 参照)。 令和2年における刑法犯の検挙人員の罪名別構成比は,1-1-1-4 図のとおりである(罪名別の検挙 人員については,1-1-1-2 表参照)。 1-1-1-4 図 迫 1.6 住 居 侵 入 2.0 器 物 損 壊 2.7 強制わいせつ 犯罪の動向 脅 刑法犯 検挙人員の罪名別構成比 (令和2年) 1.5 その他 8.6 詐欺 4.6 横領 6.6 総 数 182,582人 傷害 10.3 窃盗 48.5 暴行 13.6 注 1 警察庁の統計による。 2 「横領」は,遺失物等横領を含む。 刑法犯について,検挙人員の年齢層別構成比の推移(最近 30 年間)を見ると,1-1-1-5 図のとおりで ある(男女別の年齢層別検挙人員の推移については,CD-ROM 参照) 。65 歳以上の高齢者の構成比は, 平成3年には 2.4%(7,128 人)であったが,令和2年は 22.8%(4万1,696 人)を占めており,検挙 人員に占める高齢者の比率の上昇が進んでいる(高齢者犯罪の動向については,第4編第8章参照) 。 犯罪白書 2021 5

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一方,20 歳未満の者の構成比は,平成3年には 50.8%(15 万 348 人)であったが,その後減少傾向に あり,令和2年は,9.8%(1万 7,904 人)となり,昭和 48 年以来初めて10%を下回った(少年非行の 動向については,第3編第1章参照) 。 1-1-1-5 図 刑法犯 検挙人員の年齢層別構成比の推移 第1章 刑法犯 (平成3年~令和2年) (%) 100 80 令和2年 65歳 以 上 50~64歳 40~49歳 30~39歳 20~29歳 20歳 未 満 60 第1節 40 主な統計データ 22.8 18.7 16.4 14.7 17.6 9.8 20 0 平成 3 注 1 2 3 5 10 15 20 25 30 令和2 警察庁の統計及び警察庁交通局の資料による。 犯行時の年齢による。 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 令和2年における刑法犯の検挙人員を罪名別に見るとともに,これを男女別に見ると,1-1-1-6 表 のとおりである(女性犯罪の動向については,第4編第7章参照)。 1-1-1-6 表 刑法犯 検挙人員(罪名別,男女別) (令和2年) 罪 刑 名 数 男 性 女 性 女性比 犯 人 878 児 殺 〕 16 強 盗 放 火 暴 傷 恐 喝 1,515 (0.8) 1,375 140 9.2 窃 盗 88,464 (48.5) 60,675 27,789 31.4 き 〕 51,622 (28.3) 30,574 21,048 40.8 詐 欺 8,326 (4.6) 6,849 1,477 17.7 横 領 12,073 (6.6) 10,576 1,497 12.4 遺失物等横領 10,992 (6.0) 9,699 1,293 11.8 造 1,023 (0.6) 828 195 19.1 他 24,358 (13.3) 22,159 2,199 9.0 殺 〔 嬰 〔 万 引 偽 そ 注 6 総 法 の 182,582 (100.0) 143,652 38,930 (0.5) 668 210 23.9 (0.0) 2 14 87.5 1,654 (0.9) 1,525 129 7.8 582 (0.3) 445 137 23.5 行 24,883 (13.6) 21,444 3,439 13.8 害 18,826 (10.3) 17,108 1,718 9.1 1 警察庁の統計による。 2 ( )内は,罪名別構成比である。 3 〔 〕内は,犯行の手口であり,殺人又は窃盗の内数である。 4 「遺失物等横領」は,横領の内数である。 令和 3 年版 犯罪白書 21.3

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第1 編 3 検挙率 刑法犯の検挙率は,平成7年から毎年低下し,13 年には 19.8%と戦後最低を記録したが,14 年か ら回復傾向にあり,一時横ばいで推移していたものの,26 年以降再び上昇しており,令和2年は 45.5%(前年比 6.1pt 上昇)であった(1-1-1-1 図 CD-ROM 参照)。 令和2年における刑法犯の検挙率を罪名別に見ると,1-1-1-2 表のとおりである。 第2節 主な刑法犯 窃盗は,認知件数において刑法犯の7割近くを占める(1-1-1-3 図参照)。その認知件数,検挙件 数及び検挙率の推移(最近 30 年間)を見ると,1-1-2-1 図①のとおりである。平成7年から 13 年ま で,認知件数の増加と検挙率の低下が続いていたが,14 年から検挙率が上昇に転じ,認知件数も, 戦後最多を記録した同年(237 万 7,488 件)をピークに 15 年から減少に転じた。認知件数は,26 年 以降,毎年戦後最少を更新し,令和2年は,41 万 7,291 件(前年比 11 万 5,274 件(21.6%)減)で あり,平成 27 年から令和元年までは前年比 8.5~11.2%の幅で減少していたのに対し,2年は前年 からの減少幅が大きかった。検挙件数は,平成 17 年から減少し続けており,令和2年は,17 万 687 件(同1万 210 件(5.6%)減)であり,認知件数と比べると,前年からの減少幅が小さかった。検 挙率は,前年より 6.9pt 上昇し,40.9%であった(1-1-1-1 図 CD-ROM 参照)。 窃盗を除く刑法犯の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 30 年間)は,1-1-2-1 図②のと おりである。認知件数は,平成 16 年に 58 万 1,463 件と戦後最多を記録した後,17 年から減少し続 け,令和2年は,19 万 6,940 件(前年比1万 9,054 件(8.8%)減)であり,窃盗の認知件数と比べ ると,前年からの減少幅が小さかった。検挙率は,平成 16 年に 37.8%と戦後最低を記録した後,緩 やかな上昇傾向にあり,令和2年は 55.1%(同 2.6pt 上昇)であった(1-1-1-1 図 CD-ROM 参照)。 1-1-2-1 図 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(窃盗・窃盗を除く刑法犯別) ① 窃盗 (万件) 300 (%) 100 250 80 200 60 150 検挙率 100 0 平成 3 40.9 40 417,291 20 170,687 50 5 10 15 認知件数 ② 犯罪の動向 (平成3年~令和2年) 20 25 30 令和 2 0 検挙件数 窃盗を除く刑法犯 (%) 100 (万件) 70 60 80 50 40 30 検挙率 60 55.1 犯罪白書 2021 40 196,940 7

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0 平成 3 5 10 15 20 認知件数 ② 25 30 令和 2 検挙件数 窃盗を除く刑法犯 (%) 100 (万件) 70 60 80 50 第1章 刑法犯 40 60 55.1 検挙率 30 40 196,940 108,498 20 20 10 0 平成 3 5 10 15 20 認知件数 第2節 注 1 2 主な刑法犯 1 0 25 30 令和 2 0 検挙件数 警察庁の統計による。 ②の平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 窃盗 令和2年における窃盗の認知件数の手口別構成比は,1-1-2-2 図のとおりである(手口別の認知件 数については,CD-ROM 参照)。 1-1-2-2 図 窃盗 認知件数の手口別構成比 (令和2年) ひ っ た く り す り 仮 睡 者 ね ら い 自動販売機ねらい 色 情 ね ら い 払 出 盗 0.2 0.3 0.6 0.8 1.5 2.1 空き巣 3.3 その他の 非侵入窃盗 17.6 置引き 3.1 車上・ 部品ねらい 9.9 非侵入 窃盗 57.1 侵入窃盗 10.6 総 数 417,291件 万引き 20.9 注 忍 込 み 出 店 荒 し 事 務 所 荒 し その他の侵入窃盗 乗り物盗 32.4 1.4 1.3 0.9 3.6 自転車盗 28.9 オートバイ盗 2.2 自 動 車 盗 1.2 1 警察庁の統計による。 2 「払出盗」は,不正に取得し,又は不正に作成したキャッシュカード等を利用して ATM(CD を含む。)から現金を窃取するものを いう。 認知件数の推移(最近 30 年間)を態様別に見ると,1-1-2-3 図①のとおりであり,手口別に見る と,1-1-2-3 図②のとおりである。態様別では,侵入窃盗及び非侵入窃盗は,平成 15 年から減少し 続けている。侵入窃盗は,27 年から令和元年までは前年比 4.4~14.2%の幅で減少していたのに対 し,2年は前年から 23.7%減少し,非侵入窃盗は,平成 27 年から令和元年までは前年比 7.4~ 10.1%の幅で減少していたのに対し,2年は前年から 17.2%減少した。乗り物盗は,平成 14 年から 減少し続けているところ,27 年から令和元年までは前年比 10.0~13.4%の幅で減少していたのに対 し,2年は前年から 27.8%減少した。 手口別では,侵入窃盗である空き巣は,平成 27 年から令和元年までは前年比 5.7~13.7%の幅で 8 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 減少していたのに対し,2年は前年から 29.0%減少したほか,乗り物盗のうち自転車盗は,平成 27 年から令和元年までは前年比 8.3~13.1%の幅で減少していたのに対し,2年は前年から 28.4%減少 した。なお,特殊詐欺(第8編第3章第1節1項参照)に関係する手口である払出盗(不正に取得 し,又は不正に作成したキャッシュカード等を利用して ATM(CD を含む。)から現金を窃取するも の)及び職権盗(公務員等の身分を詐称し,捜査,検査等を装い,すきをみて金品を窃取するもの) の認知件数については,2年は払出盗が 8,970 件(前年比 51.1%増)と前年より大きく増加したの に対し,職権盗が 2,837 件(同 23.6%減)と大きく減少した(警察庁の統計による。)。 1-1-2-3 図 窃盗 認知件数の推移(態様別,手口別) (平成3年~令和2年) ① 態様別 ② (万件) 140 (万件) 60 非侵入窃盗 車上・部品ねらい 120 50 100 30 60 自動販売機ねらい 20 侵入窃盗 40 万引き 238,173 10 20 注 自転車盗 40 乗り物盗 80 0 平成3 5 手口別 10 15 20 自動車盗 135,025 44,093 0 30令和 2 平成3 5 10 25 空き巣 15 20 25 120,797 87,280 41,431 13,906 5,210 3,321 30令和 2 警察庁の統計による。 令和2年における窃盗の検挙件数の手口別構成比は,1-1-2-4 図のとおりである(手口別の検挙件 数については,CD-ROM 参照)。 犯罪の動向 1-1-2-4 図 窃盗 検挙件数の手口別構成比 (令和2年) 仮 睡 者 ね ら い す り ひ っ た く り 自動販売機ねらい 色 情 ね ら い 0.2 0.4 0.4 1.7 1.9 その他の 非侵入窃盗 16.8 置引き 払出盗 3.0 4.7 車上・部品ねらい 7.3 非侵入 窃盗 73.1 出 店 荒 し 忍 込 み 事 務 所 荒 し その他の侵入窃盗 空き巣 6.1 侵入窃盗 18.7 乗り物盗 総 数 8.2 170,687 件 自転車盗 5.6 2.4 2.4 1.5 6.4 自 動 車 盗 1.8 オートバイ盗 0.9 万引き 36.7 注 1 警察庁の統計による。 2 「払出盗」は,不正に取得し,又は不正に作成したキャッシュカード等を利用して ATM(CD を含む。)から現金を窃取するものを いう。 令和2年の窃盗の検挙率を態様・手口別で見ると,侵入窃盗(72.2%) ,非侵入窃盗(52.4%) ,乗り 物盗(10.4%)の順であったところ, 非侵入窃盗のうち万引きは71.7%であった(警察庁の統計による。 ) 。 犯罪白書 2021 9

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2 強制性交等・強制わいせつ 平成 29 年6月,刑法の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 72 号)が成立し,同年7月に施行さ れた。同法により,①従来の強姦が強制性交等に改められ,被害者の性別を問わなくなり,かつ,性交 (姦淫)に加えて肛門性交及び口腔性交をも対象とし,法定刑の下限が引き上げられ,②監護者わいせ 第1章 刑法犯 つ・監護者性交等が新設され,18 歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力があることに 乗じたわいせつ行為や性交等が処罰されることとなり,また,③強姦,強制わいせつ等(同法による改 正前の刑法176 条,177 条及び 178 条に規定する罪)の罪は親告罪であったが,これらの罪は,改正時 に,監護者性交等の罪とともに,非親告罪とされた。 強制性交等(前記改正前は強姦及び準強姦であり,改正後は強姦,準強姦,準強制性交等及び監護 者性交等を含む。 )の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 30 年間)は,1-1-2-5 図のとおり である。認知件数は,平成9年から増加傾向を示し,15 年に 2,472 件を記録した後,23 年まで減少 第2節 し続け,24・25 年にやや増加したものの,26 年から再び減少し,28 年は昭和 57 年以降で最少の 主な刑法犯 1,332 件(前年比 73 件(5.2%)減。なお,前記改正によって対象が拡大した点には留意が必要であ 989 件であった。その後,平成 29 年から令和元年までやや増加したものの,2年は前年より減少し, る。 )であり,うち女性を被害者とするものは 1,260 件であった(6-1-3-1 表参照)。検挙件数も,平 成 15 年に 1,569 件を記録した後,減少傾向にあったが,29 年から令和元年まで増加に転じ,2年は 前年より減少し,1,297 件(同 14 件(1.1%)減)であった。検挙率は,平成 10 年から低下し,14 年に 62.3%と戦後最低を記録した後は上昇傾向にあり,29・30 年と低下したが,令和元年から上昇 し,2年は 97.4%(同 4.1pt 上昇)であった。 このうち,令和2年における監護者性交等の認知件数は 101 件,検挙件数は 102 件(検挙率は 101.0%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。 なお,肛門性交のみ,口腔性交のみ,又は肛門性交及び口腔性交のみを実行行為とする強制性交等 について,令和2年に第一審判決があったものとして法務省刑事局に対し各検察庁から報告があった 件数は,66 件であった(法務省刑事局の資料による。)。 1-1-2-5 図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移 (平成3年~令和2年) (件) 3,000 (%) 100 検挙率 2,500 80 2,000 60 1,500 40 1,000 5 10 15 認知件数 注 10 1,332 1,297 20 500 0 平成 3 97.4 20 25 30 令和2 0 検挙件数 1 警察庁の統計による。 2 「強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦をいい,29 年以降は強制性交等及び同改正前の 強姦をいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 強制わいせつ(前記改正前は準強制わいせつを含み,改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつ を含む。 )の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 30 年間)は,1-1-2-6 図のとおりである。 認知件数は,平成の初期から増加傾向にあったが,平成 11 年から 13 年にかけて前年比 25.8~ 38.6%の勢いで増加し続け,15 年には昭和 41 年以降で最多の1万 29 件を記録した。その後,平成 21 年まで減少し,22 年から 25 年まで増加傾向にあったが,26 年から減少し続け,令和2年は 4,154 件(前年比 746 件(15.2%)減。なお,前記改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が, 強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点には留意する必 要がある。)であった。検挙件数は,平成5年から 25 年までは 3,000 件台,26 年から 30 年までは 4,000 件台で推移していたが,令和元年に再び 3,000 件台となり,2年は 3,766 件(同 233 件(5.8%) 減)であった。検挙率は,平成 11 年に前年比 18.9pt,12 年に同 14.8pt 低下し,14 年には 35.5%と 昭和 41 年以降で最低を記録したが,その後は上昇傾向にあり,令和2年は 90.7%(同 9.0pt 上昇) であった(CD-ROM 参照)。 このうち,令和2年における監護者わいせつの認知件数は 89 件,検挙件数は 83 件(検挙率は 93.3%)であった(警察庁刑事局の資料による。)。 1-1-2-6 図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移 (平成3年~令和2年) (%) 100 (千件) 12 90.7 検挙率 10 80 8 60 6 4,154 40 4 20 2 5 10 15 認知件数 注 20 25 30 令和 2 犯罪の動向 0 平成 3 3,766 0 検挙件数 警察庁の統計による。 3 その他の刑法犯 窃盗及び強制性交等・強制わいせつを除く刑法犯について,主な罪名・罪種ごとに認知件数の推移 (最近 30 年間)を見ると,1-1-2-7 図のとおりである。 犯罪白書 2021 11

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1-1-2-7 図 その他の刑法犯 認知件数の推移(罪名・罪種別) (平成3年~令和2年) (万件) 25 第1章 刑法犯 20 15 器物損壊 10 横領 第2節 粗暴犯 5 主な刑法犯 0 平成 3 注 64,089 50,403 詐欺 住居侵入 恐喝 5 10 15 20 25 30 令和2 30,468 15,542 11,021 1,446 1 警察庁の統計による。 2 「粗暴犯」は,傷害,暴行,脅迫,凶器準備集合及び暴力行為等処罰法違反をいう。 3 「横領」は,遺失物等横領を含む。 認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 20 年間)を罪名別に見ると,1-1-2-8 図のとおりで ある(詳細については,CD-ROM 資料 1-2 及び 1-3 参照。詐欺の認知件数,検挙件数及び検挙率に ついては第8編第3章第1節1項(1)ア及び同項(3)ア参照)。 なお,盗品譲受け等,公然わいせつ,わいせつ物頒布等,略取誘拐・人身売買,通貨偽造,文書偽 造等及び賭博・富くじの認知件数等については CD-ROM 参照。 1-1-2-8 図 ① 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(罪名別) 殺人 (件) 1,600 検挙率 98.3 80 60 800 20 25 30 令和 2 89.1 (%) 100 検挙率 3 1 20 0 平成 13 15 20 25 30 令和 2 0 認知件数 12 令和 3 年版 犯罪白書 80 60 1,397 40 1,358 20 0 平成 13 15 ④ 20 25 30 令和2 暴行 (千件) 35 80 18,963 60 16,890 40 2 検挙率 2 0 傷害 (万件) 4 (%) 100 4 20 0 平成 13 15 97.2 6 929 913 40 400 (平成 13 年~令和2年) 強盗 (千件) 8 (%) 100 1,200 ③ ② 検挙率 88.0 0 (%) 100 20 27,637 80 24,315 60 15 40 30 25 10 5 0 平成 13 15 検挙件数 20 20 25 30 令和2 0

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脅迫 ⑥ 検挙率 3 0 30 令和2 検挙率 82.2 8 6 4 2 0 平成 13 15 ⑨ 20 25 97.8 検挙率 60 1,500 ⑩ 20 25 器物損壊 (万件) 25 30 令和2 60 40 20 25 1 700 30 令和 2 0 (%) 100 80 57.7 3 20 786 20 4 2 60 10 40 5 20 60 検挙率 0 平成 13 15 20 25 30 令和2 40 11,021 20 6,357 0 20 25 30 令和2 0 64,089 13.4 8,576 認知件数 1 2 80 80 検挙率 15 注 検挙率 住居侵入 40 0 (%) 100 (%) 100 20 0 平成 13 15 89.1 40 1,446 20 1,256 0 犯罪の動向 0 平成 13 15 30 令和2 (万件) 5 2,072 60 1 ⑪ 2,000 2,118 80 2 25 放火 80 (%) 100 3 20 (件) 2,500 1,000 40 15,542 500 20 12,778 0 0 平成 13 15 30 令和2 公務執行妨害 (千件) 4 ⑧ (%) 100 10 60 0 平成 13 15 横領(遺失物等横領を含む) (万件) 12 80 5 20 25 (%) 100 10 40 20 86.9 検挙率 15 60 3,299 1 ⑦ 87.3 80 2 0 平成 13 15 恐喝 (千件) (%) 100 3,778 20 第1 編 ⑤ (千件) 4 検挙件数 警察庁の統計による。 検挙件数には,前年以前に認知された事件に係る検挙事件が含まれることがあるため,検挙率が 100%を超える場合がある。 犯罪白書 2021 13

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(1)殺人(1-1-2-8 図①) 殺人の認知件数は,平成 16 年から 28 年までは減少傾向にあり,同年に戦後最少の 895 件を記録 した。その後はおおむね横ばいで推移しており,令和2年は 929 件(前年比 21 件(2.2%)減)で あった。検挙率は,安定して高い水準(2年は 98.3%)にある。 第1章 刑法犯 (2)強盗(1-1-2-8 図②) 強盗の認知件数は,平成 15 年に昭和 26 年以降で最多の 7,664 件を記録した後,平成 16 年から減 少傾向にあり,令和2年は 1,397 件(前年比 114 件(7.5%)減)と戦後最少を更新した。検挙率は, 平成 17 年から上昇傾向にあり,令和2年は 97.2%(同 9.5pt 上昇)であった。 令和2年における強盗の認知件数の手口別構成比は,1-1-2-9 図のとおりである。 1-1-2-9 図 強盗 認知件数の手口別構成比 第2節 (令和2年) 主な刑法犯 住宅強盗 10.8 その他 42.6 途 中 強 盗 0.4 その他の自動車強盗 1.4 注 非侵入 強盗 71.3 総 数 1,397 件 タクシー 強盗 5.7 侵入強盗 28.7 コンビニ強盗 8.7 その他の店舗強盗 6.0 金 融 機 関 強 盗 0.8 そ の 他 2.4 路上強盗 21.3 1 警察庁の統計による。 2 「タクシー強盗」及び「その他の自動車強盗」は,自動車に乗車中の者から自動車又は金品を強取するもの(暴行・脅迫を加えて運 賃の支払を免れるものを含む。 )をいう。 3 「途中強盗」は,金品を輸送中の者又は銀行等に預金に行く途中若しくは銀行等から払戻しを受けて帰る途中の者であることを知っ た上で,その者から金品を強取するものをいう。 (3)傷害・暴行・脅迫(1-1-2-8 図③~⑤) 傷害の認知件数は,平成 15 年に3万 6,568 件を記録した後,16 年から減少傾向にあり,27 年か ら令和元年までの5年間における前年比減少率は平均 4.5%であったが,2年は前年より 10.5%減少 した1万 8,963 件(前年比 2,225 件減)であった。暴行の認知件数は,平成 18 年以降おおむね高止 まりの状況にあり,2万 9,000 件台から3万 2,000 件台で推移していたが,令和2年は2万 7,637 件 (同 2,639 件(8.7%)減)と前年から大きく減少した。脅迫の認知件数は,平成 12 年以降 2,000 件 台で推移していたが,24 年に大きく増加し,同年以降は 3,000 件台で推移しており,令和2年は 3,778 件(同 121 件(3.3%)増)であった。いずれの検挙率も,平成 16 年前後からおおむね上昇傾 向にある。 (4)恐喝(1-1-2-8 図⑥) 恐喝の認知件数は,平成 13 年に1万 9,566 件を記録した後,14 年から減少し続けており,令和2 年は 1,446 件(前年比 183 件(11.2%)減)であった。 (5)横領(1-1-2-8 図⑦) 横領(遺失物等横領を含む。)の認知件数は,平成 16 年に戦後最多の 10 万 4,412 件を記録した後, 17 年から減少し続けており,令和2年は1万 5,542 件(前年比 1,712 件(9.9%)減)であった。 14 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 (6)放火(1-1-2-8 図⑧) 放火の認知件数は,平成 16 年に 2,174 件を記録した後,17 年から減少傾向にあり,令和2年は 786 件(前年比 54 件(6.4%)減)であった。 (7)公務執行妨害(1-1-2-8 図⑨) 公務執行妨害の認知件数は,平成 18 年に戦後最多の 3,576 件を記録した後,19 年から減少傾向に あり,令和2年は 2,118 件(前年比 185 件(8.0%)減)であった。 (8)住居侵入(1-1-2-8 図⑩) 住居侵入の認知件数は,平成 15 年に戦後最多の4万 348 件を記録した後,16 年から減少傾向にあ り,令和2年は1万 1,021 件(前年比 1,832 件(14.3%)減)であった。 (9)器物損壊(1-1-2-8 図⑪) 器物損壊の認知件数は,平成 15 年に 23 万 743 件を記録した後,16 年から減少し続けており,令 和2年は6万 4,089 件(前年比 7,606 件(10.6%)減)であった。検挙率は,平成 15 年まで低下し た後,16 年から上昇傾向にあり,令和2年は 13.4%(同 1.4pt 上昇)であったが,依然,刑法犯全 体と比べて著しく低い。 犯罪の動向 犯罪白書 2021 15

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第 2章 第2章 特別法犯 第1節 特別法犯 主な統計データ 令和2年における特別法犯の主な統計データは,次のとおりである。 令和2年の主な統計データ(特別法犯) 検察庁新規受理人員 第1節 ① 道路交通法違反 ② 覚醒剤取締法違反 ③ 218,540 人 (構成比) (前年比) (71.1%) (- 20,960 人, - 8.8%) 主な統計データ 13,644 人 (4.4%) (+ 319 人, + 2.4%) 軽犯罪法違反 8,267 人 (2.7%) (+ 592 人, + 7.7%) ④ 廃棄物処理法違反 7,665 人 (2.5%) (+ 622 人, + 8.8%) ⑤ 入管法違反 7,436 人 (2.4%) (+ 638 人, + 9.4%) ⑥ 大麻取締法違反 7,243 人 (2.4%) (+ 988 人, + 15.8%) ⑦ 銃刀法違反 5,823 人 (1.9%) (+ 30 人, + 0.5%) ⑧ 自動車損害賠償保障法違反 3,212 人 (1.0%) (- 132 人, - 3.9%) ⑨ 児童買春・児童ポルノ禁止法違反 3,064 人 (1.0%) (- 333 人, - 9.8%) ⑩ 犯罪収益移転防止法違反 2,502 人 (0.8%) (+ 104 人, + 4.3%) 30,172 人 (9.8%) その他 総 307,568 人 (100.0%) (- 20,485 人, - 6.2%) 数 【平成 13 年 総数】 1,009,850 人 注 【平成 13 年比】 [- 702,282 人, - 69.5%] 1 検察統計年報による。 2 「道路交通法違反」は,保管場所法違反を含まない。 特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和 24 年以降)は,1-2-1-1 図のとおりである(罪名別 の人員については,CD-ROM 資料 1-4 参照)。その人員は,特別法犯全体では,43 年に交通反則通 告制度が施行されたことにより大幅に減少した後,50 年代は 200 万人台で推移していたが,62 年に 同制度の適用範囲が拡大された結果,再び大幅に減少した。平成元年から 11 年までは増減を繰り返 していたが,12 年からは 21 年連続で減少しており,18 年からは,昭和 24 年以降における最少を記 録し続けている。他方,道交違反を除く特別法犯では,平成 13 年から増加し,19 年(11 万 9,813 人)をピークとして,その後は減少傾向にあるが,令和2年は8万 8,337 人(前年比 469 人(0.5%) 増)であった(CD-ROM 参照)。 16 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 1-2-1-1 図 特別法犯 検察庁新規受理人員の推移 (昭和24年~令和2年) (万人) 550 500 450 400 350 300 250 200 150 100 307,568 50 0 昭和24 注 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 道交違反 219,231 道交違反を除く 30令和2 特別法犯 88,337 1 刑事統計年報及び検察統計年報による。 2 「道交違反」は,次の法令の違反をいう。 昭和 24 年 自動車取締令,道路取締令,道路交通取締法及び道路交通取締令 25 年~ 34 年 自動車取締令,道路交通取締法及び道路交通取締令 35 年~ 37 年 道路交通法及び道路交通取締令 38 年~ 43 年 道路交通法,道路交通取締令及び保管場所法 44 年~令和2年 道路交通法及び保管場所法 令和2年における道交違反を除く特別法犯の検察庁新規受理人員の罪名別構成比は,1-2-1-2 図の とおりである。 犯罪の動向 1-2-1-2 図 特別法犯 検察庁新規受理人員の罪名別構成比 (令和2年) 青少年保護育成条例 2.2 覚醒剤 取締法 15.4 その他の条例 8.7 その他の 特別法 20.7 条例違反 10.9 総 数 88,337人 特別法犯(条例違反を除く) 89.1 風 営 適 正 化 法 1.8 犯 罪 収 益 移 転 防 止 法 2.8 児童買春・児童ポルノ禁止法 3.5 自 動 車 損 害 賠 償 保 障 法 3.6 注 1 2 銃刀法 6.6 大麻取締法 8.2 軽犯罪法 9.4 廃棄物処理法 8.7 入管法 8.4 検察統計年報による。 道交違反を除く。 迷惑防止条例違反の痴漢事犯の検挙件数(電車内以外で行われたものを含む。)は,近年減少傾向 にあり,平成 27 年以降 2,700~3,200 件台で推移していたが,令和2年は 1,915 件(前年比 874 件 (31.3%)減)であった(警察庁生活安全局の資料による。)。 犯罪白書 2021 17

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第2節 主な特別法犯 主な特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)は,1-2-2-1 図のとおりである。なお, 交通犯罪,薬物犯罪,財政経済犯罪及びサイバー犯罪については,第4編第1,2,4及び5の各章 をそれぞれ参照。 第2章 特別法犯 銃刀法違反は,平成 21 年(6,989 人)をピークに一時減少傾向となったが,24 年以降はおおむね 横ばいとなっており,令和2年は 5,823 人(前年比 0.5%増)であった(CD-ROM 資料 1-4 参照)。 なお,3年6月,同法が改正され(令和3年法律第 69 号),人の生命に危険を及ぼし得る威力を有す るクロスボウについて,所持の禁止の対象とするとともに,所持許可制に関する規定を整備し,不法 所持に対する罰則の新設等が行われた(4年3月までに施行)。 廃棄物処理法違反は,平成 19 年(8,879 人)をピークに 20 年以降は7年連続で減少し,27 年以 降はおおむね横ばいで推移していたが,令和2年は 7,665 人(前年比 8.8%増)であった(CD-ROM 第2節 資料 1-4 参照) 。なお,平成 29 年6月,同法が改正され(平成 29 年法律第 61 号),産業廃棄物管理 票の交付・写し送付・回付義務違反,虚偽交付,虚偽記載,写し保存義務違反等産業廃棄物管理票に 関連する罰則の法定刑の引上げ等が行われた(30 年4月施行)。 主な特別法犯 風営適正化法違反は,平成 19 年(4,900 人)をピークに減少傾向にあり,令和2年は 1,570 人(前 年比 17.5%減)であった(CD-ROM 資料 1-4 参照)。 児童買春・児童ポルノ禁止法違反は,平成 11 年の同法施行後増加傾向にあり,特に 24 年以降7年 連続で増加していたが,令和元年から減少し,2年は 3,064 人であった(前年比 9.8%減) (CD-ROM 資料 1-4 参照)。なお,平成 26 年6月,同法が改正され(平成 26 年法律第 79 号),児童ポルノをみ だりに所持することなどが一般的に禁止されたほか,児童ポルノの製造の罪について盗撮の場合にも 処罰対象になるとともに(同年7月施行) ,自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持する ことなども処罰対象とされた(27 年7月適用開始)。 なお,配偶者暴力防止法違反については第4編第6章第2節,ストーカー規制法違反及びいわゆる リベンジポルノ等の行為を処罰することなどを内容とする私事性的画像被害防止法違反については同 章第3節をそれぞれ参照。 18 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 1-2-2-1 図 主な特別法犯 検察庁新規受理人員の推移 (平成13年~令和2年) ① 保安関係 (千人) 18 16 ② (千人) 10 軽犯罪法 12 7,665 6 10 8 8,267 銃刀法 6 4 5,823 4 2 0 平成13 15 2 20 25 30 令和2 風紀関係 3,000 風営適正化法 2,500 3 25 30 令和2 児童買春・ 児童ポルノ禁止法 3,500 4 20 児童買春・児童ポルノ禁止法等 (人) 4,000 5 青少年保護育成条例 2,000 3,064 1,957 1,500 2 売春防止法 1 0 平成13 15 0 平成13 15 ④ (千人) 6 注 廃棄物処理法 8 14 ③ 環境関係 1,570 543 20 25 30 令和2 1,000 児童福祉法 500 出会い系サイト規制法 0 平成13 15 20 25 30 令和2 214 34 検察統計年報による。 令和2年における公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)違反の検察庁新規受理人員は,前年の 720 人から 566 人に減少した(CD-ROM 資料 1-4 参照)。 犯罪の動向 令和2年における各種選挙違反の検挙人員は,前年の 640 人から 45 人に大幅に減少した。違反態 様別に見ると, 「文書図画に関する制限違反」が 14 人(31.1%)と最も多く,次いで,「選挙の自由 妨害」10 人(22.2%) ,「買収,利害誘導」9人(20.0%),「運動期間の違反」5人(11.1%)の順 であった(警察庁の統計による。)。 なお,令和2年6月には,公職選挙法が改正され(令和2年法律第 41 号),住所要件を満たさない 者の立候補を抑止するため,地方議会議員選挙の立候補の届出書に添付する宣誓書の宣誓内容に「当 該選挙の期日において住所要件を満たす者であると見込まれること」が追加され,上記宣誓内容に虚 偽があった場合についても処罰対象とされた(同年9月施行)。 犯罪白書 2021 19

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第 3章 第3章 諸外国における犯罪動向 第1節 諸外国における犯罪動向 諸外国における犯罪 この節では,フランス,ドイツ,英国(イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイル ランドをいう。以下この節において同じ。 )及び米国の4か国の犯罪動向を紹介し,我が国と対比す る。 統計資料については,国際連合(国連)薬物・犯罪事務所(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime) (注)が実施し,公表しているデータ(dataUNODC)を使用する。 UNODC の犯罪情勢等に関する調査(UN-CTS:United Nations Survey of Crime Trends and Operations of Criminal Justice Systems)においては,各犯罪を定義した上で,共通の調査 票を用いて各国に照会し,回答を集計して,各国の犯罪情勢等に関する指標として公表する手法が採 られている。UN-CTS で用いられている各犯罪の定義と各国における各犯罪の定義とは必ずしも一 致しないため,各国が UN-CTS の犯罪の定義とは異なる定義により集計した数値を回答し,UNCTS の統計数値として公表されることがあり得ること,各国における統計の取り方や精度は必ずし 第1節 も同一ではないこと,限られた犯罪の発生件数等から各国の犯罪動向を即断することはできないこと など,留意すべき点はあるものの,これらの国の近年の犯罪指標の推移を示すことは,国際的な犯罪 諸外国における犯罪 情勢を考察する上で参考となるものと考えられる。 本白書では,犯罪情勢を検討する上で重要な犯罪類型である殺人,強盗,窃盗及び性暴力につい て,前記4か国と我が国の犯罪指標の推移を掲載する(なお,本白書作成時点において入手かつ対比 可能であった各年の数値を掲載しており,その範囲は犯罪ごとに異なる。また,UN-CTS の調査票 では,各国は以前に回答した数値を修正することが可能であり,数値の変更が少なくないことや今後 も数値の変更があり得ることに留意する必要がある。)。 注 国連薬物・犯罪事務所(UNODC)は,不正薬物及び犯罪に関する調査・分析,国連加盟国 の不正薬物・犯罪・テロリズムに関する各条約の締結・実施及び国内法整備の支援,国連加盟国 に対する不正薬物・犯罪・テロ対策における能力向上のための技術協力の提供等を行うほか,国 連経済社会理事会の機能委員会である麻薬委員会,犯罪防止刑事司法委員会(コミッション) (第 2編第6章第1節参照)等の事務局を務めている。 20 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 1 殺人 この項でいう「殺人」とは,dataUNODC における「Intentional homicide」をいう。各国にお ける「殺人」の発生件数及び発生率(人口 10 万人当たりの発生件数をいう。以下この節において同 じ。 )の推移(平成 30 年(2018 年)までの最近5年間)を見ると,1-3-1-1 表のとおりである。 1-3-1-1 表 ① 日本 年 ③ 発生件数 発生率 (2014 年~2018 年) フランス 年 次 発生件数 発生率 395 0.3 2014 年 2015 363 0.3 2015 1,012 1.6 2016 362 0.3 2016 874 1.4 2017 306 0.2 2017 824 1.3 2018 334 0.3 2018 779 1.2 ドイツ 次 ④ 発生件数 発生率 792 1.2 英国 年 次 発生件数 発生率 2014 年 716 0.9 2014 年 589 0.9 2015 682 0.8 2015 652 1.0 2016 963 1.2 2016 789 1.2 2017 813 1.0 2017 809 1.2 2018 788 0.9 2018 … … 米国 年 次 発生件数 発生率 2014 年 14,164 4.4 2015 15,883 4.9 2016 17,413 5.4 2017 17,284 5.3 2018 16,214 5.0 犯罪の動向 注 次 ② 2014 年 年 ⑤ 各国における殺人の発生件数・発生率の推移 1 UNODC Research による dataUNODC の Homicide rates(殺人率)統計(令和3年(2021 年)5月 14 日確認)及び国連経済 社会局人口部の世界人口推計 2019 年版(World Population Prospects 2019)による。 2 「発生率」は,前記人口推計に基づく人口(各年7月1日時点の推計値)10 万人当たりの発生件数である。 3 前記「殺人率」統計において,「発生件数」の数値が入手可能であった年につき,「発生件数」及び「発生率」を示している。 4 「英国」は,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドをいう。 犯罪白書 2021 21

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2 強盗 この項でいう「強盗」とは,dataUNODC における「Robbery」をいう。各国における「強盗」 の発生件数及び発生率の推移(平成 30 年(2018 年)までの最近5年間)を見ると,1-3-1-2 表のと おりである。 第3章 諸外国における犯罪動向 1-3-1-2 表 ① 日本 年 ③ 第1節 諸外国における犯罪 22 発生件数 発生率 (2014 年~2018 年) フランス 年 次 発生件数 発生率 3,056 2.4 2014 年 114,093 177.7 2015 2,426 1.9 2015 104,116 161.5 2016 2,332 1.8 2016 104,439 161.5 2017 1,852 1.5 2017 100,080 154.3 2018 1,787 1.4 2018 … … ドイツ 次 ④ 発生件数 発生率 英国 年 次 発生件数 発生率 2014 年 45,475 55.8 2014 年 52,556 80.3 2015 44,666 54.6 2015 53,270 80.9 2016 43,009 52.3 2016 61,440 92.7 2017 38,849 47.0 2017 79,212 118.7 2018 … … 2018 … … 米国 年 注 次 ② 2014 年 年 ⑤ 各国における強盗の発生件数・発生率の推移 次 発生件数 発生率 2014 年 322,900 101.3 2015 328,100 102.3 2016 332,800 103.0 2017 320,600 98.6 2018 … … 1 「発生件数」は,UNODC Research による dataUNODC の Robbery(強盗)統計(令和3年(2021 年)5月 14 日確認)による。 ただし, 「日本」の「発生件数」のうち,同「強盗」統計において数値が入手できなかった 2017 年及び 2018 年の数値は,警察庁刑事 局の資料による。 2 人口は,国連経済社会局人口部の世界人口推計 2019 年版(World Population Prospects 2019)による。 3 「発生率」は,前記人口推計に基づく人口(各年7月1日時点の推計値)10 万人当たりの発生件数である。 4 前記「強盗」統計又は警察庁刑事局の資料において,「発生件数」の数値が入手可能であった年につき,「発生件数」及び「発生率」 を示している。 5 「英国」は,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドをいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 窃盗 3 この項でいう「窃盗」とは,dataUNODC における「Burglary」, 「Theft of cars」及び「Theft」 という三つの類型の総計をいう。各国における「窃盗」の発生件数及び発生率の推移(平成 30 年 (2018 年)までの最近5年間)を手口別に見ると,1-3-1-3 表のとおりである。 1-3-1-3 表 ① 次 2014 年 2015 2016 2017 2018 次 2014 年 2015 2016 2017 2018 次 2014 年 2015 自動車盗 その他の窃盗 (472.1) 93,566 (73.0) 59,824 (46.7) 451,648 (352.4) 547,030 (427.4) 86,373 (67.5) 49,307 (38.5) 411,350 (321.4) 486,933 (381.1) 76,477 (59.9) 35,959 (28.1) 374,497 (293.1) 450,117 (353.0) 73,122 (57.3) 30,397 (23.8) 346,598 (271.8) 398,262 (313.1) 62,745 (49.3) 23,920 (18.8) 311,597 (245.0) 1,977,635 (3,080.7) 379,153 (590.6) 169,084 (263.4) 1,429,398 (2,226.7) 1,944,688 (3,017.2) 379,253 (588.4) 168,072 (260.8) 1,397,363 (2,168.0) 1,925,847 (2,978.1) 382,910 (592.1) 161,512 (249.8) 1,381,425 (2,136.2) … (…) … (…) … (…) … (…) … (…) … (…) … (…) … (…) 1,826,618 (2,242.6) 446,073 (547.7) 58,401 (71.7) 1,322,144 (1,623.3) 1,869,447 (2,285.7) 463,929 (567.2) 56,563 (69.2) 1,348,955 (1,649.3) 1,782,844 (2,169.1) 432,730 (526.5) 59,633 (72.6) 1,290,481 (1,570.0) 1,575,718 (1,906.3) 365,182 (441.8) 54,114 (65.5) 1,156,422 (1,399.0) 1,459,327 (1,755.6) 326,409 (392.7) 50,440 (60.7) 1,082,478 (1,302.2) 窃 盗 侵入盗 自動車盗 その他の窃盗 窃 盗 侵入盗 自動車盗 その他の窃盗 英国 年 次 2014 年 2015 2016 2017 2018 窃 盗 侵入盗 自動車盗 その他の窃盗 1,913,919 (2,925.5) 440,930 (674.0) 83,222 (127.2) 1,389,767 (2,124.3) 1,986,414 (3,016.1) 427,805 (649.6) 88,591 (134.5) 1,470,018 (2,232.0) 2,116,118 (3,191.8) 435,779 (657.3) 103,932 (156.8) 1,576,407 (2,377.8) 2,261,010 (3,388.4) 459,600 (688.8) 118,456 (177.5) 1,682,954 (2,522.1) 2,273,426 (3,386.0) 443,035 (659.9) 126,516 (188.4) 1,703,875 (2,537.7) 米国 年 次 2014 年 2015 2016 2017 2018 注 侵入盗 605,038 犯罪の動向 2016 2017 2018 ⑤ 盗 ドイツ 年 ④ 窃 フランス 年 ③ (2014 年~2018 年) 日本 年 ② 各国における窃盗の発生件数・発生率の推移 窃 盗 侵入盗 自動車盗 その他の窃盗 8,209,100 (2,576.0) 1,713,200 (537.6) 686,800 (215.5) 5,809,100 (1,822.9) 8,024,200 (2,500.7) 1,587,600 (494.8) 713,100 (222.2) 5,723,500 (1,783.7) 7,928,500 (2,454.5) 1,516,400 (469.5) 767,300 (237.5) 5,644,800 (1,747.5) 7,682,900 (2,363.4) 1,397,000 (429.7) 772,900 (237.8) 5,513,000 (1,695.9) 7,196,000 (2,200.0) 1,230,100 (376.1) 748,800 (228.9) 5,217,100 (1,595.0) 1 「発生件数」は,UNODC Research による dataUNODC の Burglary(侵入盗), Theft of cars(自動車盗)及び Theft(その他 の窃盗)の各統計(令和3年(2021 年)5月 14 日確認)による。ただし, 「日本」の「発生件数」のうち,同「侵入盗」, 「自動車盗」 及び「その他の窃盗」の各統計において数値が入手できなかった 2017 年及び 2018 年の数値は,警察庁刑事局の資料による。 2 人口は,国連経済社会局人口部の世界人口推計 2019 年版(World Population Prospects 2019)による。 3 「日本」の「自動車盗」はオートバイ盗を含み,車上・部品ねらいを含まない。 4 ( )内は,発生率(前記人口推計に基づく人口(各年7月1日時点の推計値)10 万人当たりの発生件数)である。 5 前記「侵入盗」 , 「自動車盗」及び「その他の窃盗」の各統計又は警察庁刑事局の資料において,「発生件数」の数値が入手可能で あった年につき,「発生件数」及び「発生率」を示している。 6 「英国」は,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドをいう。 犯罪白書 2021 23

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4 性暴力 この項でいう「性暴力」とは,dataUNODC における「Sexual violence」をいう。各国におけ る「性暴力」の発生件数及び発生率の推移(平成 30 年(2018 年)までの最近5年間)を見ると, 1-3-1-4 表のとおりである。なお,性犯罪については,一般に暗数が多いとされており,発生件数 第3章 諸外国における犯罪動向 (認知件数)の統計のみによる比較には一定の制約があることに留意する必要がある。 1-3-1-4 表 ① 日本 年 ③ 第1節 諸外国における犯罪 24 発生件数 発生率 (2014 年~2018 年) フランス 年 次 発生件数 発生率 8,650 6.7 2014 年 30,959 48.2 2015 7,922 6.2 2015 33,283 51.6 2016 7,177 5.6 2016 37,480 58.0 2017 6,918 5.4 2017 41,587 64.1 2018 6,647 5.2 2018 … … ドイツ 次 ④ 発生件数 発生率 英国 年 次 2014 年 34,959 42.9 2014 年 2015 34,265 41.9 2016 37,166 45.2 2017 34,815 2018 … 発生件数 発生率 89,923 137.4 2015 118,760 180.3 2016 135,445 204.3 42.1 2017 166,104 248.9 … 2018 … … 米国 年 注 次 ② 2014 年 年 ⑤ 各国における性暴力の発生件数・発生率の推移 次 発生件数 発生率 2014 年 … … 2015 … … 2016 … … 2017 … … 2018 … … 1 「発生件数」は,UNODC Research による dataUNODC の Sexual Violence(性暴力)統計(令和3年(2021 年)5月 14 日確 認)による。ただし, 「日本」の「発生件数」のうち,同「性暴力」統計において数値が入手できなかった 2017 年及び 2018 年の数値 は,警察庁刑事局の資料による。 2 人口は,国連経済社会局人口部の世界人口推計 2019 年版(World Population Prospects 2019)による。 3 「日本」の「性暴力」は,強制性交等(強姦,準強姦,準強制性交等及び監護者性交等を含む。)及び強制わいせつ(準強制わいせつ 及び監護者わいせつを含む。)をいう。 4 「発生率」は,前記人口推計に基づく人口(各年7月1日時点の推計値)10 万人当たりの発生件数である。 5 前記「性暴力」統計又は警察庁刑事局の資料において,「発生件数」の数値が入手可能であった年につき,「発生件数」及び「発生 率」を示している。 6 「英国」は,イングランド,ウェールズ,スコットランド及び北アイルランドをいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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第1 編 第2節 国外における日本人の犯罪 令和2年(2020 年)の日本人の出国者数は,317 万 4,219 人(前年比 84.2%減)であった(出入 国在留管理庁の資料による。)。 在外公館が邦人援護事務を通じて把握した国外における日本人による犯罪は,令和元年(2019 年) は 418 件(前年比 6.1%増),396 人(同 0.3%増)であった。罪名・罪種別に犯罪件数を見ると, 1-3-2-1 表のとおりである。 1-3-2-1 表 国外における日本人の犯罪件数 (令和元年(2019 年) ) 総 数 殺 418 (100.0) 注 傷 害 強制性交 薬物関係 人 ・ 等・強制 強 法令違反 暴 行 わいせつ 盗 窃 3 - (0.7) 31 41 26 (7.4) (9.8) (6.2) 盗 詐 外国為替 道路交通 銃 器 等 出入国 欺 ・関税関係 関係法令 売買春 関係法令 その他 ・査証 法令違反 違 反 違 反 22 16 (5.3) (3.8) 13 126 (3.1) (30.1) 31 (7.4) 7 (1.7) 3 99 (0.7) (23.7) 1 外務省領事局の資料による。 2 「出入国・査証」は,不法滞在等をいう。 3 「その他」は,脅迫・恐喝を含む。 4 ( )内は,構成比である。 犯罪の動向 犯罪白書 2021 25

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第2 編 職親プロジェクトの活動の様子 【写真提供:法務省矯正局】 更生保護施設における処遇の様子 【写真提供:法務省保護局】 2編 犯罪者の処遇 第 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 概要 検察 裁判 成人矯正 更生保護 刑事司法における国際協力

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第 1章 概要 警察等で検挙された者は,検察,裁判,矯正,更生保護の各段階で処遇を受けるが,令和2年にこ 第1章 概要 れらの各段階で処遇を受けた人員は,2-1-1 図のとおりである(非行少年に対する処遇の概要につい ては,3-2-1-1 図参照)。 2-1-1 図 犯罪者処遇の概要 (令和 2 年) 警 察 等  検察官認知等 微罪処分 5万2,039人 交通反則金 検察庁 検 新規受理 終局処理 80万3,752人 80万7,480人 察 起訴 刑法犯 過失運転致死傷等 特別法犯 19 万 5,092 人 30 万 1,092 人 30 万 7,568 人(うち道交違反を除く 25 万 3,444 人 公判請求 7 万 9,483 人 不起訴 略式請求 17 万 3,961 人 8万 8,337 人) 51 万 1,021 人 うち起訴猶予 44 万 8,072 人 (少年) 裁判確定 22 万 1,057 人 裁 懲役・禁錮 うち有期 4万6,970人 判 死刑 2人 無期 19 人 無罪 76 人 拘留 5人 実刑 1万 7,116 人 全部執行猶予 2 万 9,854 人 うち一部執行猶予 1,298 人 うち保護観察付 2,088 人 1万 6,620 人 1,290 人) 正 出所受刑者 (うち一部執行猶予 1万 8,923 人 1,489 人) 満期釈放 7,440 人 一部執行猶予の 実刑部分の刑期終了 288 人 仮釈放 1万 1,195 人 うち 保護観察付 うち一部執行猶予 1,201 人 更生保護 保護観察所 288 人 期間満了等 28 退院 仮出場 1万 1,195 人 保護観察開始 婦人補導院 矯 入所受刑者 (うち一部執行猶予 1万 4,779 人 その他 293 人 補導処分 労役場 留置 刑事施設 注 罰金 科料 17 万 2,326 人 1,366 人 家庭裁判所 裁判所 2,088 人 仮退院 0人 取消し等 1 警察庁の統計,検察統計年報,矯正統計年報,保護統計年報及び法務省保護局の資料による。 2 各人員は令和2年の人員であり,少年を含む。 3 「微罪処分」は,刑事訴訟法 246 条ただし書に基づき,検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な窃盗,暴行,横領(遺失物等 横領を含む。 )等の成人による事件について,司法警察員が,検察官に送致しない手続を執ることをいう。 4 「検察庁」の人員は,事件単位の延べ人員である。例えば,1人が2回送致された場合には,2人として計上している。 5 「出所受刑者」の人員は,出所事由が仮釈放,一部執行猶予の実刑部分の刑期終了又は満期釈放の者に限る。 6 「保護観察開始」の人員は,仮釈放者,保護観察付全部執行猶予者,保護観察付一部執行猶予者及び婦人補導院仮退院者に限り,事 件単位の延べ人員である。そのため,各類型の合計人員とは必ずしも一致しない。 7 出所受刑者における一部執行猶予の実刑部分の刑期終了の人員については,一部執行猶予の実刑部分の刑期終了後に執行された他の 実刑について仮釈放となったが,仮釈放を取り消され,当該取消刑の執行を終了した場合を含まない。 8 「裁判確定」の「その他」は,免訴,公訴棄却,管轄違い及び刑の免除である。 令和 3 年版 犯罪白書

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1 新規立法の動向 (1)少年法等の改正,犯罪者処遇の充実に関する検討 第2 編 法務大臣は,平成 29 年2月,法制審議会に対し,少年法(昭和 23 年法律第 168 号)における「少 年」の年齢を 18 歳未満とすることや非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑 事の実体法及び手続法の整備の在り方等について諮問を行い(諮問第 103 号),同審議会においては, それらの点について調査審議が重ねられ,令和2年 10 月,法務大臣に対する答申がなされた。 この答申においては,①罪を犯した 18 歳及び 19 歳の者について,家庭裁判所への送致,同裁判所 における手続・処分,刑事事件の特例等に関する法整備を行うこと,②犯罪者に対する処遇を一層充 実させるため,自由刑の単一化,若年受刑者に対する処遇調査の充実,刑の全部の執行猶予制度の拡 充等の法整備その他の措置を講ずることなどが掲げられた。 前記答申のうちの前記①を受け,令和3年2月,少年法等の一部を改正する法律案が国会に提出さ れ,同年5月 21 日,少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第 47 号)が成立した(4年4月 1日施行)。これにより,特定少年(18 歳以上の少年をいう。以下同じ。)について,家庭裁判所が 原則として検察官に送致しなければならない事件の範囲を拡大すること(検察官への送致についての 特例) ,保護処分の規定を整備し,ぐ犯をその対象から除外すること(保護処分についての特例),検 察官送致決定後の刑事事件の特例に関する規定(不定期刑等)は原則として適用しないこと(刑事事 件の特例) ,特定少年のとき犯した罪により公判請求された場合には,当該事件の本人であることを 推知できる記事等の掲載の禁止に関する規定を適用しないこと(記事等の掲載の禁止の特例)などを 内容とする少年法の一部改正が行われたほか,同改正に伴う更生保護法(平成 19 年法律第 88 号)及 び少年院法(平成 26 年法律第 58 号)の一部改正が行われた(詳細については,第3編第2章第1節 4項参照)。 (2)公判期日への出頭及び刑の執行を確保するための刑事法の整備に関する検討 法務大臣は,令和2年2月,法制審議会に対し,保釈中の被告人や刑が確定した者の逃亡を防止 し,公判期日への出頭や刑の執行を確保するための刑事法の整備について諮問を行い(諮問第 110 犯罪者の処遇 号) ,同審議会は,刑事法(逃亡防止関係)部会において,それらの点について調査審議を行ってい る。 (3)刑事手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための刑事法の整備に関する検討 法務大臣は,令和3年5月,法制審議会に対し,逮捕状・勾留状の呈示や起訴状謄本の送達を始め として,刑事手続を通じて犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための法整備の在り方等について諮 問を行い(諮問第 115 号),同審議会において,それらの点について調査審議が重ねられ,同年9月, 法務大臣に対する答申がなされた。 (4)性犯罪に対処するための法整備に関する検討 法務大臣は,令和3年9月,法制審議会に対し,性犯罪に対処するための法整備について諮問を行 い(諮問第 117 号) ,同審議会では,刑事法(性犯罪関係)部会において,調査審議を行うこととさ れた。 (5)侮辱罪の法定刑に関する検討 法務大臣は,令和3年9月,法制審議会に対し,侮辱罪の法定刑について諮問を行い(諮問第 118 号) ,同審議会は,刑事法(侮辱罪の法定刑関係)部会において,その点について調査審議を行って いる。 犯罪白書 2021 29

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2 法テラスの活動 日本司法支援センター(通称「法テラス」。以下「法テラス」という。)では,被疑者・被告人に国 選弁護人を,少年に国選付添人を選任する必要がある場合に,裁判所等からの求めに応じ,法テラス と契約している弁護士の中から,国選弁護人・国選付添人の候補を指名して裁判所等に通知する業務 第1章 概要 等を行っている。令和2年度の法テラスにおける国選弁護人候補の指名通知請求等の受理件数は,被 疑者に関するものが7万 6,073 件(前年度比 4,072 件減),被告人に関するものが5万 76 件(同 2,934 件減)であり,国選付添人候補の指名通知請求の受理件数は 2,941 件(同 384 件減)であった (法テラスの資料による。)。  30 令和 3 年版 犯罪白書

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2章 第 第2 編 第1節 検察 概説 警察等が検挙した事件は,微罪処分(刑事訴訟法(昭和 23 年法律第 131 号)246 条ただし書に基 づき,検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な成人による事件について,司法警察員が,検察 官に送致しない手続を執ることをいう。 )の対象となったものや交通反則通告制度に基づく反則金の 納付があった道路交通法違反を除き,全て検察官に送致される。なお,令和2年に微罪処分により処 理された人員は,5万 2,039 人(刑法犯では,微罪処分により処理された人員は5万 2,035 人であ り,全検挙人員に占める比率は 28.5%)であった(警察庁の統計による。)。 検察官は,警察官(一般司法警察員)及び海上保安官,麻薬取締官等の特別司法警察員からの送致 事件について捜査を行うほか,必要に応じて自ら事件を認知し,又は告訴・告発を受けて捜査を行 い,犯罪の成否,処罰の要否等を考慮して,起訴・不起訴を決める。 平成 28 年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成 28 年法律第 54 号)により, 刑事手続を時代に即したより機能的なものとするため,刑事手続における証拠の収集方法の適正化及 び多様化等が図られ,これにより,検察官が行う捜査に関連するものとして,①取調べの録音・録画 制度の導入,②証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(以下この節において「合意制度」と いう。 )の導入,③犯罪捜査のための通信傍受(以下この節において「通信傍受」という。)の対象犯 罪の拡大,④通信傍受の手続の合理化・効率化等がなされた(③については,同年 12 月施行,②に ついては,30 年6月施行,①及び④については,令和元年6月それぞれ施行。合意制度については, 第8編第2章第3節2項,通信傍受については,同節1項をそれぞれ参照。)。詐欺に係る通信傍受実 施事件数及び傍受令状発付件数については,8-3-1-29 表参照。 なお,検察庁における取調べの録音・録画は前記改正法施行以前から実施されており,令和元年度 の検察庁における被疑者取調べの録音・録画実施件数(前記改正法により録音・録画義務の対象とさ 犯罪者の処遇 れた事件以外の事件において実施したものを含む。)は,10 万 3,380 件であり,平成 27 年度(5万 9,411 件)の約 1.7 倍の水準であった(最高検察庁の資料による。)。 犯罪白書 2021 31

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第2節 被疑事件の受理 令和2年における検察庁新規受理人員の総数は,80 万 3,752 人であり,前年より9万 7,000 人 (10.8%)減少した。その中でも減少が大きかったのは,過失運転致死傷等であり,2年は 30 万 1,092 人で,前年より6万 9,508 人(18.8%)減少した。刑法犯の検察庁新規受理人員は,平成 19 第2章 検察 年から減少し続けており,令和2年は 19 万 5,092 人(前年比 3.5%減)であった。特別法犯は,平 成 12 年から減少し続けており,令和2年は 30 万 7,568 人(同 6.2%減)であったが,そのうち道交 違反を除く特別法犯は,前年よりわずかに増加し,8万 8,337 人(同 0.5%増)であった(CD-ROM 資料 2-1 参照) 。 令和2年における検察庁新規受理人員の罪種別構成比は,2-2-2-1 図のとおりである。 第2節 2-2-2-1 図 検察庁新規受理人員の罪種別構成比 (令和2年) 被疑事件の受理 その他の 特別法犯 11.0 道交違反 27.3 特別法犯 38.3 窃盗 10.4 総 数 803,752 人 刑法犯 24.3 その他の 刑法犯 13.9 刑法犯 窃盗 その他の刑法犯 過失運転致死傷等 特別法犯 道交違反 その他の特別法犯 (人員) 195,092 83,239 111,853 301,092 307,568 219,231 88,337 過失運転致死傷等 37.5 注 検察統計年報による。 令和2年における検察庁新規受理人員(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)のうち,検察官 が自ら認知し,又は告訴・告発を受けたのは,5,328 人であった(検察統計年報による。 )。 32 令和 3 年版 犯罪白書

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第3節 被疑者の逮捕と勾留 検察庁既済事件(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。以下この節において同じ。)について, 第2 編 全被疑者(法人を除く。 )に占める身柄事件(警察等で被疑者が逮捕されて身柄付きで検察官に送致 された事件及び検察庁で被疑者が逮捕された事件)の被疑者人員の比率(身柄率),勾留請求率(身 柄事件の被疑者人員に占める検察官が勾留請求した人員の比率)及び勾留請求却下率(検察官が勾留 請求した被疑者人員に占める裁判官が勾留請求を却下した人員の比率)の推移(最近 20 年間)は, 2-2-3-1 図のとおりである。 勾留請求率は,平成 13 年以降,90%台前半で推移している。勾留請求却下率は,18 年以降,毎 年上昇していたが,令和2年は低下し,4.2%(前年比 1.0pt 低下)であった。 2-2-3-1 図 検察庁既済事件の身柄率・勾留請求率・勾留請求却下率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 身柄率 (%) 100 80 60 40 身柄率 34.8 20 0 平成 13 20 25 30 令和 2 勾留請求率・勾留請求却下率 犯罪者の処遇 ② 15 (%) 100 勾留請求率 95 93.7 90 85 80 10 勾留請求却下率 5 0 平成 13 注 15 20 4.2 25 30 令和 2 1 検察統計年報による。 2 「身柄率」は,検察庁既済事件の被疑者人員に占める身柄事件(警察等で被疑者が逮捕されて身柄付きで検察官に送致された事件及 び検察庁で被疑者が逮捕された事件)の被疑者人員の比率をいう。 3 「勾留請求率」は,身柄事件の被疑者人員に占める検察官が勾留請求した人員の比率であり,「勾留請求却下率」は,検察官が勾留請 求した被疑者人員に占める裁判官が勾留請求を却下した人員の比率をいう。 4 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 5 既済事由が他の検察庁への送致である事件及び被疑者が法人である事件を除く。 犯罪白書 2021 33

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令和2年における検察庁既済事件について,被疑者の逮捕・勾留人員を罪名別に見ると,2-2-3-2 表のとおりである。 2-2-3-2 表 検察庁既済事件の身柄状況(罪名別) (令和2年) 第2章 検察 逮 罪 総 刑 法 第4節 放 強 被疑事件の処理 殺 係 勾 281,342 176,076 7,426 97,683 157 留 関 犯 194,806 119,713 6,244 68,746 703 248 11 444 制 性 交 3,903 1,733 24 1,439 634 2 1,190 775 20,192 15,524 103 35.3 61,045 2,953 93.0 - 63.2 437 3 99.1 2,145 1 55.0 1,989 119 98.2 801 2 55.8 799 1 99.6 1 414 - 34.8 411 1 99.5 9,041 1,080 10,066 5 49.9 8,569 514 90.2 8,829 1,361 5,331 3 34.4 3,855 469 81.1 83,035 56,231 1,858 24,916 30 30.0 22,711 779 94.2 2,003 868 3 1,132 - 56.5 1,125 4 99.7 13,364 5,913 118 7,317 16 54.9 7,239 45 99.3 1,974 496 11 1,466 1 74.3 1,431 13 98.4 他 51,479 34,945 1,775 14,714 45 28.7 12,479 1,005 91.4 犯 等 人 盗 強 盗 詐 欺 恐 そ 喝 の 別 法 D+E (%) B+C 3,853 行 窃 勾 留 請 求 率 87,810 害 暴 係 34.8 火 傷 93.7 86,536 56,363 1,182 28,937 54 33.5 26,765 900 95.4 法 5,899 4,540 303 1,056 - 17.9 850 41 84.4 7,254 2,747 74 4,430 3 61.1 4,256 95 98.2 覚 醒 剤 取 締 法 13,530 3,922 32 9,568 8 70.8 9,521 22 99.7 7,323 1,993 17 5,309 4 72.6 5,269 8 99.3 10,099 6,387 440 3,269 3 32.4 1,902 566 75.4 42,431 36,774 316 5,305 36 12.6 4,967 168 96.1 銃 大 麻 入 刀 取 管 締 法 法 地方公共団体条例 そ 注 関 数 強 制 わ い せ つ 特 捕 警察等で 警察等で 逮捕され 検察庁 数 逮 捕 後 逮捕・身 身柄率 認 容 却 下 名 総 な い 者 で逮捕 釈 放 柄付送致 B+C (E) (%) (D) (A) (B) (C) A 1 2 3 4 5 6 の 他 検察統計年報による。 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 既済事由が他の検察庁への送致である事件及び被疑者が法人である事件を除く。 「逮捕されない者」は,他の被疑事件で逮捕されている者等を含む。 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 「地方公共団体条例」は,公安条例及び青少年保護育成条例を含む地方公共団体条例違反である。 第4節 被疑事件の処理 検察官が行う起訴処分には,公判請求と略式命令請求があり,不起訴処分には,①訴訟条件(親告 罪の告訴等)を欠くことを理由とするもの,②事件が罪にならないことを理由とするもの(心神喪失 を含む。 ) ,③犯罪の嫌疑がないこと(嫌疑なし)又は十分でないこと(嫌疑不十分)を理由とするも ののほか,④犯罪の嫌疑が認められる場合でも,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並 びに犯罪後の情況により訴追を必要としないこと(起訴猶予)を理由とするものなどがある。 検察庁終局処理人員総数(過失運転致死傷等及び道交違反を含む。以下この節において同じ。)に ついて,処理区分別構成比及び公判請求人員・公判請求率の推移(最近 20 年間)は,2-2-4-1 図の とおりである。令和2年における検察庁終局処理人員総数は,80 万 7,480 人(前年比9万 9,793 人 (11.0%)減)であり,その内訳は,公判請求7万 9,483 人,略式命令請求 17 万 3,961 人,起訴猶予 44 万 8,072 人,その他の不起訴6万 2,949 人,家庭裁判所送致4万 3,015 人であった。公判請求人 員は,平成 17 年から減少傾向にあり,令和2年は前年より 1,703 人(2.1%)減少した。公判請求率 は,平成 14 年から 26 年までは7%台で推移していたが,同年以降上昇傾向にあり,令和2年は前年 34 令和 3 年版 犯罪白書

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より 1.0pt 上昇して,10.4%であった(CD-ROM 参照。罪名別の検察庁終局処理人員については, CD-ROM 資料 2-3 参照)。 2-2-4-1 図 第2 編 検察庁終局処理人員総数の処理区分別構成比・公判請求人員等の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 検察庁終局処理人員総数の処理区分別構成比 (%) 100 5.3 7.8 ② 公判請求人員・公判請求率 (万人) 16 14 80 10 12 60 (%) 12 10 55.5 公判請求率 特別法犯 8 79,483 8 40 28,993 公判請求 その他の不起訴 25 0 平成13 15 30 令和2 略式命令請求 家庭裁判所送致 2 2 9.8 20 4 刑法犯・過失運転致死傷等 4 21.5 0 平成13 15 注 6 6 20 10.4 20 25 30 令和2 50,490 0 起訴猶予 検察統計年報による。 起訴,起訴猶予及びその他の不起訴の人員並びに起訴率の推移(最近 20 年間)を,刑法犯,道交 違反を除く特別法犯に分けて見ると,2-2-4-2 図のとおりである(詐欺の起訴・不起訴人員等の推移 については,8-3-1-33 図のとおりである。)。なお,令和2年における検察庁終局処理人員総数の起 訴率は,33.2%であった(CD-ROM 資料 2-2 参照)。 起訴・不起訴人員等の推移 犯罪者の処遇 2-2-4-2 図 (平成13年~令和2年) ① 刑法犯 ② (万人) 30 25 (%) 100 5 20 25 30 令和2 起訴 注 8,607 60 35,345 48.8 40 4 20 41,812 2 64,778 0 80 6 40 37.4 70,641 20 10 85,764 8 60 37,976 15 (%) 100 10 173,395 20 0 平成13 15 (万人) 12 起訴率 80 起訴率 道交違反を除く特別法犯 0 平成13 15 起訴猶予 20 25 30 令和2 0 その他の不起訴 検察統計年報による。 犯罪白書 2021 35

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令和2年における不起訴処分を受けた者(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。)の理由別人員 は,2-2-4-3 表のとおりである。起訴猶予により不起訴処分とされた者の比率は,平成 23 年と比較 して 0.9pt 上昇したのに対し,嫌疑不十分(嫌疑なしを含む。)により不起訴処分とされた者の比率 は,0.5pt 低下した(CD-ROM 参照)。 第2章 検察 2-2-4-3 表 不起訴人員(理由別) (令和2年) 総 数 起訴猶予 152,569 (100.0) 注 第4節 1 2 3 4 5 6 嫌疑不十分 105,986 告訴の取消し等 33,539 (69.5) 6,064 (22.0) (4.0) 心神喪失 そ 367 の 他 6,613 (0.2) (4.3) 検察統計年報による。 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 「嫌疑不十分」は,嫌疑なしを含む。 「告訴の取消し等」は,親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消しである。 「その他」は,時効完成,被疑者死亡等である。 ( )内は,構成比である。 被疑事件の処理 検察庁終局処理人員総数,刑法犯及び道交違反を除く特別法犯の起訴猶予率の推移(最近 20 年間) を見ると,2-2-4-4 図のとおりである(過失運転致死傷等及び道交違反の起訴猶予率の推移について は 4-1-3-2 図 CD-ROM,罪名別・年齢層別の起訴猶予率については 4-8-2-1 図をそれぞれ参照)。 なお,検察庁と保護観察所等が連携して行う「起訴猶予者等に係る更生緊急保護の重点実施等」に ついては,本編第5章第4節参照。 2-2-4-4 図 起訴猶予率の推移 (平成13年~令和2年) (%) 100 80 総数 63.9 60 刑法犯 40 52.2 45.8 道交違反を除く特別法犯 20 0 平成13 注 36 15 20 1 検察統計年報による。 2 「総数」は,刑法犯,過失運転致死傷等及び特別法犯の総数をいう。 令和 3 年版 犯罪白書 25 30 令和2

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3章 第 第2 編 第1節 裁判 概説 刑事事件の第一審は,原則として,地方裁判所(罰金以下の刑に当たる罪及び内乱に関する罪を除 き,第一審の裁判権を有する。 )又は簡易裁判所(罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定 められている罪及び常習賭博罪等の一定の罪について,第一審の裁判権を有する。)で行われる。 通常第一審の裁判は,公判廷で審理を行う公判手続により行われ,有罪と認定されたときは,死 刑,懲役,禁錮,罰金,拘留又は科料の刑が言い渡される。なお,簡易裁判所は,原則として禁錮以 上の刑を科することはできないが,窃盗等の一定の罪については,3年以下の懲役を科することがで きる。3年以下の懲役若しくは禁錮又は 50 万円以下の罰金を言い渡された者については,情状によ り,一定期間,刑の全部又は一部の執行が猶予されることがあり(罰金刑については全部執行猶予の み) ,事案によっては,その期間中,保護観察に付されることがある。また,死刑又は無期若しくは 短期1年以上の懲役・禁錮に当たる事件を除き,明白軽微な事件については,即決裁判手続によるこ とができ,この手続では,懲役又は禁錮の言渡しをする場合は,刑の全部の執行猶予の言渡しをしな ければならない。簡易裁判所においては,略式手続による裁判を行うこともでき,その場合,書面審 理に基づいて 100 万円以下の罰金又は科料の裁判を行う。略式命令を受けた者は正式裁判を請求す ることができ,その場合,公判手続による裁判に移行する。 第一審判決に対しては,高等裁判所に控訴をすることができ,控訴審判決に対しては,最高裁判所 に上告をすることができる。 犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 37

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第2節 確定裁判 裁判確定人員の推移(最近 10 年間)を裁判内容別に見ると,2-3-2-1 表のとおりである。裁判確 定人員総数は,平成 12 年(98 万 6,914 人)から毎年減少し,令和2年は,22 万 1,057 人(前年比 10.0%減)となっており,最近 10 年間でおおむね半減している(CD-ROM 参照)。その減少は,道 第3章 裁判 交違反の略式手続に係る罰金確定者の減少によるところが大きい(4-1-3-2 図 CD-ROM 参照)。同 年の無罪確定者は,76 人であり,裁判確定人員総数の 0.034%であった。 また,令和2年に一部執行猶予付判決が確定した人員は 1,298 人(前年比 10.6%減)であり,そ の全員が有期の懲役刑を言い渡された者であった(CD-ROM 参照)。 2-3-2-1 表 裁判確定人員の推移(裁判内容別) 第2節 (平成 23 年~令和2年) 有 確定裁判 年 次 総 数 死刑 無期 懲役 有 期 懲 罪 役 有 一部執行 全 部 執 行 全部執行 猶 予 猶 予 猶 予 率 期 禁 錮 全部執行 全部執行 猶 予 猶予率 罰金 拘留 科料 無罪 23 年 432,051 22 46 59,852 … 33,845 56.5 3,229 3,111 96.3 365,474 8 2,964 77 24 408,936 10 38 58,215 … 32,855 56.4 3,227 3,122 96.7 344,121 5 2,868 82 25 365,291 8 38 52,725 … 29,463 55.9 3,174 3,058 96.3 306,316 4 2,559 122 26 337,794 7 28 52,557 … 30,155 57.4 3,124 3,051 97.7 279,221 4 2,417 116 27 333,755 2 27 53,710 … 31,620 58.9 3,141 3,068 97.7 274,199 5 2,247 88 28 320,488 7 15 51,824 855 30,837 59.5 3,193 3,137 98.2 263,099 6 1,962 104 29 299,320 2 18 49,168 1,525 29,266 59.5 3,065 2,997 97.8 244,701 5 1,919 130 30 275,901 2 25 47,607 1,567 28,831 60.6 3,159 3,099 98.1 222,841 1 1,834 123 元 245,537 5 16 46,086 1,452 28,044 60.9 3,076 3,021 98.2 194,404 3 1,556 96 2 221,057 2 19 44,232 1,298 27,163 61.4 2,738 2,691 98.3 172,326 5 1,366 76 注 1 検察統計年報による。 2 「総数」は,免訴,公訴棄却,管轄違い及び刑の免除を含む。 3 平成 28 年の「一部執行猶予」は,同年6月から 12 月までに一部執行猶予付判決が確定した人員である。 第3節 1 第一審 終局裁判 2-3-3-1 表は,令和2年の通常第一審における終局処理人員を罪名別に見るとともに,これを裁判 内容別に見たものである。通常第一審における終局処理人員は,最近 10 年間では減少傾向にあり, 2年は4万 9,640 人(前年比 4.6%減)であった(司法統計年報による。)。 38 令和 3 年版 犯罪白書

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2-3-3-1 表 通常第一審における終局処理人員(罪名別,裁判内容別) (令和2年) 有 名 死 刑 無 期 有 期 役 ・ 一部執行 猶 予 禁 錮 全部執行 猶 予 29,743 保 護 観察付 2,052 罰金等 数 49,640 3 12 46,997 1,272 所 45,916 3 12 44,044 1,270 1,267 27,746 1,785 1,627 法 公 務 執 行 妨 放 偽 わ い せ つ 犯 害 火 造 等 22,494 284 182 522 1,369 3 - - - - 11 - - - - 21,426 240 180 519 1,346 48 - - - 12 48 - - - 12 11,500 162 101 420 756 1,246 9 51 10 150 936 40 - 1 8 殺 地 方 裁 判 (75) (72) 2,295 216 2 3 205 - - 55 13 - 2,583 43 10,941 436 2,943 344 475 485 275 1,396 - - - 1 - - - - - - - - - 8 - - - - - - 2,236 37 10,547 425 2,932 341 448 424 244 1,302 6 - 22 - 3 - - - 1 4 6 - 22 - 3 - - - 1 4 1,481 36 5,081 108 1,548 214 255 273 110 900 197 - 529 43 92 12 14 28 20 78 324 4 365 - - - 23 58 30 83 別 法 犯 公 職 選 挙 法 銃 刀 法 児 童 福 祉 法 大 麻 取 締 法 覚 醒 剤 取 締 法 麻 薬 取 締 法 麻 薬 特 例 法 税 法 等 出 資 法 道 交 違 反 自動車運転死傷処罰法 入 管 法 廃 棄 物 処 理 法 組 織 的 犯 罪 処 罰 法 そ の 他 23,422 9 112 64 2,009 7,020 407 68 234 46 5,292 4,329 2,289 129 59 1,355 - - - - - - - - - - - - - - - - 1 - - - - 1 - - - - - - - - - - 22,618 7 78 62 2,004 6,999 402 67 165 46 5,051 4,230 2,205 95 56 1,151 1,222 - - - 41 1,157 13 - 1 - 2 1 - - - 7 1,219 - - - 41 1,154 13 - 1 - 2 1 - - - 7 16,246 7 29 34 1,735 2,559 327 35 155 39 4,251 3,980 2,190 82 25 798 539 - 7 3 55 235 9 - - - 106 42 1 - - 81 691 2 34 2 - - 1 - 66 - 202 71 83 33 3 194 所 3,724 … … 2,953 2 2 1,997 267 668 刑 法 犯 住 居 侵 入 傷 害 過 失 傷 害 窃 盗 横 領 盗 品 譲 受 け 等 そ の 他 3,438 88 126 5 3,095 74 2 48 … … … … … … … … … … … … … … … … 2,953 75 - - 2,832 44 2 - 2 - - - 2 - - - 2 - - - 2 - - - 1,997 46 - - 1,928 21 2 - 267 8 - - 256 3 - - 428 13 109 5 237 28 - 36 特 別 法 犯 公 職 選 挙 法 銃 刀 法 道 交 違 反 自動車運転死傷処罰法 そ の 他 286 - 16 94 73 103 … … … … … … … … … … … … - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 240 - 12 80 57 91 簡 易 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 裁 判 (3) 犯罪者の処遇 人 傷 害 過 失 傷 害 窃 盗 強 盗 詐 欺 恐 喝 横 領 毀 棄 ・ 隠 匿 暴 力 行 為 等 処 罰 法 そ の 他 特 注 数 保 護 観察付 1,269 総 刑 総 第2 編 懲 罪 罪 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 「総数」は,免訴,公訴棄却,管轄違い及び正式裁判請求の取下げを含む。 「罰金等」は,拘留,科料及び刑の免除を含む。 「わいせつ等」は,刑法第2編第 22 章の罪をいう。 「傷害」は,刑法第2編第 27 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪を含む。 「過失傷害」は,刑法第2編第 28 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条2項に規定する罪を含む。 「横領」は,遺失物等横領を含む。 「毀棄・隠匿」は,刑法第2編第 40 章の罪をいう。 「税法等」は,所得税法,法人税法,相続税法,地方税法,酒税法,消費税法及び関税法の各違反をいう。 ( )内は,無罪人員で,内数である。 犯罪白書 2021 39

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有期の懲役刑又は禁錮刑を言い渡された総数における全部執行猶予率は 63.3%であった。令和2 年に一部執行猶予付判決の言渡しを受けた人員は 1,272 人であり,罪名別では,覚醒剤取締法違反が 1,157 人(91.0%)と最も多く,次いで,大麻取締法違反 41 人(3.2%),窃盗 22 人(1.9%)の順 であった。 なお,通常第一審における少年に対する科刑状況(罪名別,裁判内容別)については,3-3-2-2 表 第3章 裁判 参照。 科刑状況 2 (1)死刑・無期懲役 通常第一審における死刑及び無期懲役の言渡人員の推移(最近 10 年間)を罪名別に見ると,2-3- 第3節 3-2 表のとおりである。 最近 10 年間における死刑の言渡しは,殺人(自殺関与・同意殺人・予備を含まない。),強盗致死 第一審 (強盗殺人を含む。以下この章において同じ。)又は強盗・強制性交等致死に限られている(司法統計 年報及び最高裁判所事務総局の資料による。)。 2-3-3-2 表 ① 死刑 年 次 23 年 注 40 通常第一審における死刑・無期懲役言渡人員の推移(罪名別) ② 総 数 殺 人 強盗致死及び 強 盗・ 強 制 性交等致死 (平成 23 年~令和2年) 無期懲役 年 次 総 数 殺 人 強盗致死傷 及び強盗・ そ 強制性交等 の 他 10 3 7 23 年 30 9 18 3 24 3 2 1 24 39 20 19 - 25 5 2 3 25 24 6 17 1 26 2 - 2 26 23 2 19 2 27 4 2 2 27 18 7 10 1 28 3 1 2 28 25 9 16 - 29 3 3 - 29 21 7 13 1 30 4 2 2 30 15 8 6 1 元 2 2 - 元 18 5 13 - 2 3 2 1 2 12 3 8 1 1 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 2 「殺人」は,自殺関与,同意殺人及び予備を含まない。 3 「強盗致死(傷)」は,強盗殺人を含む。 4 「強盗・強制性交等(致死) 」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強盗強姦(致死)をいい,29 年以降は 強盗・強制性交等(致死)及び同改正前の強盗強姦(致死)をいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)有期懲役・禁錮 令和2年における通常第一審での有期の懲役・禁錮の科刑状況は,2-3-3-3 表のとおりである(地 方裁判所における罪名別の科刑状況については,CD-ROM 資料 2-4 参照)。 第2 編 なお,通常第一審における科刑状況に関し,危険運転致死傷,過失運転致死傷等及び道交違反につ いては 4-1-3-4 表,覚醒剤取締法違反については CD-ROM 資料 4-3,財政経済犯罪については CDROM 資料 4-5,外国人である被告人に通訳・翻訳人の付いた事件については CD-ROM 資料 4-9 を それぞれ参照。 2-3-3-3 表 ① 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況 罪 名 総 地 方 裁 判 所 25 年を超え 20 年を超え 15 年を超え 10 年を超え 7 年 を 超 え 5 年 を 超 え 3 年 を 超 え 30 年 以 下 25 年 以 下 20 年 以 下 15 年 以 下 10 年 以 下 7 年 以 下 5 年 以 下 数 2,912 4 7 48 96 287 482 1,988 殺 人 141 2 3 27 29 31 25 24 傷 害 98 - - 2 1 10 18 67 窃 盗 715 - - - 2 4 41 668 強 盗 253 1 - 5 13 46 74 114 詐 欺 416 - - - 2 16 66 332 恐 喝 13 - - - - 1 1 11 強 制 性 交 等・ 強制わいせつ 335 - 2 6 13 55 93 166 銃 ② (令和2年) 3年を超える科刑状況 法 17 - - - - 3 6 8 薬 物 犯 罪 刀 704 - 2 6 20 100 115 461 自動車運転 死傷処罰法 57 - - 1 4 6 7 39 3年以下の科刑状況 2年以上3年以下 罪 名 総 数 一部執行 全部執行 猶 予 猶 予 実刑 6月以上1年未満 一部執行 全部執行 猶 予 猶 予 実刑 5,431 577 7,270 5,128 7 - 55 2 658 13,317 6月未満 一部執行 全部執行 猶 予 猶 予 実刑 一部執行 全部執行 猶 予 猶 予 実刑 2,409 32 6,435 418 3 724 - - - - - - - 殺 人 64 傷 害 2,138 160 3 457 256 2 767 216 1 251 25 - 6 窃 盗 9,832 1,921 7 1,807 1,936 14 2,839 879 1 435 15 - - - 強 盗 172 62 - 107 2 - - - - 1 - - - 詐 欺 2,516 588 2 905 319 1 620 57 - 23 4 - - 恐 喝 328 52 - 115 59 - 99 3 - - - - - 強 制 性 交 等・ 強制わいせつ 849 133 8 462 57 4 190 4 - 3 - - - 法 61 7 - 2 2 - 7 16 - 20 7 - - 薬 物 犯 罪 8,768 2,144 557 1,025 1,794 626 2,374 139 25 1,248 35 3 9 自動車運転 死傷処罰法 4,173 65 - 635 65 1 2,359 58 - 972 5 - 14 簡 易 裁 判 所 2,953 58 - 236 571 2 1,417 315 - 344 12 - - 2,832 58 - 233 558 2 1,388 283 - 307 5 - - 銃 窃 注 1 2 3 4 5 刀 盗 犯罪者の処遇 地 方 裁 判 所 41,132 1年以上2年未満 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 「一部執行猶予」は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 「傷害」は,刑法第2編第 27 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪を含む。 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 「薬物犯罪」は,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法,あへん法及び麻薬特例法の各違反をいう。 犯罪白書 2021 41

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(3)罰金・科料 令和2年における第一審での罰金・科料の科刑状況は,2-3-3-4 表のとおりである。 2-3-3-4 表 第3章 裁判 ① 第一審における罰金・科料科刑状況(罪名別) (令和2年) 通常第一審 罪 名 総 総 罰 数 100 万円 100 万円 50 万円 以 上 未 満 未 満 金 30 万円 未 満 20 万円 未 満 10 万円 未 満 科 5万円 未 満 料 数 2,289 113 232 817 659 378 64 22 4 公務執行妨害 47 - 1 32 13 1 - - … 傷 第3節 過 失 傷 窃 害 433 1 27 118 137 128 20 2 - 害 9 - 4 2 - 3 - - - 602 2 21 192 348 39 - - … 2 - - 2 - - - - - 風営適正化法 16 2 8 6 - - - - … 銃 法 46 - - 4 11 29 1 1 … 反 282 - 48 163 12 7 41 11 - 自動車運転死傷処罰法 128 5 54 48 11 10 - - … そ 724 103 69 250 127 161 2 8 4 第一審 盗 公 職 選 挙 法 刀 道 ② 交 違 の 他 略式手続 罪 名 総 総 数 罰 100 万円 100 万円 50 万円 未 満 未 満 金 30 万円 未 満 20 万円 未 満 10 万円 未 満 科 5万円 未 満 料 数 171,639 312 14,594 44,319 18,292 20,864 56,520 15,522 1,216 過失運転致死傷等 35,794 109 6,553 13,179 7,211 8,728 12 2 … 道 99,558 12 4,396 18,756 2,309 2,579 55,915 15,439 152 交 違 反 公務執行妨害 窃 そ 注 の 488 - 41 297 130 20 - - … 盗 5,141 - 455 1,942 2,468 272 4 - … 他 30,658 191 3,149 10,145 6,174 9,265 589 81 1,064 1 司法統計年報による。 2 ①は,懲役・禁錮と併科されたものを除く。 3 ①は,略式手続から移行したものを含む。 4 ①において,「傷害」は,刑法第2編第 27 章の罪をいい,傷害致死及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規 定する罪を含まない。 5 ①において,「過失傷害」は,刑法第2編第 28 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条2項に規定する罪 を含む。 6 ②において,「過失運転致死傷等」は,自動車運転死傷処罰法4条並びに6条3項及び4項に規定する罪を除く。 3 裁判員裁判 裁判員裁判(裁判員の参加する刑事裁判)の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に 係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を 除く。 ) )であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし,被告人の 言動等により,裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって,そのために裁判員等 が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には,裁判所の決定によって対象事件 から除外される(令和2年において,同決定がなされた終局人員は2人であった(最高裁判所事務総 局の資料による。)。)。また,審判に著しい長期間を要する事件等は裁判所の決定によって対象事件か ら除外される(同年にはそのような決定はなかった(最高裁判所事務総局の資料による。)。)。なお, 対象事件に該当しない事件であっても,対象事件と併合された事件は,裁判員裁判により審理され る。 42 令和 3 年版 犯罪白書

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裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この節において同 じ。 )人員の推移(最近5年間)を罪名別に見ると,2-3-3-5 表のとおりである。令和2年は,強盗 致傷の新規受理人員が前年から 36.9%増加して 304 人となり,罪名別で最も多かったほか,強盗致 第2 編 死,強盗・強制性交等の新規受理人員もそれぞれ前年から増加しており,いずれも最近5年間で最多 となった。一方,2年における覚醒剤取締法違反の新規受理人員は,前年から 69.4%減少して 77 人 であり,通貨偽造(偽造通貨行使を含む。 )の新規受理人員も,前年から 76.0%減少して6人であった。 2-3-3-5 表 裁判員裁判対象事件 第一審における新規受理・終局処理人員の推移(罪名別) (平成 28 年~令和2年) 区 分 総数 殺人 強盗 致死 強盗・ 強 制 強制わ 危険 現住建 傷害 通貨 覚醒剤 麻 薬 強盗 性交等 いせつ 運転 造物等 銃刀法 その他 強 制 致死 偽造 取締法 特例法 致傷 性交等 致死傷 致死傷 致死 放 火 新規受理人員 28 年 1,077 255 22 224 20 103 76 115 28 124 13 10 67 3 17 29 1,122 278 19 253 21 96 69 90 18 105 24 16 102 2 29 30 1,090 250 23 281 24 82 49 104 7 115 23 16 96 1 19 元 1,133 255 21 222 18 71 55 77 16 100 25 7 252 1 13 2 1,005 217 33 304 28 57 47 90 22 97 6 10 77 - 17 1,126 298 33 207 24 103 74 96 28 137 12 10 31 36 37 29 993 230 21 195 17 108 57 81 25 91 18 9 68 22 51 30 1,038 247 17 203 19 109 63 85 13 100 9 10 98 30 35 元 1,021 242 25 209 23 80 46 71 8 101 18 14 116 32 36 2 933 197 11 202 12 44 44 68 14 84 8 2 190 22 35 終局処理人員 28 年 注 犯罪者の処遇 1 最高裁判所事務総局の資料による。 2 上訴審における破棄差戻しの判決により係属したものを含む。 3 新規受理人員は,受理時において裁判員裁判の対象事件であったものの人員をいい,1通の起訴状で複数の異なる罪名の裁判員裁 判対象事件が起訴された場合は,法定刑が最も重い罪名に計上している。 4 終局処理人員は,裁判員裁判により審理された事件の終局処理人員(移送等を含み,裁判員法3条1項の除外決定があった人員を 除く。 )であり,有罪(一部無罪を含む。 )の場合は処断罪名に,無罪,移送等の場合は,当該事件に掲げられている訴因の罪名のう ち,裁判員裁判の対象事件の罪名(複数あるときは,法定刑が最も重いもの)にそれぞれ計上している。 5 「殺人」は,自殺関与及び同意殺人を除く。 6 「強盗・強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強盗強姦をいい,29 年以降は強盗・強制性交 等及び同改正前の強盗強姦をいう。 7 「強制性交等致死傷」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦致死傷をいい,29 年以降は強制性交等致 死傷及び同改正前の強姦致死傷をいう。 8 「危険運転致死」は,自動車運転死傷処罰法2条に規定する罪及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する 罪である。 9 「通貨偽造」は,偽造通貨行使を含む。 10 「その他」は,保護責任者遺棄致死,身の代金拐取,爆発物取締罰則違反等である。ただし,終局処理人員の「その他」は,裁判員 裁判の対象事件ではない罪名を含む。 令和2年に第一審で判決を受けた裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合さ れ,裁判員裁判により審理された事件。少年法 55 条による家裁移送決定があったものを含み,裁判 員が参加する合議体で審理が行われずに公訴棄却判決があったもの及び裁判員法3条1項の除外決定 があったものは含まない。以下この節において同じ。)における審理期間(新規受理から終局処理ま での期間をいう。以下この節において同じ。)の平均は 12.0 月(前年比 1.7 月増)であり,6月以内 のものが 11.7%(同 13.9pt 低下)を占め,そのうち3月以内のものはなかったのに対し,1年を超 えるものが 34.0%(同 11.0pt 上昇)を占めた。また,開廷回数の平均は 4.7 回であり,3回以下が 24.0%,5回以下が 81.3%を占めた。なお,2年3月から6月までの間に指定されていた一部の裁 判員等選任手続期日について,新型コロナウイルス感染症を理由として取り消されており,その件数 は,193 件であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。 犯罪白書 2021 43

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2-3-3-6 表は,令和2年において,第一審の判決(少年法 55 条による家裁移送決定を含む。)に 至った裁判員裁判対象事件について,無罪の人員及び有罪人員の科刑状況等を罪名別に見たものであ る。同年の裁判員裁判対象事件についての第一審における判決人員の総数は,905 人(前年比 96 人 減)であった。 第3章 裁判 2-3-3-6 表 裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別,裁判内容別) (令和2年) 有 罪 懲 罪 第3節 総 第一審 44 総数 無罪 3年以下 死刑 無期 20年を 20年 超える 以下 15年 以下 10年 以下 7年 以下 5年 以下 実 数 905 12 3 12 8 43 76 202 199 136 33 人 194 2 2 3 5 26 29 30 25 22 覚 醒 剤 189 取 締 法 3 - 1 2 6 16 83 72 強 盗 致 傷 183 2 - - - 1 9 39 現住建造物 等 放 火 84 1 - - - 1 2 強制わいせつ 致 死 傷 66 - - - - - 傷害致死 44 3 - - - 強制性交等 致 死 傷 42 - - - 麻薬特例法 22 - - 危険運転 致 死 13 - 強盗・強制 性 交 等 12 強盗致死 刑 全 部 執行猶予 一部執 行猶予 保 護 観察付 禁錮 罰金 免訴 家裁 へ 移送 - 179 88 1 1 - - 7 - 43 11 - - - - 4 1 - 1 - - - - - 56 43 6 - 27 21 - - - - 4 8 14 6 - 48 32 - - - - - 1 5 23 6 - 31 18 - - - - 2 1 9 9 11 1 - 8 1 - - - - - 1 7 16 7 8 2 - 1 - - - - - - - - 2 4 10 6 - - - - - - - - - - - 1 3 6 2 1 - - - - - - - - - - - - 4 3 4 1 - - - - - - - - - 11 - - 8 1 - 1 1 - - - - - - - - - - 保護責任者 遺棄致死 9 - - - - - 3 2 1 - - - 3 1 - - - - 通貨偽造 8 - - - - - - - - 2 1 - 5 2 - - - - 銃 刀 法 2 - - - - - - - 2 - - - - - - - - - そ の 他 26 1 1 - - 1 - 3 1 2 3 - 12 2 1 1 - - 殺 注 名 役 1 最高裁判所事務総局の資料による。 2 裁判員法3条1項の除外決定があった人員を除く。 3 上訴審における破棄差戻しの判決により係属したものを含む。 4 有罪(一部無罪を含む。)の場合は処断罪名に,無罪の場合は裁判終局時において当該事件に掲げられている訴因の罪名のうち,裁 判員裁判の対象事件の罪名(複数あるときは,法定刑が最も重いもの)に,それぞれ計上している。 5 懲役・禁錮には,罰金が併科されたものを含む。 6 「殺人」は,自殺関与及び同意殺人を除く。 7 「強制性交等致死傷」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦致死傷を含む。 8 「強盗・強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強盗強姦を含む。 9 「通貨偽造」は,偽造通貨行使を含む。 10 「危険運転致死」は,自動車運転死傷処罰法2条に規定する罪及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する 罪である。 11 「その他」は,傷害等の裁判員裁判対象事件ではない罪名を含む。 令和 3 年版 犯罪白書

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即決裁判手続 4 令和2年に即決裁判手続に付された事件の人員を罪名別に見ると,2-3-3-7 表のとおりである。同 第2 編 年に地方裁判所において即決裁判手続に付された人員は 162 人(前年比 72 人増),簡易裁判所にお いては5人(同6人減)であった。 2-3-3-7 表 即決裁判手続に付された事件の人員(罪名別) (令和2年) 区 分 地方裁判所 総 数 公務執行 妨 害 162 (47,117) 簡易裁判所 5 (3,900) 注 1 (286) - (15) 住 侵 居 入 窃 - 盗 大 麻 取締法 覚醒剤 取締法 麻 薬 取締法 道 路 交通法 入管法 その他 8 22 30 1 7 83 10 (529) (11,420) 1 (89) 4 (3,187) (2,021) (7,116) (410) - - - (-) (-) (-) (5,341) - (102) (2,307) (17,687) - (4) - (503) 1 司法統計年報による。 2 即決裁判手続により審判する旨の決定があった後に有罪陳述・即決裁判手続によることへの同意を撤回したことなどにより同決定が 取り消された者を含まない。 3 ( )内は,通常第一審の終局処理人員(移送等を含む。)である。 5 公判前整理手続 充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要があるときは,第一回公判期日前 に,事件の争点及び証拠を整理する公判前整理手続が行われることがある。裁判員法により,裁判員 裁判の対象事件については,必ず公判前整理手続に付さなければならない。また,裁判所において, 審理状況等を考慮して必要と認めるときは,第一回公判期日後に,公判前整理手続と同様の手続によ り事件の争点及び証拠を整理する期日間整理手続が行われることがある。 令和2年に地方裁判所で終局処理がされた通常第一審事件のうち,公判前整理手続に付された事件 の人員は 1,123 人であり,期日間整理手続に付された事件の人員は 165 人であった(司法統計年報 による。 ) 。 犯罪者の処遇 令和2年に公判前整理手続に付された事件の地方裁判所における審理期間の平均は 13.1 月(前年 比 1.9 月増)であり,平均開廷回数は 5.0 回(同 0.1 回減)であった(司法統計年報による。)。 また,公判前整理手続に付されずに公判を開いた後,罰条の変更等により裁判員裁判対象事件と なったものを除き,令和2年に第一審で判決を受けた裁判員裁判対象事件における公判前整理手続の 期間(公判前整理手続に付された日から同手続終了日まで)の平均は 10.0 月(前年比 1.5 月増)で あり,公判前整理手続期日の回数については,平均は 4.7 回(同 0.3 回減)で,6回以上の割合は 29.3%(同 0.3pt 上昇)であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。 6 勾留と保釈 2-3-3-8 図は,通常第一審における被告人の勾留率(移送等を含む終局処理人員に占める勾留総人 員の比率)・保釈率(勾留総人員に占める保釈人員の比率)の推移(最近 20 年間)を地方裁判所・簡 易裁判所別に見たものである。勾留率については,地方裁判所では,平成 13 年から 26 年までは, 17 年(82.3%)をピークに 80%前後で推移した後,26 年以降低下し続けていたが,令和2年は 74.7%(前年比 1.1pt 上昇)であった。簡易裁判所では,平成 21 年までは 83~88%台で推移してい たが,同年以降は低下傾向を示し,24 年以降は一貫して地方裁判所の勾留率を下回っており,令和 2年は 66.5%(同 2.2pt 低下)であった。 保釈率については,地方裁判所の方が簡易裁判所よりも約7~15pt 高い水準で推移している。地 犯罪白書 2021 45

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方裁判所では,平成 15 年(12.7%)を境に 16 年から毎年上昇し続けていたが,令和2年は 31.0% (前年比 1.0pt 低下) ,簡易裁判所においても平成 16 年(5.3%)を境に上昇傾向にあり,令和2年は 17.8%(同 1.0pt 上昇)であった。 2-3-3-8 図 通常第一審における被告人の勾留率・保釈率の推移(裁判所別) 第3章 裁判 (平成13年~令和2年) ① 勾留率 (%) 100 簡易裁判所 80 74.7 66.5 地方裁判所 60 第3節 40 第一審 0 平成13 20 ② 15 20 25 30 令和2 保釈率 (%) 50 40 31.0 30 地方裁判所 20 10 0 平成13 注 17.8 簡易裁判所 15 20 25 30 令和2 1 司法統計年報による。 2 「勾留率」は,移送等を含む終局処理人員に占める勾留総人員の比率をいう。 3 「保釈率」は,勾留総人員に占める保釈人員の比率をいう。 令和2年の通常第一審における被告人の勾留状況を終局処理人員で見ると,2-3-3-9 表のとおりで ある。 2-3-3-9 表 通常第一審における被告人の勾留状況 (令和2年) 区 分 地 方 裁 判 所 簡 易 裁 判 所 注 46 終局処理 総 人 員 (A) 47,117 3,900 勾 留 総人員 (B) 犯罪白書 1月以内 35,173 8,345 (100.0) (23.7) 2,595 455 (100.0) (17.5) 1 司法統計年報による。 2 「終局処理総人員」は,移送等を含む。 3 ( )内は,構成比である。 令和 3 年版 勾 留 期 間 保釈人員 3月以内 3月を超える (C) 17,792 (50.6) 1,905 (73.4) 9,036 勾留率 B (%) A 保釈率 C (%) B 10,914 74.7 31.0 461 66.5 17.8 (25.7) 235 (9.1)

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第4節 上訴審 令和2年における通常第一審の終局裁判に対する上訴率(公訴棄却の決定,正式裁判請求の取下げ 第2 編 及び移送等による終局を除く終局処理人員に対する上訴(控訴及び跳躍上告)人員の比率)は,地方 裁判所の裁判については 11.9%,簡易裁判所の裁判については 6.6%であった。同年の高等裁判所に おける控訴事件の終局処理人員を受理区分別に見ると,被告人側のみの控訴申立てによるものが 5,231 人(98.1%),検察官のみの控訴申立てによるものが 83 人(1.6%),双方からの控訴申立てに よるものが 14 人(0.3%),破棄差戻し・移送等によるものが4人(0.08%)であった(司法統計年 報による。)。 令和2年における高等裁判所の控訴審としての終局処理人員を罪名別に見るとともに,これを裁判 内容別に見ると,2-3-4-1 表のとおりである。高等裁判所の控訴審としての終局処理人員は,平成 25 年以降,5,700 人台から 6,100 人台で推移していたが,令和2年は 5,332 人であり,前年から 8.5%減少した(司法統計年報による。)。 破棄人員 507 人について破棄理由を見ると,判決後の情状によるものが 344 人と最も多く,次い で,事実誤認(74 人) ,量刑不当(65 人)の順であった(二つ以上の破棄理由がある場合は,それ ぞれに計上している。司法統計年報による。)。また,第一審の有罪判決が覆されて無罪となった者は 12 人であり(司法統計年報による。),第一審の無罪判決が覆されて有罪となった者は,検察官が無 罪判決を不服として控訴した 38 人のうち 22 人であった(検察統計年報による。)。 第一審が裁判員裁判の控訴事件について見ると,令和2年の終局処理人員は 316 人(前年比 16.8%減)であり,そのうち控訴棄却が 258 人と最も多く,控訴取下げが 33 人,公訴棄却が1人で あった。破棄人員は 24 人であり,破棄のうち自判が 19 人(自判内容は,有罪が 17 人,一部有罪が 1人,無罪が1人),差戻し・移送が5人であった(司法統計年報による。)。 犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 47

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2-3-4-1 表 控訴審における終局処理人員(罪名別,裁判内容別) (令和2年) 破 罪 名 自 総数 計 第3章 裁判 総 482 456 犯 3,290 398 公務執行妨害 54 4 放 火 28 4 偽 造 46 わ い せ つ 等 234 無罪 差戻し ・移送 免訴 14 12 378 9 4 - 2 4 40 控訴 棄却 取下げ 公訴 棄却 - 25 3,850 948 27 11 - 11 2,352 507 22 - - - 39 10 1 2 - - 1 18 4 1 4 - - - - 40 2 - 38 1 1 - 1 177 13 3 第4節 殺 人 70 7 6 - 1 - 1 56 5 1 傷 害 320 31 29 1 1 - 1 247 40 1 過 22 5 4 - 1 - 1 15 1 - 盗 1,503 157 151 4 2 - 3 1,049 284 10 強 盗 134 13 13 - - - 2 99 20 - 詐 欺 556 97 95 1 1 - 1 378 78 2 恐 喝 47 8 8 - - - - 32 7 - 横 領 49 9 8 - 1 - - 38 1 1 匿 41 4 4 - - - - 27 8 2 上訴審 害 窃 失 毀 傷 棄・隠 暴力行為等処罰法 39 3 2 - 1 - - 25 11 - 他 147 12 10 - 2 - - 112 23 - 犯 2,042 84 78 5 1 - 14 1,498 441 5 公 職 選 挙 法 2 - - - - - - 2 - - 25 - - - - - - 23 2 - そ 特 の 別 銃 法 刀 法 大 麻 取 締 法 75 7 7 - - - 1 52 15 - 覚醒剤取締法 1,163 35 34 1 - - 6 793 327 2 麻 薬 取 締 法 22 2 2 - - - - 18 1 1 麻 薬 特 例 法 14 - - - - - - 7 7 - 出 法 13 1 1 - - - 2 9 1 - 反 333 12 12 - - - - 288 32 1 自動車運転死傷処罰法 道 注 有罪 5,332 法 判 一部 有罪 数 刑 棄 資 交 違 129 11 9 1 1 - 4 101 13 - 入 管 法 13 - - - - - - 10 2 1 そ の 他 253 16 13 3 - - 1 195 41 - 1 2 3 4 5 6 司法統計年報による。 「わいせつ等」は,刑法第2編第 22 章の罪をいう。 「傷害」は,刑法第2編第 27 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪を含む。 「過失傷害」は,刑法第2編第 28 章の罪をいい,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条2項に規定する罪を含む。 「横領」は,遺失物等横領を含む。 「毀棄・隠匿」は,刑法第2編第 40 章の罪をいう。 令和2年に言い渡された控訴審判決に対する上告率(控訴棄却の決定,控訴の取下げ,公訴棄却の 決定及び移送・回付による終局を除く終局処理人員に対する上告人員の比率)は,45.9%であった。 最高裁判所の上告事件の終局処理人員は,平成 25 年以降,1,800 人台から 2,000 人台で推移してお り,令和2年は 1,881 人(前年比 10.0%減。第一審が高等裁判所であるものがある場合には,これ を含む。 )であり,その内訳は,上告棄却が 1,518 人(80.7%),上告取下げが 354 人(18.8%)と 続く。破棄については,3人(全員が差戻し・移送)であった(司法統計年報による。)。 第一審が裁判員裁判の上告事件について見ると,令和2年の終局処理人員は 161 人で,その内訳 は,上告棄却が 140 人,上告取下げが 21 人であり,破棄及び公訴棄却の者はいなかった(司法統計 年報による。 ) 。 48 令和 3 年版 犯罪白書

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4章 第 第2 編 第1節 成人矯正 概説 刑を言い渡した有罪の裁判が確定すると,全部執行猶予の場合を除き,検察官の指揮により刑が執 行される。懲役,禁錮及び拘留は,刑事施設において執行される。 罰金・科料を完納できない者は,刑事施設に附置された労役場に留置され,労役を課される(労役 場留置) 。法廷等の秩序維持に関する法律(昭和 27 年法律第 286 号)2条により監置に処せられた 者は,監置場に留置される。 売春防止法(昭和 31 年法律第 118 号)5条(勧誘等)の罪を犯して補導処分に付された成人女性 は,婦人補導院に収容される。 1 刑事施設等 刑事施設には,刑務所,少年刑務所及び拘置所の3種類がある。刑務所及び少年刑務所は,主とし て受刑者を収容する施設であり,拘置所は,主として未決拘禁者を収容する施設である。令和3年4 月1日現在,刑事施設は,本所が 75 庁(刑務所 61 庁(社会復帰促進センター4庁を含む。),少年刑 務所6庁,拘置所8庁),支所が 105 庁(刑務支所8庁,拘置支所 97 庁)である(法務省矯正局の 資料による。)。刑事施設には,労役場が附置されているほか,監置場が一部の施設を除いて附置され ている。 現在,婦人補導院は,東京に1庁置かれている。令和2年には,婦人補導院への入院はなかった (矯正統計年報による。)。 刑事施設における処遇 犯罪者の処遇 2 刑事施設に収容されている未決拘禁者,受刑者等の被収容者の処遇は,刑事収容施設法に基づいて 行われている。未決拘禁者の処遇は,未決の者としての地位を考慮し,その逃走及び罪証の隠滅の防 止並びにその防御権の尊重に特に留意して行われる。受刑者の処遇は,その者の資質及び環境に応 じ,その自覚に訴え,改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨とし て行われる。受刑者には,矯正処遇として,作業を行わせるほか,改善指導及び教科指導が行われ る。 犯罪白書 2021 49

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第2節 1 刑事施設の収容状況 刑事施設の収容人員 刑事施設の被収容者の年末収容人員及び人口比の推移(昭和 21 年以降)は,2-4-2-1 図のとおり 第4章 成人矯正 である(女性については 4-7-2-3 図,一日平均収容人員の推移については CD-ROM 資料 2-5 をそれ ぞれ参照) 。年末収容人員は,平成 18 年に8万 1,255 人を記録したが,19 年以降減少し続け,令和 2年末現在は4万 6,524 人(前年末比 3.9%減)であり,このうち,受刑者は3万 9,813 人(同 4.9% 減)であった。なお,2年における刑事施設の受刑者の年末収容人員のうち,一部執行猶予受刑者 は,2,090 人(同 8.3%減)であった。 2-4-2-1 図 刑事施設の年末収容人員・人口比の推移 第2節 (昭和21年~令和2年) (万人) 10 120 年末人口比 100 8 46,524 7 年末収容人員 80 6 60 5 4 3 2 1 0 昭和21 注 25 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 その他 657 未決拘禁者 6,054 40 36.9 一部執行猶予 受刑者以外の 20 受刑者 37,723 一部執行猶予 0 受刑者 2,090 30令和2 年末人口比 刑事施設の収容状況 9 1 行刑統計年報,矯正統計年報及び総務省統計局の人口資料による。 2 「年末収容人員」は,各年 12 月 31 日現在の収容人員である。 3 「その他」は,死刑確定者,労役場留置者,引致状による留置者,被監置者及び観護措置の仮収容者である。 4 「年末人口比」は,人口 10 万人当たりの各年 12 月 31 日現在の収容人員である。 2 刑事施設の収容率 刑事施設の収容率の推移(最近 20 年間)は,2-4-2-2 図のとおりである(女性については,4-72-3 図参照) 。令和2年末現在において,収容定員が8万 7,679 人(このうち既決の収容定員は6万 9,928 人,未決の収容定員は1万 7,751 人)であるところ,収容人員は,4万 6,524 人(前年末比 1,905 人(3.9%)減)であり,このうち既決の人員は4万 355 人(同 2,078 人(4.9%)減),未決 の人員は 6,169 人(同 173 人(2.9%)増)であった。収容率は,全体で 53.1%(同 2.1pt 低下)で あり,既決では 57.7%(同 2.9pt 低下) ,未決では 34.8%(同 1.1pt 上昇)であった(CD-ROM 参 照) 。 50 令和 3 年版 犯罪白書

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2-4-2-2 図 刑事施設の収容率の推移 (平成3年~令和2年) (%) 120 第2 編 既決 全体 100 80 未決 60 57.7 53.1 40 34.8 20 0 平成3 注 1 2 3 4 5 10 15 20 25 30 令和2 法務省矯正局の資料による。 「収容率」は,各年 12 月 31 日現在の収容人員の収容定員に対する比率をいう。 「既決」は,労役場留置者及び被監置者を含む。 「未決」は,死刑確定者,引致状による留置者及び観護措置の仮収容者を含む。 入所受刑者 3 (1)人員 入所受刑者の人員及び人口比の推移(昭和21年以降)は,2-4-2-3 図のとおりである。その人員は, 平成19 年から減少し続け,令和2年は1万 6,620 人(前年比 4.8%減)と戦後最少を更新した(CDROM 参照。女性については4-7-2-4 図,年齢層別及び高齢者率については4-8-2-2 図をそれぞれ参照) 。 2-4-2-3 図 入所受刑者の人員・人口比の推移 100 90 7 80 6 70 5 員 50 3 1 注 25 30 35 40 45 50 55 60平成元 5 10 15 20 25 40 一部執行猶予 30 受刑者以外の 入所受刑者 15,330 20 人口比 13.2 10 女性人口比 2.7 0 30令和2 一部執行猶予 受刑者 1,290 16,620 2 人口比 人 60 4 0 昭和21 犯罪者の処遇 (昭和 21 年~令和2年) (万人) 8 1 行刑統計年報,矯正統計年報及び総務省統計局の人口資料による。 2 「人口比」は,人口 10 万人当たりの入所受刑者人員であり, 「女性人口比」は,女性の人口 10 万人当たりの女性の入所受刑者人員で ある。 犯罪白書 2021 51

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令和2年における受刑者の入所事由別人員は,2-4-2-4 表のとおりである。 2-4-2-4 表 受刑者の入所事由別人員 (令和2年) 仮釈放の取消し 仮釈放及び 一部執行猶 刑執行停止 労役場から 逃 走 者 の 留置施設等 数 新 入 所 一部執行 一部執行 一部執行猶 予の取消し の 取 消 し の 移 行 連 戻 し からの移送 予の取消し 猶予なし 猶予あり 第4章 成人矯正 総 17,777 16,620 (100.0) 注 448 (93.5) (2.5) 19 68 (0.1) (0.4) 4 (0.0) 2 446 (0.0) - 170 (2.5) (1.0) 1 矯正統計年報による。 2 「新入所」は,裁判が確定し,その執行を受けるため新たに入所した者をいう。死刑の執行を受けた者を含み,国際受刑者移送法 (平成 14 年法律第 66 号)による受入受刑者及び少年処遇から成人処遇に移行した受刑者を含まない。 3 「仮釈放の取消し」の「一部執行猶予あり」は,実刑期に係る仮釈放の取消しにより復所等した者(入所時に刑の一部執行猶予の取 消しがなされている者を除く。),「仮釈放及び一部執行猶予の取消し」は,実刑期に係る仮釈放及び刑の一部執行猶予の取消しにより 復所等した者をいう。 4 ( )内は,構成比である。 第2節 (2)特徴 令和2年における入所受刑者の年齢層別構成比を男女別に見ると,2-4-2-5 図のとおりである(女 刑事施設の収容状況 性入所受刑者の年齢層別構成比の推移については,4-7-2-5 図参照)。 2-4-2-5 図 入所受刑者の年齢層別構成比(男女別) (令和2年) 20歳未満 0.1 男 20 ~ 29歳 30 ~ 39歳 40 ~ 49歳 15.5 20.6 24.8 性 (14,850) 50 ~ 64歳 65歳以上 26.8 12.2 0.1 女 性 (1,770) 注 11.4 19.5 26.1 24.0 19.0 1 矯正統計年報による。 2 入所時の年齢による。ただし,不定期刑の受刑者については,入所時に 20 歳以上であっても,判決時に 19 歳であった者を,20 歳 未満に計上している。 3 ( )内は,実人員である。 令和2年における入所受刑者の罪名別構成比を男女別に見ると,2-4-2-6 図のとおりである(高齢 入所受刑者の罪名別構成比(男女別)については,4-8-2-3 図参照)。 2-4-2-6 図 入所受刑者の罪名別構成比(男女別) (令和2年) 男 性 (14,850) 窃盗 覚醒剤取締法 34.2 25.2 道路交通法 強盗 2.0 詐欺 その他 傷害 9.7 4.5 4.0 20.4 横領・背任 1.3 女 性 (1,770) 注 52 46.7 1 矯正統計年報による。 2 「横領」は,遺失物等横領を含む。 3 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 35.7 6.7 1.9 殺人 1.2 6.6

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令和2年の入所受刑者について,刑の種類を見ると,懲役1万 6,562 人(99.7%),禁錮 53 人 (0.3%) ,拘留5人であった(矯正統計年報による。)。懲役受刑者の刑期別構成比を男女別に見ると, 2-4-2-7 図のとおりである(懲役受刑者の刑期別の年末収容人員の推移については,CD-ROM 資料 2-4-2-7 図 第2 編 2-6 参照) 。 入所受刑者(懲役)の刑期別構成比(男女別) (令和2年) 1年以下 男 性 女 性 20.7 (14,799) 34.9 21.7 (1,763) 注 2年以下 3年以下 5年以下 5年を 超える 25.1 13.8 5.5 42.3 23.0 7.1 5.8 1 矯正統計年報による。 2 不定期刑は,刑期の長期による。 3 一部執行猶予の場合は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 4 「5年を超える」は,無期を含む。 5 ( )内は,実人員である。 4 出所受刑者 (1)人員 令和2年における受刑者の出所事由別人員は,2-4-2-8 表のとおりである。出所受刑者(仮釈放又 は満期釈放等により刑事施設を出所した者に限る。以下この項において同じ。)に占める満期釈放者 等(満期釈放等により刑事施設を出所した者をいう。)の比率は,40.8%(前年比 0.8pt 低下)であっ た(CD-ROM 参照)。 2-4-2-8 表 受刑者の出所事由別人員 総 労役場 留置施設 一部執 一部執 不定期刑 一部執行猶予の 刑執行 数 満 期 満期釈 放 実 刑 部 分 の 仮 釈 放 行猶予 行猶予 恩赦 へ の 等 へ の 逃走 死 亡 終 了 停 止 釈放等 移 行 移 送 刑 期 終 了 な し あ り 19,823 7,728 (40.8) 注 犯罪者の処遇 (令和2年) 7,440 288 11,195 9,994 1,201 (59.2) - - 22 463 185 - 230 [-] 1 矯正統計年報による。 2 ( )内は,満期釈放等と仮釈放の合計に対する比率である。 3 [ ]内は,死刑の執行を受けた者であり,内数である。 犯罪白書 2021 53

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(2)特徴 令和2年における出所受刑者の年齢層別構成比を出所事由別に見ると,2-4-2-9 図のとおりである。 2-4-2-9 図 出所受刑者の年齢層別構成比(出所事由別) (令和2年) 第4章 成人矯正 ① 仮釈放 仮 釈 放 (全 部 実 刑) 20 ~ 29歳 30 ~ 39歳 40 ~ 49歳 50 ~ 64歳 65歳以上 13.2 23.7 26.6 25.9 10.6 (9,994) 1.9 仮 釈 放 (一部執行猶予) 7.3 26.3 (1,201) ② 39.7 満期釈放等 第2節 20 ~ 29歳 30 ~ 39歳 満 期 釈 放 (7,440) 6.2 刑事施設の収容状況 一部執行猶予の 実刑部分の刑期終了 (288) 注 24.7 40 ~ 49歳 50 ~ 64歳 65歳以上 23.9 33.0 21.4 15.6 7.3 20.8 33.3 33.7 4.9 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 出所時の年齢による。 3 ( )内は,実人員である。 令和2年における出所受刑者の帰住先別構成比を出所事由別に見ると,2-4-2-10 図のとおりであ る(男女別については,4-7-2-6 図参照)。 2-4-2-10 図 出所受刑者の帰住先別構成比(出所事由別) (令和2年) ① 仮釈放 2.2 仮 釈 放 (全 部 実 刑) 32.7 (9,994) 40.5 (1,201) (7,440) 一部執行猶予の 実刑部分の刑期終了 (288) 2.8 14.7 54 1 2 3 4 5 6 7 7.4 4.7 2.9 0.6 12.8 0.2 23.4 7.4 3.1 22.9 5.3 5.1 2.1 5.6 配偶者 社会福祉施設 8.9 3.1 43.9 3.1 14.9 2.8 16.3 兄弟姉妹 更生保護施設等 26.0 その他の親族 自宅 知人 その他 矯正統計年報による。 「帰住先」は,刑事施設出所後に住む場所である。 「配偶者」は,内縁関係にある者を含む。 「更生保護施設等」は,更生保護施設,就業支援センター,自立更生促進センター及び自立準備ホームである。 「自宅」は,帰住先が父・母,配偶者等以外で,かつ,自宅に帰住する場合である。 「その他」は,帰住先が不明,暴力団関係者,刑終了後引き続き被告人として勾留,出入国在留管理庁への身柄引渡し等である。 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 2.1 35.6 3.0 5.6 3.3 父・母 雇主 注 11.6 0.0 0.6 満期釈放等 満 期 釈 放 4.9 4.4 2.7 仮 釈 放 (一部執行猶予) ② 10.3 0.4

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第3節 1 受刑者の処遇等 処遇の概要 第2 編 受刑者の処遇は,刑事収容施設法に基づき,受刑者の人権を尊重しつつ,その者の資質及び環境に 応じ,その自覚に訴え,改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを目的 として行う。その流れは,2-4-3-1 図のとおりである。 2-4-3-1 図 受刑者処遇の流れ 処遇指標の指定 刑執行開始時の指導 処 遇 調 査 (定期・臨時再調査) 処遇要領等の変更 釈放前の指導 所 所 処遇要領の策定 出 入 作 業 改 善 指 導 教 科 指 導 処 遇 調 査 (刑執行開始時調査) 就 労 支 援 福 祉 的 支 援 (1)処遇指標及び処遇要領 受刑者の処遇の中核となるのは,矯正処遇として行う作業(次項参照),改善指導及び教科指導 (本節3項参照)である。矯正処遇は,個々の受刑者の資質及び環境に応じて適切な内容と方法で実 施しなければならない(個別処遇の原則)。 そのため,各刑事施設では,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識及び技術を活用 し,受刑者の資質及び環境の調査(処遇調査)を行っている。また,新たに刑が確定した受刑者で, 26 歳未満の者及び特別改善指導(本節3項(2)参照)の受講に当たり特に調査を必要とする者等 には,調査センターとして指定されている特定の刑事施設で精密な処遇調査が行われている。また, 犯罪者の処遇 受刑者の再犯の可能性等を客観的,定量的に把握するために開発を進めている受刑者用一般リスクア セスメントツール(G ツール)のうち,一部機能の運用を開始し,原則として,全受刑者を対象に, 刑の執行開始時に行う処遇調査において G ツールを実施し,それによって得られる結果や情報を処 遇の参考としている。 刑事施設では,刑の執行開始時に処遇調査(調査センターでの処遇調査を含む。)を行い,その調 査結果を踏まえ,受刑者に処遇指標を指定する。処遇指標は,矯正処遇の種類・内容,受刑者の属性 及び犯罪傾向の進度から構成される。処遇指標の区分及び令和2年末現在の符号別の人員は 2-4-3-2 表のとおりである。処遇指標は,その指定がなされるべきものは,重複して指定され,処遇指標を指 定されることで,受刑者の収容される刑事施設と矯正処遇の重点方針が定まる。 犯罪白書 2021 55

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2-4-3-2 表 ① 処遇指標の区分・符号別人員 矯正処遇の種類及び内容 種 類 内 作業 容 符 V0 職業訓練 V1 第4章 成人矯正 一般改善指導 改善指導 特別改善指導 教科指導 第3節 ② 号 一般作業 R0 薬物依存離脱指導 R1 暴力団離脱指導 R2 性犯罪再犯防止指導 R3 被害者の視点を取り入れた教育 R4 交通安全指導 R5 就労支援指導 R6 補習教科指導 E1 特別教科指導 E2 受刑者の属性及び犯罪傾向の進度  属性及び犯罪傾向の進度 (令和2年 12 月 31 日現在) 符 号 人 員 受刑者の処遇等 拘留受刑者 D - 少年院への収容を必要とする 16 歳未満の少年 Jt - 精神上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等 に収容する必要があると認められる者 M 223 身体上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等 に収容する必要があると認められる者 P 311 女子 W 2,925 日本人と異なる処遇を必要とする外国人 F 1,071 禁錮受刑者 I 76 少年院への収容を必要としない少年 J 3 執行すべき刑期が 10 年以上である者 L 4,385 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる 26 歳未満の成人 Y 1,686 犯罪傾向が進んでいない者 A 8,819 犯罪傾向が進んでいる者 B 16,434 注 1 2 矯正統計年報による。 複数の処遇指標が指定されている場合は,符号の欄において上に掲げられているものに計上している。 受刑者には,刑の執行開始時の処遇調査の結果に基づいて,矯正処遇の目標並びにその基本的な内 容及び方法(例えば,具体的にどのような方法や期間・回数で薬物依存離脱指導を行うかなど)が処 遇要領として定められ,矯正処遇はこの処遇要領に沿って計画的に実施される。 また,矯正処遇の進展に応じて,定期的に又は臨時に処遇調査を行い,その結果に基づき,必要に 応じ処遇指標及び処遇要領を変更する。 (2)制限の緩和と優遇措置 かん 受刑者の自発性や自律性を涵養するため,受刑者処遇の目的(改善更生の意欲の喚起及び社会生活 に適応する能力の育成)を達成する見込みが高まるに従い,順次,規律・秩序維持のための制限を緩 和することとし , その制限が緩和された順に第1種から第4種までの区分を指定し,定期的に,及び 随時,前記の見込みを評価し,その評価に応じて,制限区分の指定を変更している。各区分に指定さ れた受刑者の制限の内容は,第4種では,原則として居室棟内で矯正処遇等を行うこと,第3種で は,主として刑事施設内の居室棟外(工場等)で矯正処遇等を行うこと,第2種では,刑事施設外で の矯正処遇等が可能となること,第1種では,居室に施錠をしないことなどである。令和3年4月 10 日現在,刑事施設本所 75 庁並びに刑務支所8庁及び大規模拘置支所4庁(札幌,横浜,さいたま 及び小倉)合計 87 庁の施設における受刑者の制限区分別人員は,第1種 349 人(0.9%),第2種 56 令和 3 年版 犯罪白書

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6,230 人(15.9%) , 第 3 種 2 万 7,821 人(71.0%), 第 4 種 772 人(2.0%), 指 定 な し 4,018 人 (10.3%)であった(法務省矯正局の資料による。)。 また,受刑者に改善更生の意欲を持たせるため,刑事施設では,定期的に受刑態度を評価し,良好 第2 編 な順に第1類から第5類までの優遇区分に指定し,良好な区分に指定された受刑者には,外部交通の 回数を増やしたり,自弁(自費購入又は差入れを受けること。以下この章において同じ。)で使用で きる物品の範囲を広げたりするなどの優遇をした処遇を行っている。令和3年4月 10 日現在,前記 87 庁の施設における受刑者の優遇区分別人員は,第1類 841 人(2.1%),第2類 6,414 人(16.4%), 第3類1万 6,473 人(42.0%),第4類 3,328 人(8.5%),第5類 3,352 人(8.6%),指定なし 8,782 人(22.4%)であった(法務省矯正局の資料による。)。 かん なお,受刑者の自発性や自律性を涵養し,社会適応性を向上させ,その改善更生及び円滑な社会復 帰を目指すため,開放的施設として6施設(旭川刑務所西神楽農場,網走刑務所二見ヶ岡農場,市原 刑務所,広島刑務所尾道刑務支所有井作業場,松山刑務所大井造船作業場及び鹿児島刑務所(農場 区) )が指定されている。 (3)外出・外泊 受刑者は,受刑者処遇の目的を達成する見込みが高く,開放的施設で処遇を受けているなど,一定 の要件を備えている場合において,円滑な社会復帰を図る上で,釈放後の住居又は就業先の確保,家 族関係の維持・調整等のために外部の者を訪問し,あるいは保護司その他の更生保護関係者を訪問す るなどの必要があるときに,刑事施設の職員の同行なしに,刑事施設から外出し,又は7日以内の期 間で外泊することを許されることがある。令和2年度の実績は,外出 20 件,外泊0件であった(法 務省矯正局の資料による。)。 2 作業 (1)概況 懲役受刑者には,法律上,作業が義務付けられている(労役場留置者も同様である。)。このほか, 犯罪者の処遇 禁錮受刑者及び拘留受刑者も希望により作業を行うことができる。令和2年度における作業の一日平 均就業人員は,3万 8,864 人であった。また,禁錮受刑者は,3年3月 31 日現在で,79.8%が作業 に従事していた(法務省矯正局の資料による。)。 (2)作業の内容等 受刑者は,作業として職業訓練を受けることがあるほか,生産作業(物品を製作する作業及び労務 を提供する作業で,木工,印刷,洋裁,金属等の業種がある。),社会貢献作業(労務を提供する作業 であって,公園等の除草作業等社会に貢献していることを受刑者が実感することにより,その改善更 生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認める作業),自営作業(刑事施設における炊 事,清掃,介助,矯正施設の建物の修繕等の作業)の中から,受刑者の希望も参酌し,適性に応じて 指定される。なお,令和2年度においては,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い,医療機関 において,全国的に医療用ガウンが不足している状況を踏まえ,厚生労働省からの依頼に基づく医療 用ガウンの縫製を 42 庁(刑務支所を含む。 )の施設において,延べ8万人を超える受刑者が実施した (本章コラム1参照)ほか,25 庁(刑務支所を含む。)でも 163 人の受刑者が様々な社会貢献作業を 実施した(法務省矯正局の資料による。)。 作業は,刑事施設内で行うものが大部分であるが,刑事施設が管理する構外作業場で行うものもあ り,さらに,刑事施設の外の事業所の協力を得て,受刑者を職員の同行なしに,その事業所に通勤さ せて業務に従事させる(職業訓練を受けさせることを含む。)こともある(外部通勤作業)。令和3年 犯罪白書 2021 57

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3月 31 日現在,外部通勤作業を実施しているのは,3庁7人であった(法務省矯正局の資料によ る。 ) 。なお,前記の外出,外泊及び外部通勤作業の運用に当たっては,GPS 機器が活用されている。 作業の収入は,全て国庫に帰属する。令和2年度における作業による歳入額は,約 28 億円であっ た(法務省矯正局の資料による。)。 他方,受刑者には,従事した作業に応じ,作業報奨金が原則として釈放時に支給される。作業報奨 第4章 成人矯正 金に充てられる金額(予算額)は,令和2年度には,一人1か月当たり平均で 4,320 円であった(法 務省矯正局の資料による。)。また,同年の出所受刑者が出所時に支給された作業報奨金の金額を見る と,5万円を超える者が 36.5%,1万円以下の者が 16.8%であった(矯正統計年報による。)。 (3)職業訓練 刑事施設では,受刑者に職業に関する免許や資格を取得させ,又は職業上有用な知識や技能を習得 させるために,職業訓練を実施している。職業訓練には,総合訓練,集合訓練及び自庁訓練の三つの 第3節 方法がある。総合訓練は全国の刑事施設から,集合訓練は主に各矯正管区単位で , 自庁訓練は刑事施 設ごとに,それぞれ適格者を選定して実施している。男性受刑者に対する総合訓練は,同施設として 指定された7庁(山形,福井,山口及び松山の各刑務所並びに函館,川越及び佐賀の各少年刑務所) 受刑者の処遇等 で実施している。女性受刑者に対する職業訓練は,各女性施設で実施している一部の職業訓練種目に ついて,他の女性施設からも希望者を募集して実施している。 刑事施設では,令和2年度には,ビジネススキル科,溶接科,フォークリフト運転科,情報処理技術 科等のほか,同年度に新たに開講された介護コース,建築・土木コース,農業コース,建築 CAD 科, 食の総合知識科及び Webスキル科を合わせ合計 53 種目の職業訓練が実施され,1万1,288 人がこれを 修了し,溶接技能者,ボイラー技士,情報処理技術者等の資格又は免許を取得した者は,総数で 6,216 人であった(法務省矯正局の資料による。 ) 。 刑事施設では,出所後の就労先への定着を図り,再犯防止につなげていくことを目的として,在所 中に内定を受けた者等を対象に,内定を受けた事業所等において一定期間就労を体験させる職場体験 制度が職業訓練の一環として位置付けられた上で実施されている。令和2年度に職場体験を経験した 受刑者数は,2人であった(法務省矯正局の資料による。)。 3 矯正指導 改善指導,教科指導並びに刑執行開始時及び釈放前の指導の四つを総称して矯正指導という。 (1)刑執行開始時の指導 受刑者には,入所直後,原則として2週間の期間で,受刑等の意義や心構え,矯正処遇を受ける上 で前提となる事項(処遇制度,作業上の留意事項,改善指導等の趣旨・概要等),刑事施設における 生活上の心得,起居動作の方法等について指導が行われる。 (2)改善指導 改善指導は,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するの に必要な知識及び生活態度を習得させるために行うもので,一般改善指導及び特別改善指導がある。 一般改善指導は,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の方法により,①被害者及びその遺族 等の感情を理解させ,罪の意識を培わせること,②規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し,心 身の健康の増進を図ること,③生活設計や社会復帰への心構えを持たせ,社会適応に必要なスキルを 身に付けさせることなどを目的として行う。また,高齢又は障害を有する受刑者のうち,福祉的支援 を必要とする者又は受講させることにより改善更生及び円滑な社会復帰に資すると見込まれる者を対 58 令和 3 年版 犯罪白書

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象に,比較的早期の段階から,出所後の円滑な社会生活を見据えた指導を実施することを目的とした 「社会復帰支援指導プログラム」が策定され,これまで全国的に展開されてきたところ,令和3年に は同プログラムに特別調整,地域生活定着支援センター(本節5項参照),更生緊急保護等に関する 第2 編 指導内容が新たに設けられた。 特別改善指導は,薬物依存があったり,暴力団員であるなどの事情により,改善更生及び円滑な社 会復帰に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するよう特に配慮して行う。現 在,①「薬物依存離脱指導」 (薬物使用に係る自己の問題性を理解させた上で,再使用に至らないた めの具体的な方法を考えさせるなど。令和2年度の実施指定施設数は 74 庁。),②「暴力団離脱指導」 (警察等と協力しながら,暴力団の反社会性を認識させる指導を行い,離脱意志の醸成を図るなど。 同 35 庁。 ),③「性犯罪再犯防止指導」(性犯罪につながる認知の偏り,自己統制力の不足等の自己の 問題性を認識させ,その改善を図るとともに,再犯に至らないための具体的な方法を習得させるな ど。性犯罪者調査,各種プログラムの実施,メンテナンスの順に行われる。同 21 庁。),④「被害者 の視点を取り入れた教育」 (罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるなどし,被害者等に誠意を もって対応するための方法を考えさせるなど。同 75 庁。),⑤「交通安全指導」(運転者の責任と義務 を自覚させ,罪の重さを認識させるなど。同 54 庁。)及び⑥「就労支援指導」(就労に必要な基本的 スキルとマナーを習得させ,出所後の就労に向けての取組を具体化させるなど。同 65 庁。)の6類型 の特別改善指導を実施している。薬物依存離脱指導については,標準プログラムを複線化した必修プ ログラム(麻薬,覚醒剤その他の薬物に対する依存があると認められる者全員に対して実施するもの (同年度の受講開始人員は 4,524 人)),専門プログラム(より専門的・体系的な指導を受講させる必 要性が高いと認められる者に対して実施するもの(同 1,223 人)),選択プログラム(必修プログラム 又は専門プログラムに加えて補完的な指導を受講させる必要性が高いと認められる者に対して実施す るもの(同 1,552 人))を受刑者個々の問題性やリスク,刑期の長さ等に応じ,組み合わせて実施し ている。 特別改善指導の受講開始人員の推移(最近 10 年間)は,2-4-3-3 図のとおりである。 2-4-3-3 図 特別改善指導の受講開始人員の推移 犯罪者の処遇 (平成23年度~令和2年度) (千人) 12 10 8 7,707 薬物依存離脱指導 6 就労支援指導 4 被害者の視点を取り入れた教育 0 平成23 注 1 2 2,952 交通安全指導 2 25 性犯罪再犯防止指導 30 暴力団離脱指導 1,659 551 538 424 令和2 法務省矯正局の資料による。 受講開始人員は,延べ人員である。 犯罪白書 2021 59

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(3)教科指導 教科指導とは,学校教育の内容に準ずる指導である。社会生活の基礎となる学力を欠くことにより 改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対して行う教科指導(補習教科指 導)のほか,学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる受刑者に対しても, その学力に応じた教科指導(特別教科指導)を行っている。 第4章 成人矯正 法務省と文部科学省の連携により,刑事施設内において,高等学校卒業程度認定試験を実施し,ま た,指定された4庁の刑事施設において,同試験の受験に向けた指導を積極的かつ計画的に実施して いる。令和2年度の受験者数は 309 人であり,合格者数は,高卒認定試験合格者が 136 人,一部科 目合格者が 160 人であった(文部科学省総合教育政策局の資料による。)。 松本少年刑務所内には,我が国において唯一,公立中学校の分校が刑事施設内に設置されており, 全国の刑事施設に収容されている義務教育未修了者等のうち希望者を中学3年生に編入させ,地元中 学校教諭,職員等が,文部科学省の定める学習指導要領を踏まえた指導を行っている。また,盛岡少 第3節 年刑務所及び松本少年刑務所では,近隣の高等学校の協力の下,当該高等学校の通信制課程に受刑者 を編入させ,指導を行う取組を実施し,そのうち松本少年刑務所は,全国の刑事施設から希望者を募 集し,高等学校教育を実施しており,所定の課程を修了したと認められた者には,高等学校の卒業証 受刑者の処遇等 書が授与される。 (4)釈放前の指導 受刑者には,釈放前に,原則として2週間の期間で,釈放後の社会生活において直ちに必要となる 知識の付与や指導が行われる。 4 就労支援 法務省は,受刑者等の出所時の就労の確保に向けて,刑事施設及び少年院に就労支援スタッフを配 置するとともに,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施している。この施 策は,刑事施設,少年院,保護観察所及びハローワークが連携する仕組みを構築した上で,支援対象 者の希望や適性等に応じ,計画的に就労支援を行うものであるが,その一環として,刑事施設では, 支援対象者に対し,ハローワークの職員による職業相談,職業紹介,職業講話等を実施している(保 護観察所における就労支援については,本編第5章第3節2項(4)参照)。 また,刑務所出所者等の採用を希望する事業者が,矯正施設を指定した上でハローワークに求人票 を提出することができる「受刑者等専用求人」が運用されており,事業者と就職を希望する受刑者と のマッチングの促進に努めている。 さらに,受刑者等の就労先を在所中に確保し,出所後速やかに就労に結び付けるため,全国8か所 の全ての矯正管区に設置されている矯正就労支援情報センター(通称「コレワーク」)が,受刑者等 の帰住地や取得資格等の情報を一括管理し,出所者等の雇用を希望する企業の相談に対応して,企業 のニーズに適合する者を収容する施設の情報を提供する(雇用情報提供サービス)などして,広域的 な就労支援等に取り組んでいる。また,刑務所出所者等の雇用経験が豊富な事業主等を刑務所出所者 等雇用支援アドバイザーとして招へいし,刑務所出所者等の雇用前後における事業主の不安や疑問等 の相談に応じられる体制を整備するとともに,同アドバイザーによる事業主への相談会を実施(令和 2年度は 26 回実施し,延べ 113 人参加)したほか,事業主等に対する就労支援セミナーを開催(同 年度は 12 回開催し,延べ 140 人参加)した。 このほか,日本財団及び関西の企業7社が発足させた日本財団職親プロジェクトは,少年院出院者や 刑務所出所者に就労先・住まいを提供することで,円滑な社会復帰を支援するとともに,再犯者率の 低下の実現を目指しており,令和3年5月末現在で,176 社が参加している(日本財団の資料による。 ) 。 60 令和 3 年版 犯罪白書

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5 福祉的支援 法務省は,厚生労働省と連携して,高齢又は障害を有し,かつ,適当な帰住先がない受刑者及び少 第2 編 年院在院者について,釈放後速やかに,適切な介護,医療,年金等の福祉サービスを受けることがで きるようにするための取組として,矯正施設と保護観察所において特別調整を実施している(概要に ついては,本編第5章第2節2項参照) 。この取組では,福祉関係機関等との効果的な連携が求められ るところ,その中心となるのは,厚生労働省の地域生活定着促進事業により整備が進められ,各都道 府県が設置した地域生活定着支援センターであり,この取組によって司法と福祉との多機関連携によ る支援が行われている。 刑事施設においては,特別調整を始めとする福祉的支援を必要とする者に対応するため,社会福祉 士又は精神保健福祉士の資格を有する非常勤職員を配置しているほか,福祉専門官(社会福祉士 , 精 神保健福祉士又は介護福祉士の資格を有する常勤職員)を配置している。令和3年度の社会福祉士の 配置施設数は刑事施設 68 庁 , 精神保健福祉士の配置施設数は刑事施設8庁,福祉専門官の配置施設 数は刑事施設 58 庁である。また,認知能力や身体機能の低下した高齢受刑者等に対し,専門的な知 識・経験を有する者が介助を行うため,介護福祉士及び介護専門スタッフ(介護職員実務者研修又は 介護職員初任者研修の修了者等)を配置している。同年度の配置施設数は,介護福祉士が8庁,介護 専門スタッフが 41 庁であった(法務省矯正局の資料による。)。 さらに,女性の受刑者を収容する刑事施設における医療・福祉等の問題に対処するため,これらの 施設が所在する地域の医療・福祉等の各種団体の協力を得て,「女子施設地域連携事業」を行ってい る(第4編第7章第2節2項(1)イ参照)。 6 受刑者の釈放等に関する情報の提供 法務省は,警察において,犯罪の防止や犯罪が生じた場合の対応を迅速に行うことができるように するための協力として,次のとおり,警察庁に対し,重大事犯者を中心に一定の罪を犯した受刑者に 関する情報を提供している。 犯罪者の処遇 平成 17 年6月から,刑事施設等の長は,警察庁に対し,13 歳未満の者に対する強制わいせつ,強 制性交等(強姦),わいせつ目的略取誘拐,強盗・強制性交等(強盗強姦)等に係る受刑者について, 釈放予定日のおおむね1か月前に,釈放予定日,入所日,帰住予定地等の情報を提供している。令和 3年5月 31 日までに情報提供した対象者数は,2,298 人であった(法務省矯正局の資料による。)。 これに加え,平成 17 年9月から,法務省は,警察庁に対し,殺人,強盗等の重大な犯罪やこれら の犯罪に結び付きやすいと考えられる侵入窃盗,薬物犯罪等に係る受刑者について,毎月,釈放(予 定)日,入所日,出所事由等の情報を提供している。令和3年5月 31 日までに情報提供した対象者 数は,延べ約 37 万 7,000 人であった(法務省矯正局の資料による。)。 第4節 1 刑事施設の運営等 刑事施設視察委員会 刑事施設には,法務大臣が任命する 10 人以内の外部の委員で構成され,刑事施設を視察し,その 運営に関し,刑事施設の長に対して意見を述べる刑事施設視察委員会が刑事施設(本所)ごとに置か れている。令和2年度の活動状況は,会議の開催 428 回,刑事施設の視察 152 回,被収容者との面 接 334 件であり,委員会が刑事施設の長に対して提出した意見は 483 件であった(法務省矯正局の 資料による。)。 犯罪白書 2021 61

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2 給養・医療・衛生等 被収容者には,食事及び飲料(湯茶等)が支給される。令和3年度の成人の受刑者一人当たりの一 日の食費(予算額)は 536.07 円(主食費 104.40 円,副食費 431.67 円)である。高齢者,妊産婦, 体力の消耗が激しい作業に従事している者や,宗教上の理由等から通常の食事を摂取できない者等に 第4章 成人矯正 対しては,食事の内容や支給量について配慮している。また,被収容者には,日常生活に必要な衣 類,寝具,日用品等も貸与又は支給されるが,日用品等について自弁のものを使用することも認めて いる。なお,同年度の刑事施設の被収容者一人一日当たりの収容に直接に必要な費用(予算額)は, 2,208 円である(法務省矯正局の資料による。)。 刑事施設には,医師その他の医療専門職員が配置されて医療及び衛生関係業務に従事している。さ らに,専門的に医療を行う刑事施設として,医療専門施設4庁(東日本成人矯正医療センター並びに 岡崎,大阪及び北九州の各医療刑務所)を設置しているほか,医療重点施設9庁(札幌,宮城,府 第4節 中,名古屋,大阪,広島,高松及び福岡の各刑務所並びに東京拘置所)を指定し,これら 13 庁には, 医療機器や医療専門職員を集中的に配置している。 矯正医官の人員は,令和3年4月1日現在で 299 人(前年比7人増)であり,定員の約9割にと 刑事施設の運営等 どまっている(法務省矯正局の資料による。)。 コラム1 刑事施設における新型コロナウイルス感染症への対策 我が国においては,令和2年1月 15 日に国内で初めて新型コロナウイルス感染症患者の発 生が確認された。同年3月下旬から,国内における新規感染者数が急増し,政府は,同年4 月7日,7都府県を対象とした新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言(以下「緊急事態宣 言」という。)を発出した(同月 16 日には緊急事態宣言の対象を全都道府県に拡大した。)。 その後,新型コロナウイルスの陽性者数は増減を繰り返し,政府は,3年1月7日に2回目 の,同年4月 23 日に3回目の緊急事態宣言を発出した。 法務省矯正局及び全国の刑事施設においては,1回目の緊急事態宣言の発出の前から,新型 コロナウイルスの感染防止に向けた取組を進めてきたが,令和2年4月5日,刑事施設の職員 として初めて,大阪拘置所の刑務官の新型コロナウイルス感染が確認され,同月11日には, 被収容者で初めての感染が東京拘置所で確認された。それ以降,3年3月末までに確認された 刑事施設における新型コロナウイルス感染者数は,職員 127 人及び被収容者 289 人に上った。 法務省は,令和2年4月6日,「法務省危機管理専門家会議」を開催し,職員に感染が確認 された大阪拘置所の状況及び感染拡大防止策並びに矯正施設全体における新型コロナウイル ス感染症対策について議論した。同月 13 日には,同専門家会議の下に「矯正施設感染防止タ スクフォース」を開催し,逃走防止の観点から窓や扉を開放することが困難であること,い わゆる三つの密(密閉・密集・密接)が重なりやすいこと,これらのことから施設内で感染 症が発生した場合の感染拡大のリスクが大きいことなどの矯正施設の特性を踏まえて対応策 を検討し,同月 27 日,「矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防止対策ガイドラ イン」 (以下「ガイドライン」という。)を策定した。ガイドラインは,3年8月末までに, 2回(2年6月及び 11 月)改訂された。このコラムでは,ガイドラインを始め,刑事施設に おける新型コロナウイルス感染症対策を紹介する。 感染症対策を適切に講じるためには,新型コロナウイルス及び感染症に関する基本的な知 識が必要であることから,ガイドラインは,感染のメカニズム,防護に関する基本的な事項 等を説明している。これを受けて刑事施設では,各施設におけるマニュアルの作成,職員研 62 令和 3 年版 犯罪白書

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修の実施等により,新型コロナウイルス感染症対策に関する理解の促進を図った。 刑事施設は,ガイドラインに基づき,マスクの着用,手洗い,手指消毒,食事等の場面に 第2 編 おける対面での会話の回避等の対策を講じた。また,事務室等のほか,受刑者が刑務作業を 行う工場等においても,毎時2回以上換気を行い,共有の場所・備品の消毒を徹底した。さ らに,在宅勤務・テレワークの活用により,出勤職員数を抑制する措置をとった。 以上のような対策に加えて,被収容者の処遇についても様々な措置を講じた。令和2年4 月 16 日から,特定警戒都道府県(特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必 要があるとして政府に位置付けられた都道府県)に所在する刑事施設では,刑務作業(炊事 等の施設運営上最低限必要な作業及び医療衛生資材を生産する作業を除く。),矯正指導等の 実施も,当面の間,見合わせることとされた。しかし,刑務作業,矯正指導等の重要性に鑑 み,少人数化,十分な換気,人と人との距離の確保等の感染症対策を講じることで,刑務作 業,矯正指導等を再開・継続する取組も行われた。また,外来者からの感染を防止するため, 外来者の健康状態の確認,マスク着用,手指消毒の協力要請等も行われた。 職員・被収容者が感染し,又は感染の疑いが生じた場合に行うべき対応は多岐にわたり, 感染拡大を防ぐためには,様々な対応を迅速に行う必要がある。一般社会においては,保健 所により濃厚接触者と判断された場合,感染者と接触した後 14 日間は,健康状態に注意を払 い,不要不急の外出を控えることが要請されているが,刑事施設においては,感染拡大のリ スクが大きいことなどの矯正施設の特殊性を踏まえて,保健所が判断した濃厚接触者だけで はなく,濃厚接触者の定義には該当しなくとも感染者と一定程度の接触があった者や感染者 が汚染した可能性がある部屋や備品を利用した者についても,健康観察の対象とし,職員の 場合には自宅待機を,被収容者の場合には他の被収容者からの分離を行った。感染の疑いが ある者が発生した場合には,新型コロナウイルス感染が確定する前の段階から,その者との 接触者の調査を開始し,感染の疑いがある者に実施するウイルス検査で陰性が確定するまで の間は,健康観察及び自宅待機又は分離の対象とした。 以上,刑事施設における新型コロナウイルス感染症対策について概観したが,刑事施設が 犯罪者の処遇 一般社会における感染症対策に貢献する取組を行ったことも紹介する。一部の刑事施設では, 令和2年1月に民間企業からの依頼を受けたことをきっかけに,布マスクの製作を開始した。 また,関係省庁からの要請に応じ,全国 42 庁(刑務支所を含む。)において,同年5月から 10 月末までの間に,医療現場で不足していた医療用ガウン(アイソレーションガウン)約 120 万着を製作した。当時の医療現場での深刻な物資不足に早急に対応するため,医療用ガ ウンの製作作業は,同年4月 16 日から当面の間,刑務作業の実施を原則として見合わせてい た状況下においても,例外的に実施され た。製作された医療用ガウンは,地方公 共団体や民間企業に納品され,医療現場 等において活用された。法務省矯正局の 担当者は,新型コロナウイルス感染症の 感染が拡大する中で,家族や社会に何も できないもどかしさを感じていた受刑者 が,医療用ガウンの製作作業を通じて社 会に貢献できることにやりがいを感じ, 懸命に作業に取り組んでくれたと振り 返っている。 刑務所における医療用ガウン製作の様子 【写真提供:法務省矯正局】 犯罪白書 2021 63

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3 民間協力 (1)篤志面接 刑事施設では,必要があるときは,篤志面接委員に,被収容者と面接し,専門的知識や経験に基づ いて助言指導を行うことを依頼している。その助言指導の内容は,被収容者の精神的な悩みや,家 第4章 成人矯正 庭,職業及び将来の生活に関するものから,趣味・教養に関するものまで様々である。令和2年末現 在,篤志面接委員は,978 人であり,その内訳は,教育・文芸関係者 318 人,更生保護関係者 102 人,法曹関係者 79 人,宗教・商工・社会福祉関係者 248 人,その他 231 人である。同年の篤志面接 の実施回数は,8,235 回(前年比 32.9%減)であり,その内訳は,趣味・教養の指導 3,779 回(同 36.1%減) ,家庭・法律・職業・宗教・保護に関する相談 1,550 回(同 30.0%減),悩み事相談 1,023 回(同 30.2%減),その他 1,883 回(同 29.7%減)であった(法務省矯正局の資料による。)。 第4節 (2)宗教上の儀式行事・教誨 刑事施設では,教誨師(民間の篤志の宗教家)に宗教上の儀式行事や教誨(読経や説話等による精 神的救済)の実施を依頼し,被収容者がその希望に基づいてその儀式行事に参加し,教誨を受けられ 刑事施設の運営等 るように努めている。令和2年末現在,教誨師数は,1,613 人であり,同年の宗教上の儀式行事・教 誨の実施回数は,集団に対して 6,520 回(前年比 30.0%減),個人に対して 5,559 回(同 11.6%減) であった(法務省矯正局の資料による。)。 4 規律・秩序の維持 被収容者の収容を確保し,刑事施設内における安全で平穏な生活と適切な処遇環境を維持するため には,刑事施設の規律・秩序が適正に維持されなければならない。そのために,刑事施設では,被収 容者が遵守すべき事項を定めており,被収容者がこれを遵守せず,又は刑事施設の規律・秩序を維持 するために職員が行った指示に従わないときは,懲罰を科することがある。令和2年に懲罰を科せら れた被収容者は,延べ3万 1,834 人であり,懲罰理由別に見ると,怠役(正当な理由なく作業を怠る こと。34.6%)が最も高い比率を占め,次いで,抗命(5.5%), 物品不正授受(4.4%)及び被収容 者に暴行(4.3%)の順となっている(矯正統計年報による。)。 令和2年に刑事施設で発生した逃走,殺傷等の事故の発生状況は,2-4-4-1 表のとおりである。 2-4-4-1 表 刑事施設における事故発生状況 (令和2年) 総 数 15 (12) 注 逃 件数 走 人員 - - 自 殺 12 (12) 被収容者 殺 傷 3 (-) 作業上 死 亡 事故死 - 火 災 - 1 法務省矯正局の資料による。 2 「逃走」については,事故発生件数及び人員であり,「逃走」以外については,事故発生件数である。また,( ある。 3 「被収容者殺傷」の傷害は,全治1か月以上のものである。 5 その他 - - )内は,死亡人員で 不服申立制度 刑事施設の処置に対する被収容者の不服申立制度としては,一般的な制度として,民事・行政訴 訟,告訴・告発,人権侵犯申告等がある。また,被収容者は,刑事収容施設法に基づき,刑事施設の 長による一定の措置(信書の発受の差止めや懲罰等の処分等)については,その取消し等を求める審 査の申請・再審査の申請を,刑事施設の職員による一定の事実行為(被収容者の身体に対する違法な 64 令和 3 年版 犯罪白書

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有形力の行使等)については,その事実の確認を求める事実の申告をすることができる(いずれも, まず,矯正管区の長に対して申請・申告を行い,その判断に不服があるときは,法務大臣に対して, 申請(再審査の申請) ・申告を行うことができる。)ほか,自己が受けた処遇全般について,法務大 第2 編 臣,監査官及び刑事施設の長に対し苦情の申出をすることができる。被収容者の不服申立件数の推移 (最近5年間)は,2-4-4-2 表のとおりである。 2-4-4-2 表 被収容者の不服申立件数の推移 (平成 28 年~令和2年) 年 注 次 審査の 申 請 再審査 の申請 事実の申告 管区長 大臣 法務大臣に対する 苦 情 の 申 出 訴 訟 告訴・ 告 発 その他 28 年 3,053 1,189 1,091 490 2,758 279 566 1,188 29 3,348 1,128 1,282 312 2,381 326 484 1,182 30 4,063 1,292 973 342 3,872 164 477 1,023 元 5,424 2,232 1,017 476 4,922 199 477 1,070 2 5,591 2,489 1,415 504 4,560 170 685 990 1 法務省矯正局の資料による。 2 「告訴・告発」の件数は,被収容者が捜査機関宛てに発信した告訴・告発状と題する信書の通数である。 3 「その他」は,人権侵犯申告,付審判請求等であり,監査官及び刑事施設の長に対する苦情の申出は含まない。 第5節 未決拘禁者等の処遇 未決拘禁者の処遇は,逃走及び罪証隠滅を防止するとともに,被疑者又は被告人としての防御権を 尊重しつつ,適正な収容を確保するよう配慮しながら行っている。昼夜,居室内で処遇を行うのが原 則であり,居室は,できる限り単独室としている。 未決拘禁者は,受刑者と異なり,衣類・寝具は自弁のものを使用するのが一般的であり,飲食物・ 日用品も,規律・秩序の維持その他管理運営上の支障を及ぼすおそれがない限り,広範囲に自弁のも のの摂取・使用が認められている。書籍等(新聞紙及び雑誌を含む。)の閲覧は,懲罰として書籍等 犯罪者の処遇 の閲覧を停止されている場合のほか,罪証隠滅の結果を生ずるおそれがなく,かつ,刑事施設の規 律・秩序を害する結果を生ずるおそれがない限り許される。面会及び信書の発受は,刑事訴訟法上の 制限があるほか,懲罰として面会及び信書の発受の停止をされている場合,被収容者において負担す べき外国語の翻訳・通訳の費用を負担しない場合,罪証隠滅の結果を生ずるおそれがある場合又は刑 事施設の規律・秩序の維持上やむを得ない場合にも,制限を受けることがある。また,面会は,弁護 人等との場合を除いて,原則として職員が立ち会い,信書の内容については検査が行われる。 なお,被勾留者等は,刑事施設に収容することに代えて留置施設に留置することができるとされて おり(代替収容) ,被勾留者は,起訴前においては留置施設に収容される場合が多い。令和2年度に 留置施設に代替収容された者の一日平均収容人員は,7,557 人であった(法務省矯正局の資料によ る。 ) 。 死刑の判決が確定した者は,その執行に至るまで他の被収容者と分離して刑事施設に拘置される。 死刑確定者の処遇においては,必要に応じ,民間の篤志家の協力を求め,その心情の安定に資すると 認められる助言,講話等を実施している。令和2年末現在,死刑確定者の収容人員は,109 人であっ た(矯正統計年報による。)。 犯罪白書 2021 65

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第6節 官民協働による刑事施設等の整備・運営 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成 11 年法律第 117 号)に基 づき,刑事施設の整備・運営に PFI(Private Finance Initiative)手法(公共施設等の建築,維持管 理,運営等を民間の資金・ノウハウを活用して行う手法)の活用が図られ,現在,美祢社会復帰促進 第4章 成人矯正 センター(収容定員 1,300 人,うち女性 800 人),喜連川社会復帰促進センター(収容定員 2,000 人), 播磨社会復帰促進センター(同 1,000 人) ,島根あさひ社会復帰促進センター(同 2,000 人)が PFI 手法により運営されている。 これらの社会復帰促進センターにおいては,民間のノウハウとアイデアを活用した各種の特色ある プログラムに基づく職業訓練や改善指導を実施している。 このほか,競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成 18 年法律第 51 号)に基づ き,黒羽刑務所,静岡刑務所,笠松刑務所,大阪拘置所,加古川刑務所及び高知刑務所では,刑事施 第6節 設の運営業務の一部の民間委託を行っており,令和3年度末に PFI 手法による事業期間が終了する喜 連川社会復帰促進センター及び播磨社会復帰促進センターについて,4年度から運営業務の一部の民 間委託が行われる。 官民協働による刑事施設等の整備・運営 これらに加えて,矯正研修所,東日本成人矯正医療センター,東日本少年矯正医療・教育センター, 東京西少年鑑別所等が集約されている国際法務総合センターでは,それらの維持管理及び運営業務の 一部について,PFI 手法を活用した民間委託を行っている。 66 令和 3 年版 犯罪白書

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5章 第 1 第2 編 第1節 更生保護 概説 更生保護における処遇 保護観察付全部・一部執行猶予者は,執行猶予の期間中,保護観察に付される。また,受刑者は, 地方更生保護委員会の決定により,刑期の満了前に仮釈放が許されることがあるが,仮釈放者は,仮 釈放の期間中,保護観察に付される。保護観察付一部執行猶予者が仮釈放された場合は,仮釈放期間 中の保護観察が終了した後,執行猶予期間中の保護観察が開始される。保護観察に付された者は,保 護観察所の保護観察官及び民間のボランティアである保護司の指導監督・補導援護を受ける。 犯罪をした者及び非行のある少年に対する更生保護における処遇は,更生保護法に基づいて行われ ている。なお,令和3年5月の少年法の一部改正に伴い,更生保護法の一部改正が行われた(詳細に ついては,本編第1章1項(1)及び第3編第2章第1節4項参照)。 2 更生保護の機関 更生保護の機関には,法務省に置かれている中央更生保護審査会(委員長と委員4人で組織する合 議制の機関) ,高等裁判所の管轄区域ごとに置かれている地方更生保護委員会(3人以上 15 人以内の 委員で組織する合議制の機関)及び地方裁判所の管轄区域ごとに置かれている保護観察所がある。中 央更生保護審査会は,法務大臣への個別恩赦の申出等の権限を有し,地方更生保護委員会は,矯正施 設の長からの申出等に基づき,仮釈放・仮退院の許否を決定するなどの権限を有している。保護観察 所は,保護観察,生活環境の調整,更生緊急保護の実施,犯罪予防活動の促進等の業務を行っている。 1 犯罪者の処遇 第2節 仮釈放等と生活環境の調整 仮釈放等 仮釈放は, 「改悛の状」があり,改善更生が期待できる懲役又は禁錮の受刑者を刑期満了前に仮に 釈放し,仮釈放の期間(残刑期間)が満了するまで保護観察に付することにより,再犯を防止し,そ の改善更生と円滑な社会復帰を促進することを目的とするものであり,その審理は地方更生保護委員 会が行う。 仮釈放は,懲役又は禁錮の受刑者について,有期刑については刑期の3分の1,無期刑については 10 年の法定期間を経過した後,許すことができる。仮釈放を許すかどうかについては,①悔悟の情 及び改善更生の意欲があるかどうか,②再び犯罪をするおそれがないかどうか,③保護観察に付する ことが改善更生のために相当であるかどうかを順に判断し,それらの基準を満たした者について,④ 社会の感情が仮釈放を許すことを是認するかどうかを最終的に確認して判断される。 また,地方更生保護委員会は,保護処分の執行のため少年院に収容されている者について,処遇の 最高段階に達し,仮に退院させることが改善更生のために相当であると認めるとき,その他仮に退院 させることが改善更生のために特に必要であると認めるときは,仮退院を許す。 地方更生保護委員会において,被害者等から申出があったときは,仮釈放等審理において,その意 見等を聴取している(第6編第2章第1節5項参照)。 犯罪白書 2021 67

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(1)仮釈放審理等 仮釈放審理を開始した人員(平成 28 年以降は一部執行猶予者の人員を含む。)は,20 年から減少 傾向にあり,令和2年は1万 1,995 人(前年比 8.3%減)であった。このうち一部執行猶予者の人員 は 1,226 人(同 4.7%減)であった(CD-ROM 資料 2-7 参照)。 令和2年に,仮釈放が許可された人員と許可されなかった人員(仮釈放の申出が取り下げられた者 第5章 更生保護 を除く。 )の合計に占める後者の比率は,3.6%(前年比 0.1pt 上昇)であったところ,このうち一部 執行猶予者について見ると,0.3%であった(CD-ROM 資料 2-7 参照)。 少年院からの仮退院を許可された人員は,平成 15 年以降減少傾向にあり,令和2年は 1,712 人 (前年比 15.2%減)であった(CD-ROM 資料 2-7 参照)。 (2)仮釈放者の人員 出所受刑者(仮釈放,一部執行猶予の実刑部分の刑期終了,又は満期釈放により刑事施設を出所し 第2節 た者に限る。 )の人員及び仮釈放率の推移(昭和 24 年以降)は,2-5-2-1 図のとおりである。仮釈放 率は,平成 17 年から6年連続で低下していたが,23 年に上昇に転じて再び 50%を超え,令和2年 は 59.2%(前年比 0.8pt 上昇)であった。これを男女別に見ると,男性が 57.5%(同 0.5pt 上昇), 仮釈放等と生活環境の調整 女性が 74.0%(同 2.7pt 上昇)であった(CD-ROM 参照)。 2-5-2-1 図 出所受刑者人員・仮釈放率の推移 (昭和24年~令和2年) (千人) 50 令和2年出所受刑者人員 一部執行猶予者(実刑部分の刑期終了者) 288人 満期釈放者 7,440人 仮釈放者(一部執行猶予者) 1,201人 仮釈放者(全部実刑者) 9,994人 40 (%) 100 80 仮釈放率 59.2 30 60 満期 釈放者等 7,728 20 40 仮釈放者 11,195 10 20 0 昭和24 注 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30 令和2 0 1 行刑統計年報及び矯正統計年報による。 2 「一部執行猶予者(実刑部分の刑期終了者) 」及び「仮釈放者(一部執行猶予者) 」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年 から計上している。 3 女性の満期釈放者等及び仮釈放者の人員の推移等については,CD-ROM 参照。 (3)刑の執行率 2-5-2-2 図は,定期刑受刑者の仮釈放許可人員について,刑の執行率(執行すべき刑期に対する出 所までの執行期間の比率)の区分別構成比の推移(平成2年・12 年・22 年・28 年~令和2年)を 見るとともに,同年の同人員の刑の執行率を刑期別に見たものである。 68 令和 3 年版 犯罪白書

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2-5-2-2 図 ① 定期刑の仮釈放許可人員の刑の執行率の区分別構成比の推移等 総数 (平成2年・12年・22年・28年~令和2年) 80 60 24.1 25.7 34.6 33.9 28.2 45.5 40 28.1 20 35.3 33.1 33.9 35.1 47.7 45.5 45.9 45.3 44.3 32.8 24.2 13.2 17.8 7.6 2.2 0 平成2 12 22 (14,932) (13,567) (14,739) ② 33.4 90%以上 90%未満 80%未満 70%未満 第2 編 (%) 100 刑期別 17.9 1.2 19.6 1.3 1.4 18.9 1.9 19.0 1.5 28 29 30 令和元 2 (13,350) (12,965) (12,249) (11,922) (11,194) (令和2年) 0.5 10年を超える 6.5 (184) 92.9 1.1 10 年 以 下 14.2 (2,642) 38.4 46.4 1.5 3 年 以 下 20.6 (3,503) 43.5 34.4 1.9 2 年 以 下 22.5 (3,972) 50.2 25.4 1.3 1 年 以 下 15.9 (893) 80%未満 70%未満 36.2 90%未満 90%以上 1 保護統計年報による。 2 定期刑の仮釈放許可人員のうち,一部執行猶予の実刑部分についての仮釈放許可人員は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上している。 3 一部執行猶予の場合,実刑部分の刑期に基づく。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪者の処遇 注 46.6 (4)無期刑受刑者の仮釈放 2-5-2-3 表は,無期刑の仮釈放許可人員の推移(最近 10 年間)を刑の執行期間別に見たものであ る。 2-5-2-3 表 無期刑仮釈放許可人員の推移(刑の執行期間別) (平成 23 年~令和2年) 刑の執行期間 総 注 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 2年 数 6 4 8 4 11 6 9 10 15 9 20 年 以 内 - - - - - - - - - - 25 年 以 内 - - - - - - - - - - 30 年 以 内 - - - 1 - - - - - - 35 年 以 内 5 4 8 2 11 5 7 10 9 3 35 年 を 超 え る 1 - - 1 - 1 2 - 6 6 1 2 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 無期刑の仮釈放が取り消された後,再度仮釈放を許された者を除く。 犯罪白書 2021 69

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生活環境の調整 2 受刑者の帰住予定地を管轄する保護観察所では,刑事施設から受刑者の身上調査書の送付を受ける などした後,保護観察官又は保護司が引受人等と面接するなどして,帰住予定地の状況を確かめ,住 居,就労先等の生活環境を整えて改善更生に適した環境作りを働き掛ける生活環境の調整を実施して 第5章 更生保護 いる。この結果は,仮釈放審理における資料となるほか,受刑者の社会復帰の基礎となる。 刑の一部執行猶予制度の導入に伴う更生保護法の一部改正により,平成 28 年6月から,保護観察 所が行う生活環境の調整について,地方更生保護委員会が指導・助言・連絡調整を行うこと,受刑者 に対する調査を行うことが可能となり,調整機能の充実化が図られた。また,保護観察付一部執行猶 予者について,猶予期間に先立って仮釈放がない場合,実刑部分の執行から猶予期間中の保護観察へ 円滑に移行できるよう,地方更生保護委員会が,生活環境の調整の結果を踏まえて審理し(住居特定 審理) ,その者が居住すべき住居を釈放前に特定することができるようになった。令和2年に住居特 第2節 定審理を経て住居が特定された者は 217 人(前年比 24 人減)であった(保護統計年報による。)。 令和2年に生活環境の調整を開始した受刑者の人員は,3万 1,340 人(前年比 4.7%減)であり, このうち保護観察付一部執行猶予者の人員は 2,861 人であった(保護統計年報による。)。 仮釈放等と生活環境の調整 高齢者又は障害を有する者で,かつ,適当な帰住先がない受刑者等について,釈放後速やかに,必 要な介護,医療,年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として,特別調 整(本編第4章第3節5項参照)を実施している。具体的には,福祉サービス等を受ける必要がある と認められること,その者が支援を希望していることなどの特別調整の要件を全て満たす矯正施設の 被収容者を矯正施設及び保護観察所が選定し,各都道府県が設置する地域生活定着支援センター(厚 生労働省の地域生活定着促進事業により設置)に依頼して,適当な帰住先の確保を含め,出所後の福 祉サービス等について特別に調整を行っている。特別調整の終結人員(少年を含む。)の推移(統計 の存在する平成 23 年度以降)は,2-5-2-4 図のとおりである。特別調整の終結人員は,24 年度から 増加傾向にあり,令和2年度は 767 人であった(法務省保護局の資料による。)。 2-5-2-4 図 特別調整の終結人員の推移 (平成23年度~ 令和2年度) (人) 1,000 800 767 総数 600 高齢 400 注 70 1 2 3 4 5 令和 3 年版 211 精神障害 104 身体障害 25 法務省保護局の資料による。 本図は,統計の存在する平成 23 年度以降の数値で作成した。 終結人員は,少年を含む。 終結人員は,特別調整の希望の取下げ及び死亡によるものを含む。 内訳は重複計上による。 犯罪白書 311 知的障害 200 0 平成23 370 30 令和2

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第3節 保護観察 保護観察は,保護観察対象者の再犯・再非行を防ぎ,その改善更生を図ることを目的として,その 第2 編 者に通常の社会生活を営ませながら,保護観察官と,法務大臣から委嘱を受けた民間のボランティア である保護司が協働して実施する(事案に応じて,複数の保護観察官又は保護司が担当する場合もあ る。 ) 。保護観察官及び保護司は,面接等の方法により接触を保ち行状を把握することや,遵守事項及 び生活行動指針を守るよう必要な指示,措置を執るなどの指導監督を行い,また,自立した生活がで きるように住居の確保や就職の援助等の補導援護を行う。 保護観察対象者は,家庭裁判所の決定により保護観察に付されている者(保護観察処分少年),少 年院からの仮退院を許されて保護観察に付されている者(少年院仮退院者),仮釈放を許されて保護 観察に付されている者(仮釈放者) ,刑の執行を猶予されて保護観察に付されている者(保護観察付 全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者)及び婦人補導院からの仮退院を許されて保護観察に 付されている者(婦人補導院仮退院者)の5種類である。 保護観察対象者は,保護観察期間中,遵守事項を遵守しなければならず,これに違反した場合に は,仮釈放の取消し等のいわゆる不良措置が執られることがある。遵守事項には,全ての保護観察対 象者が守るべきものとして法律で規定されている一般遵守事項と,個々の保護観察対象者ごとに定め られる特別遵守事項とがあり,特別遵守事項は,主として次の五つの類型,すなわち,①犯罪又は非 行に結び付くおそれのある特定の行動をしないこと,②健全な生活態度を保持するために必要と認め られる特定の行動を実行又は継続すること,③指導監督を行うため事前に把握しておくことが特に重 要と認められる生活上又は身分上の特定の事項について,あらかじめ,保護観察官又は保護司に申告 すること,④特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を受けること(本節2項(2)ウ参照), ⑤社会貢献活動を一定の時間行うこと(本節2項(5)参照)の中から,保護観察対象者の改善更生 のために特に必要と認められる範囲内で具体的に定められる。また,保護観察対象者には,遵守事項 のほか,改善更生に資する生活又は行動の指針となる生活行動指針が定められることがあり,遵守事 項と共に,指導の基準とされる。 犯罪者の処遇 1 保護観察対象者の人員等 (1)保護観察開始人員の推移 2-5-3-1 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 の保護観察開始人員の推移(昭和 24 年以降)並びに全部執行猶予者の保護観察率の推移(32 年以降) を見たものである。なお,仮釈放者,保護観察付一部執行猶予者及び保護観察付全部執行猶予者の保 護観察開始人員は,事件単位の延べ人員である(特に断らない限り,以下この項において同じ。)。 令和2年の保護観察開始人員については,仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者 は前年より減少した(前年比 4.3%減,同 7.1%減)が,仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察 付一部執行猶予者は前年より増加した(同 0.3%増,同 5.4%増)。全部執行猶予者の保護観察率は, 平成 20 年までの低下傾向が,21 年に上昇に転じた後,25 年以降 10.0%が続いていたが,28 年以降 低下し,令和2年は 7.0%と前年より 0.2pt 低下した(一部執行猶予者の保護観察率については CDROM 資料 2-8 参照)。 なお,令和2年には,婦人補導院からの仮退院を許されて保護観察に付された者はいなかった (CD-ROM 資料 2-8 参照)。 犯罪白書 2021 71

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2-5-3-1 図 保護観察開始人員・全部執行猶予者の保護観察率の推移 (昭和 24 年~令和2年) (千人) 50 (%) 25 第5章 更生保護 令和 2 年保護観察開始人員 仮釈放者(一部執行猶予者) 1,201 人 仮釈放者(全部実刑者) 9,994 人 保護観察付一部執行猶予者 1,496 人 保護観察付全部執行猶予者 2,088 人 40 20 30 15 全部執行猶予者 の保護観察率 7.0 20 第3節 10 保護観察 0 昭和24 10 5 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30 令和2 仮釈放者 11,195 保護観察付 全部・一部 執行猶予者 0 3,584 注 1 法務統計年報,保護統計年報及び検察統計年報による。 2 「全部執行猶予者の保護観察率」については,検察統計年報に全部執行猶予者の保護観察の有無が掲載されるようになった昭和 32 年 以降の数値を示した。 3 「仮釈放者(一部執行猶予者)」及び「保護観察付一部執行猶予者」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上して いる。 令和2年末の保護観察対象者の人員は,仮釈放者(全部実刑者)が 3,929 人(前年末比 4.8%減), 仮釈放者(一部執行猶予者)が 320 人(同 11.6%減),保護観察付全部執行猶予者が 7,411 人(同 7.0%減) ,保護観察付一部執行猶予者が 2,688 人(同 25.0%増)であった(保護統計年報による。)。 (2)保護観察対象者の特徴 ア 年齢 2-5-3-2 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 について,令和2年における保護観察開始人員の年齢層別構成比を見たものである。 2-5-3-2 図 ① (令和2年) 仮釈放者 仮 釈 放 者 (全 部 実 刑 者) (9,994) 仮 釈 放 者 (一部執行猶予者) (1,201) ② 保護観察開始人員の年齢層別構成比 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 65 歳以上 13.2 23.7 26.6 25.9 10.6 1.9 7.3 (2,088) 保護観察付 一部執行猶予者 (1,496) 72 39.7 24.6 保護観察付全部・一部執行猶予者 保護観察付 全部執行猶予者 注 26.4 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 65 歳以上 30.9 20.4 19.6 17.3 11.7 20 歳未満 0.1 7.4 2.5 27.5 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察に付された日の年齢による。 3 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 36.7 25.9

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イ 罪名 2-5-3-3 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 について,令和2年における保護観察開始人員の罪名別構成比を見たものである。 保護観察開始人員の罪名別構成比 (令和2年) ① 仮釈放者 ア 全部実刑者 イ 一部執行猶予者 傷 詐 窃 過失運転致死傷等 2.2 強 盗 3.6 道 路 交 通 法 3.7 傷 3.9 害 その他 14.8 害 欺 盗 0.7 0.7 2.5 総数 9,994 人 覚醒剤取締法 91.6 ② 保護観察付全部・一部執行猶予者 ア 全部執行猶予者 イ 一部執行猶予者 詐 欺 傷 害 強制わいせつ 窃 盗 その他 22.7 入 4.5 道 路 交 通 法 4.5 詐 欺 4.9 強 制 わ い せ つ 5.5 住 注 居 侵 総数 2,088 人 傷害 8.1 覚醒剤 取締法 11.4 窃盗 36.2 0.3 0.6 0.7 2.4 その他 4.4 総数 1,496 人 犯罪者の処遇 2.3 4.6 総数 1,201 人 覚醒剤取締法 22.9 火 その他 窃盗 36.0 詐欺 12.9 放 第2 編 2-5-3-3 図 覚醒剤取締法 91.5 保護統計年報による。 犯罪白書 2021 73

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ウ 保護観察期間 2-5-3-4 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 について,令和2年における保護観察開始人員の保護観察期間別構成比を見たものである。 2-5-3-4 図 保護観察開始人員の保護観察期間別構成比 第5章 更生保護 (令和2年) ① 仮釈放者 2年以内 2.2 1月以内 仮 釈 放 者 (全部実刑者) (9,994) 2月以内 3月以内 6月以内 1年以内 19.1 17.1 38.9 19.6 2.8 2年を超える 0.3 0.1 仮 釈 放 者 (一部執行猶予者) 4.8 23.1 (1,201) 第3節 ② 26.6 13.2 0.2 保護観察付全部・一部執行猶予者 保護観察 2年以内 保 護 観 察 付 全部執行猶予者 (2,088) 3年以内 4年以内 5年以内 38.6 36.0 23.9 1.5 1年以内 保 護 観 察 付 一部執行猶予者 (1,496) 注 32.1 0.1 88.6 10.2 1.0 1 保護統計年報による。 2 仮釈放者の「2年を超える」は,無期を含む。 3 ( )内は,実人員である。 エ 居住状況 2-5-3-5 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 について,令和2年における保護観察開始人員の居住状況別構成比を見たものである。 2-5-3-5 図 ① 保護観察開始人員の居住状況別構成比 (令和2年) 仮釈放者 父と同居 配偶者と同居 仮 釈 放 者 ( 全 部 実 刑 者 ) 10.7 (9,994) 仮 釈 放 者 (一部執行猶予者) (1,201) ② (2,088) 保 護 観 察 付 一部執行猶予者 (1,496) 74 3.7 14.2 19.5 4.9 1 2 3 4 5 令和 3 年版 配偶者と同居 18.1 両親と同居 10.2 17.9 保護統計年報による。 保護観察開始時の居住状況による。 「配偶者」は,内縁関係にある者を含む。 「その他」は,居住状況が不詳の者を含む。 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 3.9 4.5 その他 3.4 8.2 雇主宅 2.3 17.0 6.9 22.6 その他の親族と同居 父と同居 14.8 単身居住 34.9 母と同居 両親と同居 12.1 7.3 保護観察付全部・一部執行猶予者 保 護 観 察 付 全部執行猶予者 注 15.3 更生保護施設 その他の親族と同居 13.7 母と同居 16.8 6.9 3.13.5 その他 雇主宅 1.3 3.9 26.7 更生保護施設 単身居住 5.9 16.1 3.1 10.5 10.9 10.7 14.5

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2 保護観察対象者に対する処遇 保護観察対象者の処遇は,原則として,保護観察官と保護司が協働して実施するほか,定期駐在制 第2 編 度(保護観察官が,市町村や公的機関,各更生保護施設等,あらかじめ定められた場所に,毎週又は 毎月等定期的に出張し,保護観察対象者やその家族等関係者との面接等を行うもの)を併せて実施し ている。 (1)段階別処遇の廃止とアセスメントに基づく保護観察の実施 段階別処遇は,保護観察対象者を,改善更生の進度や再犯可能性の程度及び補導援護の必要性等に 応じて4段階に区分し,各段階に応じて保護観察官の関与の程度や接触頻度等を異にする処遇を実施 する制度であったが,保護観察対象者に対して再犯防止のためのより効果的な指導・支援を行うため のアセスメントツールである CFP(Case Formulation in Probation/Parole)を活用したアセスメ ントに基づく保護観察が令和3年1月から実施されたことに伴い,発展的に解消された。 本アセスメントツールは,平成 30 年 10 月から,保護観察所において,保護観察対象者に対して再 犯防止のためのより効果的な指導・支援を行うために試行されていたものであり,家庭,家庭以外の 対人関係,就労就学,物質使用,余暇活動,経済状態,犯罪非行歴等,心理・精神状態の8要因ごと に犯罪や非行に結び付く要因又は改善更生を促進する事項を抽出し,それぞれの事項の相互作用,因 果関係等について分析して図示することなどにより,犯罪や非行に至る過程等を検討するものであ る。今般,再犯リスクの程度の評価や処遇方針の決定に資する情報を的確に把握し,保護観察対象者 に対する一層効果的な処遇を実施するため,アセスメント機能の強化を図るとともに,理論的・実証 的根拠を基盤とするアセスメントに基づく保護観察の実施を徹底することを目的として,全面実施さ れた。アセスメントに基づく保護観察の実施に当たっては,CFP を活用するなどして再犯又は再非 行のリスク等に関するアセスメントを行い,これを踏まえて保護観察対象者を5つの処遇区分のいず れかに編入する。アセスメントの結果,明らかになった介入の対象とすべき要因等について,処遇区 分に応じて保護観察官の関与の程度や接触頻度等を異にする処遇を実施している。 犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 75

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(2)問題性に応じた処遇 ア 類型別処遇 類型別処遇は,保護観察対象者の問題性その他の特性を,その犯罪・非行の態様等によって類型化 して把握し,類型ごとに共通する問題性等に焦点を当てた処遇を実施するものである。令和2年末に おける仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の類型の認定状況は,2-5-3-6 表のとおりであ 第5章 更生保護 る。なお,3年1月,保護観察の実効性を一層高めることを目的として,類型に新たに「ストー し カー」 , 「特殊詐欺」,「嗜癖的窃盗」及び「就学」を加え,「暴力団等」及び「薬物」について認定対 象を拡大するなどしたほか,全体の構造が体系化された。新たに加えられた類型の同年3月 31 日現 在の認定状況を見ると,ストーカー226 人(仮釈放者(全部実刑者)8人,仮釈放者(一部執行猶予 者)0人,保護観察付全部執行猶予者 216 人,保護観察付一部執行猶予者2人),特殊詐欺 504 人 (同 288 人,0人,216 人,0人) ,嗜癖的窃盗 421 人(同 117 人,1人,297 人,6人)及び就学 10 人(同2人,0人,8人,0人)であった(法務省保護局の資料による。なお,特殊詐欺類型に 第3節 ついては第8編第4章第2節参照)。 2-5-3-6 表 保護観察対象者の類型認定状況 保護観察 (令和2年 12 月 31 日現在) 類型 区分 仮 釈 放 者 ギャン シンナー 覚せい剤 暴力団 精 神 家庭内 問題飲酒 暴走族 性犯罪等 高 齢 無職等 ブル等 児 童 配偶者 等乱用 事 犯 関 係 障害等 暴 力 虐 待 暴 力 依 存 12 1,364 482 (0.3) (32.1) (11.3) 74 (1.7) 1 (0.0) 302 527 496 1,293 (7.1) (12.4) (11.7) (30.4) 43 16 (1.0) (0.4) 19 522 (0.4) (12.3) 保護観察付全部・ 一部執行猶予者 注 保護観察付全部 執行猶予者 (0.3) (13.1) (10.6) 保護観察付一部 執行猶予者 (0.6) (88.2) (13.6) 21 15 971 2,372 789 365 91 (1.2) 72 (2.7) 1 1,094 1,198 (0.0) (14.8) (16.2) - 57 469 (2.1) (17.4) 715 1,305 (9.6) (17.6) 64 317 105 118 398 (4.3) (1.4) (1.6) (5.4) 348 (2.4) (12.9) 11 (0.4) 2 (0.1) 7 (0.3) 45 (1.7) 1 保護統計年報及び法務省保護局の資料による。 2 複数の類型に認定されている者については,該当する全ての類型について計上している。 3 ( )内は,令和2年 12 月 31 日現在,保護観察中の仮釈放者,保護観察付全部執行猶予者又は保護観察付一部執行猶予者の各総数 (類型が認定されていない者を含む。)のうち,各類型に認定された者の占める比率である。 イ 特定暴力対象者等に対する処遇 仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者のうち,暴力的犯罪を繰り返してきた者で,シン ナー等乱用,覚せい剤事犯,問題飲酒,暴力団関係,精神障害等,家庭内暴力のいずれかの類型に認 定された者,及び極めて重大な暴力的犯罪をした者等を,処遇上特に注意を要する者として特定暴力 対象者と認定している(なお,令和3年1月から,類型が児童虐待,配偶者暴力,家庭内暴力,ス トーカー,暴力団等,精神障害,薬物,アルコールに変更された。)。特定暴力対象者として認定され た者については,保護観察官が積極的に対象者やその家族と面接するなどして,生活状況を的確に把 握することに努めるなど,処遇の充実強化が図られている。2年に特定暴力対象者として認定された 人員(受理人員)は,仮釈放者(全部実刑者)が 199 人,仮釈放者(一部執行猶予者)が3人,保 護観察付全部執行猶予者が 43 人,保護観察付一部執行猶予者が5人であった(法務省保護局の資料 による。 ) 。 このほか,保護観察所と警察との間において,ストーカー行為等に係る仮釈放者及び保護観察付全 部・一部執行猶予者について,保護観察実施上の特別遵守事項及びそれぞれが把握した当該対象者の 問題行動等の情報を共有し,再犯を防止するための連携強化を図っている。 76 令和 3 年版 犯罪白書

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ウ 専門的処遇プログラム ある種の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対しては,指導監督の一環として,その傾向を改善 するために,心理学等の専門的知識に基づき,認知行動療法(自己の思考(認知)のゆがみを認識さ 第2 編 せて行動パターンの変容を促す心理療法)を理論的基盤とし,体系化された手順による処遇を行う専 門的処遇プログラムが実施されている。 専門的処遇プログラムとしては,性犯罪者処遇プログラム,薬物再乱用防止プログラム,暴力防止 プログラム及び飲酒運転防止プログラムの4種があり,その処遇を受けることを特別遵守事項として 義務付けて実施している。 性犯罪者処遇プログラムは,自己の性的欲求を満たすことを目的とする犯罪に当たる行為を反復す る傾向を有する者に対し,性犯罪に結び付くおそれのある認知の偏り,自己統制力の不足等の自己の 問題性について理解させるとともに,再び性犯罪をしないようにするための具体的な方法を習得さ せ,前記傾向を改善するものであり,コア・プログラムを中核として,導入プログラム,指導強化プ ログラム及び家族プログラムを内容とする。このうちコア・プログラムを受けることを特別遵守事項 として義務付けている。 薬物再乱用防止プログラムは,依存性薬物(規制薬物等(薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の 一部の執行猶予に関する法律2条1項に規定する規制薬物等),指定薬物(医薬品医療機器等法2条 15 項に規定する指定薬物)及び危険ドラッグ(その形状,包装,名称,販売方法,商品種別等に照 らして,過去に指定薬物が検出された物品と類似性があり,指定薬物と同等以上に精神毒性を有する 蓋然性が高い物である疑いのある物品)をいう。以下ウにおいて同じ。)の使用を反復する傾向を有 する者に対し,依存性薬物の悪影響と依存性を認識させ,依存性薬物を乱用するに至った自己の問題 性について理解させるとともに,再び依存性薬物を乱用しないようにするための具体的な方法を習得 させ,実践させるものであり,コアプログラム,コアプログラムの内容を定着・応用又は実践させる ためのステップアッププログラム及び簡易薬物検出検査を内容とする。なお,薬物使用等の罪を犯し た者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律の規定により保護観察に付された者については,原則 として,薬物再乱用防止プログラムを受けることを猶予期間中の保護観察における特別遵守事項とし て定めている。 犯罪者の処遇 暴力防止プログラムは,身体に対する有形力の行使により,他人の生命又は身体の安全を害する犯 罪に当たる行為を反復する傾向を有する者に対し,怒りや暴力につながりやすい考え方の変容や暴力 の防止に必要な知識の習得を促すとともに,同種の再犯をしないようにするための具体的な方法を習 得させ,前記傾向を改善するものである。なお,令和元年 10 月から,児童に対する虐待行為をした 者について,暴力防止プログラムの対象者には当たらない場合であっても,その問題性に適合し,か つ改善更生に資する処遇を行うことを目的として,同プログラム(児童虐待防止版)が試行されてい る。 飲酒運転防止プログラムは,飲酒運転を反復する傾向を有する者に対し,アルコールが心身及び自 動車等の運転に与える影響を認識させ,飲酒運転に結び付く自己の問題性について理解させるととも に,再び飲酒運転をしないようにするための具体的な方法を習得させ,前記傾向を改善するものであ る。 これらの専門的処遇プログラムは,特別遵守事項として義務付けて実施する以外に,必要に応じて 生活行動指針として定めるなどして実施することもある。専門的処遇プログラムによる処遇の開始人 員の推移(最近 10 年間)は,2-5-3-7 図のとおりである。 犯罪白書 2021 77

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2-5-3-7 図 ① 専門的処遇プログラムによる処遇の開始人員の推移 性犯罪者処遇プログラム ② (人) 700 第5章 更生保護 1,797 1,705 1,800 1,600 16 1,400 510 500 1,155 494 1,200 400 281 300 200 1,000 25 800 256 600 第3節 0 平成 23 25 30 1,407 642 400 100 200 0 平成 23 令和 2 暴力防止プログラム ④ 保護観察 (人) 200 298 25 30 令和 2 飲酒運転防止プログラム (人) 300 153 150 6 147 107 100 4 250 200 173 150 3 170 100 50 103 0 平成 23 25 30 令和 2 仮釈放者(一部執行猶予者) 仮釈放者(全部実刑者) 注 (平成 23 年~令和2年) (人) 2,000 600 ③ 薬物再乱用防止プログラム 54 50 0 平成 23 3 51 25 30 令和 2 保護観察付一部執行猶予者 保護観察付全部執行猶予者 1 法務省保護局の資料による。 2 「薬物再乱用防止プログラム」については,平成 23 年から 28 年5月までは,「覚せい剤事犯者処遇プログラム」による処遇の開始人 員を計上している。 3 「暴力防止プログラム」及び「飲酒運転防止プログラム」については,プログラムによる処遇を特別遵守事項によらずに受けた者を 含む。 4 「仮釈放者(一部執行猶予者)」及び「保護観察付一部執行猶予者」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上して いる。 5 仮釈放期間満了後,一部執行猶予期間を開始した保護観察付一部執行猶予者については,「仮釈放者(一部執行猶予者) 」及び「保護 観察付一部執行猶予者」の両方に計上している。 エ しょく罪指導プログラム 自己の犯罪により被害者を死亡させ,又は重大な傷害を負わせた保護観察対象者には,しょく罪指 導プログラムによる処遇を行うとともに,被害者等の意向にも配慮して,誠実に慰謝等の措置に努め るように指導している。令和2年にしょく罪指導プログラムの実施が終了した人員は,390 人であっ た(法務省保護局の資料による。)。 なお,平成 25 年4月から,法テラス(本編第1章2項及び第6編第2章第1節7項参照)と連携 し,一定の条件に該当する保護観察対象者が被害弁償等を行うに当たっての法的支援に関する手続が 実施されている(令和2年度までの処理件数は 27 件であった(法テラスの資料による。)。)。 78 令和 3 年版 犯罪白書

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(3)中間処遇制度 無期刑又は長期刑の仮釈放者は,段階的に社会復帰させることが適当な場合があるため,本人の意 向も踏まえ,必要に応じ,仮釈放後1か月間,更生保護施設で生活させて指導員による生活指導等を 第2 編 受けさせる中間処遇を行っており,令和2年は 64 人に対して実施した(法務省保護局の資料によ る。 ) 。 (4)就労支援 出所受刑者等の社会復帰には,就労による生活基盤の安定が重要な意味を持つため,従来から保護 観察の処遇において就労指導に重きを置いているが,法務省は,厚生労働省と連携し,出所受刑者等 の就労の確保に向けて,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施している(本章第6節4項(3) 参照) 。また,令和2年度は,保護観察所 22 庁が更生保護就労支援事業を実施しており,このうち3 庁での事業は更生保護被災地域就労支援対策強化事業と位置付けられている(法務省保護局の資料に よる。 ) 。 なお,令和2年度に刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施した保護観察所において,就職活動 支援が終了した者は延べ 2,891 人であり,そのうち延べ 2,038 人(70.5%)が就職に至っている(法 務省保護局の資料による。)。 (5)社会貢献活動 かん 保護観察対象者による社会貢献活動は,自己有用感の涵養,規範意識や社会性の向上を図るため, 公共の場所での清掃活動や,福祉施設での介護補助活動といった地域社会の利益の増進に寄与する社 会的活動を継続的に行うことを内容とするものである。活動の実施においては,他者とコミュニケー ションを図ることによって処遇効果が上がることを期待し,更生保護女性会員や BBS 会員等の協力 者を得て行われることが多い。令和元年に実施要領が改訂され,実施回数や対象者の選定がより柔軟 に行われるようになった。 令和3年3月 31 日現在,活動場所として 2,059 か所(うち,福祉施設 1,029 か所,公共の場所 800 か所)が登録されており,2年度は,379 回(前年比 663 回減)実施され,延べ 665 人(同 犯罪者の処遇 1,113 人減)が参加した。その内訳は,保護観察処分少年 353 人,少年院仮退院者 43 人,仮釈放者 94 人,保護観察付全部・一部執行猶予者 175 人であった(法務省保護局の資料による。)。なお,実 施回数及び参加人員の減少は,新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から期日の延期等,活動 計画が変更された影響が考えられる。 (6)自立更生促進センター 親族等や民間の更生保護施設では円滑な社会復帰のために必要な環境を整えることができない仮釈 放者,少年院仮退院者等を対象とし,保護観察所に併設した宿泊施設に宿泊させながら,保護観察官 による濃密な指導監督や充実した就労支援を行うことで,対象者の再犯防止と自立を図ることを目的 に設立された国立の施設を自立更生促進センターといい ,全国に四つの施設がある。北九州自立更 生促進センター(平成 21 年6月開所,定員男性 14 人)及び福島自立更生促進センター(22 年8月 開所,定員男性 20 人)は,仮釈放者等を対象とし,犯罪傾向等の問題性に応じた重点的・専門的な 処遇を行っている。自立更生促進センターのうち,主として農業の職業訓練を実施する施設を就業支 援センターといい,少年院仮退院者等を対象とする北海道の沼田町就業支援センター(19 年 10 月開 所,定員男性 12 人) ,仮釈放者等を対象とする茨城就業支援センター(21 年9月開所,定員男性 12 人)が,それぞれ運営されている。各施設における開所の日から令和3年3月 31 日までの入所人員 は,北九州自立更生促進センターが 325 人,福島自立更生促進センターが 142 人,沼田町就業支援 センターが 78 人,茨城就業支援センターが 177 人である(法務省保護局の資料による。)。 犯罪白書 2021 79

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(7)その他 ア 薬物事犯者に対する処遇 薬物事犯者の保護観察対象者に対し,薬物依存に関する専門的な知見に基づき,薬物依存に関する 専門的な処遇を集中して行うことにより,効果的な保護観察を実施するため,令和3年4月1日現 在,28 庁の保護観察所において薬物処遇ユニットが設置されている(法務省保護局の資料による。)。 第5章 更生保護 なお,同ユニットが設置されていない保護観察所においても,同ユニットに準じて,薬物事犯者に係 る処遇体制が整備されている。 (ア) 自発的意思に基づく簡易薬物検出検査 依存性薬物の所持・使用により保護観察に付された者であって,薬物再乱用防止プログラム(本項 (2)ウ参照)に基づく指導が義務付けられず,又はその指導を受け終わった者等に対し,必要に応 じて,断薬意志の維持等を図るために,その者の自発的意思に基づいて簡易薬物検出検査を実施する 第3節 ことがある。令和2年における実施件数は 5,475 件であった(法務省保護局の資料による。) 。 (イ) 他機関等との連携による地域での薬物事犯者処遇 保護観察 保護観察所は,依存性薬物に対する依存がある保護観察対象者等について,民間の薬物依存症リハ ビリテーション施設等に委託し,依存性薬物の使用経験のある者のグループミーティングにおいて, 当該依存に至った自己の問題性について理解を深めるとともに,依存性薬物に対する依存の影響を受 けた生活習慣等を改善する方法を習得することを内容とする,薬物依存回復訓練を実施している。令 和2年度に同訓練を委託した施設数は 40 施設であり(前年比 18 施設減),委託した実人員は,504 人(同 83 人減)であった(法務省保護局の資料による。)。 また,保護観察所は,規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者の改善更生を図るための指導 監督(本節参照)の方法として,医療・援助を受けることの指示等(通院等指示)を行っているとこ ろ,一定の要件を満たした者について,コアプログラムの開始を延期若しくは一部免除し,又はス テップアッププログラムの開始を延期若しくは一時的に実施しないことができる。令和2年におい て,コアプログラムの開始を延期した件数は 95 件,ステップアッププログラムを一時的に実施しな いこととした件数は 120 件であった(法務省保護局の資料による。)。 さらに,薬物犯罪の保護観察対象者が,保護観察終了後も薬物依存からの回復のための必要な支援 を受けられるよう,保護観察の終了までに,精神保健福祉センター等が行う薬物依存からの回復プロ グラムや薬物依存症リハビリテーション施設等におけるグループミーティング等の支援につなげるな どしている。令和2年度において,保健医療機関等による治療・支援を受けた者は 613 人であった (法務省保護局の資料による。)。 イ 窃盗事犯者に対する処遇 し 窃盗事犯者は,保護観察対象者の多くを占め,再犯率が高いことから,嗜癖的な窃盗事犯者に対し ては,その問題性に応じ,令和2年3月から,「窃盗事犯者指導ワークブック」や自立更生促進セン ターが作成した処遇プログラムを活用して保護観察を実施している(女性の保護観察対象者のうち, 窃盗事犯者に対する処遇については,第4編第7章第2節3項参照)。 80 令和 3 年版 犯罪白書

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3 保護観察対象者に対する措置等 (1)良好措置 第2 編 保護観察対象者が健全な生活態度を保持し,善良な社会の一員として自立し,改善更生することが できると認められる場合に執られる措置として,不定期刑の仮釈放者について刑の執行を受け終わっ たものとする不定期刑終了及び保護観察付全部・一部執行猶予者について保護観察を仮に解除する仮 解除がある(少年の保護観察対象者に対する良好措置については,第3編第2章第5節4項(1)参 照) 。令和2年に,不定期刑終了が決定した仮釈放者はなく,仮解除が決定した保護観察付全部執行 猶予者は 61 人,保護観察付一部執行猶予者は 15 人であった(保護統計年報による。)。 (2)不良措置 保護観察対象者に遵守事項違反又は再犯等があった場合に執られる措置として,仮釈放者に対する 仮釈放の取消し,保護観察付全部・一部執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消し及び婦人 補導院仮退院者に対する婦人補導院に再収容する仮退院の取消しがある(少年の保護観察対象者に対 する不良措置については,第3編第2章第5節4項(2)参照)。 保護観察対象者が出頭の命令に応じない場合等には,保護観察所の長は,裁判官が発する引致状に より引致することができ,さらに,引致された者のうち,仮釈放者及び少年院仮退院者については地 方更生保護委員会が,保護観察付全部・一部執行猶予者については保護観察所の長が,それぞれ一定 の期間留置することもできる。令和2年中に引致された者(保護観察処分少年及び少年院仮退院者を 含む。 )は 220 人で,そのうち留置された者は 206 人であった(保護統計年報による。)。 なお,所在不明になった仮釈放者については,刑期の進行を止める保護観察の停止をすることがで きるところ,令和2年にこの措置が決定した仮釈放者は 202 人であった(保護統計年報による。)。 また,所在不明となった仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の所在を迅速に発見するため に,保護観察所の長は,警察からその所在に関する情報の提供を受けているが,平成 17 年 12 月から の試行期間を含め令和3年3月 31 日までの間に,この情報提供により 3,406 人(仮釈放者 2,064 人, 保護観察付全部執行猶予者 1,322 人,保護観察付一部執行猶予者 20 人),当該情報提供によらない保 犯罪者の処遇 護観察所の調査により 1,854 人(同 748 人,1,094 人,12 人)の所在が,それぞれ判明した(法務 省保護局の資料による。)。 4 保護観察の終了 2-5-3-8 図は,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者 について,令和2年における保護観察終了人員の終了事由別構成比を見たものである。仮釈放者のう ち,一部執行猶予者 1,243 人については,1,205 人が仮釈放の期間を満了し,うち 1,204 人が引き続 き保護観察付一部執行猶予者として保護観察を開始し,38 人が仮釈放の取消しで終了した。一方, 保護観察付一部執行猶予者で執行猶予の期間を満了して保護観察を終了した者は 623 人で,刑の執 行猶予の言渡しの取消しで終了した者は 321 人であった(CD-ROM 参照)。なお,刑の一部執行猶 予制度の開始から経過した期間が短いため,執行猶予の期間満了に至っていない者がいることに留意 する必要がある。 取消しで保護観察が終了した者の割合について見ると,仮釈放者(仮釈放の取消し)よりも保護観 察付全部執行猶予者(刑の執行猶予の言渡しの取消し)の方が著しく高い。しかしながら,仮釈放者 では,保護観察期間が6月以内である者が4分の3以上を占めている一方,保護観察付全部執行猶予 者では,2年を超えて長期間にわたる者がほとんどである(2-5-3-4 図 CD-ROM 参照)という保護 観察期間の違いに留意する必要がある。 犯罪白書 2021 81

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2-5-3-8 図 保護観察終了人員の終了事由別構成比 (令和2年) ① 仮釈放者 第5章 更生保護 仮 釈 放 者 (全部実刑者) 95.2 (10,194) 96.9 (1,243) 3.1 保護観察付全部・一部執行猶予者 保 護 観 察 付 全部執行猶予者 期間満了 刑の執行猶予の取消し 74.6 22.2 第3節 (2,644) その他 3.2 保護観察 保 護 観 察 付 一部執行猶予者 64.9 (960) 注 4.5 その他 0.3 仮 釈 放 者 ( 一部執行猶予者) ② 仮釈放の取消し 期間満了 33.4 1.7 1 保護統計年報による。 2 仮釈放者の「その他」は,不定期刑終了,保護観察停止中時効完成及び死亡等であり,保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一 部執行猶予者の「その他」は,死亡等である。 3 ( )内は,実人員である。 コラム2 新型コロナウイルス感染症の感染拡大下での更生保護 更生保護は,犯罪や非行をした人を社会の中で適切に処遇し,その再犯を防ぎ,自立更生 を助けることで安全・安心な社会を築くことを目的としている。このコラムでは,新型コロ ナウイルス感染症が感染拡大していった中で,更生保護がどのように実施されてきたのか, 実際の取組例を通して紹介する。 保護観察は,保護観察官や保護司が保護観察対象者との面接等を行い,生活状況等を把握 し,指導監督や補導援護を実施する社会内処遇であるが,新型コロナウイルス感染症の感染 拡大下という状況において,保護観察対象者との接触を通じて同感染症の感染拡大につなが るリスクが懸念される中で,感染症対策を図りながら,保護観察対象者の改善更生や再犯防 止のために適正に業務を継続していくことが課題となった。大阪保護観察所では,令和2年 4月に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)が発令され たことに伴い,感染症対策として,保護観察官が行う個別の面接については延期や代替手段 も検討し,保護司については電話等の代替手段による面接を行うこととした。また,同保護 観察所では,集団処遇により実施してきた薬物再乱用防止プログラムや性犯罪者処遇プログ ラムの専門的処遇プログラム(同保護観察所堺支部については,一部のプログラムのみで集 団処遇を実施)を延期することとした。それでも,保護観察開始後の最初の面接のほか,遵 守事項違反のおそれがあると認められるときなど,保護観察所として介入する必要性・緊急 性が高いとみられる場合等には,十分な感染症対策をとった上で保護観察官が対面での面接 を行ったり,専門的処遇プログラムについても個別処遇に替えて実施したりするなど,再 犯・再非行を防止するための措置を講じてきた。保護司も,生活状況等に不安定な様子が見 られた保護観察対象者に対しては,連日のように電話で連絡を取りながら必要な指導や助言 を行ったケースもあり,対面で面接できない点を補うよう工夫をしながら処遇したという。 82 令和 3 年版 犯罪白書

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令和2年5月に前記緊急事態宣言が解除されてからは,保護観察官による対面での面接や 専門的処遇プログラムにおける集団処遇を徐々に再開するとともに,保護司による対面での 第2 編 面接についても再開していった。その一方で,緊急事態宣言が再び発令されるなど,感染症 対策の必要性がより高まったと考えられる時期には,専門的処遇プログラムを個別処遇によ り実施したり,保護司の面接を電話等で実施したりするなど,状況に応じた柔軟な対応を とっている。大阪保護観察所は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が長期化する ことが予想されたことから,庁として業務全般に関する感染症対策に係る方針を策定し,同 方針に基づいて業務の遂行に当たっている。保護司に対しても,感染症対策を踏まえた保護 観察処遇の方法等について文書による確実な情報共有を図っており,面接前にはチェック シートにより保護観察対象者に体調等を確認してもらうようにしているほか,保護司自身や その家族に体調等への不安があり,一定期間面接が困難である場合には,保護観察官が保護 司と協議した上で,保護観察官による面接を実施するなどし,保護司との協働による保護観 察処遇が適切に行われるよう対策を講じている。同保護観察所によると,同方針を策定以降, 常に感染症対策を念頭に置いた処遇を行ってきたが,今後も,同感染症の感染拡大という状 況に対応しながら,安全・安心な社会を実現するために,保護観察処遇を適切に実施してい くことが何よりも重要であると考えているという。 津市にある更生保護施設三重県保護会は,住居や頼るべき人がないなどの理由で直ちに自 立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を受け入れ,宿泊や食事の供与,就 労や退所先の確保の支援等を行う更生保護施設である。定員は男性 20 人で,県外の刑事施設 からの仮釈放者も多く受け入れている。令和2年4月に緊急事態宣言が発令された当初は, 県外から帰住する者を受け入れることが新型コロナウイルス感染症の感染拡大につながって しまうのではという不安も生じたというが,事前に入所予定者が在所している刑事施設と連 絡をとり,入所予定者に注意事項を伝えてもらったり,入所後一定期間は毎日の検温を実施 したりするなどの感染症対策をとることで受入れを中止することはなかった。 三重県保護会は,津保護観察所の助言等も受けながら,様々な感染症対策を講じており, 犯罪者の処遇 入所者に対しても,施設内や外出時に感染症対策を励行することを,入所時に加え,集会等 の機会も利用して定期的に注意喚起を図っている。更生保護施設では,入所者一人一人が円 滑に自立できるよう,日頃から生活状況を見守りながら,社会復帰に向けた助言や指導を 行っており,三重県保護会でも,職員が感染症対策を徹底しながら,施設に常駐し,業務に 当たっている。万が一職員が新型コロナウイルス感染症にり患し,その他の職員も自宅待機 を余儀なくされるなど,施設の運営に支障が生じる場合等を想定し,津保護観察所の職員が 代替で職務に当たれるような対応策を講じており,同保護観察所とは,日頃から具体的な業 務の内容や進め方等を共有し,連携体制を構築している。このように,可能な限りの対策を 講じながら,更生保護施設としての使命を果たすべく取り組んでいる。三重県保護会による と,入所者は従来と変わりなく,落ち着いて生活を送ることができており,これからも,同 感染症の感染拡大という状況に対応しながら,県内唯一の更生保護施設として,一人でも多 くの者の自立更生を支えられるよう,地道に取り組みたいと考えているという。 更生保護においては,保護観察対象者の処遇だけでなく,犯罪や非行を防止するとともに, 犯罪や非行をした人の立ち直りに理解を求めるための犯罪予防活動が各地域で取り組まれて いる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大という状況においても,毎年7月を強調月間とし て行われる「社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」 (本章第6節6項参照)では,同活動の一環として非接触型の広報が各地で展開された。また, 犯罪白書 2021 83

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更生保護の民間ボランティア団体である更生保護女性会(同節4項(1)参照)や BBS 会(同 項(2)参照)の活動においても,新たな取組が模索され,実施されている。 札幌更生保護女性連盟では,様々な活動が中止や延期を余儀なくされる中,札幌刑務所か ら「出所者に渡すマスクの調達に苦慮しているので,マスクを作ってもらえないか。」との要 第5章 更生保護 請を受けたことから,マスクの材料が品薄な中,会員がガーゼ等を調達し,数日間で 450 枚 ものマスクを作り,寄贈する取組を行った。刑務所や出所者からは大変感謝され,その後も 手作りマスクを更生保護施設にも配布するなど,最終的に 1,200 枚ものマスクを寄贈し,同 感染症の感染拡大下においても更生保護女性会としての活動に取り組んだ。 また,兵庫県の西宮地区 BBS 会では,令和2年4月からオンラインを取り入れた活動を始 め,同会の毎月の定例会もオンラインで開催した結果,これまでは参加が難しかった保護司 の参加も得ることができ,これまで以上に顔の見える関係を築くきっかけになった。定例会 第4節 のオンライン化により保護司とのコミュニケーションの機会が増えたことで,保護司の側か ら保護観察対象者の学習支援の提案があり,その後,週1回会員が学習支援を行う「ともだ ち活動」につながったこともあった。また,他地区の BBS 会とのオンラインでの研修会の実 応急の救護・更生緊急保護の措置等 施のほか,これまでは実施が困難となっていたグループワークをオンラインで行うことを試 みた。グループワークに参加した少年もレクリエーションが「楽しかった。」と感想を述べる など,会員にとって自信を深める活動となったといい,新たな日常に対応した活動を模索す ることで,BBS 会としての活動に広がりを見いだしている。 更生保護は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大下という困難な状況においても,安 全・安心な地域社会を構築していくために欠かすことができない重要な取組である。保護観 察所や,保護司,更生保護施設等の民間ボランティアや団体は,それぞれの使命を果たそう と,感染症対策を十分に講じ,創意工夫しながら取り組み続けている。 テーブルの席を半減させ,パーティションを設置するなどした更生保護施設三重県保護会の食堂の様子 【写真提供:津保護観察所】 第4節 応急の救護・更生緊急保護の措置等 保護観察所では,保護観察対象者が,適切な医療,食事,住居その他の健全な社会生活を営むため に必要な手段を得ることができないため,その改善更生が妨げられるおそれがある場合は,医療機 関,福祉機関等から必要な援助を得るように助言・調整を行っているが,その援助が直ちに得られな いなどの場合,保護観察対象者に対して,食事,衣料,旅費等を給与若しくは貸与し,又は宿泊場所 等の供与を更生保護施設に委託するなどの緊急の措置(応急の救護)を講じている。 また,満期釈放者,保護観察に付されない全部又は一部執行猶予者,起訴猶予者,罰金又は科料の 84 令和 3 年版 犯罪白書

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言渡しを受けた者,労役場出場者,少年院退院者・仮退院期間満了者等に対しても,その者の申出に 基づいて,応急の救護と同様の措置である更生緊急保護の措置を講じている。更生緊急保護は,刑事 上の手続等による身体の拘束を解かれた後6月を超えない範囲内(特に必要があると認められるとき 第2 編 は,更に6月を超えない範囲内)において行うことができる。 2-5-4-1 表は,令和2年における応急の救護等(補導援護としての措置を含む。以下この章におい て同じ。 )及び更生緊急保護の措置の実施状況を見たものである。 2-5-4-1 表 ① 応急の救護等・更生緊急保護の措置の実施状況 (令和2年) 応急の救護等 保護観察所において直接行う保護 主 対象者の種類 総 仮 釈 全 ② 部 放 実 総 数 宿 な 措 置 別 人 員 一時保護 事業を営 泊 食事給与 衣料給与 医療援助 旅費給与 む者への あっせん 更生保護施設等 へ 宿 泊 を 伴 う 保 護 の 委 託 数 4,883 24 204 550 2 77 656 6,227 (564) 者 4,221 18 119 484 2 31 321 5,146 (240) 刑 3,955 18 115 455 1 29 297 4,774 (195) 一部執行猶予 266 - 4 29 1 2 24 372 (45) 保護観察付全部・ 一部執行猶予者 425 - 54 35 - 28 212 732 (202) 一部執行猶予 170 - 20 13 - 10 72 414 (94) 全部執行猶予 255 - 34 22 - 18 140 318 (108) 保護観察処分少年 92 1 10 3 - 9 56 107 (51) 少年院仮退院者 145 5 21 28 - 9 67 242 (71) 更生緊急保護 保護観察所において直接行う保護 総 注 総 数 宿 な 措 置 別 人 員 一時保護 事業を営 泊 食事給与 衣料給与 医療援助 旅費給与 む者への あっせん 更生保護施設等 へ 宿 泊 を 伴 う 保 護 の 委 託 数 5,577 11 239 661 5 333 1,847 全部実刑の刑の 執 行 終 了 3,637 11 108 228 2 159 621 2,795 (605) 全 部 執 行 猶 予 687 - 51 151 2 62 432 669 (221) 一 部 執 行 猶 予 10 - - - - - - - 4,595 (1,204) 起 訴 猶 予 781 - 58 193 - 76 513 734 (238) 罰 金・科 料 347 - 19 67 1 32 240 282 (96) 労役場出場・仮出場 102 - 3 22 - 4 39 85 (33) 少 年 院 退 院・ 仮退院期間満了 13 - - - - - 2 30 (11) 1 2 3 4 5 6 犯罪者の処遇 主 対象者の種類 保護統計年報による。 「主な措置別人員」は,1人について2以上の保護の措置を実施した場合は,実施した保護の措置別にそれぞれ計上している。 「更生保護施設等へ宿泊を伴う保護の委託」は,前年から委託中の人員を含む。 ( )内は,自立準備ホーム等の更生保護施設以外への委託であり,内数である。 「応急の救護等」は,補導援護としての措置を含む。 婦人補導院仮退院,刑の執行停止,刑の執行免除及び補導処分終了による対象者は,令和2年はいなかった。 犯罪白書 2021 85

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起訴猶予者については,その再犯防止に資するため,平成 27 年度から,全国の保護観察所におい て,検察庁と連携の上,特に支援の必要性が高い者に対し,継続的かつ重点的に生活指導等を行った 上で福祉サービスの調整や就労支援等を行う「起訴猶予者に係る更生緊急保護の重点実施等の試行」 が実施されてきた。30 年度からは,高齢又は障害のある更生緊急保護対象者等に対する支援等に特 化した業務を行う特別支援ユニットが設置された保護観察所において,高齢又は障害により福祉サー 第5章 更生保護 ビス等を必要とする保護観察に付されない全部執行猶予者,起訴猶予者,罰金又は科料の言渡しを受 けた者等を対象として,本人の希望に基づき,検察庁(起訴猶予者及び略式命令により罰金又は科料 の言渡しを受けた者に限る。 )や地方公共団体等と連携しながら,更生緊急保護の措置として福祉的 な支援を実施する「保護観察所が行う入口支援」が開始された。令和2年度に実施された入口支援の 対象者の人員は 44 人であり,このうち 41 人については,検察庁との事前協議が行われている。入口 支援の内容は,更生保護施設又は自立準備ホームへの入所支援 35 人,生活保護申請支援 17 人,帰住 援助4人,医療支援9人,障害者福祉に係るサービスの利用支援4人等であった(法務省保護局の資 第5節 料による。 ) 。 令和3年度からは,各都道府県が設置する地域生活定着支援センター(厚生労働省の地域生活定着 促進事業により設置。本章第2節2項参照)により,高齢又は障害のある被疑者・被告人の福祉サー 恩赦 ビス等の利用調整や釈放後の継続的な援助等を行う「被疑者等支援業務」が実施されることとなった ことを踏まえ,更生緊急保護の重点実施等の枠組みについて見直しを行い,全国の保護観察所におい て,更生緊急保護の措置として社会復帰支援をすることが適当である保護観察に付されない全部執行 猶予者,起訴猶予者,罰金又は科料の言渡しを受けた者等を対象として,検察庁等と連携した「起訴 猶予者等に係る更生緊急保護の重点実施等」を行い,その枠組みにおいて,高齢又は障害により福祉 サービス等を必要とする者については,本人が支援を希望する場合に,地域生活定着支援センターと 連携した支援を実施している。 また,満期釈放者等については,令和元年 12 月に決定された「再犯防止推進計画加速化プラン~ 満期釈放者対策を始めとした “ 息の長い ” 支援の充実に向けて~」(第5編第1章第3項参照)におい て, 「令和4年までに,満期釈放者の2年以内再入者数を2割以上減少させる」という成果目標が掲 げられたことを踏まえ,満期釈放者対策の充実強化に向けて,更生保護施設等による受入れ促進,更 生保護施設による退所者へのフォローアップ事業(本章第6節2項参照)等の取組を進めている。こ うした満期釈放者対策を一層推進するため,3年度から,特別支援ユニットを廃止して,保護観察所 15 庁に社会復帰対策官を配置し,これらの庁では新設した社会復帰対策班の下,関係機関等と連携 するなどして,帰住先の確保や地域への定住等に困難が見込まれる矯正施設被収容者に対して,生活 環境の調整から出所後の保護観察や更生緊急保護の措置の実施まで一貫して関与し,効果的な社会復 帰支援を行っている(法務省保護局の資料による。)。同班が設置されていない庁においても,帰住先 の確保等の調整が特に必要であると認められる者に対する継続的な支援を行う処遇体制を構築してい る。 第5節 恩赦 恩赦は,憲法及び恩赦法(昭和 22 年法律第 20 号)の定めに基づき,内閣の決定によって,刑罰権 を消滅させ,又は裁判の内容・効力を変更若しくは消滅させる制度であり,大赦,特赦,減刑,刑の 執行の免除及び復権の5種類がある。恩赦を行う方法については,恩赦法において,政令で一定の要 件を定めて一律に行われる政令恩赦と,特定の者について個別に恩赦を相当とするか否かを審査する 個別恩赦の2種類が定められている。また,個別恩赦には,常時行われる常時恩赦と,内閣の定める 基準により一定の期間を限って行われる特別基準恩赦とがある。個別恩赦の審査は,中央更生保護審 査会が行っている。 86 令和 3 年版 犯罪白書

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常時恩赦について,令和2年に復権となった者は7人であり,特赦,減刑又は刑の執行の免除と なった者はいなかった(保護統計年報による。)。 内閣は,令和元年 10 月 22 日に即位の礼が行われるに当たり,同月 18 日の閣議において,政令に 第2 編 よる復権のほか,刑の執行の免除及び復権を内容とする特別基準恩赦を行うことを決定した。復権令 (令和元年政令第 131 号)は同月 22 日に公布・施行され,特別基準恩赦は同日から実施された。今 回の特別基準恩赦により,復権となった者は 20 人,刑の執行の免除となった者は8人であった(法 務省保護局の資料による。)。 第6節 保護司,更生保護施設,民間協力者等と犯罪予防活動 保護司 1 保護司は,犯罪をした者や非行のある少年の立ち直りを地域で支えるボランティアであり,保護司 法(昭和 25 年法律第 204 号)に基づき,法務大臣の委嘱を受け,民間人としての柔軟性と地域性を 生かし,保護観察官と協働して保護観察や生活環境の調整を行うほか,地方公共団体と連携して犯罪 予防活動等を行っている。その身分は,非常勤の国家公務員である。 令和3年4月1日現在,保護司は,全国を 886 の区域に分けて定められた保護区に配属されてい る。保護司の人員,女性の比率及び平均年齢の推移(最近 20 年間)を見ると,2-5-6-1 図のとおり である。保護司の定数は,保護司法により5万 2,500 人を超えないものと定められているところ,そ の人員は減少傾向が続いている(CD-ROM 参照)。 2-5-6-1 図 保護司の人員・女性比・平均年齢の推移 (平成 14 年~令和3年) (歳) 66 65 65.0 64 犯罪者の処遇 平均年齢 63 62 61 (人) 50,000 (%) 30 47,500 25 女性比 45,000 46,358 人員 42,500 0 平成 14 注 1 2 20 26.6 25 20 30 令和 3 0 法務省保護局の資料による。 各年1月1日現在の数値である。 犯罪白書 2021 87

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2-5-6-2 図は,令和3年1月1日現在における保護司の年齢層別・職業別構成比を見たものである。 2-5-6-2 図 ① 保護司の年齢層別・職業別構成比 (令和3年1月1日現在) 年齢層別 第5章 更生保護 40 歳 未 満 40~49 歳 70 歳以上 35.4 ② 0.8 5.4 職業別 無職 (主婦を含む) 24.8 50 ~ 59 歳 14.9 総 数 46,358 人 その他の 職業 15.1 第6節 60 ~ 69 歳 43.6 保護司、更生保護施設、民間協力者等と犯罪予防活動 注 社会福祉事業 3.7 土木・建設業 2.1 農林 漁業 6.6 宗教家 11.8 総 数 46,358 人 会社員等 23.9 商業・サービス業 8.0 教 員 2.1 製 造・加 工 業 1.9 1 法務省保護局の資料による。 2 「その他の職業」は,貸家・アパート経営,医師等である。 保護司会(保護司が職務を行う区域ごとに構成する組織であり,保護司の研修や犯罪予防活動等を 行う。 )がより組織的に個々の保護司の処遇活動に対する支援や地域の関係機関・団体と連携した更 生保護活動を行う拠点として,更生保護サポートセンターが設置されている。令和元年度に全国全て の保護司会に設置され,2年度の利用回数は7万 6,370 回であった(法務省保護局の資料による。)。 2 更生保護施設 更生保護施設は,主に保護観察所から委託を受けて,住居がなかったり,頼るべき人がいないなど の理由で直ちに自立することが難しい保護観察又は更生緊急保護の対象者を宿泊させ,食事を給与す るほか,就職援助,生活指導等を行ってその円滑な社会復帰を支援している施設である。 令和3年4月1日現在,全国に 103 施設があり,更生保護法人により 100 施設が運営されている ほか,社会福祉法人,特定非営利活動法人及び一般社団法人により,それぞれ1施設が運営されてい る。その内訳は,男性の施設 88,女性の施設7及び男女施設8である。収容定員の総計は,2,402 人であり,男性が成人 1,900 人と少年 311 人,女性が成人 140 人と少年 51 人である(法務省保護局 の資料による。)。 令和2年における更生保護施設への委託実人員は,7,539 人(うち新たに委託を開始した人員 5,806 人)であった(保護統計年報による。)。更生保護施設へ新たに委託を開始した人員の推移(最 近 20 年間)は,2-5-6-3 図のとおりである。 88 令和 3 年版 犯罪白書

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2-5-6-3 図 更生保護施設への収容委託開始人員の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 8 第2 編 7 5,806 6 1,153 5 82 640 277 4 3 2 3,654 1 0 平成 13 15 20 25 仮釈放者(全部実刑者) 仮釈放者(一部執行猶予者) その他 一部執行猶予者(実刑部分の刑期終了者) 注 30 令和 2 満期釈放者 1 保護統計年報による。 2 種別異動の場合(仮釈放者(全部実刑者)において,仮釈放期間の満了後も引き続き刑の執行終了者として収容の委託を継続する場 合等)を除く。 3 「その他」は,保護観察処分少年,少年院仮退院者,保護観察付全部執行猶予者,婦人補導院仮退院者,保護観察付全部執行猶予の 言渡しを受けたが裁判の確定していない者,保護観察の付かない全部執行猶予者,起訴猶予者等であり,平成 14 年以降は,罰金・科 料の言渡しを受けた者,労役場出場者・仮出場者,少年院退院者・仮退院期間満了者を含む。 令和元年度における更生保護施設退所者(応急の救護等及び更生緊急保護並びに家庭裁判所からの 補導委託のほか,任意保護(更生緊急保護の期間を過ぎた者に対する保護等,国からの委託によら ず,被保護者の申出に基づき,更生保護事業を営む者が任意で保護すること)による者を含む。)の 更生保護施設における在所期間は,3月未満の者が 50.9%,3月以上6月未満の者が 37.2%,6月 以上1年未満の者が 11.2%,1年以上の者が 0.7%であり,平均在所日数は 79.7 日であった。退所 犯罪者の処遇 先については,借家(32.6%),就業先(18.3%)の順であった。退所時の職業については,労務作 業(46.1%) ,サービス業(8.3%)の順であり,無職は 35.0%であった(法務省保護局の資料によ る。 ) 。 更生保護施設では,生活技能訓練(SST),酒害・薬害教育等を取り入れるなど,処遇の強化に努 めており,令和2年度においては,SST が 31 施設,酒害・薬害教育が 44 施設で実施されている(法 務省保護局の資料による。)。 また,適当な帰住先がなく,かつ,高齢又は障害により福祉サービス等を受けることが必要である が,出所後直ちに福祉による支援を受けることが困難な者について,一旦更生保護施設において受け 入れ,退所後円滑に福祉サービスを受けるための調整及び社会生活に適応するための指導や助言を内 容とする特別処遇が行われており,その役割を担うための施設(指定更生保護施設)が指定されてい る。令和2年度に特別処遇の対象となったのは,1,812 人(前年比 73 人(3.9%)減)であり,3年 4月1日現在,全国で 74 施設が指定更生保護施設に指定されている(法務省保護局の資料による。)。 平成 25 年度からは,薬物処遇に関する専門職員を配置して,薬物依存がある保護観察対象者等へ の依存からの回復に重点を置いた処遇を実施する更生保護施設(薬物処遇重点実施更生保護施設)が 指定されており,令和3年4月1日現在,全国で 25 施設が指定されている(法務省保護局の資料に よる。 ) 。 さらに,平成 29 年度からは,更生保護施設を退所するなどして地域に生活基盤を移した保護観察 対象者及び更生緊急保護対象者に対し,更生保護施設に通所させて,自立更生に向けた生活上の諸課 犯罪白書 2021 89

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題を解決するための生活相談に乗り,必要な指導や助言を行ったり,継続的に薬物処遇を受けさせた りするフォローアップ事業を更生保護施設に委託する取組が開始されている。令和2年度にフォロー アップ事業の対象となった人員は 208 人であり,その内容は,生活相談支援が 182 人,薬物依存か らの回復プログラムが 19 人,薬物依存回復訓練が7人であった(法務省保護局の資料による。)。 このほか,令和元年度から,従前の運用では仮釈放期間が比較的短期間である薬物依存のある受刑 第5章 更生保護 者について,早期に仮釈放し,一定の期間,更生保護施設等に居住させた上で,地域における支援を 自発的に受け続けるための習慣を身に付けられるよう,地域の社会資源と連携した濃密な保護観察処 遇を実施する薬物中間処遇が試行されている。同試行は,3年4月1日現在,3施設において実施さ れている(法務省保護局の資料による。)。 自立準備ホーム 3 第6節 適当な住居の確保が困難な者について,更生保護施設だけでは定員に限界があることなどから,社 会の中に更に多様な受皿を確保する方策として,「緊急的住居確保・自立支援対策」が実施されてい る。これは,あらかじめ保護観察所に登録した民間法人・団体等の事業者に,保護観察所が,宿泊場 保護司、更生保護施設、民間協力者等と犯罪予防活動 所の供与と自立のための生活指導(自立準備支援)のほか,必要に応じて食事の給与を委託するもの である。この宿泊場所を自立準備ホームと呼ぶ。令和3年4月1日現在の登録事業者数は,447(前 年同日比 15(3.5%)増)となっている。制度が開始された平成 23 年度以降の自立準備ホームへの 委託実人員の推移は,2-5-6-4 図のとおりである。令和2年度の委託実人員は 1,719 人,委託延べ人 員は 12 万 7,567 人であった。自立準備ホームには,薬物依存症リハビリテーション施設も登録され ており,薬物依存のある保護観察対象者を委託するなどしているところ,同年度の同施設への委託実 人員は 290 人,委託延べ人員は2万 1,758 人であった(法務省保護局の資料による。)。 2-5-6-4 図 自立準備ホームへの委託実人員の推移 (平成 23 年度~令和2年度) (人) 2,000 1,800 1,719 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 平成 23 注 90 1 2 令和 3 年版 法務省保護局の資料による。 前年度からの繰越しを含む。 犯罪白書 25 30 令和 2

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民間協力者及び団体 4 (1)更生保護女性会 第2 編 更生保護女性会は,地域の犯罪予防や青少年の健全育成,犯罪者・非行少年の改善更生に協力する 女性のボランティア団体である。犯罪・非行予防活動として,地域住民を対象に,子ども食堂の実施 や子育て支援地域活動,近隣の更生保護施設に対する食事作り等の援助,社会貢献活動(本章第3節 2項(5)参照)等の保護観察処遇への協力等が行われている。令和3年4月1日現在における更生 保護女性会の地区会数は 1,281 団体,会員数は 14 万 539 人であった(法務省保護局の資料による。)。 (2)BBS 会 BBS 会は,非行のある少年や悩みを持つ子供たちに,兄や姉のような立場で接しながら,その立 ち直りや成長を支援する活動等(BBS 運動(Big Brothers and Sisters Movement))を行う青年の ボランティア団体であり,近年は学習支援等も行っている。令和3年1月1日現在における BBS 会 の地区会数は 455 団体,会員数は 4,432 人であった(法務省保護局の資料による。)。 (3)協力雇用主 協力雇用主は,犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として,犯罪をした者等 を雇用し,又は雇用しようとする事業主である。 令和2年 10 月1日現在における協力雇用主(個人・法人を合わせたものをいう。以下同じ。)は, 2万 4,213 社(前年同日比 897 社(3.8%)増)であり,その業種は,建設業が過半数(54.4%)を 占め,次いで,サービス業(16.3%),製造業(9.9%)の順である(法務省保護局の資料による。)。 2-5-6-5 図は,実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主数及び協力雇用主に雇用されてい る刑務所出所者等の人員の推移(最近 10 年間)を見たものである。実際に刑務所出所者等を雇用し ている協力雇用主数は,令和2年 10 月1日現在,1,391 社であり,平成 23 年4月(285 社)と比べ て約 4.9 倍であった。 2-5-6-5 図 (社) (人) 2,400 2,200 2,000 犯罪者の処遇 実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主数・被雇用者人員の推移 (平成 23 年~令和2年) 実際に雇用している 協力雇用主数 被雇用者人員 1,959 1,800 1,600 1,391 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 平成 23 注 1 2 25 30 令和 2 法務省保護局の資料による。 平成 30 年までは各年4月1日現在の数値であり,令和元年以降は 10 月1日現在の数値である。 犯罪白書 2021 91

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保護観察対象者又は更生緊急保護対象者を雇用し,就労継続に必要な技能及び生活習慣等を習得さ せるための指導及び助言を行う協力雇用主に対して,平成 27 年4月から,年間最大 72 万円(最長1 年間)の就労・職場定着奨励金及び就労継続奨励金を支給する制度が実施されている。令和2年度に 奨励金を新たに適用した件数は,就労・職場定着奨励金が 2,850 件,就労継続奨励金が 471 件であっ た(法務省保護局の資料による。)。 第5章 更生保護 2-5-6-6 図は,地方公共団体における協力雇用主支援等の取組状況の推移(資料を入手し得た平成 24 年以降)を見たものである。保護観察対象者等を雇用した経験のある協力雇用主等に対し,入札 参加資格審査や総合評価落札方式における優遇措置を導入する地方公共団体が年々増加している。 2-5-6-6 図 地方公共団体における協力雇用主支援等の取組状況の推移(取組別) (平成 24 年~令和2年) (団体) 160 第6節 140 保護司、更生保護施設、民間協力者等と犯罪予防活動 100 入札参加 155 120 総合評価 62 直接雇用 69 80 60 40 20 0 注 平成 24 25 26 27 28 29 30 令和元 2 1 法務省保護局の資料による。 2 本図は,令和2年末現在において,各取組の実施の事実及び実施した年が確認された地方公共団体の数で作成した。 3 「入札参加」は,入札参加資格審査において,「総合評価」は,総合評価落札方式において,それぞれ協力雇用主として登録している 場合,あるいは,協力雇用主として保護観察対象者等を雇用した実績がある場合に,社会貢献活動や地域貢献活動として加点し,優遇 するものをいう。 4 「直接雇用」は,地方公共団体が保護観察対象者の就労支援のため非常勤職員として一定期間雇用するものをいう。 5 更生保護協会等 各都道府県等に置かれた更生保護協会等の連絡助成事業者(令和3年4月1日現在,全国で 67 事 業者(法務省保護局の資料による。))は,保護司,更生保護女性会,BBS 会,協力雇用主,更生保 護施設等の円滑な活動を支えるための助成,研修のほか,更生保護に関する広報活動等も推進してい る。 6 犯罪予防活動 更生保護における犯罪予防活動は,世論の啓発,社会環境の改善等多岐にわたる。具体的な活動と して,地域社会での講演会,非行相談,非行問題を地域住民と考えるミニ集会等,住民が参加する 様々な行事や,学校との連携強化のための取組等が行われている。これらの活動は,保護観察所,保 護司会,更生保護女性会,BBS 会,更生保護協会等が年間を通じて地域の様々な関連機関・団体と 連携しながら実施している。 また,犯罪予防等を目的として,法務省の主唱により,毎年7月を強調月間として,「社会を明る くする運動~犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ~」が展開されており,全国各地 で街頭広報,ポスターの掲出,新聞やテレビ等の広報活動に加えて,様々なイベントが実施されてい 92 令和 3 年版 犯罪白書

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る。令和2年の「社会を明るくする運動」の行事参加人数は,約 58 万人であった。同年は,新型コ ロナウイルス感染症の影響により,例年同様に実施することが困難な取組が多かったが,非接触型の 広報媒体を活用した広報活動を行ったり,ソーシャルディスタンスを確保しながら地域住民を集めて 第2 編 行事を開催したりするなど,地域の実情に応じて,創意工夫した活動も展開された(非接触型の広報 活動についてはコラム2参照)。 なお,再犯防止推進法においては,再犯の防止等についての国民の関心と理解を深めるため,7月 を再犯防止啓発月間に定めるとともに,国及び地方公共団体は再犯防止啓発月間の趣旨にふさわしい 事業が実施されるよう努めなければならないとされており,「社会を明るくする運動」においても, 再犯防止啓発月間の趣旨の周知徹底を図り,かつ,その趣旨を踏まえた活動の実施を推進することと している。 感染症対策を講じるとともに,オンラインも活用し, 「社会を明るくする運動」の行事として開催された公開講演会の様子 【写真提供:法務省保護局】 犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 93

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第 6章 第6章 刑事司法における国際協力 第1節 刑事司法における国際協力 刑事司法における国際的な取組の動向 国際連合(以下この章において「国連」という。)においては,平成4年(1992 年)に経済社会 理事会の下に機能委員会として設置された犯罪防止刑事司法委員会(コミッション)が,毎年会合を 開いて犯罪防止及び刑事司法分野の政策決定を行っているところ,我が国は設立当初から同委員会の メンバー国に選出されており,毎年の会合において積極的に関与している。 また,犯罪防止及び刑事司法の分野における国連最大規模の国際会議である国連犯罪防止刑事司法 会議(コングレス)が,この分野に関する政策の大綱の決定,意見交換等を目的として,国連の主催 により,昭和 30 年(1955 年)から5年ごとに開催されている(第7編第1章参照)。令和3年 (2021 年)3月7日から同月 12 日まで,京都において,第 14 回コングレス(京都コングレス)が開 催された(同編第2章参照)。 1 国際組織犯罪対策及びテロ対策 第1節 (1)国連における取組 国際組織犯罪対策について,国連は,平成 12 年(2000 年),国際的な組織犯罪の防止に関する国 刑事司法における国際的な取組の動向 際連合条約(国際組織犯罪防止条約)を採択した。この条約は,組織的な犯罪集団への参加,マ ネー・ローンダリング及び腐敗行為の犯罪化,犯罪収益の没収,犯罪人の引渡し,捜査共助等につい て定めたものである。また,平成 13 年(2001 年)までに,この条約を補足する「人(特に女性及 び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書」(人身取引議定書),「陸路,海路及び 空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書」(密入国議定書)及び「銃器並びにその 部品及び構成部分並びに弾薬の不正な製造及び取引の防止に関する議定書」(銃器議定書)も採択さ れた。我が国は,平成 15 年(2003 年)に国際組織犯罪防止条約,平成 17 年(2005 年)に人身取 引議定書及び密入国議定書の締結について,それぞれ国会の承認を受け,同年6月に刑法等を,平成 29 年(2017 年)6月に組織的犯罪処罰法等を改正して,国内担保法を整備し,同年7月,同条約及 び両議定書を締結した。 テロ対策については,従来から,国連等様々な国際機関において,テロリストをいずれかの国で処 罰できるようにすることなどを目的とした国際条約等が作成され,我が国は,テロ防止対策に関する 13 の国際条約について締結済みである。 (2)G7/G8 における取組 G7(日本,英国,イタリア,フランス,ドイツ,カナダ及び米国の総称。なお,平成 10 年(1998 年)から平成 26 年(2014 年)までは,前記7か国にロシアを加えた8か国について,「G8」と総称 された。 )において,昭和 53 年(1978 年),テロ対策専門家会合(通称ローマ・グループ)が発足 し,国際テロの動向等について意見交換が行われてきた。また,平成7年(1995 年)の G7 サミッ トにおいて,国際組織犯罪に取り組む上級専門家会合(通称リヨン・グループ)の設立が決定され, リヨン・グループでは,国際組織犯罪に対処するための捜査手法や法制等について議論等が行われて いる。平成 13 年(2001 年)の米国における同時多発テロ事件以降は,これらは統合され,ローマ /リヨン・グループとなり,年数回程度継続的に会合が開催されている。 94 令和 3 年版 犯罪白書

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2 薬物犯罪対策 国連は,昭和 36 年(1961 年)の「1961 年の麻薬に関する単一条約」,昭和 46 年(1971 年)の 第2 編 「向精神薬に関する条約」に引き続き,昭和 63 年(1988 年),麻薬及び向精神薬の不正取引の防止 に関する国際連合条約を作成した。我が国は,これらの条約を締結し,国内法を整備している。 さらに,平成2年(1990 年) ,平成 10 年(1998 年)及び平成 28 年(2016 年)には,国連麻薬 特別総会が開催されたほか,国連経済社会理事会の下部機関として設立された麻薬委員会(CND: Commission on Narcotic Drugs)が毎年開催され,我が国は,昭和 36 年(1961 年)以降,平成 22 年(2010 年)から平成 23 年(2011 年)までを除き,継続して委員国を務めている。 平成3年(1991 年)には,国連の麻薬関連部局等の機能を統合した国連薬物統制計画が設置され た。国連薬物統制計画は,平成9年(1997 年),犯罪防止刑事司法計画と統合され,国連薬物統制 犯罪防止事務所が設立された後,平成 14 年(2002 年)に改称して現在の国連薬物・犯罪事務所 (UNODC)となった。我が国は,UNODC が中心となって取り組んでいる国際的な薬物犯罪対策 への協力にも力を入れている。 3 マネー・ローンダリング対策 平 成 元 年(1989 年 ) に G7 サ ミ ッ ト の 宣 言 を 受 け て 設 立 さ れ た 金 融 活 動 作 業 部 会(FATF: Financial Action Task Force)は,平成2年(1990 年)にマネー・ローンダリング対策に関する 40 の勧告(平成8年(1996 年)及び平成 15 年(2003 年)に改訂)を,平成 13 年(2001 年)にテ ロ資金供与に関する8の特別勧告(平成 16 年(2004 年)に改訂され,9の特別勧告となった。 )を それぞれ採択し,平成 24 年(2012 年)には,従来の 40 の勧告及び9の特別勧告を統合・合理化す る一方で,大量破壊兵器の拡散に関与する者の資産凍結の実施,法人・信託等に関する透明性の向 上,マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の温床となるリスクが高い分野における対策の重点化 等を求める勧告を採択した。 我が国も,FATF 参加国の一員として,犯罪収益移転防止法に基づき,金融機関等の特定事業者に 犯罪者の処遇 よる顧客の身元等の確認や疑わしい取引の届出制度等の対策を実施し,国家公安委員会が疑わしい取 引に関する情報を外国関係機関に提供するなどしているほか,金融庁が共同議長を務める FATF 関 連部会で暗号資産に係る新たな規範の実施に向けた議論・検討において主導的な役割を果たすなどし ており,マネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策における国際的な連携に積極的に参加し ている。 国内においては,平成 26 年(2014 年) ,いわゆるマネロン・テロ資金対策関連三法が成立し,① 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 113 号)により,公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者に対する資金以外の 利益の提供に係る行為についての処罰規定等が整備され,②犯罪収益移転防止法の改正(平成 26 年 法律第 117 号)により,疑わしい取引の届出に関する判断の方法,外国所在為替取引業者との契約 締結の際の確認義務,犯罪収益移転危険度調査書の作成等に係る国家公安委員会の責務等が定められ たほか,③国際連合安全保障理事会決議第 1267 号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財 産の凍結等に関する特別措置法(平成 26 年法律第 124 号。いわゆる国際テロリスト財産凍結法)が 制定され,国際テロリストとして公告又は指定された者に係る国内取引が規制されることとなった。 FATF は,各国における勧告の遵守状況の相互審査を行っている。令和3年(2021 年)6月には, FATF の全体会合において,第4次対日相互審査報告書が採択された。国内では,同報告書で指摘さ れた事項に対応するべく,同年8月にマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議が設置され, 「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」が策定された。 犯罪白書 2021 95

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4 汚職・腐敗対策 平成9年(1997 年),経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)において,国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が 採択された。我が国は,この条約を締結済みであり,その国内担保法として,平成 10 年(1998 年), 第6章 刑事司法における国際協力 不正競争防止法(平成5年法律第 47 号)の改正により外国公務員等に対する不正の利益の供与等の 罪が新設され(11 年2月施行),同罪については,その後,国民の国外犯処罰規定の追加,自然人に 対する罰則強化,法人に対する公訴時効期間の延長等の改正がなされている。 国連は,平成 15 年(2003 年) ,自国及び外国の公務員等に係る贈収賄や公務員による財産の横領 等の腐敗行為の犯罪化のほか,腐敗行為により得られた犯罪収益の他の締約国への返還の枠組み等に ついて定めた腐敗の防止に関する国際連合条約を採択した。我が国は,平成 18 年(2006 年)に同 条約の締結について国会の承認を受け,平成 29 年(2017 年)に同条約を締結した。 令和3年(2021 年)には,国連腐敗特別総会が開催され,腐敗対策に関する政治宣言が採択され た。 5 サイバー犯罪対策 平成 13 年(2001 年)に欧州評議会において採択されたサイバー犯罪に関する条約は,①コン 第1節 ピュータ・システムに対する違法なアクセス,コンピュータ・ウイルスの製造等の行為の犯罪化,② 刑事司法における国際的な取組の動向 である。我が国は,平成 24 年(2012 年),同条約を締結した。この条約の国内担保法として,平成 コンピュータ・データの捜索・押収手続の整備等,③捜査共助・犯罪人引渡し等について定めたもの 23 年(2011 年),情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成 23 年法 律第 74 号)が成立し,不正指令電磁的記録作成等の罪が新設されるなどした。 6 国際刑事裁判所 平成 10 年(1998 年) ,国連主催の外交会議において,国際刑事裁判所に関するローマ規程が作成 さ れ, 平 成 14 年(2002 年 ) の 発 効 を 経 て, オ ラ ン ダ の ハ ー グ に 国 際 刑 事 裁 判 所(ICC: International Criminal Court)が設置された。我が国は,平成 19 年(2007 年)に国際刑事裁判所 の加盟国となり,これまで通算3人の日本人が裁判官に就任している。 96 令和 3 年版 犯罪白書

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第2節 1 犯罪者の国外逃亡・逃亡犯罪人の引渡し 犯罪者の国外逃亡 第2 編 日本国内で犯罪を行い,国外に逃亡している者及びそのおそれのある者であって,主として警察が 捜査対象としているものの人員の推移(最近 10 年間)を日本人と外国人の別に見ると,2-6-2-1 図 のとおりである。 2-6-2-1 図 国外逃亡被疑者等の人員の推移 (平成 23 年~令和2年) (人) 700 外国人 550 600 500 400 300 200 日本人 134 100 0 平成 23 注 25 30 令和 2 1 警察庁刑事局の資料による。人員は,各年 12 月 31 日現在のものである。 2 「外国人」は,無国籍・国籍不明の者を含む。 逃亡犯罪人の引渡し 犯罪者の処遇 2 我が国は,逃亡犯罪人引渡条約を締結していない外国との間で,逃亡犯罪人引渡法(昭和 28 年法 律第 68 号)に基づき,相互主義の保証の下で,逃亡犯罪人の引渡しの請求に応ずることができると ともに,その国の法令が許す限り,逃亡犯罪人の引渡しを受けることもできる。これに加えて,逃亡 犯罪人引渡条約を締結することで,締約国間では,一定の要件の下に逃亡犯罪人の引渡しを相互に義 務付けることになるほか,我が国の逃亡犯罪人引渡法で原則として禁止されている自国民の引渡しを 被要請国の裁量により行うことを認めることにより,締約国との間の国際協力の強化を図ることがで きる。我が国は,アメリカ合衆国(昭和 55 年(1980 年)発効)及び大韓民国(平成 14 年(2002 年)発効)との間で,逃亡犯罪人引渡条約を締結している。 外国との間で逃亡犯罪人の引渡しを受け,又は引き渡した人員の推移(最近 10 年間)は,2-62-2 表のとおりである。なお,我が国から外国に逃亡犯罪人の引渡しを要請する場合,検察庁が依頼 する場合と警察等が依頼する場合とがある。 2-6-2-2 表 逃亡犯罪人引渡人員の推移 (平成 23 年~令和2年) 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 外国から引渡しを受けた逃亡犯罪人 区 1 - 3 2 - - 2 - - - 外国に引き渡した逃亡犯罪人 1 1 1 1 1 - 1 2 5 - 注 分 元年 2年 法務省刑事局及び警察庁刑事局の資料による。 犯罪白書 2021 97

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捜査・司法に関する国際協力 第3節 捜査共助 1 我が国は,国際捜査共助等に関する法律(昭和 55 年法律第 69 号)に基づき,相互主義の保証の下 第6章 刑事司法における国際協力 で,外交ルートを通じて刑事事件の捜査・公判に必要な証拠の提供等の共助を行い,逆に,相手国・ 地域の法令が許す範囲で,我が国の捜査・公判に必要な証拠の提供等を受けているほか,アメリカ合 衆国(平成 18 年(2006 年)発効) ,大韓民国(平成 19 年(2007 年)発効) ,中華人民共和国(平成 20 年(2008 年)発効) ,中華人民共和国香港特別行政区(平成 21 年(2009 年)発効) ,欧州連合 (平成 23 年(2011 年)発効)及びロシア連邦(平成 23 年(2011 年)発効)との間で,それぞれ刑 事共助条約又は協定を締結し,現在 30 以上の国・地域との間で円滑な捜査共助体制を構築している。 外国・地域との間で,我が国が捜査共助等を要請し,又は要請を受託した件数の推移(最近 10 年 間)は,2-6-3-1 表のとおりである。なお,捜査共助等について,我が国から要請する際には,検察 庁からの依頼に基づく場合と警察等からの依頼に基づく場合とがある。 2-6-3-1 表 捜査共助等件数の推移 (平成 23 年~令和2年) 区 分 第3節 捜査共助等を要請 し た 件 数 捜査・司法に関する国際協力 捜査共助等の要請 を受託した件数 注 23 年 10 (8) 46 (34) 55 (37) 24 年 25 年 17 (12) 62 (37) 98 (78) 17 (6) 138 (101) 76 (61) 26 年 17 (10) 78 (60) 62 (49) 27 年 12 (6) 54 (44) 70 (46) 28 年 12 (8) 85 (67) 79 (67) 29 年 8 (4) 110 (95) 54 (45) 30 年 24 (9) 156 (125) 94 (83) 元年 12 (7) 186 (160) 64 (61) 2年 13 (6) 169 (137) 81 (74) 1 法務省刑事局及び警察庁刑事局の資料による。 2 「捜査共助等を要請した件数」欄の上段は検察庁の依頼によるもの,下段は警察等の依頼によるもの(警察が依頼した捜査共助等の 要請件数並びに特別司法警察職員が所属する行政庁及び裁判所が法務省刑事局を経由して依頼した捜査共助等の要請件数)である。 3 ( )内は,当該年に発効し,又は既に発効している刑事共助条約又は協定の締約国・地域との間における共助の要請・受託の件数 で,内数である。 2 司法共助 司法共助とは,我が国と外国との間で,裁判所の嘱託に基づいて,裁判関係書類の送達や証拠調べ に関して協力することをいい,我が国の裁判所が外国の裁判所に対して協力する場合は,外国裁判所 ノ嘱託ニ因ル共助法(明治 38 年法律第 63 号)に基づいてなされる。令和2年(2020 年)において, 我が国の裁判所から外国の裁判所又は在外領事等に対する刑事司法共助の嘱託はなく,外国の裁判所 から我が国の裁判所に対する刑事司法共助の嘱託は,書類の送達が 20 件であった(最高裁判所事務 総局の資料による。)。 3 刑事警察に関する国際協力 国際刑事警察機構(ICPO:International Criminal Police Organization)は,加盟警察機関間 での迅速かつ確実な情報交換を行うための独自の通信網を運用するほか,指紋,DNA,国外逃亡被 疑者・国際犯罪者,紛失・盗難旅券,盗難車両等の各種データベースを整備し,国際的なデータバン クとしての機能を果たしている。また,ICPO の枠組みで発展してきた各種の国際手配制度を通じ, 被手配者である国外逃亡被疑者等の所在発見を求めたり(青手配書),被手配者の犯罪行為につき警 告を発し,各国警察に注意を促す(緑手配書)など,全加盟警察機関の組織力を活用して犯罪防止活 動や捜査の進展を図っている。 98 令和 3 年版 犯罪白書

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ICPO 経由での国際協力件数の推移(最近 10 年間)は,2-6-3-2 表のとおりである。 2-6-3-2 表 (平成 23 年~令和2年) ICPO ルートによる捜査協力件数 区 分 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 2年 捜査協力を要請した件数 412 504 473 371 318 294 327 445 424 385 捜査協力の要請を受けた件数 2,343 2,752 2,920 3,021 1,993 1,698 1,815 1,693 1,545 1,277 元年 2年 ② 第2 編 ① ICPO 経由の国際協力件数の推移 ICPO を通じた情報の発信・受信状況 区 分 23 年 総 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 数 54,359 63,810 76,104 88,196 94,737 79,525 79,340 74,998 78,114 65,031 警察庁からの発信数 3,928 4,801 3,761 3,666 2,856 2,469 2,440 2,333 2,116 1,535 警 察 庁 の 受 理 数 39,684 46,354 58,561 67,098 72,368 56,130 55,338 51,486 54,858 44,809 国 際 手 配 書 の 受 理 数 10,747 12,655 13,782 17,432 19,513 20,926 21,562 21,179 21,140 18,687 注 警察庁刑事局の資料による。 第4節 矯正・更生保護分野における国際協力 国際受刑者移送 1 我が国は,外国の刑務所等で拘禁されている者等をその本国に移送してその刑の執行の共助を行う ため,平成 15 年(2003 年)に多国間条約である刑を言い渡された者の移送に関する条約に加入し たほか,タイ王国(平成 22 年(2010 年)発効),ブラジル連邦共和国(平成 28 年(2016 年)発 効) ,イラン・イスラム共和国(平成 28 年(2016 年)発効)及びベトナム社会主義共和国(令和2 年(2020 年)発効)との間で二国間条約を締結している。我が国は,これらの条約の下,締約国と の間で,国際受刑者移送法(平成 14 年法律第 66 号)に基づき,受刑者移送を行っている。 令和2年(2020 年)における我が国からの送出移送人員(執行国別,罪名別)は,2-6-4-1 表の 犯罪者の処遇 とおりである。なお,同年における我が国への受入移送はなかった(法務省矯正局の資料による。)。 同年は,新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置(検疫の強化等),航空旅客 便の減便等の影響により,外国の官憲への引渡しが困難となり,送出移送人員が前年より 33 人 (80.5%)減少した。 2-6-4-1 表 受刑者送出移送人員(執行国別,罪名別) (令和2年) 執行国 人 員 強盗殺人 死体遺棄 総 数 韓 国 1 1 1 ル ー マ ニ ア 1 - - ド ツ 2 - - ダ 1 - - 国 2 - オーストラリア 1 - オ イ ラ 米 注 1 2 ン 8 1 1 傷 害 暴 1 覚醒剤 取締法 行 入管法 1 7 1 1 - - - - - - 関税法 1 7 - 1 - 1 - 1 - 2 - 2 - 1 - 1 - - 2 - 2 - - 1 - 1 法務省矯正局の資料による。 1人の受刑者につき数罪ある場合には,それぞれの罪名に計上している。 犯罪白書 2021 99

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2 矯正・更生保護に関する国際会議 (1)アジア太平洋矯正局長等会議 ア ジ ア 太 平 洋 矯 正 局 長 等 会 議(APCCA:Asian and Pacific Conference of Correctional Administrators)は,アジア太平洋地域の矯正行政の責任者等が,意見交換及び情報共有を行う国 第6章 刑事司法における国際協力 際会議である。我が国は,過去3回(昭和 57 年(1982 年),平成7年(1995 年)及び平成 23 年 (2011 年) )にわたり会議を主催している。令和2年(2020 年)にシンガポールで開催される予定 であった第 40 回会議は,新型コロナウイルス感染症の世界的流行により中止された。令和3年 (2021 年)に韓国で開催される予定であった会議も,中止が決定した。 (2)世界保護観察会議 世界保護観察会議は,社会内処遇の発展や,国際ネットワークの拡大を期して,世界各国の実務家 や研究者等が意見交換等を行う会議である。我が国で平成 29 年(2017 年)9月に開催された第3 回会議に引き続き,第4回会議が,令和元年(2019 年)9月,「犯罪者の社会内処遇に対する市民 の信頼を確立する」をテーマにオーストラリアで開催され,世界 23 の国・地域が参加した。 第5節 第5節 1 刑事司法分野における国際研修・法制度整備支援等 国連アジア極東犯罪防止研修所における協力 刑事司法分野における国際研修・法制度整備支援等 国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI:United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)は,日本国政府と国連の協定に基づ き,昭和 37 年(1962 年)に設置された,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)を中核とする国連犯 罪防止・刑事司法プログラム・ネットワーク機関(PNI:United Nations Crime Prevention and Criminal Justice Programme Network Institutes)の一つであり,法務総合研究所国際連合研修協 力部により運営され,刑事司法分野における研修,研究及び調査を実施することにより,世界各国の 刑事司法の健全な発展と相互協力の強化に努めている。 UNAFEI では,毎年,世界中の開発途上国の警察官,検察官,裁判官,矯正職員,保護観察官等 を対象として,国際研修(年2回) ,国際高官セミナー(年1回)及び汚職犯罪対策に特化した「汚 職防止刑事司法支援研修」を実施してきた。令和2年度(2020 年度)は,新型コロナウイルス感染 症の世界的流行により,これらの研修・セミナーは実施されなかったが,令和3年度(2021 年度) は,新型コロナウイルス感染症の情勢を踏まえつつ,オンライン会議システムを用いた方法を取り入 れて実施する予定である。また,同年度からは,包摂的な社会に向けた再犯者,児童・女性等を含む 弱者に対する刑事司法的対処をテーマとした新たな国際研修(年1回)も実施する予定である。 このほか,UNAFEI は,世界各国や国連等の要請を受け,特定の国・地域を対象とする研修や共 同研究等を実施しており,現在は,東南アジア諸国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナー 及びカンボジア,ネパール,東ティモール,フィリピン,ベトナム等の刑事司法関係機関を対象とし た研修・共同研究等を実施している。令和2年度(2020 年度)は,新型コロナウイルス感染症の流 行により,従来のように相手国との往来を伴う活動を実施することができなかったが,東南アジア諸 国のためのグッドガバナンスに関する地域セミナーのほか,ネパール及びフィリピンに対する研修・ 共同研究については,オンライン会議システムを用いて実施した。 さらに,UNAFEI は,令和3年度(2021 年度)に,日本の大学生や大学院生,海外からの留学生 を対象とした新たな取組として,「薬物に関連する犯罪の防止及び薬物からの離脱のための若者の取 組について」をテーマとしたユース国際研修をオンライン会議システムを用いて実施した。 100 令和 3 年版 犯罪白書

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UNAFEI の研修に参加した刑事司法関係者(日本人を含む。)は,139 の国・地域から,6,100 人 以上となっている(令和3年(2021 年)3月現在)。 また,UNAFEI は,PNI の一員として,毎回コミッション(本章第1節参照)やコングレス(第 第2 編 7編参照)に出席するとともに,他の PNI とも緊密な連携を取りながら,犯罪防止や刑事司法に関 する国連の政策の立案・実施に協力し,「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals) 」の推進にも努めている。 2 法制度整備支援 我が国による法制度整備支援は,その多くが政府開発援助(ODA)の枠組みで,法務省,外務省, 最高裁判所,独立行政法人国際協力機構(JICA)や学識経験者等の関係者の協力により行われてき た。法務省は,平成 13 年(2001 年),これを所管する部署として法務総合研究所内に国際協力部 (ICD:International Cooperation Department)を設置し,職員の派遣,支援対象国の関係者の 研修等の支援活動を活発に展開している。我が国は,平成6年(1994 年)にベトナムに対する支援 を開始して以来,カンボジア,ラオス,インドネシア,ウズベキスタン,モンゴル,中国,東ティ モール,ネパール,ミャンマー,バングラデシュ等の主としてアジア諸国に対して支援を行ってきて いる。支援の内容としては,民商事法分野のものが中心であるが,刑事法分野でも,ベトナム等の東 南アジア4か国,南アジア2か国及び中央アジア1か国に対する支援を実施している。令和2年 (2020 年)1月及び令和3年(2021 年)3月には,JICA と協力し,スリランカに対する刑事司法 実務改善のための支援として,刑事訴訟の遅延解消に向けた我が国の取組等を紹介する研修を実施し た(令和3年(2021 年)3月の研修はオンライン会議システムを用いて実施した。)。また,令和2 年(2020 年)6月からは,ウズベキスタンにおける犯罪白書作成支援を実施している。 3 矯正建築分野における協力 アジア矯正建築会議(ACCFA:Asian Conference of Correctional Facilities Architects and 犯罪者の処遇 Planners)は,アジア諸国における矯正建築分野での最新技術の情報共有や技術協力を図ることを 目的として,平成 24 年(2012 年)に東京で開催された第1回会議以降,毎年,アジア各国で開催 されており,我が国は,法務省大臣官房施設課において,会議の設立及びその後の会議運営について 中心的・主導的な役割を果たしている。 令和元年(2019 年)10 月から 11 月にかけて再び東京で開催された第8回会議には,13 か国及び UNAFEI 等4機関が参加し,矯正施設整備における設計者,企画者及び利用者の協働,矯正施設が 処遇プログラムの遂行に果たす役割,矯正施設の維持管理等のための持続可能な環境の実現,矯正施 設の特殊性に対応する技術等について議論がなされた。 犯罪白書 2021 101

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第3 編 多摩少年院におけるFC東京によるサッカー教室の様子 【写真提供:法務省矯正局】 保護観察処遇における面接(模擬)の様子 【写真提供:法務省保護局】 3編 少年非行の動向と非行少年の処遇 第 第1章 第2章 第3章 少年非行の動向 非行少年の処遇 少年の刑事手続

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第 1章 少年非行の動向 この編において,非行少年とは,家庭裁判所の審判に付すべき少年,すなわち,①犯罪少年,②触 第1章 少年非行の動向 法少年及び③ぐ犯少年をいう(少年法3条1項)。 少年による刑法犯 第1節 検挙人員 1 少年による刑法犯,危険運転致死傷及び過失運転致死傷等の検挙人員(触法少年の補導人員を含 む。特に断らない限り,以下この節において同じ。)並びに人口比の推移(昭和 21 年以降)は,3-11-1 図①のとおりである(CD-ROM 資料 3-1 参照)。少年による刑法犯,危険運転致死傷及び過失運 第1節 転致死傷等の検挙人員の推移には,昭和期において,26 年の 16 万 6,433 人をピークとする第一の波, 39 年の 23 万 8,830 人をピークとする第二の波,58 年の 31 万 7,438 人をピークとする第三の波とい う三つの大きな波が見られる。平成期においては,平成8年から 10 年及び 13 年から 15 年にそれぞ 少年による刑法犯 れ一時的な増加があったものの,全体としては減少傾向にあり,24 年以降戦後最少を記録し続け, 令和2年は戦後最少を更新する3万 2,063 人(前年比 13.8%減)であった。 3-1-1-1 図②は,少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和 41 年以降)を成人と比較 して見たものである。少年による刑法犯の検挙人員は,平成 16 年以降減少し続けており,令和2年 は2万 2,552 人(前年比 13.5%減)であった。少年の人口比についても低下傾向が見られ,2年は 201.9(同 13.5%減)と人口比の最も高かった昭和 56 年(1,432.2)の約7分の1になっており,成 人の人口比と比較すると依然として約 1.3 倍と高いものの,成人の人口比にそれほど大きな変動がな いため,その差は減少傾向にある。 3-1-1-1 図 ① 少年による刑法犯等 検挙人員・人口比の推移 刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 (昭和 21 年~令和2年) (万人) 35 1,800 1,600 少年人口比 30 1,400 25 1,000 800 15 600 10 ② 104 400 少年の検挙人員 (刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等) 5 0 昭和21 人 口 比 検挙人員 20 1,200 成人人口比 25 30 35 40 刑法犯 犯罪白書 (万人) 30 45 50 55 60平成元 5 10 200 15 20 25 30令和2 0 441.5 287.0 32,063 (昭和41年~令和2年) 令和 3 年版 少年 成人 1,800

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0 昭和21 ② 25 30 35 40 45 50 55 60平成元 5 10 15 20 25 刑法犯 30令和2 少年 1,800 成人 1,600 25 1,400 少年人口比 20 1,200 22,552 第3 編 800 165,116 人 口 比 検挙人員 1,000 15 600 10 5 注 32,063 (昭和41年~令和2年) (万人) 30 0 昭和41 0 400 成人人口比 45 50 55 60 平成元 5 200 10 15 20 25 30令和2 0 201.9 157.0 1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者は,成人として計上している。 3 触法少年の補導人員を含む。 4 「少年人口比」は,10 歳以上の少年 10 万人当たりの, 「成人人口比」は,成人 10 万人当たりの,それぞれの検挙人員である。ただし, 令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用して算出した。 5 ①において,昭和 45 年以降は,過失運転致死傷等による触法少年を除く。 6 ②において,平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 属性による動向 2 (1)年齢層別動向 ア 年齢層別検挙人員・人口比の推移 少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和 41 年以降)を年齢層別に見ると,3-1-1-2 図のとおりである(CD-ROM 資料 3-2 参照)。令和元年以降は,年少少年の人口比が中間少年及び 年長少年の人口比をいずれも下回っている。 少年による刑法犯 検挙人員・人口比の推移(年齢層別) (昭和 41 年~令和2年) (万人) 30 令和2年検挙人員 年長少年 5,785 中間少年 7,181 年少少年 4,500 触法少年 5,086 25 3,000 2,000 20 1,000 10 5 注 22,552 人 口 比 検挙人員 15 0 昭和41 少年非行の動向と非行少年の処遇 3-1-1-2 図 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30令和2 0 中間少年 年長少年 年少少年 触法少年 314.4 238.1 207.0 118.7 1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 3 検挙人員中の「触法少年」は,補導人員である。 4 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 5 「人口比」は,各年齢層の少年 10 万人当たりの刑法犯検挙(補導)人員である。なお,触法少年の人口比算出に用いた人口は,10 歳以上 14 歳未満の人口である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用して算出した。 犯罪白書 2021 105

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イ 非行少年率 3-1-1-3 図は,少年の成長に伴う非行率の変化を知るために,出生年(推計)が昭和 53 年から平 成 13 年までの者について,6年ごとに世代を区分し,各世代について,12 歳から 19 歳までの各年 齢時における非行少年率(各年齢の者 10 万人当たりの刑法犯検挙(補導)人員をいう。以下この項 において同じ。)の推移を見たものである。昭和 53 年~58 年生まれの世代は,ピークが 16 歳の 第1章 少年非行の動向 2,124.8 となっている。昭和 59 年~平成元年生まれの世代も,ピークは 16 歳であるが,2,371.4 に 上昇している。平成2年~7年生まれの世代は,ピークが 15 歳になり,1,897.0 に低下している。 平成8年~13 年生まれの世代は,ピークが 14 歳と更に下がり,1,121.7 に低下している。同世代の 非行少年率は,12 歳から 19 歳までの各年齢時において,全世代の中で一貫して最も低い。 3-1-1-3 図 少年による刑法犯 非行少年率の推移 2,500 昭和59年~平成元年生 昭和53年~ 58年生 2,000 第1節 平成2年~7年生 1,500 少年による刑法犯 1,000 平成8年~13年生 500 0 注 106 12歳 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳 1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 3 平成 14 年から 26 年の検挙人員については,危険運転致死傷によるものを含む。 4 「非行少年率」は,各世代について,当時における各年齢の者 10 万人当たりの刑法犯検挙(補導)人員をいう。ただし,令和2年の 人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用して算出した。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)男女別動向 3-1-1-4 図は,犯罪少年による刑法犯の検挙人員及び人口比の推移(昭和 41 年以降)を男女別に 見たものである(なお,成人女性と少年女子の検挙人員及び女性比の推移は,4-7-1-1 図参照)。 女子比は,平成 20 年以降低下し続けていたが,29 年から上昇に転じ,令和2年は 14.3%(前年比 0.0pt 上昇)であった(CD-ROM 参照)。 3-1-1-4 図 第3 編 少年による刑法犯 検挙人員・人口比の推移(男女別) (昭和 41 年~令和2年) (万人) 20 3,000 男子人口比 15 2,000 人 口 比 検挙人員 10 434.6 男子 女子人口比 1,000 5 女子 0 昭和41 注 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30令和2 0 17,904 15,347 76.2 2,557 1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 触法少年の補導人員を含まない。 4 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 5 「男子人口比」は , 14 歳以上の男子少年 10 万人当たりの, 「女子人口比」は,14 歳以上の女子少年 10 万人当たりの,それぞれ刑法 犯検挙人員である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用して算出した。 (3)就学・就労状況 少年非行の動向と非行少年の処遇 令和2年における犯罪少年による刑法犯の検挙人員の就学・就労状況別構成比を見ると,3-1-1-5 図のとおりである。 3-1-1-5 図 少年による刑法犯 検挙人員の就学・就労状況別構成比 (令和2年) 無職少年 11.8 有職少年 22.7 その他の学生 注 3.4 学生・ 生 徒 以 外 34.5 中学生 17.2 総 数 17,466 人 大学生 4.8 学生・ 生 徒 65.5 高校生 40.1 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の就学・就労状況による。 3 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 4 触法少年の補導人員を含まない。 犯罪白書 2021 107

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罪名別動向 3 令和2年における少年による刑法犯の検挙人員(男女別)及び少年比を罪名別に見ると,3-1-1-6 表のとおりである(CD-ROM 資料 3-3,3-4 及び 3-5 参照)。 なお,特殊詐欺(第8編第3章第1節1項(3)参照)による少年の検挙人員については,同項 第1章 少年非行の動向 (3)参照。 3-1-1-6 表 少年による刑法犯 検挙人員・少年比(罪名別,男女別) (令和2年) 罪 名 総 総 数 数 男 22,990 (100.0) 子 女 19,299 子 少年比 女子比 3,691 16.1 12.3 51 (0.2) 45 6 11.8 5.8 盗 344 (1.5) 313 31 9.0 20.8 放 火 59 (0.3) 46 13 22.0 9.7 160 (0.7) 159 1 0.6 13.3 強 制 性 交 等 暴 行 1,291 (5.6) 1,142 149 11.5 5.1 傷 害 2,033 (8.8) 1,863 170 8.4 10.7 少年による刑法犯 人 強 第1節 殺 恐 喝 395 (1.7) 349 46 11.6 25.6 窃 盗 12,514 (54.4) 9,898 2,616 20.9 13.7 詐 欺 715 (3.1) 585 130 18.2 8.6 横 領 1,834 (8.0) 1,646 188 10.3 15.0 遺失物等横領 1,812 (7.9) 1,626 186 10.3 16.3 強制わいせつ 420 (1.8) 410 10 2.4 14.4 住 居 侵 957 (4.2) 865 92 9.6 24.9 器 物 損 壊 833 (3.6) 744 89 10.7 15.7 他 1,384 (6.0) 1,234 150 10.8 10.6 そ 注 108 の 入 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の年齢による。 3 触法少年の補導人員を含む。 4 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 5 「遺失物等横領」は,横領の内数である。 6 ( )内は,構成比である。 令和 3 年版 犯罪白書

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共犯事件 4 令和2年における刑法犯の検挙事件(触法少年の補導件数を含まない。また,捜査の結果,犯罪が 成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)のうち,少年のみに よる事件(少年の単独犯又は少年のみの共犯による事件)での共犯率(共犯による事件数(共犯事件 であるものの,共犯者の人数が明らかでないものを含む。)の占める比率をいう。)・共犯者数別構成 第3 編 比を主な罪名別に見ると,3-1-1-7 図のとおりである。総数では,少年のみによる事件での共犯率は 25.4%であり,成人のみによる事件(成人の単独犯又は成人のみの共犯による事件)での共犯率 (12.0%)と比べて高い(CD-ROM 参照)。 3-1-1-7 図 少年のみによる刑法犯 検挙事件の共犯率・共犯者数別構成比(罪名別) (令和2年) 総 数 強 盗 (125) 詐 欺 (918) 恐 喝 (251) 器 物 損 壊 (466) 窃 盗 (11,002) 住 居 侵 入 (597) 害 (1,221) 殺 人 (24) 暴 行 (726) 強制性交等 (103) 横 領 (1,649) 放 火 (32) 強制わいせつ (339) 注 1 2 3 4 5 6 7 8 12.5 25.4 44.0 21.6 14.4 19.2 0.8 56.0 47.8 5.8 3.5 6.0 36.9 52.2 58.2 21.5 10.4 9.2 0.8 41.8 68.5 16.5 9.7 4.9 0.4 2.2 31.5 70.9 15.5 4.4 7.1 29.1 71.5 11.7 6.5 10.2 28.5 77.5 12.6 5.0 4.7 0.2 少年非行の動向と非行少年の処遇 傷 74.6 (18,814) 4人以上 の組 共犯人数 4.1 2.8 6.0 不明 3人組 2人組 単独 22.5 87.5 4.2 4.2 4.2 12.5 1.7 89.9 7.6 0.8 10.1 1.9 90.3 6.8 1.0 92.7 9.7 1.0 5.7 0.5 7.3 93.8 6.3 1.2 0.9 97.6 警察庁の統計による。 検挙時の年齢による。 触法少年の補導件数は含まない。 捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。 「共犯人数不明」は,共犯事件であるものの , 共犯者の人数が明らかでないものを計上している。 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 「横領」は,遺失物等横領を含む。 ( )内は,件数である。 0.3 2.4 犯罪白書 2021 109

131.

少年による特別法犯 第2節 1 検挙人員 犯罪少年による特別法犯(平成 15 年までは交通関係4法令違反(昭和 36 年までは道路交通取締法 第1章 少年非行の動向 (昭和 22 年法律第 130 号)違反を含む。)を除き,平成 16 年以降は交通法令違反を除く。以下この 項において同じ。 )の検挙人員の推移(昭和 31 年以降)は,3-1-2-1 図のとおりである(罪名別検挙 人員については,CD-ROM 資料 3-6 参照)。その総数は,38 年(1万 8,967 人)と 58 年(3万 9,062 人)をピークとする大きな波が見られた後,平成3年から 18 年にかけて大きく減少した。19 年に増加に転じ,24 年からは再び減少し続けていたが,令和元年から増加に転じ,2年は 5,022 人 (前年比 10.2%増)であった。罪名別に見ると,薬物犯罪(覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法, あへん法及び毒劇法の各違法をいう。以下この節において同じ。)の人員は,昭和 47 年から大きく増 加し,57 年(3万 2,129 人)にピークを迎えたが,平成5年前後に著しく減少し,それ以降減少傾 向にあったものの,26 年(190 人)を底として,翌年からは増加し続けている。その一方で,軽犯 第2節 罪法違反の人員は,12 年から 23 年まで増加し続け,令和元年まで減少を続けていたが,平成 18 年 以降一貫して,特別法犯の中で最も多い。同年以降の軽犯罪法違反の人員を違反態様別に見ると, 30 年及び令和元年は「業務妨害の罪」 (同法1条 31 号)が最も多かったが,その他の年は「田畑等 少年による特別法犯 侵入の罪」 (同法1条 32 号)が最も多い(警察庁の統計による。)。 3-1-2-1 図 少年による特別法犯 検挙人員の推移 (昭和31年~令和2年) (千人) 40 総数 35 薬物犯罪 30 25 毒劇法 20 15 銃刀法 10 5,022 5 軽犯罪法 0 昭和31 注 110 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 1,229 1,011 167 3 30令和2 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の年齢による。 3 触法少年を含まない。 4 「薬物犯罪」は,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法,あへん法及び毒劇法の各違反をいう。 5 平成 15 年までは交通関係4法令違反(昭和 36 年までは道路交通取締法違反を含む。 )を除き,平成 16 年以降は交通法令違反を除く。 令和 3 年版 犯罪白書

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令和2年における犯罪少年による特別法犯の検挙人員の罪名別構成比は,3-1-2-2 図のとおりであ る。 3-1-2-2 図 少年による特別法犯 検挙人員の罪名別構成比 (令和2年) 覚醒剤取締法 廃棄物処理法 刀 法 2.2 その他 9.9 3.3 青少年保護 育成条例 10.6 軽犯罪法 24.5 総 数 5,022人 迷惑防止条例 12.0 大麻取締法 17.0 注 第3 編 銃 1.9 児童買春・児童 ポルノ禁止法 18.7 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の年齢による。 3 触法少年を含まない。 4 交通法令違反を除く。 2 薬物犯罪 犯罪少年の薬物犯罪においては,昭和 47 年に毒劇法が改正されてシンナーの乱用行為等が犯罪と された後,同法違反が圧倒的多数を占め,その検挙人員(警察が検挙した者に限る。以下この項にお いて同じ。)は,57 年のピーク(2万 9,254 人)後増減を繰り返していたが,平成5年前後に著しく 減少し,それ以降減少傾向にあり,令和2年は3人であった(3-1-2-1 図及び CD-ROM 資料 3-6 参 照) 。 犯罪少年による覚醒剤取締法,大麻取締法及び麻薬取締法の各違反の検挙人員の推移(昭和 50 年 少年非行の動向と非行少年の処遇 以降)は,3-1-2-3 図のとおりである。覚醒剤取締法違反は,57 年(2,750 人)及び平成9年(1,596 人)をピークとする波が見られた後,10 年以降は減少傾向にあったが,29 年以降は 90 人台で推移 し,令和2年は前年より4人増加し,96 人であった。大麻取締法違反は,昭和 61 年以降増加傾向に あり,平成6年(297 人)をピークとする波が見られた後,増減を繰り返していたが,26 年から7 年連続で増加しており,令和2年は 853 人(前年比 258 人(43.4%)増)であった。麻薬取締法違 反は,平成 16 年(80 人)をピークとする小さな波が見られるものの,昭和 50 年以降,おおむね横 ばいないしわずかな増減にとどまっていたが,平成 29 年から増加傾向にある。 犯罪白書 2021 111

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3-1-2-3 図 少年による覚醒剤取締法違反等 検挙人員の推移(罪名別) (昭和 50 年~令和2年) ① 覚醒剤取締法 ② (人) 3,000 大麻取締法・麻薬取締法 (人) 1,000 第1章 少年非行の動向 2,500 853 800 2,000 600 覚醒剤取締法 大麻取締法 1,500 400 1,000 200 500 0 昭和50 注 55 60平成元 5 10 15 20 25 96 30令和2 0 昭和50 59 麻薬取締法 55 60平成元 5 10 15 20 25 30令和2 第2節 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の年齢による。 3 触法少年を含まない。 少年による特別法犯 交通犯罪 3 犯罪少年による道路交通法違反の取締件数(軽車両以外の車両等の運転によるものに限る。ただ し,教唆・幇助犯は除く。)は,昭和 60 年に 193 万 8,980 件を記録した後,減少傾向が続き,令和2 年は 12 万 4,077 件(前年比 0.6%減)であった(警察庁交通局の資料による。)。 令和2年における犯罪少年による危険運転致死傷の検挙人員は 48 人(前年比2人増)であり,そ のうち,致死事件の検挙人員は6人(同1人増)であった(警察庁の統計による。)。 暴走族の構成員数及びグループ数の推移(最近 20 年間)は,3-1-2-4 図のとおりである。 3-1-2-4 図 暴走族の構成員数・グループ数の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 25 1,400 1,200 グループ数 20 15 800 600 10 暴走族構成員 4,505 5 0 平成13 注 112 1 2 令和 3 年版 うち少年 15 20 25 警察庁交通局の資料による。 共同危険型暴走族(爆音を伴う暴走等を集団で行う暴走族をいう。)に限る。 犯罪白書 30 令和2 グループ数 構成員数 1,000 400 2,547 200 113 0

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第3節 ぐ犯少年 ぐ犯について,態様別の家庭裁判所終局処理人員及び女子比の推移(最近 20 年間)を見ると, 3-1-3-1 図のとおりである(CD-ROM 資料 3-7 参照) 。令和2年における家庭裁判所終局処理人員は 151 人(前年比 7.9%減),女子比は 27.8%(同 9.4pt 低下)であった。 なお,令和2年における家庭裁判所終局処理人員のうち,行為時の年齢が 14 歳未満の者は 10 人 3-1-3-1 図 第3 編 (前年比 14 人減)であった(司法統計年報による。)。 家庭裁判所終局処理人員(ぐ犯の態様別)・女子比の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 1,200 (%) 100 令和2年終局処理人員 その他 98 不純異性交遊 11 不良交友 19 家出 23 1,000 800 80 員 600 女子比 40 400 27.8 200 0 平成 13 注 1 2 女子比 人 60 151 15 20 25 30 令和2 20 0 司法統計年報による。 所在不明等による審判不開始及び不処分を除く。 少年非行の動向と非行少年の処遇 犯罪白書 2021 113

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第4節 不良行為少年 不良行為少年(犯罪少年,触法少年又はぐ犯少年には該当しないが,飲酒,喫煙,深夜はいかいそ の他自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年をいう。)の補導人員及び人口比の推移(最近 20 年間)を見ると,3-1-4-1 図のとおりである。令和2年における補導人員は 33 万 3,182 人(前年 第1章 少年非行の動向 比 11.1%減) ,人口比は 4,837.1(同 606.8 低下)であった。 また,令和2年における補導人員を態様別に見ると,深夜はいかい 17 万 9,186 人(53.8%),喫 煙9万 9,220 人(29.8%)の順に多く,この2態様で補導人員総数の8割以上を占めた(警察庁生 活安全局の資料による。)。 3-1-4-1 図 不良行為少年 補導人員・人口比の推移 (平成 13 年~令和2年) (万人) 160 25,000 第4節 140 人口比 20,000 120 15,000 員 80 10,000 60 333,182 40 注 114 5,000 補導人員 20 0 平成 13 人口比 人 不良行為少年 100 15 20 25 4,837.1 30 令和2 0 1 警察庁生活安全局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 「不良行為少年」は,犯罪少年,触法少年又はぐ犯少年には該当しないが,飲酒,喫煙,深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を 害する行為をしている少年をいう。 3 「人口比」は,少年 10 万人当たりの補導人員である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の 14 歳以上 20 歳未満の人 口を使用して算出した。 令和 3 年版 犯罪白書

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第5節 1 家庭と学校における非行 家庭内暴力 少年による家庭内暴力事件の認知件数の推移(最近 20 年間)を就学・就労状況別に見ると,3-15-1 図のとおりである。認知件数の総数は,平成 24 年から毎年増加しており,令和2年は 4,177 件 第3 編 (前年比 16.2%増)であった。特に,近年,小学生が大きく増加しており,2年は 840 件(同 33.1% 増)であった。 3-1-5-1 図 少年による家庭内暴力 認知件数の推移(就学 ・ 就労状況別) (平成 13 年~令和2年) (件) 4,500 4,000 3,500 3,000 4,177 無職少年 有職少年 その他の学生 高校生 中学生 小学生 185 131 119 1,134 2,500 2,000 1,768 1,500 1,000 500 0 平成 13 15 20 25 30 令和 2 少年非行の動向と非行少年の処遇 注 840 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 犯行時の就学・就労状況による。 3 一つの事件に複数の者が関与している場合は,主たる関与者の就学・就労状況について計上している。 4 「その他の学生」は,浪人生等である。 令和2年における家庭内暴力事件の対象について,同居している家族の内訳を見ると,母親が 2,430 件と最も多く,次いで,父親が 532 件,兄弟姉妹が 417 件,同居の親族が 173 件の順であり, 同居している家族以外では,家財道具等が 612 件,その他が 13 件であった(警察庁生活安全局の資 料による。)。 犯罪白書 2021 115

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2 校内暴力 校内暴力事件の事件数及び検挙・補導人員は,事件数では昭和 58 年に 2,125 件を,検挙・補導人 員では 56 年に1万 468 人を,それぞれ記録した後は大きく減少し,その後の増減を経て,平成 26 年 以降減少し続け,令和2年は 507 件(前年比 18.0%減),549 人(同 20.4%減)であった。検挙・補 第1章 少年非行の動向 導された者の就学状況を見ると,かつては,中学生が圧倒的に多い状況が続いていたが,平成 26 年 以降,中学生の検挙・補導人員及び総数に占める構成比が減少・低下し続け,令和2年は,中学生が 334 人(60.8%) ,小学生が 118 人(21.5%),高校生が 97 人(17.7%)であった。中学生は,減少 が始まる直前の平成 25 年(1,569 人)と比べると令和2年は約2割となった一方で,小学生は,平 成 24 年から増加傾向にあり,令和2年にやや減少したものの,平成 28 年以降は高校生を上回ってい る(警察庁生活安全局の資料による。)。 3 いじめ 第5節 警察において取り扱ったいじめに起因する事件の事件数及び検挙・補導人員の推移(最近 20 年間) を見ると,3-1-5-2 図のとおりである。事件数及び検挙・補導人員は,昭和 60 年に 638 件,1,950 人を記録して以降,63 年の 97 件,279 人まで大きく減少し,その後の増減を経て,令和2年の事件 家庭と学校における非行 数は 142 件(前年比 30.0%減),検挙・補導人員は 199 人(同 25.2%減)と,いずれも前年より減 少した(CD-ROM 参照)。 3-1-5-2 図 いじめに起因する事件 事件数・検挙・補導人員の推移 (平成 13 年~令和2年) (件) (人) 800 700 600 高校生 中学生 小学生 500 400 事件数 300 199 200 45 142 100 0 平成 13 注 116 103 51 15 20 25 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 「いじめに起因する事件」とは,いじめによる事件及びいじめの仕返しによる事件をいう。 令和 3 年版 犯罪白書 30 令和 2

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2章 第 非行少年の処遇 概要 第1節 第3 編 非行少年に対する手続の流れは,3-2-1-1 図のとおりである(少年に対する刑事処分に係る手続 (同図の緑色部分)については,本編第3章参照)。 3-2-1-1 図 非行少年処遇の概要 (令和 2 年) 警察等 触法少年 犯罪少年 ぐ犯少年 交通反則金 検察庁 新規受理 4万5,436人 家裁送致 4万3,015人 移送 全部執行猶予 実刑 うち 保護観察付 うち一部 執行猶予 児童福祉法 上の措置 家庭裁判所 終局処理 4万3,872人 裁判所 無罪・ 罰金等 児童相談所 検察官送致 2,966人 不処分 7,926人 保護処分 刑事施設 (少年刑務所等) 入所受刑者 16歳以上 19人 の移送 審判不開始 2万33人 児童相談所長等 送致 141人 1万2,806人 少年非行の動向と非行少年の処遇 16歳まで の収容 少年鑑別所 入所者 5,197人 児童自立支援施設等送致 87人 少年院 入院者 1,624人 出院者 1,698人 退院 満期釈放 一部執行猶予の 実刑部分の刑期終了 仮釈放 うち保護観察付 うち一部 執行猶予 保護観察処分 1万 733 人 仮退院 1,692人 保護観察所 保護観察開始 1万2,425人 解除等 注 1 2 3 4 5 6 期間満了等 取消し等 検察統計年報,司法統計年報,矯正統計年報及び保護統計年報による。 「検察庁」の人員は,事件単位の延べ人員である。例えば,1人が2回送致された場合には,2人として計上している。 「児童相談所長等送致」は,知事・児童相談所長送致である。 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 「出院者」の人員は,出院事由が退院又は仮退院の者に限る。 「保護観察開始」の人員は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に限る。 犯罪白書 2021 117

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1 家庭裁判所送致までの手続の流れ (1)犯罪少年 警察等は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があると思料するときは,交通 反則通告制度に基づく反則金の納付があった道路交通法違反を除き,罰金以下の刑に当たる犯罪の被 第2章 非行少年の処遇 疑事件は家庭裁判所に送致し,それ以外の刑に当たる犯罪の被疑事件は検察官に送致する。検察官 は,捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があると思料するとき,又は家庭裁判所の審判に付すべき事由が あると思料するときは,事件を家庭裁判所に送致する。そのため,検察官は,少年が満 20 歳に達し た場合や,犯罪の嫌疑がなく,家庭裁判所の審判に付すべき事由もない場合などを除き,事件を家庭 裁判所へ送致しなければならない。 (2)触法少年及びぐ犯少年 触法少年及び 14 歳未満のぐ犯少年については,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長か ら送致を受けたときに限り,審判に付することができる。保護者のない児童又は保護者に監護させる 第1節 ことが不適当であると認められる児童(要保護児童)を発見した者は,これを都道府県等の福祉事務 所又は児童相談所に通告しなければならないこととされているので,触法少年及び 14 歳未満のぐ犯 少年が要保護児童である場合には,この通告対象となる。都道府県知事又は児童相談所長は,通告を 概要 受けた少年について,家庭裁判所の審判に付することが適当であると認めた場合には,家庭裁判所に 送致する。警察官は,触法少年であると疑うに足りる相当の理由のある者を発見した場合に,事件の 調査をすることができるが,その結果,少年の行為が,一定の重大な罪に係る刑罰法令に触れるもの であると思料する場合等には,事件を児童相談所長に送致しなければならない。都道府県知事又は児 童相談所長は,送致を受けた少年のうち一定の重大な罪に係る刑罰法令に触れる行為を行った触法少 年については,原則として,家庭裁判所に送致しなければならず,それ以外の少年についても,家庭 裁判所の審判に付することが適当であると認めた場合は,家庭裁判所に送致する。他方,14 歳以上 のぐ犯少年を発見した者は,これを家庭裁判所に通告しなければならない。ただし,警察官又は保護 者は,ぐ犯少年が 18 歳未満であり,かつ,家庭裁判所に送致・通告するよりも,まず児童福祉法 (昭和 22 年法律第 164 号)による措置に委ねるのが適当であると認めるときは,児童相談所に通告 することができる。 2 家庭裁判所における手続の流れ (1)家庭裁判所の調査 家庭裁判所は,検察官等から事件の送致等を受けたときは,事件について調査しなければならず, 家庭裁判所調査官に命じて必要な調査を行わせることができる。 (2)少年鑑別所の鑑別 家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,観護措置の決定により,少年を少年鑑別所に送 致する。この場合,少年鑑別所は,送致された少年を収容して,医学,心理学,教育学,社会学その 他の専門的知識及び技術に基づいて,収容審判鑑別を行うとともに,必要な観護処遇を行う。 (3)家庭裁判所の審判等 家庭裁判所は,調査の結果に基づき,審判不開始,審判開始等の決定をする。 少年及び保護者は,付添人を選任することができるが,弁護士以外の者を選任するには,家庭裁判 所の許可を要する。 118 令和 3 年版 犯罪白書

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審判は,非公開で行われるが,家庭裁判所は,一定の重大事件の被害者等から審判の傍聴の申出が あった場合,少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは,傍聴を許すことができる (第6編第2章第1節6項参照)。 また,家庭裁判所は,犯罪少年の一定の重大犯罪に係る事件において,その非行事実を認定するた めの審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは,決定をもって,審判に検察官を出席 させることができる。家庭裁判所は,この場合において,少年に弁護士である付添人がないときは, 第3 編 弁護士である付添人(国選付添人)を付さなければならない。 なお,家庭裁判所は,保護処分を決定するため必要があると認めるときは,相当の期間,少年を家 庭裁判所調査官に直接観察させる試験観察に付することができる。 家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができず,又はその必要がないと認めるとき は,不処分の決定をする。調査又は審判の結果,児童福祉法上の措置を相当と認めるときは,事件を 都道府県知事又は児童相談所長に送致し,本人が 20 歳以上であることが判明したときは,事件を検 察官に送致する。また,調査又は審判の結果,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,刑事 処分を相当と認めるときは,事件を検察官に送致するが,犯行時 16 歳以上の少年による一定の重大 な事件及び犯行時 18 歳以上の少年による選挙の公正の確保に重大な支障を及ぼす連座制に係る事件 については,原則として事件を検察官に送致しなければならず(いわゆる原則逆送),送致を受けた 検察官は,原則として当該事件を起訴しなければならない。家庭裁判所は,これらの場合以外は,保 護処分をしなければならず,保護観察,児童自立支援施設・児童養護施設送致(18 歳未満の少年に 限る。 )又は少年院送致(おおむね 12 歳以上の少年に限る。)のいずれかの決定を行う。 少年,その法定代理人又は付添人は,保護処分の決定に対し,決定に影響を及ぼす法令の違反,重 大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り,高等裁判所に抗告をすることができ る。他方,検察官は,検察官関与の決定があった事件について,非行事実の認定に関し,決定に影響 を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り,高等裁判所に抗告審 として事件を受理すべきことを申し立てることができる。 保護処分に係る手続の流れ 少年非行の動向と非行少年の処遇 3 (1)家庭裁判所の決定による保護観察 家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年は,原則として 20 歳に達するまで(その期間が 2年に満たない場合には2年間)又は保護観察が解除されるまで,保護観察官又は保護司から,改善 更生のために必要な指導監督及び補導援護を受ける(保護観察の概要については,本章第5節参照)。 なお,家庭裁判所は,少年を保護観察に付する際,非行性の進度がそれほど深くないなど,短期間 の保護観察により改善更生を期待できる者について,短期保護観察又は交通短期保護観察が相当であ る旨の処遇勧告を行い,これらの処遇勧告がなされた場合,保護観察は,この勧告に従って行われ る。 (2)児童自立支援施設・児童養護施設送致 児童自立支援施設・児童養護施設送致の決定を受けた少年は,児童福祉法による施設である児童自 立支援施設又は児童養護施設に入所措置される。 (3)少年院収容と仮退院後の保護観察 家庭裁判所の決定により少年院送致とされた少年は,少年院に収容され,矯正教育,社会復帰支援 等を受ける。 少年院での収容期間は,原則として 20 歳に達するまでであるが,少年院の長は,20 歳に達した後 犯罪白書 2021 119

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も,送致の決定のあった日から1年間に限り,収容を継続することができる。在院者は,収容期間の 満了により退院するが,家庭裁判所は,一定の場合には,少年院の長の申請により,23 歳を超えな い期間を定めて,収容を継続する決定をする。さらに,家庭裁判所は,在院者の精神に著しい障害が あり,医療に関する専門的知識及び技術を踏まえて矯正教育を継続して行うことが特に必要な場合に は,少年院の長の申請により,26 歳を超えない期間を定めて,収容を継続する決定を行い,同決定 第2章 非行少年の処遇 を受けた在院者は,第3種の指定を受けた少年院(本章第4節3項(1)参照)に収容される。 他方,在院者については,生活環境の調整を行い,地方更生保護委員会の決定により,収容期間の 満了前に仮退院を許されることがある。この場合,仮退院した後は,収容期間の満了日又は退院の決 定があるまで保護観察に付される。 4 少年法等の改正 令和3年5月,成年年齢の引下げ等の社会情勢の変化及び少年による犯罪の実情に鑑み,必要な措 置を講ずるため,少年法等の一部を改正する法律(第2編第1章1項(1)参照。以下この項におい 第2節 て「改正法」という。 )が成立し,4年4月1日から施行されることとなった。同法により,少年法 が改正され,18 歳以上の少年が特定少年とされ,特定少年の保護事件の特例として,①家庭裁判所 が原則として検察官に送致しなければならない事件に,死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若 検察・裁判 しくは禁錮に当たる罪の事件であって,犯行時に特定少年に係るものが加えられ,②家庭裁判所が審 判を開始した事件につき,少年が特定少年である場合に決定するべき保護処分(6月若しくは2年の 保護観察又は少年院送致)の内容等に関する規定が整備されるとともに,③ぐ犯が対象から除外され るなどの規定の整備が行われた。また,特定少年の刑事事件の特例として,不定期刑(本編第3章第 1節1項参照) ,換刑処分の禁止の規定等を適用しないものとするなどの規定の整備が行われた。さ らに,特定少年のときに犯した罪により公訴を提起された場合には,略式手続による場合を除き,記 事等の掲載の禁止に関する規定を適用しないこととされた。 また,改正法により,更生保護法が改正され,前記②の保護処分に係る保護観察に付された特定少 年を保護観察処分少年(本章第5節2項(1)参照)に加えるなどの所要の規定の整備が行われた。 さらに,改正法により,少年院法が改正され,少年院の種類(本章第4節3項(1)参照)に,前記 ②の保護処分に係る保護観察のうち2年の保護観察に付されている者(特定保護観察処分少年)につ いて,遵守事項を遵守しなかったと認められる事由があり,その程度が重く,かつ,少年院において 処遇を行わなければ改善更生を図ることができないと家庭裁判所が認めるときに決定をもって収容す るものとして,第5種を新たな少年院の種類として加えるなどの所要の規定の整備が行われた。 第2節 1 検察・裁判 検察(家庭裁判所送致まで) (1)受理状況 令和2年における犯罪少年の検察庁新規受理人員は,4万 5,436 人(少年比 5.7%)であった。そ の内訳は,刑法犯が2万 2,128 人(同 11.3%) ,過失運転致死傷等が 8,846 人(同 2.9%),特別法犯 が1万 4,462 人(同 4.7%)であり,道交違反を除いた特別法犯は 3,659 人(同 4.1%)であった(検 察統計年報による。)。 3-2-2-1 図は,令和2年における犯罪少年の検察庁新規受理人員の罪名別構成比を年齢層別に見た ものである。犯罪少年の検察庁新規受理人員・人口比の推移については,CD-ROM 資料 3-8 参照。 120 令和 3 年版 犯罪白書

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3-2-2-1 図 犯罪少年の検察庁新規受理人員の罪名別構成比(年齢層別) (令和2年) 横領・背任 大麻取締法 2.4 傷害・暴行 道交違反 過失運転致死傷等 25.6 23.8 19.5 年少少年 (5,278) 45.3 10.6 6.1 3.8 11.7 5.0 年長少年 (26,498) 注 35.2 23.9 18.9 26.6 0.3 0.6 中間少年 (13,660) その他 第3 編 総 数 (45,436) 窃盗 3.6 7.3 4.9 23.4 1.6 16.6 26.3 31.4 4.3 3.13.2 15.0 1 検察統計年報による。 2 受理時の年齢による。 3 「横領」は,遺失物等横領を含む。 4 ( )内は,人員である。 (2)家庭裁判所への送致 検察官は,少年事件を家庭裁判所に送致するとき,どのような処分が相当であるかについて意見を 付けることができる。令和2年における家庭裁判所の終局処理人員(過失運転致死傷等及び道交違反 を除く。 )のうち年長少年(9,058 人)について,検察官が刑事処分相当との意見を付けた割合は 6.9%,家庭裁判所が検察官送致(刑事処分相当)の決定をした割合は 6.0%であった(法務省刑事 局の資料による。)。検察官処遇意見等の状況については,CD-ROM 資料 3-9 参照。 家庭裁判所 少年非行の動向と非行少年の処遇 2 (1)受理状況 少年保護事件の家庭裁判所新規受理人員の推移(昭和 24 年以降)は,3-2-2-2 図のとおりである。 一般保護事件(道交違反に係るもの以外の少年保護事件。以下この項において同じ。)の家庭裁判 所新規受理人員は,昭和 41 年及び 58 年のピークを経て,しばらく減少傾向にあった後,20 万人前 後で推移していたが,平成 16 年以降,毎年減少しており,令和2年は3万 8,547 人(前年比 10.5% 減)であった。 道路交通保護事件(道交違反に係る少年保護事件。以下この項において同じ。)の家庭裁判所新規 受理人員は,昭和 45 年の交通反則通告制度の少年への適用拡大,62 年の同制度の反則行為の拡大に より急減した後,近年も減少傾向にあり,令和2年は1万 2,938 人(前年比 3.0%減)であった。 犯罪白書 2021 121

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3-2-2-2 図 少年保護事件 家庭裁判所新規受理人員の推移 (昭和 24 年~令和2年) (万人) 120 第2章 非行少年の処遇 100 80 総数 60 道路交通保護事件 40 一般保護事件 20 第2節 0 昭和24 検察・裁判 注 1 2 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 51,485 38,547 12,938 30令和2 司法統計年報による。 内数である一般保護事件と道路交通保護事件の区分については,統計の存在する昭和 31 年以降の数値を示した。 (2)処理状況 ア 終局処理の概要 令和2年における少年保護事件について,①一般保護事件(過失運転致死傷等保護事件及びぐ犯を 除く。 ) ,②過失運転致死傷等保護事件(過失運転致死傷等及び危険運転致死傷に係る少年保護事件), ③道路交通保護事件別に,家庭裁判所終局処理人員の処理区分別構成比を見ると,3-2-2-3 図のとお りである。処理区分別・非行名別の終局処理人員については,CD-ROM 資料 3-10 参照。 3-2-2-3 図 少年保護事件 終局処理人員の処理区分別構成比 (令和2年) ① 一般保護事件(過失運転致死傷等保護事件及びぐ犯を除く) (23,835) 6.6 24.0 16.2 50.5 0.8 0.4 1.5 ② 過失運転致死傷等保護事件(8,735) 4.3 1.6 ③ 15.1 36.2 42.5 0.4 道路交通保護事件(11,138) 14.4 3.4 34.8 8.1 38.3 1.0 検察官送致(刑事処分相当) 不処分 注 122 1 2 3 4 5 0.0 検察官送致(年齢超過) 審判不開始 少年院送致 その他 司法統計年報による。 「過失運転致死傷等保護事件」は,過失運転致死傷等及び危険運転致死傷に係る少年保護事件である。 「道路交通保護事件」は,道交違反に係る少年保護事件である。 「その他」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致及び都道府県知事・児童相談所長送致である。 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 保護観察

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イ 原則逆送事件の処理状況 犯行時 16 歳以上の少年による故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件については,家庭裁 判所は,原則として検察官に送致しなければならないが,これに該当する原則逆送事件の終局処理人 員(年齢超過による検察官送致を除く。以下イにおいて同じ。)の推移(原則逆送制度が開始された 平成 13 年以降)は,3-2-2-4 図のとおりである。14 年(83 人)のピーク後,16 年までは大きな増 減はなかったが,17 年以降は減少傾向にあった。その後,24 年に増加に転じ,26 年以降は毎年減 第3 編 少していたが,令和2年は 28 人(前年比 18 人増)であった。 平成 13 年4月以降令和2年末までの間における原則逆送事件の終局処理人員の合計は 767 人であ り,このうち 487 人(63.5%)が検察官送致決定を受けている。 3-2-2-4 図 原則逆送事件 家庭裁判所終局処理人員の推移(処理区分別) (平成 13 年~令和2年) (人) 90 80 その他 保護処分 70 検察官送致(刑事処分相当) 60 50 40 28 30 14 20 10 14 0 平成 13 1 2 3 4 5 20 25 30 令和 2 最高裁判所事務総局の資料による。 少年法 55 条により地方裁判所から移送されたものを除く。 年齢超過による検察官送致を除く。 平成 13 年は,原則逆送制度が開始した同年4月1日以降の人員である。 「その他」は,不処分及び審判不開始である。 少年非行の動向と非行少年の処遇 注 15 令和2年における家庭裁判所の終局処理人員を罪名別に見るとともに,これを処理区分別に見る と,3-2-2-5 表のとおりである。 3-2-2-5 表 原則逆送事件 家庭裁判所終局処理人員(罪名別,処理区分別) (令和2年) 罪 総 殺 注 終局処理 人 員 名 検察官送致 (刑事処分相当) 数 28 14 少年院送致 保護処分 第1種 第2種 第3種 少年院 少年院 少年院 14 8 4 - 保護 観察 2 不処分 審 判 不開始 - - 人 16 7 9 4 3 - 2 - - 傷 害 致 死 8 3 5 4 1 - - - - 危険運転致死 4 4 - - - - - - - 1 最高裁判所事務総局の資料による。 2 「殺人」は,既遂に限る。 3 少年法 55 条により地方裁判所から移送されたものを除く。 4 年齢超過による検察官送致を除く。 犯罪白書 2021 123

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第3節 少年鑑別所 概説 1 少年鑑別所の業務は,①専門的知識及び技術に基づいた鑑別を実施すること,②在所者の情操の保 第2章 非行少年の処遇 護に配慮し,その者の特性に応じた観護処遇を実施すること,③地域社会における非行及び犯罪の防 止に関する援助を実施することである。少年鑑別所は,令和3年4月1日現在,全国に 52 庁(分所 8庁を含む。 )が設置されている。 入所・退所の状況 2 (1)入所人員の推移 少年鑑別所の入所者(観護措置(少年鑑別所送致),勾留に代わる観護措置又はその他の事由(勾 留,引致,少年院在院者の鑑別のための収容等)により入所した者をいう。)の人員(男女別)及び 第3節 女子比の推移(最近 20 年間)は,3-2-3-1 図のとおりである。その人員は,平成8年から増加し, 15 年(2万 3,063 人)に昭和 45 年以降最多を記録したが,その後,17 年連続で減少し,令和2年 は 5,197 人(前年比 9.6%減)であった(CD-ROM 資料 3-11 参照)。2年におけるその人員の内訳 少年鑑別所 は,観護措置による者が 88.0%,勾留に代わる観護措置による者が 6.4%であった(矯正統計年報に よる。 ) 。 3-2-3-1 図 少年鑑別所入所者の人員(男女別)・女子比の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (千人) 25 (%) 14 員 女子比 10 15 8 4 5 注 124 9.7 6 10 0 平成 13 女子比 人 12 20 2 15 20 25 30 令和 2 0 5,197 男子 4,691 女子 506 1 矯正統計年報による。 2 「入所者」は,観護措置(少年鑑別所送致),勾留に代わる観護措置又はその他の事由(勾留,引致,少年院在院者の鑑別のための収 容等)により入所した者をいい,逃走者の連戻し,施設間の移送又は仮収容により入所した者は含まない。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)被収容者の特徴 3-2-3-2 図は,少年鑑別所被収容者(観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置によ り入所した者で,かつ,当該年において逃走,施設間の移送又は死亡以外の事由により退所した者を いう。以下同じ。)の年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を男女別に見たものである。 3-2-3-2 図 少年鑑別所被収容者の年齢層別構成比の推移(男女別) ① 男子 ② (%) 100 女子 (%) 100 80 80 52.9 47.5 60 60 40 40 37.0 34.9 20 20 0 平成 13 15 12.2 20 25 30令和2 年少少年 注 第3 編 (平成 13 年~令和2年) 0 平成 13 15 中間少年 15.5 20 25 30令和2 年長少年 1 矯正統計年報による。 2 「被収容者」は,観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所した者で,かつ,当該年において逃走,施設間 の移送又は死亡以外の事由により退所した者をいう。 3 少年鑑別所退所時の年齢による。 4 「年少少年」は,14 歳未満の者を含み, 「年長少年」は,20 歳に達している者を含む。 少年非行の動向と非行少年の処遇 3-2-3-3 図は,令和2年における少年鑑別所被収容者の非行名別構成比を男女別に見るとともに, これを年齢層別に見たものである。男子は,全ての年齢層で窃盗の構成比が最も高く,ぐ犯及び覚醒 剤取締法違反の構成比が,女子と比べて顕著に低い(男子におけるぐ犯は 2.6%,覚醒剤取締法違反 は 1.0%。CD-ROM 参照)。女子は,年齢層が上がるにつれて,ぐ犯の構成比が低くなり,覚醒剤取 締法違反の構成比が高くなっている。また,平成 28 年から令和2年までにおける総数について見て みると,元年までは,窃盗,ぐ犯及び傷害・暴行が上位3つを占めていたが,2年は,窃盗,傷害・ 暴行,詐欺の順であり,詐欺がぐ犯を上回っている。 犯罪白書 2021 125

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3-2-3-3 図 少年鑑別所被収容者の非行名別構成比(男女別,年齢層別) (令和2年) ① 男子 総 数 第2章 非行少年の処遇 (4,436) 道路交通法 窃盗 傷害・暴行 24.3 19.7 強制性交等・強制わいせつ 詐欺 8.4 6.3 5.7 強盗 その他 4.8 31.0 1.3 年少少年 25.9 (540) 中間少年 23.3 (1,550) 年長少年 24.6 (2,346) ② 3.5 25.2 20.1 13.8 18.1 5.9 7.5 14.8 6.1 第3節 数 (476) 26.7 5.2 5.3 26.1 3.9 5.0 女子 総 2.6 窃盗 傷害・暴行 詐欺 ぐ犯 26.7 14.9 11.6 9.7 35.1 覚醒剤取締法 恐喝 その他 5.3 4.2 27.7 2.7 少年鑑別所 年少少年 32.4 (74) 中間少年 26.7 (176) 年長少年 24.8 (226) 注 23.0 14.8 21.6 10.8 12.4 12.5 15.0 3.5 8.0 4.1 4.0 3.4 4.9 16.2 27.8 31.4 1 矯正統計年報による。 2 「被収容者」は,観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所した者で,かつ,令和2年において逃走,施設 間の移送又は死亡以外の事由により退所した者をいう。 3 少年鑑別所退所時の年齢による。 4 「年少少年」は,14 歳未満の者を含み, 「年長少年」は,20 歳に達している者を含む。 5 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 6 ( )内は,実人員である。 (3)退所事由 令和2年における少年鑑別所の退所者の退所事由別構成比は,3-2-3-4 図のとおりである。 3-2-3-4 図 少年鑑別所退所者の退所事由別構成比 (令和2年) 知事・児童相談所長送致 その他 19.5 審判不開始・不処分 0.9 児 童 自 立 支 援 1.3 施 設 等 送 致 検 察 官 送 致 1.8 観護措置の取消し 7.9 試験観察 11.0 注 126 0.6 保護観察 30.5 総 数 6,105 人 少年院送致 26.6 1 矯正統計年報による。 2 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 3 「その他」は,施設間の移送,少年院在院者の鑑別のための収容の終了,仮収容の終了,同行指揮等により退所した者である。 令和 3 年版 犯罪白書

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鑑別 3 鑑別(非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上,その事 情の改善に寄与するため,その者の処遇に資する適切な指針を示すことをいう。)は,家庭裁判所の 求めに応じて行う審判鑑別,家庭裁判所以外の関係機関の求めに応じて行う処遇鑑別に大別される。 ア 第3 編 (1)審判鑑別 収容審判鑑別 審判鑑別のうち,観護措置の決定により少年鑑別所に収容されている者に対して行う鑑別を収容審 判鑑別という。収容審判鑑別の標準的な流れは,3-2-3-5 図のとおりである。少年鑑別所では,鑑別 面接,心理検査,行動観察,医学的検査及び診察の結果に,外部から得られた情報を加えて検討し, 在宅保護(保護観察等) ,収容保護(少年院送致等)等の処遇に係る判定を行う。判定の結果は,鑑 別対象者の資質の特徴,非行要因,改善更生のための処遇指針等と共に鑑別結果通知書に記載されて 家庭裁判所に送付され,審判の資料となる。審判の結果,保護観察や少年院送致の決定がなされた場 合には,それぞれ,保護観察を行う保護観察所及び送致先の少年院に送付され,処遇の参考に供され る。また,法務省矯正局では, 「再犯防止に向けた総合対策」の一環として,少年の再非行防止に資 するための調査ツールである法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)を開発し,少年鑑別所 において運用している(MJCA は,心理学,犯罪学等の人間科学の知見を踏まえて,少年鑑別所にお ける実証データに基づき,統計学的な分析を経て開発したもので,対象者の再非行の可能性等を把握 するとともに,保護者との関係性の調整や社会適応力の向上等,何を目標とした働き掛けを行えば再 非行を防止できるのかを明らかにしようとするものである。)。 3-2-3-5 図 少年鑑別所における収容審判鑑別の流れ 部 行 資 料 動 の 収 観 集 察 判 会 議 少年非行の動向と非行少年の処遇 審 定 鑑別結果通知書の作成 判 (必要ケース) 個別方式の心理検査 第二回以降の鑑別面接 鑑 別 方 針 の 設 定 集団方式の心理検査 所 初 回 の 鑑 別 面 接 入 オリエンテーション 入 所 時 調 査 (少年院送致の場合) 少 年 院 の 指 定 処遇指針票の作成 外 退 精 神 医 学 的 検 査・診 察 所 身 体 検 査 健 康 診 断 (必要ケース) 犯罪白書 2021 127

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3-2-3-6 表は,令和2年に収容審判鑑別を終了した者について,鑑別の判定と審判における決定等 との関係を見たものである。 3-2-3-6 表 収容審判鑑別の判定と審判決定等との関係 (令和2年) 第2章 非行少年の処遇 審 終 鑑 別 の 判 総 定 数 第3節 保 護 不 要 在 宅 保 護 収 容 保 護 少年鑑別所 少 年 院 児童自立支援施設・ 児童養護施設 保 注 護 不 適 保 総 数 4,413 (100.0) 25 (100.0) 1,405 保 観 護 察 1,839 (41.7) 18 (72.0) 1,157 (100.0) (82.3) 2,821 649 (100.0) (23.0) 114 (100.0) 48 (100.0) 12 (10.5) 3 (6.3) 護 判 局 決 決 定 分 知事・ 児 童自立 児童相 少年院 支援施設・ 談所長 送 致 児童養護 送 致 施設送致 未 処 1,607 (36.4) 2 77 (1.7) - 34 (0.8) - 検察官 送 致 40 (0.9) - (8.0) 20 (1.4) 1,567 (55.5) 7 (6.1) 11 (22.9) 等 定 審判不 開始・ 不処分 30 (0.7) 4 観 護 その他 措置の 試験観察 取消し 119 (2.7) - (16.0) 2 (0.1) 17 (0.6) 58 (50.9) - 18 - (0.1) 12 - 1 - (4.0) 11 38 159 (2.7) (11.3) 14 12 75 483 (0.5) (0.4) (2.7) (17.1) - - (10.5) - 667 (15.1) (0.8) (1.3) 4 了 1 (0.9) 26 (54.2) 3 (6.3) 5 24 - - - (21.1) - - (10.4) 1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所し,かつ,令和2年に退所した者(ただし,鑑別の判定が保留, 判定未了等の者を除く。)を計上している。 3 「その他」は,観護措置変更決定等である。 4 ( )内は,鑑別の判定ごとの審判決定等別構成比である。 イ 在宅審判鑑別 審判鑑別のうち,少年鑑別所に収容されていない者に対して,少年鑑別所に来所させて行う鑑別 等,収容審判鑑別以外のものを在宅審判鑑別という。令和2年における在宅審判鑑別の受付人員は 207 人であった(矯正統計年報による。)。 (2)処遇鑑別 地方更生保護委員会,保護観察所の長,児童自立支援施設の長,児童養護施設の長,少年院の長又 は刑事施設の長の求めによる鑑別を処遇鑑別という。処遇鑑別では,処遇の経過,課題及びその分 析,今後の処遇指針等について鑑別結果通知書を作成し,各機関における対象者の処遇に資すること としている。令和2年における処遇鑑別の受付人員の内訳は,地方更生保護委員会又は保護観察所が 2,530 人,少年院又は刑事施設が 1,298 人,児童自立支援施設又は児童養護施設が 17 人であった(矯 正統計年報による。)。 4 観護処遇 少年鑑別所では,少年鑑別所法(平成 26 年法律第 59 号)に基づき,各在所者の法的地位に応じた 処遇を行うとともに,その特性に応じた適切な働き掛けによってその健全な育成に努めている。健全 な育成への配慮として,在所者の自主性を尊重しつつ,健全な社会生活を営むために必要な基本的な 生活習慣等に関する助言・指導を行っている。また,在所者の情操を豊かにし,健全な社会生活を営 128 令和 3 年版 犯罪白書

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むための知識及び能力を向上させることができるよう,学習や文化活動等に関する助言・援助を行っ ており,各少年鑑別所の実情に応じて,外部の協力者による学習支援や就労等に関する講話,季節の 行事等の機会を設けている。 非行及び犯罪の防止に関する援助 5 第3 編 少年鑑別所は, 「法務少年支援センター」という名称で,地域社会における非行及び犯罪の防止に関 する援助(以下「地域援助」という。 )を行っている。少年鑑別所が有する少年非行等に関する専門的 知識やノウハウを活用し,地域社会における非行及び犯罪に関する各般の問題について,少年,保護者 等からの相談に応じるほか,関係機関・団体からの依頼に応じ,情報提供,助言,各種心理検査等の調 査,心理的援助,研修・講演等を行うなど,地域社会や関係機関等のニーズに幅広く対応している。 令和2年に実施した地域援助のうち,少年,保護者等の個人からの依頼に基づく援助の実施人員 は,延べ 4,312 人であり,前年(4,694 人)と比べて 382 人減少した(矯正統計年報による。)。 また,機関・団体からの依頼に基づく援助の実施状況の推移(地域援助が開始された平成 27 年以 降)を依頼元機関等別に見ると,3-2-3-7 図のとおりである。令和2年においては,依頼元機関等の うち,学校や教育委員会等の「教育関係」の構成比が最も高く,実施件数の約3分の1を占めている ほか,児童相談所や地域生活定着支援センター等の「福祉・保健関係」,都道府県警察や検察庁等の 「司法関係」といった多様な機関等に対して援助を実施している。同年の実施件数は,総数で 8,305 件であり,前年(9,317 件)と比べて 1,012 件減少した。依頼元機関等別では,「福祉・保健関係」 は前年より 159 件増加した一方 ,「矯正施設」,「教育関係」,「更生保護関係」の順に前年より減少 (それぞれ 445 件減,289 件減,258 件減)した(CD-ROM 参照)。 個人及び機関・団体からの依頼に基づく援助の実施状況は,令和2年に初めて減少したものの,地 域援助が開始された平成 27 年以降,増加傾向にある(矯正統計年報による。)。 3-2-3-7 図 機関等からの依頼に基づく地域援助の実施状況の推移(依頼元機関等別) 少年非行の動向と非行少年の処遇 ( 平成 27 年~令和2年) (千件) 10 8,305 8 138 1,063 938 46 6 2,308 4 2,590 2 0 注 その他 矯正施設 更生保護 関係 医療関係 福祉・ 保健関係 教育関係 司法関係 1,222 平成 27 28 29 30 令和元 2 1 法務省矯正局の資料による。 2 機関又は団体からの依頼に基づく援助に限り,個人からの依頼に基づく相談等への対応は除く。 3 「司法関係」は,都道府県警察,検察庁,裁判所その他司法に関する機関又は団体である。 4 「教育関係」は,学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)1条に定める学校,都道府県及び市町村の教育委員会その他教育に関する機 関又は団体である。 5 「福祉・保健関係」は,児童相談所,地域生活定着支援センター,児童自立支援施設,児童養護施設,保健所,精神保健福祉センター その他福祉・保健に関する機関又は団体である。 6 「医療関係」は,医療法(昭和 23 年法律第 205 号)1条の5に定める病院及び診療所その他医療に関する機関又は団体である。 7 「更生保護関係」は,地方更生保護委員会,保護観察所,保護司会,更生保護法人その他更生保護に関する機関又は団体である。 8 「矯正施設」は,刑事施設,少年院及び婦人補導院である。 9 「その他」は,非行及び犯罪の防止に資する活動,青少年の健全育成に資する活動等を実施する機関又は団体である。 10 平成 27 年は,地域援助が開始された同年6月からの実施状況について計上している。 犯罪白書 2021 129

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第4節 少年院 概説 1 少年院は,主として,家庭裁判所が少年院送致の決定をした少年を収容し,その健全な育成を図る 第2章 非行少年の処遇 ことを目的として,矯正教育,社会復帰支援等を行う施設である。令和3年4月1日現在,全国に 47 庁(分院6庁を含む。)が設置されている。 少年院入院者 2 (1)少年院入院者の人員の推移 3-2-4-1 図は,少年院入院者の男女別の人員及び女子比の推移(昭和 24 年以降)を見たものであ る。入院者の人員は,最近 25 年間では,平成 12 年(6,052 人)をピークに減少傾向が続いており, 令和2年は 1,624 人(前年比 6.0%減)であり,昭和 24 年以降最少であった。また,令和2年の女 第4節 子比は,前年より 0.7pt 上昇した。 3-2-4-1 図 少年院入院者の人員(男女別)・女子比の推移 少年院 (昭和 24 年~令和2年) (%) 15 (千人) 12 員 8 10 女子比 8.4 6 1,624 4 5 男子 1,487 2 0 昭和 24 注 女子比 人 10 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30令和2 女子 137 0 少年矯正保護統計,少年矯正統計年報及び矯正統計年報による。 (2)少年院入院者の特徴 ア 年齢 3-2-4-2 図は,少年院入院者の人員及び人口比の推移(最近 20 年間)を年齢層別に見たものであ る。 その人員は,年長少年(入院時に 20 歳に達している者を含む。以下(2)において同じ。)では, 平成 13 年をピークとして,その後,おおむね減少傾向にあり,令和2年は前年(921 人)よりも減 少し,900 人(前年比 2.3%減)であった。中間少年では,年長少年と同様に平成 13 年をピークと して,その後,おおむね減少傾向にあり,令和2年は 583 人(同 6.3%減)であった。年少少年(入 院時に 14 歳未満の者を含む。以下(2)において同じ。)も,平成 24 年から毎年減少しており,令 和2年は 141 人(同 23.4%減)であった。2年の年齢層別構成比は,年長少年(55.4%)が最も高 く,次いで,中間少年(35.9%),年少少年(8.7%)の順であった(CD-ROM 参照)。 130 令和 3 年版 犯罪白書

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令和2年における年長少年,中間少年及び年少少年の人口比は,いずれも前年と比べ低下してい る。 なお,令和2年における 14 歳未満の少年院入院者は,3人(いずれも男子)であった(矯正統計 年報による。)。 3-2-4-2 図 少年院入院者の人員・人口比の推移(年齢層別) 年少少年 中間少年 第3 編 (平成 13 年~令和2年) (千人) 9 100 年長少年 8 80 中間少年 人 口 比 7 6 60 年長少年 人 口 比 4 37.0 40 25.5 3 2 注 1,624 年少少年 人 口 比 1 0 平成 13 人 口 比 入院者数 5 15 20 25 30 令和 2 6.5 20 900 583 0141 1 矯正統計年報及び総務省統計局の人口資料による。 2 入院時の年齢による。ただし,「年少少年」は 14 歳未満の者を含み,「年長少年」は入院時に 20 歳に達している者を含む。 3 「人口比」は,各年齢層 10 万人当たりの少年院入院者の人員である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使 用して算出した。 イ 非行名 3-2-4-3 図は,令和2年における少年院入院者の非行名別構成比を男女別に見るとともに,これを 年齢層別に見たものである。男子の構成比を見ると,いずれの年齢層でも,窃盗,傷害・暴行の順に 少年非行の動向と非行少年の処遇 高く,年少少年では強制性交等・強制わいせつ,中間少年では強盗,年長少年では詐欺がそれぞれ続 く。また,年齢層が上がるにつれて,強制性交等・強制わいせつの構成比が低くなっている。女子の 構成比を見ると,総数では,窃盗,傷害・暴行,覚醒剤取締法違反の順に高く,年齢層が上がるにつ れて,ぐ犯の構成比が低くなり,覚醒剤取締法違反及び強盗の構成比が高くなっている。また,女子 は,男子と比べ,覚醒剤取締法違反及びぐ犯の構成比が顕著に高い(女子の少年院入院者の特徴につ いては,第4編第7章第2節2項(2)参照)。 犯罪白書 2021 131

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3-2-4-3 図 ① 少年院入院者の非行名別構成比(男女別,年齢層別) 男子 総 数 第2章 非行少年の処遇 (1,487) 窃盗 傷害・暴行 26.4 19.2 (令和2年) 強制性交等・ 強制わいせつ 強盗 詐欺 8.3 道路交通法 その他 7.4 6.2 5.9 1.6 年少少年 26.4 (125) 中間少年 (529) 年長少年 (833) 第4節 ② 24.8 26.8 18.7 26.1 18.6 2.4 5.6 9.8 7.8 26.6 16.0 7.9 7.9 6.2 23.2 8.3 4.7 4.9 22.1 30.0 女子 少年院 総 数 (137) 窃盗 傷害・暴行 覚醒剤取締法 ぐ犯 詐欺 強盗 24.8 18.2 12.4 9.5 8.0 年少少年 43.8 (16) その他 3.6 25.0 23.4 25.0 6.3 1.9 中間少年 (54) 16.7 16.7 7.4 14.8 11.1 31.5 1.5 年長少年 (67) 注 26.9 17.9 19.4 7.5 6.0 20.9 1 矯正統計年報による。 2 入院時の年齢による。ただし,「年少少年」は 14 歳未満の者を含み,「年長少年」は入院時に 20 歳に達している者を含む。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 4 ( )内は,実人員である。 ウ 教育程度,就学・就労状況 3-2-4-4 図及び 3-2-4-5 図は,令和2年における少年院入院者の教育程度別構成比及び就学・就労 状況別構成比を,いずれも男女別に見たものである。 3-2-4-4 図 少年院入院者の教育程度別構成比(男女別) (令和2年) 中学在学 男 子 (1,487) 女 注 132 子 (137) 6.0 9.5 中学卒業 高校在学 高校中退 21.3 19.2 43.1 13.9 17.5 48.9 1 矯正統計年報による。 2 教育程度は,非行時における最終学歴又は就学状況である。 3 「その他」は,高等専門学校中退,大学(短期大学を含む。)在学・中退,専修学校在学・中退・卒業等である。 4 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 高校卒業・その他 10.4 10.2

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3-2-4-5 図 少年院入院者の就学・就労状況別構成比(男女別) (令和2年) 男 子 (1,478) 女 有職 学生・生徒 26.9 47.4 25.8 子 46.7 (137) 24.8 28.5 第3 編 注 無職 1 矯正統計年報による。 2 就学・就労状況は,非行時による。 3 就学・就労状況が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 エ 不良集団関係 3-2-4-6 図は,令和2年における少年院入院者の不良集団関係別構成比を男女別に見たものである。 3-2-4-6 図 少年院入院者の不良集団関係別構成比(男女別) 暴力団 2.5 男 子 女 子 暴走族 地域不良集団 5.8 34.0 (1,455) 注 不良集団関係なし 5.1 52.6 2.2 0.7 (137) (令和2年) 不良生徒・学生集団 4.4 22.6 70.1 1 矯正統計年報による。 2 不良集団関係は,非行時による。 3 不良集団関係が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 オ 保護者の状況 少年非行の動向と非行少年の処遇 3-2-4-7 図は,令和2年における少年院入院者の保護者状況別構成比を男女別に見たものである。 3-2-4-7 図 少年院入院者の保護者状況別構成比(男女別) (令和2年) 男 子 (1,487) 実父母 実母 実父義母 2.0 義父実母 その他 実父 32.7 38.9 10.1 11.8 4.2 保護者なし 0.4 女 子 (137) 31.4 41.6 8.0 14.6 1.5 注 2.9 1 矯正統計年報による。 2 保護者状況は,非行時による。 3 「その他」は,養父(母)等である。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 133

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カ 被虐待経験 3-2-4-8 図は,令和2年における少年院入院者の保護者等からの被虐待経験別構成比を男女別に見 たものである。ただし,ここでいう被虐待経験の有無・内容は,入院段階における少年院入院者自身 の申告等により把握することのできたものに限られている点に留意する必要がある。 第2章 非行少年の処遇 3-2-4-8 図 少年院入院者の被虐待経験別構成比(男女別) (令和2年) 男 子 (1,487) 30.5 4.2 0.2 女 子 60.9 3.0 1.2 50.4 (137) 5.8 11.7 31.4 0.7 身体的 注 性的 ネグレクト 心理的 虐待なし 不詳 第4節 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 虐待の定義は,児童虐待防止法による。ただし,ここでは保護者以外の家族による少年に対する虐待や,18 歳以上の少年に対する 虐待も含む。 3 「身体的」は,少年の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれのある暴行を加えることをいい,「性的」は,少年にわいせつな行為をす ること又は少年をしてわいせつな行為をさせることをいい, 「ネグレクト」は,少年の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又 は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ることをいい,「心理的」は,少年に著しい心理的外傷を与える言動を行うこ とをいう。 4 複数の類型に該当する場合は,主要なもの一つに計上している。 5 ( )内は,実人員である。 少年院 3 少年院における処遇 (1)少年院の種類及び矯正教育課程 少年院には,次の①から④までの種類があり,それぞれ,少年の年齢,犯罪的傾向の程度,心身の 状況等に応じて,以下の者を収容している。 ① 第1種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がないおおむね 12 歳以上 23 歳未満のもの(②の者を除く。) ② 第2種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ, おおむね 16 歳以上 23 歳未満のもの ③ 第3種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね 12 歳以上 26 歳未満のもの ④ 第4種 少年院において刑の執行を受ける者 少年院においては,在院者の特性に応じて体系的・組織的な矯正教育を実施するため,矯正教育課 程が定められている。矯正教育課程は,在院者の年齢,心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度,在 院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在 院者の類型ごとに,矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものである。 少年院の種類ごとに指定された矯正教育課程は,3-2-4-9 表のとおりであり,令和2年における少 年院入院者の矯正教育課程別人員は,同表の人員欄のとおりである。 134 令和 3 年版 犯罪白書

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3-2-4-9 表 少年院入院者の人員(矯正教育課程別) (令和2年) 符号 少年院 矯正教育課程 の種類 短期義務教育課程 SE 在院者の類型 矯正教育の重点的な内容 原則として 14 歳以上で義務教育を終了し ない者のうち,その者の持つ問題性が単 中学校の学習指導要領に準拠した, 6月以内 純又は比較的軽く,早期改善の可能性が 短期間の集中した教科指導 の期間 大きいもの 義務教育を終了しない者のうち,12 歳に 小学校の学習指導要領に準拠した E1 達する日以後の最初の3月 31 日までの間 教科指導 にあるもの 義務教育課程Ⅱ 義務教育を終了しない者のうち,12 歳に 中学校の学習指導要領に準拠した E2 達する日以後の最初の3月 31 日が終了し 教科指導 たもの 6月以内 の期間 員 15 (0.9) - 51 (3.1) 219(13.5) 社会適応課程Ⅰ A1 義務教育を終了した者のうち,就労上, 修学上,生活環境の調整上等,社会適応 社会適応を円滑に進めるための各 上の問題がある者であって,他の課程の 種の指導 類型には該当しないもの 644(39.7) 社会適応課程Ⅱ A2 義務教育を終了した者のうち,反社会的 自己統制力を高め,健全な価値観 な価値観・行動傾向,自己統制力の低さ, を養い,堅実に生活する習慣を身 認知の偏り等,資質上特に問題となる事 に付けるための各種の指導 情を改善する必要があるもの 172(10.6) 社会適応課程Ⅲ A3 日本の文化,生活習慣等の理解を 外国人等で,日本人と異なる処遇上の配 深めるとともに,健全な社会人と 慮を要する者 して必要な意識,態度を養うため の各種の指導 7 (0.4) 支援教育課程Ⅰ N1 社会生活に必要となる基本的な生 知的障害又はその疑いのある者及びこれ 活習慣・生活技術を身に付けるた に準じた者で処遇上の配慮を要するもの めの各種の指導 86 (5.3) 情緒障害若しくは発達障害又はこれらの 障害等その特性に応じた,社会生 支援教育課程Ⅱ N2 疑いのある者及びこれに準じた者で処遇 活に適応する生活態度・対人関係 上の配慮を要するもの を身に付けるための各種の指導 98 (6.0) 第1種 義務教育を終了した者のうち,知的能力 対人関係技能を養い,適応的に生 の制約,対人関係の持ち方の稚拙さ,非 支援教育課程Ⅲ N3 活する習慣を身に付けるための各 社会的行動傾向等に応じた配慮を要する 種の指導 もの 2年以内 の期間 241(14.8) 社会適応課程Ⅳ A4 健全な価値観を養い,堅実に生活 特に再非行防止に焦点を当てた指導及び する習慣を身に付けるための各種 心身の訓練を必要とする者 の指導 社会適応課程Ⅴ A5 日本の文化,生活習慣等の理解を 外国人等で,日本人と異なる処遇上の配 深めるとともに,健全な社会人と 慮を要する者 して必要な意識,態度を養うため の各種の指導 支援教育課程Ⅳ N4 社会生活に必要となる基本的な生 知的障害又はその疑いのある者及びこれ 活習慣・生活技術を身に付けるた に準じた者で処遇上の配慮を要するもの めの各種の指導 5 (0.3) 情緒障害若しくは発達障害又はこれらの 障害等その特性に応じた,社会生 支援教育課程Ⅴ N5 疑いのある者及びこれに準じた者で処遇 活に適応する生活態度・対人関係 上の配慮を要するもの を身に付けるための各種の指導 3 (0.2) D 身体疾患,身体障害,精神疾患又は精神 心身の疾患,障害の状況に応じた 障害を有する者 各種の指導 40 (2.5) J 受刑在院者 医療措置課程 第4種 受刑在院者課程 個別的事情を特に考慮した各種の 指導 43 (2.6) 少年非行の動向と非行少年の処遇 第2種 注 2年以内 の期間 人 第3 編 義務教育課程Ⅰ 義務教育を終了した者のうち,その者の 出院後の生活設計を明確化するた 短期社会適応課程 SA 持つ問題性が単純又は比較的軽く,早期 めの,短期間の集中した各種の指 改善の可能性が大きいもの 導 第3種 標準的な 期 間 - - - 1 矯正統計年報による。 2 ( )内は,矯正教育課程別の構成比である。 (2)矯正教育 少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり,在院者には,生活指導,職業指導,教科指 導,体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって指導が行われる。少年院の長は,個々の在院 者の特性に応じて行うべき矯正教育の目標,内容,方法,期間等を定めた個人別矯正教育計画を作成 し,矯正教育はこれに基づき実施される。 少年院における処遇の段階は,その者の改善更生の状況に応じた矯正教育その他の処遇を行うた め,1級,2級及び3級に区分されており,在院者は,まず3級に編入され,その後,改善更生の状 犯罪白書 2021 135

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況等に応じて上位又は下位の段階に移行し,これに応じて,その在院者にふさわしい処遇が行われ る。 前記の五つの分野における指導の主な内容は,以下のとおりである。 ア 生活指導 第2章 非行少年の処遇 少年院においては,在院者に対し,善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる 知識及び生活態度を習得させるために必要な生活指導を行う。生活指導は,①基本的生活訓練,②問 題行動指導,③治療的指導,④被害者心情理解指導,⑤保護関係調整指導及び⑥進路指導について, 全体講義,面接指導,作文指導,日記指導,グループワーク等の方法を用いて行われている。 また,在院者の抱える特定の事情の改善に資するために,6種類の特定生活指導が実施されてお り,令和2年における各指導の受講終了人員は,①被害者の視点を取り入れた教育が 43 人,②薬物 非行防止指導が 293 人,③性非行防止指導が 134 人,④暴力防止指導が 456 人,⑤家族関係指導が 399 人,⑥交友関係指導が 915 人であった(法務省矯正局の資料による。)。 このうち,薬物非行防止指導及び性非行防止指導については,重点指導施設が指定され,指導の充 第4節 実が図られている。令和2年度は,薬物非行防止指導では 11 庁,性非行防止指導では2庁が重点指 導施設に指定されており,これらの施設においては,他の少年院からも対象者を受け入れるなどし て,グループワーク等による重点的かつ集中的な指導が実施されている。 少年院 さらに,女子少年については,女子少年に共通する処遇ニーズに対応して全在院者を対象に実施す る処遇プログラムが行われている(詳細については,第4編第7章第2節2項(2)参照)。 イ 職業指導 少年院においては,在院者に対し,勤労意欲を高め,職業上有用な知識及び技能を習得させるため に必要な職業指導を行っており,①就業に必要な専門的知識及び技能の習得を目的とした「職業能力 開発指導」 ,②職業生活における自立を図るための知識及び技能の習得並びに情緒の安定を目的とし た「自立援助的職業指導」 ,③有為な職業人としての一般的な知識及び態度並びに職業選択能力及び 職場適応能力の習得を目的とした「職業生活設計指導」が実施されている。それらの実施種目とし て,電気工事科,自動車整備科,給排水設備科,情報処理科,介護福祉科,溶接科,土木・建築科, クリーニング科,農園芸科,伝統工芸科,手芸科,陶芸科,木工科等がある。 令和2年における出院者(退院又は仮退院により少年院を出院した者に限る。以下この節において 同じ。 )のうち,在院中に指定された職業指導の種目において,溶接,情報処理,土木・建築等の資 格・免許を取得した者は延べ人員で 1,083 人,それ以外の資格取得講座において,小型車両系建設機 械運転,フォークリフト運転,危険物取扱者等の資格・免許を取得した者は延べ人員で 1,687 人で あった(法務省矯正局の資料による。)。 ウ 教科指導 少年院においては,義務教育未終了者及び社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及 び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては,小学校又は中学校の学習指導要領に 準拠した教科指導を行う。そのほか,高等学校への編入若しくは復学,大学等への進学又は就労等の ために高度な学力を身に付けることが必要な者に対しては,その学力に応じた教科指導を行うことが できる。令和2年における出院者のうち,中学校又は高等学校への復学が決定した者は,それぞれ 33 人,60 人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,63 人であった(法務省大臣 官房司法法制部の資料による。)。なお,法務省と文部科学省の連携により,少年院内において,高等 学校卒業程度認定試験を実施しており,同年度の受験者数は 484 人,合格者数は,高卒認定試験合 格者が 220 人,一部科目合格者が 246 人であった(文部科学省総合教育政策局の資料による。)。 136 令和 3 年版 犯罪白書

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エ 体育指導 善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培わせるため必要な体 育指導が行われている。体育指導においては,各種スポーツ種目等を通じて,日常生活に必要な体力 や技能を高めることのみならず,遵法の精神や協調性を育むような指導に留意している。 オ 特別活動指導 第3 編 特別活動指導においては,在院者の情操を豊かにし,自主,自律及び協同の精神を養うため,自主 的活動,クラブ活動,情操的活動,行事及び社会貢献活動が行われている。このうち,社会貢献活動 としては,社会に有用な活動を通じて規範意識,社会性の向上等を図ることを目的として,公共施設 における清掃活動等が行われている。 体育指導の様子 【写真提供:法務省矯正局】 社会貢献活動(近隣の高齢者施設での除草作業)の様子 【写真提供:法務省矯正局】 コラム3 少年院における新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に配慮した教育活動 少年非行の動向と非行少年の処遇 在院者は,各少年院で定められている日課(食事,就寝その他の起居動作をすべき時間帯, 矯正教育の時間帯及び余暇に充てられるべき時間帯を定めたものをいう。)に基づき,「寮」 と呼ばれる生活空間に分かれて,集団生活を送っている場合が多い。集団生活では,とりわ け,新型コロナウイルス感染症感染拡大へのリスク回避が必要となる。そのような状況にお いて,法務省矯正局は,令和2年4月,「矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防 止対策ガイドライン」(第2編第4章コラム1参照)を発出したほか,在院者が新型コロナウ イルスの症状や予防法等について正しい知識を習得することや,感染を拡大させ得る行為等 について学ばせ,在院者自らが積極的に予防対策を実践することができるようになることを 目的として,在院者に対する新型コロナウイルス感染予防指導の方針を示した。同方針に基 づき,各少年院においては,法務教官,医師・看護師等医療関係職員が指導者となり,講話, 講義,集団討議,VTR 視聴等を実施している。また,少年院における篤志面接委員等の民間 協力者による活動は,民間協力者の意向を踏まえつつ,各少年院や地域の感染状況を勘案し, 感染防止対策を講じた上で,実施している。 新型コロナウイルスの感染症対策が講じられている中での矯正教育の実践について,多摩 少年院の事例を紹介する。東京都をホームタウンとするプロサッカークラブである FC 東京 は,平成 28 年度から,多摩少年院において,在院者を対象としたサッカー教室を実施してい るところ,令和元年には,新たに在院者の社会復帰のサポートとして,FC 東京の練習グラ 犯罪白書 2021 137

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ウンド等において職場体験の機会を提供する活動を行っている。在院者は,この職場体験を 通して,FC 東京の活動を支える様々な仕事を実際に体験することで,プロサッカーという 一見華やかに見える世界でも,多くの方々の地道な活動に支えられていることを実感し,感 謝することの必要性等を感じる機会となっている。また,プロとして活躍する選手たちに間 第2章 非行少年の処遇 近で触れることを通し,努力し続けることの大切さを感じ,さらに,その選手たちから,直 接,激励してもらうことで,出院後の更生に向けた決意をより強くしている。令和元年度に おいては,3回(3人)の職場体験が実施され,「J リーグの表舞台に立つ選手たちの活動を 維持するために様々な業務があり,たくさんの人の支えがあって成り立っていることを実感 した。 」 , 「責任を持って仕事をすることの大切さを学ぶことができた。 」等の感想が聞かれる など,在院者にとって,有意義な時間となっていることがうかがえた。しかし,2年度にお いては,新型コロナウイルス感染症感染拡大防止の観点から実施を見合わせなければならな い状況となったことから,同クラブから在院者に向けた動画メッセージが届けられた。同動 画は,18 年間プロサッカー選手として活躍された方が,スタジアムのピッチ上から,自らの 第4節 体験を基に,苦しみの多い時こそ自分にとって何が必要なのかをしっかりと考える必要があ り,そういう時には情けないと思い感じる自分の中に熱=「情熱」のエネルギーがたまるの で,それを自分に向けて取り組んでほしいなどと語りかける熱い激励の言葉を主とする内容 少年院 であった。在院者は,食い入るように動画メッセージを見て,今後の生活への決意を新たに していたという。後日,多摩少年院職員が FC 東京のクラブ事務所に赴き,在院者が選手へ の応援の言葉等を書き込んだメッセージボールを渡すことで,在院者の感謝の気持ちを伝え ている。この事例は,新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に配慮しながら,矯正教育の 実践を続ける好事例の一つといえる。 FC 東京による指導の様子 【写真提供:法務省矯正局】 138 令和 3 年版 犯罪白書

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(3)保護者に対する協力の求め等 少年院においては,在院者の保護者等に対し,在院者の処遇に関する情報の提供,少年院の職員に よる面接の実施,少年院で実施する教育活動への参加依頼等を通じて,在院者の処遇への理解と協力 を得るよう努めている。令和2年に保護者等の参加を依頼した少年院の主な教育活動としては,保護 者等と在院者が共同で活動し,相互理解を深めさせることなどを目的とした保護者参加型プログラム を延べ 137 回(保護者等の参加人員は延べ 880 人),保護者等に在院者の処遇や円滑な社会復帰に向 第3 編 けた支援内容に関する理解を深めさせることを目的とした保護者会を延べ 679 回(保護者等の参加 人員は延べ 2,248 人),家族間のコミュニケーション等に関する講習会を延べ 137 回(保護者等の参 加人員は延べ 753 人)実施した(法務省矯正局の資料による。)。 また,少年院においては,家族関係を調整する上で必要があると認められる場合のほか,在院者と 保護者等との間で,将来の進路や出院後の生活,被害弁償等の重要な問題について話し合う必要があ ると認められるなどの場合,在院者を少年院の特に区分した場所に収容し,同所にその保護者等を宿 泊させる方法により面会をさせることができる(宿泊面会)が,令和2年に実施された宿泊面会は延 べ 11 回であった(法務省矯正局の資料による。)。 (4)関係機関等に対する協力の求め等 少年院においては,家庭裁判所等の関係機関を始めとして,学校,病院,民間の篤志家等に対して 協力を求め,その専門的な知識・技術を活用して在院者の改善更生を図っている。 民間の篤志家として,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS 会員等が支援活動を行っ ている。篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行ってお り,令和2年末現在,415 人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料によ る。 ) 。教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており,同年末現在,311 人を少年院の教誨 師として依頼している(法務省矯正局の資料による。第2編第4章第4節3項参照)。更生保護女性 会員,BBS 会員等は,定期的に少年院を訪問し,様々な形で少年院の処遇を支援している(同編第 5章第6節4項(1)及び(2)参照)。 少年非行の動向と非行少年の処遇 (5)社会復帰支援 少年院は,出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては,その意向を尊重し つつ,保護観察所と連携して,適切な帰住先を確保すること,医療及び療養を受けることを助けるこ と,修学又は就業を助けることなどの社会復帰支援を行っている。 法務省においては,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策の一環として,少年 院在院者に対してハローワークの職員による職業相談等を実施しており(第2編第4章第3節4項参 照) ,また,障害を有し,かつ,適当な帰住先がない在院者に対して,出院後速やかに福祉サービス を受けることができるようにするための特別調整を実施している(同節5項及び同編第5章第2節2 項参照) 。 令 和 2 年 に お け る 出 院 者 の う ち, 就 労 支 援 の 対 象 者 に 選 定 さ れ て 支 援 を 受 け た 者 は 448 人 (26.4%) ,そのうち就職の内定を得た者は 142 人(出院者の 8.4%,就労支援を受けた者の 31.7%) であった(矯正統計年報による。出院者の進路については,本節4項(1)参照)。 さらに,少年院においては,高等学校等への復学等を希望している在院者又は中学校への復学等が 見込まれる在院者に対し,出院後の円滑な復学等を図るために行う修学支援についても充実が図られ ている。平成 28 年度からは,全在院者に対し,「学ぶ」ことの意義,学校の種類,学校卒業後の進路 等について情報提供することを目的とした修学支援ハンドブックが配布され,在院者が自分の将来に ついて考え,学ぶ意欲を持つことができるよう配慮されている(なお,修学支援ハンドブックは, 30 年度から,少年鑑別所においても在所者のうち希望する者に配布され,活用されている。)。また, 犯罪白書 2021 139

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転学又は入学が可能な学校や,利用可能な経済的支援等に係る情報収集と提供を民間の事業者に委託 する修学支援情報提供等請負業務(通称「修学支援デスク」)が整備され,在院者がこれを利用して 転入学に関する具体的な情報を得られるようになった。令和2年度における修学支援デスクの利用状 況は,進路希望依頼が 254 件,調査報告が 753 件であった(法務省矯正局の資料による。)。 第2章 非行少年の処遇 4 出院者 (1)出院状況・進路 令和2年における少年院の出院者は 1,698 人であり,このうち 1,692 人(99.6%)が仮退院による ものであった。仮退院者の平均在院期間を出院時の矯正教育課程別に見ると,短期義務教育課程 (SE)又は短期社会適応課程(SA)の対象者では 146 日,SE 及び SA 以外の対象者では 383 日であっ た(矯正統計年報による。)。 出院者の進路は,36.8%が就職決定,0.6%が進学決定,1.9%が中学校復学決定,3.5%が高等学 校復学決定,0.6%が短期大学・大学・専修学校復学決定であり,38.5%が就職希望,15.5%が進学 第4節 希望,1.4%が進路未定であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 (2)帰住先 少年院 令和2年における出院者の出院時引受人別構成比を男女別に見ると,3-2-4-10 図のとおりである。 3-2-4-10 図 少年院出院者の出院時引受人別構成比(男女別) (令和2年) 男 子 (1,551) 19.9 38.5 13.9 4.8 1.1 女 子 (147) 17.0 32.7 9.5 7.5 14.3 5.7 14.1 1.8 6.8 0.2 10.9 1.4 実父母 更生保護施設・自立準備ホーム 注 実母 福祉施設 実父 その他 実父義母 引受人なし 義父実母 1 矯正統計年報による。 2 「その他」は,養父(母),雇用主等である。 3 ( )内は,実人員である。 (3)出院者等からの相談 少年院においては,出院者又はその保護者等から,出院者の交友関係,進路選択等について相談を 求められた場合において,相当と認めるときは,少年院の職員がその相談に応じている。また,他の 機関が対応をすることが適当である場合には,他の適切な機関を紹介するとともに,仮退院した者に 係る相談を求められた場合には,保護観察所と連携して対応に当たっている。令和2年における出院 者又はその保護者等からの相談件数は 675 件であり,そのうち主な相談内容の件数(重複計上によ る。 )は,進路選択が 123 件,家族関係が 120 件,交友関係が 97 件であった(法務省矯正局の資料 による。 ) 。 140 令和 3 年版 犯罪白書

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5 少年院の運営等 (1)少年院視察委員会 各少年院には,法務大臣が任命する7人以内の外部の委員で構成され,少年院を視察し,その運営 に関し,少年院の長に対して意見を述べる少年院視察委員会が設置されている。在院者は,委員によ る面接を希望する場合には,これを申し出ることができるほか,委員会に対する意見等がある場合に 第3 編 は,意見等を記載した書面を少年院内に設置された提案箱に投かんすることができる。令和2年度に おける少年院視察委員会の活動状況は,会議の開催 205 回,少年院の視察 67 回,在院者との面接 395 件であり,同委員会が少年院の長に対して提出した意見は 330 件であった(法務省矯正局の資 料による。)。 (2)保健衛生・医療 在院者には,できる限り戸外で,健全な心身の成長を図るため適切な運動を行う機会が与えられて いる。運動においては,矯正教育における体育指導とは異なり,在院者の自主性が尊重されている。 また,少年院においては,職員である医師等又は少年院の長が委嘱する医師等が,在院者の診療を行 い,必要な医療上の措置を執っている(第2編第4章第4節2項参照)。 なお,令和3年4月1日現在,専門的に医療を行う少年院(第3種)として,東日本少年矯正医 療・教育センター及び京都医療少年院の2庁が設置されている。 (3)規律・秩序の維持 在院者の処遇の適切な実施を確保し,その改善更生及び円滑な社会復帰を図るのにふさわしい安全 かつ平穏な共同生活を保持するためには,少年院の規律及び秩序は適正に維持されなければならな い。そのため,少年院においては,少年院法により定められた要件や手続等に基づき,少年院の規律 及び秩序を害する反則行為をした在院者に対して,不利益処分である懲戒を行うことがある。懲戒 は,少年院の規律及び秩序の維持を主たる目的としつつ,当該在院者の規範意識を喚起する教育的機 能を持つものであり,①厳重な訓戒(少年院の長が,反則行為をした在院者にその非を教え,今後を 少年非行の動向と非行少年の処遇 戒めるもの),② 20 日以内の謹慎(反則行為をした在院者を集団処遇から離脱させ,居室内で処遇す ることで反省を促すもの)の2種類がある。令和2年における出院者(1,698 人)のうち,在院中に, 厳重な訓戒の処分を受けた者は 196 人,20 日以内の謹慎の処分を受けた者は 398 人であった(法務 省大臣官房司法法制部の資料による。)。 (4)不服申立制度 不服申立制度として,救済の申出及び苦情の申出の制度がある。救済の申出は,自己に対する少年 院の長の措置その他自己が受けた処遇について苦情があるときに,法務大臣に対して,救済を求める 申出をすることができる制度であり,苦情の申出は,自己に対する少年院の長の措置その他自己が受 けた処遇について,監査官及び少年院の長に対して申出をすることができる制度である。令和2年に おける救済の申出件数は,62 件であった(法務省矯正局の資料による。)。 犯罪白書 2021 141

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保護観察 第5節 概説 1 少年は,家庭裁判所の決定により保護観察に付される場合のほか,保護観察所で生活環境の調整 第2章 非行少年の処遇 (第2編第5章第2節2項参照)を行い,地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院が許 された場合にも,保護観察に付される。 家庭裁判所が,少年を保護観察に付する決定をする場合,短期保護観察又は交通短期保護観察が相 当である旨の処遇勧告をすることがあるが,その場合,保護観察はこの勧告に従って行われる。短期 保護観察は,交通事件以外の非行少年であって,非行性の進度がそれほど深くなく,短期間の保護観 察により更生が期待できる者を対象とするものである。交通短期保護観察は,交通事件による非行少 年であって,一般非行性がないか又はその進度が深くなく,交通関係の非行性も固定化していない者 を対象とするものであり,通常の処遇に代えて,集団処遇を中心とした処遇を集中的に実施してい る。 第5節 少年の保護観察対象者 2 保護観察 (1)保護観察開始人員の推移 保護観察処分少年(家庭裁判所の決定により保護観察に付されている者)及び少年院仮退院者(少 年院からの仮退院を許されて保護観察に付されている者)について,保護観察開始人員の推移(最近 50 年間)を見ると,3-2-5-1 図のとおりである。保護観察処分少年の保護観察開始人員は,平成 11 年以降減少し続け,令和2年は1万 733 人(前年比 1,094 人(9.3%)減)であった。少年院仮退院 者の保護観察開始人員は,平成9年から 14 年まで増加していたが,その後,減少傾向にあり,令和 2年は 1,692 人(同 361 人(17.6%)減)であった(CD-ROM 資料 2-8 参照)。 3-2-5-1 図 少年の保護観察開始人員の推移 (昭和 46 年~令和 2 年) (万人) 9 保護観察処分少年のうち, 交通短期保護観察の対象者 保護観察処分少年のうち, 短期保護観察の対象者 保護観察処分少年のうち, 短期及び交通短期保護観察 の対象者を除いたもの 8 7 6 少年院仮退院者 5 4 3 12,425 2 1 0 昭和 46 注 142 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30令和2 3,508 1,335 5,890 1,692 1 保護統計年報による。 2 「交通短期保護観察」及び「短期保護観察」については,それぞれ制度が開始された昭和 52 年,平成6年以降の数値を計上している。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)保護観察対象者の特徴 ア 年齢 保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。)及び少年院仮 退院者について,令和2年における保護観察開始人員の年齢層別構成比を見ると,3-2-5-2 図のとお りである。 少年の保護観察開始人員の年齢層別構成比 第3 編 3-2-5-2 図 (令和2年) 保護観察 処分少年 16 歳未満 16・17 歳 18・19 歳 11.2 36.8 52.0 (7,225) 20 歳以上 少 年 院 仮退院者 3.8 23.2 (1,692) 注 45.2 27.8 1 保護統計年報による。 2 保護観察に付された日の年齢による。 3 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 イ 非行名 保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,令和2年における保護観察開始人員の非行名別構 成比を見ると,3-2-5-3 図のとおりである。保護観察処分少年では,男女共,窃盗が最も高く,次い で,道路交通法違反,傷害・暴行の順であった。少年院仮退院者では,男子は窃盗が最も高く,次い で,傷害・暴行,詐欺の順であり,女子は窃盗が最も高く,次いで,傷害・暴行及びぐ犯であった (CD-ROM 参照)。 3-2-5-3 図 少年の保護観察開始人員の非行名別構成比 少年非行の動向と非行少年の処遇 (令和2年) 強制性交等・強制わいせつ 保護観察 処分少年 (7,225) 少 年 院 仮退院者 (1,686) 注 窃盗 道路交通法 過失運転致死傷等 傷害・暴行 28.1 17.3 14.3 恐喝 2.4 覚醒剤取締法 0.2 6.1 3.4 23.1 詐欺 2.9 住居侵入 2.2 30.7 5.1 20.3 4.3 1.3 9.1 その他 4.6 1.1 21.2 2.4 1 保護統計年報による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 4 少年院仮退院者は,施設送致申請に基づき少年法 26 条の4第1項の決定により少年院に収容され仮退院した6人を除く。 5 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 143

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ウ 居住状況 保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,令和2年における保護観察開始人員の居住状況別 構成比を見ると,3-2-5-4 図のとおりである。 3-2-5-4 図 少年の保護観察開始人員の居住状況別構成比 第2章 非行少年の処遇 (令和2年) 保護観察 処分少年 45.1 (7,221) 32.7 7.0 4.2 5.2 5.7 0.1 少 年 院 仮退院者 35.7 (1,691) 33.9 第5節 保護観察 1 2 3 4 5 6 7 4.7 5.7 9.3 2.3 両親と同居 更生保護施設 注 8.5 母と同居 単身居住 父と同居 その他 その他の親族と同居 保護統計年報による。 保護観察開始時の居住状況による。 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 「その他の親族と同居」は,配偶者(内縁関係にある者を含む。以下同じ。)と同居を含まない。 「その他」は,配偶者と同居,雇主宅等である。 居住状況が不詳の者を除く。 ( )内は,実人員である。 エ 就学・就労状況 保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,令和2年における保護観察開始時の就学・就労状 況別構成比を見ると,3-2-5-5 図のとおりである(年齢層別の人員については,CD-ROM 参照)。 3-2-5-5 図 少年の保護観察開始人員の就学・就労状況別構成比 (令和2年) 保護観察 処分少年 (7,218) 少 年 院 仮退院者 (1,685) 注 144 1 2 3 4 5 有職 無職 学生・生徒 49.8 14.5 35.1 家事従事者 26.0 保護統計年報による。 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 保護観察開始時の就学・就労状況による。 就学・就労状況が不詳の者を除く。 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 65.0 0.6 8.0 1.0

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少年の保護観察対象者に対する処遇 3 保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対する処遇は,基本的に,特定暴力対象者に対する処遇, 専門的処遇プログラム及び中間処遇制度を除き,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者に対 する処遇と同様である(第2編第5章第3節2項参照)。 第3 編 (1)類型別処遇 保護観察処分少年(短期保護観察及び交通短期保護観察の対象者を除く。以下(1)において同 じ。 )及び少年院仮退院者に対しても,類型別処遇(第2編第5章第3節2項(2)ア参照)が実施 されている。令和2年 12 月末日における保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型の認定状況を 見ると,3-2-5-6 表のとおりである。なお,3年1月に新たに加えられた類型の同年3月末日現在の 認定状況を見ると,ストーカー23 人(保護観察処分少年 21 人,少年院仮退院者2人),特殊詐欺 348 人(同 224 人,124 人) ,嗜癖的窃盗 22 人(同 19 人,3人)及び就学 1,153 人(同 1,017 人, 136 人)であった(法務省保護局の資料による。なお,特殊詐欺類型については第8編第4章第2節 参照) 。 3-2-5-6 表 少年の保護観察対象者の類型認定状況 (令和2年 12 月 31 日現在) 区分 暴力団 精 神 家庭内 ギャンブル 類型 シンナー 覚せい剤 問題飲酒 暴走族 性犯罪等 中学生 校内暴力 無職等 等乱用 事 犯 関 係 障害等 暴 力 等 依 存 保護観察処分少年 少年院仮退院者 注 4 34 205 13 239 743 600 254 49 712 142 33 (0.0) (0.4) (2.5) (0.2) (2.9) (9.2) (7.4) (3.1) (0.6) (8.8) (1.8) (0.4) 117 219 393 17 528 1 50 76 (0.0) (2.4) (3.7) 8 (0.4) (5.7) (10.7) (19.2) 21 (1.0) (0.8) (25.8) 63 33 (3.1) (1.6) 1 保護統計年報及び法務省保護局の資料による。 2 複数の類型に認定されている者については,該当する全ての類型について計上している。 3 ( )内は,令和2年 12 月 31 日現在,保護観察中の保護観察処分少年(交通短期保護観察及び短期保護観察の対象者を除く。 )及び 少年院仮退院者の各総数(類型が認定されていない者を含む。)のうち,各類型に認定された者の占める比率である。 少年非行の動向と非行少年の処遇 (2)凶悪重大な事件を起こした少年に対する処遇 殺人等の凶悪重大な事件を起こした保護観察処分少年及び少年院仮退院者は,生活環境の調整及び 保護観察の実施において特段の配慮を要するため,重点的な処遇期間(保護観察開始後1年間)を定 め,保護観察官の関与を深めるとともに,しょく罪指導プログラム(第2編第5章第3節2項(2) エ参照)を実施するなど,被害者への対応に関する助言指導も行っている。 (3)専門的処遇プログラム 保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しては,その者の非行事実等に照らして必要と認められ る場合,その特性等に十分配慮した上で,専門的処遇プログラムを受けることを生活行動指針として 定め,当該プログラムが実施されることがある(第2編第5章第3節2項(2)ウ参照)。 (4)社会貢献活動 かん 保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しても,社会性の向上,自己有用感の涵養,規範意識の 強化等を図るため,社会貢献活動が実施されており,平成 27 年6月からは,特別遵守事項として定 めて義務付けられている。令和2年度は 379 回(前年比 663 回減)実施され,延べ人員として,353 人(同 497 人減)の保護観察処分少年,43 人(同 115 人減)の少年院仮退院者が参加した(法務省 保護局の資料による。社会貢献活動の内容等については,第2編第5章第3節2項(5)参照)。 犯罪白書 2021 145

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(5)就労支援等 保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しても,法務省と厚生労働省が連携して実施している刑 務所出所者等総合的就労支援対策に基づく計画的な就労支援及び更生保護就労支援事業による寄り添 い型の就労支援が行われている(第2編第5章第3節2項(4)参照)。また,沼田町就業支援セン ターでは,将来の就農に意欲を持つ保護観察処分少年,少年院仮退院者及び若年仮釈放者を宿泊させ 第2章 非行少年の処遇 て,実習農場等において職業訓練を実施している(同項(6)参照)。 (6)保護者に対する措置 保護観察所においては,少年の保護観察対象者の保護者に対し,少年の生活実態等を把握して適切 にその監護に当たるべきことや,少年の改善更生を妨げていると認められる保護者の行状を改めるべ きことについて指導又は助言を行うほか,少年の非行に関連する問題の解消に資する知識等の提供を 目的とする講習会や,保護者同士が子育てに関する経験,不安や悩みを話し合う保護者会を開催する などしている。令和2年度においては,講習会・保護者会等が 23 回(前年比 19 回減)実施され, 91 人(前年比 319 人減)が参加した(法務省保護局の資料による。)。 第5節 4 少年の保護観察対象者に対する措置 保護観察 (1)良好措置 保護観察処分少年は,原則として,20 歳に達するまで(その期間が2年に満たない場合には2年 間)保護観察を受けるが,保護観察を継続しなくとも確実に改善更生することができると認められる に至ったときは,保護観察所の長の判断により,解除の措置が執られて保護観察は終了する。また, 保護観察所の長の判断により,一定期間,指導監督,補導援護等を行わず経過を観察する一時解除の 措置が執られることもある。少年院仮退院者は,少年院の収容期間(収容すべきであった期間)の満 了まで保護観察を受けるが,保護観察を継続しなくとも確実に改善更生することができると認められ るに至ったときは,保護観察所の長の申出に基づき地方更生保護委員会が退院を決定し,保護観察は 終了する。令和2年に解除となった者(交通短期保護観察の対象者を除く。 )は 5,621 人,一時解除 となった者は 12 人,退院となった者は 196 人であった(保護統計年報による。)。 (2)不良措置 保護観察所の長は,保護観察処分少年が遵守事項を遵守しなかったときは,これを遵守するよう警 告を発することができ,なお遵守事項を遵守せず,その程度が重いときは,家庭裁判所に対し,新た な保護処分として児童自立支援施設・児童養護施設送致又は少年院送致の決定をするように申請(施 設送致申請)することができる。また,保護観察所の長は,保護観察処分少年について,新たにぐ犯 事由があると認めるときは,家庭裁判所に通告することができる。令和2年に警告がなされた人員は 13 人,施設送致申請がなされた者は3人,通告がなされた者は2人であった(保護統計年報及び法 務省保護局の資料による。)。 少年院仮退院者が遵守事項を遵守しなかったときは,保護観察所の長の申出と地方更生保護委員会 の申請を経て,家庭裁判所の決定により,少年院に再収容(戻し収容)することがある。令和2年に 戻し収容となった者は,3人であった(保護統計年報による。)。 146 令和 3 年版 犯罪白書

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5 少年の保護観察の終了 保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。)及び少年院仮 退院者について,令和2年における保護観察終了人員の終了事由別構成比を総数及び保護観察終了時 の就学・就労状況別に見ると,3-2-5-7 図のとおりである。保護観察終了時に無職である者は,保護 観察処分少年では 42.9%,少年院仮退院者では 38.2%が保護処分の取消し(競合する新たな処分を 第3 編 受けたことなどにより,保護処分が取り消されること)で終了している(年齢層別の人員について は,CD-ROM 参照)。 3-2-5-7 図 ① 少年の保護観察終了人員の終了事由別構成比(総数,終了時の就学 ・ 就労状況別) (令和2年) 保護観察処分少年 総 数 (7,659) 解除 期間満了 保護処分 の取消し 73.4 13.3 13.1 その他 0.2 無 職 33.4 (602) 22.9 42.9 0.8 有 職 74.2 (4,918) 14.3 11.3 0.2 学生・生徒 90.1 (1,845) 8.1 1.7 0.1 ② 少年院仮退院者 総 数 期間満了 保護処分 の取消し 9.1 76.7 13.8 戻し収容 0.1 1.2 無 少年非行の動向と非行少年の処遇 (2,144) 退院 その他 0.2 0.6 職 59.4 (340) 38.2 0.6 有 職 (1,543) 9.8 81.5 8.5 0.1 学生・生徒 (142) 27.5 62.7 0.1 9.2 0.7 注 1 保護統計年報による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「総数」は,「無職」, 「有職」及び「学生・生徒」のほか,家事従事者,定収入のある無職者及び不詳の者を含む。 4 「保護処分の取消し」は,保護観察開始前の非行・犯罪によって,競合する新たな処分を受けたことにより,前の保護処分が取り消 される場合等を含む。 5 「その他」は,死亡等である。 6 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 147

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第 3章 第3章 少年の刑事手続 第1節 1 少年の刑事手続 概要 起訴と刑事裁判 検察官は,家庭裁判所から刑事処分相当として少年の事件の送致を受けた場合,公訴を提起するに 足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは,原則として,公訴を提起しなければならない。 起訴された少年の公判の手続は,20 歳以上の者の場合とほぼ同様である。ただし,裁判所は,事 実審理の結果,少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは,決定で,事件を家 庭裁判所に移送する。 少年を有期の懲役又は禁錮をもって処断すべきときは,刑の執行を猶予する場合を除き,処断すべ 第1節 (長期が 10 年を下回るときは,長期から5年を減じた期間。以下この項において同じ。)を下回らな 概要 き刑の範囲内において,長期(15 年を超えることはできない。)を定めるとともに,長期の2分の1 定期刑の短期は,少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは,処断すべき い範囲内において短期(10 年を超えることはできない。)を定めて,不定期刑を言い渡す。また,不 刑の短期の2分の1を下回らず,かつ,長期の2分の1を下回らない範囲内において,処断刑の下限 を下回る期間を定めることができる。犯行時 18 歳未満の者には,死刑をもって処断すべきときは無 期刑を科さなければならず,無期刑をもって処断すべきときであっても,有期の懲役又は禁錮を科す ることができる。この場合において,その刑は,10 年以上 20 年以下において言い渡す。 2 刑の執行 少年の受刑者は,主として少年刑務所に収容され,20 歳以上の者と分離し,特に区画した場所で その刑の執行を受ける。懲役又は禁錮の言渡しを受けた 16 歳未満の少年に対しては,16 歳に達する までは,少年院で刑の執行をすることができる。 3 仮釈放 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については,無期刑の言渡しを受けた者は7年(ただ し,犯行時 18 歳未満であったことにより死刑をもって処断すべきところを無期刑の言渡しを受けた 者については 10 年),犯行時 18 歳未満であったことにより無期刑をもって処断すべきところを有期 刑の言渡しを受けた者はその刑期の3分の1,不定期刑の言渡しを受けた者はその刑の短期の3分の 1の期間をそれぞれ経過した後,仮釈放を許すことができる。 148 令和 3 年版 犯罪白書

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起訴と刑事裁判 第2節 検察庁での処理状況 1 3-3-2-1 表は,令和2年における逆送事件(少年法 20 条に基づき家庭裁判所から検察官に送致さ れた事件)の検察庁処理人員を罪名別に見るとともに,これを処理区分別に見たものである。 第3 編 3-3-2-1 表 逆送事件 検察庁処理人員(罪名別,処理区分別) (令和2年) 罪 名 総 総 起 訴 家庭裁判所に 再 送 致 公判請求 不起訴・中止 数 1,610 1,577 192 14 19 犯 102 99 94 - 3 火 - - - - - 強制わいせつ・強制性交等 1 1 1 - - 刑 法 放 人 7 7 7 - - 傷 害 16 16 13 - - 窃 盗 30 29 28 - 1 強 盗 19 19 19 - - 詐 欺 14 13 13 - 1 恐 喝 2 2 2 - - 他 13 12 11 - 1 危 険 運 転 致 死 傷 9 9 9 - - 過 失 運 転 致 死 傷 等 65 64 30 1 - 犯 1,434 1,405 59 13 16 道交違反を除く特別法犯 18 17 10 - 1 特 の 別 法 覚 醒 剤 取 締 法 そ 道 の 交 違 3 3 3 - - 他 15 14 7 - 1 反 1,416 1,388 49 13 15 少年非行の動向と非行少年の処遇 殺 そ 注 数 1 検察統計年報による。 2 移送及び年齢超過後の処分を除く。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 犯罪白書 2021 149

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通常第一審の科刑状況 2 3-3-2-2 表は,令和2年における少年の通常第一審での科刑状況を罪名別に見るとともに,これを 裁判内容別に見たものである。 第3章 少年の刑事手続 3-3-2-2 表 通常第一審における少年に対する科刑状況(罪名別,裁判内容別) (令和2年) 有 期 懲 役・禁 錮 罪 総 74 犯 16 わいせつ等 1 殺 人 3 傷 害 窃 盗 強 詐 法 第2節 起訴と刑事裁判 恐 - 無期 懲役 不定期刑 定 期 刑 一部執行猶予 保 護 観察付 55 - - 家裁 移送 罰金 全部執行猶予 保 護 観察付 - 17 55 2 2 4 - - 10 6 - - 6 1 - 1 - - - 1 - - 1 - - 1 - - 3 - - - - - - - 1 - - - 1 - - 1 - - - 3 - - 1 2 - - 2 1 - - 盗 4 - - 4 - - - - - - - 欺 3 - - 2 1 - - 1 - - - 喝 1 - - - 1 - - 1 - - - 他 - - - - - - - - - - - 犯 58 - - 7 49 - - 49 1 2 3 覚醒剤取締法 3 - - 2 1 - - 1 - - - 道路交通法 35 - - 2 31 - - 31 - 2 - 自動車運転 死傷処罰法 20 - - 3 17 - - 17 1 - 2 - - - - - - - - - - 1 そ 特 の 別 そ 150 死刑 数 刑 注 有罪 総数 名 法 の 他 1 司法統計年報による。 2 「わいせつ等」は,刑法第2編第 22 章の罪をいう。 3 「傷害」は,刑法第2編第 27 章の罪をいう。 4 裁判時 20 歳未満の者に限る。 令和 3 年版 犯罪白書

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第3節 少年の受刑者 少年入所受刑者(懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年であって,その刑の執行のため入所した受刑 者をいう。 )の人員は,昭和 41 年には 1,000 人を超えていたが,その後,大幅に減少し,63 年以降 は 100 人未満で推移し,令和2年は 19 人(前年比3人増)であった。2年における少年入所受刑者 の人員を刑期(不定期刑は,刑期の長期による。)別に見ると,無期が0人,5年を超える者が 11 第3 編 人,3年を超え5年以下の者が1人,3年以下の者が7人であった(CD-ROM 資料 3-12 参照)。な お,同年は,少年入所受刑者中,一部執行猶予受刑者はいなかった(法務省大臣官房司法法制部の資 料による。)。 少年の受刑者については,心身が発達段階にあり,可塑性に富んでいることから,刑事施設ではそ の特性に配慮した処遇を行っている。すなわち,処遇要領の策定(第2編第4章第3節1項(1)参 照)に関しては,導入期,展開期及び総括期に分けられた処遇過程ごとに,矯正処遇の目標及びその 内容・方法を定めている。また,矯正処遇の実施に関しては,教科指導を重点的に行い,できる限り 職業訓練を受けさせ,一般作業に従事させる場合においても,有用な作業に就業させるなどの配慮を している。 さらに,少年の受刑者ごとに1人以上の職員を指定し(個別担任制),その個別担任において,他 の職員と緊密な連携を図りつつ,個別面接,日記指導等の個別に行う指導を継続的に実施している。 なお,少年院において刑の執行をするときには,少年には,矯正処遇ではなく,矯正教育を行う (3-2-4-9 表参照)。 少年非行の動向と非行少年の処遇 犯罪白書 2021 151

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第4 編 刑事施設における交通安全指導の様子 【写真提供:法務省矯正局】 「DV相談ナビ」 【画像提供:内閣府男女共同参画局】 4編 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 第 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第 10 章 第 11 章 交通犯罪 薬物犯罪 組織的犯罪・暴力団犯罪 財政経済犯罪 サイバー犯罪 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪 女性犯罪・非行 高齢者犯罪 外国人犯罪・非行 精神障害のある者による犯罪等 公務員犯罪

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第 1章 第1章 交通犯罪 第1節 1 交通犯罪 交通犯罪関係法令の改正状況 自動車運転死傷処罰法 平成 25 年 11 月,自動車の運転による死傷事件に対して,運転の悪質性や危険性等の実態に応じた 処罰ができるようにするため,自動車運転死傷処罰法が成立し,26 年5月に施行された。この法律 において,①従来の危険運転致死傷罪が刑法から移されて規定されるとともに,危険運転致死傷罪の 新たな類型として,通行禁止道路において重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転して人 第1節 を死傷させた場合が追加され,②アルコール,薬物又は病気の影響により正常な運転に支障が生じる おそれがある状態で自動車を運転し,アルコール等の影響により正常な運転が困難な状態に陥り,人 を死傷させた場合が,従来の危険運転致死傷罪より刑の軽い,新たな危険運転致死傷罪として新設さ 交通犯罪関係法令の改正状況 れた。また,③従来の自動車運転過失致死傷罪が刑法から移されて過失運転致死傷罪として規定され るとともに,④アルコール又は薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を 運転して過失により人を死傷させ,その運転のときのアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発 覚することを免れる行為をした場合が,過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪として新設さ れ,⑤危険運転致死傷罪,過失運転致死傷罪及び過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪を犯し た時に無免許運転であったときは,刑を加重する規定が新設された。 さらに,令和2年法律第 47 号による改正では,いわゆるあおり運転に関し,自動車運転による死 傷事犯の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処をするため,①車の通行を妨害する目的で,走行中 の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し,その他 これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転して人を死傷させた場合,②高速自動車国道等 において,自動車の通行を妨害する目的で,走行中の自動車の前方で停止し,その他これに著しく接 近することとなる方法で自動車を運転することにより,走行中の自動車に停止又は徐行をさせて人を 死傷させた場合が,危険運転致死傷罪の新たな類型として追加された(令和2年7月施行)。 2 道路交通法 道路交通法については,平成 27 年法律第 40 号による改正で,一定の違反行為をした 75 歳以上の 運転者に対して臨時認知機能検査を行い,その結果が直近において受けた認知機能検査の結果と比較 して悪化している場合に臨時高齢者講習を実施することとされたほか,運転免許証の更新時の認知機 能検査又は臨時認知機能検査の結果,認知症のおそれがあると判定された者には,その者の違反状況 にかかわらず,臨時適性検査の受検又は医師の診断書提出を要することとされた(平成 29 年3月施 行) 。 また,令和元年法律第 20 号による改正により,①自動車の自動運転技術の実用化に対応した運転 者等の義務に関する規定が整備されるとともに,②自動車等を運転中に携帯電話等を使用する行為等 の法定刑が引き上げられた(①は令和2年4月に,②は元年 12 月にそれぞれ施行)。 さらに,令和2年法律第 42 号による改正では,①他の車両等の通行を妨害する目的で,当該他の 車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法により,一定の違反(通行区分,急 ブレーキ禁止,車間距離保持等の規定違反)行為をした者を妨害運転(あおり運転)として処罰する 規定や,妨害行為により高速自動車国道等において他の自動車を停止させ,その他道路における著し 154 令和 3 年版 犯罪白書

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い交通の危険を生じさせた者を加重処罰する規定等を新設し,②一定の違反行為をした 75 歳以上の 者は,運転免許証の更新を受けようとする場合,運転免許証の更新期間満了日の前6か月以内に,運 転技能検査を受けなければならず,公安委員会は,運転技能検査の結果が,一定の基準に達しない者 には運転免許証の更新をしないことができるとするなどの高齢運転者対策を充実・強化した(①は令 和2年6月に,②は4年6月までにそれぞれ施行)。 第2節 1 犯罪の動向 交通事故の発生動向 第4 編 交通事故(道路交通法2条1項1号に規定する道路において,車両等及び列車の交通によって起こ された事故に係るものであり,昭和 41 年以降は,人身事故に限る。以下この節において同じ。)の発 生件数及び交通事故による死傷者数の推移(23 年以降)は,4-1-2-1 図のとおりである(詳細につ いては,CD-ROM 資料 4-1 参照) 。発生件数及び負傷者数は,平成 17 年以降減少し続けており,27 年から令和元年まで前年比それぞれ5%台から 11%台,6%台から 12%台で減少したところ,2年 は,それぞれ 30 万 9,178 件(前年比 18.9%減),36 万 9,476 人(同 20.0%減)であった。死亡者数 も,平成4年(1万 1,452 人)をピークに減少傾向にあり,令和2年は 2,839 人(同 376 人減)と, 昭和 23 年以降初めて 3,000 人を下回り,最少を更新した(CD-ROM 資料 4-1 参照)。 4-1-2-1 図 交通事故 発生件数・死傷者数の推移 (昭和 23 年~令和2年) (発生件数:万件) (負傷者数:万人) 120 100 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 80 負傷者数 60 40 369,476 309,178 発生件数 20 0 昭和 23 25 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30 令和2 (万人) 2 1 0 注 死亡者数 2,839 1 警察庁交通局の統計による。 2 「発生件数」は,道路交通法2条1項1号に規定する道路において,車両等及び列車の交通によって起こされた事故に係るものであ り,昭和 41 年以降は,人身事故に限る。 3 「発生件数」及び「負傷者数」は,昭和 34 年以前は,2万円以下の物的損害及び1週間以下の負傷の事故を除く。 4 「死亡者」は,交通事故により発生から 24 時間以内に死亡した者をいう。 犯罪白書 2021 155

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交通事故の発生件数(第一当事者(事故当事者のうち最も過失の重い者をいい,過失が同程度の場 合は,人身損傷程度が軽い者をいう。以下この項において同じ。)が自動車,自動二輪車及び原動機 付自転車の運転者に係るものに限る。以下この項において同じ。)の推移(最近 20 年間)を第一当事 者の年齢層別に見ると,4-1-2-2 図のとおりである。少年が第一当事者の交通事故の発生件数は,平 成 13 年から減少し続けており,令和2年(9,225 件)は平成 13 年(5万 2,000 件)の約6分の1の 第1章 交通犯罪 水準であった。また,20~29 歳の者が第一当事者の交通事故の発生件数も,13 年から減少し続けて おり,令和2年(5万 302 件)は平成 13 年(26 万 3,706 件)の約5分の1の水準であった。一方, 65~74 歳の者が第一当事者の交通事故の発生件数は,19 年(7万 3,609 件)まで増加し続けた後は, 横ばいないし減少傾向にあったが,26 年(6万 7,900 件)以降は減少し続けており,令和2年は4 万 2,768 件(前年比 19.1%減)であった。75 歳以上の者が第一当事者の交通事故の発生件数は,平 成 25 年(3万 4,759 件)まで増加し続けた後,おおむね横ばいないしわずかな減少にとどまってい たが,30 年(3万 1,935 件)以降は減少し続けており,令和2年は2万 5,812 件(同 15.3%減)で 第2節 あった。 交通事故の発生件数における高齢者率(第一当事者が高齢者であるものが占める比率をいう。)は, 上昇し続けており,令和2年は 23.7%(前年比 0.4pt 上昇)であった。 犯罪の動向 なお,交通事故による死亡者数を年齢層別に見ると,そのうちの高齢者が占める比率は,令和2年 は 56.2%(前年比 0.8pt 上昇)であった(警察庁交通局の統計による。)。 4-1-2-2 図 交通事故 発生件数の推移(第一当事者の年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (万件) 100 20歳 未 満 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~64歳 65~74歳 75歳 以 上 90 80 70 60 50 40 288,995 30 20 10 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和 2 9,225 50,302 41,336 52,174 67,378 42,768 25,812 1 警察庁交通局の統計及び資料による。 2 「第一当事者」とは,事故当事者のうち最も過失の重い者をいい,過失が同程度の場合は,人身損傷程度が軽い者をいう。 3 第一当事者が自動車,自動二輪車及び原動機付自転車の運転者に係るものに限る。 4 事故発生時の年齢による。 2 過失運転致死傷等・危険運転致死傷 過失運転致死傷等の検挙人員の推移(最近 20 年間)及び危険運転致死傷の検挙人員の推移(平成 13 年以降)を見ると,4-1-2-3 図のとおりである。過失運転致死傷等の検挙人員は,16 年(90 万 119 人)をピークに高止まりの状態にあったが,17 年以降減少し続けており,令和2年は 30 万 7,831 人(前年比 18.6%減)であった。危険運転致死傷の検挙人員は,平成 14 年から 25 年まで, 270 人台から 420 人台で推移した後,26 年5月に自動車運転死傷処罰法の施行により処罰範囲が拡 大されるなどすると,27 年以降,その検挙人員は 590 人台から 650 人台で推移していたが,令和2 年は 732 人(同 12.1%増)であった。 156 令和 3 年版 犯罪白書

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4-1-2-3 図 過失運転致死傷等・危険運転致死傷 検挙人員の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 過失運転致死傷等 ② (万人) 100 危険運転致死傷 (人) 1,000 80 800 60 600 40 307,831 第4 編 0 平成 13 1 2 400 200 20 注 732 15 20 25 0 平成 13 30 令和2 15 20 25 30 令和 2 警察庁の統計による。 平成 13 年の危険運転致死傷は,刑法の一部を改正する法律(平成 13 年法律第 138 号)の施行日である同年 12 月 25 日以降の人員で ある。 令和2年における危険運転致死傷・過失運転致死傷等の罪名別検挙人員は,4-1-2-4 表のとおりで ある。同年の危険運転致死傷の検挙人員 732 人のうち致死事件は 42 人(前年比2人増)で,2年の 過失運転致死傷等の検挙人員 30 万 7,831 人のうち致死事件は 2,547 人(同 130 人減)であった(CDROM 参照)。 なお,犯罪少年による危険運転致死傷の検挙状況については,第3編第1章第2節3項参照。 4-1-2-4 表 危険運転致死傷・過失運転致死傷等 検挙人員 (令和2年) 罪 名 検 自動車運転死傷処罰法 人 員 致 傷 致 死 300,237 2,542 381 353 28 条) 293 279 14 48 48 … 無 免 許 危 険 運 転 致 死 傷 (6 条 2 項) 10 10 - 300,830 298,350 2,480 104 98 6 1,107 1,093 14 6 6 - 5,784 5,737 47 - - - 危 険 運 険 転 運 致 転 死 致 傷 死 (2 傷 (3 条) 無 免 許 危 険 運 転 致 傷 (6 条 1 項) 過 失 運 転 致 死 傷 過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱 無 免 許 過 失 運 転 致 死 傷 無免許過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱 刑 法 危 自 重 過 1 2 3 4 5 6 7 険 動 運 車 過 運 失 転 転 失 過 致 致 失 致 死 致 死 死 死 傷 傷 等 傷 傷 244 233 11 3,980 3,958 22 1,560 1,546 14 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 302,779 危 注 挙 警察庁交通局の統計による。 「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」は,自動車運転死傷処罰法4条に規定する罪をいう。 「無免許過失運転致死傷」は,自動車運転死傷処罰法6条4項に規定する罪をいう。 「無免許過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱」は,自動車運転死傷処罰法6条3項に規定する罪をいう。 「刑法」は,道路上の交通事故に係る事案に限る。 「刑法」の「危険運転致死傷」は,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪をいう。 「自動車運転過失致死傷等」は,平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条1項前段及び2項に規定する罪をいう。 犯罪白書 2021 157

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ひき逃げ事件 3 ひき逃げ事件(人の死傷を伴う交通事故に係る救護措置義務違反)の発生件数及び検挙率の推移 (最近 20 年間)は,4-1-2-5 図のとおりである。発生件数は,平成 12 年以降急増した後,17 年から 減少傾向にあり,令和2年は前年比 661 件(8.8%)減の 6,830 件であった(CD-ROM 参照)。全検 第1章 交通犯罪 挙率は,平成 16 年には 25.9%を記録したが,翌年から上昇し続けており,令和2年は 70.2%であっ た。死亡事故に限ると,検挙率は,おおむね 90%を超える高水準で推移している。 4-1-2-5 図 ひき逃げ事件 発生件数・検挙率の推移 (平成 13 年~令和2年) (千件) 25 (%) 死亡事故検挙率 犯罪の動向 15 重傷事故検挙率 79.9 発生件数 60 6,830 5 0 平成 13 注 158 令和 2 年の 件数内訳 80 70.2 全検挙率 10 100 40 検 挙 率 第2節 20 97.8 死亡事故 〔93〕 重傷事故 〔730〕 軽傷事故 〔6,007〕 20 15 20 25 30 令和 2 0 1 警察庁交通局の統計による。 2 「全検挙率」は,ひき逃げの全事件の検挙率をいう。 3 「重傷」は交通事故による負傷の治療を要する期間が1か月(30 日)以上のもの,「軽傷」は同未満のものをいう。 4 検挙件数には,前年以前に認知された事件に係る検挙事件が含まれることがあるため,検挙率が 100%を超える場合がある。 令和 3 年版 犯罪白書

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道交違反 4 道交違反の取締件数は,告知事件(交通反則通告制度に基づき反則事件として告知された事件をい う。以下この項において同じ。 )と送致事件(非反則事件として送致される事件をいう。以下この項 において同じ。 )を合わせた件数であり,平成 15 年以降 800 万件台で推移していたが,23 年に 800 万件を下回ると,それ以降は減少傾向を示し,令和2年は 578 万 289 件(前年比4万 3,114 件 (0.8%)増)であった。その取締件数の内訳は,告知事件 556 万 1,335 件,送致事件 21 万 8,954 件 であった(警察庁交通局の統計による。)。 令和2年における道交違反の告知事件及び送致事件について,違反態様別構成比を見ると,4-1- 第4 編 2-6 図のとおりである。 なお,犯罪少年による道路交通法違反の取締状況については,第3編第1章第2節3項参照。 4-1-2-6 図 道交違反 取締件数(告知事件・送致事件)の違反態様別構成比 (令和2年) ① 告知事件 ② 踏 切 不 停 止 等 1.7 駐 停 車 違 反 3.4 通 行 区 分 違 反 3.7 その他 7.1 歩 行 者 妨 害 5.2 携帯電話使用等 5.5 一時停止 違反 28.8 総 数 5,561,335 件 信号無視 11.3 通行禁止 違反 13.5 送致事件 速度超過 29.6 その他 44.6 総 数 218,954 件 酒気帯び・ 酒酔い 無免許 10.3 速度超過 19.7 8.8 注 1 2 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 一時停止違反 1.9 信 号 無 視 2.1 免許証不携帯 2.8 警察庁交通局の統計による。 ②において,軽車両等による違反は「その他」に計上している。 告知事件については,平成 17 年には 816 万 5,633 件まで増加したが,22 年からは減少傾向にあり, 令和2年は,前記のとおり 556 万 1,335 件(前年比6万 5,551 件(1.2%)増)であった(警察庁交 通局の統計による。)。 送致事件の推移(最近 20 年間)を見ると,4-1-2-7 図のとおりである。その総数は,平成 13 年か ら減少し続け,令和2年は前記のとおり 21 万 8,954 件(前年比 9.3%減)であった。違反態様別に 見ると,無免許運転は,平成 10 年以降,減少し続けていたが,令和2年は前年から増加し,1万 9,225 件(同 3.3%増)であった。速度超過は,平成 14 年以降,減少し続けている。酒気帯び・酒酔 いは,12 年に急減すると,それ以降減少し続け,25 年に3万件を下回った後は,おおむね横ばい状 態にあったが,30 年以降再び減少し続けており,令和2年は2万 2,458 件(同 11.7%減)と,平成 期最多であった平成9年(34 万 3,593 件)の約 15 分の1の水準であった(CD-ROM 参照)。 なお,近年,自転車を含む軽車両の違反に係る送致事件が増加しているところ,令和2年の送致件 数は,前年比 11.4%増の2万 5,467 件であった(警察庁交通局の統計による。)。 犯罪白書 2021 159

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4-1-2-7 図 道交違反 取締件数(送致事件)の推移 (平成 13 年~令和2年) (万件) 100 第1章 交通犯罪 80 60 総数 40 第3節 その他 速度超過 218,954 20 処遇 無免許 0 平成 13 注 15 酒気帯び・酒酔い 20 25 30 令和 2 112,511 64,760 22,458 19,225 1 警察庁交通局の統計による。 2 軽車両等による違反は, 「その他」に計上している。 処遇 第3節 1 検察 4-1-3-1 図は,令和2年における交通事件(過失運転致死傷等,危険運転致死傷及び道交違反の事 件をいう。以下この節において同じ。 )の検察庁終局処理人員の処理区分別構成比を,それ以外の事 件(以下この項において「一般事件」という。)と比較して見たものである。 4-1-3-1 図 交通事件 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比 (令和2年) 過 致 失 死 運 傷 転 等 1.4 2.8 11.7 (301,638) 84.2 危険運転致死傷 72.7 (494) 道 交 違 反 一 般 事 件 (222,269) (283,079) 3.1 45.2 24.0 160 47.1 13.5 公判請求 注 19.6 53.9 略式命令請求 不起訴 1 検察統計年報による。 2 「一般事件」は,過失運転致死傷等,危険運転致死傷及び道交違反以外の事件である。 3 ( )内は,人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 7.7 4.6 8.6 家庭裁判所送致

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4-1-3-2 図は,過失運転致死傷等及び道交違反の検察庁終局処理人員について,起訴・不起訴人員 (処理区分別)及び起訴率の推移(最近 20 年間)を見たものである。過失運転致死傷等では,起訴猶 予率は 90%前後で推移しているが,起訴猶予人員は,平成 17 年以降減少し続け,令和2年は前年よ りも6万 1,135 人減少した。また,起訴率は,昭和 62 年に大幅に低下して以降,低下傾向にあった が,平成 24 年からは緩やかに上昇しており,令和2年は 13.5%(前年比 1.1pt 上昇)であった。道 交違反では,起訴・不起訴人員に占める略式命令請求人員の割合は,平成 22 年以降低下し続け,令 和2年は 47.4%(同 4.0pt 低下)であった。略式命令請求人員も,平成 10 年以降減少し続けている。 起訴率も,昭和 60 年以降低下傾向にあり,令和2年は 50.6%と平成 13 年(89.2%)と比べて 38.5pt 低下した(CD-ROM 参照)。 第4 編 4-1-3-2 図 過失運転致死傷等・道交違反 起訴・不起訴人員(処理区分別)等の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 過失運転致死傷等 ② (万人) 90 (%) 100 (%) 100 (万人) 90 80 80 80 70 60 293,335 50 40 20 60 60 0 平成 13 15 20 30 令和2 25 50.6 40 211,971 30 7,200 20 20 97,413 10 100,575 0 平成 13 15 4,349 略式命令請求 起訴猶予 20 25 0 30 令和2 6,783 その他の不起訴 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 公判請求 60 40 35,147 0 起訴率 50 9,166 244,673 20 13.5 起訴率 10 80 70 40 30 注 道交違反 検察統計年報による。 令和2年における危険運転致死傷の公判請求人員について,態様別に見ると,4-1-3-3 表のとおりで ある。なお, 「無免許」の者(37 人)については,無免許運転で, 「飲酒等影響」 (7人) , 「高速度等」 (2人) , 「妨害行為」 (3人) , 「赤信号無視」 (17 人) , 「通行禁止道路進行」 (2人)又は「飲酒等影響運 転支障等」 (6人)の各態様による危険運転致傷を犯した者である(検察統計年報による。 ) 。 4-1-3-3 表 危険運転致死傷による公判請求人員(態様別) (令和2年) 総 数 359 注 飲酒等影響 121 高速度等 19 妨害行為 赤信号無視 6 55 通行禁止 道路進行 3 飲酒等影響 運転支障等 無免許 118 37 1 検察統計年報による。 2 「飲酒等影響」は,自動車運転死傷処罰法2条1号に規定する罪及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2第1項前 段に規定する罪をいう。 3 「高速度等」は,自動車運転死傷処罰法2条2号及び3号に規定する罪並びに平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2 第1項後段に規定する罪をいう。 4 「妨害行為」は,自動車運転死傷処罰法2条4号,5号及び6号に規定する罪並びに平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2第2項前段に規定する罪をいう。 5 「赤信号無視」は,自動車運転死傷処罰法2条7号に規定する罪,令和2年法律第 47 号による改正前の自動車運転死傷処罰法2条5 号に規定する罪及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2第2項後段に規定する罪をいう。 6 「通行禁止道路進行」は,自動車運転死傷処罰法2条8号に規定する罪及び令和2年法律第 47 号による改正前の自動車運転死傷処罰 法2条6号に規定する罪をいう。 7 「飲酒等影響運転支障等」は,自動車運転死傷処罰法3条に規定する罪をいう。 8 「無免許」は,自動車運転死傷処罰法6条1項及び2項に規定する罪をいう。 犯罪白書 2021 161

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2 裁判 令和2年に交通事件により通常第一審で懲役又は禁錮を言い渡された者について,これらの罪名ご との科刑状況を見ると,4-1-3-4 表のとおりである。危険運転致死傷(自動車運転死傷処罰法2条及 び3条並びに平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪に限る。)事件につ 第1章 交通犯罪 いて見ると,言渡しを受けた者のうち実刑の者の割合は,同致傷事件では 8.5%(無免許危険運転致 傷(自動車運転死傷処罰法6条1項及び2項に規定する罪)事件では 46.4%)だったのに対し,同 致死事件では 95.2%であった。同致死事件では,言渡しを受けた者 21 人のうち 13 人の刑は5年を 超えている。過失運転致死傷(自動車運転死傷処罰法5条及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の 刑法 211 条2項に規定する罪に限る。 )事件について見ると,言渡しを受けた者のうち実刑の者の割 合は,同致傷事件では 1.4%(無免許過失運転致傷事件では 18.1%)だったのに対し,同致死事件で は 6.5%(無免許過失運転致死事件では 60.0%)であった。道交違反について見ると,言渡しを受け 第3節 た者のうち実刑の者の割合は 15.8%であった。道交違反では,言渡しを受けた者のうち1年未満の 刑の者の割合は 75.5%であったが,3年を超える刑の者も2人いた。 令和2年に交通事件で一部執行猶予付判決の言渡しを受けた者は,危険運転致傷につき1人及び道 処遇 路交通法違反につき2人であった(司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。)。 なお,自動車運転死傷処罰法違反及び道交違反について,第一審における罰金・科料の科刑状況 は,2-3-3-4 表参照。 162 令和 3 年版 犯罪白書

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4-1-3-4 表 交通事件 通常第一審における有罪人員(懲役・禁錮)の科刑状況 (令和2年) 罪 名 危険運転致傷 総数 247 10年を 10 年 7年 超える 以下 以下 - - 2 3年 5年 以下 実刑 2 - 2年以上 1年以上 6月以上 6月未満 全部執行 全部執行 全部執行 全部執行 全部執行 実刑 実刑 実刑 実刑 猶 予 猶 予 猶 予 猶 予 猶 予 10 6 40 (-) 7 151 4 25 - - (-) (1) 危険運転致死 21 5 6 2 7 - 1 - - - - - - - - 無 免 許 危険運転致傷 (6 条 1 項) 21 - - - 6 1 1 2 5 2 4 - - - - 無 免 許 危険運転致傷 (6 条 2 項) 7 - - - 1 - - - 1 1 4 - - - - 無 免 許 危険運転致死 (6 条 2 項) - - - - - - - - - - - - - - - 過失運転致傷 2,337 - - - - 1 21 5 145 8 1,384 17 750 1 5 (-) (-) 過失運転致死 1,071 - 過失運転致傷 アルコール等 影響発覚免脱 45 - 過失運転致死 アルコール等 影響発覚免脱 2 - - 2 - 無 免 許 過失運転致傷 474 - - - 9 無 免 許 過失運転致死 5 無 免 許 過失運転致傷 アルコール等 影響発覚免脱 1 無 免 許 過失運転致死 アルコール等 影響発覚免脱 - - - - - 道 交 違 反 5,051 - - - 2 1 12 8 98 (-) - - 1 - 31 (-) 274 (-) - - 16 (-) 615 (-) 15 1 2 (-) 14 - - (-) 27 - 1 - - - - - - - - 29 174 35 182 4 9 (-) - - 1 7 (-) - - - 1 1 - - - - - 8 16 (-) 1 (-) - - 1 (-) 1 (-) (-) - - - - - - 1 - - - - - - - 191 605 (-) - - - 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 注 - (-) (-) 第4 編 (-) (-) (-) - - 7 19 (-) - - - - - - 20 79 134 979 446 2,569 (-) (1) (1) (-) 1 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 2 「危険運転致傷」及び「危険運転致死」は,自動車運転死傷処罰法2条及び3条並びに平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 208 条の2に規定する罪に限る。 3 「過失運転致傷」及び「過失運転致死」は,自動車運転死傷処罰法5条及び平成 25 年法律第 86 号による改正前の刑法 211 条2項に 規定する罪に限る。 4 罪名区分の( )内は,自動車運転死傷処罰法の該当条文である。 5 刑期区分の( )内は,一部執行猶予付判決の言渡しを受けた人員で,内数であり,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 犯罪白書 2021 163

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3 矯正 令和2年における交通犯罪(危険運転致死傷,過失運転致死傷等及び道路交通法違反をいう。以下 この節において同じ。 )の入所受刑者人員は 966 人(前年比 12.5%減)であり,その内訳は危険運転 致死傷が 57 人,過失運転致死傷等が 203 人,道路交通法違反が 706 人であった。なお,2年におけ 第1章 交通犯罪 る交通犯罪の入所受刑者人員のうち,懲役受刑者の占める比率は 95.0%であった。禁錮受刑者は 48 人であり,その内訳は全て過失運転致死傷等であった(矯正統計年報による。)。 4 保護観察 令和2年における交通犯罪の保護観察開始人員は,保護観察処分少年が 5,220 人(なお,交通短期 保護観察の対象者(交通犯罪以外の非行名(保管場所法,道路運送法,道路運送車両法及び自動車損 第3節 害賠償保障法の各違反)による者を含む。以下この項において同じ。)は 3,508 人(3-2-5-1 図参 照) ) ,少年院仮退院者が 116 人,仮釈放者が 640 人,保護観察付全部・一部執行猶予者が 146 人(う ち一部執行猶予者が3人)であった。同年の保護観察開始人員について,罪名・非行名が危険運転致 処遇 死傷の者は,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。)が 22 人,少年院仮退院者が8 人,仮釈放者が 49 人,保護観察付全部・一部執行猶予者が6人(うち一部執行猶予者はいなかった。) であった(保護統計年報による。)。 164 令和 3 年版 犯罪白書

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2章 第 第1節 1 薬物犯罪 犯罪の動向 覚醒剤取締法違反 覚醒剤取締法違反(覚醒剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下この項において同じ。)の検挙人員 第4 編 (特別司法警察員が検挙した者を含む。)の推移(昭和 50 年以降)は,4-2-1-1 図のとおりである。 昭和期から見てみると,まず,29 年(5万 5,664 人)に最初のピークを迎えたが,罰則の強化や徹 底した検挙等により著しく減少し,32 年から 44 年までは毎年 1,000 人を下回っていた。その後,45 年から増加傾向となり,59 年には 31 年以降最多となる2万 4,372 人を記録した。60 年からは減少 傾向となったが,平成6年(1万 4,896 人)まで小さく増減を繰り返した後,7年から増加に転じ, 9年には平成期最多の1万 9,937 人を記録した。13 年から減少傾向にあり,18 年以降おおむね横ば いで推移した後,28 年から毎年減少し続け,令和2年は 8,654 人(前年比 0.9%減)であり,元年以 降,2年連続で1万人を下回った(CD-ROM 参照。なお,検察庁新規受理人員については,CDROM 資料 1-4 参照)。 なお,覚醒剤取締法違反の成人検挙人員中の同一罪名再犯者の比率については,5-2-1-4 図①参照。 4-2-1-1 図 覚醒剤取締法違反 検挙人員の推移 (昭和 50 年~令和2年) (千人) 25 20 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 15 覚醒剤取締法 10 8,654 5 0 昭和 50 注 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30 令和2 1 厚生労働省医薬・生活衛生局の資料による。ただし,平成 19 年までは,厚生労働省医薬食品局,警察庁刑事局及び海上保安庁警備 救難部の各資料により,20 年から 27 年までは,内閣府の資料による。 2 覚醒剤に係る麻薬特例法違反の検挙人員を含む。 3 警察のほか,特別司法警察員が検挙した者を含む。 覚醒剤取締法違反の年齢層別の検挙人員(警察が検挙した者に限る。 )の推移(最近 20 年間)は, 4-2-1-2 図のとおりである。20 歳代の年齢層の人員は,平成期に入って以降,平成 13 年まで全年齢 層の中で最も多かったが,10 年以降減少傾向にあり,令和2年(1,000 人)は平成 13 年(6,280 人) の約6分の1であった(CD-ROM 参照) 。30 歳代の年齢層の人員も,14 年から 25 年まで全年齢層の 中で最も多かったが,13 年以降減少傾向が続いている。40 歳代の年齢層の人員は,21 年から増加傾 向にあり,26 年以降全年齢層の中で最も多くなっているものの,28 年から5年連続で減少している。 50 歳以上の年齢層の人員は,21 年から毎年増加し,26 年以降はほぼ横ばいで推移している。令和2 犯罪白書 2021 165

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年の同法違反の検挙人員の年齢層別構成比を見ると,40 歳代の年齢層が最も多く(33.6%) ,次いで, 50 歳以上(29.1%) ,30 歳代(24.4%) ,20 歳代(11.8%) ,20 歳未満(1.1%)の順であった。 なお,令和2年の覚醒剤取締法違反の検挙人員(就学者に限る。)を就学状況別に見ると,高校生 が 11 人(前年比1人増) ,大学生が8人(同 18 人減)(20 歳以上の者を含む。)であり,中学生はい なかった(同3人減) (警察庁刑事局の資料による。)。 第2章 薬物犯罪 4-2-1-2 図 覚醒剤取締法違反 検挙人員の推移(年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (千人) 7 6 第1節 5 30 ~ 39 歳 4 犯罪の動向 40 ~ 49 歳 3 2,844 2,468 20 ~ 29 歳 2,063 2 50 歳以上 1 1,000 20 歳未満 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和 2 96 1 警察庁刑事局の資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 覚醒剤に係る麻薬特例法違反の検挙人員を含み,警察が検挙した人員に限る。 4-2-1-3 表は,令和2年に覚醒剤取締法違反により検挙された者(警察が検挙した者に限る。)の うち,営利犯で検挙された者及び暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をい う。以下この項において同じ。 )の各人員を違反態様別に見たものである。同年の営利犯で検挙され た者の比率は 5.8%であり,暴力団構成員等の比率は 42.2%であった。 4-2-1-3 表 覚醒剤取締法違反 営利犯・暴力団構成員等の検挙人員(違反態様別) (令和 2 年) 区 分 総 数 密輸入 所 持 譲渡し 譲受け 使 用 その他 8,471 114 2,717 344 127 4,933 236 犯 490 (5.8) 101 290 96 3 - - 暴力団構成員等 (42.2) 営 注 総 数 利 3,577 (88.6) 20 (17.5) (10.7) 1,142 (42.0) (27.9) 199 (57.8) (2.4) 38 (29.9) 2,109 (42.8) 69 (29.2) 1 警察庁刑事局の資料による。 2 覚醒剤に係る麻薬特例法違反の検挙人員を含み,警察が検挙した人員に限る。 3 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 4 ( )内は,各違反態様による検挙人員に「営利犯」又は「暴力団構成員等」の人員がそれぞれ占める比率である。 令和2年における覚醒剤取締法違反の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)のうち,外国人の比 率は,5.7%(480 人)であった。国籍等別に見ると,平成 22 年から 30 年までは,韓国・朝鮮,フィ リピン,ブラジルの順に多かったが,令和元年に韓国・朝鮮,ブラジル,フィリピンの順となり,2 年は,韓国・朝鮮(123 人,25.6%)が最も多く,次いで,ブラジル(94 人,19.6%),フィリピン 166 令和 3 年版 犯罪白書

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(75 人,15.6%),ベトナム(64 人,13.3%),タイ(21 人,4.4%)の順であった(警察庁刑事局 の資料による。)。 大麻取締法違反等 2 大麻取締法,麻薬取締法及びあへん法の各違反(それぞれ,大麻,麻薬・向精神薬及びあへんに係 る麻薬特例法違反を含む。以下この項において同じ。)の検挙人員(特別司法警察員が検挙した者を 含む。 )の推移(昭和 50 年以降)は,4-2-1-4 図のとおりである(検察庁新規受理人員については, CD-ROM 資料 1-4 参照) 。大麻取締法違反は,52 年から平成 30 年までの間は,1,000 人台から 第4 編 3,000 人台で増減を繰り返していた。9年には 1,175 人まで減少するなどしたが,6年(2,103 人) と 21 年(3,087 人)をピークとする波が見られた後,26 年から7年連続で増加している。29 年から は,昭和 46 年以降における最多を記録し続けており,令和2年は 5,260 人(前年比 15.1%増)で あった(CD-ROM 参照)。 なお,大麻取締法違反の成人検挙人員中の同一罪名再犯者の比率については,5-2-1-4 図②参照。 4-2-1-4 図 大麻取締法違反等 検挙人員の推移(罪名別) (昭和 50 年~令和2年) (千人) 6 5,260 5 4 3 大麻取締法 1 638 麻薬取締法 0 昭和 50 注 55 60 平成元 5 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 2 あへん法 10 15 20 25 30 令和2 15 1 厚生労働省医薬・生活衛生局の資料による。ただし,平成 19 年までは,厚生労働省医薬食品局,警察庁刑事局及び海上保安庁警備 救難部の各資料により,20 年から 27 年までは,内閣府の資料による。 2 大麻,麻薬・向精神薬及びあへんに係る各麻薬特例法違反の検挙人員を含む。 3 警察のほか,特別司法警察員が検挙した者を含む。 犯罪白書 2021 167

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大麻取締法違反の年齢層別の検挙人員(警察が検挙した者に限る。)の推移(最近 10 年間)は, 4-2-1-5 図のとおりである。平成 23 年以降,20 歳代及び 30 歳代で全検挙人員の約7~8割を占め る状況が続いているが,30 歳代が近年横ばい状態で推移しているのに対し,20 歳代は 26 年から増 加し続けており,令和2年は,前年から 30.3%増加し,2,540 人であった。一方,20 歳未満の検挙 人員も平成 26 年から増加し続けており,令和2年は 887 人(前年比 45.6%増)であった。 第2章 薬物犯罪 なお,令和2年の大麻取締法違反の検挙人員(就学者に限る。)を就学状況別に見ると,中学生が 8人(前年比2人増),高校生が 159 人(同 50 人増),大学生が 219 人(同 87 人増)(20 歳以上の者 を含む。 )であった(警察庁刑事局の資料による。)。 4-2-1-5 図 大麻取締法違反 検挙人員の推移(年齢層別) (平成 23 年~令和2年) (人) 3,000 第1節 2,540 2,500 犯罪の動向 2,000 1,500 注 1,015 887 20 歳未満 500 0 平成 23 30 ~ 39 歳 20 ~ 29 歳 1,000 40 ~ 49 歳 25 459 50 歳以上 30 133 令和 2 1 警察庁刑事局の資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 大麻に係る麻薬特例法違反の検挙人員を含み,警察が検挙した人員に限る。 毒劇法違反の検挙人員(警察が検挙した者に限る。 )は,昭和 50 年代後半は3万人台で推移し, 60 年代以降も2万 7,000 人台から3万 1,000 人台で推移していたが,平成期に入り,平成3年から 9年にかけて大きく減少した。その後も減少傾向が続き,令和2年は 180 人(前年比 1.7%増)で あった(警察庁の統計による。)。 3 危険ドラッグに係る犯罪 いわゆる危険ドラッグ(規制薬物(覚醒剤,大麻,麻薬・向精神薬,あへん及びけしがらをいう。 以下この項において同じ。 )又は指定薬物(医薬品医療機器等法2条 15 項に規定する指定薬物をい う。以下この項において同じ。 )に化学構造を似せて作られ,これらと同様の薬理作用を有する物品 をいい,規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標ぼうしながら規制薬物又は指定薬物 を含有する物品を含む。以下この項において同じ。)に係る犯罪の検挙人員(警察が検挙した者に限 る。以下この項において同じ。 )の推移(最近5年間)を適用法令別に見ると,4-2-1-6 表のとおり である。 令和2年の指定薬物に係る医薬品医療機器等法違反の検挙人員は 131 人(前年比 34 人減)である が,そのうち 82 人(同 41 人減)は指定薬物の単純所持・使用等の検挙人員(同法 84 条 28 号に規定 される所持・使用・購入・譲受けに係る罪による検挙人員のうち,販売目的等の供給者側の検挙人員 を除く。 )であった(警察庁刑事局の資料による。)。 168 令和 3 年版 犯罪白書

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4-2-1-6 表 危険ドラッグに係る犯罪の検挙人員の推移(適用法令別) (平成 28 年~令和2年) 適 用 法 令 28 年 総 数 29 年 30 年 元年 2年 920 651 396 182 150 医薬品医療機器等法(薬事法) 758 578 346 165 131 麻 126 56 48 17 19 薬 交 通 取 関 そ 注 締 係 法 の 法 令 7 1 1 - - 他 29 16 1 - - 第4 編 1 警察庁刑事局の資料による。 2 警察が検挙した人員に限る。 3 複数罪名で検挙した場合は,法定刑が最も重い罪名に計上している。 4 「危険ドラッグ」は,規制薬物(覚醒剤,大麻,麻薬・向精神薬,あへん及びけしがらをいう。)又は指定薬物(医薬品医療機器等法 2条 15 項に規定する指定薬物をいう。)に化学構造を似せて作られ,これらと同様の薬理作用を有する物品をいい,規制薬物及び指定 薬物を含有しない物品であることを標ぼうしながら規制薬物又は指定薬物を含有する物品を含む。 5 「医薬品医療機器等法(薬事法)」は,危険ドラッグから指定薬物が検出された場合の検挙人員である。 6 「麻薬取締法」は,危険ドラッグから麻薬が検出された場合の検挙人員である。 7 「交通関係法令」は,危険運転致死傷,自動車運転過失致死傷,過失運転致死傷,道路交通法違反の検挙人員である。 8 「その他」は,覚醒剤取締法違反,危険ドラッグ服用に係る保護責任者遺棄致死,各都道府県の薬物乱用防止に関する条例違反等の ほか,指定薬物以外の医薬品医療機器等法違反を含む。 9 「交通関係法令」及び「その他」は,指定薬物として指定されていない薬物が検出され,当該薬物について,検挙後に指定薬物とし て指定された場合等を含む。 令和2年における危険ドラッグ乱用者の検挙人員(危険ドラッグに係る犯罪の検挙人員のうち,危 険ドラッグの販売等により検挙された供給者側の検挙人員を除いたものをいう。)は,140 人であり, 年齢層別では,50 歳代(41 人,29.3%)が最も多く,次いで,40 歳代(34 人,24.3%),30 歳代 (32 人,22.9%),20 歳代(31 人,22.1%),20 歳未満(2人,1.4%)の順であった(警察庁刑事 局の資料による。)。 第2節 1 取締状況 覚醒剤等の押収量の推移 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 覚醒剤等の薬物の押収量(警察,税関,海上保安庁及び麻薬取締部がそれぞれ押収した薬物の合計 量)の推移(最近5年間)は,4-2-2-1 表のとおりである。覚醒剤の押収量は,平成 28 年から 30 年 までの間,1,100kg 台から 1,500kg 台で推移した後,令和元年に平成元年以降最多の 2,649.7kg を記 録したが,令和2年(824.4kg)は前年の3分の1以下に急減した。 4-2-2-1 表 覚醒剤等の押収量の推移 (平成 28 年~令和2年) 年 次 覚醒剤 乾燥大麻 大麻樹脂 コカイン ヘロイン MDMA等錠剤型 合 成 麻 薬 あへん 28 年 1521.4 159.7 1.0 113.3 0.0 5,122 0.7 29 1136.6 270.5 21.9 11.6 70.3 3,244 0.0 30 1206.7 337.3 3.1 157.4 0.0 12,307 0.0 元 2649.7 430.1 14.8 639.9 16.7 73,915 0.0 2 824.4 299.1 3.6 821.7 14.8 106,308 0.0 (単位は,kg。ただし,MDMA 等錠剤型合成麻薬は錠) 注 1 厚生労働省医薬・生活衛生局の資料による。 2 押収量は,警察,税関,海上保安庁及び麻薬取締部がそれぞれ押収した合計量である。 3 「乾燥大麻」は,大麻たばこを含む。 4 「MDMA 等錠剤型合成麻薬」の押収量について,1錠未満の端数は切捨てである。 犯罪白書 2021 169

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密輸入事案の摘発の状況 2 覚醒剤(覚醒剤原料を含む。以下この項において同じ。)及び大麻の密輸入事犯(税関が関税法違 反で摘発した事件である。ただし,警察等他機関が摘発した事件で,税関が当該事件に関与したもの を含む。以下この項において同じ。 )の摘発件数の推移(最近5年間)を形態別に見ると,4-2-2-2 第2章 薬物犯罪 表のとおりである。覚醒剤の「航空機旅客(航空機乗組員を含む。以下この項において同じ。)によ る密輸入」は,平成 28 年から 30 年までの間,50 件台から 90 件台で推移した後,令和元年に 229 件 に増加したが,2年(23 件)は前年の約 10 分の1に急減した。覚醒剤の「国際郵便物を利用した密 輸入」及び「航空貨物(別送品を含む。 )を利用した密輸入」も,元年に顕著に増加したが,2年は いずれも急減した。大麻の「航空機旅客による密輸入」も,平成 28 年から令和元年までの間,40 件 台から 60 件台で推移していたが,2年(21 件)は前年の約3分の1に急減した。 第2節 4-2-2-2 表 ① 覚醒剤等の密輸入事案の摘発件数の推移(形態別) (平成 28 年~令和2年) 覚醒剤 取締状況 形 態 28 年 総 数 (1,501) 航空機旅客による密輸入 国際郵便物を利用した密輸入 商業貨物を利用した密輸入 航 空 貨 物 海 上 貨 物 船 員 等 に よ る 密 輸 入 ② 態 (1,159) 元年 169 (1,159) 2年 425 (2,587) 72 (800) 53 99 91 229 23 (79) (190) (160) (427) (54) 20 38 52 85 23 (53) (96) (50) (188) (14) 21 11 23 109 26 (653) (398) (948) (367) (733) 15 10 13 107 20 (72) (48) (22) (325) (93) 6 (581) 1 (351) 10 (715) 28 年 総 数 航空機旅客による密輸入 国際郵便物を利用した密輸入 商業貨物を利用した密輸入 航 空 貨 物 海 上 貨 物 船 員 等 に よ る 密 輸 入 170 30 年 151 10 2 (926) (43) 3 3 (475) (0) 6 (639) 2 - (-) (1,605) 大麻 形 注 29 年 104 1 2 3 4 5 6 7 令和 3 年版 29 年 118 (9) 30 年 元年 171 218 (131) (156) 2年 242 (82) 203 (116) 49 57 49 60 21 (1) (3) (92) (28) (0) 59 99 (4) (10) 148 167 144 (45) (49) (77) 9 12 19 11 38 (4) (118) (19) (5) (40) 7 10 19 10 36 (4) (18) (19) (5) (40) 2 (0) 2 (100) - 1 2 (-) (0) (…) 1 3 2 4 - (0) (0) (0) (0) (-) 財務省関税局の資料による。 税関が関税法違反で摘発した事件である。ただし,警察等他機関が摘発した事件で,税関が当該事件に関与したものを含む。 「覚醒剤」は,その原料を含む。 ( )内は押収量であり,単位は kg である。 「航空機旅客」は,航空機乗組員を含む。 「商業貨物」は,別送品を含む。 「船員等」は,洋上取引及び船舶旅客を含む。 犯罪白書

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令和2年における覚醒剤の密輸入事犯の摘発件数を仕出地別に見ると,地域別では,アジア(29 件)が半数近くを占めて最も多く,次いで,北米(12 件),ヨーロッパ(10 件)の順であり,国・ 地域別では,米国及びメキシコ(9件)が最も多く,次いで,ベトナム(8件),タイ(7件)の順 であった(財務省関税局の資料による。)。 3 麻薬特例法の運用 麻薬特例法違反の検挙件数及び第一審における没収・追徴金額の推移(最近 10 年間)は,4-22-3 図のとおりである。 第4 編 4-2-2-3 図 麻薬特例法違反 検挙件数・没収・追徴金額の推移 (平成 23 年~令和2年) (件) 140 (億円) 10 120 8 100 104 6 80 4 40 2 20 14 4 25 30 令和 2 0 160,107 千円 7,681 千円 152,426 千円 1 検挙件数は,厚生労働省医薬・生活衛生局の資料による。 2 没収・追徴金額は,法務省刑事局の資料による。 3 警察のほか,特別司法警察員が検挙した者を含む。 4 「総数」は,麻薬特例法5条(業として行う不法輸入等),6条(薬物犯罪収益等隠匿),7条(薬物犯罪収益等収受)及び9条(あ おり又は唆し)の各違反の検挙件数の合計である。 5 「没収」及び「追徴」は,第一審における金額の合計であり,千円未満切捨てである。 6 共犯者に重複して言い渡された没収・追徴は,重複部分を控除した金額を計上している。 7 外国通貨は,判決日現在の為替レートで日本円に換算している。 犯罪白書 2021 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 注 総数 (検挙件数) 業として行う 不法輸入等 (検挙件数) 隠匿・収受 (検挙件数) 60 0 平成 23 没収(金額) 追徴(金額) 171

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処遇 第3節 1 検察・裁判 令和2年における起訴率及び起訴猶予率は,それぞれ覚醒剤取締法違反では 77.2%,8.5%,大麻 第2章 薬物犯罪 取締法違反では 49.4%,35.5%,麻薬取締法違反では 62.0%,17.7%であり,覚醒剤取締法違反の 起訴猶予率は,道交違反を除く特別法犯全体(令和2年は 45.8%。2-2-4-4 図参照)と比較して顕著 に低かった(起訴・不起訴人員等については,CD-ROM 資料 4-2 参照)。なお,同年における麻薬 特例法違反の起訴率は 31.6%,起訴猶予率は 61.7%であった。もっとも,同法違反のうち,「業とし て行う不法輸入等」について見ると,起訴率は 65.0%(起訴 13 人,起訴猶予4人及びその他の不起 訴3人)であった。同年において,あへん法違反で起訴された者は1人であった(検察統計年報によ る。 ) 。 第3節 状況別構成比を見ると,4-2-3-1 図のとおりである(地方裁判所における罪名別の科刑状況について 処遇 覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反について,令和2年の地方裁判所における有期の懲役の科刑 ぞれ参照) 。 は CD-ROM 資料 2-4 を,覚醒剤取締法違反の科刑状況の推移については CD-ROM 資料 4-3 をそれ 4-2-3-1 図 覚醒剤取締法違反等 地方裁判所における有期刑(懲役)科刑状況別構成比 (令和2年) 全部執行猶予 36.6 覚醒剤取締法 (6,999) 26.2 一部執行猶予 16.5 10.3 8.6 0.0 0.0 7.9 全部実刑 46.9 15.7 22.0 0.0 2.6 86.6 大麻取締法 14.9 10.2 1.3 1年未満 (全部執行猶予) 1年以上2年未満 (一部執行猶予) 2年以上3年以下 (全部実刑) 注 2.0 61.5 (2,004) 6.1 1年以上2年未満 (全部執行猶予) 2年以上3年以下 (一部執行猶予) 3年を超え5年以下 (全部実刑) 2年以上3年以下 (全部執行猶予) 1年未満 (全部実刑) 5年を超え 10 年以下 (全部実刑) 11.4 0.4 6.5 0.6 0.1 1.9 2.0 0.7 0.1 1年未満 (一部執行猶予) 1年以上2年未満 (全部実刑) 10 年を超え 30 年以下 (全部実刑) 1 司法統計年報による。 2 一部執行猶予は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 3 ( )内は,実人員である。 令和2年における覚醒剤取締法違反の少年保護事件について,家庭裁判所終局処理人員を処理区分 別に見ると,少年院送致が 37 人(53.6%)と最も多く,次いで,保護観察 17 人(24.6%),検察官 送致(年齢超過)8人(11.6%) ,審判不開始3人(4.3%),検察官送致(刑事処分相当)及び不処 分各2人(それぞれ 2.9%)の順であった。なお,児童自立支援施設・児童養護施設送致及び都道府 県知事・児童相談所長送致はいなかった(司法統計年報による。)。 172 令和 3 年版 犯罪白書

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矯正 2 覚醒剤取締法違反の入所受刑者人員の推移(最近 20 年間)は,4-2-3-2 図のとおりである。令和 2年における同法違反の入所受刑者人員は,4,367 人(前年比 11 人(0.3%)減)であり,そのうち 一部執行猶予受刑者は,1,164 人(同 111 人(8.7%)減)であった(CD-ROM 参照)。 4-2-3-2 図 覚醒剤取締法違反 入所受刑者人員の推移 (千人) 8 7 (平成 13 年~令和2年) (%) 50 40 6 35.7 5 30 4,367 26.3 4 20 3 3,203 2 10 1 1,164 632 0 平成 13 注 第4 編 一部執行猶予受刑者以外の入所受刑者 うち女性の一部執行猶予受刑者以外の入所受刑者 一部執行猶予受刑者 うち女性の一部執行猶予受刑者 入所受刑者総数に占める比率 女性入所受刑者総数に占める比率 15 20 25 30 令和 2 0 446 186 矯正統計年報による。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 令和2年における覚醒剤取締法違反の入所受刑者の年齢層別構成比を男女別に見ると,4-2-3-3 図 のとおりである。 4-2-3-3 図 覚醒剤取締法違反 入所受刑者の年齢層別構成比(男女別) (令和2年) 30歳未満 男 性 女 性 (3,735) (632) 5.5 30~39歳 40~49歳 50~64歳 65歳以上 20.8 35.1 33.0 5.5 12.0 32.0 35.3 18.7 2.1 注 1 矯正統計年報による。 2 入所時の年齢による。 3 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 173

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覚醒剤取締法違反の入所受刑者人員の推移(最近 20 年間)を男女別に見るとともに,これを入所 度数別に見ると,4-2-3-4 図のとおりである。男性は,初入者の人員が平成 14 年以降,2度の人員 が 19 年以降,3度以上の人員が 27 年以降それぞれ減少傾向にある。女性については,初入者の人員 が 24 年以降,2度の人員が 27 年以降,3度以上の人員が 28 年以降それぞれ減少し,又は減少傾向 にあったが,令和2年の初入者及び2度の人員はいずれも前年より増加し,それぞれ 275 人(前年 第2章 薬物犯罪 比 19.0%増) ,140 人(同 18.6%増)であった。また,男性は,入所受刑者全体のうち入所度数が3 度以上の者の割合が一貫して最も高いのに対し,女性は,初入者の割合が一貫して最も高い(CDROM 参照) 。 なお,覚醒剤取締法違反の出所受刑者の出所事由別5年以内再入率については 5-2-3-8 図を,2年 以内再入率の推移については 5-2-3-10 図③をそれぞれ参照。 4-2-3-4 図 覚醒剤取締法違反 入所受刑者人員の推移(男女別,入所度数別) 第3節 (平成 13 年~令和2年) ① 男性 ② 処遇 (千人) 7 6 800 5 3 度以上 4 3,735 3 1 0 平成 13 15 174 20 矯正統計年報による。 令和 3 年版 犯罪白書 593 1 度(初入者) 25 838 30 令和2 3 度以上 600 2,304 2度 2 注 女性 (人) 1,000 632 217 2度 400 200 0 平成 13 15 140 1 度(初入者) 20 25 275 30 令和2

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保護観察 3 覚醒剤取締法違反の仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び 保護観察付一部執行猶予者の保護観察開始人員等の推移(最近 20 年間)は,4-2-3-5 図のとおりで ある。仮釈放者(全部実刑者)の保護観察開始人員は,平成 23 年から3年連続で増加した後,26 年 以降はほぼ横ばいで推移していたが,29 年から減少し,令和2年は 2,292 人(前年比 5.9%減)で あった。一方,仮釈放者(一部執行猶予者)は,平成 29 年以降増加傾向にある。仮釈放率は,21 年 から上昇傾向が続き,令和2年は平成 13 年以降最も高い 67.0%(同 1.1pt 上昇)であり,出所受刑 者全体の仮釈放率(2-5-2-1 図参照)と比べると 7.8pt 高かった。保護観察付全部執行猶予者の保護 第4 編 観察開始人員は,13 年から減少傾向にあった後,18 年以降はほぼ横ばいで推移していたが,28 年 から5年連続で減少し,令和2年は 237 人(同 11.6%減)であった。全部執行猶予者の保護観察率 は,平成初期は 20%前後であったが,平成6年以降緩やかな低下傾向が見られ,18 年には 8.6%に まで低下し,19 年に上昇に転じた後はおおむね 10~12%台で推移している。保護観察付一部執行猶 予者は,刑の一部執行猶予制度が開始された翌年の 29 年は 208 人であったが,その後増加し続け, 令和2年は 1,369 人(同 4.5%増)であった。 令和2年の保護観察終了者のうち,覚醒剤取締法違反の仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予 者) ,保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の取消率(再犯又は遵守事項違反に より仮釈放又は保護観察付全部・一部執行猶予が取り消された者の占める比率をいう。)は,それぞ れ 4.5%,3.1%,27.4%,35.1%であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。なお,取 消・再処分率の推移等については,5-2-4-3 図 CD-ROM 参照)。 4-2-3-5 図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員等の推移 (平成 13 年~令和2年) ① ② 仮釈放者 (千人) 5 仮釈放率 67.0 (%) 70 (人) 1,800 3 一部執行 猶予者 30 1,100 20 1 0 平成 13 15 注 20 25 30 令和2 50 1,200 1,000 800 全部執行猶予者 の保護観察率 9.5 600 全部実刑者 2,292 400 0 0 平成 13 15 10 60 3,392 1,400 40 2 1,606 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 50 (%) 70 1,600 60 4 保護観察付全部・一部執行猶予者 40 一部執行 30 猶予者 1,369 20 10 200 20 25 全部執行 0 猶予者 237 30 令和2 1 保護統計年報,検察統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「一部執行猶予者」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上している。 犯罪白書 2021 175

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第 3章 第3章 組織的犯罪・暴力団犯罪 第1節 組織的犯罪・暴力団犯罪 組織的犯罪 組織的犯罪処罰法違反の検察庁新規受理人員及び通常第一審における没収・追徴金額の推移(最近 10 年間)は,4-3-1-1 図のとおりである。 令和2年における組織的犯罪処罰法違反の検察庁新規受理人員のうち,暴力団関係者(集団的に又 は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織の構成員及びこれに準ずる者をいう。)は 52 人 (8.9%)であった(検察統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 なお,組織的犯罪処罰法の改正(平成 29 年法律第 67 号。平成 29 年7月施行)により,テロ等準 備罪が新設されたが,同罪の新設から令和2年まで,同罪の受理人員はない。 4-3-1-1 図 組織的犯罪処罰法違反 検察庁新規受理人員・没収・追徴金額の推移 (平成 23 年~令和2年) ① 検察庁新規受理人員 第1節 (人) 800 組織的犯罪 600 584 113 400 171 200 275 0 平成 23 25 組織的な詐欺 ② 30 犯罪収益等隠匿 犯罪収益等収受 令和2 25 その他 没収・追徴金額 (億円) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 平成 23 25 30 追徴 注 176 令和2 1,508,982 千円 352,900 千円 1,156,082 千円 没収 1 検察統計年報及び法務省刑事局の資料による。 2 「没収」及び「追徴」は,通常第一審における金額の合計であり,千円未満切捨てである。共犯者に重複して言い渡された没収・追 徴については,重複部分を控除した金額を計上している。 3 外国通貨は,判決日現在の為替レートで日本円に換算している。 令和 3 年版 犯罪白書

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第2節 1 暴力団犯罪 組織の動向 暴力団構成員及び準構成員等(暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって,暴力団の威 力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの,又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資 金,武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し,若しくは関与するものをいう。) の人員の推移(最近 20 年間)は,4-3-2-1 図のとおりである。 暴力団構成員・準構成員等の人員の推移 第4 編 4-3-2-1 図 (平成 13 年~令和2年) (万人) 10 総 数 8 6 準構成員等 4 構成員 25,900 2 0 平成 13 注 13,300 12,700 15 20 25 30 令和2 1 警察庁刑事局の資料による。 2 人員は,各年 12 月 31 日現在の概数であり, 「構成員」と「準構成員等」の合計は「総数」と必ずしも一致しない。 3 「準構成員等」は,暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって,暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれが あるもの,又は暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金,武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し,若しくは関与 するものをいう。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 暴力団対策法により,令和2年末現在,24 団体が指定暴力団として指定されており,六代目山口 組,神戸山口組,絆會(任侠山口組) ,住吉会及び稲川会に所属する暴力団構成員は,同年末現在, 約 9,900 人(前年末比約 800 人減)であり,全暴力団構成員の約4分の3を占めている(警察庁刑 事局の資料による。)。 令和2年に暴力団対策法に基づき発出された中止命令は 1,134 件(前年比 22 件増),再発防止命令 は 52 件(同 20 件増)であった(警察庁刑事局の資料による。)。 また,平成 24 年の暴力団対策法の改正(平成 24 年法律第 53 号)により導入された特定抗争指定 暴力団等の指定や特定危険指定暴力団等の指定を含む市民生活に対する危険を防止するための規定に 基づき,令和3年6月 30 日現在,2団体が特定抗争指定暴力団等に指定され,1団体が特定危険指 定暴力団等として指定されている(官報による。)。 犯罪白書 2021 177

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犯罪の動向 2 (1)検挙人員 暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下(1)において同じ。) の検挙人員等の推移(最近 20 年間)を刑法犯と特別法犯(交通法令違反を除く。)の別に見ると, 4-3-2-2 図 ① 暴力団構成員等 検挙人員等の推移(刑法犯・特別法犯別) (平成 13 年~令和2年) 刑法犯 (千人) 25 (%) 20 検 20 15 挙 15 人 10 10 第2節 暴力団構成員等の比率 員 5 暴力団犯罪 0 平成 13 ② 5 15 20 25 30 令和2 0 (%) 20 暴力団構成員等の比率 15 挙 15 人 10 10 員 5 5 15 20 25 1 警察庁の統計による。 2 特別法犯は,交通法令違反を除く。 3 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 4 「暴力団構成員等の比率」は,検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率である。 令和 3 年版 犯罪白書 30 令和2 0 9.2 5,656 暴 力 団 構 成 員 等 の 比 率 検 20 0 平成 13 178 4.1 特別法犯 (千人) 25 注 7,533 暴 力 団 構 成 員 等 の 比 率 第3章 組織的犯罪・暴力団犯罪 4-3-2-2 図のとおりである。

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令和2年における暴力団構成員等の検挙人員及び全検挙人員に占めるその比率を罪名別に見ると, 4-3-2-3 表のとおりである。 4-3-2-3 表 暴力団構成員等 検挙人員(罪名別) ① (令和2年) 刑法犯 罪 名 総 暴 力 団 構 成 員 等 182,582 7,533 (4.1) 人 878 97 (11.0) 強 盗 1,654 175 (10.6) 等 1,177 40 (3.4) 暴 行 24,883 829 (3.3) 傷 害 18,826 1,629 (8.7) 脅 迫 2,862 415 (14.5) 恐 喝 1,515 575 (38.0) 窃 盗 88,464 1,157 (1.3) 詐 欺 8,326 1,249 (15.0) 賭 博 495 225 (45.5) 公 務 執 行 妨 害 制 性 交 1,666 127 (7.6) 逮 捕 監 禁 400 117 (29.3) 器 物 損 壊 4,922 201 (4.1) 暴力行為等処罰法 25 7 (28.0) ② 第4 編 数 殺 強 特別法犯 罪 名 総 数 全検挙人員 暴 力 団 構 成 員 等 61,345 5,656 (9.2) 暴 力 団 対 策 法 9 9 (100.0) 暴力団排除条例 121 121 (100.0) 馬 法 3 - 風 営 適 正 化 法 1,195 127 (10.6) 売 春 防 止 法 396 71 (17.9) 児 童 福 祉 法 161 9 (5.6) 法 4,819 133 (2.8) 銃 刀 麻 薬 取 締 法 546 58 (10.6) 大 麻 取 締 法 4,904 732 (14.9) 覚 醒 剤 取 締 法 8,245 3,510 (42.6) 79 37 (46.8) 職 業 安 定 法 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 競 注 全検挙人員 1 警察庁の統計による。 2 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 4 特別法犯は,交通法令違反を除く。 5 ( )内は,全検挙人員に占める暴力団構成員等の比率である。 犯罪白書 2021 179

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(2)銃器犯罪 ア 対立抗争事件 暴力団相互の対立抗争事件数及び銃器(拳銃,小銃,機関銃,砲,猟銃その他金属性弾丸を発射す る機能を有する装薬銃砲及び空気銃。以下(2)において同じ。)の使用率(対立抗争事件数に占め る銃器が使用された事件数の比率)の推移(最近 10 年間)は,4-3-2-4 表のとおりである。 第3章 組織的犯罪・暴力団犯罪 4-3-2-4 表 暴力団対立抗争事件 事件数・銃器使用率の推移 (平成 23 年~令和2年) 年 第2節 注 暴力団犯罪 イ 次 対立抗争事件数 銃器使用率 銃器使用事件数 23 年 13 9 69.2 24 14 7 50.0 25 27 20 74.1 26 18 9 50.0 27 - - … 28 42 6 14.3 29 9 1 11.1 30 8 1 12.5 元 14 3 21.4 2 10 5 50.0 1 警察庁刑事局の資料による。 2 本表は,令和3年5月末現在において確認された数値で作成した。 3 「対立抗争事件数」は,暴力団間の対立抗争に起因するとみられる事件を計上してい る。 4 「銃器使用率」は,対立抗争事件数に占める銃器が使用された事件数の比率である。 銃器使用事件 銃器発砲事件数及びこれによる死亡者数の推移(最近 10 年間)は,4-3-2-5 図のとおりである。 4-3-2-5 図 銃器発砲事件 事件数・死亡者数の推移 (平成 23 年~令和2年) (人) 10 暴力団構成員等以外の死亡者数 暴力団構成員等の死亡者数 40 亡 者 数 30 6 4 4 10 2 0 平成 23 注 180 25 1 警察庁刑事局の資料による。 2 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 令和 3 年版 犯罪白書 20 30 令和2 0 銃器発砲事件数 死 8 銃器発砲事件数 (件) 50 17 3 1

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銃器使用犯罪の検挙件数の推移(最近 10 年間)を拳銃とそれ以外の銃器の別に見ると,4-3-2-6 表のとおりである。 4-3-2-6 表 銃器使用犯罪 検挙件数の推移(使用銃器別) (平成 23 年~令和2年) 年 ウ 総 数 その他の 暴力団構成員 拳銃使用 暴力団構成員 銃器使用 暴力団構成員 等によるもの 等によるもの 等によるもの 23 年 31 24 26 9 25 37 18 26 65 14 27 25 13 28 27 29 28 30 22 12 10 9 21 3 9 8 17 1 15 14 22 4 25 14 40 - 15 13 10 - 11 14 11 13 - 14 16 14 12 - 8 12 8 10 - 元 25 12 14 12 11 - 2 21 12 10 9 11 3 第4 編 注 次 1 警察庁刑事局の資料による。 2 犯罪供用物として銃器を使用した事件を計上している。ただし,模造拳銃等によるものを除く。 3 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 拳銃の押収状況 拳銃の押収丁数の推移(最近 10 年間)は,4-3-2-7 図のとおりである。 4-3-2-7 図 拳銃押収丁数の推移 (平成 23 年~令和2年) (丁) 500 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 暴力団以外からの拳銃押収丁数 暴力団からの拳銃押収丁数 400 355 300 200 301 100 0 平成 23 注 54 25 30 令和2 1 警察庁刑事局の資料による。 2 「暴力団からの拳銃押収丁数」は,暴力団の管理と認められる拳銃の押収丁数をいう。 3 「暴力団以外からの拳銃押収丁数」には,被疑者が特定できないものを含む。 犯罪白書 2021 181

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3 処遇 (1)検察 令和2年における暴力団関係者(集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織の 構成員及びこれに準ずる者をいう。)の起訴率を罪名別に見ると,4-3-2-8 図のとおりである。 第3章 組織的犯罪・暴力団犯罪 4-3-2-8 図 暴力団関係者の起訴率(罪名別) (令和2年) 0 総 賭 富 殺 傷 第2節 暴 暴力団犯罪 窃 恐 博 ・ く じ 69.5 44.8 人 24.9 (13) 40.4 害 (222) 33.7 行 36.0 28.1 (91) 69.7 盗 (280) 43.5 69.2 盗 (9) 42.0 34.8 欺 55.4 (177) 19.9 30.8 (49) 刀 法 (40) 売春防止法 (17) 醒 締 27.9 34.3 46.5 17.9 73.9 32.0 剤 法 75.5 77.3 (708) 起訴率(暴力団関係者) 注 182 (%) 100 52.0 (13) 喝 80 41.0 (38) 覚 取 60 49.3 数 暴力行為等 処 罰 法 銃 40 (2,117) 強 詐 20 起訴率(非暴力団関係者) 1 検察統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「暴力団関係者」は,集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織の構成員及びこれに準ずる者をいう。 3 「総数」は,過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 4 ( )内は,暴力団関係者に係る起訴人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)矯正 ア 暴力団関係者の入所受刑者人員の推移 暴力団関係者(犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる 者をいう。以下(2)において同じ。 )の入所受刑者人員及び暴力団関係者率(入所受刑者人員に占 める暴力団関係者の比率をいう。 )の推移(最近 20 年間)は,4-3-2-9 図のとおりである。令和2年 の入所受刑者中の暴力団関係者について,その地位別内訳を見ると,幹部 260 人,組員 431 人,地 位不明の者 84 人であった(矯正統計年報による。)。 4-3-2-9 図 暴力団関係者の入所受刑者人員・暴力団関係者率の推移 40 暴力団関係者 3 員 20 暴力団関係者率 1 注 30 2 0 平成 13 暴力団関係者率 4 人 (%) 50 15 20 第4 編 (平成 13 年~令和2年) (千人) 5 775 10 25 30 令和2 0 4.7 1 矯正統計年報による。 2 「暴力団関係者」は,犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。 3 「暴力団関係者率」は,入所受刑者人員に占める暴力団関係者の比率である。 イ 入所受刑者中の暴力団関係者の特徴 (ア)年齢 令和2年における入所受刑者のうち,暴力団関係者の年齢層別構成比を見ると,40 歳代が 34.6% と最も高く,次いで,50 歳代(27.0%),30 歳代(19.4%),20 歳代(8.0%),60 歳代(7.9%) 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 の順であった(矯正統計年報による。)。 (イ)罪名 令和2年における入所受刑者の罪名別構成比を暴力団関係者とそれ以外の者とに分けて見ると, 4-3-2-10 図のとおりである。 4-3-2-10 図 入所受刑者の罪名別構成比(暴力団関係者・非関係者別) (令和2年) 道路交通法 2.1 強盗 2.5 暴 力 団 関 係 者 (775) 覚醒剤取締法 窃盗 傷害 詐欺 その他 49.5 10.2 9.5 6.3 17.2 恐喝 2.7 0.6 非関係者 (15,845) 25.1 36.8 3.4 9.5 4.4 18.4 1.8 注 1 矯正統計年報による。 2 「暴力団関係者」は,犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。 3 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 183

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(ウ)刑期 令和2年における入所受刑者のうち,懲役受刑者の刑期別構成比を暴力団関係者とそれ以外の者と に分けて見ると,4-3-2-11 図のとおりである。 4-3-2-11 図 入所受刑者の刑期別構成比(暴力団関係者・非関係者別) 第3章 組織的犯罪・暴力団犯罪 (令和2年) 暴 力 団 関 係 者 (775) 1年以下 2年以下 3年以下 5年以下 5年を 超える 13.8 31.1 30.5 16.9 7.7 非関係者 21.1 (15,787) 注 1 2 3 4 5 6 7 35.9 24.6 12.9 5.4 矯正統計年報による。 入所受刑者は,懲役刑の者に限る。 「暴力団関係者」は,犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。 不定期刑は,刑期の長期による。 一部執行猶予の場合,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 「5年を超える」は,無期を含む。 ( )内は,実人員である。 第2節 (エ)入所度数 令和2年における入所受刑者の入所度数別構成比を暴力団関係者とそれ以外の者とに分けて見る 暴力団犯罪 と,4-3-2-12 図のとおりである。 4-3-2-12 図 入所受刑者の入所度数別構成比(暴力団関係者・非関係者別) (令和2年) 暴 力 団 関 係 者 (775) 1度 2度 3度 4度 5度 6~9度 13.8 15.1 15.7 13.3 12.3 24.1 15.6 10.7 非関係者 (15,845) 注 43.4 8.1 6.2 10 度以上 5.7 11.4 4.6 1 矯正統計年報による。 2 「暴力団関係者」は,犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。 3 ( )内は,実人員である。 (3)保護観察 令和2年の仮釈放者の保護観察開始人員のうち,暴力団関係者(保護観察開始時までに暴力団対策 法に規定する指定暴力団等との交渉があったと認められる者をいう。以下(3)において同じ。)の 人員及び仮釈放者に占める比率は,917 人,8.2%(前年比 0.1pt 上昇)であり,そのうち,一部執 行猶予者の暴力団関係者は 129 人であった。2年の保護観察付全部・一部執行猶予者の保護観察開 始人員のうち,暴力団関係者の人員及び保護観察付全部・一部執行猶予者に占める比率は,238 人, 6.6%(同 0.7pt 上昇)であり,そのうち,保護観察付一部執行猶予者の暴力団関係者は,202 人で あった(保護統計年報による。)。 184 令和 3 年版 犯罪白書

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4章 第 財政経済犯罪 この章で取り上げる財政経済犯罪の起訴・不起訴の人員は,CD-ROM 資料 4-4 参照。通常第一審 での懲役刑の科刑状況は,CD-ROM 資料 4-5 参照。令和2年に財政経済犯罪により一部執行猶予付 判決の言渡しを受けた人員は1人(罪名は関税法違反)であった(司法統計年報及び最高裁判所事務 総局の資料による。)。 税法違反 第4 編 第1節 相続税法(昭和 25 年法律第 73 号),地方税法(昭和 25 年法律第 226 号),所得税法(昭和 40 年法 律第 33 号),法人税法(昭和 40 年法律第 34 号)及び消費税法(昭和 63 年法律第 108 号)の各違反 について,検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-4-1-1 図のとおりである。消費 税法違反については,平成 17 年以降,おおむね 50 人前後で推移した後,金の密輸入事件の増加の影 響もあり,28 年から 30 年にかけて急増したが,令和元年以降減少に転じ,2年は 64 人(前年比 45.8%減)であった。 4-4-1-1 図 税法違反 検察庁新規受理人員の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 400 350 300 250 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 200 150 137 100 64 50 0 平成 13 15 20 法人税法 注 消費税法 25 所得税法 地方税法 30 令和2 24 16 0 相続税法 検察統計年報による。 犯罪白書 2021 185

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国税当局から検察官に告発された税法違反事件の件数及び1件当たりの脱税額の推移(最近5年 間)を見ると,4-4-1-2 表のとおりである。 4-4-1-2 表 税法違反 告発件数・1件当たりの脱税額の推移 (平成 28 年度~令和2年度) 第4章 財政経済犯罪 年 度 所得税法 件 数 法人税法 1件当たり の脱税額 件 数 相続税法 1件当たり の脱税額 件 消費税法 1件当たり の脱税額 数 件 数 1件当たり の脱税額 28 年度 28 83.14 79 82.32 2 241.00 23 146.91 29 22 100.05 61 92.54 3 129.00 27 65.48 30 24 107.13 55 81.27 1 241.00 41 94.98 元 20 83.25 64 88.06 - … 32 61.72 2 10 106.90 55 69.56 - … 18 112.83 (金額の単位は,百万円) 注 第2節 1 国税庁の資料による。 2 「脱税額」は,加算税額を含む。 3 「所得税法」は,源泉所得税に係る違反を含む。 近年,金の密輸入事件が急増傾向にあったことから,金の密輸入に対する抑止効果を高めるため 経済犯罪 に,平成 30 年3月,関税法が改正され(平成 30 年法律第8号),無許可輸出入罪等に対する罰則が 強化されるとともに,消費税法が改正され(平成 30 年法律第7号) ,不正の行為により保税地域から 引き取られる課税貨物に対する消費税を免れた者等に対する罰則の強化が行われた(いずれも同年4 月施行) 。金の密輸入事件について,令和元事務年度(令和元年7月1日から2年6月 30 日まで)に おける処分(税関長による通告処分又は税関長等による告発)件数は,前事務年度(404 件)からお おむね半減し,199 件であった(財務省関税局の資料による。)。 第2節 経済犯罪 強制執行妨害(刑法 96 条の2,96 条の3及び 96 条の4に規定する罪をいい,平成 23 年法律第 74 号による改正前の刑法 96 条の2に規定する罪を含む。),公契約関係競売入札妨害,談合,破産法 (平成 16 年法律第 75 号による廃止前の大正 11 年法律第 71 号を含む。)違反及び入札談合等関与行為 防止法違反について,検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-4-2-1 図のとおりで ある。 186 令和 3 年版 犯罪白書

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4-4-2-1 図 強制執行妨害等 検察庁新規受理人員の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 600 500 公契約関係競売入札妨害及び談合 400 300 談合 100 入札談合等関与行為防止法 強制執行妨害 0 平成 13 注 第4 編 200 破産法 15 20 25 30 65 38 27 14 6 令和 2 1 検察統計年報による。 2 「公契約関係競売入札妨害」は,刑法 96 条の6第1項に規定する罪をいい,平成 23 年法律第 74 号による改正前の刑法 96 条の3第 1項に規定する罪を含む。 3 「談合」は,「公契約関係競売入札妨害及び談合」の内数である。 4 「強制執行妨害」は,刑法 96 条の2,96 条の3及び 96 条の4に規定する罪をいい,平成 23 年法律第 74 号による改正前の刑法 96 条の2に規定する罪を含む。 5 「破産法」(平成 16 年法律第 75 号)は,同法による廃止前の破産法(大正 11 年法律第 71 号)違反を含む。 会社法(平成 17 年法律第 86 号) ・平成 17 年法律第 87 号による改正前の商法(明治 32 年法律第 48 号) ,独占禁止法及び金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号。平成 19 年9月 30 日前の題名は 「証券取引法」 )の各違反について,検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-4-2-2 図のとおりである。 令和元年6月,独占禁止法が改正され(令和元年法律第 45 号),事業者による調査協力を促進し, 適切な課徴金を課することができるものとすることなどにより,不当な取引制限等を一層抑止し,公 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 正で自由な競争による我が国経済の活性化と消費者利益の増進を図るため,①課徴金減免制度の改正 (事業者が事件の解明に資する資料の提出等をした場合に,公正取引委員会が課徴金の額を減額する 仕組み(調査協力減算制度)の導入,減額対象事業者数の上限の廃止等),②課徴金の算定方法の見 直し(課徴金の算定基礎の追加,算定期間の延長等),③罰則規定の見直し(検査妨害等の罪に係る 法人等に対する罰金の上限額の引上げ等)等が行われた(①及び②は2年 12 月,③は元年7月にそ れぞれ施行)。なお,2年度における公正取引委員会による独占禁止法違反の告発は,1件・10 人 (法人を含む。)であった(公正取引委員会の資料による。)。 平成 29 年5月,金融商品取引法が改正され(平成 29 年法律第 37 号。30 年4月施行),株式等の 高速取引行為を行う者に対する登録制が導入されるとともに,登録をしないで高速取引行為を行った 者や自己の名義をもって他人に高速取引行為を行わせた者等に係る罰則が新設された。なお,令和2 年度における証券取引等監視委員会による金融商品取引法違反の告発は,2件・3人(法人を含む。) であり,その内訳は,「インサイダー取引」1件・1人,「相場操縦」1件・2人であった(証券取引 等監視委員会の資料による。)。 また,不正競争防止法についても,平成 27 年6月の改正により,営業秘密侵害について,より実 効的な刑事罰による抑止を図ることなどを目的に,営業秘密の転得者に対する処罰規定が整備され, 営業秘密侵害罪の未遂犯処罰規定が導入されるとともに,営業秘密侵害罪の罰金刑の上限引上げ及び 非親告罪化等が行われた(平成 27 年法律第 54 号。28 年1月施行)。30 年5月の改正により,保護 対象にデータ(電磁的記録に記録された情報)を追加するとともに,技術的制限手段(音楽・映画・ 犯罪白書 2021 187

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写真・ゲーム等のコンテンツやプログラムを無断でコピーや視聴・実行することを防止するための技 術)の効果を妨げる行為にサービスの提供等を追加するなど,技術的制限手段の効果を妨げる行為に 対する規律の強化等が行われた(平成 30 年法律第 33 号。同年 11 月施行)。 4-4-2-2 図 会社法・商法違反等 検察庁新規受理人員の推移 第4章 財政経済犯罪 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 150 会社法・商法 金融商品取引法 100 第2節 50 40 37 経済犯罪 0 平成 13 注 13 独占禁止法 15 20 25 30 令和 2 1 検察統計年報による。 2 「会社法・商法」は,会社法(平成 17 年法律第 86 号)違反及び平成 17 年法律第 87 号による改正前の商法(明治 32 年法律第 48 号) 違反である。 出資法及び貸金業法(昭和 58 年法律第 32 号。平成 19 年 12 月 19 日前の題名は「貸金業の規制等 に関する法律」)の各違反について,検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-4-2-3 図のとおりである。 4-4-2-3 図 出資法違反等 検察庁新規受理人員の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 1,200 出資法 1,000 800 600 貸金業法 400 269 200 120 0 平成 13 注 188 15 検察統計年報による。 令和 3 年版 犯罪白書 20 25 30 令和 2

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第3節 知的財産関連犯罪 商標法(昭和 34 年法律第 127 号)及び著作権法(昭和 45 年法律第 48 号)の各違反について,検 察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-4-3-1 図のとおりである。 なお,令和2年6月,著作権法が改正され(令和2年法律第 48 号),インターネット上のいわゆる 海賊版対策の強化として,いわゆるリーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツ(違法に アップロードされた著作物等)へのリンクを提供する行為やリーチサイトの運営行為・リーチアプリ の提供行為に対する罰則が新設された(同年 10 月施行)。また,同改正により,違法にアップロード された著作物のダウンロード規制について,その対象を著作物全般に拡大し,違法にアップロードさ 第4 編 れたものと知りながら侵害コンテンツをダウンロードする行為を,一定の要件の下で私的使用目的で あっても違法とし,このうち正規版が有償提供されている侵害コンテンツのダウンロードを継続的に 又は反復して行う行為に対する罰則が新設された(3年1月施行)。 4-4-3-1 図 商標法違反等 検察庁新規受理人員の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 1,000 商標法 800 600 400 414 著作権法 200 注 15 20 25 30 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 0 平成 13 195 令和 2 検察統計年報による。 犯罪白書 2021 189

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第 5章 第5章 サイバー犯罪 第1節 サイバー犯罪 不正アクセス行為等 4-5-1-1 図は,不正アクセス行為(不正アクセス禁止法 11 条に規定する罪をいう。)の認知件数の 推移(同法が施行された平成 12 年以降)である。不正アクセス行為の認知件数については,増減を 繰り返しながら推移し,令和2年は 2,806 件(前年比 154 件(5.2%)減)であった。 4-5-1-1 図 不正アクセス行為 認知件数の推移 (平成 12 年~令和2年) (件) 4,000 第1節 3,500 3,000 2,806 不正アクセス行為等 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 平成 12 注 15 20 25 30 令和 2 1 警察庁生活安全局,総務省サイバーセキュリティ統括官及び経済産業省商務情報政策局の資料による。 2 認知件数は,不正アクセス被害の届出を受理して確認した事実のほか,余罪として新たに確認した不正アクセス行為の事実,報道を 踏まえて事業者等から確認した不正アクセス行為の事実その他関係資料により確認した不正アクセス行為の事実中,犯罪構成要件に該 当する被疑者の行為の数である。 3 平成 12 年は,不正アクセス禁止法の施行日である同年2月 13 日以降の件数である。 令和2年の不正アクセス行為の認知件数について,被害を受けた特定電子計算機(ネットワークに 接続されたコンピュータをいう。 )のアクセス管理者(特定電子計算機を誰に利用させるかを決定す る者をいう。 )別の内訳を見ると,被害は, 「一般企業」が圧倒的に多く(2,703 件),「行政機関等」 は 84 件,「大学,研究機関等」は 11 件,「プロバイダ」は5件であった。また,不正アクセス行為後 の行為の内訳を見ると, 「インターネットバンキングでの不正送金等」が最も多く(1,847 件, 65.8%) ,次いで,「メールの盗み見等の情報の不正入手」 (234 件,8.3%),「インターネットショッ ピングでの不正購入」 (172 件,6.1%) , 「オンラインゲーム・コミュニティサイトの不正操作」(81 件,2.9%)の順であった。「インターネットバンキングでの不正送金等」は前年と比較して 39 件 (前年比 2.2%)増加した(警察庁生活安全局,総務省サイバーセキュリティ統括官及び経済産業省 商務情報政策局の資料による。)。 コンピュータ・電磁的記録対象犯罪(電磁的記録不正作出・毀棄等,電子計算機損壊等業務妨害, 電子計算機使用詐欺及び不正指令電磁的記録作成等),支払用カード電磁的記録に関する罪(刑法第 2編第 18 章の2に規定する罪)及び不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移(最近5年間)は, 4-5-1-2 表のとおりである。不正アクセス禁止法違反の検挙件数は,近年,増減を繰り返しており, 令和2年は 609 件(前年比 25.4%減)であった(CD-ROM 参照)。 なお,罪名ごと(罪名別の統計が存在するものに限る。)の検察庁終局処理人員は,CD-ROM 資 料 4-6 参照。 190 令和 3 年版 犯罪白書

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4-5-1-2 表 コンピュータ・電磁的記録対象犯罪等 検挙件数の推移 (平成 28 年~令和2年) 年 注 次 コンピュータ・ 支払用カード 不正アクセス 電 磁 的 記 録 電磁的記録不正 電子計算機損壊 電 子 計 算 機 不正指令電磁的 電磁的記録に 禁 止 法 対 象 犯 罪 作 出・ 毀 棄 等 等 業 務 妨 害 使 用 詐 欺 記 録 作 成 等 関 す る 罪 28 年 374 24 11 281 58 608 502 29 355 39 13 228 75 579 648 30 349 84 9 188 68 405 564 元 436 83 12 325 16 286 816 2 563 15 17 511 20 91 609 第4 編 1 警察庁の統計及び警察庁長官官房の資料による。 2 「電磁的記録不正作出・毀棄等」は,「支払用カード電磁的記録に関する罪」の検挙件数のうち,支払用カード電磁的記録不正作出の 検挙件数を含めて計上している。 3 「不正指令電磁的記録作成等」は,刑法第2編第 19 章の2の罪をいう。 その他のサイバー犯罪 第2節 サイバー犯罪のうち,インターネットを利用した詐欺や児童買春・児童ポルノ禁止法違反等,コン ピュータ・ネットワークを不可欠な手段として利用した犯罪の検挙件数の推移(最近5年間)は,4-52-1表のとおりである。検挙件数は,平成 29 年から4年連続で増加し,令和2年は 8,703 件(前年比 5.3%増)であった。2年の検挙件数を見ると,詐欺は前年より32.8%増加した。性的な事件のうち, 児童ポルノに係る犯罪は前年より8.7%,青少年保護育成条例違反は前年より2.4%それぞれ減少した。 4-5-2-1 表 その他のサイバー犯罪 検挙件数の推移(罪名別) (平成 28 年~令和2年) 区 分 総 28 年 30 年 元年 2年 7,448 8,011 8,127 8,267 8,703 828 1,084 972 977 1,297 オークション利用詐欺 208 212 … … … 迫 387 376 310 349 408 損 215 223 240 230 291 わ い せ つ 物 頒 布 等 819 769 793 792 803 児童買春・児童ポルノ禁止法 2,002 2,225 2,057 2,281 2,015 脅 名 児 誉 毀 春 634 793 672 706 577 ノ 1,368 1,432 1,385 1,575 1,438 出会い系サイト規制法 222 … … … … 青 少 年 保 護 育 成 条 例 616 858 926 1,038 1,013 商 法 298 302 375 327 306 法 586 398 691 451 363 児 著 童 童 買 ポ ル 標 作 権 ス ト ー カ ー 規 制 法 そ の 他 267 323 269 325 347 1,208 1,453 1,494 1,497 1,860 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 数 欺 詐 注 29 年 1 警察庁長官官房の資料による。 2 「オークション利用詐欺」は,「詐欺」の内数であり,その数値が入手可能であった年につき数値を示している。 3 「その他」は,売春防止法違反等であり,平成 29 年以降は出会い系サイト規制法違反を含む。 令和2年における SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス。ただし,インターネット異 性紹介事業(出会い系サイト)を除く。)に起因する事犯の被害児童数の総数は 1,819 人であり,主 な罪名別に見ると,青少年保護育成条例違反が 738 人と最も多く,次いで,児童買春・児童ポルノ 禁止法違反のうち,児童ポルノ所持,提供等(597 人) ,児童買春(311 人)の順であった(警察庁 生活安全局の資料による。)。 犯罪白書 2021 191

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第 6章 第6章 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪 第1節 児童虐待・配偶者間暴力・ ストーカー等に係る犯罪 児童虐待に係る犯罪 近年,児童虐待(保護者によるその監護する 18 歳未満の児童に対する虐待の行為。児童虐待防止 法2条参照)の事例が深刻化及び複雑化していることなどから,児童虐待防止法の制定とその改正を 始めとする関係法令の整備等によって,児童虐待を防止するための制度の充実が図られている。平成 29 年6月の改正では,都道府県知事等が,保護者に対し,児童の身辺につきまとったりしてはなら ないことなどを命ずる,いわゆる接近禁止命令の対象が拡大された(平成 29 年法律第 69 号。30 年 4月施行) 。また,令和元年6月の改正では,親権者が児童のしつけに際して体罰を加えてはならな いことなどが明記された(令和元年法律第 46 号。一部を除き2年4月施行)。 児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は,近年一貫して増加しており,令和元年度 は,19 万 3,780 件(前年度比 21.2%増)であった(厚生労働省政策統括官の資料による。)。 4-6-1-1 図は,児童虐待に係る事件(刑法犯等として検挙された事件のうち,児童虐待防止法2条 に規定する児童虐待が認められたものをいう。以下この節において同じ。)について,罪名別の検挙 件数及び検挙人員総数の推移(資料を入手し得た平成 15 年以降)を見たものである(罪名別の検挙 人員については,CD-ROM 参照) 。検挙件数及び検挙人員は,20 年前後には緩やかな増加傾向が見 られていたが,26 年以降は大きく増加し,令和2年は 2,133 件(前年比 8.2%増),2,182 人(同 7.8%増)であり , それぞれ平成 15 年(212 件,242 人)と比べると約 10.1 倍,約 9.0 倍であった。 罪名別では,特に,暴行や強制わいせつが顕著に増加している。なお,強制わいせつについては, 29 年6月,刑法の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 72 号)が成立し,同法により,監護者わ いせつ等が新設され,処罰対象が拡大した点に留意する必要がある。 第1節 4-6-1-1 図 児童虐待に係る事件 検挙件数・検挙人員の推移(罪名別) (件) (人) (平成 15 年~令和2年) 2,182 児童虐待に係る犯罪 2,200 2,133 2,000 1,800 令和 2 年検挙件数 その他 92 逮捕監禁 10 保護責任者遺棄 27 強制わいせつ 148 強制性交等 119 重過失致死傷 5 暴行 776 傷害 878 殺人 78 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 検挙人員 400 200 0 平成 15 注 192 20 25 30 令和 2 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 本図は,資料を入手し得た平成 15 年以降の数値で作成した。 3 「殺人」 , 「保護責任者遺棄」及び「重過失致死傷」は,いずれも,無理心中及び出産直後の事案を含む。 4 「傷害」は,暴力行為等処罰法1条の2及び1条の3に規定する加重類型を,「暴行」は,同法1条及び1条の3に規定する加重類型 を,それぞれ含まない。 5 「強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦をいい,29 年以降は強制性交等及び同改正前の 強姦をいう。 6 「その他」は,未成年者拐取,児童福祉法違反,児童買春・児童ポルノ禁止法違反等である。 令和 3 年版 犯罪白書

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4-6-1-2 表は,令和2年の児童虐待に係る事件の検挙人員について,被害者と加害者の関係別及び 罪名別に見たものである。総数では,父親等の割合(71.4%)が高いが,殺人及び保護責任者遺棄 では,母親等の割合がそれぞれ 72.8%,62.5%と高かった。また,母親等のうち,実母の割合は 94.2%とほとんどを占めるのに対し,父親等の内訳を見ると,実父の割合は 63.9%であり,実父以 外が 36.1%を占めた。さらに,加害者別に罪名の内訳を見ると,父親等のうち,実父では傷害及び 暴行が8割以上を占め,強制性交等及び強制わいせつは1割程度であったが,実父以外では傷害及び 暴行が6割台にとどまり,強制性交等及び強制わいせつが3割弱を占めた。 4-6-1-2 表 児童虐待に係る事件 検挙人員(被害者と加害者の関係別,罪名別) 加 害 総 父 親 実 者 総 人 傷 害 傷害致死 暴 行 逮捕監禁 強 制 強 制 児 童 保護責任 重過失 その他 性交等 わいせつ 福祉法 者 遺 棄 致死傷 数 2,182 81 907 11 781 11 123 150 7 32 5 85 等 1,558 22 621 6 569 6 119 146 5 12 3 55 父 995 17 386 2 437 2 47 58 3 9 3 33 養 父・ 継 父 300 1 125 1 63 1 53 46 1 1 - 9 母親の内縁の夫 210 4 98 1 51 3 15 28 - 2 - 9 53 - 12 2 18 - 4 14 1 - - 4 等 624 59 286 5 212 5 4 4 2 20 2 30 母 588 59 266 3 201 4 3 3 2 20 2 28 養 母・ 継 母 14 - 10 - 3 1 - - - - - - 父親の内縁の妻 5 - 3 - - - 1 1 - - - - 17 - 7 2 8 - - - - - - 2 その他(男性) 母 親 実 その他(女性) 注 数 殺 第4 編 (令和2年) 第2節 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 「殺人」,「保護責任者遺棄」及び「重過失致死傷」は,いずれも,無理心中及び出産直後の事案を含む。 3 「傷害」は,暴力行為等処罰法1条の2及び1条の3に規定する加重類型を,「暴行」は,同法1条及び1条の3に規定する加重類型 を,それぞれ含まない。 4 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 5 加害者の「その他」は,祖父母,伯(叔)父母,父母の友人・知人等で保護者と認められる者である。 6 罪名の「その他」は,未成年者拐取,児童買春・児童ポルノ禁止法違反等である。 配偶者間暴力に係る犯罪 配偶者暴力防止法は,被害者からの申立てを受けて裁判所が加害者に対して発した,被害者の身辺 へのつきまといをすることなどを禁止する保護命令に違反する行為(保護命令違反行為)等に対して 罰則を設けている。令和元年6月の改正では,被害者保護のために相互に連携・協力すべき関係機関 として児童相談所が明記された(令和元年法律第 46 号。2年4月施行)。 配偶者からの暴力事案等の検挙件数の推移(平成 22 年以降)を見ると,4-6-2-1図のとおりである。 配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は,平成 27 年以降減少傾向にあったが,令和2年は 増加し,76 件(前年比5件増)であった。その一方で,他法令による検挙件数の総数は,平成 23 年以 降増加し続けていたが,令和2年は減少し,8,702 件(同 388 件減)であったものの,平成 22 年の約 3.7 倍であった。特に,暴行及び暴力行為等処罰法違反の検挙件数が大きく増加している。また,令和 2年における強制性交等の検挙件数は, 10 件(同4件増)であった(警察庁生活安全局の資料による。 ) 。 なお,令和2年における配偶者からの暴力事案等に関する相談等件数(配偶者からの身体に対する 暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者の相談等を受理した件数をいう。)は,8万 2,643 件 (前年比 0.5%増)であり,被害者の性別の内訳を見ると,男性が1万 9,478 件(23.6%),女性が6 万 3,165 件(76.4%) で あ っ た。 被 害 者 と 加 害 者 の 関 係 別 に 見 る と, 婚 姻 関 係 が 6 万 1,808 件 犯罪白書 2021 193

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(74.8%)と最も多く,次いで,生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共 同生活を営んでいないものを除く。)をする関係1万 4,528 件(17.6%),内縁関係(婚姻の届出を していないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある場合をいう。)6,307 件(7.6%)の順であった (いずれも,元々その関係にあったものを含む。警察庁生活安全局の資料による。)。 第6章 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪 4-6-2-1 図 ① 配偶者からの暴力事案等の検挙件数の推移(罪名別) (平成 22 年~令和2年) 配偶者暴力防止法(保護命令違反に限る) (件) 140 配偶者暴力防止法(保護命令違反に限る) 120 100 80 76 60 40 20 0 平成 22 ② 25 30 令和 2 他法令 (千件) 10 9 8,702 第2節 8 7 配偶者間暴力に係る犯罪 令和2年 その他 150 銃刀法 40 暴力行為等 処罰法 302 器物損壊 94 住居侵入 37 脅迫 159 暴行 5,183 傷害 2,627 殺人 110 6 5 4 3 2 1 0 平成 22 注 194 25 30 令和 2 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 「配偶者暴力防止法(保護命令違反に限る)」による検挙件数は,同法に係る保護命令違反で検挙した件数全てを計上している。 3 「他法令」による検挙件数は,刑法犯及び特別法犯(配偶者暴力防止法を除く。)の検挙件数であり,複数罪名で検挙した場合には最 も法定刑が重い罪名で計上している。 4 「傷害」は,暴力行為等処罰法1条の2及び1条の3に規定する加重類型を,「暴行」,「脅迫」及び「器物損壊」は,同法1条及び1 条の3に規定する加重類型を,それぞれ含まない。 5 「その他」は,公務執行妨害,放火等である。 令和 3 年版 犯罪白書

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第3節 ストーカー犯罪等 ストーカー犯罪等には,加害者と被害者とが配偶者や交際相手等の一定の関係にない事案も含まれ るが,再被害の防止等に特段の配慮を要するなどの配偶者間暴力等との共通点に鑑み,この章で取り 上げる。 1 ストーカー犯罪 ストーカー規制法は,ストーカー行為(同一の者に対し,恋愛感情その他の好意の感情又はそれが 第4 編 満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,恋愛感情等の対象者又はその配偶者等 に対し,同法に規定された「つきまとい等」又は「位置情報無承諾取得等」を反復してすること)を 処罰するなどストーカー行為等について必要な規制を行うとともに,その相手方に対する援助の措置 等を定めることを目的としている。 警察署長等は,申出を受けた場合に,つきまとい等をして相手方に不安を覚えさせる行為があり, かつ,更に反復のおそれがあると認めるときには,当該行為をした者に対し,更に反復して当該行為 をしてはならない旨を警告することができる。また,平成 28 年 12 月のストーカー規制法改正(平成 28 年法律第 102 号)により,急に加害者の行為が激化して重大事件に発展するおそれがあるなどの ストーカー事案の特徴を踏まえて,都道府県公安委員会は,警告の存在を要件とせずに禁止命令等を することなどが可能となった(警告前置の廃止及び緊急禁止命令等。29 年6月施行)。同改正では, 住居等の付近をみだりにうろつく行為,拒まれたにもかかわらず,連続して SNS(ソーシャル・ネッ トワーキング・サービス)のメッセージ機能を利用してメッセージを送信する行為,ブログ等の個人 ページにコメント等を書き込む行為等が「つきまとい等」に追加されるとともに,ストーカー行為罪 の非親告罪化,ストーカー行為罪等についての法定刑の引上げがなされた(同年1月施行)。 令和3年5月の改正(令和3年法律第 45 号)では,相手方が現に所在する場所の付近における見 張り等や拒まれたにもかかわらず,連続して文書を送付する行為が「つきまとい等」に追加されると ともに,相手方の承諾なく,その所持する位置情報記録・送信装置(GPS 機器等)に係る位置情報 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 を取得する行為及び相手方の承諾なく,その所持する物に GPS 機器等を取り付けるなどの行為が「位 置情報無承諾取得等」として規制対象行為に加えられるなどした(同年8月全面施行)。 犯罪白書 2021 195

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ストーカー規制法による警告等の件数の推移(最近 20 年間)は,4-6-3-1 図のとおりである。警 告の件数は,平成 26 年以降は 3,000 件を超えていたが,30 年から 2,000 件台で推移しており,令和 2年は 2,146 件(前年比 4.6%増)であった。禁止命令等の件数は,平成 29 年から急増し,令和2 年は 1,543 件(同 12.2%増。うち緊急禁止命令等は 729 件)であった(警察庁生活安全局の資料に よる。 ) 。 第6章 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪 4-6-3-1 図 ストーカー規制法による警告等の件数の推移 (平成 13 年~令和2年) (件) 4,000 3,500 3,000 2,500 2,146 2,000 1,543 警告 1,500 1,000 500 0 平成 13 注 禁止命令等 15 20 25 30 令和 2 警察庁生活安全局の資料による。 ストーカー規制法違反として,ストーカー行為又は禁止命令等違反行為が処罰対象であるほか,ス トーカー行為をしている者による行為が殺人,傷害等の刑法その他の法律上の犯罪に該当する場合 は,それらによっても処罰されることになる。ストーカー事案の検挙件数の推移(資料を入手し得た 第3節 平成 16 年以降)を罪名別に見ると,4-6-3-2 図のとおりである。 ストーカー規制法違反は,平成 24 年から著しく増加し,30 年から2年連続で減少したものの,令 ストーカー犯罪等 和2年は 985 件(前年比 14.0%増)と再び増加し,増加直前の平成 23 年と比べると約 4.8 倍であっ た。また,他法令による検挙件数の総数も,24 年以降,1,500 件を超えて推移していたが,29 年か ら3年連続で減少し,令和元年は 1,400 件台となったものの,2年は 1,518 件(同 1.8%増)となり, 同様に平成 23 年と比べると約 1.9 倍であった。 196 令和 3 年版 犯罪白書

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4-6-3-2 図 ストーカー事案の検挙件数の推移(罪名別) (平成 16 年~令和2年) (件) 2,000 1,800 1,600 1,400 1,000 1,518 595 985 ストーカー規制法 107 800 300 600 400 273 200 0 平成 16 注 第4 編 1,200 他法令検挙件数 その他 器物損壊 住居侵入 脅迫 暴行 傷害 殺人 165 20 25 30 令和 2 70 8 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 本図は,資料を入手し得た平成 16 年以降の数値で作成した。 3 「ストーカー規制法」による検挙件数は,同法違反で検挙した件数全てを計上している。 4 「他法令検挙件数」は,刑法犯及び特別法犯(ストーカー規制法を除く。)の検挙件数であり,複数罪名で検挙した場合には最も法定 刑が重い罪名で計上している。 5 「傷害」は,暴力行為等処罰法1条の2及び1条の3に規定する加重類型を,「暴行」,「脅迫」及び「器物損壊」は,同法1条及び1 条の3に規定する加重類型を,それぞれ含まない。 6 「その他」は,迷惑防止条例違反,窃盗,強制わいせつ,銃刀法違反等である。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 なお,令和2年におけるストーカー事案に関する相談等件数(ストーカー規制法その他の刑罰法令 に抵触しないものも含む。 )は,2万 189 件であり,被害者と加害者の関係別に見ると,交際相手 (元交際相手を含む。)が 8,239 件(40.8%)と最も多く,次いで,知人・友人 2,552 件(12.6%), 勤務先同僚・職場関係 2,437 件(12.1%),関係(行為者)不明 1,841 件(9.1%),面識なし 1,567 件(7.8%) ,配偶者(内縁・元配偶者を含む。)1,497 件(7.4%)の順であった(警察庁生活安全局 の資料による。)。 犯罪白書 2021 197

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私事性的画像被害に係る犯罪(リベンジポルノ等) 2 私事性的画像被害に係る事案は,私事性的画像被害防止法違反で処罰されるほか,脅迫,強要等の 刑法その他の法律上の犯罪に該当する場合は,それらによっても処罰されることになる。平成 27 年 以降の私事性的画像被害に係る事案の検挙件数の推移を罪名別に見ると,4-6-3-3 図のとおりである。 第6章 児童虐待・配偶者間暴力・ストーカー等に係る犯罪 4-6-3-3 図 私事性的画像被害に係る事案の検挙件数の推移(罪名別) (平成 27 年~令和2年) (件) 300 私事性的画像被害防止法 250 198 200 59 150 5 10 20 100 27 34 47 50 0 注 他法令検挙件数 その他 わいせつ物頒布 名誉毀損 ストーカー規制法 強要 児童買春・ 児童ポルノ禁止法 脅迫 43 平成 27 30 令和 2 第3節 1 警察庁生活安全局の資料による。 2 「私事性的画像被害防止法」による検挙件数は,同法違反で検挙した件数全てを計上している。 3 「他法令検挙件数」は,刑法犯及び特別法犯(私事性的画像被害防止法違反を除く。 )の検挙件数であり,複数罪名で検挙した場合に は最も法定刑が重い罪名で計上している。 4 「脅迫」は,強要を含まない。また,暴力行為等処罰法1条及び1条の3に規定する加重類型を含まない。 5 「その他」は,強制性交等,恐喝等である。 6 私事性的画像被害防止法は,平成 26 年 11 月 27 日に施行され,同法3条の規定(第三者が撮影対象者を特定することができる方法 で私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供する行為等に対する罰則)は同年 12 月 17 日に施行されており,同年における検挙件 数は,同法違反0件,他法令7件であった。 ストーカー犯罪等 なお,令和2年における私事性的画像被害に係る事案に関する相談等件数(私事性的画像被害防止 法その他の刑罰法令に抵触しないものも含む。)は,1,570 件であり,被害者と加害者の関係別に見 ると,交際相手(元交際相手を含む。 )が 848 件(54.0%)と最も多く,次いで,知人・友人(イン ターネット上のみの関係)258 件(16.4%),知人・友人(インターネット上のみの関係以外)208 件(13.2%) ,関係(行為者)不明 79 件(5.0%),配偶者(元配偶者を含む。)51 件(3.2%),職場 関係者 29 件(1.8%)の順であった(警察庁生活安全局の資料による。)。 198 令和 3 年版 犯罪白書

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7章 第 女性犯罪・非行 犯罪・非行の動向 第1節 4-7-1-1 図は,女性の刑法犯について,検挙人員及び女性比の推移(昭和 21 年以降)を見たもの である(罪名別の刑法犯検挙人員及び女性比については,1-1-1-6 表参照)。女性の検挙人員は,平 成 17 年に戦後最多の8万 4,175 人を記録した後,減少に転じ,令和2年は3万 8,930 人(前年比 第4 編 1,396 人(3.5%)減)であった。女性の検挙人員の人口比も,検挙人員の推移とおおむね同様の傾 向にある(CD-ROM 参照)。検挙人員の女性比は,近年 20~21%で推移している。 女性の検挙人員の少年比は,平成 10 年に 55.2%を記録した後,低下傾向にあり,令和2年は 6.6% (前年比 0.6pt 低下)であった(CD-ROM 参照。なお,少年による刑法犯の検挙人員の女子人口比に ついては 3-1-1-4 図,少年による刑法犯の罪名別検挙人員及び女子比については 3-1-1-6 表をそれぞ れ参照) 。 4-7-1-1 図 女性(成人・少年)の刑法犯 検挙人員・女性比の推移 (昭和 21 年~令和2年) (万人) 12 21.3 10 (%) 25 20 女性比 15 6 4 36,373 5 2 注 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 38,930 10 成人 0 昭和 21 女 性 比 検挙人員 8 少年 25 30 35 40 45 50 55 60 平成元 5 10 15 20 25 30 令和2 0 2,557 1 警察庁の統計及び警察庁交通局の資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 昭和 30 年以前は,14 歳未満の少年による触法行為を含む。 4 昭和 40 年以前は,業務上(重)過失致死傷を含まない。 5 成人と少年の区分については,統計の存在する昭和 41 年以降の数値を示した。 6 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 犯罪白書 2021 199

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4-7-1-2 図は,女性の刑法犯の検挙人員について,年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を見た ものである。65 歳以上の高齢者の構成比は,顕著な上昇傾向にあり,平成 13 年に 10%を超えた後, 20 年に 20%を,26 年には 30%を超えた。29 年に 34.3%となった後,30 年から令和元年にやや低 下したが,2年は 34.1%(前年比 0.5pt 上昇)であった。これは,男性(19.8%)と比べて顕著に 高く,高齢者の刑法犯検挙人員(4万 1,696 人)の約3人に1人が女性であった。なお,全年齢で 第7章 女性犯罪・非行 は,女性は約5人に1人であった(1-1-1-5 図 CD-ROM 参照)。 4-7-1-2 図 女性の刑法犯 検挙人員の年齢層別構成比の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (%) 100 80 令和 2 年 65歳 以 上 50~64歳 40~49歳 30~39歳 20~29歳 20歳 未 満 第1節 60 犯罪・非行の動向 40 34.1 18.2 15.5 12.7 12.9 6.6 20 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和 2 1 警察庁の統計及び警察庁交通局の資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 4-7-1-3 図は,令和2年における刑法犯の検挙人員について,罪名別構成比を男女別に見たもので ある。男女共に,窃盗の構成比が最も高いが,女性は7割を超え,男性と比べて顕著に高く,特に, 万引きによる者の構成比が高い。なかでも,女性高齢者については,その傾向が顕著である(高齢者 の刑法犯検挙人員の罪名別構成比については,4-8-1-3 図参照)。 4-7-1-3 図 刑法犯 検挙人員の罪名別構成比(男女別) (令和2年) 窃盗 男 性 女 性 (143,652) 万引き 21.3 万引き以外の窃盗 21.0 (38,930) 注 200 1 警察庁の統計による。 2 「横領」は,遺失物等横領を含む。 3 ( )内は,人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 54.1 傷害・暴行 横領 詐欺 その他 26.8 7.4 4.8 18.8 17.3 13.2 3.8 3.8 7.7

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第2節 1 処遇 検察 4-7-2-1 図は,令和2年における検察庁終局処理人員(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。以 下この項において同じ。)の罪名別構成比を,男女別に見たものである。 4-7-2-1 図 検察庁終局処理人員の罪名別構成比(男女別) (令和2年) 男 性 女 性 (225,403) 窃盗 傷害・暴行 26.5 14.2 42.4 (38,572) 過失傷害 2.0 横領 その他の特別法犯 その他の刑法犯 4.8 3.2 8.6 覚醒剤取締法 16.1 5.3 4.9 第4 編 詐欺 4.9 9.8 28.3 5.6 20.8 2.7 注 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 3 「横領」は,遺失物等横領を含む。 4 ( )内は,人員である。 4-7-2-2 図は,令和2年における検察庁終局処理人員の処理区分別構成比を,男女別に見たもので ある。同年の起訴猶予率は,男性が 48.2%,女性が 58.9%であった(CD-ROM 参照)。 4-7-2-2 図 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比(男女別) (令和2年) 性 女 性 (38,572) 注 起訴猶予 41.3 38.4 32.7 46.8 その他の 家庭裁判所 不 起 訴 送 致 10.9 12.2 9.4 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 男 (225,403) 起訴 8.4 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 3 ( )内は,人員である。 犯罪白書 2021 201

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矯正 2 (1)受刑者 ア 女性受刑者の収容状況 令和3年1月1日現在,女性の受刑者の収容施設として指定されている刑事施設(医療刑務所及び 第7章 女性犯罪・非行 拘置所を除く。以下(1)において「女性刑事施設」という。)は,栃木,笠松,和歌山,岩国及び 麓の各刑務所,札幌,福島,豊橋及び西条の各刑務支所並びに加古川刑務所及び美祢社会復帰促進セ ンターの各女性収容棟である。 4-7-2-3 図は,刑事施設における女性被収容者の年末収容人員及び収容率(年末収容人員の収容定 員に対する比率)の推移(最近 20 年間)を見たものである。女性被収容者の年末収容人員は,平成 23 年まで増加傾向にあったが,24 年からは減少し続けている。収容率は,13 年から 18 年までは 100%を超えていたが,女性の収容定員が拡大されたこともあって,23 年から令和元年まで低下し 続けた。2年末現在において,女性の収容定員は 6,487 人(このうち既決の収容定員は 4,855 人,未 決の収容定員は 1,632 人)であるところ,その収容率は 61.6%(既決 70.4%,未決 35.5%)であっ 第2節 た(なお,男女総数の収容率については,2-4-2-2 図参照)。 4-7-2-3 図 刑事施設の年末収容人員・収容率の推移(女性) 処遇 (平成 13 年~令和2年) (千人) 6 (%) 160 140 未決 5 3,998 40 1 2 3 4 5 3,419 未決 35.5 20 1 0 平成 13 率 全体 61.6 60 既決 容 既決 70.4 80 3 2 注 579 100 収 年末収容人員 4 120 15 20 25 30 令和2 0 法務省矯正局の資料による。 「年末収容人員」は,各年 12 月 31 日現在の収容人員である。 「収容率」は,各年 12 月 31 日現在の収容人員の収容定員に対する比率をいう。 「既決」は,労役場留置者及び被監置者を含む。 「未決」は,死刑確定者,引致状による留置者及び観護措置の仮収容者を含む。 4-7-2-4 図は,女性入所受刑者の人員(罪名別)及び女性比の推移(最近 20 年間)を見たもので ある。女性入所受刑者の人員は,平成 18 年(2,333 人)まで増加し続け,19 年に若干減少した後は おおむね横ばいで推移していたが,28 年から令和元年まで減少し続けた後,2年(1,770 人)は増 加に転じた(前年比 52 人(3.0%)増)。罪名別に見ると,窃盗の増加が著しく,2年(827 人)は, 平成 13 年(326 人)の約 2.5 倍であり,24 年以降は覚醒剤取締法違反を上回っている。女性比につ いては,27 年まで上昇し続けた後,28 年からは横ばいとなっていたが,令和2年(10.6%)は,前 年より 0.8pt 上昇し,平成元年以降で初めて 10%台となった(なお,入所受刑者の女性人口比につ いては,2-4-2-3 図参照)。 202 令和 3 年版 犯罪白書

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4-7-2-4 図 女性入所受刑者の人員(罪名別)・女性比の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 2,500 10.6 (%) 12 女性比 2,000 1,770 その他 10 8 員 覚醒剤 取締法 6 632 第4 編 1,000 311 女 性 比 人 1,500 4 500 窃盗 0 平成 13 注 15 20 25 2 30 令和 2 827 0 矯正統計年報による。 4-7-2-5 図は,女性入所受刑者の年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を見たものである(入所 受刑者の男女別の年齢層別構成比については,2-4-2-5 図参照)。30 歳未満の若年者層の構成比は, 平成 14 年以降低下傾向にあり,30 年以降は上昇し続けているものの,25 年以降は他の年齢層と比 べて構成比が最も低い。40 歳代の年齢層の構成比は,14 年から上昇傾向にあり,28 年からは低下 傾向にあるものの,24 年以降は他の年齢層と比べて構成比が最も高い。65 歳以上の高齢者層の構成 比は,14 年以降上昇傾向にあり,令和2年(19.0%)は,平成 13 年(3.8%)と比べると,約5倍 に上昇している。なお,令和2年における女性高齢者の罪名別構成比を見ると,窃盗が約9割を占め ている(4-8-2-3 図参照)。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 4-7-2-5 図 女性入所受刑者の年齢層別構成比の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (%) 100 80 令和 2 年 65 歳 以 上 50~64歳 40~49歳 30~39歳 30 歳 未 満 60 40 19.0 24.0 26.1 19.5 11.4 20 0 平成 13 注 1 2 15 20 25 30 令和 2 矯正統計年報による。 入所時の年齢による。 犯罪白書 2021 203

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4-7-2-6 図は,令和2年における出所受刑者(出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者に限る。)の 帰住先別構成比を男女別に見たものである。 4-7-2-6 図 出所受刑者の帰住先別構成比(男女別) (令和2年) 第7章 女性犯罪・非行 父・母 男 性 (17,031) 26.2 その他の親族 2.6 雇主 兄弟・姉妹 2.7 配偶者 知人 7.8 4.2 性 (1,892) 注 第2節 1 2 3 4 5 6 7 8 処遇 イ 23.6 14.9 自宅 その他 22.8 3.6 19.9 7.7 社会福祉施設 2.4 女 更生保護施設等 4.1 13.3 1.0 9.9 3.2 1.8 19.7 8.5 矯正統計年報による。 出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者に限る。 「帰住先」は,刑事施設出所後に住む場所である。 「配偶者」は,内縁関係にある者を含む。 「更生保護施設等」は,就業支援センター,自立更生促進センター及び自立準備ホームを含む。 「自宅」は,帰住先が父・母,配偶者等以外で,かつ,自宅に帰住する場合である。 「その他」は,帰住先が不明,暴力団関係者,刑終了後引き続き被告人として勾留,出入国在留管理庁への身柄引渡し等である。 ( )内は,実人員である。 女性受刑者の処遇 女性受刑者については,その特性に応じた処遇の充実を図るため,地域の医療・福祉等の専門家と 連携する「女子施設地域連携事業」が推進されているほか,女性受刑者特有の課題に係る処遇プログ ラムが策定・実施されるなどしている。 女子施設地域連携事業は,地方公共団体,看護協会,助産師会,社会福祉協議会等の協力の下,女 性刑事施設が所在する地域の医療,福祉,介護等の専門職種とネットワークを作り,専門職種の助 言・指導を得て,女性受刑者特有の問題に着目した処遇の充実等を図るものであり,美祢社会復帰促 進センターを除く女性刑事施設において事業が展開されている。 女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラムとしては,一般改善指導の枠組みの中で,①窃盗防止 指導,②自己理解促進指導(関係性重視プログラム),③自立支援指導,④高齢者指導及び⑤家族関 係講座の5種類のプログラムが実施されている。 また,薬物犯罪の女性受刑者に対する処遇の新たな取組として,札幌刑務所札幌刑務支所におい て,令和元年度から5か年の事業計画により,「女子依存症回復支援モデル」が試行されている。同 事業では,同刑務支所に設置された「女子依存症回復支援センター」において,グループワーク等の 集団処遇が実施されており,そのプログラムは,依存症に関する知識や依存症からの回復の原則,家 族関係,未成年の子を持つ女性受刑者に対応した内容,女性特有の精神状態の変化や不定愁訴に関す る事項等が盛り込まれ,出所後も継続実施できる構成となっている。 204 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)少年院入院者 女子の少年院入院者は,女子のみを収容する少年院(9庁(分院4庁を含む。))又は男女を分隔す る施設がある第3種少年院(2庁)のいずれかに収容される。 4-7-2-7 図は,女子少年院入院者の人員(非行名別)及び女子比の推移(最近 20 年間)を見たも のである。女子の少年院入院者の人員は,平成 13 年に 615 人に増加した後,14 年からは減少傾向に あり,令和2年は 137 人(前年比4人(3.0%)増)であった。男子の少年院入院者の人員も減少傾 向にあるものの,女子の減少の程度がより大きいことから,女子比は,平成 18 年以降,緩やかな低 下傾向にあり,令和2年は 8.4%(同 0.7pt 上昇)であった(男子の少年院入院者の人員については, 3-2-4-1 図参照) 。非行名別に見ると,平成 17 年までは覚醒剤取締法違反の人員が他の非行名と比べ 第4 編 て最も多かったが,その人員は 13 年以降減少傾向にあり,令和2年(17 人)は平成 13 年(180 人) の約1割であった(少年院入院者の非行名別構成比については,3-2-4-3 図参照)。 なお,女子の少年院入院者は,男子と比べ,保護者等からの被虐待経験があるとする者の割合が高 い(3-2-4-8 図参照)。 女子の少年院入院者の処遇に関しては,平成 28 年度から,女子少年に共通する処遇ニーズに対応 して全在院者を対象に実施する「基本プログラム」(自己開示・他者理解の態度を育て,自尊感情を 高めるとともに,状況に適した対応が取れるようにすることを目的とした「アサーション・トレーニ ング」及びマインドフルネス瞑想を体験的に理解させることで衝動性の低減や統制力の向上等を目指 す「マインドフルネス」 )と,特に自己を害する程度の深刻な問題行動を有する処遇ニーズの高い在 院者を対象に実施する「特別プログラム」(自傷及び摂食障害に対するプログラム)が試行されてい る。 4-7-2-7 図 女子少年院入院者の人員(非行名別)・女子比の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 800 (%) 14 600 10 8 8.4 女子比 女子比 人 員 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 12 400 6 4 200 0 平成 13 137 15 窃盗 注 20 覚醒剤取締法 25 傷害・暴行 30 ぐ犯 令和 2 2 0 48 13 25 17 34 その他 矯正統計年報による。 犯罪白書 2021 205

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保護観察 3 4-7-2-8 図は,女性の保護観察開始人員及び女性比の推移(最近 20 年間)を,保護観察の種別ご とに見たものである。保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同 じ。 )及び少年院仮退院者の人員は,平成 14 年まで増加していたが,15 年から減少傾向にある。い 第7章 女性犯罪・非行 ずれの女子比も,近年は低下傾向にあったが,保護観察処分少年については,28 年に 10%を下回っ た後は,29 年から令和元年まで上昇し,2年は前年より若干低下した。少年院仮退院者については, 平成 30 年に 6.9%まで低下した後,令和元年以降は上昇している。仮釈放者の人員は,平成 20 年ま では増加し続けた後,若干の増減を経て,26 年から減少傾向にある。女性比は,上昇傾向にあって 12%前後まで上昇しており,30 年から令和元年まで低下したが,2年は再び上昇した。保護観察付 全部・一部執行猶予者の人員は,平成 12 年(674 人)をピークとして減少傾向に転じた後,22 年か らの緩やかな増加と 28 年からの減少を経て,30 年に保護観察付一部執行猶予者の増加を受けて増加 し,令和元年は減少したものの,2年は再び増加した。近年,女性比は,14~15%台で推移してい る。 第2節 なお,女性の仮釈放率は,令和2年は,74.0%であり,平成 13 年(80.7%)と比べると 6.7pt 低 下しているが,男性の仮釈放率(令和2年は 57.5%)と比べて,相当に高い(2-5-2-1 図 CD-ROM 参照) 。 処遇 4-7-2-8 図 女性(成人・少年)保護観察開始人員・女性比の推移 (平成 13 年~令和2年) ① ② 保護観察処分少年 (人) 4,000 11.5 3,000 女子比 (%) 16 (人) 700 (%) 16 14 600 14 12 500 10 2,000 0 平成 13 15 ③ 206 25 30令和 2 100 2 0 0 平成 13 15 仮釈放者 (人) 2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 平成 13 15 注 20 200 4 ④ 女性比 12.5 25 20 6 147 女子人員 25 4 30令和 2 2 0 保護観察付全部・一部執行猶予者 (人) 700 14 600 14 500 12 1,401 仮釈放者 10 (一部執行 20 8 (%) 16 12 女性人員 12 10 女子比 300 6 女子人員 8.7 400 8 833 1,000 少年院仮退院者 400 8 猶予者) 300 203 6 仮釈放者 200 4 (全部実刑者) 100 2 1,198 0 0 30令和 2 平成 13 15 女性比 15.9 (%) 16 570 保護観察付 一部執行 8 猶予者 219 6 保護観察付 4 全部執行 2 猶予者 0 351 10 女性人員 20 25 30令和 2 1 保護統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「仮釈放者(一部執行猶予者)」及び「保護観察付一部執行猶予者」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上して いる。 令和 3 年版 犯罪白書

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女性の保護観察対象者のうち,その多くを窃盗事犯者が占めている(CD-ROM 資料 2-9 参照)と し ころ,令和2年に嗜癖的な窃盗事犯者を対象とした「窃盗事犯者指導ワークブック」が作成され,そ れらの者の保護観察の実施に活用されている(第2編第5章第3節2項(7)イ参照)。特に女性の 嗜癖的窃盗事犯者については,過去の傷付き体験から心理的な問題や対人関係の葛藤を抱え,社会不 適応状態に陥って,窃盗を繰り返すに至った者が少なくないことから,窃盗に至った要因のアセスメ ントを行い,適切な処遇を行うことが有用であるとされる。 第4 編 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 207

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第 8章 高齢者犯罪 我が国の総人口は,令和2年 10 月1日現在,1億 2,571 万人で,高齢者人口は 65 歳以上では 第8章 高齢者犯罪 3,619 万人(総人口に占める割合は 28.8%)であり,70 歳以上では 2,794 万人(同 22.2%)である (総務省統計局の人口資料のうち,人口推計による。)。 第1節 犯罪の動向 年齢層別の刑法犯検挙人員及び高齢者率(各刑法犯検挙人員に占める高齢者の比率をいう。)の推 移(最近 20 年間)を総数・女性別に見ると,4-8-1-1 図のとおりである。高齢者の検挙人員は,平 成 20 年にピーク(4万 8,805 人)を迎え,その後高止まりの状況にあったが,28 年から減少し続け 第1節 ており,令和2年は4万 1,696 人(前年比 1.8%減)であった。このうち,70 歳以上の者は,平成 23 年以降高齢者の検挙人員の 65%以上を占めるようになり,令和2年には 74.8%に相当する3万 犯罪の動向 1,182 人(同 1.4%増)となった。高齢者率は,他の年齢層の多くが減少傾向にあることからほぼ一 貫して上昇し,平成 28 年以降 20%を上回り,令和2年は 22.8%(同 0.8pt 上昇)であった。 女性高齢者の検挙人員は,平成 24 年にピーク(1万 6,503 人)を迎え,その後高止まり状況に あったが,28 年から減少し続けており,令和2年は1万 3,291 人(前年比 2.2%減)であった。この うち,70 歳以上の女性は,平成 23 年以降女性高齢者の検挙人員の7割を超えるようになり,令和2 年は 81.5%に相当する1万 831 人(同 0.2%減)となった。女性の高齢者率は,平成 29 年に 34.3% に達し,その翌年から低下していたが,令和2年は 34.1%(同 0.5pt 上昇)であった。 4-8-1-1 図 刑法犯 検挙人員(年齢層別)・高齢者率の推移(総数・女性別) (平成 13 年~令和2年) ① 総数 ② (万人) 40 (%) 40 高齢者率 22.8 30 10 10 0 平成 13 15 20 歳未満 注 208 20 25 20 ~ 29 歳 (万人) 10 30 令和 2 0 30 ~ 39 歳 (%) 高齢者率 40 34.1 8 30 20 20 女性 182,582 17,904 32,071 26,838 29,910 34,163 10,514 31,182 30 6 20 4 10 2 0 平成 13 15 40 ~ 49 歳 20 50 ~ 64 歳 1 警察庁の統計及び警察庁交通局の資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 4 「高齢者率」は,総数及び女性の各刑法犯検挙人員に占める高齢者の比率をいう。 令和 3 年版 犯罪白書 25 30 令和 2 65 ~ 69 歳 38,930 2,557 5,013 4,952 6,028 7,089 2,460 0 10,831 70 歳以上

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刑法犯検挙人員の人口比の推移(最近 20 年間)を総数・女性別に見るとともに,これを年齢層別 に見ると,4-8-1-2 図のとおりである。 4-8-1-2 図 刑法犯 検挙人員の年齢層別人口比の推移(総数・女性別) (平成 13 年~令和2年) ① 総数 ② 300 300 20 ~ 64 歳 250 150 65 ~ 69 歳 250 200 177.6 150 120.7 70 歳以上 114.7 100 0 平成 13 15 注 20 ~ 64 歳 65 ~ 69 歳 100 50 25 30 令和2 68.6 67.5 70 歳以上 50 20 第4 編 200 女性 0 平成 13 15 20 54.8 25 30 令和2 1 警察庁の統計,警察庁交通局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 「人口比」は,各年齢層 10 万人当たりの刑法犯検挙人員をいう。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用し て算出した。 4 平成 14 年から 26 年は,危険運転致死傷を含む。 4-8-1-3 図は,令和2年における高齢者の刑法犯検挙人員の罪名別構成比を男女別に見たものであ る。全年齢層と比べて,高齢者では窃盗の構成比が高いが,特に,女性では,約9割が窃盗であり, そのうち万引きによるものの構成比が約8割と顕著に高い。 4-8-1-3 図 刑法犯 高齢者の検挙人員の罪名別構成比(男女別) 全年齢層 (182,582) 万引き 28.3 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 (令和2年) 窃盗 万引き以外の窃盗 20.2 横領 詐欺 6.6 4.6 傷害・暴行 23.9 その他 16.4 1.8 全高齢者 50.9 (41,696) 18.6 14.6 5.5 8.6 2.0 男性高齢者 (28,405) 40.4 19.7 19.7 6.8 11.3 1.4 女性高齢者 (13,291) 注 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の年齢による。 3 「横領」は,遺失物等横領を含む。 4 ( )内は,人員である。 73.2 16.3 3.7 2.6 2.8 犯罪白書 2021 209

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刑法犯検挙人員の人口比の推移(最近 20 年間)を主な罪名別で見るとともに,これを年齢層別で 見ると,4-8-1-4 図のとおりである。 4-8-1-4 図 刑法犯 検挙人員の年齢層別人口比の推移(罪名別) (平成 13 年~令和2年) 第8章 高齢者犯罪 ① 殺人 ② 6 30 5 25 4 20 3 15 2 65~69歳 第2節 20~64歳 70歳以上 1.0 0.4 0.4 1 処遇 0 平成 13 15 ③ 傷害 20 25 暴行 ④ 65~69歳 5 70歳以上 140 30 120 28.9 100 25 20 65~69歳 15 10 70歳以上 16.7 10.3 25 4.2 30 令和 2 65~69歳 70歳以上 80 81.4 75.5 72.8 20~64歳 60 40 20 5 0 平成 13 15 注 20 8.2 窃盗 35 20~64歳 22.1 10 0 平成 13 15 30 令和2 20~64歳 20 25 30 令和2 0 平成 13 15 20 25 30 令和 2 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。 3 「人口比」は,各年齢層 10 万人当たりの各罪名の検挙人員をいう。 第2節 1 処遇 検察 令和2年の起訴猶予率を罪名別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,4-8-2-1 図のとおりで ある。 刑法犯及び特別法犯(道交違反を除く。 )における 65~69 歳の者及び 70 歳以上の者の起訴猶予率 は,他の年齢層より高く,特に 70 歳以上の者では全体の起訴猶予率よりも 13.7pt 高い。 このうち刑法犯で見ると,件数の多い窃盗の後記の状況を受けて,高齢者は,全体で他の年齢層よ り高く,特に 70 歳以上の者では全体の起訴猶予率よりも 13.4pt 高い。 罪名別で見ると,65~69 歳の者の起訴猶予率は,傷害及び暴行共に,他の年齢層と比べて低い傾 向があるのに対して,70 歳以上の者の起訴猶予率は,傷害及び暴行共に,他の年齢層よりも高い。 210 令和 3 年版 犯罪白書

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窃盗について,更に男女別に見ると,70 歳以上の男性の起訴猶予率は,他の年齢層よりも顕著に高 く,女性は,年齢層による起訴猶予率の差が男性ほど大きくないものの,他の年齢層よりも高い。 4-8-2-1 図 起訴猶予率(罪名別,年齢層別) (令和2年) (%) 80 49.8 70 60 52.2 65.5 63.5 50 46.6 46.7 47.8 40 50.1 55.6 46.1 50.5 52.0 53.3 56.7 第4 編 30 20 10 0 刑法犯・特別法犯 (道交違反を除く) (%) 80 刑法犯 60.5 70 60 50 57.4 62.8 60.7 60.7 60.4 64.4 69.1 46.3 69.0 71.0 69.4 66.9 66.4 71.3 40 64.9 37.9 41.0 30 45.0 49.1 54.4 59.3 54.8 57.1 55.5 56.4 58.0 67.8 20 10 0 傷害 20 ~ 29 歳 注 暴行 30 ~ 39 歳 窃盗(男性) 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 窃盗(女性) 65 ~ 69 歳 70 歳以上 1 検察統計年報による。 2 犯行時の年齢による。 3 被疑者が法人である事件を除く。 4 年齢が不詳の者を除く。 5 各グラフ上の点線は,全体の起訴猶予率である。 矯正 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 2 4-8-2-2 図は,年齢層別の入所受刑者人員及び高齢者率(入所受刑者総数に占める高齢者の比率を いう。 )の推移(最近 20 年間)を見たものである。 高齢入所受刑者の人員は,増加傾向にあり,令和2年は 2,143 人(前年比 4.8%減)であるところ, 平成 13 年と比べて約 2.1 倍に増加している。特に,70 歳以上の入所受刑者人員の増加が顕著であり, 同年と比べて約 3.8 倍に増加している。高齢者率を見ると,上昇傾向にあり,令和2年は 12.9%であ るところ,平成 13 年と比べて 9.3pt 上昇している。 女性の高齢入所受刑者の人員も,同様に増加傾向にあり,令和2年は 336 人(前年比 1.8%増)で あるところ,平成 13 年と比べて約 5.7 倍に増加している。特に,70 歳以上の女性の入所受刑者人員 の増加が顕著であり,22 年以降は一貫して 65~69 歳の女性の入所受刑者人員を上回っている。70 歳以上の女性の入所受刑者人員は,令和2年は 245 人であった。平成 13 年以降の女性の高齢者率を 見ると,上昇傾向にあり,令和2年は 19.0%であるところ,平成 13 年と比べて 15.2pt 上昇してい る(CD-ROM 参照)。 犯罪白書 2021 211

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4-8-2-2 図 入所受刑者の人員(年齢層別)・高齢者率の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 35 (%) 20 30 第8章 高齢者犯罪 高齢者率 12.9 25 15 16,620 19 20 10 15 2,509 3,408 10 4,142 5 5 4,399 第2節 0 平成 13 20歳未満 処遇 注 15 20 20~29歳 30~39歳 25 40~49歳 30 50~64歳 令和 2 849 0 65~69歳 1,294 70歳以上 1 矯正統計年報による。 2 入所時の年齢による。ただし,平成 15 年以降は,不定期刑の受刑者については,入所時に 20 歳以上であっても,判決時に 19 歳で あった者を,20 歳未満に計上している。 3 「高齢者率」は,入所受刑者総数に占める高齢者の比率をいう。 令和2年における入所受刑者の人口比を年齢層別に見ると,20~64 歳が 21.0 であったのに対し, 65~69 歳は 10.3,70 歳以上は 4.6 であった。同年における女性の入所受刑者の人口比を年齢層別に 見ると,20~64 歳が 4.2 であったのに対し,65~69 歳は 2.1,70 歳以上は 1.5 であった(矯正統計 年報及び総務省統計局の人口資料による。)。 4-8-2-3 図は,令和2年における高齢の入所受刑者の罪名別構成比を男女別に見たものである。罪 名別構成比について全高齢者で見ると,窃盗が最も高く,次いで覚醒剤取締法違反,道路交通法違反 の順であった。女性高齢者は,男性高齢者と比べて,窃盗の構成比が顕著に高い(女性入所受刑者の 罪名別人員の推移については,4-7-2-4 図参照)。 4-8-2-3 図 高齢入所受刑者の罪名別構成比(男女別) (令和2年) 傷害・暴行 3.0 覚醒剤取締法 窃盗 全高齢者 (2,143) 道路交通法 59.4 10.2 6.1 (1,807) 53.8 11.4 7.1 その他 5.4 11.3 (336) 89.0 1.4 5.8 3.4 2.2 女性高齢者 殺人 1.5 詐欺 横領・背任 1.3 男性高齢者 住居侵入 1.9 13.2 1.5 3.9 3.3 0.6 注 212 1 矯正統計年報による。 2 入所時の年齢による。 3 ( )内は,実人員である。 4 「横領」は,遺失物等横領を含む。 令和 3 年版 犯罪白書 1.2 0.6 0.6 0.9

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平成 30 年度から,各矯正管区の基幹施設(札幌刑務所,宮城刑務所,府中刑務所,名古屋刑務所, 大阪刑務所,広島刑務所,高松刑務所及び福岡刑務所)において,入所受刑者のうち,入所時の年齢 が 60 歳以上のものなどに対して,認知症スクリーニング検査を実施し,認知症が疑われると判定さ れた受刑者に対して,医師による診察を実施する取組を行っている。令和元年から実施対象施設に栃 木刑務所及び和歌山刑務所が追加され,2年においては,930 人に対して検査を実施し,そのうち, 医師による診察を受けた者が 195 人,認知症と診断された者が 54 人であった(法務省矯正局の資料 による。 ) 。 3 保護観察 第4 編 高齢の仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察開始人員及び高齢者率の 推移(最近 20 年間)を見ると,4-8-2-4 図のとおりである(仮釈放者及び保護観察付全部・一部執 行猶予者のうち,一部執行猶予者の人員の動向については,CD-ROM 参照)。 仮釈放者では,高齢者の保護観察開始人員・高齢者率は,増加・上昇傾向にあり,令和2年は保護 観察開始人員が前年より若干減少したものの,高齢者率は前年よりも若干上昇した。70 歳以上の仮 釈放者は 634 人(前年比5人減)であり,平成元年以降最多となった前年より減少した(CD-ROM 参照) 。令和2年の高齢者の保護観察開始人員は,平成 13 年と比べて約 2.8 倍に増加している。特に, 70 歳以上の人員では,約 4.8 倍に増加している。 保護観察付全部・一部執行猶予者では,高齢者の保護観察開始人員は増減を繰り返しており,高齢 者率については,上昇傾向にあり,平成 26 年及び 28 年には 9.2%に達した後,29 年以降は毎年低下 していたが,令和2年は 7.9%(前年比 0.7pt 上昇)であった。2年の高齢者の保護観察開始人員は, 平成 13 年と比べて約 2.3 倍に増加している。特に,70 歳以上の人員は,約 4.0 倍であり,23 年以降 は一貫して 65~69 歳の人員を上回っている。 令和2年における保護観察付一部執行猶予者の保護観察開始人員を年齢層別に見ると,20~64 歳 は 1,458 人,65~69 歳は 21 人,70 歳以上は 17 人となっている(CD-ROM 参照)。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 犯罪白書 2021 213

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4-8-2-4 図 高齢者の保護観察開始人員・高齢者率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 仮釈放者 (人) 1,400 (%) 20 第8章 高齢者犯罪 1,200 1,085 1,000 12 10 600 高齢者率 8 6 400 4 200 第2節 処遇 ② 15 20 25 30 9.7 634 0 令和 2 保護観察付全部・一部執行猶予者 (%) 20 300 283 250 18 16 14 12 200 105 10 高齢者率 150 8 6 100 4 50 7.9 178 2 15 20 65~69歳 注 451 2 (人) 350 0 平成 13 16 14 800 0 平成 13 18 25 30 令和 2 0 70歳以上 1 保護統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察に付された日の年齢による。 3 「高齢者率」は,保護観察開始人員に占める高齢者の比率をいう。 4 「仮釈放者」のうち一部執行猶予の実刑部分について仮釈放となった者及び「保護観察付全部・一部執行猶予者」のうち保護観察付 一部執行猶予者は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から計上している。 令和2年における仮釈放による出所受刑者の人口比を年齢層別に見ると,20~64 歳が 14.7 であっ たのに対し,65~69 歳は 5.5,70 歳以上は 2.3 であった(保護統計年報及び総務省統計局の人口資 料による。 ) 。 令和2年の高齢出所受刑者の仮釈放率は,40.3%であり,出所受刑者全体の仮釈放率(59.2%) よりも 18.9pt 低い(出所受刑者全体の仮釈放率については,2-5-2-1 図 CD-ROM 参照)。年齢層別 に見ると,65~69 歳は 43.0%(前年比 0.4pt 上昇),70 歳以上は 38.6%(同 0.1pt 低下)であった。 2年の女性の高齢出所受刑者の仮釈放率は,65.1%であり,高齢出所受刑者人員総数の仮釈放率よ りも 24.8pt 高く,年齢層別に見ると,65~69 歳は 69.6%(同 8.4pt 上昇)であり,70 歳以上は 63.6%(同 7.0pt 上昇)であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 214 令和 3 年版 犯罪白書

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9章 第 第1節 1 外国人犯罪・非行 外国人の在留状況等 外国人新規入国者等 外国人新規入国者数は,平成 25 年以降急増し続け,令和元年には約 2,840 万人に達したが,2年 第4 編 2月以降,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,入管法に基づき入国拒否を行う対象地 域の指定を始めとした水際対策が開始されたことにより,同年は,358 万 1,443 人(前年比 2,482 万 1,066 人(87.4%)減)と大幅に減少した。国籍・地域別に見ると,中国(台湾及び香港等を除く。) が 83 万 6,088 人(同 88.7%減)と最も多く,次いで,台湾 64 万 7,424 人(同 85.7%減),韓国 43 万 2,707 人(同 91.9%減)の順となっている。在留資格別では,観光等を目的とする短期滞在が 93.8%と最も高く,次いで,技能実習(2.3%),留学(1.4%)の順であった(出入国在留管理庁の 資料による。)。 在留外国人の年末人員(中長期在留者と特別永住者の合計数)は,27 年以降過去最多を更新し続 けていたが,令和2年は 288 万 7,116 人(前年比 1.6%減)となり,8年ぶりに減少した。2年にお ける在留外国人の人員を国籍・地域別に見ると,中国(台湾を除く。77 万 8,112 人)が最も多く, 次いで,ベトナム(44 万 8,053 人),韓国(42 万 6,908 人)の順であった(出入国在留管理庁の資 料による。)。 2 不法残留者 我が国に在留する外国人のうち,不法残留者(在留期間を経過して我が国に滞在している者)数 (平成3年から8年までは各年5月1日現在の,9年以降は各年1月1日現在の各推計値)は,5年 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 に過去最多の 29 万 8,646 人を記録した後,徐々に減少し,その後も厳格な入国審査や関係機関の連 携による摘発等の総合的対策の効果もあって,26 年には6万人を下回り,5年の5分の1未満にま で減少した。27 年からは6年連続で増加していたが,令和3年は8万 2,868 人(前年比 24 人減)で あった(出入国在留管理庁の資料による。)。 3 退去強制 不法残留等の入管法違反者に対しては,我が国から退去させる退去強制手続(平成 16 年 12 月2日 以降は出国命令手続を含む。以下この項において同じ。)が執られることになる。令和2年に入管法 違反により退去強制手続が執られた外国人は,1万 5,875 人(前年比 18.1%減)であった。これを 違反事由別に見ると,不法残留が1万 4,465 人(91.1%)と最も多く,次いで,刑罰法令違反 504 人(3.2%),不法入国 225 人(1.4%)の順であった(出入国在留管理庁の資料による。)。 犯罪白書 2021 215

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第2節 1 犯罪の動向 刑法犯 外国人による刑法犯の検挙件数は,平成3年以降増加傾向にあり,17 年に4万 3,622 件を記録し 第9章 外国人犯罪・非行 たが,18 年から減少に転じ,29 年には一時的に増加した後,30 年から再び減少し,令和2年は1 万 4,536 件(前年比 1.7%減)であった。また,外国人による刑法犯の検挙人員は,平成 11 年から 増加し,17 年に1万 4,786 人を記録した後,18 年から減少し,25 年から増減を繰り返した後,再び 減少し,令和2年は 9,529 人(同 0.8%減)であった(4-9-2-1 図 CD-ROM 参照)。2年における刑 法犯検挙人員総数(18 万 2,582 人)に占める外国人の比率は 5.2%であった(警察庁の統計による。)。 4-9-2-1 図は,外国人による刑法犯の検挙件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を,来日外国 人とその他の外国人の別に見たものである。来日外国人による刑法犯の検挙件数は,5年からその他 の外国人を上回って,17 年(3万 3,037 件)のピーク後に減少し続け,29 年に一旦増加に転じた後, 30 年から再び減少に転じていたが,令和2年は前年よりも 364 件増加し,9,512 件(前年比 4.0%増) であった。来日外国人による刑法犯の検挙人員は,平成 16 年(8,898 人)をピークに 24 年まで減少 第2節 傾向にあり,25 年から増加に転じ,28 年から再び減少傾向に転じたが,令和2年は 5,634 人(同 1.3%増)であった。 犯罪の動向 4-9-2-1 図 外国人による刑法犯 検挙件数・検挙人員の推移 (平成元年~令和2年) (千件) (千人) 35 30 25 20 15 10 9,512 5,634 5 5,024 3,895 0 平成元 5 来日外国人検挙人員 注 216 警察庁の統計による。 令和 3 年版 犯罪白書 10 15 その他の外国人検挙人員 20 25 来日外国人検挙件数 30 令和2 その他の外国人検挙件数

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4-9-2-2 図は,令和2年における来日外国人による刑法犯の検挙件数の罪名別構成比を見たもので ある。なお,強盗は 0.9%(84 件),殺人は 0.5%(50 件)であった(警察庁の統計による。)。 4-9-2-2 図 来日外国人による刑法犯 検挙件数の罪名別構成比 (令和2年) 器物損壊 強制性交等・ 強制わいせつ 2.2 1.8 その他 7.8 住 居 侵 入 3.2 遺失物等横領 6.0 第4 編 詐欺 6.6 窃盗 61.1 総 数 9,512 件 傷害・暴行 11.3 注 1 警察庁の統計による。 2 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 4-9-2-3 図は,来日外国人による窃盗,強盗,傷害・暴行等について,検挙件数の推移(最近 20 年間)を見たものである。 なお,令和2年における来日外国人による窃盗及び傷害・暴行の検挙件数を国籍別に見ると,窃盗 は,ベトナムが 2,252 件(検挙人員 873 人)と最も多く,次いで,中国 1,668 件(同 739 人) ,韓 国・朝鮮 461 件(同 106 人)の順であった。傷害・暴行は,中国が 261 件(同 303 人)と最も多く, 次いで,ブラジル 125 件(同 133 人) ,ベトナム 118 件(同 134 人)の順であった(警察庁の統計に よる。 ) 。 4-9-2-3 図 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 来日外国人による刑法犯 検挙件数の推移(罪名別) (平成 13 年~令和2年) ① 窃盗 ② (千件) 30 (件) 1,200 25 20 5 0 平成 13 注 1,071 1,000 窃盗総数 800 非侵入窃盗 15 10 強盗,傷害・暴行, 強制性交等・強制わいせつ,文書偽造 傷害・暴行 600 侵入窃盗 400 乗り物盗 15 20 25 5,809 200 3,961 1,582 0 266 30 令和2 平成 13 15 文書偽造 強制性交等・ 強制わいせつ 強盗 20 214 96 84 25 30 令和 2 1 警察庁の統計及び警察庁刑事局の資料による。 2 「強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦をいい,29 年以降は強制性交等及び同改正前の 強姦をいう。 犯罪白書 2021 217

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特別法犯 2 4-9-2-4 図は,外国人による特別法犯(交通法令違反を除く。以下この項において同じ。)の検挙 件数及び検挙人員の推移(平成元年以降)を,来日外国人とその他の外国人の別に見たものである。 来日外国人による特別法犯の検挙件数及び検挙人員は,いずれも,16 年をピークに 24 年まで減少し 第9章 外国人犯罪・非行 ていたが,25 年からの増減を経て,28 年から5年連続で増加しており,令和2年は検挙件数 8,353 件(前年比 241 件(3.0%)増),検挙人員 6,122 人(同 30 人(0.5%)増)であった。 4-9-2-4 図 外国人による特別法犯 検挙件数・検挙人員の推移 (平成元年~令和2年) (千件) (千人) 16 14 第2節 12 10 犯罪の動向 8,353 8 6,122 6 4 1,547 2 0 平成元 1,210 5 来日外国人検挙人員 注 1 2 10 15 その他の外国人検挙人員 20 25 来日外国人検挙件数 30 令和2 その他の外国人検挙件数 警察庁の統計による。 交通法令違反を除く。 4-9-2-5 図は,来日外国人による特別法犯の主な罪名・罪種について,検挙件数の推移(最近 20 年間)を見たものである。 入管法違反の検挙件数は,平成 17 年から減少していたが,25 年及び 26 年に増加し,27 年は減少 したものの,28 年から増加し続け,令和2年は 6,534 件(前年比 637 件(10.8%)増)であった。 2年における入管法違反の検挙件数を違反態様別に見ると,不法残留が 4,178 件と最も多く,次い で,旅券等不携帯・提示拒否(在留カード不携帯・提示拒否及び特定登録者カード不携帯・提示拒否 を含む。 )977 件,偽造在留カード所持等(偽造在留カード行使及び提供・収受を含む。)790 件,資 格外活動 290 件の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。 なお,令和2年における来日外国人による入管法違反及び覚醒剤取締法違反の検挙件数を国籍別に 見ると,入管法違反は,ベトナムが 3,468 件(検挙人員 2,332 人)と最も多く,次いで,中国 1,292 件(同 872 人),タイ 424 件(同 368 人)の順であった。覚醒剤取締法違反は,総数が 358 件(同 271 人)であり,ブラジルが 100 件(同 69 人)と最も多く,次いで,フィリピン 64 件(同 47 人), ベトナム 63 件(同 57 人)の順であった(警察庁の統計による。)。 218 令和 3 年版 犯罪白書

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4-9-2-5 図 来日外国人による主な特別法犯 検挙件数の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 入管法 ② 薬物関係法令・売春防止法・風営適正化法 (千件) 14 (件) 1,400 12 1,200 10 1,000 8 6,534 4 400 2 200 注 15 20 25 30 令和2 686 600 0 平成 13 第4 編 6 0 平成 13 薬物関係法令 800 入管法 風営適正化法 売春防止法 15 20 25 100 18 30 令和2 1 警察庁の統計及び警察庁刑事局の資料による。 2 「薬物関係法令」は,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法,あへん法及び麻薬特例法の各違反である。 第3節 1 処遇 検察 (1)受理状況 令和2年における来日外国人被疑事件(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。以下この項におい て同じ。 )の検察庁新規受理人員の地域・国籍別構成比は,4-9-3-1 図のとおりである。統計の存在 する平成5年以降一貫して最も高かった中国の構成比を,令和元年にベトナムが上回り,2年も引き 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 続き,ベトナムが 36.4%と最も高く,次いで,中国(23.7%),フィリピン(5.9%)の順であった。 罪名を国籍別に見ると,ベトナムは,入管法違反が 3,547 人と最も多く,次いで,窃盗(987 人) , 傷害(111 人)の順であり,中国は,入管法違反が 1,340 人と最も多く,次いで,窃盗(800 人), 傷害(283 人)の順であり,フィリピンは,入管法違反が 397 人と最も多く,次いで,窃盗(148 人) ,覚醒剤取締法違反(81 人)の順であった(検察統計年報による。)。 4-9-3-1 図 来日外国人被疑事件 検察庁新規受理人員の地域・国籍別構成比 (令和2年) ヨーロッパ 2.5 北アメリカ 1.8 無国籍 0.0 アジア 86.6 総 数 (16,311) ベトナム 中国 36.4 23.7 フィリピン 注 韓国・朝鮮 5.9 4.5 3.6 タイ 12.5 6.9 南アメリカ その他の アジア アフリカ 1.8 オセアニア 0.4 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 3 無国籍の者を含み,国籍不詳の者を含まない。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 219

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(2)処理状況 4-9-3-2 図は,来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員の推移(最近 20 年間)を処理区分別に 見たものである。その人員は,平成 17 年から減少傾向にあった後,23 年以降はおおむね横ばいで推 移していたが,令和2年は1万 6,380 人と前年比で 0.8%増加しており,近年増加傾向にある(CDROM 資料 4-7 参照) 。なお,2年における来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員は,日本人を 第9章 外国人犯罪・非行 含めた全終局処理人員総数(28 万 3,573 人)の 5.8%,外国人被疑事件の終局処理人員(2万 751 人)の 78.9%を占めている(CD-ROM 資料 4-8 参照)。 4-9-3-2 図 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理人員(処理区分別)の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 30 25 20 第3節 16,380 15 501 処遇 8,636 10 823 5 0 平成 13 6,420 15 公判請求 注 20 略式命令請求 25 不起訴 30 令和2 家庭裁判所送致 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 3 無国籍の者を含み,国籍不詳の者を含まない。 令和2年における来日外国人被疑事件の検察庁終局処理状況を罪名別に見ると,4-9-3-3 表のとお りである。来日外国人の起訴率は,日本人を含めた全終局処理人員と比較すると,刑法犯では 6.2pt 高く,特別法犯では 1.7pt 低く,入管法違反を除いた特別法犯では 2.0pt 低い(CD-ROM 資料 2-3 及び 4-8 参照) 。 220 令和 3 年版 犯罪白書

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4-9-3-3 表 来日外国人被疑事件 検察庁終局処理状況(罪名別) (令和2年) 罪 総 刑 法 局 員 [起 訴 率] 数 283,573 [41.1] 16,380 (100.0) [45.6] 犯 194,580 [37.4] 6,863 (41.9) [43.6] 理 終 人 来日外国人終局処理人員 [起 訴 率] 住 居 侵 入 6,369 [40.5] 301 (1.8) [34.1] 文 書 偽 造 2,478 [31.4] 148 (0.9) [67.1] 強制わいせつ 3,902 [33.9] 173 (1.1) [36.6] 強 制 性 交 等 1,435 [37.0] 46 (0.3) [23.9] 人 1,123 [25.4] 20 (0.1) [80.0] 傷 害 35,719 [31.4] 1,196 (7.3) [27.4] 窃 盗 82,964 [43.7] 3,014 (18.4) [53.8] 強 盗 2,002 [42.2] 79 (0.5) [77.8] 詐 欺 13,367 [54.5] 539 (3.3) [64.6] 横 領 8,299 [20.9] 257 (1.6) [5.1] 毀 棄 ・ 隠 匿 7,979 [22.1] 219 (1.3) [22.3] 犯 88,993 [48.8] 9,517 (58.1) [47.0] 風営適正化法 1,610 [47.2] 184 (1.1) [33.9] 銃 5,898 [18.4] 175 (1.1) [21.1] 売 春 防 止 法 557 [33.8] 14 (0.1) [92.9] 大 麻 取 締 法 7,251 [49.4] 293 (1.8) [44.6] 覚醒剤取締法 13,525 [77.2] 497 (3.0) [77.3] [68.9] 165 (1.0) [73.3] [46.9] 6,805 (41.5) [47.0] 別 法 刀 法 関 税 法 457 入 管 法 7,489 第4 編 殺 特 注 全 処 名 2 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 3 「来日外国人」については,無国籍の者を含み,国籍不詳の者を含まない。 4 「文書偽造」は,刑法第2編第 17 章の罪をいい,「毀棄・隠匿」は,同編第 40 章の罪をいう。また,「傷害」は,暴行及び凶器準備 集合を含み,「横領」は,遺失物等横領を含む。 5 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 6 ( )内は,構成比である。 裁判 令和2年における外国人事件(外国人が被告人となった事件)の通常第一審での有罪人員は, 5,123 人(前年比 9.5%増)であり,有罪人員総数に占める比率は,10.4%であった(司法統計年報 及び最高裁判所事務総局の資料による。)。 令和2年における被告人通訳事件(被告人に通訳・翻訳人の付いた外国人事件をいう。以下この項 において同じ。)の終局人員は,4,441 人(前年比 13.7%増)であった。通訳言語は 44 に及び,内 訳を見ると,ベトナム語が 1,660 人(37.4%)と最も多く,次いで,中国語 1,034 人(23.3%) ,タ イ 語 291 人(6.6%) , タ ガ ロ グ 語 263 人(5.9%), ポ ル ト ガ ル 語 209 人(4.7%), 英 語 170 人 (3.8%) ,スペイン語 135 人(3.0%)の順であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。 令和2年における被告人通訳事件の通常第一審での有罪人員(懲役・禁錮に限る。)は,4,129 人 (前年比 15.5%増)であり,全部執行猶予率は,全罪名では 89.2%,入管法違反を除くと 78.1%で あった(最高裁判所事務総局の資料による。)。なお,2年における被告人通訳事件で,一部執行猶予 付判決の言渡しを受けた人員は,3人であった(CD-ROM 資料 4-9 参照)。 犯罪白書 2021 221

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3 矯正 令和2年における外国人の入所受刑者は,718 人(前年比1.6%減)であった(矯正統計年報による。 ) 。 外国人受刑者のうち,日本人と異なる処遇を必要とする者は,F 指標受刑者として,その文化,生 活習慣等に応じた処遇を行っている(2-4-3-2 表参照)。F 指標入所受刑者人員の推移(最近 20 年間) 第9章 外国人犯罪・非行 は,4-9-3-4 図のとおりである。その人員は,平成 17 年から減少傾向にあったが,近年は 400 人前 後で推移しており,令和2年は 414 人(前年比 7.0%増)であった。2年における F 指標入所受刑者 を国籍別に見ると,中国が 97 人と最も多く,次いで,タイ 43 人,ブラジル 40 人の順であった(CDROM 資料 4-10 参照) 。罪名別に見ると,覚醒剤取締法違反が 154 人と最も多く,次いで,窃盗の 114 人であった(矯正統計年報による。)。 令和2年末現在,F 指標受刑者の収容人員は,1,268 人(男性 1,071 人,女性 197 人)であり,前 年末比で 0.2%増加した(矯正統計年報による。)。 4-9-3-4 図 F 指標入所受刑者人員の推移(男女別) (平成 13 年~令和2年) 第3節 (人) 1,800 処遇 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 414 400 200 0 平成 13 注 15 20 25 男性 323 女性 91 30 令和2 矯正統計年報による。 4 保護観察 令和2年における外国人の仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の保護観察開始人員は, 505 人(前年比 7.5%減)であった(うち,保護観察付一部執行猶予者の保護観察開始人員は 34 人 であった。 ) 。国籍別に見ると,韓国・朝鮮が 226 人と最も多く,次いで,中国 73 人,ベトナム 43 人 の順であった(CD-ROM 資料 4-11 参照)。来日外国人に限ると,272 人(同 17.8%減)であり,そ の内訳は,仮釈放者が 254 人,保護観察付全部執行猶予者が9人,保護観察付一部執行猶予者が9 人であった(保護統計年報による。)。 令和2年末現在,外国人(永住者及び特別永住者を除く。)の保護観察係属人員は,仮釈放者 180 人,保護観察付全部執行猶予者 42 人,保護観察付一部執行猶予者 17 人の合計 239 人(前年末比 20.3%減)であった(法務省保護局の資料による。)。 なお,外国人の保護観察係属人員については,仮釈放者のうち,140 人は退去強制事由に該当し, 国外退去済みの者が 98 人,退去強制手続により収容中の者が 38 人,仮放免中の者が4人であった (法務省保護局の資料による。)。 222 令和 3 年版 犯罪白書

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第4節 1 外国人非行少年の動向と処遇 外国人犯罪少年の動向 4-9-4-1 図は,検察庁における外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員(過失運転致死傷等及び道交 違反を除く。以下この項において同じ。)の推移(最近 20 年間)を来日外国人少年とその他の外国人 少年の別に見たものである。 4-9-4-1 図 外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員の推移 第4 編 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 739 その他の外国人少年 238 500 0 平成 13 注 来日外国人少年 501 15 20 25 30 令和 2 1 検察統計年報による。 2 検察官の送致に係るものに限る。 3 過失運転致死傷等及び道交違反を除く。 4 無国籍の者を含み,国籍不詳の者を含まない。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 令和2年における来日外国人犯罪少年の家庭裁判所送致人員を国籍別に見ると,中国が 122 人 (24.4%)と最も多く,次いで,ブラジル 98 人(19.6%),フィリピン 83 人(16.6%),ベトナム 60 人(12.0%), ペ ル ー25 人(5.0%) の 順 で あ っ た。 ま た, 罪 名 別 に 見 る と, 窃 盗 が 246 人 (49.1%)と最も多く,次いで,横領(遺失物等横領を含む。)42 人(8.4%),傷害(暴行及び凶器 準備集合を含む。)33 人(6.6%)の順であった(検察統計年報による。) 。 犯罪白書 2021 223

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外国人非行少年の処遇 2 (1)矯正 外国人の少年院入院者の人員の推移(最近 20 年間)を見ると,4-9-4-2 図のとおりである。令和 2年における外国人の少年院入院者を国籍別に見ると,ブラジルが 17 人と最も多く,次いで,韓 第9章 外国人犯罪・非行 国・朝鮮 10 人,中国及びフィリピンいずれも8人の順であった(CD-ROM 参照)。 4-9-4-2 図 外国人の少年院入院者の人員の推移 (平成 13 年~令和 2 年) (人) 160 140 120 100 第4節 80 外国人非行少年の動向と処遇 60 52 40 20 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和 2 矯正統計年報による。 少年院では,日本人と異なる処遇上の配慮を要する外国人少年を,社会適応課程Ⅲ(A 3)又は社 会適応課程Ⅴ(A 5)に編入し,日本の文化,生活習慣等の理解を深めるとともに,健全な社会人と して必要な意識,態度を養うための各種指導を行っている(3-2-4-9 表参照)。 (2)保護観察 令和2年における外国人の保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。)及び少年院仮 退院者の保護観察開始人員は,208 人であった。その内訳は,保護観察処分少年 150 人,少年院仮 退院者 58 人であった。国籍別に見ると,ブラジルが 59 人と最も多く,次いで,フィリピン 45 人, 中国 31 人の順であった(CD-ROM 資料 4-11 参照)。 令和2年末現在,外国人少年(永住者及び特別永住者を除く。)の保護観察係属人員は,保護観察 処分少年 114 人,少年院仮退院者 33 人であった(法務省保護局の資料による。)。 224 令和 3 年版 犯罪白書

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第 10 章 第1節 精神障害のある者による 犯罪等 犯罪の動向 4-10-1-1 表は,令和2年における精神障害者等(精神障害者及び精神障害の疑いのある者をいう。 以下この節において同じ。 )による刑法犯の検挙人員と,検挙人員総数に占める精神障害者等の比率 を罪名別に見たものである。同年における刑法犯の検挙人員総数のうち,精神障害者等の比率は, 4-10-1-1 表 第4 編 0.7%であったが,罪名別で見ると,放火(14.8%)及び殺人(6.9%)において高かった。 精神障害者等による刑法犯 検挙人員(罪名別) (令和2年) 区 分 総 数 殺 検挙人員総数(A) 182,582 人 強 盗 放 火 強制性交等・ 傷 害 ・ 脅 強制わいせつ 暴 行 迫 窃 盗 詐 欺 その他 878 1,654 582 3,937 43,709 2,862 88,464 8,326 32,170 1,345 61 17 86 21 426 55 267 33 379 精 神 障 害 者 940 37 11 58 12 318 32 162 22 288 精神障害の疑いのある者 405 24 6 28 9 108 23 105 11 91 B/A(%) 0.7 6.9 1.0 14.8 0.5 1.0 1.9 0.3 0.4 1.2 精神障害者等(B) 注 1 警察庁の統計による。 2 「精神障害者等」は, 「精神障害者」 (統合失調症,精神作用物質による急性中毒若しくはその依存症,知的障害,精神病質又はその 他の精神疾患を有する者をいい,精神保健指定医の診断により医療及び保護の対象となる者に限る。)及び「精神障害の疑いのある者」 (精神保健福祉法 23 条の規定による都道府県知事への通報の対象となる者のうち,精神障害者以外の者)をいう。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 第2節 検察・裁判 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 1 処遇 令和2年に検察庁において心神喪失を理由に不起訴処分に付された被疑者(過失運転致死傷等及び 道交違反を除く。 )は,367 人であった(2-2-4-3 表参照)。また,同年に,通常第一審において心神 喪失を理由に無罪となった者は,5人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。 2 矯正 令和2年における入所受刑者及び少年院入院者の人員のうち,精神障害を有すると診断された者の 人員と,入所受刑者及び少年院入院者の人員の総数に占める比率を精神障害の種別ごとに見ると, 4-10-2-1 表のとおりである(矯正施設被収容者に対する福祉的支援については,第2編第4章第3 節5項及び第3編第2章第4節3項(5)参照)。 犯罪白書 2021 225

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4-10-2-1 表 精神障害を有すると診断された入所受刑者・少年院入院者の人員 (令和2年) 種 別 総 うち 数 精神障害を 有 す る 者 入 所 受 刑 者 16,620 第 少年院入院者 注 章 10 知的障害 人格障害 神経症性障害 2,544 (15.3) 297 (1.8) 63 (0.4) 337 (2.0) 458 (28.2) 139 (8.6) 11 (0.7) 7 (0.4) 1,624 発達障害 … 200 (12.3) その他の精神障害 1,847 (11.1) 101 (6.2) 精神障害のある者による犯罪等 1 矯正統計年報による。 2 「精神障害を有する者」は,刑事施設等において,知的障害,人格障害,神経症性障害,発達障害及びその他の精神障害(精神作用 物質使用による精神及び行動の障害,統合失調症,気分障害等を含む。)を有すると診断された者をいう。 3 「入所受刑者」の「その他の精神障害」は,発達障害を含む。 4 ( )内は,総数に占める精神障害を有する者の比率である。 保護観察 3 保護観察対象者のうち,類型別処遇(第2編第5章第3節2項(2)ア及び第3編第2章第5節3 項(1)参照)における「精神障害等対象者」の類型に認定された者は,令和2年末現在,3,187 人 (前年末比 0.5%減)であり,保護観察対象者全体(短期保護観察及び交通短期保護観察の対象者を 除く。 )に占める比率は 13.0%である(2-5-3-6 表 CD-ROM 及び 3-2-5-6 表 CD-ROM 参照)。保護 観察所では,この類型の保護観察対象者について,必要に応じ適切な医療や福祉上の措置が受けられ るように,対象者に助言するほか,医療・福祉機関や家族との連携も図っている(保護観察対象者等 に対する福祉的支援については,第2編第5章第2節2項及び第6節2項参照)。 第3節 第3節 心神喪失者等医療観察制度 心神喪失者等医療観察制度 心神喪失者等医療観察制度は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し,継続的かつ 適切な医療及びその確保のために必要な観察・指導を行うことによって,病状の改善とこれに伴う同 様の行為の再発の防止を図り,その社会復帰を促進することを目的として,心神喪失者等医療観察法 に基づいて運用されている。その手続の流れは,4-10-3-1 図のとおりである。 4-10-3-1 図 心神喪失者等医療観察法による手続の流れ 処遇実施計画に 基づく処遇 (再)入院決定 犯罪白書 保護観察所 精神保健観察 処遇終了等 申立て 通院期間 延長決定 障害福祉サービス 事業者等 医療を行わない旨の決定 令和 3 年版 関係機関相互間の 連携確保 医療終了決定 通院期間の 満了 地方裁判所(審判) 入院継続 確認決定 退院許可 決定 指定通院医療機関 退院許可等 申立て 通院 決定 226 都道府県・市町村 (精神保健福祉センター・ 保健所等) 生活環境の 調整 地方裁判所(審判) 入院 決定 指定入院医療機関 地方裁判所(審判) 心神喪失等で 無罪等の 確定裁判 申立て 官 裁判所 察 起訴 検 検察庁 鑑定 地域社会における処遇 医療終了 決定 本制度による処遇の終了(一般の精神医療・精神保健福祉の継続) 医 生活環境の 調査 警察 送致 心神喪失等で 不起訴処分 保護観察所 定 対象行為 指定入院医療機関による医療 保護観察所 鑑 審判(入院又は通院の決定手続)

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審判 1 心神喪失者等医療観察制度の対象となるのは,①対象行為(放火,強制わいせつ及び強制性交等, 殺人,強盗(これらの未遂を含む。 )並びに傷害)を行い,心神喪失又は心神耗弱であることが認め られ,不起訴処分となった者,②対象行為について,心神喪失を理由に無罪の確定裁判を受けた者, 又は,心神耗弱を理由に刑を減軽する旨の確定裁判(懲役又は禁錮の刑を言い渡し,その刑の全部の 執行猶予の言渡しをしない裁判であって,執行すべき刑期があるものを除く。)を受けた者である。 これらの対象者については,原則として,検察官の申立てにより審判が行われる。その審判は,地方 裁判所において,裁判官と精神保健審判員(精神科医)の合議体により行われ,心神喪失者等医療観 第4 編 察法に基づく医療の要否・内容が決定される。審判に当たり,裁判所は,保護観察所の長に対し,対 象者の生活環境の調査を求めることができる。令和2年における生活環境の調査の開始件数は,325 件であった(保護統計年報による。)。 令和2年における検察官申立人員及び審判の終局処理人員を対象行為別に見ると,4-10-3-2 表の とおりである。 4-10-3-2 表 検察官申立人員・地方裁判所の審判の終局処理人員(対象行為別) (令和2年) 検察官申立人員 終 対象行為 処 理 人 員 全 部 総 罪 執 行 猶予等 下 医 療 を 対象行為 数 入院決定 通院決定 行わない を行った 心神喪失 取下げ 旨の決定 とは認め 者等では な い られない 申立て 不適法 による 却 下 数 不起訴 数 323 290 5 28 309 236 33 31 1 7 1 - 火 97 91 1 5 86 61 10 14 - 1 - - 強 制 性交等 7 5 - 2 6 3 - 3 - - - - 総 放 総 局 却 確定裁判 無 人 67 53 3 11 72 55 9 7 - 1 - - 傷 害 147 136 1 10 139 113 13 6 1 5 1 - 強 盗 5 5 - - 6 4 1 1 - - - - 注 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 殺 1 司法統計年報並びに法務省刑事局及び最高裁判所事務総局の各資料による。 2 「対象行為」は,一定の刑法の罰条に規定する行為に当たるものをいう(心神喪失者等医療観察法2条1項参照)。 3 「放火」は,現住建造物等放火,非現住建造物等放火及び建造物等以外放火に当たる行為(ただし,予備に当たる行為を除く。)をい い,消火妨害に当たる行為を含まない。 4 「強制性交等」は,強制わいせつに当たる行為及び平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 5 「殺人」は,殺人予備に当たる行為を含まない。 6 「傷害」は,現場助勢に当たる行為を含まない。 7 「強盗」は,強盗及び事後強盗に当たる行為(ただし,予備に当たる行為を除く。)をいい,昏酔強盗に当たる行為を含まない。 8 「全部執行猶予等」は,懲役又は禁錮の実刑判決であって,執行すべき刑期がないものを含む。 9 複数の対象行為が認められた事件は,法定刑の最も重いものに,複数の対象行為の法定刑が同じ場合には対象行為の欄において上に 掲げられているものに計上している。 2 指定入院医療機関による医療 (1)入院による医療 裁判所の入院決定を受けた者は,指定入院医療機関(厚生労働大臣が指定する。令和3年4月1日 現在,全国に 33 の機関がある(厚生労働省社会・援護局の資料による。)。)に入院して,この制度に 基づく専門的で手厚い医療を受けることになる。 保護観察所は,対象者の円滑な社会復帰を図るため,入院当初から,退院に向けた生活環境の調整 を行う。令和2年における生活環境の調整の開始件数(移送によるものを除く。)は 239 件,同年末 現在の生活環境の調整の係属件数は 793 件であった(保護統計年報による。)。 犯罪白書 2021 227

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(2)退院又は入院継続 指定入院医療機関の管理者は,対象者について,入院を継続させて医療を行う必要があると認める 場合は,6月ごとに,入院継続の確認の申立てをしなければならず,他方,入院を継続させて医療を 行う必要があると認めることができなくなった場合は,直ちに退院の許可の申立てをしなければなら ない。また,対象者又はその保護者若しくは弁護士である付添人は,いつでも,退院の許可又は医療 第 の終了の申立てをすることができる。これらの申立てを受けて,裁判所は,医療継続の要否等を審判 により決定する。令和2年には,指定入院医療機関の管理者による退院許可の申立て(回付によるも 章 10 のを除く。 )は 209 件,対象者等による退院許可・医療終了の申立て(回付によるものを除く。)は 精神障害のある者による犯罪等 68 件が受理され,また,退院許可決定(退院を許可するとともに入院によらない医療を受けさせる 旨の決定をいう。以下この節において同じ。)は 172 件,医療終了決定は 28 件なされている(司法 統計年報による。)。 3 地域社会における処遇 裁判所の通院決定又は退院許可決定を受けた者は,原則として3年間,指定通院医療機関(厚生労 働大臣が指定する。令和3年4月1日現在,全国に 3,854 の機関がある(厚生労働省社会・援護局の 資料による。 ) 。 )による,入院によらない医療を受けるとともに,その期間中,継続的な医療を確保 することを目的として,保護観察所による精神保健観察に付される。 精神保健観察の実施に当たって,保護観察所は,指定通院医療機関や都道府県,市町村等の精神保 第3節 健福祉関係機関の関係者と協議の上,対象者ごとに処遇の実施計画を定めている。各関係機関は,こ れに基づき,相互に連携を図りながら地域社会における処遇を実施している。また,処遇の経過に応 心神喪失者等医療観察制度 じて,保護観察所は,処遇に携わる関係機関の参加を得て「ケア会議」を開催し,処遇の実施状況等 の情報を共有して処遇方針の統一を図るとともに,処遇の実施計画についても必要な見直しを行って いる。 令和2年における精神保健観察の開始件数(移送によるものを除く。)は 202 件(このうち退院許 可決定によるものは 169 件) ,終結件数(移送によるものを除く。)は 247 件(このうち通院期間の 満了によるものは 169 件) ,同年末現在の精神保健観察の係属件数は 576 件であった(保護統計年報 による。 ) 。入院によらない医療を受けている者の医療の終了(ただし,通院期間の満了を除く。)や 指定入院医療機関への(再)入院についても,裁判所が審判により決定する。同年における医療終了 決定は 64 件, (再)入院決定は6件であった(司法統計年報による。)。 なお,保護観察所に社会復帰調整官が置かれ,生活環境の調査及び調整,精神保健観察の実施,関 係機関相互の連携確保等の事務に従事している。 228 令和 3 年版 犯罪白書

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第 11 章 公務員犯罪 公務員による犯罪には,収賄のように公務員の職務に関してなされるものと,勤務時間外における 過失運転致死傷等のように職務に関係なくなされるものとがあるが,この章では,両者を併せて扱う。 令和2年における公務員による犯罪の罪名別の検察庁新規受理人員及び終局処理人員は,4-11-1 表のとおりである。 4-11-1 表 第4 編 公務員による犯罪 検察庁新規受理・終局処理人員(罪名別) (令和2年) 新 規 受 分 総 数 13,244 11,530 窃 盗 詐 数 起 訴 公 請 局 処 理 判 略式命令 不 起 訴 起 猶 求 請 求 家 庭 裁判所 訴 その他 送 致 予 1,714 13,229 1,848 396 1,452 11,289 8,525 2,764 92 378 360 18 376 79 51 28 283 249 34 14 欺 98 87 11 101 21 21 - 80 19 61 - 横 領 137 62 75 71 9 7 2 62 36 26 - 収 賄 24 22 2 22 20 20 - 2 - 2 - 造 695 232 463 685 13 12 1 672 81 591 - 用 702 89 613 776 1 1 - 775 6 769 - その他の刑法犯 1,994 1,550 444 1,888 326 141 185 1,549 642 907 13 過失運転致死傷等 8,217 8,216 1 8,274 994 36 958 7,221 7,014 207 59 999 912 87 1,036 385 107 278 645 478 167 6 偽 職 特 注 終 司 法 検察官 数 警察員 認 知・ 総 か ら 直 受 区 総 理 権 別 濫 法 犯 1 法務省刑事局の資料による。 2 法令により公務に従事する職員とみなされる者は含まない。 3 道交違反を除く。 4 「横領」は,遺失物等横領を含む。 各種犯罪の動向と各種犯罪者の処遇 令和2年における収賄の検察庁新規受理人員及び終局処理人員は,4-11-2 表のとおりである。 4-11-2 表 収賄 検察庁新規受理・終局処理人員 (令和2年) 新 受 理 終 局 処 理 司 法 検察官 数 警 察 員 認 知・ 総 か ら 直 受 数 起 訴 公 請 判 略式命令 不 起 訴 起 猶 求 請 求 家 庭 裁 判所 訴 その他 送 致 予 数 33 30 3 32 30 30 - 2 - 2 - 員 2 - 2 2 2 2 - - - - - 地方公共団体の議会の議員 1 1 - 1 1 1 - - - - - 区 分 総 国 注 規 会 議 総 国 家 公 務 員 1 1 - 1 1 1 - - - - - 地方公共団体職員 20 20 - 18 16 16 - 2 - 2 - み な す 公 務 員 9 8 1 10 10 10 - - - - - 1 2 3 4 5 法務省刑事局の資料による。 罪名に「収賄」を含む全ての事件を計上している。 「地方公共団体職員」は,地方公共団体の首長を含む。 警察職員は,国家公務員である者も含め「地方公共団体職員」に計上している。 「みなす公務員」は,法令により公務に従事する職員とみなされる者をいう。 犯罪白書 2021 229

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第5 編 オンラインイベント「再犯防止ってなに?」の様子 【写真提供:法務省大臣官房秘書課】 犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ 第 71回 社会を明るくする運動 7月は “社 会を明るくする運 動” 強 調月間・ 再犯防止啓発月間です。 社明 しゃめい 更生ペンギンの サラちゃん 更生ペンギンの ホゴちゃん 検索 第71回社会を明るくする運動ポスター 【画像提供:法務省保護局】 5編 再犯・再非行 第 第1章 第2章 再犯防止推進法に基づく再犯防止施策 再犯・再非行の概況

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第 第1章 再再再再再再再再再再再再再再再再再再 1 1章 再犯防止推進法に基づく 再犯防止施策 再犯防止推進法 我が国では,平成 15 年から犯罪対策閣僚会議が随時開催され,再犯の防止は政府一丸となって取 り組むべき喫緊の課題という認識の下,様々な再犯防止施策が進められてきた。 そのような中,平成 28 年 12 月には,議員立法により,再犯の防止等に関する施策に関し,基本理 念を定め,国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに,再犯の防止等に関する施策の基本と なる事項を定めた再犯防止推進法が成立し,同月に施行された。 2 再犯防止推進計画 平成 29 年 12 月,再犯防止推進法に基づき,政府は,再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画 的な推進を図るため,30 年度からの5年間に関係府省庁が取り組む「再犯防止推進計画」を閣議決 定した。この再犯防止推進計画は,5つの基本方針の下,7つの重点課題について,115 の具体的な 再犯防止施策を盛り込んでいる。 〔5つの基本方針〕  ① 「誰一人取り残さない」社会の実現に向け,国・地方公共団体・民間の緊密な連携協力を 確保して再犯防止施策を総合的に推進 ② 刑事司法手続のあらゆる段階で切れ目のない指導及び支援を実施 ③ 犯罪被害者等の存在を十分に認識し,犯罪をした者等に犯罪の責任や犯罪被害者の心情等 を理解させ,社会復帰のために自ら努力させることの重要性を踏まえて実施 ④ 犯罪等の実態,効果検証・調査研究の成果等を踏まえ,社会情勢等に応じた効果的な施策 を実施 ⑤ 再犯防止の取組を広報するなどにより,広く国民の関心と理解を醸成 〔7つの重点課題〕 232 ① 就労・住居の確保等 ② 保健医療・福祉サービスの利用の促進等 ③ 学校等と連携した修学支援の実施等 ④ 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等 ⑤ 民間協力者の活動の促進等,広報・啓発活動の推進等 ⑥ 地方公共団体との連携強化等 ⑦ 関係機関の人的・物的体制の整備等 令和 3 年版 犯罪白書

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3 再犯防止施策の取組状況 再犯防止推進法において,地方公共団体は,再犯防止推進計画を勘案し,地方再犯防止推進計画を 定めるよう努めなければならないとされているところ,令和3年4月1日現在,188(前年比 119 増) の地方公共団体(都道府県が 42 団体及び市町村(特別区を含む。)が 146 団体)において,同計画 が策定されている(法務省大臣官房秘書課の資料による。)。 さらに,法務省においては,国・地方公共団体の協働による地域における効果的な再犯防止対策の 在り方について検討するため,事業期間を平成 30 年度から令和2年度末までとする「地域再犯防止 推進モデル事業」を実施し,36 の地方公共団体に同事業を委託した(法務省大臣官房秘書課の資料 による。 ) 。 また,再犯防止推進計画に基づき,関係府省庁が連携協力して再犯防止施策を推進し着実に成果を 上げつつあるものの,他方で,出所受刑者の約4割を占める満期釈放者について,2年以内再入率が 第5 編 仮釈放者と比較して2倍以上高いなど,より重点的に取り組んでいくべき課題も明らかとなったこと から,令和元年 12 月,犯罪対策閣僚会議は,「再犯防止推進計画加速化プラン~満期釈放者対策を始 めとした “ 息の長い ” 支援の充実に向けて~」を決定し,より重点的に取り組むべき三つの課題,す なわち, 「①満期釈放者対策の充実強化」,「②地方公共団体との連携強化の推進」,「③民間協力者の 活動の促進」について,これらに対応した各種取組をより一層推進することとした。 再犯・再非行 犯罪白書 2021 233

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第 2章 再犯・再非行の概況 この章では,警察,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階における再犯・再非行の動向を概観す 第2章 再犯・再非行の概況 る。 第1節 1 検挙 刑法犯により検挙された再犯者 刑法犯により検挙された者のうち,再犯者(前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたこと があり,再び検挙された者をいう。以下この項において同じ。)の人員及び再犯者率(刑法犯検挙人 員に占める再犯者の人員の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近 20 年間)は,5-21-1 図のとおりである(再非行少年については,本章第5節1項参照)。再犯者の人員は,平成8年 (8万 1,776 人)を境に増加し続けていたが,18 年(14 万 9,164 人)をピークとして,その後は漸 第1節 減状態にあり,令和2年は平成 18 年と比べて 39.9%減であった。他方,初犯者の人員は,12 年(20 検挙 けており,令和2年は平成 16 年と比べて 62.8%減であった。再犯者の人員が減少に転じた後も,そ 万 5,645 人)を境に増加し続けていたが,16 年(25 万 30 人)をピークとして,その後は減少し続 れを上回るペースで初犯者の人員が減少し続けたこともあり,再犯者率は9年以降上昇し続け,令和 元年にわずかに低下したものの,2年は 49.1%(前年比 0.3pt 上昇)であった(CD-ROM 参照)。 5-2-1-1 図 刑法犯 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移 (平成 13 年~令和2年) (万人) 40 49.1 (%) 50 再犯者率 員 182,582 再犯者率 人 40 30 30 初犯者 20 20 92,915 10 10 再犯者 0 平成 13 注 234 15 20 89,667 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計による。 2 「再犯者」は,刑法犯により検挙された者のうち,前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり,再び検挙された者 をいう。 3 「再犯者率」は,刑法犯検挙人員に占める再犯者の人員の比率をいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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刑法犯により検挙された成人の有前科者 2 刑法犯により検挙された成人のうち,有前科者(道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者をい う。以下この項において同じ。 )の人員(前科数別)及び有前科者率(刑法犯の成人検挙人員に占め る有前科者の人員の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近 20 年間)は,5-2-1-2 図 のとおりである。有前科者の人員は,平成 18 年(7万 7,832 人)をピークに減少し続けているが (令和2年は前年比 5.2%減) ,刑法犯の成人検挙人員総数が減少し続けていることもあり,有前科者 率は,平成9年以降 27~29%台でほぼ一定している。令和2年の有前科者を見ると,前科数別では, 有前科者人員のうち,前科1犯の者の構成比が最も高いが,前科5犯以上の者も 22.0%を占め,ま た,有前科者のうち同一罪名の前科を有する者は 52.2%であった(CD-ROM 参照)。 なお,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。)について,令和2年 における刑法犯の成人検挙人員の有前科者率を見ると,72.5%と相当高い(警察庁の統計による。)。 第5 編 なお,暴力団関係者・非関係者別に見た入所受刑者の入所度数別構成比については,4-3-2-12 図参 照。 5-2-1-2 図 刑法犯 成人検挙人員中の有前科者人員(前科数別)・有前科者率等の推移 (平成 13 年~令和2年) (万人) 8 (%) 50 有前科者率 7 40 6 令和2年検挙人員 5犯以上 10,098 4犯 3,529 3犯 5,331 2犯 8,767 1犯 18,276 46,001 30 27.9 員 4 有前科者率 人 5 再犯・再非行 20 3 14.5 2 同一罪名有前科者率 10 1 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計による。 2 検挙時の年齢による。 3 「有前科者」は,道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者をいう。 4 「有前科者率」は,刑法犯の成人検挙人員に占める有前科者の人員の比率をいう。 5 「同一罪名有前科者率」は,刑法犯の成人検挙人員に占める,前に同一罪名の前科を有する者の人員の比率をいう。 犯罪白書 2021 235

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5-2-1-3 図は,令和2年における刑法犯の成人検挙人員の前科の有無別構成比を罪名別に見たもの である。 5-2-1-3 図 刑法犯 成人検挙人員の前科の有無別構成比(罪名別) (令和2年) 第2章 再犯・再非行の概況 前科なし 有前科者 同一罪名 有前科者 刑法犯総数 72.1 (165,116) 13.3 1.8 12.8 同一罪名 5犯以上 強制わいせつ 76.0 (2,502) 強制性交等 75.7 (1,061) 第1節 傷害・暴行 検挙 殺 人 窃 火 詐 強 恐 注 236 盗 欺 63.3 (7,692) 盗 (1,331) 喝 (1,155) 7.9 23.2 57.0 49.2 4.9 0.2 3.0 17.1 11.5 35.6 34.8 0.6 1.8 22.0 71.9 (79,242) 10.7 24.8 72.9 (549) 0.2 4.1 14.5 73.4 (828) 7.8 20.2 74.2 (41,199) 放 16.0 7.3 14.6 2.0 0.1 1.4 1 警察庁の統計による。 2 検挙時の年齢による。 3 「有前科者」は,道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者をいう。 4 「同一罪名有前科者」は,前に同一罪名の前科を有する者をいい,「同一罪名 5 犯以上」は,前に同一罪名の前科を 5 犯以上有する者 をいう。 5 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 6 ( )内は,人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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薬物犯罪により検挙された成人の同一罪名再犯者 3 (1)覚醒剤取締法違反により検挙された成人の同一罪名再犯者 5-2-1-4 図①は,覚醒剤取締法違反(覚醒剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下(1)において同 じ。 )の成人検挙人員(警察が検挙した者に限る。以下この項において同じ。)のうち,同一罪名再犯 者(前に覚醒剤取締法違反で検挙されたことがあり,再び同法違反で検挙された者をいう。以下(1) において同じ。 )の人員及び同一罪名再犯者率(同法違反の成人検挙人員に占める同一罪名再犯者の 人員の比率をいう。以下(1)において同じ。)の推移(最近 20 年間)を見たものである。同一罪名 再犯者率は,近年上昇傾向にあり,令和2年は前年比で 3.2pt 上昇した 70.1%であった。 (2) 大麻取締法違反により検挙された成人の同一罪名再犯者 5-2-1-4 図②は,大麻取締法違反(大麻に係る麻薬特例法違反を含む。以下(2)において同じ。) 第5 編 の成人検挙人員のうち,同一罪名再犯者(前に大麻取締法違反で検挙されたことがあり,再び同法違 反で検挙された者をいう。以下(2)において同じ。)の人員及び同一罪名再犯者率(同法違反の成 人検挙人員に占める同一罪名再犯者の人員の比率をいう。以下(2)において同じ。)の推移(最近 20 年間)を見たものである。同一罪名再犯者率は,平成 16 年(10.0%)を底として,翌年から上昇 傾向に転じ,27 年以降はおおむね横ばい状態で推移しており,令和2年は前年比で 0.8pt 低下した 23.7%であった。 5-2-1-4 図 薬物犯罪 成人検挙人員中の同一罪名再犯者人員等の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 覚醒剤取締法 ② (千人) 18 16 同一罪名再犯者率 (%) 80 70.1 70 14 10 30 6 20 4 10 2 0 平成13 15 20 25 30 令和2 2,504 60 50 同一罪名再犯者率 2,500 40 2,000 30 1,500 5,871 0 同一罪名再犯者 注 4,000 3,000 50 40 8 (%) 4,147 70 20 1,000 23.7 10 500 0 平成13 3,165 15 20 25 30 令和2 再犯・再非行 8,375 (人) 4,500 3,500 60 12 大麻取締法 0 982 同一罪名検挙歴なし 1 警察庁刑事局の資料による。 2 検挙時の年齢による。 3 警察が検挙した人員に限る。 4 ①の「同一罪名再犯者」は,前に覚醒剤取締法違反(覚醒剤に係る麻薬特例法違反を含む。以下同じ。)で検挙されたことがあり, 再び覚醒剤取締法違反で検挙された者をいい,「同一罪名再犯者率」は,同法違反の成人検挙人員に占める同一罪名再犯者の人員の比 率をいう。 5 ②の「同一罪名再犯者」は,前に大麻取締法違反(大麻に係る麻薬特例法違反を含む。以下同じ。)で検挙されたことがあり,再び 大麻取締法違反で検挙された者をいい, 「同一罪名再犯者率」は,同法違反の成人検挙人員に占める同一罪名再犯者の人員の比率をい う。 犯罪白書 2021 237

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検察・裁判 第2節 起訴人員中の有前科者 1 5-2-2-1 表は,令和2年に起訴された者(過失運転致死傷等及び道交違反を除く。以下この節にお 第2章 再犯・再非行の概況 いて同じ。 )のうち,有前科者(前に罰金以上の有罪の確定裁判を受けた者に限る。)の人員及び有前 科者率(起訴人員に占める有前科者の人員の比率をいう。)を起訴罪名別に見たものである。 5-2-2-1 表 起訴人員中の有前科者の人員・有前科者率(罪名別) (令和2年) 罪 名 総 刑 第2節 放 住 法 居 侵 起訴人員 検察・裁判 贈 制 殺 性 収 交 傷 一 部 執行猶予 実刑 有前科者率 罰金 全 部 執行猶予 犯 64,765 29,651 12,437 26 8,711 8,477 45.8 229 67 31 - 15 21 29.3 2,184 965 425 - 258 282 44.2 1,226 405 144 1 132 128 33.0 等 502 156 65 - 41 50 31.1 89 19 2 - 1 16 21.3 人 278 80 44 - 13 23 28.8 6,218 2,536 904 1 671 960 40.8 4,152 1,791 553 2 470 766 43.1 806 391 158 1 109 123 48.5 31,223 16,161 7,225 13 4,879 4,044 51.8 726 277 132 - 90 55 38.2 6,902 2,585 1,195 1 881 508 37.5 452 218 113 - 61 44 48.2 火 入 賄 領 44.0 1,378 602 216 1 195 190 43.7 584 364 208 - 63 93 62.3 他 7,816 3,034 1,022 6 832 1,174 38.8 道交違反以外の特別法犯 40,807 16,790 7,382 95 4,451 4,862 41.1 19 4 - - 1 3 21.1 法 1,035 336 79 - 77 180 32.5 673 238 18 - 90 130 35.4 法 1,051 479 196 - 105 178 45.6 177 85 26 3 30 26 48.0 126 27 2 - 14 11 21.4 125 33 10 - 10 13 26.4 3,194 984 293 7 434 250 30.8 687 203 72 3 92 36 29.5 10,364 7,980 5,432 75 2,046 427 77.0 179 150 69 2 31 48 83.8 23,177 6,271 1,185 5 1,521 3,560 27.1 暴力行為等処罰法 そ 公 軽 の 職 犯 選 挙 罪 法 風 営 適 正 化 法 銃 売 児 春 童 刀 防 福 止 祉 法 法 医薬品医療機器等法 大 麻 麻 薬 取 取 締 締 法 法 覚 醒 剤 取 締 法 毒 そ 注 238 懲役・禁錮 13,339 喝 横 容 13,162 盗 欺 恐 内 121 盗 強 詐 分 19,819 迫 窃 処 46,441 行 脅 の 105,572 害 暴 科 数 強 制 わ い せ つ 強 前 有前科者 の 人 員 劇 の 法 他 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等又は道交違反により起訴された者,法人及び前科の有無が不詳の者を除く。 3 「有前科者」は,前に罰金以上の有罪の確定裁判を受けた者に限る。 4 「有前科者率」は,起訴人員に占める有前科者の人員の比率をいう。 5 複数の前科がある場合は,懲役・禁錮(実刑) ,懲役・禁錮(一部執行猶予),懲役・禁錮(全部執行猶予),罰金の順序により,最 初に該当する刑名をその者の前科として計上している。 6 「実刑」には「一部執行猶予」を含まない。 7 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 8 「横領」は,遺失物等横領を含む。 令和 3 年版 犯罪白書

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5-2-2-2 表は,令和2年に起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中,一部執行猶予中,仮釈 放中又は保釈中であった者の人員を起訴罪名別に見たものである。全部執行猶予中の犯行により起訴 された者の人員は,6,263 人(前年比 255 人減)であり,その 45.1%を窃盗が占めた。保釈中の犯 行により起訴された者の人員は,283 人(同2人減)であった(CD-ROM 参照)。 5-2-2-2 表 起訴人員中の犯行時の身上別人員(罪名別) (令和2年) 犯 罪 名 総 刑 法 保 護 観察中 時 の 一部執行猶予中 身 上 保 護 観察中 仮 釈 放 中 保釈中 数 6,263 (13.5) 924 516 (1.1) 512 590 (1.3) 283 犯 4,397 (14.8) 663 114 (0.4) 113 400 (1.3) 150 火 4 (6.0) 1 - - - 入 137 (14.2) 37 4 (0.4) 4 15 (1.6) 3 強 制 わ い せ つ 55 (13.6) 20 1 (0.2) 1 3 (0.7) 2 強 等 10 (6.4) 2 1 (0.6) 賄 - - - 住 居 制 贈 侵 性 交 収 - 1 - 2 - - - 殺 人 2 (2.5) - 1 (1.3) 1 - 傷 害 214 (8.4) 33 10 (0.4) 10 13 (0.5) 9 暴 行 137 (7.6) 23 7 (0.4) 7 5 (0.3) 11 脅 迫 49 (12.5) 6 2 (0.5) 2 6 (1.5) 2 窃 盗 2,825 (17.5) 415 58 (0.4) 57 279 (1.7) 85 強 盗 55 (19.9) 10 - - 7 (2.5) 2 詐 欺 460 (17.8) 54 8 恐 喝 35 (16.1) 3 - 横 領 98 (16.3) 11 1 暴力行為等処罰法 (0.3) (0.2) 1 8 38 (1.5) 12 - 4 (1.8) 1 1 5 (0.8) 1 1 6 - - 1 (0.3) 他 285 (9.4) 42 21 (0.7) 21 24 (0.8) 18 道交違反以外の特別法犯 1,866 (11.1) 261 402 (2.4) 399 190 (1.1) 133 - - 2 1 (0.3) - - 1 (0.4) - 3 2 (0.4) 1 (1.2) 公 の 法 - - - 法 23 (6.8) 5 2 風 営 適 正 化 法 11 (4.6) 2 - 銃 法 35 (7.3) 4 3 (0.6) (5.9) 軽 職 選 犯 挙 罪 刀 売 春 防 止 法 9 (10.6) - 5 児 童 福 祉 法 4 (14.8) 1 - 医薬品医療機器等法 注 (0.6) 5 1 - - 再犯・再非行 31 (8.5) そ 第5 編 放 全部執行猶予中 行 - - - 3 (9.1) - 1 (3.0) 1 - (19.7) 16 12 (1.2) 12 5 (0.5) - 6 大 麻 取 締 法 194 麻 薬 取 締 法 49 (24.1) 8 9 (4.4) 9 3 (1.5) 3 覚 醒 剤 取 締 法 1,063 (13.3) 130 357 (4.5) 355 160 (2.0) 111 毒 劇 法 13 (8.7) 4 5 (3.3) 5 1 (0.7) 2 そ の 他 462 (7.4) 91 8 (0.1) 7 16 (0.3) 10 1 検察統計年報による。 2 過失運転致死傷等又は道交違反により起訴された者及び法人を除く。 3 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 4 「横領」は,遺失物等横領を含む。 5 ( )内は,犯行時に全部若しくは一部執行猶予中又は仮釈放中であった者の人員の,有前科者(前に罰金以上の有罪の確定裁判を 受けた者に限る。)の人員に対する比率である。 犯罪白書 2021 239

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全部及び一部執行猶予の取消し 2 5-2-2-3 表は,全部執行猶予を言い渡された者について,保護観察の有無別の人員及び取消事由別 の取消人員等の推移(最近 10 年間)を見たものである。再犯により禁錮以上の実刑に処せられたこ とを理由に全部執行猶予を取り消された者は,平成5年以降毎年増加していたが,19 年から減少に 第2章 再犯・再非行の概況 転じ,令和2年は 3,261 人(全部執行猶予取消人員の 94.3%)であった(CD-ROM 参照)。同年に おける再犯を事由とする全部執行猶予取消人員の全部執行猶予言渡人員に対する比率は,10.9%で あった(なお,取消人員は,当該年に全部執行猶予を取り消された者であり,当該年よりも前に全部 執行猶予の言渡しを受けた者も含まれる。このため,厳密には取消人員の言渡人員に対する比率は, 実際の全部執行猶予の取消しの比率を意味しないが,そのおおよその傾向を見ることができる。)。 5-2-2-3 表 全部執行猶予の言渡人員(保護観察の有無別)・取消人員(取消事由別)の推移 (平成 23 年~令和2年) 年 第2節 検察・裁判 注 次 取 全部執行 全部執行 再 犯 猶予の 猶予の 保 護 単 純 保 護 言渡人員 取消人員 その他 観察付 執行猶予 観察中 (A) (B) (C) (D) (E) (F) 消 余 事 由 D A 遵守事項 罪 その他 (%) 違 反 E B (%) F C (%) 23 年 36,965 3,393 33,572 5,429 831 4,313 175 94 16 14.7 24.5 12.8 24 35,981 3,373 32,608 5,176 869 4,006 190 101 10 14.4 25.8 12.3 25 32,527 3,259 29,268 4,580 706 3,634 154 82 4 14.1 21.7 12.4 26 33,208 3,337 29,871 4,559 713 3,600 158 82 6 13.7 21.4 12.1 27 34,692 3,462 31,230 4,478 763 3,490 163 52 10 12.9 22.0 11.2 28 33,975 3,023 30,952 4,346 695 3,399 161 73 18 12.8 23.0 11.0 29 32,266 2,591 29,675 4,135 689 3,222 155 59 10 12.8 26.6 10.9 30 31,937 2,484 29,453 3,957 600 3,160 127 63 7 12.4 24.2 10.7 元 31,068 2,244 28,824 3,695 541 2,950 117 73 14 11.9 24.1 10.2 2 29,858 2,086 27,772 3,457 493 2,768 121 68 7 11.6 23.6 10.0 1 2 3 4 5 6 検察統計年報による。 懲役,禁錮及び罰金の全部執行猶予に関するものである。 「全部執行猶予の言渡人員」は,裁判が確定したときの人員であり,控訴審又は上告審におけるものを含む。 「単純執行猶予」は,全部執行猶予のうち,保護観察の付かないものをいう。 「保護観察」は,売春防止法 17 条1項の規定による補導処分を含む。 「取消事由」の「再犯」は刑法 26 条1号に,「余罪」は同条2号に,「遵守事項違反」は同法 26 条の2第2号に,「その他」は同法 26 条3号,26 条の2第1号若しくは第3号又は 26 条の3のいずれかに,それぞれ該当する事由である。 7 「全部執行猶予の取消人員」は,同一人について一つの裁判で2個以上の刑の全部執行猶予の言渡しが同時に取り消された場合も1 人として計上している。 8 「取消事由」の「再犯」の「その他」は,単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。 一部執行猶予を言い渡された者のうち,令和2年に同猶予を取り消された者は,364 人(前年比 114 人増)であった。このうち,再犯により禁錮以上の実刑に処せられたことを理由に同猶予を取り 消された者は 282 人(同 76 人増。うち保護観察中の者は 259 人(同 68 人増)) ,余罪により禁錮以 上の実刑に処せられたことを理由に同猶予を取り消された者は 12 人(同8人減)であった(検察統 計年報による。)。 240 令和 3 年版 犯罪白書

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第3節 矯正 再入者 1 5-2-3-1 図は,入所受刑者人員のうち,再入者の人員及び再入者率(入所受刑者人員に占める再入 者の人員の比率をいう。以下同じ。)の推移(最近 20 年間)を総数・女性別に見たものである。再入 者の人員は,平成 11 年から毎年増加した後,18 年をピークにその後は減少傾向にあり,令和2年は 9,640 人(前年比 5.4%減)であった。再入者率は,平成 16 年から 28 年まで毎年上昇し続け,その 後おおむね横ばいで推移しており,令和2年は 58.0%(同 0.3pt 低下)であった(CD-ROM 参照)。 女性について見ると,再入者の人員は,平成 11 年以降増加傾向にあったが,26 年(996 人)を ピークにその後は減少し,令和2年は 828 人(前年比 28 人減)であった(CD-ROM 参照)。2年に おける再入者率は,46.8%であり,男性と比べると低い(罪名別・男女別の再入者人員については, 5-2-3-1 図 第5 編 CD-ROM 資料 5-1 参照)。 入所受刑者人員中の再入者人員・再入者率の推移(総数・女性別) (平成 13 年~令和2年) ① 総数 ② (千人) 35 再入者率 30 25 30 10 20 再入者 5 再入者率 46.8 2,000 10 25 30 令和2 0 6,980 初入者 1,000 再入者 500 9,640 0 平成13 15 20 25 (%) 70 60 1,770 50 40 30 942 20 10 30 令和2 828 0 再犯・再非行 20 女性 (人) 2,500 16,620 1,500 40 初入者 15 注 60 50 20 0 平成 13 15 58.0 (%) 70 矯正統計年報による。 犯罪白書 2021 241

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5-2-3-2 図は,令和2年における入所受刑者の入所度数別構成比を総数・男女別に見たものである (罪名別・入所度数別の入所受刑者の人員については,CD-ROM 資料 5-2 参照)。 5-2-3-2 図 入所受刑者の入所度数別構成比(総数・男女別) (令和2年) 第2章 再犯・再非行の概況 総 数 男 性 女 性 (16,620) 1度 2度 3度 4度 5度以上 42.0 15.6 10.9 8.4 23.1 40.7 (14,850) 8.3 10.9 53.2 (1,770) 注 15.4 24.7 10.8 17.5 8.5 10.0 1 矯正統計年報による。 2 ( )内は,実人員である。 第3節 5-2-3-3 図は,令和2年における入所受刑者の保護処分歴別構成比を初入者・再入者別に見るとと もに,これを年齢層別に見たものである。 矯正 5-2-3-3 図 入所受刑者の保護処分歴別構成比(初入者・再入者別,年齢層別) (令和2年) ① 初入者 ② 保護観察等 6.6 少年院送致 総 数 (6,980) 30 歳 未 満 19.4 10.6 (2,154) (1,663) 3.0 8.2 93.1 1.4 50 ~ 64歳 2.7 0.8 65 歳 以 上 1.3 95.8 (1,176) (599) 242 84.8 4.0 (1,388) 注 70.0 7.0 30 ~ 39歳 40 ~ 49歳 保護観察等 保護処分歴なし 84.9 8.6 再入者 97.8 総 数 (9,640) 少年院送致 保護処分歴なし 21.4 66.3 30 歳 未 満 43.9 (374) 30 ~ 39歳 (1,745) 40 ~ 49歳 (2,754) 50 ~ 64歳 (3,223) 65 歳 以 上 (1,544) 12.3 38.2 15.6 32.0 18.7 17.9 15.3 18.6 10.4 52.3 65.9 71.0 6.0 14.2 79.8 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 入所時の年齢による。 3 「保護観察等」は,保護観察及び児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 4 複数の保護処分歴を有する場合,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,それ以外の者は「保護観察等」に計上している。 5 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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5-2-3-4 図は,令和2年における入所受刑者の就労状況別構成比を男女別に見るとともに,これを 初入者・再入者別に見たものである。 5-2-3-4 図 入所受刑者の就労状況別構成比(男女別,初入者・再入者別) (令和2年) ① 男性 初 入 者 (5,977) 再 入 者 有職 63.7 36.3 70.5 (8,783) ② 無職 女性 (934) 無職 有職 77.5 22.5 再 入 者 88.1 (826) 注 1 2 3 4 5 第5 編 初 入 者 29.5 11.9 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 犯行時の就労状況による。 「無職」は,定収入のある無職者を含む。 学生・生徒,家事従事者及び就労状況が不詳の者を除く。 ( )内は,実人員である。 5-2-3-5 図は,令和2年における入所受刑者の居住状況別構成比を男女別に見るとともに,これを 初入者・再入者別に見たものである。 5-2-3-5 図 入所受刑者の居住状況別構成比(男女別,初入者・再入者別) (令和2年) 男性 住居不定 住居不定以外 15.7 84.3 初 入 者 (5,716) 再 入 者 22.1 (8,754) ② 女性 初 入 者 (842) 再 入 者 (823) 注 77.9 住居不定 住居不定以外 6.9 93.1 8.3 再犯・再非行 ① 91.7 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 犯行時の居住状況による。 3 来日外国人及び居住状況が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 243

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出所受刑者の再入所状況 2 この項では,出所受刑者(平成 27 年以前は,仮釈放又は満期釈放により刑事施設を出所した者に 限り,28 年以降は,仮釈放又は満期釈放若しくは一部執行猶予の実刑部分の刑期終了により刑事施 設を出所した者に限る。以下この節において同じ。)の再入所状況について概観する。ここで,出所 第2章 再犯・再非行の概況 受刑者の再入率とは,各年の出所受刑者人員のうち,出所後の犯罪により,受刑のため刑事施設に再 入所した者の人員の比率をいう(以下同じ。)。また,2年以内再入率とは,各年の出所受刑者人員の うち,出所年を1年目として,2年目,すなわち翌年の年末までに再入所した者の人員の比率をいう (以下同じ。 ) 。5年以内及び 10 年以内の各再入率も,同様に,各年の出所受刑者人員のうち,出所年 を1年目として,それぞれ5年目及び 10 年目以内の各年の年末までに再入所した者の人員の比率を いう(以下同じ。)。なお,同一の出所受刑者について,出所後,複数回の刑事施設への再入所がある 場合には,その最初の再入所を計上している。 5-2-3-6 図は,平成 23 年及び 28 年の各出所受刑者について,5年以内又は 10 年以内の再入率を 出所事由別(仮釈放又は満期釈放等の別をいう。以下この節において同じ。)に見たものである。い ずれの出所年の出所受刑者においても,満期釈放者等(満期釈放等により刑事施設を出所した者をい う。以下この節において同じ。)は,仮釈放者よりも再入率が相当高い。また,28 年の出所受刑者に 第3節 ついて見ると,総数の2年以内再入率は 17.3%,5年以内再入率は 36.7%と,4割近くの者が5年 矯正 ると,10 年以内再入率は,満期釈放者では 55.4%,仮釈放者では 35.6%であるが,そのうち5年以 以内に再入所し,そのうち約半数の者が2年以内に再入所している。23 年の出所受刑者について見 内に再入所した者が,10 年以内に再入所した者のそれぞれ約9割,約8割を占めている。 5-2-3-6 図 ① 出所受刑者の出所事由別再入率 5年以内 ② 10 年以内 (平成 28 年) (%) 70 (%) 70 60 60 50 43.1 36.8 40 30 20 10 25.6 17.3 7.4 4.1 27.1 20.0 25.4 50 36.7 40 29.0 30 20 49.5 38.8 28.3 55.4 45.3 35.6 28.7 19.4 10 3年以内 満期釈放等(9,649 人) 総数(22,909 人) 注 32.8 47.3 11.3 1.7 0 出所年 2年以内 244 (平成 23 年) 4年以内 5年以内 仮釈放(13,260 人) 10.9 0 出所年 2年以内 5年以内 10 年以内 満期釈放(13,938 人) 総数(28,558 人) 仮釈放(14,620 人 ) 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再入率」は,①では平成 28 年の,②では 23 年の,各出所受刑者の人員に占める,それぞれ当該出所年から令和2年までの各年の年 末までに再入所した者の人員の比率をいう。 令和 3 年版 犯罪白書

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5-2-3-7 図は,平成 23 年及び 28 年の各出所受刑者について,5年以内又は 10 年以内の再入率を 入所度数別に見たものである。入所度数が多いほど再入率は高く,特に入所度数が1度の者(初入 者)と2度の者の差は顕著である。 5-2-3-7 図 ① 出所受刑者の入所度数別再入率 5年以内 ② 10 年以内 (平成 28 年) (%) 70 (平成 23 年) (%) 70 63.8 70 70 60 51.7 60 47.3 50 40.3 50 40 40 27.3 30 20 27.6 27.1 17.3 7.1 4.1 17.0 3.6 1.3 7.3 0 出所年 2年以内 20 10 13.4 36.7 32.8 20.9 17.8 0 2年以内 3年以内 3年以内 1度(9,299 人) 3度以上(9,464 人) 注 4年以内 4年以内 40 30 20 10 10 出所年 50 5年以内 5年以内 2度(4,146 人) 総数(22,909 人) 57.2 60 40 51.2 43.7 50 32.8 45.3 38.8 20.3 30 19.4 20 27.6 21.8 第5 編 30 38.0 33.5 60 10 8.0 0 出所年 2年以内 5年以内 10年以内 1度(12,805 人) 3度以上(10,489 人) 2度(5,264 人) 総数(28,558 人) 0 出所年 5年以内 10年以内 5-2-3-6 図の脚注に同じ。 5-2-3-8 図は,平成 28 年の出所受刑者について,出所事由別の5年以内再入率を罪名別に見たも のである。満期釈放者等は,覚醒剤取締法違反,窃盗,傷害・暴行,詐欺,強盗の順に,仮釈放者 は,覚醒剤取締法違反,窃盗,傷害・暴行,強盗,詐欺の順に,5年以内再入率が高い。 再犯・再非行 犯罪白書 2021 245

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5-2-3-8 図 出所受刑者の出所事由別5年以内再入率(罪名別) (平成 28 年) ① 殺人 ② 第2章 再犯・再非行の概況 (%) 70 (%) 70 60 60 50 50 40 40 30 30 20 11.3 9.3 10 2.6 5.6 4.5 1.2 0 1.1 0.5 出所年 2年以内 3年以内 満期釈放等(151 人) 総数(337 人) ③ 13.2 7.7 3.2 4年以内 16.6 10.1 4.8 5年以内 傷害・暴行 第3節 34.1 30 22.4 20 矯正 16.1 6.0 10 4.3 6.8 0 1.8 出所年 2年以内 26.7 15.9 3年以内 満期釈放等(735 人) 総数(1,238 人) 40.7 33.3 44.2 50 3年以内 30.5 33.8 18.4 21.0 12.4 14.8 4年以内 5年以内 仮釈放(555 人) 窃盗 36.4 30 22.5 25.0 4年以内 5年以内 20 (%) 70 60 60 40 26.4 30 20 10.7 11.5 10 3.9 3.8 0 0.4 出所年 2年以内 34.3 16.7 7.7 3年以内 満期釈放等(644 人) 総数(1,896 人) 39.1 41.8 50 20.4 22.5 30 10.8 12.5 4年以内 5年以内 20 ⑧ 60 60 50 50 40 40 30 30 20 11.9 10 6.0 8.4 2.8 0 5.3 出所年 2年以内 14.9 10.5 6.6 3年以内 満期釈放等(67 人) 総数(143 人) 11.9 7.9 4年以内 5年以内 仮釈放(76 人) 16.3 23.6 14.2 8.9 3年以内 満期釈放等(246 人) 総数(674 人) (%) 70 19.4 14.0 9.2 3年以内 20 49.3 39.4 31.9 4年以内 53.5 43.4 35.7 5年以内 仮釈放(4,311 人) 強姦・強制わいせつ 8.0 10 3.7 1.9 0 3.3 0.9 出所年 2年以内 (%) 70 16.4 26.1 40 仮釈放(1,252 人) 放火 10.0 22.3 満期釈放等(3,297 人) 総数(7,608 人) ⑥ 50 33.2 31.5 5.6 10 15.3 2.3 0 出所年 2年以内 仮釈放(503 人) 詐欺 42.4 40 (%) 70 注 7.7 60 40 ⑦ 13.8 満期釈放等(272 人) 総数(827 人) ④ 50 246 7.9 10 4.8 1.7 3.4 0 0.2 出所年 2年以内 26.1 (%) 70 60 ⑤ 16.9 20 仮釈放(186 人) (%) 70 強盗 27.6 31.7 16.9 19.9 10.7 13.1 4年以内 5年以内 仮釈放(428 人) 覚醒剤取締法 40.7 25.4 18.7 5.9 3.5 15.1 10 2.2 0 出所年 2年以内 31.6 26.6 3年以内 満期釈放等(2,154 人) 総数(6,144 人) 48.7 39.1 33.9 4年以内 53.9 44.3 39.1 5年以内 仮釈放(3,990 人) 1 5-2-3-6 図の脚注1及び2に同じ。 2 「5年以内再入率」は,平成 28 年の出所受刑者の人員に占める,同年から令和2年までの各年の年末までに再入所した者の人員の比 率をいう。 3 平成 28 年に仮釈放により出所した者のうち,殺人及び放火については,同年末までに再入所した者はいなかった。 令和 3 年版 犯罪白書

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出所受刑者の再入率の推移 3 5-2-3-9 図①は,平成 12 年から令和元年の各年の出所受刑者について,2年以内再入率の推移を 出所事由別に見たものである。総数の2年以内再入率は,平成 11 年に 23.4%を記録した後,低下傾 向にあり,22 年以降は 20%を下回り,令和元年は 15.7%(前年比 0.5pt 低下)であり,初めて 16% を下回った(政府は,近年,2021 年(令和3年)までに 16%以下とすることを目標としていた。 )。 満期釈放者等も,平成 11 年に 33.9%を記録した後,低下傾向にあり,20 年以降は 30%を下回り, 令和元年は 23.3%(前年比 0.9pt 低下)であった。仮釈放者の2年以内再入率は,平成 23 年以降わ ずかながら上昇していたが,29 年から3年連続で低下し,令和元年は 10.2%(同 0.2pt 低下)であっ た。令和元年の出所受刑者の2年以内再入率を,平成 12 年の出所受刑者と比べると,総数では 7.0pt, 満期釈放者等では 10.2pt,仮釈放者では 3.9pt,いずれも低下している。なお,令和元年の出所受刑 者のうち一部執行猶予受刑者は 1,493 人であり,そのうち2年以内再入者は 161 人であった(CD- 第5 編 ROM 参照)。 5-2-3-9 図②は,平成9年から 28 年の各年の出所受刑者について,5年以内再入率の推移を出所 事由別に見たものである。28 年の出所受刑者の5年以内再入率は,9年の出所受刑者と比べて,総 数では 8.1pt,満期釈放者等では 8.3pt,仮釈放者では 8.1pt,いずれも低下しており,同年以降で最 も高い5年以内再入率を記録した 11 年の出所受刑者と比べて,総数では 10.2pt,満期釈放者等では 11.9pt,仮釈放者では 8.8pt,いずれも低下している。 5-2-3-9 図 ① 出所受刑者の出所事由別再入率の推移 2年以内 ② 5年以内 (平成 12 年~令和元年) (%) 70 60 60 50 50 47.3 40 40 36.7 23.3 20 15.7 10.2 10 0 平成 12 15 20 25 再犯・再非行 (%) 70 30 注 (平成9年~ 28 年) 29.0 30 20 10 令和元 0 平成9 満期釈放等 仮釈放 15 20 25 28 総数 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年を1年目として,①では2年目(翌年)の,②では5年目の,それぞれ年 末までに再入所した者の人員の比率をいう。 5-2-3-10 図は,平成 12 年から令和元年の各年の出所受刑者について,2年以内再入率の推移を男 女別,年齢層別及び罪名別に見たものである。 男性の2年以内再入率は,女性と比べて一貫して高いものの,平成 12 年以降緩やかに低下してお り,令和元年は 16.1%と,平成 12 年と比べて 7.2pt 低下している。一方,女性の2年以内再入率は, 21 年に 11 年以降で最も高い 14.4%を記録したものの,令和元年は 11.3%と,平成 21 年に次いで高 かった 28 年(14.2%)と比べて 2.9pt 低下しており,出所年によって変動がある。 年齢層別の2年以内再入率は,30 歳未満の年齢層が一貫して最も低い。50~64 歳の年齢層及び 犯罪白書 2021 247

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65 歳以上の高齢者層は,30 歳未満及び 30~49 歳の年齢層と比べると一貫して高いものの,高齢者 層は,出所年によって変動が大きく,令和元年は 19.9%と,前年と比べて 0.5pt,平成 12 年と比べ ると 11.9pt,いずれも低下している(なお,30~39 歳,40~49 歳,50~59 歳,60~64 歳の各年 齢層の2年以内再入率の推移については,CD-ROM 参照)。 罪名別の2年以内再入率は,平成 13 年以降,窃盗が他の罪名と比べて一貫して最も高いものの, 第2章 再犯・再非行の概況 低下傾向にあり,令和元年は 21.8%と,平成 12 年と比べて 9.7pt 低下している。詐欺は,出所年に よって変動があり,平成 12 年には,同年以降の他の罪名と比べて最も高い 33.2%を記録したものの, それ以降はおおむね低下傾向にあり,令和元年は 9.3%と,平成 12 年と比べて 23.9pt 低下している。 傷害・暴行は,出所年によって変動が大きいものの,令和元年は 15.3%と,平成 12 年と比べて 4.6pt 低下している。覚醒剤取締法違反は,27 年まで 20%前後で推移していたが,以降は低下傾向を示し, 令和元年は 15.8%と,前年と比べて 0.2pt,平成 12 年と比べて 5.7pt 低下している。なお,令和元年 は,覚醒剤取締法違反の2年以内再入率が,窃盗に次いで高くなっている。 5-2-3-10 図 出所受刑者の2年以内再入率の推移(男女別,年齢層別,罪名別) (平成 12 年~令和元年) 第3節 ① 男女別 ② 年齢層別 (%) 40 35 35 30 30 25 25 矯正 (%) 40 16.1 15 11.3 10 15 14.2 10 8.4 5 5 0 平成 12 ③ 19.9 18.7 20 20 15 20 25 男性 女性 0 平成 12 令和元 15 20 30 歳未満 50 ~ 64 歳 25 令和元 30 ~ 49歳 65 歳以上 罪名別 (%) 40 35 30 25 21.8 20 15 15.8 15.3 10 9.3 5 0 平成 12 窃盗 注 248 15 20 覚醒剤取締法 25 令和元 傷害・暴行 詐欺 1 5-2-3-9 図の脚注1及び2に同じ。 2 「2年以内再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年の翌年の年末までに再入所した者の人員の比率をいう。 3 ②の「年齢層」は,前刑出所時の年齢による。再入者の前刑出所時の年齢は,再入所時の年齢及び前刑出所年から算出した推計値で ある。 令和 3 年版 犯罪白書

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4 再入者の再犯期間 5-2-3-11 図は,令和2年の入所受刑者のうち,再入者の再犯期間(前回の刑の執行を受けて出所 した日から再入に係る罪を犯した日までの期間をいう。)別の構成比を見たものである。再入者のう ち,前刑出所日から2年未満で再犯に至った者が5割以上を占めている。出所から1年未満で再犯に 至った者は 34.9%であり,3月未満というごく短期間で再犯に至った者も 9.8%いる。また,再入者 のうち,前回の刑において一部執行猶予者で仮釈放となった者は 226 人,実刑部分の刑期終了によ り出所した者は 66 人であり,そのうち出所から1年未満で再犯に至った者は,それぞれ 121 人,42 人であった(矯正統計年報による。)。 なお,再入者の再犯期間別人員(前刑罪名別)については,CD-ROM 資料 5-3 参照。 5-2-3-11 図 再入者の再犯期間別構成比 5年未満 2年未満 1年未満 総 数 (9,486) 9.8 9.4 3月未満 6月未満 注 第5 編 (令和2年) 84.2% 56.2% 34.9% 15.8 21.3 13.3 8.9 5.8 15.8 1年未満 2年未満 3年未満 4年 未満 5年 未満 5年以上 1 矯正統計年報による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再犯期間」は,前回の刑の執行を受けて出所した日から再入に係る罪を犯した日までの期間をいう。 4 ( )内は,実人員である。 1 保護観察 再犯・再非行 第4節 保護観察開始人員中の有前科者 仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,有前科 者(今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。以下この項において同 じ。 )の保護観察開始人員及び有前科者率(保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。) の推移(最近 20 年間)は,5-2-4-1 図のとおりである。 犯罪白書 2021 249

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5-2-4-1 図 保護観察開始人員(前科の有無別)・有前科者率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 仮釈放者 ア 仮釈放者(全部実刑者) イ 第2章 再犯・再非行の概況 (千人) 20 (人) 1,500 (%) 100 有前科者率 81.7 仮釈放者(一部執行猶予者) (%) 100 1,201 100 有前科者率 98.6 80 15 80 9,988 1,000 60 10 60 1,832 389 40 40 60 17 6 365 40 500 2,434 5 80 813 20 20 20 5,333 第4節 0 平成13 保護観察 ② 15 20 30 令和2 25 0 0 平成 29 30 令和元 保護観察付全部・一部執行猶予者 ア 保護観察付全部執行猶予者 イ (%) 100 (千人) 6 2 保護観察付一部執行猶予者 (人) 1,500 1,496 (%) 100 24 7 有前科者率 98.4 100 80 有前科者率 58.1 4 80 2 60 870 20 15 20 25 懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科あり 罰金前科あり 注 250 80 489 1,000 60 2,078 40 0 平成13 0 0 30 令和2 0 284 673 251 40 60 40 500 976 20 0 平成 29 30 令和元 2 20 0 0 懲役・禁錮(全部執行猶予)の前科あり 前科なし 1 保護統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「有前科者」は,今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。 3 「有前科者率」は,保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。 4 前科の有無が不詳の者を除く。 5 複数の前科を有する場合,懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科がある者は「懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前 科あり」に,懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科がなく,かつ懲役・禁錮(全部執行猶予)の前科がある者は「懲役・禁錮 (全部執行猶予)の前科あり」に,罰金の前科のみがある者は「罰金前科あり」に,それぞれ計上している。 6 「仮釈放者(一部執行猶予者)」及び「保護観察付一部執行猶予者」は,刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年はいなかった。 令和 3 年版 犯罪白書

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保護観察対象者の再処分等の状況 2 平成 13 年から令和2年までの間に保護観察が終了した仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全 部執行猶予者について,①再処分率(保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含 む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の占める比率をいう。), ②取消率(再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予が取り消された者の占め る比率をいう。 )及び③取消・再処分率(取消又は再処分のいずれかに該当する者(双方に該当する 場合は,1人として計上される。 )の占める比率をいう。)の推移を見ると,5-2-4-2 図のとおりであ る。 取消率は,仮釈放者(全部実刑者)については,平成 20 年以降4%台で推移していたが,令和元 年に 3.9%となり,2年は 4.5%と再び4%台になった。保護観察付全部執行猶予者については,近 年 25%前後で推移していたが,平成 30 年から 21%前後に低下し,令和2年は 21.9%であった。な 第5 編 お,仮釈放者の再処分率が極めて低いのは,仮釈放者が再犯に及んで刑事裁判を受けることになった 場合であっても,仮釈放期間中には刑事裁判が確定しないことが多いことなどが関係していると考え られる。 令和2年に保護観察が終了した仮釈放者(一部執行猶予者)1,243 人のうち,仮釈放を取り消され た者は 38 人であり,同年に保護観察が終了した保護観察付一部執行猶予者 960 人のうち,刑の一部 執行猶予が取り消された者は 321 人であった(CD-ROM 参照)。 5-2-4-2 図 保護観察終了者の再処分率・取消率等の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 仮釈放者(全部実刑者) ② (%) 10 (%) 50 40 8 30 4.7 4.5 4 20 10 2 20 25 0.3 30 令和2 再処分率 注 27.2 25.0 21.9 再犯・再非行 6 0 平成 13 15 保護観察付全部執行猶予者 0 平成 13 15 取消率 20 25 30 令和2 取消・再処分率 1 保護統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「再処分率」は,保護観察終了人員のうち,保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については, その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の人員の占める比率をいう。 3 「取消率」は,保護観察終了人員のうち,再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は保護観察付全部執行猶予を取り消された者の人員 の占める比率をいう。 4 「取消・再処分率」は,保護観察終了人員のうち,再犯若しくは遵守事項違反により仮釈放若しくは保護観察付全部執行猶予を取り 消された者,又は保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに 限る。 )を受けた者の人員(双方に該当する者は1人として計上される。)の占める比率をいう。 仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率の推移を,男女別・年齢 層別・罪名別・就労状況別に見ると,5-2-4-3 図のとおりである(仮釈放者(一部執行猶予者)及び 保護観察付一部執行猶予者については CD-ROM 参照)。 仮釈放者(全部実刑者)を男女別に見ると,男性は,平成 13 年(7.7%)から低下傾向にあり,令和 2年は 4.8%であった。女性は,平成 16 年(6.5%)をピークに低下傾向にあり,令和2年は 3.8%で あった。年齢層別に見ると,近年年齢層による差は1pt 前後で推移しており,同年は,50~64 歳及び 犯罪白書 2021 251

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65 歳以上の年齢層がそれ以外の年齢層よりも高かった(仮釈放者(一部執行猶予者)については,同 年の取消・再処分率は,30 歳未満の年齢層(4.4%)がそれ以外の年齢層よりも高かった(CD-ROM 参照) 。 ) 。また,罪名別に,窃盗,覚醒剤取締法違反及びその他の罪名で比較してみると,同年は,窃 盗及び覚醒剤取締法違反の取消・再処分率がいずれもその他の罪名より高いものの,平成 13 年と比べ ると,窃盗は 4.4pt,覚醒剤取締法違反は 2.9pt,それぞれ低下している。保護観察終了時の就労状況 第2章 再犯・再非行の概況 別に見ると,保護観察終了時に無職であった者の取消・再処分率は,有職であった者と比べ,一貫し て高いが,令和2年(9.8%)は平成 13 年(18.5%)と比べて著しく低下している。 保護観察付全部執行猶予者では,男女別に見ると,平成 13 年は男性が 38.2%,女性が 29.7%で あったところ,令和2年は男性(27.3%)と女性(26.4%)が同程度の水準となっている(保護観 察付一部執行猶予者について見ると,同年は男性が 37.3%,女性が 25.7%であった(CD-ROM 参 照) 。 ) 。年齢層別に見ると,30 歳未満の年齢層の取消・再処分率が一貫して高く,平成 13 年は 44.3%,令和2年は 35.5%であった。罪名別に見ると,窃盗及び覚醒剤取締法違反がその他の罪名 と比べ一貫して高く,同年では窃盗は 12.2pt,覚醒剤取締法違反は 10.1pt その他の罪名よりもそれ ぞれ高かった。保護観察終了時の就労状況別に見ると,保護観察終了時に無職であった者は,有職で あった者と比べ,取消・再処分率が一貫して高い(同年における保護観察付一部執行猶予者の取消・ 再処分率は,保護観察終了時に無職であった者は 50.6%,有職であった者は 27.5%であった(CD- 第4節 ROM 参照) 。 ) 。 保護観察 5-2-4-3 図 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,罪名別,就労状況別) (平成 13 年~令和2年) ① 仮釈放者(全部実刑者) ア 男女別 イ (%) 20 15 15 10 10 4.8 3.8 5 0 平成13 15 20 男性 ウ 25 エ 10 10 4.6 2.8 犯罪白書 25 覚醒剤取締法 30 令和2 その他 30 令和2 30 ~ 49 歳 65 歳以上 就労状況別 15 6.9 25 (%) 20 15 20 20 30 歳未満 50 ~ 64 歳 罪名別 窃盗 令和 3 年版 0 平成13 15 30 令和2 (%) 20 0 平成13 15 5.2 5.2 4.9 4.3 5 女性 5 252 年齢層別 (%) 20 9.8 5 0 平成13 15 1.8 20 有職 25 無職 30 令和2

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② 保護観察付全部執行猶予者 ア 男女別 イ (%) 80 60 60 40 40 27.3 26.4 20 0 平成13 15 20 25 男性 20 0 平成13 15 30 令和2 女性 20 30 歳未満 50 ~ 64 歳 罪名別 エ (%) 80 25 30 令和2 30 ~ 49 歳 65 歳以上 就労状況別 (%) 80 60 60 40 33.7 31.6 21.5 20 0 平成13 15 窃盗 注 35.5 26.8 25.6 22.5 第5 編 ウ 年齢層別 (%) 80 20 25 覚醒剤取締法 30 令和2 その他 40 40.9 20 18.1 0 平成13 15 20 有職 25 30 令和2 無職 再犯・再非行 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「取消・再処分率」は,保護観察終了人員のうち,再犯若しくは遵守事項違反により仮釈放若しくは保護観察付全部執行猶予を取り 消された者,又は保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに 限る。 )を受けた者の人員(双方に該当する者は1人として計上される。 )の占める比率をいう。 3 イの「年齢層」は,保護観察終了時の年齢による。 4 エの「就労状況」は,保護観察終了時の就労状況により,就労状況が不詳の者を除く。「無職」は,学生・生徒,家事従事者及び収 入のある無職者を除く。 5-2-4-4 表は,平成 23 年から令和2年に保護観察が開始された仮釈放者(全部実刑者・一部執行 猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について,保護観察が開始された年ごとに,保護観察 が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り 消された者の人員を見たものである。平成 30 年から令和2年の各年に保護観察が開始された保護観 察付全部・一部執行猶予者について見ると,各年とも,保護観察付一部執行猶予者の方が保護観察付 全部執行猶予者に比べて,2年末までに刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の比率が高い。例え ば,平成 30 年に保護観察が開始された保護観察付一部執行猶予者(974 人)が令和2年末までに刑 の一部執行猶予の言渡しを取り消された割合(28.5%)は,平成 30 年に保護観察が開始された保護 観察付全部執行猶予者(2,481 人)が令和2年末までに刑の全部執行猶予の言渡しを取り消された割 合(18.9%)よりも 9.7pt 高い。 犯罪白書 2021 253

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5-2-4-4 表 仮釈放・保護観察付全部・一部執行猶予の取消状況 (平成 23 年~令和2年) ① 仮釈放者 ア 仮釈放者(全部実刑者) 年 次 第2章 再犯・再非行の概況 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 2年 B (%) 計(B) A 23 年 14,620 404 215 10 9 2 - … … … … 640 4.4 24 14,700 … 445 211 17 5 4 1 … … … 683 4.6 25 14,623 … … 418 212 17 6 2 - … … 655 4.5 26 13,925 … … … 402 189 23 7 4 1 … 626 4.5 27 13,570 … … … … 445 176 11 6 - 2 640 4.7 28 13,260 … … … … … 416 172 12 3 1 [604] [4.6] 29 12,477 … … … … … … 364 148 13 5 [530] [4.2] 30 11,307 … … … … … … … 341 136 11 [488] [4.3] 元 10,442 … … … … … … … … 267 152 [419] [4.0] 2 9,994 … … … … … … … … … 281 [281] [2.8] 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 イ 仮釈放者(一部執行猶予者) 年 次 第4節 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 28 年 仮釈放を取り消された者の人員 元年 2年 B (%) 計(B) A - … … … … … - - - - - - … 283 … … … … … … 3 1 - - [4] [1.4] 30 992 … … … … … … … 20 9 - [29] [2.9] 元 1,198 … … … … … … … … 16 9 [25] [2.1] 2 1,201 … … … … … … … … … 29 [29] [2.4] 29 保護観察 ② 仮釈放を取り消された者の人員 24 年 保護観察付全部・一部執行猶予者 保護観察付全部執行猶予者 ア 年 次 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 2年 16 … … … … 936 27.5 3,398 121 396 235 128 40 24 3,376 … 123 305 191 135 71 14 … … … 839 24.9 25 3,255 … … 98 315 231 116 54 16 … … 830 25.5 26 3,348 … … … 103 320 200 148 37 13 … 821 24.5 27 3,460 … … … … 112 331 232 130 53 14 872 25.2 28 3,034 … … … … … 106 303 198 116 51 [774] [25.5] 29 2,595 … … … … … … 70 236 159 115 [580] [22.4] 30 2,481 … … … … … … … 66 232 170 [468] [18.9] 元 2,248 … … … … … … … … 69 181 [250] [11.1] 2 2,088 … … … … … … … … … 48 年 [48] [2.3] 保護観察付一部執行猶予者 次 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 28 年 254 元年 B (%) 計(B) A 24 年 23 年 イ 注 全部執行猶予を取り消された者の人員 一部執行猶予を取り消された者の人員 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 - B (%) 計(B) A - … … … … … - - - 29 248 … … … … … … - 34 25 - [59] [23.8] 30 974 … … … … … … … 24 141 113 [278] [28.5] 元 1,419 … … … … … … … … 46 163 [209] [14.7] 2 1,496 … … … … … … … … … 45 1 2 - 2年 - [45] … [3.0] 保護統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 保護観察が開始された日から5年以内に,仮釈放,保護観察付全部執行猶予又は保護観察付一部執行猶予を取り消された者(仮釈放 者については,刑法 29 条2項の規定により,仮釈放中に一部執行猶予の言渡しを取り消され,仮釈放が失効した人員は含まない。)の 人員を年次別に計上している。なお,[ ]内は,開始された日から5年に満たない各年の累積人員及び比率である。 3 余罪(刑法 29 条1項2号・3号)により仮釈放を取り消された者を除く。 4 余罪(刑法 26 条2号・3号,26 条の2第3号又は 27 条の4第2号・3号)により保護観察付全部執行猶予又は保護観察付一部執 行猶予を取り消された者を除く。 令和 3 年版 犯罪白書

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少年の再非行・再犯 第5節 少年の再非行 1 刑法犯により検挙された少年のうち,再非行少年(前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補 導)されたことがあり,再び検挙された少年をいう。)の人員及び再非行少年率(少年の刑法犯検挙 人員に占める再非行少年の人員の比率をいう。)の推移(最近 20 年間)は,5-2-5-1 図のとおりであ る。再非行少年の人員は,平成9年から増加傾向にあったが,16 年以降は毎年減少している。再非 行少年率は,10 年から 28 年まで上昇し続けた後,29 年以降は3年連続で低下したが,令和2年は 34.7%(前年比 0.7pt 上昇)であった(CD-ROM 参照)。 5-2-5-1 図 少年の刑法犯 検挙人員中の再非行少年の人員・再非行少年率の推移 (万人) 16 第5 編 (平成 13 年~令和2年) (%) 50 14 40 12 34.7 再非行少年率 30 8 員 6 20 検挙人員 17,466 4 10 2 注 1 2 3 4 5 うち再非行少年 15 20 25 30 令和2 0 再犯・再非行 0 平成13 再非行少年率 人 10 6,068 警察庁の統計による。 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 触法少年の補導人員を含まない。 「再非行少年」は,前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補導)されたことがあり,再び検挙された少年をいう。 「再非行少年率」は,少年の刑法犯検挙人員に占める再非行少年の人員の比率をいう。 犯罪白書 2021 255

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2 保護観察処分少年及び少年院入院者の保護処分歴 令和2年における保護観察処分少年(同年中に保護観察が開始された者に限り,交通短期保護観察 の対象者を除く。 )及び少年院入院者の保護処分歴別構成比を男女別に見ると,5-2-5-2 図のとおり である。 第2章 再犯・再非行の概況 5-2-5-2 図 保護観察処分少年・少年院入院者の保護処分歴別構成比(男女別) (令和2年) ① 保護観察処分少年 少年院送致 保護観察 男 子 15.7 (6,392) 2.0 女 子 (833) 81.1 8.6 89.7 1.1 第5節 少年院入院者 少年の再非行・再犯 男 子 (1,487) 少年院送致 保護観察 19.1 46.6 1.5 女 注 256 保護処分歴なし 1.2 0.6 ② 児童自立支援施設等送致 子 (137) 13.1 27.7 児童自立支援施設等送致 保護処分歴なし 32.5 1.7 57.7 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 4 複数の保護処分歴を有する場合,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,それ以外の者のうち保護観察歴がある者は「保護観察」 に,児童自立支援施設等送致歴のみがある者は「児童自立支援施設等送致」に計上している。 5 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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3 少年院出院者の再入院等の状況 この項では,少年院出院者の再入院又は刑事施設への入所の状況について概観する。ここで,再入 院率とは,各年の少年院出院者人員のうち,一定の期間内に,新たな少年院送致の決定により再入院 した者の人員の比率をいい,再入院・刑事施設入所率とは,各年の少年院出院者人員のうち,一定の 期間内に,新たな少年院送致の決定により再入院した者と初入者として刑事施設に入所した者の合計 人員の比率をいう(以下この項において同じ。)。例えば,2年以内再入院・刑事施設入所率とは,各 年の少年院出院者人員のうち,出院年を1年目として,2年目,すなわち翌年の年末までに再入院し た者又は初入者として刑事施設に入所した者の人員の比率をいい,このうち再入院した者に限ったも のを2年以内再入院率という。なお,同一の出院者について,出院後,複数回再入院した場合又は再 入院した後に刑事施設への入所がある場合には,その最初の再入院を計上している。 5-2-5-3 図は,平成 28 年の少年院出院者について,令和2年までの各年における再入院率及び再 第5 編 入院・刑事施設入所率を見たものである。再入院率は,2年以内では 10.2%,5年以内では 14.7% であり,5年以内に再入院した者のうち,約7割の者が2年以内に再入院している(CD-ROM 参 照) 。もっとも,一定の期間が経過した後の再入院率に関しては,出院後の期間の経過に伴い,成年 年齢に達する者が多くなり,そのような者が再犯(再非行)に及んだとしても,通常は保護処分では なく,刑事処分の対象となるため,再入院には至らないことがある点に留意する必要がある。そこ で,再入院・刑事施設入所率を見ると,2年以内では 10.7%であるが,その後も上昇しており,5 年以内では 21.6%であった。 5-2-5-3 図 少年院出院者 5年以内の再入院率と再入院・刑事施設入所率 (平成 28 年) (%) 30 25 15.6 15 5 再犯・再非行 20 10 21.6 19.1 10.7 3.4 13.5 14.3 14.7 4年以内 5年以内 10.2 3.4 0 出院年 2年以内 3年以内 再入院率 再入院・刑事施設入所率 (少年院出院者 2,750 人) 注 1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「再入院率」は,平成 28 年の少年院出院者の人員に占める,同年から令和2年までの各年の年末までに,新たな少年院送致の決定に より再入院した者の人員の比率をいう。 3 「再入院・刑事施設入所率」は,平成 28 年の少年院出院者の人員に占める,同年から令和2年までの各年の年末までに,新たな少年 院送致の決定により再入院した者又は受刑のため刑事施設に初めて入所した者の人員の比率をいう。なお,同一の出院者について,出 院後,複数回再入院した場合又は再入院した後に刑事施設への入所がある場合には,その最初の再入院を計上している。 犯罪白書 2021 257

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5-2-5-4 図①は,平成 12 年から令和元年の各年の少年院出院者について,2年以内の再入院率及 び再入院・刑事施設入所率の推移を見たものである。再入院率は9~12%台で,再入院・刑事施設 入所率は 10~14%台でそれぞれ推移している。なお,元年の少年院出院者について,2年以内の再 入院率及び再入院・刑事施設入所率を男女別に見ると,それぞれ,男子が 10.2%,11.3%,女子が 8.5%,8.5%であった(矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 第2章 再犯・再非行の概況 5-2-5-4 図②は,平成9年から 28 年の各年の少年院出院者について,5年以内の再入院率及び再 入院・刑事施設入所率の推移を見たものである。再入院率は 14~17%台で,再入院・刑事施設入所 率は 21~25%台でそれぞれ推移している。なお,28 年の少年院出院者について,5年以内の再入院 率及び再入院・刑事施設入所率を男女別に見ると,それぞれ,男子が 15.5%,22.9%,女子が 4.4%, 5.3%であった(矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 5-2-5-4 図 ① 少年院出院者 再入院率と再入院・刑事施設入所率の推移 2年以内 ② 5年以内 (平成 12 年~令和元年) (%) 30 25 25 20 20 第5節 (%) 30 少年の再非行・再犯 15 10.1 5 0 平成 12 14.7 10 5 15 20 25 令和元 再入院率 注 21.6 15 11.1 10 258 (平成9年~ 28 年) 0 平成9 15 20 25 28 再入院・刑事施設入所率 1 矯正統計年報及び法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「再入院率」は,各年の少年院出院者の人員に占める,出院年を 1 年目として,①では2年目(翌年)の,②では 5 年目の,それぞ れ年末までに新たな少年院送致の決定により再入院した者の人員の比率をいう。 3 「再入院・刑事施設入所率」は,各年の少年院出院者の人員に占める,出院年を1年目として,①では2年目(翌年)の,②では5 年目の,それぞれ年末までに新たな少年院送致の決定により再入院した者又は受刑のため刑事施設に初めて入所した者の人員の比率を いう。なお,同一の出院者について,出院後,複数回再入院した場合又は再入院した後に刑事施設への入所がある場合には,その最初 の再入院を計上している。 令和 3 年版 犯罪白書

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4 少年の保護観察対象者の再処分の状況 5-2-5-5 表は,平成 23 年から令和2年までの間に保護観察が終了した保護観察処分少年(交通短期 保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。 )及び少年院仮退院者について,再処分率(保護 観察終了人員のうち,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致 申請による保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに 限る。 )を受けた者の人員の占める比率をいう。以下同じ。 )の推移を見たものである。保護観察処分 少年の再処分率は,16~18%台で推移しており,同年は 16.3%(前年比 0.5pt 低下)であった。他方, 少年院仮退院者の再処分率は,18~23%台で推移しており,2年は 19.5%(同 0.6pt 上昇)であった。 5-2-5-5 表 ① 保護観察対象少年の再処分率の推移 (平成 23 年~令和2年) 保護観察処分少年 年 保護観察 再処分率 終了人員 実 刑 全 部 一 部 執行猶予 執行猶予 一 容 金 般 交 通 少年院 送 致 保護観察 その他 23 年 16,067 16.8 0.1 … 0.4 0.1 0.6 8.6 7.0 0.1 24 15,614 18.8 0.2 … 0.5 0.2 0.8 9.2 7.9 0.1 25 14,333 17.6 0.1 … 0.4 0.3 0.6 8.6 7.5 0.1 26 13,782 16.4 0.2 … 0.4 0.2 0.6 8.1 6.8 0.1 27 13,213 17.1 0.2 … 0.6 0.2 0.6 8.1 7.3 0.1 28 11,728 17.5 0.2 - 0.6 0.3 0.7 8.0 7.7 0.1 29 10,584 17.2 0.2 - 0.5 0.2 0.7 8.3 7.1 0.2 30 9,533 16.5 0.2 0.0 0.6 0.3 0.6 8.1 6.5 0.2 元 8,557 16.8 0.2 0.0 0.8 0.2 0.7 7.5 7.1 0.2 2 7,659 16.3 0.2 0.0 0.6 0.3 0.7 7.9 6.3 0.2 少年院仮退院者 処 年 次 23 年 注 内 罰 保護観察 再処分率 終了人員 3,882 18.9 分 懲役・禁錮 実 刑 0.2 全 部 一 部 執行猶予 執行猶予 … 内 罰 0.2 一 再犯・再非行 ② 次 分 第5 編 処 懲役・禁錮 容 金 般 0.2 交 通 0.5 少年院 送 致 12.6 保護観察 その他 5.1 0.1 24 3,681 23.1 0.1 … 0.3 0.1 0.6 15.9 6.1 - 25 3,354 21.2 0.2 … 0.2 0.1 0.4 14.2 5.8 0.1 26 3,312 20.8 0.3 … 0.4 0.2 0.6 13.7 5.7 - 27 3,250 20.4 0.1 … 0.3 0.1 0.8 12.8 6.2 0.1 28 3,169 22.0 0.1 - 0.4 0.2 0.6 13.9 6.6 0.2 29 2,859 20.1 - - 0.2 - 0.8 13.4 5.5 0.1 30 2,672 20.4 0.1 - 0.3 0.0 0.6 12.8 6.3 0.3 元 2,292 18.8 0.1 - 0.1 - 0.4 12.1 5.9 0.1 2 2,144 19.5 0.2 - 0.2 0.0 0.4 13.5 5.0 0.0 1 保護統計年報による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「再処分率」は,保護観察終了人員のうち,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申請によ る保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の人員の占める比率を いう。 「処分内容」の数値は,各処分内容別の再処分率である。 4 「罰金」のうち,「交通」は,過失運転致死傷等(刑法 211 条に規定する罪については,車両の運転によるものに限る。)並びに交通 関係4法令及び道路運送法の各違反によるものであり,「一般」は,それ以外の罪によるものである。 5 「その他」は,拘留,科料,起訴猶予,児童自立支援施設・児童養護施設送致等である。 犯罪白書 2021 259

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令和2年に保護観察が終了した保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,再処分率を保護観 察終了時の就学・就労状況別に見ると,5-2-5-6 図のとおりである。保護観察処分少年,少年院仮退 院者共に,無職であった者は,有職又は学生・生徒であった者と比べて,再処分率が顕著に高い。 5-2-5-6 図 保護観察対象少年の再処分率(終了時の就学・就労状況別) 第2章 再犯・再非行の概況 (令和2年) ① 保護観察処分少年 0 学生・生徒 (1,845) 有 無 注 第5節 少年の再非行・再犯 260 職 (4,918) 職 (602) 10 20 30 40 (%) 50 60 ② 少年院仮退院者 0 学生・生徒 8.6 (142) 有 15.5 46.0 無 職 (1,543) 職 (340) 10 20 30 40 50 (%) 60 12.7 14.3 42.9 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 保護観察終了時の就学・就労状況による。ただし,犯罪又は非行により身柄を拘束されたまま保護観察が終了した者については,身 柄を拘束される直前の就学・就労状況による。 4 「再処分率」は,保護観察終了人員のうち,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申請によ る保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の人員の占める比率を いう。 5 家事従事者,定収入のある無職者及び不詳の者を除く。 6 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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見聞きしたときも 情報をお寄せください 暴行 ・ 虐待 差別 ぎゃく たい セクハラ ・ パワハラ 法テラスの犯罪被害者支援 いじめ ・ 体罰 犯罪の被害にあい、つらく苦しい思いを されていませんか。 そんなときは、法テラスにお問い合わせ ください。 インターネットによる 誹謗中傷 ひ ぼう ちゅう しょう ひとりで悩まず 電話してください ぎゃく たい いじめ、虐待などを 犯罪被害者支援ダイヤル なくことないよ 平日 土曜 9:00~21:00 9:00~17:00 ※固定電話からは3分9.35円、 祝日・年末年始を除く 携帯電話からは20秒11円程度、 ※IP電話からは、03-6745-5601に 公衆電話からは1分11円 で全国どこからでもご利用になれます。 お電話ください。 8:30~17:15 https://www.jinken.go.jp/ インターネットによる人権相談は こちらへどうぞ。パソコン、 スマートフォン・携帯電話から ご利用できます。 「法テラスの犯罪被害者支援」 【画像提供:法務省大臣官房司法法制部】 法務省人権擁護局で検索! 「人権相談窓口」周知広報用ポスター 【画像提供:法務省人権擁護局】 6編 犯罪被害者 第 第1章 第2章 統計上の犯罪被害 刑事司法における被害者への配慮 第6 編 0570-079714

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第 1章 統計上の犯罪被害 この章において, 「被害者」とは,犯罪により害を被った者をいうが,放火や公務執行妨害等の社 第1章 統計上の犯罪被害 会的・国家的法益が保護法益である犯罪については,家屋の放火により害を被った所有者や居住者 等,公務執行妨害罪では暴行を受けた公務員等を「被害者」として扱う。 被害件数 第1節 6-1-1-1 図は,人が被害者となった刑法犯の認知件数及び男女別の被害発生率(人口 10 万人当た りの認知件数をいう。以下この章において同じ。)の推移(最近 30 年間)を見たものである。平成 14 年(認知件数 248 万 6,055 件,被害発生率 1,950.1)までは増加・上昇傾向にあったが,同年を ピークとして,それ以降は減少・低下し続け,令和2年は共に平成 14 年の約5分の1以下であった。 また,男性の被害発生率は,いずれの年も女性の2倍以上である(CD-ROM 参照)。 第1節 6-1-1-1 図 人が被害者となった刑法犯 認知件数・被害発生率(男女別)の推移 被害件数 (平成3年~令和2年) (万件) 250 3,000 被害発生率(男性) 被害発生率 認知件数 2,500 200 2,000 150 1,500 被害発生率(女性) 100 460,637 1,000 50 500 認知件数 0 平成3 注 262 5 10 15 244.7 20 25 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 被害者が法人その他の団体である場合を除く。 3 「被害発生率」は,人口 10 万人当たりの認知件数(男女別)をいう。 4 一つの事件で複数の被害者がいる場合は,主たる被害者について計上している。 令和 3 年版 犯罪白書 492.0 30令和2 0

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6-1-1-2 表は,令和2年における,人が被害者となった刑法犯の認知件数を主な罪名別に見るとと もに,これを主たる被害者の年齢層別に見たものである。総数(この表に掲げた主な罪名の犯罪に よって人が被害者となった認知件数の合計)に占める 65 歳以上の割合は,16.3%であり,これを罪 名別に見ると,詐欺(47.0%),殺人(26.8%),横領(20.5%)の順に高い。 各年齢層別に女性被害者が占める割合が最も高いのは,65 歳以上であった。年齢層ごとに女性が 被害者となった認知件数を見ると,すべての年齢層において窃盗が最も多く,次いで,13 歳未満で は強制わいせつ,65 歳以上では詐欺,それ以外の年齢層では暴行の順であった。 また,強制性交等及び強制わいせつでは,すべての被害者の中で 30 歳未満が占める割合が高い (強制性交等 80.6%,強制わいせつ 80.2%)。 なお,詐欺被害者の詳細については,第8編第3章第3節参照。 6-1-1-2 表 人が被害者となった刑法犯 認知件数(主な罪名別,被害者の年齢層別) (令和2年) 名 総 数 総 数 13 歳未満 13~19 歳 20~29 歳 30~39 歳 40~49 歳 50~64 歳 65 歳以上 女子 女子 女性 女性 女性 女性 女性 女子・ 女 性 381,185 135,229 (100.0) 8,380 (2.2) 〔35.5〕 殺 人 923 強 盗 1,254 強制性交等 52,910 (13.9) 〔39.3〕 18,009 77,974 (20.5) 〔34.0〕 30,149 57,410 (15.1) 〔38.7〕 19,065 59,600 (15.6) 〔33.2〕 18,561 62,759 (16.5) 〔31.1〕 18,963 62,152 (16.3) 〔30.2〕 27,192 〔43.8〕 416 63 33 36 18 149 60 112 45 135 54 181 66 247 140 483 4 3 75 31 325 150 195 61 182 50 249 92 224 96 1,332 1,260 176 140 402 388 495 477 152 150 59 57 33 33 15 15 暴 行 27,637 12,472 1,029 386 2,473 1,138 6,112 3,305 5,310 2,426 5,077 2,246 4,702 1,699 2,934 1,272 傷 害 18,963 7,283 948 304 1,842 487 4,300 1,871 3,474 1,457 3,243 1,302 3,109 1,033 2,047 829 脅 迫 3,758 1,776 56 21 402 251 754 452 699 343 763 317 715 253 369 139 恐 喝 1,400 282 12 3 315 40 450 93 196 46 191 50 151 32 85 18 窃 盗 298,793 94,444 5,265 1,706 45,436 14,037 61,407 20,931 44,525 13,092 46,926 13,129 49,555 14,193 45,679 17,356 詐 欺 22,113 12,421 5 2 582 333 2,425 1,319 2,208 977 2,690 1,119 3,814 1,433 10,389 7,238 横 領 521 121 - - 12 2 56 16 87 20 116 23 143 25 107 35 強 制 わいせつ 4,154 3,995 708 614 1,151 1,112 1,472 1,455 446 445 215 212 106 103 56 54 略取誘拐・ 人身売買 337 276 114 78 184 172 29 20 6 3 3 2 1 1 - - 1 2 3 4 5 6 7 犯罪被害者 注 3,290 第6 編 罪 警察庁の統計による。 一つの事件で複数の被害者がいる場合は,主たる被害者について計上している。 罪名の「総数」は,この表に掲げた主な罪名の犯罪によって人が被害者となった認知件数の合計である。 「殺人」は,年齢不明のもの1件を除く。 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 ( )内は,各年齢層の構成比である。 〔 〕内は,女子比又は女性比である。 犯罪白書 2021 263

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第2節 生命・身体への被害 6-1-2-1 図は,生命・身体に被害をもたらした刑法犯について,被害者(死傷者)の人員及び人口 比の推移(最近 20 年間)を見たものである。死傷者総数は平成 16 年(4万 8,190 人),死亡者数は 13 年(1,441 人)をピークに,それぞれその翌年から減少傾向にある。令和2年の死傷者総数は平 第1章 統計上の犯罪被害 成 16 年と比べて,令和2年の死亡者数は平成 13 年と比べてそれぞれ2分の1以下であった。死傷者 総数に占める女性の比率は上昇傾向にあり,令和2年においては 38.7%(平成 13 年比 11.4pt 上昇) であった。 6-1-2-1 図 生命・身体に被害をもたらした刑法犯 被害者数・人口比の推移(総数・女性別) (平成 13 年~令和2年) ① 総数 (千人) 50 人口比 40 軽傷者数 重傷者数 死亡者数 30 25 生命・身体への被害 30 20 20 人 口 比 被害者数 第2節 40 35 22,571 17.9 15 10 10 19,473 5 0 平成 13 ② 15 20 25 30 令和2 0 2,411 687 女性 (千人) 15 女性人口比 25 軽傷者数 重傷者数 死亡者数 10 15 8,739 女性人口比 被害者数 20 13.5 10 5 7,666 5 0 平成 13 注 264 15 20 25 30 令和2 0 781 292 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 「重傷者」は,全治1か月以上の負傷者をいい,「軽傷者」は,全治1か月未満の負傷者をいう。 3 「人口比」は,人口 10 万人当たりの死傷者総数であり,「女性人口比」は,女性の人口 10 万人当たりの女性の死傷者総数である。 令和 3 年版 犯罪白書

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第3節 性犯罪被害 6-1-3-1 表は,強制性交等・強制わいせつの認知件数及び被害発生率の推移(最近 10 年間)を見 たものである(なお,強制性交等・強制わいせつに係る刑法改正については,第1編第1章第2節2 項参照) 。 6-1-3-1 表 強制性交等・強制わいせつ 認知件数・被害発生率の推移 (平成 23 年~令和2年) 強 年 次 女 認知件数 性 交 等 男 被害発生率 認知件数 強 性 女 被害発生率 認知件数 制 わ 性 い せ つ 男 被害発生率 認知件数 性 被害発生率 23 年 1,193 1.8 … … 6,767 10.3 162 0.3 24 1,266 1.9 … … 7,144 10.9 177 0.3 25 1,409 2.2 … … 7,446 11.4 208 0.3 26 1,250 1.9 … … 7,186 11.0 214 0.3 27 1,167 1.8 … … 6,596 10.1 159 0.3 28 989 1.5 … … 5,941 9.1 247 0.4 29 1,094 1.7 15 0.0 5,610 8.6 199 0.3 30 1,251 1.9 56 0.1 5,152 7.9 188 0.3 元 1,355 2.1 50 0.1 4,761 7.4 139 0.2 2 1,260 1.9 72 0.1 3,995 6.2 159 0.3 第6 編 注 制 性 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 「被害発生率」は,人口 10 万人当たりの認知件数(男女別)をいう。 3 一つの事件で複数の被害者がいる場合は,主たる被害者について計上している。 4 「強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦をいい,29 年以降は強制性交等及び同改正前の 強姦をいう。 5 男性の「強制性交等」は,刑法の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 72 号)が施行された平成 29 年7月 13 日以降のものである。 犯罪被害者 犯罪白書 2021 265

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財産への被害 第4節 6-1-4-1 表は,強盗,窃盗,詐欺,恐喝,横領及び遺失物等横領(被害者が法人その他の団体であ る場合を含む。以下この節において「財産犯」と総称する。)について,認知件数(被害者がない場 合を含む。 )及び被害額の推移(最近 10 年間)を見たものである。令和2年の被害総額は,約 1,267 第1章 統計上の犯罪被害 億円(現金被害額は約 870 億円)であり,これを罪名別に見ると,詐欺によるものが財産犯による 被害総額全体の 50.5%を占め,次いで,窃盗によるものが 39.6%であった。同年の現金被害額は, 詐欺によるものが最も多く,財産犯による現金被害総額の3分の2以上を占めている。 6-1-4-1 表 財産犯 認知件数・被害額(罪名別)の推移 (平成 23 年~令和2年) 強 盗 年 次 第4節 財産への被害 注 266 認知 件数 窃 盗 被 害 額 現 金 被害額 認知 件数 詐 欺 被 害 額 現 金 被害額 認知 件数 恐 喝 被 害 額 現 金 被害額 認知 件数 横 領 被 害 額 認知 現 金 件数 被害額 23年 3,695 14.7 12.7 1,152,492 1,115.6 226.6 34,720 469.2 433.8 4,329 12.1 9.5 1,699 24 3,691 8.3 4.2 1,059,131 1,009.2 206.5 34,762 841.8 809.8 4,181 11.6 10.0 1,754 25 3,324 8.0 6.1 981,233 965.2 201.0 38,302 775.4 745.2 3,621 10.2 9.3 1,714 26 3,056 6.8 5.4 897,259 814.6 176.2 41,523 846.3 810.4 3,041 7.0 6.5 1,723 27 2,426 4.5 2.3 807,560 766.6 184.7 39,432 760.9 687.4 2,614 14.2 8.6 1,536 28 2,332 8.4 4.0 723,148 706.0 186.1 40,990 665.3 639.3 2,162 9.2 7.0 29 1,852 9.6 7.1 655,498 666.6 182.1 42,571 609.8 570.8 1,946 7.9 30 1,787 7.3 5.7 582,141 579.7 167.5 38,513 622.9 463.4 1,753 11.2 元 1,511 4.0 3.0 532,565 633.2 191.3 32,207 469.5 426.0 1,629 2 1,397 3.8 2.2 417,291 501.6 167.8 30,468 640.1 592.5 1,446 1 警察庁の統計による。 2 被害者が法人その他の団体である場合を含む。 3 「認知件数」は,被害者がない場合を含む。 令和 3 年版 犯罪白書 遺失物等横領 被 害 額 現 金 被害額 108.1 認知 件数 被 害 額 現 金 被害額 95.8 48,743 4.2 1.4 89.8 79.0 39,753 4.6 1.2 111.0 101.3 33,114 3.4 1.3 142.2 132.0 29,534 3.5 1.4 63.2 55.1 26,500 3.5 1.6 1,513 80.6 73.4 22,979 3.6 1.7 7.2 1,413 54.6 46.7 20,408 3.1 1.5 8.7 1,449 77.3 55.3 18,522 3.6 2.0 9.9 9.1 1,397 72.7 63.6 15,857 3.9 2.5 4.9 3.9 1,388 113.4 102.0 14,154 3.2 1.7 (金額の単位は,億円)

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第5節 被害者と被疑者の関係 6-1-5-1 図は,令和2年における検挙件数(捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処 罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)について,主な罪名ごとに,被害者と被疑者との関係 別の構成比を見たものである。 6-1-5-1 図 刑法犯 被害者と被疑者の関係別検挙件数構成比(罪名別) (令和2年) 殺 強 人 (824) 盗 親族 面識あり 47.1 40.2 14.0 (1,347) その他 0.6 面識なし 12.1 75.1 9.9 1.0 放 火 28.3 (664) 15.4 (1,278) 暴 傷 恐 行 害 31.1 31.6 25.0 (16,802) 29.4 53.5 28.3 (24,243) 18.8 40.1 45.8 喝 29.2 67.5 (1,244) 第6 編 強制性交等 23.5 29.1 0.8 窃 盗 4.6 45.3 50.0 犯罪被害者 (164,027) 2.6 0.1 詐 欺 (15,138) 10.2 50.1 39.6 0.1 強制わいせつ (3,716) 注 5.7 34.1 60.2 1 警察庁の統計による。 2 捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。 3 「その他」は,被害者が法人その他の団体である場合及び被害者がない場合である(殺人の「その他」は,全て殺人予備におけるも のである。)。 4 「強制性交等」は,平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦を含む。 5 ( )内は,件数である。 犯罪白書 2021 267

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国外における日本人の犯罪被害 第6節 在外公館が邦人援護事務を通じて把握した国外における日本人の犯罪被害は,令和元年(2019 年) は,4,823 件(前年比 1.2%増),その被害者数は,4,992 人(同 15.5%増)であり,罪名別に犯罪被 害件数を見ると,6-1-6-1 表のとおりである(外務省領事局の資料による。)。 第1章 統計上の犯罪被害 6-1-6-1 表 国外における日本人の犯罪被害件数の推移 (令和元年(2019 年)) 総 数 殺 4,823 11 (100.0) 注 傷害・ 暴 行 人 69 (0.2) (1.4) 強制性交等・ 強制わいせつ 脅迫・ 恐 喝 25 強 61 (0.5) 盗 窃 215 (1.3) 盗 詐 4,039 (4.5) 欺 誘 320 (83.7) (6.6) 拐 その他 - 83 (1.7) 1 外務省領事局の資料による。 2 「その他」は,テロを含む。 3 ( )内は,構成比である。 令和元年(2019 年)における国外での日本人の犯罪被害による死亡者数は 14 人(前年比5人増), 第6節 負傷者数は 116 人(同 30 人減)であった(外務省領事局の資料による。)。 国外においてテロの被害に遭った日本人の死傷者数の推移(最近 10 年間)は,6-1-6-2 表のとお 国外における日本人の犯罪被害 りである。 6-1-6-2 表 国外における日本人のテロ被害死傷者数の推移 (平成 22 年(2010 年)~令和元年(2019 年)) 区 総 注 268 分 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 数 3 - - 11 - 10 10 - - 6 死亡者数 - - - 10 - 6 7 - - 2 負傷者数 3 - - 1 - 4 3 - - 4 外務省領事局の資料による。 令和 3 年版 犯罪白書

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2章 第 刑事司法における 被害者への配慮 刑事司法の各分野においては,犯罪被害者等基本法(平成 16 年法律第 161 号)に基づき,平成 28 年4月に策定された第3次犯罪被害者等基本計画(計画期間は令和2年度末まで)を踏まえながら, 犯罪被害者等のための各種の施策・取組が実施され,3年3月には,第4次犯罪被害者等基本計画が 策定された(計画期間は7年度末まで)。 第4次犯罪被害者等基本計画においては,大局的な課題として五つの重点課題が掲げられ,個々の 施策(279 施策)の実施に当たっては,各重点課題に対する当該施策の位置付けを明確に認識し,関 係府省庁の施策が横断的かつ総合的に推進・展開されるよう努めることが求められている。 第4次犯罪被害者等基本計画における五つの重点課題 損害回復・経済的支援等への取組 37 施策 2 精神的・身体的被害の回復・防止への取組 87 施策 3 刑事手続への関与拡充への取組 41 施策 4 支援等のための体制整備への取組 84 施策 5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組 30 施策 第1節 1 第6 編 1 【第4次犯罪被害者等基本計画】 刑事手続における被害者の関与 被害申告及び告訴 被害者は,捜査機関に対して被害届を提出するなどして被害を申告することができるほか,検察官 又は司法警察員に対して,犯罪事実を申告し,犯人の処罰を求めて告訴をすることができる。被害の 犯罪被害者 申告及び告訴は,いずれも捜査機関等にとって捜査の端緒となるものであるが,名誉毀損,器物損壊 等の親告罪については,告訴が訴訟条件とされており,告訴がなされない場合又は告訴がなされた後 に取り消された場合は,検察官は,公訴を提起することができない。親告罪の告訴については,原則 として犯人を知った日から6か月の期間を経過したときはこれをすることができないと定められてい るが,強制わいせつ等の性犯罪については,告訴をするか否かの判断を迫られることなどにより被害 者に生じる精神的負担を解消するため,平成 29 年法律第 72 号による刑法の改正(平成 29 年7月施 行)により非親告罪化がなされた。 2 起訴・不起訴等に関する被害者等への通知 検察官は,告訴等があった事件について,公訴を提起し,又はこれを提起しない処分(不起訴処 分)をしたときは,速やかにその旨を告訴人等に通知しなければならず,また,不起訴処分をした場 合において,告訴人等から請求があるときは,速やかにその理由を告げなければならない。 さらに,検察官等は,被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大な事件や検察官等が被害者等の 取調べ等を実施した事件において,被害者等が希望する場合には,事件の処理結果,公判期日及び裁 判結果に関する事項について通知を行っている(被害者等通知制度)。また,被害者等が特に希望し, 相当と認めるときは,公訴事実の要旨,不起訴理由の骨子,公判経過等についても通知を行ってい る。令和2年においては,事件の処理結果について延べ5万 6,685 件,公判期日について延べ2万 犯罪白書 2021 269

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3,511 件,裁判結果について延べ3万 9,137 件の各通知が行われた(目撃者等に対する通知を含む。 法務省刑事局の資料による。)。 不起訴処分に対する不服申立制度 3 第2章 刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑 公訴権は,原則として検察官に付与されているが,検察官の不起訴処分に対する不服申立制度とし て,検察審査会に対する審査申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求(「準起訴手続」ともい う。 )の制度がある。 (1)検察審査会に対する審査申立て 検察審査会(現在,全国に 165 か所が設置されている。)は,選挙人名簿に基づきくじで選定され た 11 人の検察審査員(任期6か月)により組織され,申立てにより又は職権で,検察官の不起訴処 分の審査を行い,「起訴相当」,「不起訴不当」又は「不起訴相当」の議決を行う。 検察審査会法(昭和 23 年法律第 147 号)の改正(平成 16 年法律第 62 号。平成 21 年5月施行)に より,検察審査会が「起訴相当」の議決を行った事件につき,検察官が再度不起訴処分にした場合又 は一定期間内に公訴を提起しなかった場合には,検察審査会は,再審査を行わなければならず,その 結果, 「起訴をすべき旨の議決」(起訴議決)を行ったときは,公訴が提起されることとなる。この場 合,公訴の提起及びその維持に当たる弁護士(指定弁護士)が裁判所により指定され,この指定弁護 士が,起訴議決に係る事件について,検察官の職務を行う。 検察審査会における事件(再審査に係るものを含まない。)の受理・処理人員の推移(最近5年間) 第1節 は,6-2-1-1 表のとおりである。令和2年における受理人員のうち,刑法犯(平成 25 年法律第 86 号 刑事手続における被害者の関与 別に見ると,文書偽造が 446 人と最も多く,次いで,詐欺(212 人),傷害(186 人),職権濫用 による改正前の刑法 211 条2項に規定する自動車運転過失致死傷を含む。)は 1,778 人であり,罪名 (184 人)の順であった。特別法犯(自動車運転死傷処罰法違反を含む。)は 361 人であり,同法違 反が 175 人と最も多かった(いずれも延べ人員。最高裁判所事務総局の資料による。)。 6-2-1-1 表 検察審査会の事件の受理・処理人員の推移 (平成 28 年~令和2年) 年 注 270 次 受 総 数 理 申立て 処 職 権 総 数 理 起訴相当 不起訴不当 不起訴相当 その他 未 済 28 年 2,191 2,155 36 2,343 3 101 2,023 216 684 29 2,544 2,507 37 2,274 1 67 1,895 311 954 30 2,242 2,215 27 2,329 3 81 1,958 287 867 元 1,797 1,733 64 2,068 9 134 1,640 285 596 2 2,141 2,116 25 1,742 11 104 1,400 227 995 1 最高裁判所事務総局の資料による。 2 被疑者数による延べ人員であり,再審査に係るものを除く。 3 「その他」は,審査打切り,申立却下及び移送である。 4 「未済」は,各年 12 月 31 日現在の人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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検察審査会において起訴相当又は不起訴不当の議決がされた事件について,検察官が執った事後措 置の推移(最近5年間)を,原不起訴処分の理由別に見ると,6-2-1-2 表のとおりである。 6-2-1-2 表 起訴相当・不起訴不当議決事件 事後措置状況の推移(原不起訴処分の理由別) (平成 28 年~令和2年) 年 注 原 措置済総人員 次 不 起訴猶予 不起訴 起訴率 総数 維 持 起訴 起 訴 処 分 嫌疑不十分 不起訴 起訴率 総数 維 持 起訴 そ 不起訴 起訴率 総数 維 持 の 起訴 他 不起訴 維 持 起訴率 総数 起訴 28 年 66 13 53 19.7 14 3 11 21.4 49 10 39 20.4 3 - 3 - 29 85 5 80 5.9 6 2 4 33.3 79 3 76 3.8 - - - … 30 84 21 63 25.0 14 5 9 35.7 67 16 51 23.9 3 - 3 - 元 110 21 89 19.1 13 4 9 30.8 92 17 75 18.5 5 - 5 - 2 102 24 78 23.5 18 9 9 50.0 84 15 69 17.9 - - - … 1 最高裁判所事務総局の資料による。 2 「総数」,「起訴」及び「不起訴維持」は,被疑者数による延べ人員である。 3 「起訴猶予」,「嫌疑不十分」及び「その他」は,原不起訴処分の理由である。「その他」は,嫌疑なし,罪とならず,刑事未成年, 心神喪失,時効完成等である。 第6 編 検察審査会法施行後の昭和 24 年から令和2年までの間,検察審査会では,合計で延べ 17 万 9,147 人の処理がされ,延べ1万 8,707 人(10.4%)について起訴相当又は不起訴不当の議決がされてい る。このうち,検察官により起訴された人員は,延べ 1,647 人であり,1,458 人が有罪(自由刑 529 人,罰金刑 929 人) ,102 人が無罪(免訴及び公訴棄却を含む。 )を言い渡されている(最高裁判所 事務総局の資料による。)。 また,検察審査会の起訴相当の議決がされた後,検察官が不起訴維持の措置を執り,検察審査会が 再審査した事件のうち,平成 21 年から令和2年までに再審査が開始されたのは,延べ 32 人であり, 起訴議決に至ったものは延べ 15 人,起訴議決に至らなかった旨の議決は延べ 16 人であった(最高裁 判所事務総局の資料による。)。 平成 21 年から令和2年までの間,検察審査会の起訴議決があり,公訴の提起がなされて裁判が確 犯罪被害者 定した事件の人員は 10 人(有罪2人(自由刑1人,財産刑1人),無罪(免訴及び公訴棄却を含む。) 8人)であった(法務省刑事局の資料による。)。 (2)付審判請求 付審判請求は,公務員による各種の職権濫用等の罪について告訴又は告発をした者が,不起訴処分 に不服があるときに,事件を裁判所の審判に付するよう管轄地方裁判所に請求することを認める制度 である。地方裁判所は,その請求に理由があるときは,事件を裁判所の審判に付する旨の決定を行 い,この決定により,その事件について公訴の提起があったものとみなされ,公訴の維持に当たる弁 護士(指定弁護士)が裁判所により指定され,この指定弁護士が,その事件について検察官の職務を 行う。 令和2年における付審判請求の新規受理人員は 625 人,処理人員は 467 人であり,付審判決定が あった者はいなかった(司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。)。 また,刑事訴訟法施行後の昭和 24 年から令和2年までの間に付審判決定があり,公訴の提起が あったとみなされた事件の裁判が確定した件数は 22 件であり,うち 13 件が無罪(免訴を含む。)で あった(最高裁判所事務総局の資料による。)。 犯罪白書 2021 271

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公判段階における被害者等の関与 4 (1)被害者参加制度 被害者参加制度により,一定の犯罪に係る被告事件の被害者等は,裁判所の決定により被害者参加 人として刑事裁判に参加し,公判期日に出席できるほか,検察官の訴訟活動に意見を述べること,情 第2章 刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑 状事項に関して証人を尋問すること,自らの意見陳述のために被告人に質問すること,事実・法律適 用に関して意見を述べることなどができる。そして,被害者参加人が公判期日等に出席する場合にお いて,裁判所は,被害者参加人と被告人や傍聴人との間を遮へいする措置を採ったり,適当と認める 者を被害者参加人に付き添わせたりすることができる。 被害者参加人は,刑事裁判への参加を弁護士に委託する場合,資力に応じて,法テラスを経由して 裁判所に国選被害者参加弁護士の選定を請求することができる。また,公判期日等に出席した被害者 参加人は,被害者参加旅費等の支給を受けることができる(同旅費等に関する事務は法テラスが行 う。 ) 。 通常第一審における被害者参加制度の実施状況の推移(最近5年間)は,6-2-1-3 表のとおりであ る。 6-2-1-3 表 通常第一審における被害者参加制度の実施状況の推移 (平成 28 年~令和2年) 年 第1節 刑事手続における被害者の関与 注 次 被 害 者 参 加 証人尋問 弁護士への 国選弁護士 被 告 人 論告・求刑 遮 へ い 付 添 い 委 託 への委託 質 問 28 年 1,400 (400) 228 629 708 258 107 1,102 580 29 1,380 (333) 196 560 667 276 115 1,060 553 30 1,485 (363) 221 605 698 362 149 1,184 649 元 1,466 (320) 204 623 723 318 106 1,157 602 2 1,377 (301) 205 569 685 337 135 1,116 614 1 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 2 「被害者参加」は,通常第一審において被害者参加の申出があった終局人員のうち,それぞれの被害者参加制度において,被害者参 加が許可された被害者等の数(延べ人員)である。( )内は,そのうち,裁判員の参加する合議体において審理及び裁判された事件 におけるものである。 3 「論告・求刑」は,刑事訴訟法 316 条の 38 に規定された事実・法律適用に関する意見陳述をした被害者等の数(延べ人員)である。 (2)被害者等・証人に配慮した制度 ア 被害者等の意見陳述・証人の保護等 被害者等は,公判期日において,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を陳述し,又 は,これに代えて意見を記載した書面を提出することができる。 公判廷における証人を保護するための制度としては,証人尋問の際に,証人と被告人や傍聴人との 間を遮へいする措置を採る制度,証人を別室に在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相 互に認識しながら通話する方法(ビデオリンク方式)によって尋問する制度,適当と認める者を証人 に付き添わせる制度がある。これらの制度は,被害者等が公判期日において意見を陳述する場合にお いても適用される。 刑事手続において被害者の氏名等の情報を保護するための制度としては,被害者特定事項秘匿決定 及び証拠開示の際の被害者特定事項の秘匿要請がある。 被害者特定事項秘匿決定は,性犯罪に係る事件や犯行の態様,被害の状況その他の事情により,氏 名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項(以下アにおいて「被害者特定事 項」という。 )が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉等が著しく害されるおそれ があると認められる事件について,被害者等からの申出があり,裁判所が,それを相当と認めるとき 272 令和 3 年版 犯罪白書

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に,被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨を決定するものである。証拠開示の際の被害者 特定事項の秘匿要請は,被害者特定事項が明らかにされることにより,被害者等の名誉等が著しく害 されるおそれがあると認められるなどの場合に,検察官が,証拠を開示する際に,弁護人に対し,そ の旨を告げ,被害者特定事項が被告人の防御に関し必要がある場合を除き,被告人等に知られないよ うに求めるものである。 また,平成 28 年法律第 54 号による刑事訴訟法の改正により,①証人等特定事項秘匿決定(証人等 からの申出により,裁判所が,証人等の氏名,住所等の証人等特定事項を公開の法廷で明らかにしな いこととする決定)の制度,②証人等の氏名等の開示について,証人等の身体又は財産に対する加害 行為等のおそれがあるときは,防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き,検察官が弁 護人に当該氏名等を開示した上で,これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することがで き,特に必要があるときは,弁護人にも開示せず,代替的な呼称等を知らせることができるとする制 度が導入された上,③一定の場合には,証人を同一構内(裁判官等の在席する場所と同一の構内)以 外の場所に出頭させてビデオリンク方式により証人尋問を行うことができるようになった(①及び② は平成 28 年 12 月施行,③は 30 年6月施行)。 意見陳述,意見陳述に代えた書面の提出,証人の保護(遮へい,ビデオリンク及び付添い),被害 者特定事項秘匿決定及び証人等特定事項秘匿決定の実施状況の推移(最近5年間)は,6-2-1-4 表の イ 第6 編 とおりである。 刑事和解及び損害賠償命令制度 刑事被告事件の被告人と被害者等は,両者間の当該被告事件に関連する民事上の争いについて合意 が成立した場合には,共同して,その合意の内容を当該被告事件の公判調書に記載することを求める 申立てができる。これが公判調書に記載された場合には,その記載は裁判上の和解と同一の効力を有 し(刑事和解) ,被告人がその内容を履行しないときは,被害者等はこの公判調書を利用して強制執 行の手続を執ることができる。 また,一定の重大犯罪について,被害者等が刑事事件の係属している裁判所に損害賠償命令の申立 てを行い,裁判所が有罪判決の言渡しを行った後に引き続き審理を行い,刑事裁判の訴訟記録を取り 犯罪被害者 調べるなどして申立てに対する決定を行う制度(損害賠償命令制度)が実施されている。 刑事和解及び損害賠償命令制度の実施状況の推移(最近5年間)は,6-2-1-4 表のとおりである。 ウ 記録の閲覧・謄写 裁判所は,被害者等には原則として公判記録の閲覧・謄写を認めることとされている上,いわゆる 同種余罪の被害者等についても,損害賠償請求権の行使のために必要があり,相当と認めるときは, 閲覧・謄写を認めることとされている。被害者等が公判記録の閲覧・謄写をした事例数の推移(最近 5年間)は,6-2-1-4 表のとおりである。 不起訴事件の記録については,原則として非公開であるが,被害者等が民事訴訟において損害賠償 請求権その他の権利を行使するために実況見分調書等の客観的証拠が必要と認められる場合等には, 検察官は,関係者のプライバシーを侵害するなど相当でないと認められる場合を除き,これらの証拠 の閲覧・謄写を許可している。また,被害者参加制度の対象事件については,被害者等が「事件の内 容を知ること」等を目的とする場合であっても,不起訴事件の記録中の客観的証拠については,原則 として,閲覧が認められている。 犯罪白書 2021 273

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6-2-1-4 表 被害者等・証人に配慮した制度の実施状況の推移 (平成 28 年~令和2年) 意見陳述 証 人 の 保 護 被 害 者 証 人 等 刑 事 損 害 賠 償 公判記録の 次 意見陳述 に 代 え た 特定事項 特定事項 和解 命 令 閲覧・謄写 遮 へ い ビデオリンク 付 添 い 書面の提出 秘匿決定 秘匿決定 年 第2章 刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑 28 年 1,181 616 1,623 303 (…) 128 3,976 4 23 306 1,486 29 1,072 526 1,105 225 (…) 78 3,351 116 26 295 1,254 30 1,169 546 1,461 317 (15) 144 3,846 174 18 309 1,281 元 1,130 544 1,505 341 (23) 118 4,025 240 18 318 1,180 2 920 536 1,237 302 (38) 107 3,923 156 25 289 1,140 注 1 司法統計年報及び最高裁判所事務総局の資料による。 2 「意見陳述」,「意見陳述に代えた書面の提出」,「証人の保護」,「被害者特定事項秘匿決定」,「刑事和解」及び「公判記録の閲覧・謄 写」の数値については,平成 28 年まではそれぞれの措置を執る決定等がなされた日を基準に計上していたが,29 年以降は当該事件の 終局日を基準に計上している。なお,28 年以前に決定等がなされ,かつ,29 年にその事件が終局したものについては,決定等がなさ れた日を基準に計上している。 3 「意見陳述」,「意見陳述に代えた書面の提出」,「証人の保護」,「被害者特定事項秘匿決定」及び「証人等特定事項秘匿決定」は,い ずれも高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所における被害者等又は証人の数(延べ人員)である。 4 「証人等特定事項秘匿決定」の数値については,当該事件の終局日を基準に計上している。 5 「刑事和解」は,高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所において,被告人と被害者等の間で成立した民事上の争いについての合意 内容を公判調書に記載した事例数である。 6 「損害賠償命令」は,地方裁判所において,被害者等からの損害賠償命令の申立てを受けた事件の終局件数である。 7 「公判記録の閲覧・謄写」は,高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所において,被害者等が公判記録の閲覧・謄写をした事例数で ある。 8 「ビデオリンク」内の( )は,証人を同一構内以外の場所に出頭させ証人尋問が行われた証人の数であり,内数である。なお,制 度が開始した平成 30 年6月からの数値を計上している。 5 矯正・更生保護段階等における被害者等の関与 第1節 被害者等が加害者たる受刑者の処遇状況等の通知を希望し,これが相当と認められる場合には,検 察官は,刑事施設の長からの通知に基づき,受刑者の処遇状況等に関する事項を当該被害者等に通知 刑事手続における被害者の関与 している(被害者等通知制度)。令和2年は,刑の執行終了予定時期について延べ1万 5,709 件(目 撃者等に対する通知を含む。),刑事施設における処遇状況について延べ1万 7,347 件,受刑者の釈放 について延べ 2,677 件(目撃者等に対する通知を含む。),全部又は一部執行猶予の言渡しの取消しに ついて延べ 201 件の通知がそれぞれ行われた(法務省刑事局の資料による。)。 また,再被害防止の観点から転居等の措置を講じる必要があるため,被害者等が特に通知を希望す る場合で,検察官が相当と認めるときには,受刑者の釈放予定時期及び帰住予定地等についての通知 を行う制度も実施されており,令和2年は,413 人に対して通知が行われた(目撃者等に対する通知 を含む。法務省刑事局の資料による。)。 なお,被害者等通知制度の一環として,令和2年 10 月 21 日から,被害者等からの希望に基づき, それらの者に対し,死刑を執行した事実を通知することとされた。 更生保護においては,①地方更生保護委員会が,仮釈放審理の開始・結果に関する事項について, 保護観察所の長が,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者の保護観察の開始・処遇状況・終 了に関する事項について,それぞれ被害者等に通知を行っている(被害者等通知制度)。また,②地 方更生保護委員会が,刑事施設からの仮釈放及び少年院からの仮退院の審理において,被害者等から 仮釈放・仮退院に関する意見等を聴取する意見等聴取制度,③保護観察所が,被害者等から被害に関 する心情等を聴取し,保護観察中の加害者に伝達する心情等伝達制度,④主に保護観察所が,被害者 等からの相談に応じ,関係機関等の紹介等を行う相談・支援の制度が実施されている。 令和2年における運用状況は,①のうち,仮釈放審理に関する事項について延べ 3,837 件,保護観 察状況に関する事項について延べ 6,686 件(保護処分を受けた少年の仮退院審理・保護観察状況に関 する通知については,本節6項参照) ,②が延べ 311 件(うち仮退院の審理における件数 25 件),③ が延べ 155 件(うち加害者が保護処分のものの件数 31 件),④が延べ 1,473 件であった(法務省保護 局の資料による。)。 274 令和 3 年版 犯罪白書

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なお,平成 30 年7月から,保護観察所において,心神喪失者等医療観察法に定める対象行為(第 4編第 10 章第3節1項参照)の被害者等が希望する場合には,被害者等に対し,対象者の処遇段階 等に関する情報を提供しており,令和2年における情報提供件数は 15 件であった(法務省保護局の 資料による。)。 6 少年事件における被害者等への配慮 少年事件については,少年法により,被害者等による少年事件記録の閲覧・謄写の制度,被害者等 からの意見の聴取の制度,被害者等に対する審判結果等の通知の制度,一定の重大事件の被害者等が 少年審判を傍聴することができる制度及び家庭裁判所が被害者等に対して審判の状況を説明する制度 がある。令和2年に,被害者等から申出がなされた人員は,少年事件記録の閲覧・謄写が延べ 927 人(うち相当と認められた人員 887 人),意見の聴取が延べ 254 人(同 248 人),審判結果等の通知 が延べ 841 人(同 840 人)であった。また,同年に,少年審判の傍聴が認められた件数・人員は 28 件・51 人であり,審判状況の説明が認められた被害者等の人員は 301 人であった(最高裁判所事務 総局の資料による。)。 このほか,保護処分を受けた少年の処遇状況等に関する事項についても,被害者等が通知を希望 第6 編 し,これが相当と認められる場合には,少年院の長は,加害少年が収容されている少年院の名称,少 年院における教育状況,出院年月日・出院事由等について,地方更生保護委員会は,仮退院審理の開 始・結果に関する事項について,保護観察所の長は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護観 察の開始・処遇状況・終了に関する事項について,それぞれ通知を行っている。令和2年において は,少年院での処遇に関する事項について 196 件,仮退院審理に関する事項について延べ 101 件, 保護観察状況に関する事項について延べ 520 件の各通知が行われた(法務省矯正局及び保護局の資 料による。)。また,少年事件においても,意見等聴取,心情等伝達及び相談・支援の各制度が実施さ れている(制度の概要及び運用状況については,本節5項参照)。 法テラスによる被害者等に対する支援 犯罪被害者 7 法テラス(第2編第1章2項参照)は,被害者等に対する支援業務を行っている。その業務内容 は,電話及び各地方事務所を通じて,刑事手続への適切な関与,損害や苦痛の回復・軽減を図るため の制度に関する情報提供を行うほか,被害者等の支援を行っている機関・団体の支援内容や相談窓口 を案内し,被害者等の支援について理解や経験のある弁護士の紹介等を行うものである。また,法テ ラスは,被害者参加制度が開始されてからは,被害者参加人が法テラスを経由して裁判所に国選被害 者参加弁護士の選定請求をするに当たり,法テラスと契約している弁護士を国選被害者参加弁護士の 候補に指名して裁判所に通知するなどの業務も行っている。 法テラスにおける被害者等に対する支援の実施状況の推移(最近 10 年間)については,6-2-1-5 図のとおりであり,令和2年度における犯罪被害者支援ダイヤルでの受電件数は1万 4,309 件(前年 比 1,034 件減) ,地方事務所での犯罪被害・刑事手続等の問合せ件数は1万 768 件(同 494 件減)で あり,犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士を紹介した件数は 1,252 件(同 103 件減)であっ た。また,2年度の被害者参加人からの国選被害者参加弁護士選定請求件数は,691 件(請求人員延 べ 822 人)であり,罪名別にその件数を見ると,強制性交等・強制わいせつ等 368 件(53.3%),傷 害 101 件(14.6%),過失運転致死傷等 75 件(10.9%),殺人(自殺関与・同意殺人を含まない。) 61 件(8.8%)であった(法テラスの資料による。)。 犯罪白書 2021 275

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6-2-1-5 図 法テラスにおける被害者等に対する支援の実施状況の推移 (平成 23 年度~令和2年度) ① 被害者等支援業務 (千件) 30 (件) 2,000 受電・問合せ件数 20 弁護士 紹介件数 1,252 1,000 地方事務所問合せ件数 15 10 0 500 14,309 犯罪被害者支援ダイヤル受電件数 5 ② 10,768 1,500 平成23 25 30 弁護士紹介件数 第2章 刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑 25,077 25 0 令和2 国選被害者参加弁護士選定請求件数(罪名別)・請求延べ人員 (件) (人) 900 800 第1節 700 その他 殺人 過失運転致死傷等 傷害 強制性交等・強制わいせつ等 請求延べ人員 822 691 86 600 刑事手続における被害者の関与 61 500 75 400 101 300 200 368 100 0 平成23 注 25 30 令和2 1 法テラスの資料による。 2 「強制性交等」は,平成 28 年以前は平成 29 年法律第 72 号による刑法改正前の強姦をいい,29 年以降は強制性交等及び同改正前の 強姦をいう。 3 「殺人」は,自殺関与・同意殺人を含まない。 また,平成 28 年法律第 53 号による総合法律支援法(平成 16 年法律第 74 号)の改正により,平成 30 年1月から,法テラスにおいて,ストーカー規制法上の「つきまとい等」 ,児童虐待防止法上の 「児童虐待」及び配偶者暴力防止法上の「配偶者からの暴力」の被害者に対し,必要な法律相談を実 施することを内容とする「DV 等被害者法律相談援助」が実施されている(児童虐待,配偶者間暴力 及びストーカー犯罪については,第4編第6章参照)。なお,法テラスにおいては,新型コロナウイ ルス感染症感染拡大防止のため,地方事務所における面談による法律相談の実施が困難な状況が生じ たことから,それを解消すべく,令和2年5月,DV 等被害者法律相談援助等につき,面談による法 律相談の代替として電話等による法律相談援助を開始し,各地方事務所の実情に応じた運用がなされ た。同年度における DV 等被害者法律相談援助の実施件数は 983 件(前年比 151 件増)であり,そ のうち 75 件は電話等による法律相談援助によるものであった(法テラスの資料による。)。 276 令和 3 年版 犯罪白書

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8 地方公共団体における被害者支援に向けた取組 令和2年度においては,第3次犯罪被害者等基本計画の下,地方公共団体において,犯罪被害者等 に適切な情報提供等を行う総合的対応窓口の設置や,犯罪被害者等に関する条例の制定及び計画・指 針の策定が行われ,それらを含めた犯罪被害者等支援に向けた取組は,3年4月以降,第4次犯罪被 害者等基本計画の下,推進されている。同年4月1日現在,全ての地方公共団体に総合的対応窓口が 設置されている上,43 都道府県,13 指定都市及び 623 市区町村(指定都市を除き,特別区を含む。 以下この章において同じ。 )において,犯罪被害者等に関する条例が制定され,47 都道府県,12 指 定都市及び 130 市区町村において,犯罪被害者等に関する計画・指針が策定されている(警察庁長 官官房の資料による。)。 第2節 1 犯罪被害者等に対する給付金の支給制度等 犯罪被害給付制度 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和 55 年法律第 36 号)に 第6 編 基づき,犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族又は重傷病を負い若しくは障害が残った者には, 犯罪被害者等給付金が支給される。平成 30 年4月には,幼い遺児がいる場合の遺族給付金の増額, 重傷病給付金の給付期間の延長,仮給付の柔軟化,親族間での犯罪被害に係る減額・不支給事由の抜 本的見直しが実施された。令和2年度の犯罪被害者等給付金の支給裁定に係る犯罪被害者数は 263 人(裁定件数 338 件)であり,裁定総金額は8億 2,509 万円であった(警察庁長官官房の資料によ る。 ) 。 2 国外犯罪被害弔慰金等の支給制度 平成 28 年 11 月から,国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律(平成 28 年法律第 73 号)に基づ 犯罪被害者 き,国外での犯罪により死亡した日本国籍を有する国外犯罪被害者(日本国外の永住者を除く。以下 同じ。 )の遺族には国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり 200 万円が,障害等級第1級相当の 障害が残った国外犯罪被害者には国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり 100 万円が,それぞれ 支給される。令和2年度において,国外犯罪被害弔慰金等の支給裁定に係る国外犯罪被害者数は,2 人(裁定件数2件)であり,裁定総金額は 300 万円であった(警察庁長官官房の資料による。)。 3 被害回復給付金支給制度 組織的犯罪処罰法により,財産犯等の犯罪行為により犯人が被害者から得た財産等(犯罪被害財 産)について,一定の場合にその没収・追徴を行うことができ,また,犯罪被害財産等による被害回 復給付金の支給に関する法律(平成 18 年法律第 87 号。第8編第2章第2節1項参照)により,没 収・追徴した犯罪被害財産や外国から譲与を受けたこれに相当する財産を用いて,被害者等に対し, 被害回復給付金が支給される。令和2年に被害回復給付金支給手続の開始決定が行われたのは 13 件 であり,開始決定時における給付資金総額は約5億 6,541 万円であった(官報による。)。 犯罪白書 2021 277

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4 被害回復分配金支払制度 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成 19 年法律第 133 号。第8編第2章第2節2項参照)は,預金口座等への振込を利用して行われた詐欺等の犯罪行 為の被害者に対する被害回復分配金の支払等のため,預金等債権の消滅手続及び被害回復分配金の支 第2章 刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑刑 払手続等を定めており,これにより,特殊詐欺等による財産的被害の迅速な回復が図られている。令 和2年度に金融機関から被害者に対して支払われた被害回復分配金の総額は,約 10 億 9,768 万円で あった(預金保険機構の資料による。)。 5 自動車損害賠償保障制度 自動車損害賠償保障法(昭和 30 年法律第 97 号)は,自動車の運行によって人の生命又は身体が害 された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより,被害者の保護を図ることなどを 目的としている。自動車損害賠償保障制度の中核となっているのは,自動車損害賠償責任保険及び自 動車損害賠償責任共済(以下この項において「自賠責保険等」という。)である。 さらに,自賠責保険等を補完するものとして,政府が行っている自動車損害賠償保障事業がある。 これは,加害者を特定できない「ひき逃げ事故」や有効な自賠責保険等が締結されていない「無保 険」 (無共済を含む。以下この項において同じ。)の自動車による事故の場合には,自賠責保険等によ る救済を受けられないため,政府が被害者に対して損害額をてん補するものであり,その保障金は, 同事業が行う損害のてん補の基準に基づき支払われる。令和元年度の自動車損害賠償保障事業による 第3節 保障金は,ひき逃げ事故について 447 人,無保険車による事故について 163 人に支払われた。支払 人身取引被害者保護 自動車局の資料による。)。 額は,死亡者一人当たり平均約 2,039 万円,負傷者一人当たり平均約 57 万円であった(国土交通省 6 地方公共団体による見舞金制度等 一部の地方公共団体は,犯罪被害者等に対する見舞金支給制度や生活資金の貸付制度を導入してい る。令和3年4月1日時点で,犯罪被害者等を対象とする見舞金支給制度を導入している地方公共団 体は,8都県,9指定都市及び 377 市区町村であり,貸付制度を導入している地方公共団体は,3 県及び 10 市区町であった(警察庁長官官房の資料による。)。 第3節 人身取引被害者保護 人身取引は重大な人権侵害であり,平成 26 年 12 月,犯罪対策閣僚会議により,総合的かつ包括的 な人身取引対策に取り組んでいくため,人身取引対策行動計画 2014 が策定され,労働搾取を目的と した人身取引の防止や男性も含む人身取引被害者に対する一時保護機能の提供等の保護機能の強化等 の施策が掲げられている。 発見された女性の人身取引被害者については,必要に応じ,婦人相談所が一時保護を行い,又は民 間シェルター等に一時保護を委託するなどして,その保護を行っており,令和元年度においては,婦 人相談所が一時保護を行った被害者数は 15 人であり,婦人相談所が民間シェルター等に一時保護を 委託した被害者は2人であった。なお,婦人相談所が民間シェルター等に人身取引被害者の一時保護 委託を実施するようになった平成 17 年度から令和元年度までに一時保護された人身取引被害者は, 累計 430 人である(厚生労働省子ども家庭局の資料による。)。また,外国人の人身取引被害者につ いては,被害者が不法残留等の入管法違反の状態にあっても,在留特別許可による法的地位の安定化 278 令和 3 年版 犯罪白書

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を図っており,令和2年には,入管法違反の状態にあった7人(平成 17 年以降の累計で 193 人)の 人身取引被害者全員に在留特別許可がなされた(出入国在留管理庁の資料による。)。 このほか,国際移住機関(IOM)は,警察,出入国在留管理庁,婦人相談所等と連携し,人身取 引被害者に対する帰国支援等の事業を行っており,令和2年には1か国 12 人(同事業が開始された 平成 17 年5月以降の累計で9か国 343 人)に対する帰国・社会復帰支援が行われた(国際移住機関 の資料による。)。 第6 編 犯罪被害者 犯罪白書 2021 279

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京都コングレス配布資料等 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 第7 編 京都コングレスロゴマーク 【画像提供:法務省大臣官房国際課】 会場となった国立京都国際会館 【写真提供:国立京都国際会館】 7編 京都コングレス 第 第1章 第2章 コングレスの概要 京都コングレス

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第 1章 第1章 コングレスの概要 第1節 1 コングレスの概要 コングレスとは コングレスの役割 国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス。United Nations Congress on Crime Prevention and Criminal Justice)は,5年に1度開催される犯罪防止及び刑事司法の分野における国際連合(以下 この編において「国連」という。 )最大規模の会議である。同会議の事務局は,国連薬物・犯罪事務 所(UNODC) (第1編第3章第1節参照)が務めている。 コングレスは,正式プログラムとしての全体会合及び委員会(ワークショップ)並びに正式プログ ラムと並行して開催される附属会合(コングレスにおける正式名称は「アンシラリーミーティング」 であるが, 「サイドイベント」という通称も用いられる。)により構成されており,犯罪防止及び刑事 第1節 司法の分野における専門家が世界の同分野の諸課題について議論しつつ,その知見を共有し,コミュ ニケーションを図ることで,様々な分野における国際協力を促進し,より安全な世界を目指して協働 コングレスとは することを目的としている。 また,コングレスでは,犯罪防止及び刑事司法の分野において,国際社会が直面している諸問題や 解決すべき喫緊の課題に対して,世界各国が協力して取り組むべき方策を取りまとめた「政治宣言」 が参加国の全会一致により採択される。 2 国連におけるコングレスの位置付け 国連においては,平成4年(1992 年)に経済社会理事会の下に機能委員会として設置された犯罪 防止刑事司法委員会(コミッション) (第2編第6章第1節参照)が,毎年,オーストリアのウィー ンで会合を開き,犯罪防止及び刑事司法の分野における政策決定を行っているところ,我が国は,設 立当初から同委員会のメンバー国に選出されており,毎年の会合に積極的に関与している。同委員会 の事務局は,UNODC が務めている。 コングレスは,コミッションの諮問機関として位置付けられているが,その実態としての役割分担 は,コングレスにおいて,政治宣言の採択等を通じて国連の犯罪防止及び刑事司法の分野における政 策の大綱が決定され,コミッションにおいて,決議案の採択等を通じてその具体化がなされる形と なっている。 第2節 1 コングレスの歴史 コングレス設立までの経緯 コングレスの起源は,弘化3年(1846 年)に現在のドイツのフランクフルトで開催された刑事司 法等に関する会議まで遡るとされている。そして,明治5年(1872 年),英国のロンドンで開催さ れた国際会議において,国際監獄委員会(IPC:International Prison Commission)が設立され, その後,同委員会の主催により継続的に国際会議が開催されるようになった。 国際監獄委員会は,第一次世界大戦後,国際連盟の関連機関となり,その後,大正 14 年(1925 年)から昭和 10 年(1935 年)までに3回の国際会議を開催したが,第二次世界大戦の勃発により, 282 令和 3 年版 犯罪白書

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国際会議の開催は中断を余儀なくされた。なお,この間に,同委員会は,国際刑法監獄委員会 (IPPC:International Penal and Penitentiary Commission)と名称を改めている。 第二次世界大戦の終結を経て,昭和 25 年(1950 年),オランダのハーグで国際刑法監獄委員会に よって国際会議が開催されたが,同年の国連総会において,同委員会の機能の大半を国連が引き継 ぎ,国連の下に新たにコングレスを開催することが決議された。 2 コングレスの変遷 昭和 30 年(1955 年),スイスのジュネーブにおいて,第1回コングレス(なお,第1回から第 10 回までの名称は「犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する国際連合会議」(United Nations Congress on the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders)であった。)が開催された。国際 刑法監獄委員会が開催する国際会議は官民を合わせた専門家会合の性格が強かったため,コングレス も同会議の性格を継承し,昭和 35 年(1960 年)の第2回コングレスから昭和 50 年(1975 年)の 第5回コングレスまでの4回では,本会議における投票権は政府代表のみに与えられたものの,分科 会については非政府組織(NGO)や個人参加者にも投票権が与えられるなど,学術的な色彩を帯び た会議であった。 昭和 55 年(1980 年)の第6回コングレスからは,本会議・分科会を問わず加盟国の政府代表の みに投票権があるとされ,その他の参加者はオブザーバーと位置付けられることとなり,決議の採択 を通じて政策決定を行う政府間の国際会議となった。 第7 編 そうしたところ,コングレスで採択される決議の数が増大し,その膨大な数の決議等をいかに実施 するかということが現実問題として取り上げられることとなった。最終的に,平成3年(1991 年) の国連総会の決議によって,新たに,経済社会理事会の機能委員会の一つとして,国連の犯罪防止及 び刑事司法の分野における主体的政策決定機関であるコミッションが創設され,コングレスはコミッ ションの諮問機関として再定義された。 その後,平成7年(1995 年)の第9回コングレスからは,コングレスで決議を採択することはな くなったが,全体会合に加えて,ワークショップが正式プログラムとなり,これらの正式プログラム 京都コングレス と並行してパネルディスカッション方式等の附属会合も開催されることとなった。このことから,コ ングレスは,それまでと比較して,政府間会議としての性格が薄れ,再び第5回コングレス以前の専 門家会合としての色彩が強い会議となった。 平成 10 年(1998 年)の国連総会決議により,平成 12 年(2000 年)の第 10 回コングレスからは, 上級会合(ハイレベルセグメント)が創設され,政治宣言が採択されることとなり,同コングレスで は,単一の政治宣言である「ウィーン宣言」が採択された。 その後,平成 14 年(2002 年)の国連総会決議により,コングレスにおける政治宣言の採択及び 上級会合の開催が恒久的なものとなり,コングレスがコミッションにおける政策の大綱について強い 影響力を及ぼす現在の形となった。 なお,昭和 30 年(1955 年)の第1回コングレスから直近の第 14 回コングレス(京都コングレス) までの開催状況は,7-1-2-1 表のとおりである。 犯罪白書 2021 283

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7-1-2-1 表 コングレス関連年表 第1章 コングレスの概要 第3節 コングレスの意義 回数 年 場所 第1回 1955 年 (昭和 30 年) ジュネーブ (スイス) 第2回 1960 年 (昭和 35 年) ロンドン (英国) 第3回 1965 年 ストックホルム 多くの国において犯罪・非行が増加する中,都市化を始めとする社会の変化と犯罪との関係 (昭和 40 年) (スウェーデン) について議論 第4回 1970 年 (昭和 45 年) 京都 (日本) 全ての国に対し,経済的・社会的開発を目指す場合に,犯罪防止施策を強化することを求め る宣言を採択 ~ヨーロッパ以外での開催は初 第5回 1975 年 (昭和 50 年) ジュネーブ (スイス) 「拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を受けることからの 全ての人の保護に関する宣言」を採択 第6回 1980 年 (昭和 55 年) 第7回 1985 年 (昭和 60 年) ミラノ (イタリア) 違法薬物の密輸及び組織的犯罪により国連加盟国の社会が不安定化する中,これらの犯罪を 抑制するための努力の重要性を指摘する「ミラノ行動計画」を採択するとともに,少年司法 運営に関する国連最低基準規則を採択 第8回 1990 年 (平成2年) ハバナ (キューバ) 国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)が第一案を起草した非拘禁措置に関する国連最 低基準規則(東京ルールズ)を採択 第9回 1995 年 (平成7年) カイロ (エジプト) 国際協力及び実務的技術支援による法の支配の強化のための更なる努力を国連加盟国に要請 する決議を採択 第 10 回 2000 年 ウィーン 人身取引,不法移民,銃器の違法な製造・取引,汚職・腐敗等を抑止するため,国連加盟国 (平成 12 年) (オーストリア) が更なる対策を実施することを宣言する「ウィーン宣言」を採択 第 11 回 2005 年 (平成 17 年) バンコク (タイ) 犯罪を防止するために,国際的な協力を更に強化する方向性を示す「バンコク宣言」を採択 ~第 11 回コングレスから,会議の名称が「犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する国際連合 会議」から「国連犯罪防止刑事司法会議」に変更 第 12 回 2010 年 (平成 22 年) サルバドール (ブラジル) 犯罪防止・刑事司法の多様な分野における国際協力の重要性を強調し,国連加盟国に対し, 組織犯罪,テロ,個人情報を悪用した犯罪,環境犯罪等への対策の強化を提起する「サルバ ドール宣言」を採択 第 13 回 2015 年 (平成 27 年) ドーハ (カタール) 持続可能な開発のため,全ての人々に司法へのアクセスを提供し,あらゆるレベルにおいて 効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築することを目指し,平和で包摂的な社会を促進 することの重要性を強調する「ドーハ宣言」を採択するとともに,第 14 回コングレスを日 本で開催することを決定 2020 年 (令和2年) 2021 年 (令和3年) 第3節 被拘禁者処遇最低基準規則を採択 少年非行の防止のために,警察に専門の部署を設けることが有効であるとする認識を共有す る決議を採択 カラカス 国連加盟国が人権を尊重しつつ,それぞれの社会的,文化的,政治的及び経済的状況を踏ま (ベネズエラ) えて,犯罪防止及び犯罪者の処遇に当たることの重要性を指摘する「カラカス宣言」を採択 2017 年 (平成 29 年) 第 14 回 主な出来事 8月 15 日,第 14 回コングレスを京都において開催することを閣議了解 京都 (日本) 3月 21 日,新型コロナウイルス感染症の世界的な感染状況等に鑑み,4月 20 日からの開催 を予定していた第 14 回コングレスの開催を延期することを国連が発表 3月7日から 12 日まで,第 14 回コングレスが京都で開催され,同月7日,「京都宣言」を 採択 コングレスの意義 これまでにコングレスで議論や採択された国連の基準規則,宣言及び決議(以下この章において 「基準規則等」という。)は,後に,国連総会や経済社会理事会において採択あるいは承認を受け,各 国にその履行が促されている。このことは,コングレスが,本章第1節1項で示した目的どおりに機 能し,世界の犯罪防止及び刑事司法の分野に大きな影響を与えていることを示している。 コングレスで採択等された基準規則等のうち世界の犯罪防止及び刑事司法の分野に大きな影響を与 えた主なものとして,以下のものがある。 1 国連被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデラ・ルールズ) 昭和 30 年(1955 年)にスイスのジュネーブで開催された第1回コングレスにおいて,被拘禁者 処遇最低基準規則が採択された。その内容は,刑事施設の管理全般に関するものであり,同基準規則 は,全世界の被拘禁者の処遇に計り知れない影響を及ぼしてきた。同基準規則の採択から半世紀が過 ぎて見直しの気運が生じ,数年の議論を経て,国連被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデ ラ・ルールズ)としてまとめられ,平成 27 年(2015 年)の第 13 回コングレスで採択された政治宣 言には,同基準規則を歓迎するとともにコミッションが同基準規則について具体的行動を取ることを 284 令和 3 年版 犯罪白書

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期待する旨の文言が盛り込まれた。これを受けて,同基準規則は,その後のコミッション及び国連総 会で採択された。その内容は,被拘禁者ファイルの管理,内部・外部による監査,一定水準の居住設 備・衣類等の保障,医療の保障,残虐な懲罰の禁止,不服申立ての権利,家族等との通信・面会の権 利等あらゆる種類の被拘禁者の処遇及び施設の管理についての最低限の基準を示すものである。 2  問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を受けること 拷 からの全ての人の保護に関する宣言 昭和 50 年(1975 年)にスイスのジュネーブで開催された第5回コングレスにおいて,拷問及び 他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を受けることからの全ての人の保護に関 する宣言の採択を国連総会に提言する決議が採択された。その後,同宣言を基として,昭和 59 年 (1984 年)の国連総会において,拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷 つける取扱い又は刑罰に関する条約)が採択された。 3 少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ) 昭和 60 年(1985 年)にイタリアのミラノで開催された第7回コングレスにおいて採択された国 連の基準規則であり,少年司法の運営に関する一般原則,捜査・検察,審判・処分,施設外処遇,施 設内処遇,調査・計画等について網羅的に規定されている。 第7 編 4 非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルールズ) 平成2年(1990 年)にキューバのハバナで開催された第8回コングレスにおいて採択された国連 の基準規則である。非拘禁措置に関する国連最低基準規則における「非拘禁措置」とは,犯罪者の社 会内処遇と,未決段階における身柄拘束を回避するためのダイバージョン措置の双方を含む概念であ る。同基準規則は,様々な形態の非拘禁措置の在り方についてのガイドラインと基本を示すものであ り,刑事施設の過剰拘禁から生ずる問題を軽減し,かつ犯罪者の社会復帰を促すために,社会内で実 京都コングレス 施可能な措置を拡充することを通して,拘禁の使用を減少させ,刑事司法運営を合理化することを目 指すものである。 5 バンコク宣言 平成 17 年(2005 年)にタイのバンコクで開催された第 11 回コングレスにおいて採択された宣言 であり,国連加盟国が,犯罪人引渡しや捜査共助を含めた分野に関し,犯罪・テロ対策に関する国際 協力の改善を図る意思を再確認するとともに,各国に対し,組織犯罪,テロ,腐敗,経済・金融犯罪 等への対策を呼びかける内容となっている。 6 サルバドール宣言 平成 22 年(2010 年)にブラジルのサルバドールで開催された第 12 回コングレスにおいて採択さ れた宣言であり,犯罪予防・刑事司法の多様な分野における国際協力の重要性が強調されるととも に,各国に対し,組織犯罪,テロ,腐敗,経済・ID 犯罪(クレジットカード詐欺,偽造変造旅券行 使等の ID(個人識別情報)の悪用に係る犯罪),環境犯罪等への対策の強化を求める内容となってい る。 犯罪白書 2021 285

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7 ドーハ宣言 平成 27 年(2015 年)にカタールのドーハで開催された第 13 回コングレスにおいて採択された宣 言である。同コングレスでは, 「犯罪防止・刑事司法のより広い国連アジェンダへの統合」をテーマ に議論が行われ,安全,公正及び法の支配の関連性とより公平でより良い世界の実現に重点を置く 第1章 コングレスの概要 「ドーハ宣言」が採択された。同宣言により,第 14 回コングレスを日本で開催することも決定され た。 第4節 1 コングレスに対する日本の貢献 日本におけるコングレスの開催 我が国では,これまでに第4回コングレス(昭和 45 年(1970 年)8月 17 日から同月 26 日までの 10 日間)及び第 14 回コングレス(令和3年(2021 年) 第4節 3月7日から同月 12 日までの6日間)の2回のコン グレスが,いずれも京都市の国立京都国際会館を会場 コングレスに対する日本の貢献 として開催された。第4回コングレスは,ヨーロッパ 以外の国で初めて開催されたコングレスであり,コン グレスにおける最初の政治宣言といえる「総会宣言」 が採択された。同宣言は,①各国政府に対し,各国が 計画している経済的・社会的開発の枠の中で,犯罪防 止の施策を調整し,かつ,強化するための効果的な措 第4回コングレス(昭和 45 年(1970 年))の様子 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 置をとるよう要請する,②国連その他の国際機関に対し,犯罪防止の分野における国際協力の強化に 高い優先権を与え,特に,犯罪と非行の防止及び規制に対し,施策を発展させるため効果的な技術援 助を要請する国に対し,かかる援助を保障するよう促す,③犯罪防止の分野に,より直接的に,ま た,より意図的に関与していくため,一層効果的な措置をとるのに必要な行政上,専門上及び技術上 の機構の在り方に特に留意するよう勧告する,といった内容であった(第 14 回コングレスについて は,本編第2章参照)。 2 コングレスで採択された基準規則等への関与 我が国は,国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI) (第2編第6章第5節1項参照)を中心に, コングレスで採択された基準規則等の作成にも関与してきた。第7回コングレスにおいて採択された 少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ)(本章第3節3項参照)の原案は, UNAFEI が作成した。UNAFEI は,その検討・審議に関する専門家会合をホストし,必要な調査・ 研究を実施するなど,第7回コングレスでの採択の前提となる事前の準備を積極的に推進した。な お,同基準規則は,平成2年(1990 年)の第8回コングレスで採択された「少年非行の防止のため の国連ガイドライン(リヤド・ガイドライン)」及び「自由を奪われた少年の保護に関する国連規則」 等と共に,少年司法の適切な運営に大いに貢献している。 第8回コングレスにおいて採択された非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルールズ)(本 章第3節4項参照)は,国連事務当局が,同基準規則の起草作業への協力を UNAFEI に求めたこと に端を発している。UNAFEI は,昭和 62 年(1987 年)及び昭和 63 年(1988 年)の国際研修等の 場を利用して,研修参加者,教官及び客員専門家間で討議を重ねて,同基準規則の土台となる草案を 286 令和 3 年版 犯罪白書

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作成した。同草案は,国連内の所定の修正を経て,第8回コングレスに提出・採択され,更に平成2 年(1990 年)の国連総会決議で採択され,正式に国連の基準規則となった。このときの総会決議は, 前文で UNAFEI の貢献に対する謝辞を述べるとともに,同基準規則を「東京ルールズ」と呼称する ものと定めている。なお,東京ルールズが目指す非拘禁措置の活用は,刑事施設の過剰収容に悩む 国々にとって,その緩和へ向け,拘禁措置に代わる措置にもなり得るものであるとともに,犯罪者の 改善更生を促進することに重点を置いた社会内処遇の積極的な活用にも道を開くものであるとされて いる。 3 UNAFEI によるワークショップの企画運営 UNAFEI は,第 10 回コングレス以降,毎回,正式プログラムであるワークショップの一つを分担 し,その準備と企画運営を担ってきた。これまでに,UNAFEI が企画運営したワークショップは, 「コンピュータ・ネットワークに関連する犯罪」(第 10 回),「マネーロンダリングを含む経済犯罪対 策」 (第 11 回),「矯正施設における過剰収容に対する戦略とベストプラクティス」(第 12 回),「女性 犯罪者の処遇及び改善更生」 (第 13 回)及び「再犯防止:リスクの特定とその解決策」 (第 14 回) (本 編第2章第2節1項コラム6参照)である。これらのワークショップにおける発表・討論の内容は, 成果物たる報告書にまとめられ,広く配布されている。 第7 編 京都コングレス 犯罪白書 2021 287

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第 2章 京都コングレス 令和3年(2021 年)3月7日から同月 12 日までの6日間にわたり,京都市の国立京都国際会館 第2章 京都コングレス において,第 14 回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催された。昭和 45 年(1970 年)には,京都市が,ヨーロッパの都市以外では初めて開催都市となって,第4回コングレスが開催 されており,京都コングレスは,第4回コングレスからおよそ 50 年ぶりの我が国での開催となった (7-1-2-1 表参照)。 第1節 1 京都コングレスの概要 京都コングレス開催までの経緯 第1節 平成 27 年(2015 年)4月,カタールのドーハにおいて,第 13 回コングレス(ドーハコングレス) が開催され,我が国からは,検事総長を団長とする代表団が参加した。ドーハコングレスでは,「犯 罪防止・刑事司法のより広い国連アジェンダへの統合」をテーマに活発な議論が行われ,第 14 回コ 京都コングレスの概要 ングレスまでの5年間に国際社会が取り組むべき犯罪防止・刑事司法分野の対策や協力の方向性を示 す「ドーハ宣言」 (本編第1章第3節7項参照)が採択された。また,同宣言により,次回(2020 年) の第 14 回コングレスが日本で開催されることも決定した。ドーハコングレスの閉会式では,我が国 法務大臣のビデオメッセージが議場で上映され,ドーハ宣言に基づく新たな責務を果たしていくこ と,2020 年の第 14 回コングレスの日本開催支持に感謝すること及び世界中からの参加者の来訪を 心から歓迎することを内容とするメッセージが発信された。 その後,平成 29 年(2017 年)8月,第 14 回コングレスを京都において開催することが閣議了解 され,国連総会でも承認された。 2 京都コングレスの全体テーマ等 京都コングレスの全体テーマは, 「2030 アジェンダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の 支配の推進」であり,国際社会が直面する組織犯罪,腐敗やテロ等の脅威に効果的に対処するための 行動指針の策定に向けて,様々な議論がなされた。7-2-1-1 表は,京都コングレスの全体テーマ等を まとめたものである。なお,「2030 アジェンダ」とは,平成 27 年(2015 年)9月に開催された国 連サミットで採択された行動計画「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」のことであり,持続 可能な開発を目指すために 2030 年までに実施すべき国際目標として,17 の目標(ゴール)及び 169 のターゲットから構成される「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」 が定められている。 288 令和 3 年版 犯罪白書

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7-2-1-1 表 京都コングレス全体テーマ等 全体テーマ 2030 アジェンダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の支配の推進 議 題 1. 社会的・経済的発展に向けた包括的な犯罪防止戦略 ワークショップトピック (a) エビデンスに基づいた犯罪防止:効果的なプラクティス を支える統計,指標及び評価 2. 刑事司法システムが直面する課題に対する統合的なアプ (b) 再犯防止:リスクの特定とその解決策 ローチ 3. 法の支配の促進に向けた各国政府による多面的アプロー (c) 犯罪に強い社会を作る手掛かりとなる教育と青少年の参 チ。とりわけ,ドーハ宣言に沿って 加 ・全ての人々に司法へのアクセスを提供すること ・効果的で説明責任のある公平かつ包摂的な機関を構築す ること ・文化の独自性を尊重しつつ法遵守の文化を醸成するこ とを含む社会的,教育的その他の関連方策を検討する こと 4. あらゆる形態の犯罪を防止し対処するための国際協力及 (d) 最新の犯罪傾向,近年の進展及び新たな解決策。とりわ け,犯罪の手段としての,及び犯罪への対抗手段として び技術支援,とりわけ (a)あらゆる形態のテロリズム の新たなテクノロジー (b)新興の犯罪形態 コロナ禍における新たな形の国際会議 第7 編 3 当初,京都コングレスは,令和2年(2020 年)4月 20 日から開催される予定であった。しかし ながら,同年3月,新型コロナウイルス感染症の世界的な感染状況等に鑑み,開催が延期されること となった。 その後,同年7月,令和3年(2021 年)3月7日から6日間の日程で開催されることが 決定された。 京都コングレスは,新型コロナウイルス感染症の感染拡大後,国内で初めて開催される大規模な国 際会議であり,また,国連にとっても国連本部所在地以外で初めて開催される大規模国際会議であっ 京都コングレス たことから,同感染症の感染防止のための対策が入念に検討された。そして,開催方式については, オンライン会議システムを幅広く導入し,オンライン参加と会場参加を併用する,いわゆるハイブ リッド方式とすることが決定された。 国外からの参加者に対しては,当時は特段の事情が認められる場合を除いて原則として入国を許可 しないこととなっていたことを踏まえ,会議運営に必要不可欠な国連職員と閣僚級以上を含む各国政 府等代表団に限って例外的に入国を認めた上で,出発前の検査,本邦入国時の検査と陰性が確認され るまでの空港待機,移動には専用のシャトルバスを利用して公共交通機関の使用を禁止,宿泊先の指 定と一般客との動線を分けることによる接触防止等の厳格な措置が講じられた。また,国内からの参 加者についても,来場前の検査を求めるなどの措置が講じられた。 会場内では,国連と日本政府の双方が医療専門家を入れた対策チームを編成し,チーム間で綿密な 協議を重ねて策定した感染症対策ガイドライン等に従った厳格な感染予防措置が講じられ,入場口で の検温スクリーニング,会場全体及び各会議室への入場者制限を含むソーシャルディスタンスの確 保,来出場者の記録管理,24 時間英語対応可能な医療チームの常駐等の万全の感染症対策が徹底さ れた。 このような厳格な体制の下での開催であったが,京都コングレスは,オンライン参加者と会場参加 者を合わせると,過去最多となる 152 の国と地域から約 5,600 人の参加登録を得て開催された。ま た,会場参加者について,京都コングレスへの参加に関連して新型コロナウイルス感染症に感染した とされる事例は,報告されていない。 犯罪白書 2021 289

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4 京都コングレスの成果 (1)成果文書としての政治宣言 京都コングレスでは,成果文書として「持続可能な開発のための 2030 アジェン ダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の支配の推進に関する京都宣言」 ( 「京 第2章 京都コングレス 都宣言」 )という政治宣言が全会一致で採択された。同宣言は,国際社会が犯罪防 止・刑事司法の分野において取り組むべき内容を取りまとめたものであり,総論部 【京都宣言(和文)】 分と,京都コングレスの四つの議題に沿って構成された各論部分から成る。 総論部分は,京都宣言全体に通じるメッセージを示すものであり,国際協調の重要性や基本的人権 の擁護といった従来の政治宣言でも確認されてきたことが記載されているほか,京都宣言に特徴的な 内容として,法の支配と持続可能な発展の相互補強性,犯罪防止のためのマルチステークホルダー・ パートナーシップの推進,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が刑事司法に及ぼす影響への懸念と それへの対応に関する国際社会のコミットメント等が記載されている。各論部分は,具体的な行動目 標を示しており,第1章の「犯罪防止の推進」では,「根本原因を含む犯罪の原因への対処」,「エビ 第1節 デンス(科学的な根拠)に基づく犯罪防止」,「犯罪の経済的側面への対処」,「地域の状況を踏まえた テーラーメードの犯罪防止戦略」,「犯罪防止におけるジェンダーの視点の主流化」,「犯罪防止におけ る子供と若者」及び「犯罪防止のための若者のエンパワーメント(能力強化)」に関する行動が,第 京都コングレスの概要 2章「刑事司法制度の推進」では, 「被害者の権利の保護と証人及び通報者の保護」,「刑務所の状況 の改善」 , 「更生と社会復帰を通じた再犯防止」,「刑事司法制度におけるジェンダーの視点の主流化」, 「刑事司法制度と接点を持った子供及び若者の脆弱性への対処」及び「犯罪捜査手続の向上」に関す る行動が,第3章「法の支配の推進」では,「司法アクセスと法の下での平等な取扱い」,「法律扶助 へのアクセス」,「国内の量刑政策」,「効果的で,説明責任があり,公平で,包摂的な機関」,「効果的 な腐敗防止の取組」及び「社会的,教育的その他の方策」に関する行動が,第4章「あらゆる形態の 犯罪を防止し,それに対処するための国際協力と技術支援の推進」では,「能力構築と技術支援を含 む国際協力」 ,「犯罪者から犯罪収益を剥奪するための国際協力」,「あらゆる形態のテロ」及び「新 規,新興及び進化形態の犯罪」に関する行動がそれぞれ記載されている。 今後,国際社会が京都宣言の内容を実施していくことが重要であり,我が国は,同宣言の着実な実 施に向け,リーダーシップを発揮していくことが期待されている。 (2)日本政府としての発信 日本政府は,京都コングレスの全体テーマ,四つの議題及び各議題に対応したワークショップト ピックに沿って,我が国の犯罪防止・刑事司法分野の取組等を紹介するとともに,国際社会に対する 提言と我が国のコミットメントを発信するものとして,政府公式のステートメントであるナショナル ステートメントを作成し,京都コングレスに提出した。 京都コングレスでは,我が国の法務大臣が議長に選任され,開会式及び閉会式において,それぞれ オープニングステートメント及びクロージングステートメントを行った。開会式の途中で実施された セレモニアルセグメントでは,高円宮妃殿下,内閣総理大臣及び検事総長がステートメントを行い, ハイレベルセグメントでは,法務事務次官が,京都宣言について,「マルチステークホルダー・パー トナーシップ」,「国際協力の推進」及び「若者のエンパワーメント」の視点を強調する旨の日本代表 団長ステートメントを行った。引き続いて行われた全体会合の各議題では,「社会的・経済的発展に 向けた包括的な犯罪防止戦略」において警察庁長官官房審議官が,「刑事司法システムが直面する課 題に対する統合的なアプローチ」及び「法の支配の促進に向けた各国政府による多面的なアプロー チ」において法務省大臣官房審議官が, 「あらゆる形態の犯罪を防止し対処するための国際協力及び 技術支援」において法務省法務総合研究所長が,それぞれステートメントを行った。 290 令和 3 年版 犯罪白書

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開会式の様子 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 第2節 京都コングレスにおける各種イベント 京都コングレスでは,正式プログラムである全体会合及びワークショップに加えて,各国政府,国 際機関,NGO 等が,京都コングレスにおけるテーマに関連して,それぞれが重視する取組,発信し 第7 編 たいテーマ等について,パネルディスカッション,プレゼンテーション等の自由な形式で行う各種イ ベントが行われた。その一例として,法務省保護局及び国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI) (第2編第6章第5節1項参照)の主催により,世界保護司会議が開催され,保護司を始めとする地 域ボランティアの国際的認知の向上,世界各国における地域ボランティアの制度の確立及び国連の国 際デーとしての「世界保護司デー」の設立等に取り組んでいくことなどを盛り込んだ「京都保護司宣 言」が採択された(本節コラム4参照)。 また,京都コングレスが開催される前月の令和3年(2021 年)2月には,京都コングレス・ユー 京都コングレス スフォーラム(本節コラム5参照)が開催された。 コラム4 世界保護司会議と京都保護司宣言 令和3年(2021 年)3月7日,国立京都国際会館において,京都コングレスのアンシラ リーミーティングとして,「世界保護司会議」が開催され,その成果文書として,「京都保護 司宣言」が採択された。 犯罪者や非行少年の再犯防止・改善更生を図るためには,地域ボランティアの協力が極め て重要である。多くの国々には,犯罪者等の社会復帰のための官民連携プログラムがあり, 幾つかの国々では,保護司を始めとする地域ボランティアが犯罪者等の社会復帰を支えてい る。その中でも,日本の保護司制度は,アジアやアフリカの地域ボランティア制度の発展に も多大な影響を与えてきた。これまでもアジアを中心とする各国の保護司等が一堂に会する 国際会議として,平成 26 年(2014 年)と平成 29 年(2017 年)にアジア保護司会議が開催 され,各国の保護司や更生保護に関する制度の現状や課題等について意見交換がなされ,保 護司の国際的なネットワークを更に広めていくことを内容とする「東京宣言」が採択された 経緯がある。 世界保護司会議は,これら2回にわたるアジア保護司会議を土台として実現したものであ 犯罪白書 2021 291

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り,世界各国の実務家等の参加を得て,保護司を始めとする地域ボランティアが再犯防止の 取組に参画することの有用性や,これらの制度を広く世界に普及していくための方策等につ いて議論することを目的として開催されたものである。 世 界 保 護 司 会 議 で は, 我 が 国 の 法 務 大 臣 に よ る 歓 迎 挨 拶, 国 連 薬 物・ 犯 罪 事 務 所 第2章 京都コングレス (UNODC) (第1編第3章第1節参照)事務局長による開会挨拶,更生保護法人全国保護司 連盟理事長からのビデオメッセージ,タイ法務研究所次長によるゲストスピーチ,国際矯正 司法心理学協会前会長による基調講演に続いて,法務省保護局長から,京都保護司宣言の趣 旨説明がなされた。さらに,「罪を犯した人の立ち直りを支える地域ボランティアの有用性」 をテーマにパネルディスカッションが行われ,タイ,フィリピン,日本,ケニア,カナダ及 び英国(欧州保護観察連合)のパネリストから,それぞれの国や地域における地域ボラン ティアの役割や実際の活動について発表が行われた。我が国からは,栃木県保護司会連合会 会長が参加し,自らの保護司としての経験を踏まえ,保護司活動の基盤となる地域からの理 解や協力を得ることの重要性等について発表が行われた。これに続き,「京都保護司宣言」が 第2節 採択され,UNODC 司法課長による挨拶をもって閉会した。 「京都保護司宣言」は,刑事司法や犯罪者処遇の在り方,犯罪者の社会復帰を支える地域ボ ランティアの制度的発展のあるべき方向性を見据え,今後,国際社会や国連に対し,その協 京都コングレスにおける各種イベント 力とイニシアチブの発揮を求めていくべき事項,例えば,「再犯防止のために地域ボランティ アを活用する国連準則(モデル戦略)」を策定すること,「罪を犯した人の立ち直りを支える 地域ボランティア国際デー」(世界保護司デー)を設立することなどを提案している。我が国 としては,京都保護司宣言の趣旨を踏まえ,「HOGOSHI」の輪を世界に広げ,犯罪者の社 会復帰と再犯防止を推進し,誰一人取り残さない包摂的な社会を実現することに取り組んで いくこととしている。 【京都保護司宣言(和文)】 世界保護司会議の様子 【写真提供:法務省保護局】 コラム5 京都コングレス・ユースフォーラム ユースフォーラムは,世界のユース(若者)がコングレスの議題に関連したテーマについ て議論を行うものであり,第 13 回コングレスで初めて開催された。京都コングレスでも,令 和3年(2021 年)2月 27 日及び同月 28 日の2日間,京都コングレス・ユースフォーラム (以下本コラムにおいて「ユースフォーラム」という。)が開催された。 ユースフォーラムは,京都コングレスと同様に,新型コロナウイルス感染症対策を講じた 上で,会場参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド方式で開催され,国内外の学 292 令和 3 年版 犯罪白書

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生等約 150 人が参加した。ユースフォーラムでは,「安全・安心な社会の実現へ~SDGs の達 成に向けた私たちの取組~」が全体テーマとされ,参加者は,「青少年犯罪の予防・罪を犯し た青少年の社会復帰における若者の役割」,「法遵守の文化を醸成するための若者の教育」, 「安全なネット社会に向けた若者の責任」の三つの個別テーマについて議論し,その結果は, 京都コングレスに向けた「勧告」として採択された。本コラムでは,同勧告の主な内容を紹 介する。 1 青少年犯罪の予防・罪を犯した青少年の社会復帰における若者の役割 (1)社会の中のアクターたち 政府は,青少年の犯罪予防・社会復帰を実践・発展させるため,地方公共団体,家族,地 域コミュニティを始めとする様々な関係者・関係機関のパートナーシップの強化を図るべき である。 (2)更生保護を促進させる施策 政府は,矯正施設及びその他の施設,社会・コミュニティにおける処遇に際し,更生保護 を促進する方策を実施するよう最大限努力すべきである。 (3)社会的蔑視・偏見の防止・除去 政府は,「誰一人取り残さない」という基本理念の下,法に抵触した青少年についても公平 に扱い,彼らのプライバシーを保護し,健康・教育・人格の発達・家族や同世代の者たちと 第7 編 のつながりづくりの支援など特段のニーズを捉えることや,青少年の社会復帰について強い メッセージを発信すべきである。 (4)罪を犯した青少年の社会復帰のための意識啓発 コミュニティは,法に抵触した青少年を,偏見や差別等なく受け入れることが重要である 点を理解すべきである。 (5)新型コロナウイルスへの対処 政府は,ロックダウンや外部組織からアクセス制限がなされているなどの事情のため,身 京都コングレス 体的ないし心理的な支援や家族との連絡,法的救済といった基本的なニーズにアクセスでき ない若者たちへの支援の必要性を特に考慮に入れるべきである。 (6)犯罪・再犯防止プログラム 国連薬物・犯罪事務所(UNODC)(第1編第3章第1節参照),政府間機関(IGO),教 育機関等は,犯罪・再犯防止の効果的な方策について精査すべきである。 2 法遵守の文化を醸成するための若者の教育 (1)法の支配に関する教育の強化 全ての教育システムにおいて,法の支配についての学びを涵養するようなカリキュラムが 編成されるべきである。 (2)法へのアクセス可能性 法律用語は複雑で,しばしば理解が困難であることを認識し,全ての人のために法律をよ り身近な言葉に言い換えるべきである。 (3)マスメディアとソーシャルメディア マスメディアとソーシャルメディアに対する規制は,特定の基準を設けることや,各メ ディアが配信内容に対して,説明責任を負うことにより,実施されるべきである。 (4)市民の信頼,強固な制度,説明責任 政府は,透明性と説明責任を社会の基盤とし,その意思決定プロセスの中立性と少数者に 犯罪白書 2021 293

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対する機会の均等性を保障すべきである。 (5)差別及び社会的連結 青少年の犯罪への関与の根本的な原因とそれを誘発する環境に対処するための青少年に向 けた公共政策と社会的介入策を検討すべきである。 第2章 京都コングレス (6)社会復帰プログラム 過去に犯罪・違法行為を犯した人が,自分の経験談や犯罪行為をやめた理由,どのように 適正に社会復帰できたかを語る場を提供すべきである。 3 安全なネット社会に向けた若者の責任 (1)防止措置 インターネット上のコンテンツや行為による被害に対処するための規制手段及び革新的な ツールを更に開発する必要性を強調する。 (2)被害者の保護を含む法的対応と国内的措置 政府は,ネットを経由した児童の性的被害や画像を用いた虐待,テロを目的とするオンラ 第2節 イン求人,なりすまし行為,子供を狙ったサイバー犯罪,ヘイトクライム,オンライン賭博 等の情報通信技術(以下本コラムにおいて「ICT」という。 )を用いた犯罪の効果的な予防, 京都コングレスにおける各種イベント 捜査及び訴追のための法規制を整備するなど,あらゆる措置を講ずるべきである。 (3)法執行機関 人工知能(AI)が法を実現する強力なツールとなる可能性があることを強調しつつも,悪 意ある目的で使用することによる負の影響についても留意すべきである。 (4)国際協力 ICT を使用した犯罪は国境を越える性質を有するため,そのような犯罪と戦うための国際 協力を促進し,現在及び将来の国際的な合意に基づき犯罪者を適切に処罰する合理的な措置 と施策を支持する。 (5)官民連携 政府に対し,ICT の犯罪への悪用がもたらす課題に対処するため,官民が一層連携するこ とを求める。 (6)能力構築 各国及び民間のステークホルダーに対し,ICT の利用によって拡大する犯罪を防止・撲滅 するための国や地域による努力を支援する能力を構築するため,継続的かつ持続可能な資金 援助を行うよう求める。 ユースフォーラムでの議論の様子 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 294 令和 3 年版 犯罪白書

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1 全体会合・ワークショップ 「2030 アジェンダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の支配の推進」を議題とするハイレ ベルセグメントでは,過去最多となる 90 の国と地域の閣僚級によって,会場内又はオンラインでの ステートメント,あるいは録画済みのビデオメッセージの再生によるステートメントが行われた。そ の後,全体会合において,発表・討議及び四つのワークショップが実施された(7-2-1-1 表参照。ま た,同表ワークショップトピックの(b) (ワークショップ2)については,本節コラム6参照)。 第7 編 全体会合の様子 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 コラム6 ワークショップ2「再犯防止:リスクの特定とその解決策」 国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI) (第2編第6章第5節1項参照)は,国連犯罪 京都コングレス 防止・刑事司法プログラム・ネットワーク機関(PNI)の一つとして,第 10 回コングレス以 降,毎回,正式プログラムであるワークショップの一つを分担し,その準備と企画運営を 担ってきた(本編第1章第4節3項参照)。UNAFEI は,京都コングレスでも,国連薬物・ 犯罪事務所(UNODC)及びタイ法務研究所(TIJ)と協働し,四つのワークショップのう ちの一つ(ワークショップ2)を担当した。本コラムでは,同ワークショップについて,全 体の概要,基調講演及びパネルディスカッション(参加各国の発表)の内容を紹介する。 1 全体の概要 本ワークショップは,令和3年(2021 年)3月8日及び翌9日の2日間にわたり,いわ ゆるハイブリッド方式によって行われた。本ワークショップのタイトルは「再犯防止:リス クの特定とその解決策」であり,これは,京都コングレスの全体会合の議題にある「刑事司 法システムが直面する課題に対する統合的なアプローチ」(7-2-1-1 表参照)に対応するもの であった。パネルディスカッションのモデレーターは,UNAFEI 所長が務めた。冒頭に, TIJ のキティポン・キタヤラック前事務局長から,本ワークショップは再犯につながる要因 を明らかにする絶好の機会になるとの挨拶がなされるとともに,処遇プログラムの有効性を 確保するためのベストプラクティスを検討することへの期待が示された。その上で,英国グ ラスゴー大学教授のファーガス・マクニール博士による基調講演が行われ,三つの議題によ るパネルディスカッションに移った。 犯罪白書 2021 295

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第2章 京都コングレス ワークショップ2の様子 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 2 基調講演1 ファーガス・マクニール博士は,再犯防止は国の責務として行われるべきところ,現在世 第2節 界で見られる「重罰・これに伴う社会からの疎外・それを原因とする再犯」が負の拡大循環 となっていること,刑罰よりも,対話や話合い,あるいは実用的な支援の方が再犯防止に有 京都コングレスにおける各種イベント 益であると実証されており,刑罰が不可欠な場合であっても,制限的で,罪刑の均衡に考慮 し,社会復帰に有益となるものである必要があることなどに触れた。そして,再犯防止に役 立つ処遇モデルとして,RNR(リスク,ニード及び反応性)原則やグッドライフ・モデル (GLM)を紹介した。加えて,犯罪者のデシスタンス(犯罪からの離脱)のためには,社会 との接点や社会資源の活用が重要であり,生活に根差す支援や対象者の変化を社会が歓迎す る環境の醸成が必要であること,犯罪者にとって改善のきっかけが提供される場とするため, 刑事施設の適切な運営,具体的には,受刑者の改善更生に向けた取組の実施,刑事施設の組 織・運営の透明性の確保,刑事施設職員の人間中心主義の考え,高い職業意識と技術等が必 要であることなどを説いた。 3 パネルディスカッション (1)パネル1: ア 社会復帰に適した刑務所環境の整備 国連薬物・犯罪事務所(UNODC) (犯罪防止・刑事司法オフィサー) 中央アジアの刑事施設の職員に対し,受刑者を人として尊重することなどを内容とする教 育・訓練を実施したことで,受刑者の社会復帰を促進するとともに刑事施設の安全性が向上 したという事例を紹介した。 イ ナミビア(矯正局副長官) RNR 原則及びグッドライフ・モデルを採用し,認知行動療法を行っていること,効果的な 処遇のために少人数にグループ化して,職員とのやり取りを重視し,受刑者の改善の兆しを 早期に把握するように努めていることなどを紹介した。 ウ アルゼンチン(連邦矯正局前局長) アルゼンチンの刑事施設内における汚職に対処するための取組として,汚職のない環境こ そが受刑者の改善更生に有益であるとの視点から,厳格に処罰することとした上で,予防措 置を講じたことを紹介した。 エ ノルウェー(矯正局副局長) 普通の社会生活と同様の生活を施設内でも実現することを目指すノーマリティ(正常化・ 標準化)政策の下,警備的側面を最小限に抑え,医療,教育,雇用,図書サービス等につい 296 令和 3 年版 犯罪白書

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て,一般住民と同様の形で受けられることとしていることなどを紹介した。 (2)パネル2: ア デシスタンスに寄与する社会内における処遇・介入等のアプローチ 基調講演2 TIJ 元特別顧問であるマッティ・ヨッツェン博士は,パネル2の基調講演において,重大 な犯罪に対しては拘禁刑が必要であるものの,刑事施設の過剰収容,資源の不足といった状 況下では,拘禁刑は犯罪の伝播の温床以外の何ものでもなく,更生を促すためには,むしろ 社会内処遇を活用する方が有益であることなどを発表した。 イ カナダ(仮釈放委員会長) 仮釈放後,円滑に社会内処遇に移行するために,刑事手続を社会に公開し,また,啓発活 動を行うことにより,社会の理解と関与を得る努力をしていることなどを紹介した。 ウ クロアチア(大臣補佐官) EU の支援を受けて制定された保護観察に関する法律について,国民の支持を得るために, 段階的に全国に展開する手法を採用したことなどを紹介した。 エ ケニア(高等裁判所裁判官) ケニアの少年司法には,刑事司法機関,児童保護機関等多くの機関が関与していたが,職 員の知識・経験の欠如,各機関の協力体制の欠如等の問題があったため,UNAFEI の支援を 受け,関係機関における統合的なアプローチに基づく能力開発プログラムを計画的に実施し たことなどを紹介した。 フィリピン(保護局前局長) 第7 編 オ フィリピンの地域社会の伝統に根差した最小の行政単位であるバランガイの長を議長とし て地元住民で構成される調停委員会が存在し,当事者がその中から推薦した3人に,犯罪者, 被害者及びそれらの家族,地域ボランティア等を加えたパネルを設置し,話合いを行いなが ら事件の解決を図るという,修復的司法に似た制度を紹介した。 (3)パネル3: 犯罪者の社会復帰・社会再統合に向けた継続的支援やサービスを確保する ための多角的アプローチ 京都コングレス ア 日本(法務省保護局長) 住居の確保が,生活の安定,雇用の確保,社会福祉の受給等のために不可欠であることか ら,刑事施設の専門職員が,受刑者の入所直後から,その生活環境を把握して,その情報を 保護観察官と共有するほか,主要な刑事施設では保護観察官が常駐していることなどを紹介 した。 イ (米国)セーファー・ファウンデーション(副会長) 米国の NGO であるセーファー・ファウンデーションは,シカゴ市等の公的機関と協力し て,出所者を教育して地域に貢献できる仕事に従事させるプログラム,給与が支払われる1 年間の訓練と試用就業を実施することにより市に雇用される資格が得られるプログラム等を 実施していることなどを紹介した。 ウ (英国)ペナルリフォームインターナショナル(PRI) (事務局長) 世界的な NGO である PRI は,女性受刑者を取り巻く環境についての調査の結果を踏まえ, 就労のための能力向上,暴力や偏見・差別から逃れるためのシェルターの設置,法的扶助 , 心 理カウンセリングの提供等を行っていることを紹介した。 エ (スウェーデン)クリス(KRIS) (事務局長) スウェーデンに本拠を置く,元犯罪者の自助グループである KRIS は,犯罪者特有の思考 や問題性への介入,住居の提供,就業の支援,社会事業や教育の実施等の活動を紹介した。 犯罪白書 2021 297

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オ (アラブ首長国連邦)へダヤ(プログラムマネージャー) アラブ首長国連邦に本拠を置く独立調査研究機関であるヘダヤは,各国の暴力的過激主義 に対する処遇プログラムを調査して,これまでに集積した好事例や教訓を踏まえて,広く実 務に活用できる評価システム用アプリケーションを開発したことを紹介した。 第2章 京都コングレス 4 まとめ 本ワークショップの総括として,犯罪者の更生は,SDGs(本章第1節2項参照)が掲げ る包摂的で,持続可能な社会の創設のために不可欠であること,犯罪者の社会への再統合に 向けた刑事司法の全ての段階において,社会復帰に適したプロセスや環境を確保することが 再犯防止にとって非常に重要であることが確認された。 本ワークショップの議論は,モデレーターから京都コングレス全体会合にその結果が報告 され, 「京都宣言」(本章第1節4項(1)参照)にその内容が反映された。日本政府は,本 ワークショップの成果を踏まえ,令和3年(2021 年)5月に開催された犯罪防止刑事司法 委員会(第2編第6章第1節参照)に,再犯防止に関する国連準則の必要性やそのための専 第2節 門家会合の開催を主な内容とする決議案「更生と社会復帰を通じた再犯防止」を提出し,一 部修正の上,採択された。 京都コングレスにおける各種イベント 298 令和 3 年版 犯罪白書

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2 附属会合(アンシラリーミーティング) 京都コングレスでは,約 150 件のアンシラリーミーティングが開催された。同ミーティングは, 教室形式,ディスカッション形式,講演会,ワークショップ,デモンストレーション等の形式で実施 され,その名前(Ancillary =附属)が示すとおり,国連の公式会合ではなく,これに附属する位置 付けの会合である。日本政府が主催したアンシラリーミーティングは,7-2-2-1 表のとおりである。 その一例として,法務省法務総合研究所研究部は,「実社会に役立つ研究」をテーマとして,パネル ディスカッションを開催した(本節コラム7参照)。 7-2-2-1 表 日本政府主催アンシラリーミーティング一覧 開催日 主催 タイトル 日本の刑事司法システム ―比較法的観点から 法務省大臣官房国際課 3月7日 法務省保護局及び国連アジア 世界保護司会議 極東犯罪防止研修所 3月8日 タイ法務研究所及び国連アジ 女性犯罪者の再犯防止と社会復帰 ア極東犯罪防止研修所 3月8日 法務省刑事局 組織犯罪との闘い -組織犯罪集団打倒のべストプラクティス- 3月8日 法務省矯正局 矯正施設における新型コロナウイルス感染症対策 3月8日 法務省大臣官房秘書課及び一 再犯防止分野における SIB の課題と可能性 般財団法人社会変革推進財団 3月9日 誰ひとり取り残さない 司法アクセスを全ての人へ 日本司法支援センター(法テ -法的ニーズ調査,依頼者中心型アプローチ及び司法ソーシャルワークに関する ラス) 世界的視点- 3月9日 法務省矯正局 3月9日 法務省法務総合研究所国際協 力部及び独立行政法人国際協 法の支配を実現するための司法アクセス強化に関する成功事例に係る講演 力機構 3月9日 法務省法務総合研究所国際協 パネルディスカッション 力部及び独立行政法人国際協 (ラオス・ネパール・ベトナムにおける司法アクセスへの取組) 力機構 3月 10 日 公安調査庁 オウム真理教事件からの教訓 3月 10 日 法務省人権擁護局 人権擁護委員制度の紹介 3月 10 日 国連アジア極東犯罪防止研修 所及び公益財団法人アジア刑 アジ研の研修及びセミナーのフォローアップ 政財団 3月 10 日 法務省大臣官房施設課 ACCFA(アジア矯正建築会議)の役割 ~アジアにおける矯正施設建築の技術向上に関する取組~ 3月 11 日 警察庁 毒物中毒事案への対応に係る技術の開発 3月 11 日 法務省大臣官房司法法制部 日本における法教育に関する取組 3月 11 日 出入国在留管理庁 水際対策に関する取組 3月 11 日 法務省大臣官房国際課 法の支配と国際仲裁・調停 3月 12 日 法務省法務総合研究所研究部 実社会に役立つ研究 第7 編 3月7日 法務省政策提案ワークショップ 京都コングレス 犯罪白書 2021 299

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コラム7 アンシラリーミーティング「実社会に役立つ研究」 令和3年(2021 年)3月 12 日,国立京都国際会館において,法務省法務総合研究所研究 部の主催により,「実社会に役立つ研究(Research for the real world)」と題するアンシラ リーミーティングが開催された。刑事司法分野に関する研究機関には,犯罪を減らすための 第2章 京都コングレス 政策や実務の向上に貢献する研究を行い,その成果から得られた知見を政策立案者や実務家 に提供する役割が期待されている。本ミーティングでは,刑事司法分野に関する国内外の政 府研究機関に所属する研究者が各機関における研究の内容や政策立案・実務に与えた影響を 紹介し,その知見を共有することを目的に開催された。なお,本ミーティングは,新型コロ ナウイルス感染症の感染拡大防止のため,いわゆるハイブリッド方式により開催され,海外 のパネリストは,オンライン会議システムを経由して参加した。聴衆についても,会場に来 場して参加することに加え,同システムを経由して参加することも可能であった。 本ミーティングは,法務総合研究所の上冨敏伸所長による開会挨拶の中で,開催の趣旨が 紹介された後,各パネリストがそれぞれの研究成果等についての発表を行い,パネリスト間 第2節 の議論を経て,聴衆との質疑応答をもって閉会に至った。 パネリストからは,まず,韓国刑事政策研究 院(KIC)国際協力部門ディレクターのユン・ 京都コングレスにおける各種イベント ジョンソク博士が, 「韓国における性犯罪者処 遇プログラムの強化」と題し,刑務所出所後の 性犯罪受刑者を追跡調査した結果,性犯罪者処 遇プログラムの受講の有無により再犯率に差が あることなどの知見が得られたことを紹介し, 再犯を防止するために有用と考えられる実務的 方策の在り方を説いた。次いで,オーストラリ アンシラリーミーティングの様子 ア犯罪学研究所(AIC)副所長のリック・ブラ ウン博士が,「公営住宅地域におけるまちづくり事業が犯罪に与える影響の評価」と題し,公 営住宅地域において,まちづくりを目的として実施されたプログラムが同地域における犯罪 の発生件数や住民の意識に与えた影響について調査した結果や,それらを踏まえた同プログ ラムの改善策を紹介した。さらに,米国の司法省研究所(NIJ)でシニア社会科学アナリス トを務めるマリー・ガルシア博士が,「矯正職員の経験:仕事上のストレスがもたらす影響や 回復力(レジリエンス)の促進方法についての理解」と題し,仕事を通じて種々のストレス や不満にさらされる矯正職員の精神的健康を維持し,回復力を促進するのに有効な方策を調 査した結果が紹介された。最後に,法務総合研究所研究部の池田怜司研究官が,「立ち直りを 支える研究」と題し,受刑者を対象とした調査において,過去に犯罪と関わりなく生活でき た理由を尋ねた結果,最も多かった回答が「自分を必要としてくれる人がいた」であったこ となどを紹介し,その調査結果を地方自治体や社会福祉の関係者等に共有することにより, 更生を支える環境作りに寄与しているという点を指摘した。 その後,パネリスト間で, 「新型コロナウイルス感染症が刑事政策に与えた影響」をテーマと した議論が行われ,ブラウン博士から,AICが,新型コロナウイルス感染症が大流行する状況下 における,女性に対する配偶者間暴力の実態を把握するために実施した調査について紹介された。 質疑応答では,オンライン会議システムを経由して参加した聴衆から,ガルシア博士に対 し,米国の矯正施設に勤務する女性職員の割合,仕事に対する満足度及び離職率について質 問がなされた。 300 令和 3 年版 犯罪白書

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3 展示 京都コングレスの会期中,会場及びオンラインにて,国連,国際機関,政府機関,NGO,企業等 40 以上の出展者が,安全・安心な社会の実現に向けた取組,SDGs に関する取組,日本の文化,最 先端の IT・AI 技術等に関する展示を行った(7-2-2-2 表は会場における展示の出展者一覧,7-2-2-3 図はオンラインによるバーチャル展示のイメージである。)。 7-2-2-2 表 会場における展示の出展者一覧 国連薬物・犯罪事務所(UNODC) 法務省法務総合研究所国際協力部 京都府更生保護女性連盟 法務省法務総合研究所研究部 京都府保護司会連合会 日本電気株式会社(NEC) 警察庁刑事局刑事企画課 第 14 回国連犯罪防止刑事司法会議 京都実行委員会 国際移住機関(IOM) アジア矯正建築会議(ACCFA) 文化庁 日本コントロールシステム株式会社 (NCS) 綜合警備保障株式会社(ALSOK) 犯罪被害者支援弁護士フォーラム (VS フォーラム) 関西広域連合 日本電信電話株式会社(NTT) 株式会社ゲネシスコンマース 法務省大臣官房秘書課 公益財団法人全国教誨師連盟 グローリー株式会社 日本司法支援センター(法テラス) 公益財団法人全国篤志面接委員連盟 一般社団法人ホウビ 京都刑務所 株式会社竹中工務店 一般社団法人京都わかくさねっと 国連アジア極東犯罪防止研修所 (UNAFEI) 第7 編 京都コングレス 法務省法務総合研究所研究部の会場における展示の様子 京都府更生保護女性連盟の方々による琴演奏の様子 (展示会場内のイベント) 【写真提供:法務省大臣官房国際課】 7-2-2-3 図 バーチャル展示 犯罪白書 2021 301

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ふゆ ざん ふゆ ざん けい 「冬の残景」 きょうざい けい 冬の残景」 DVD教材 めのワークブック~ ふ かえ ~振り返りのためのワークブック~ こしょうばんごう 呼称番号 し めい 氏名 へいせい ねん がつ ほうむしょうきょうせいきょく 平成 29 年 3 月(C)法務省矯正局 特殊詐欺に係る再犯防止のための ワークブック表紙(少年院) 【画像提供:法務省矯正局】 「新しい生活における詐欺・トラブル防止」 広報・啓発ポスター 【画像提供:消費者庁消費者政策課】 【写真提供:警察庁生活安全局】 8編 詐欺事犯者の実態と処遇 第 第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 はじめに 詐欺に関連する法令 詐欺事犯の動向等 再犯防止に向けた各種施策 特別調査 おわりに 第8 編 特殊詐欺防止に向けた 街頭活動の様子

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第 1章 はじめに 刑法犯の認知件数は,平成 15 年以降,減少の一途をたどっている。しかしながら,罪名別に見る 第1章 はじめに と,詐欺の認知件数は,増減を繰り返しており,同じ財産犯でありながら認知件数が減少し続けてい る窃盗とは異なる動きを示している。そのようなこともあり,令和2年の刑法犯検挙人員総数に占め る詐欺の検挙人員の比率及び入所受刑者総数に占める詐欺の入所受刑者人員の比率は,いずれも平成 15 年よりも高くなっている。このような詐欺の動向の背景には,特殊詐欺の動向が関係しているも のと思われる。同年頃に急増し,それ以降長く社会問題となっている特殊詐欺については,政府とし ても,「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月 25 日犯罪対策閣僚会議決定)の下,その対策に 当たっているところであるが,近年も,認知件数は毎年1万件を超える水準で推移し,年間数百億円  規模の金が犯罪者の手に渡っており,引き続き撲滅に向けた対策が必要である。他方,再犯について 見ると,詐欺の出所受刑者の2年以内及び5年以内再入率は,近年,いずれも低下傾向にあり,令和 元年出所受刑者の2年以内再入率及び平成 28 年出所受刑者の5年以内再入率について,詐欺の出所 受刑者と出所受刑者総数を比較すると,いずれも詐欺の出所受刑者が,出所受刑者総数を下回ってい る。しかしながら,令和2年の成人検挙人員に占める前に同一罪名の前科を5犯以上有する者の比率 を見ると,詐欺は,窃盗に続いて高くなっている。詐欺事犯者の再犯防止に向けた対策の必要性はい まだ減じていない。詐欺,とりわけ特殊詐欺の防止や,詐欺事犯者の再犯防止に向けた有効な対策を 検討するには,その前提として,詐欺事犯の実態や詐欺事犯者の特性を十分に把握する必要がある。 しかしながら,手口,動機,背景事情等が多種多様である詐欺事犯や詐欺事犯者について,その実態 や特性を明らかにする統計資料等は,十分にあるとは言えない。法務総合研究所では,広く詐欺事犯 の実態や詐欺事犯者の特性等を明らかにするとともに,特殊詐欺を行った者の実態,特性,処分後の 成り行き等を明らかにし,特殊詐欺の撲滅に向けた対策や,効果的な再犯防止対策の在り方の検討に 資する資料を提供することが必要かつ有益であると考えた。 そこで,本白書では,本編において, 「詐欺事犯者の実態と処遇」と題し,詐欺事犯の動向,詐欺 事犯者,特に,特殊詐欺事犯者の処遇やその再犯防止に向けた取組の現状を紹介するとともに,詐欺 事犯についての再犯防止対策の前提となる実態把握に資する基礎資料を提供することとした。 本編の構成は,次のとおりである。 第2章では,我が国における詐欺に関連する法令を概観する。 第3章では,各種統計資料に基づき,詐欺事犯の動向,処遇の各段階における詐欺事犯者の人員の 推移,詐欺事犯者による再犯の状況等を概観する。詐欺被害者についてもここで取り上げる。 第4章では,矯正及び更生保護の各段階において,詐欺事犯者に対して行われている再犯防止に向 けた各種施策の現状を紹介する。 第5章では,詐欺事犯者に関する特別調査の内容や同調査によって明らかとなった事項について紹 介する。 第6章では,詐欺事犯と詐欺事犯者をめぐる現状と課題を総括し,特殊詐欺対策や詐欺事犯者の再 犯を防止するための方策について検討する。 なお,本編では,特に断らない限り,「詐欺」には,刑法 246 条に規定される罪のほか,同法 246 条の2に規定される電子計算機使用詐欺罪(本編第2章第1節1項(1)参照)及び同法 248 条に 規定される準詐欺罪(同項(1)参照)が含まれる。また,本編では,「特殊詐欺」について,「詐 欺」とは別に取り扱うことがあるが,特殊詐欺については,その定義上(同編第3章第1節1項(3) 参照) ,各種統計では,「詐欺」ではなく,「恐喝」又は「窃盗」として計上されるものが含まれ得る。 したがって, 「特殊詐欺」で検挙された者の中には,検察庁新規受理・終局処理人員,入所・出所受 304 令和 3 年版 犯罪白書

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刑者又は保護観察開始人員等の動向を紹介するに当たり,「詐欺」には計上されていない者が含まれ 得ることに留意する必要がある。例えば,特殊詐欺の類型のうち,近年相当数の認知・検挙件数があ るキャッシュカード詐欺盗については,各種統計では「窃盗」として計上され得るため,この類型の 特殊詐欺で検挙された者については,各種統計に基づき,詐欺事犯者の処遇段階の動向(同節2項な いし5項)や再犯・再非行の概況(同章第2節)を紹介する際,その対象に含まれていない可能性が ある。 第8 編 詐欺事犯者の実態と処遇 犯罪白書 2021 305

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第 2章 第2章 詐欺に関連する法令 第1節 1 詐欺に関連する法令 詐欺に関連する処罰法規 刑法・組織的犯罪処罰法 (1)刑法 詐欺については,まず,刑法(明治 40 年法律第 45 号)は,246 条1項で「人を欺いて財物を交付 させ」る行為(狭義の詐欺罪)を,同条2項で「前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他 人にこれを得させ」る行為(詐欺利得罪)をそれぞれ処罰の対象としている。また,248 条では, 「未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて,その財物を交付させ,又は財産上不法の利益を得, 若しくは他人にこれを得させ」る行為を準詐欺罪として処罰の対象としている。加えて,昭和 62 年 法律第 52 号による改正では,コンピュータの普及に伴い,電子情報処理組織をめぐる種々の不正行 為が次第に増加しつつあったことから,この種の不正行為に対処するための規定が刑法に新設され, 第1節 その一環として, 「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財 詐欺に関連する処罰法規 の電磁的記録を人の事務処理の用に供して,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させ」る行 産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り,又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽 為(246 条の2)が電子計算機使用詐欺罪として新たに処罰の対象とされた(昭和 62 年6月施行)。 これらの罪については,250 条により,それぞれ未遂行為も処罰の対象とされている。このほか,刑 法は,詐欺の手段として用いられることがある文書や有価証券等の偽造・行使,虚偽公文書作成・行 使等の行為も処罰の対象としている。 (2)組織的犯罪処罰法 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成 11 年法律第 136 号。以下この章に おいて「組織的犯罪処罰法」という。 )は,組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し, 犯罪による収益がこの種の犯罪を助長するとともに,これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活 動に重大な悪影響を与えることに鑑み,組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化するなど の目的で平成 11 年8月に制定された(12 年2月施行)。同法により,刑法に定められた一定の犯罪 が,①団体の活動として,その罪に当たる行為を実行するための組織により行われた場合,②団体に 不正権益を得させるなどの目的で実行された場合について,いずれもその法定刑を加重する規定が設 けられた(①については,狭義の詐欺罪及び詐欺利得罪も対象とされている。)。さらに,これらの刑 法犯及びその他の特定の犯罪に係る犯罪収益等を仮装・隠匿・収受する行為及び不法収益等を用いた 法人等の事業経営の支配を目的とする役員変更等の行為といったマネー・ローンダリング行為を処罰 する規定が設けられたほか,犯罪収益等の没収・追徴及びそのための保全手続に関する規定等が定め られた。 平成 29 年法律第 67 号による改正では,犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み,並びに国際的な組 織犯罪の防止に関する国際連合条約(第2編第6章第1節1項参照)の締結に伴い,必要となる罰則 の新設等所要の法整備を行うため,一定の重大犯罪(対象犯罪)に当たる行為で,テロリズム集団そ の他の組織的犯罪集団の団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるもの,又 はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益の獲得等の目的で行われるものの遂行を二人以 上で計画する行為であって,その計画に基づき当該犯罪を実行するための準備行為が行われたものを 処罰する規定(テロ等準備罪)等が新設されており,組織的な詐欺,電子計算機使用詐欺等もこのテ 306 令和 3 年版 犯罪白書

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ロ等準備罪の対象犯罪とされた(平成 29 年7月施行)。 2 詐欺と関係が深い特別法 詐欺に類似した方法により,相手に損害を与えながらも,相手を「欺い」たことを立証することの 困難さから詐欺罪の適用が困難な事例もある。そのような被害の発生の防止に資する特別法の一例と して,以下の法律がある。 (1)特定商取引法等 特定商取引に関する法律(昭和 51 年法律第 57 号。平成 13 年6月1日前の題名は訪問販売等に関 する法律。以下(1)において「特定商取引法」という。)は,特定商取引(訪問販売,通信販売及 び電話勧誘販売に係る取引,連鎖販売取引,特定継続的役務提供に係る取引,業務提供誘引販売取引 並びに訪問購入に係る取引をいう。 )を公正にするとともに購入者等が受けることのある損害の防止 を図ることにより,購入者等の利益を保護し,あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑 にして,国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものである。昭和 51 年の制定時には, 契約内容を明確化し,後日紛争が生じることを防止する観点から,訪問販売業者等の書面交付義務が 規定され,同義務違反(不交付及び虚偽記載書面の交付)に係る罰則が設けられた。昭和 63 年法律 第 43 号による改正では,訪問販売業者等に対する禁止行為として,訪問販売等に係る売買契約等の 締結について勧誘するに際し,又は同売買契約等の解除等を妨げるため,当該売買契約等に関する事 項であって,顧客等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて,不実のことを告げる行為 (以下(1)において「不実告知」という。)等を禁止する規定が整備され,これらの規定に違反した 場合に係る罰則が設けられた(昭和 63 年 11 月施行)。その後,累次の改正により,規制対象となる 第8 編 取引の追加,罰則の強化(法定刑の引上げ,懲役刑及び罰金刑の併科)がなされていったほか,不実 告知等の対象となる事項が具体的に列挙され,明確化されるなどした。最近では,令和3年法律第 72 号による改正により,通信販売における詐欺的な定期購入商法対策として,通信販売における解 除等を妨げるための不実告知や,契約の申込みを受ける最終段階の映像面等において定期購入でない 詐欺事犯者の実態と処遇 と誤認させる表示等を禁止する規定が整備されるとともに,これらの規定に違反した場合に係る罰則 が新設されるなどした(令和4年6月までに施行)。 特定商取引法と同様に,取引の相手方等に対し,一定の事項について,不実のことを告げる行為等 を禁止行為として規定し,これらの規定に違反した場合に係る罰則を設けている法律としては,宅地 建物取引業法(昭和 27 年法律第 176 号),旅行業法(昭和 27 年法律第 239 号)等がある。 (2)不正競争防止法等 不正競争防止法(平成5年法律第 47 号)は,事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の 的確な実施を確保するため,不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,国 民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものである。不正競争防止法では,不正の目的を もって他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用して他人の商品等と混同・誤認を生じさせる行 為,商品の原産地等について誤認を生じさせるような虚偽の表示をする行為,他人の著名な商品等表 示に係る信用等を利用して不正の利益を得る目的で,自己の商品等表示として他人の著名な商品等表 示と同一又は類似のものを使用する行為等について,罰則を設けている。 不正競争防止法と類似の罰則を置く法律としては,食品,添加物,器具又は容器包装に関し,公衆 衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示等をする行為等について罰則を設けている食 品衛生法(昭和 22 年法律第 233 号) ,登録商標以外の商標を使用する場合において,その商標に商 標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為等について罰則を設けている商標法(昭和 34 年 犯罪白書 2021 307

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法律第 127 号)等がある。 3 特殊詐欺対策関連の特別法 特殊詐欺(本編第3章第1節1項(3)参照)は,平成 15 年夏頃から,いわゆるオレオレ詐欺に 第2章 詐欺に関連する法令 よるものが目立つようになった。架空・他人名義の預貯金口座や携帯電話を利用した特殊詐欺が多発 していたことから,その対策のため以下の立法がなされた。 (1)犯罪収益移転防止法等 インターネット等を通じて売買された他人名義の預貯金口座を不正に利用した振り込め詐欺(本編 第3章第1節1項(3)コラム9参照)等の犯罪行為が多発していたことを踏まえ,平成 16 年法律 第 164 号により,金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(平成 14 年法律第 32 号)が 改正され,法律の題名が金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に 関する法律に改められるとともに,預貯金口座等の不正な利用を防止するため,預貯金通帳等の有償 譲受け等に関する罰則が新設された(平成 16 年 12 月施行)。 金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律は,犯罪収 第1節 益の移転防止を図り,併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を 詐欺に関連する処罰法規 目的に,平成 19 年3月に制定された犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 確保し,もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに,経済活動の健全な発展に寄与することを 号。以下(1)において「犯罪収益移転防止法」という。)により廃止され,預貯金通帳等の有償譲 受け等の罰則は同法に引き継がれた(20 年3月全面施行)。さらに,平成 23 年法律第 31 号による犯 罪収益移転防止法の改正により,顧客等が隠蔽の目的で本人特定事項を偽った場合や預貯金通帳等の 有償譲受け等に対する罰則が強化された(23 年5月施行)。 (2)携帯電話不正利用防止法 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関す る法律(平成 17 年法律第 31 号。いわゆる携帯電話不正利用防止法)は,振り込め詐欺(本編第3章 第1節1項(3)コラム9参照)等の犯罪において,契約者を特定できない携帯電話が利用されるこ とが多かったことを踏まえ,振り込め詐欺対策として,平成 17 年4月に制定されたものであり,匿 名性の高い携帯電話を入手することを困難とし,携帯電話の不正な利用を防止するため,携帯電話に 係る役務提供契約時における携帯音声通信事業者の本人確認義務に関する規定や,携帯電話の不正な 譲渡等に関する罰則を設けたものである(18 年4月全面施行)。また,平成 20 年法律第 76 号による 改正により,SIM カード(契約者特定記録媒体)単体の譲渡等についても規制対象としたほか,携 帯電話等の有償貸与業者が貸与契約を締結する際の本人確認等の手続を厳格に定めるとともに,携帯 電話等の不正な貸与等についても新たに処罰の対象とした(20 年 12 月施行)。 4 その他の特別法 詐欺に類似する行為について罰則を設けている特別法としては,以上のほか,①偽りその他不正の 行為により税を免れるなどの脱税行為について罰則を設けている所得税法(昭和 40 年法律第 33 号), 法人税法(昭和 40 年法律第 34 号),消費税法(昭和 63 年法律第 108 号),相続税法(昭和 25 年法律 第 73 号)等(第4編第4章第1節参照),②偽りその他不正の手段により公的資金を取得するなどの 行為について罰則を設けている補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和 30 年法律第 179 号) ,生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)等,③仮装売買等による相場操縦等の行為について 308 令和 3 年版 犯罪白書

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罰則を設けている金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号。同章第2節参照),④破産,会社更生等 において債権者等を害する目的で行われる財産の譲渡を仮装するなどの行為について罰則を設けてい る破産法(平成 16 年法律第 75 号),会社更生法(平成 14 年法律第 154 号)等がある。 第2節 1 詐欺被害者の救済に関する法律 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律(平成 18 年法律第 87 号)は,犯罪被害 者の保護を一層充実させるため,詐欺を含む財産犯等の犯罪行為によりその被害を受けた財産(犯罪 被害財産)の没収又はその価額の追徴により得た財産等を用いて,当該犯罪行為により財産的被害を 受けた者等に対する被害回復給付金の支給を行うために必要な事項を定めるものであり,平成 18 年 6月に制定された(同年 12 月全面施行)。また,これに合わせて,平成 18 年法律第 86 号により組織 的犯罪処罰法も改正された(同月施行) 。これにより,被害者による損害賠償請求権等の行使が困難 な場合,例えば,詐欺を含む財産犯が組織的に行われた場合や当該犯罪被害財産が隠匿された場合等 に,組織的犯罪処罰法により当該犯罪被害財産の没収・追徴が可能となり,当該財産等を被害回復給 付金の支給に充てることができることとなった。同支給手続においては,没収した犯罪被害財産に相 当する金銭の保管を始めとする支給手続の主体が検察官とされ,犯罪被害財産の没収・追徴の理由と された犯罪行為の被害者のほか,これと一連の犯行として行われるなどした犯罪行為の被害者につい ても,被害回復給付金の支給の申請をすることができる。令和2年における被害回復給付金支給開始 手続の開始決定件数等については第6編第2章第2節3項を,詐欺に係る被害回復給付金の支給状況 の推移については 8-3-3-8 表①をそれぞれ参照。 第8 編 2 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成 19 年法律第 詐欺事犯者の実態と処遇 133 号)は,預金口座等への振込みを利用して行われた詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対 する被害回復分配金の支払等のため,預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払手続等 を定めるとして,平成 19 年 12 月に制定されたものであり(20 年6月施行),振り込め詐欺等による 財産的被害の迅速な回復等に資するものである。同手続による被害回復分配金の支払状況の推移につ いては,8-3-3-8 表②を参照。 第3節 1 詐欺の捜査に関係する法律 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律 詐欺の捜査に関係する法律として,刑事訴訟法(昭和 23 年法律第 131 号)等に加え,犯罪捜査の ための通信傍受に関する法律(平成 11 年法律第 137 号。以下この項において「通信傍受法」とい う。 )がある。同法は,組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることに鑑み,通 信の秘密を不当に侵害することなく事案の真相の的確な解明に資するよう,平成 11 年8月に制定さ れた(12 年8月施行)。同法により,検察官又は司法警察員は,対象犯罪が行われたと疑うに足りる 十分な理由がある場合であって,当該犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況がある ときなどにおいて,犯罪の実行,準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議,指示等を内容とする 通信が行われると疑うに足りる状況があり,かつ,他の方法によっては,犯人を特定し,又は犯行の 犯罪白書 2021 309

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状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるときに,裁判官が発付する傍受令状に基づ き,現に行われている他人間の通信について,その内容を知るため,当該通信の当事者のいずれの同 意も得ないでこれを傍受することができることとされている。 平成 28 年法律第 54 号による改正により,犯罪捜査のための通信傍受の対象となる犯罪に詐欺,電 子計算機使用詐欺等が加えられ,これらの犯罪についても,あらかじめ定められた役割分担に従って 第2章 詐欺に関連する法令 行動する人の結合体により行われるなどの場合においては,通信傍受を有用な捜査手法の一つとして 活用できることとなった(平成 28 年 12 月施行)。また,同改正により,通信事業者等の施設におい てその職員の立会いの下,通信が行われるのと同時に傍受する従来の手続に加え,通信事業者等が通 信を暗号化し,一時的に保存をする方法により傍受する手続や,通信事業者等が暗号化した通信を, 捜査機関の施設等に設置された,通信傍受法に定められた要件を満たす電子計算機に伝送させ,通信 事業者等による立会いを要さず,受信するのと同時に復号し,又は一時的保存をする方法により傍受 する手続が新たに導入されるなど,通信傍受手続の合理化・効率化がなされた(令和元年6月施行)。 詐欺に係る通信傍受実施事件数及び傍受令状発付件数の推移については,8-3-1-29 表参照。 2 合意制度 第3節 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(以下この項において「合意制度」という。)は, 平成 28 年法律第 54 号による刑事訴訟法の改正により,刑事手続における証拠の収集方法の適正化及 詐欺の捜査に関係する法律 び多様化等を図るために創設された(平成 30 年6月施行)。合意制度は,検察官が,弁護人の同意が ある場合に,被疑者・被告人との間で,被疑者・被告人が他人の刑事事件について真実の供述をする こと,証拠物を提出することなどの協力行為をし,検察官が被疑者・被告人の事件について,その協 力行為を被疑者・被告人に有利に考慮して公訴を提起せず,軽い訴因により公訴を提起し,軽い求刑 をするなどの有利な取扱いをすることを内容とする合意をすることができるものである。 合意制度の対象となる犯罪には,詐欺,電子計算機使用詐欺等が含まれている。特殊詐欺に代表さ れる詐欺事犯が組織的な背景を伴って行われる場合,その密行性や正当な経済活動との区別を含めた 事案の解明が困難となり得るが,罪を犯した者から他人の犯罪についての証拠を得るという合意制度 は,首謀者の関与状況等を含めた事案の解明のために,犯罪の実行者等の組織内部の者から供述や証 拠物を得て捜査を進展させる上で,有用な捜査手法となり得る。 310 令和 3 年版 犯罪白書

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3章 第 詐欺事犯の動向等 この章では,各種統計資料等に基づき,詐欺事犯の動向,処遇の各段階における人員の推移,詐欺 事犯者による再犯の状況等について概観する。 第1節 1 詐欺事犯の動向等 認知・検挙・取締り (1)詐欺 ア 認知件数・検挙件数・検挙率 (ア)概要 詐欺の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 30 年間)を見ると,8-3-1-1 図のとおりであ る(特殊詐欺(本項(3)参照)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移については,8-3-1-17 図 参照) 。 認知件数は,平成元年から 10 年までは5万件前後,11 年から 13 年までは4万件台前半で推移し ていたが,15 年及び 16 年に大きく増加し,17 年には8万 5,596 件に達した後,18 年から減少し, 23 年には3万 4,720 件となった(CD-ROM 参照)。その後,再び増加傾向に転じ,29 年には4万 2,571 件に達したが,翌年からは毎年減少し,令和2年は3万 468 件(前年比 5.4%減)であった。 なお,特殊詐欺については,罪名としては,詐欺のほか,恐喝又は窃盗にも該当し得ることに留意す 第8 編 る必要があるが,その被害が目立ち始めたのは平成 15 年夏頃であり,16 年には特殊詐欺の認知件数 が約2万 5,700 件に達している(本項(3)参照)。刑法犯の認知件数総数に占める詐欺の認知件数 の割合は,令和2年は 5.0%であり,平成3年(2.0%)よりも高い(1-1-1-3 図及び CD-ROM 資料 1-2 参照) 。 詐欺事犯者の実態と処遇 検挙件数は,平成 10 年までは4万件台を維持していたが,11 年以降減少し,13 年から 21 年まで, おおむね3万件前後で推移した後,更に減少し,25 年からは1万件台で推移し,令和2年は1万 5,270 件(前年比 4.0%減)であった。 検挙率は,平成 10 年までは 90%台であったが,11 年以降の検挙件数の減少及び 14 年以降の認知 件数の増加により大きく低下し,16 年には 32.1%まで低下した後,22 年(66.1%)まで上昇し続け た。その後,再び低下し,25 年から令和元年まで 40%台で推移したが,2年は 50.1%(前年比 0.7pt 上昇)であった。 犯罪白書 2021 311

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8-3-1-1 図 詐欺 認知件数・検挙件数・検挙率の推移 (平成3年~令和2年) ( 万件 ) 10 (%) 100 第3章 詐欺事犯の動向等 8 80 検挙率 6 60 50.1 4 40 30,468 2 20 第1節 詐欺事犯の動向等 0 平成3 5 10 15 20 認知件数 注 25 30令和2 15,270 0 検挙件数 警察庁の統計による。 (イ)手口別 令和2年における詐欺の認知件数及び検挙件数の手口別構成比を見ると,8-3-1-2 図のとおりであ る。 8-3-1-2 図 詐欺 認知件数・検挙件数の手口別構成比 (令和2年) 認知件数 (30,468) 検挙件数 (15,270) 注 売付け 無銭 20.0 11.3 有価証券等利用 買受け 借用 留守宅 8.3 保険 0.6 3.9 3.3 3.2 その他 49.4 1.2 7.5 15.4 13.1 5.9 5.2 5.3 46.5 1 警察庁の統計による。 2 「売付け」は,売付けを口実として金品をだまし取るものをいう。 3 「無銭」は,人を欺いて飲食,宿泊,乗車等し,不法の利益を得るものをいう。 4 「留守宅」は,留守宅を訪れ,口実を設けて留守家族等から金品をだまし取るものをいう。 5 「有価証券等利用」は,有価証券等(偽造,変造又は無効のものを含む。 )を利用して金品をだまし取るものをいう。 6 「買受け」は,買受けを口実として金品をだまし取るものをいう。 7 「借用」は,借用を口実として金品をだまし取るものをいう。 8 「保険」は,保険金受領の資格等を偽り,保険金をだまし取るものをいう。 9 「その他」は,不動産利用,募集,職権,釣銭・両替,横取り等を含む。 10 ( )内は,件数である。 詐欺の主な手口別の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-3 図 のとおりである。 312 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-3 図 詐欺 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(主な手口別) (平成 13 年~令和2年) ① 売付け (千件) 25 15 40 10 20 5 ③ 20 25 有価証券等利用 (千件) 5 30 令和2 検挙率 4 80 3 60 2 40 0 平成 13 15 20 20 25 無銭 (千件) 14 30 令和2 6 40 4 20 25 留守宅 30 令和2 0 検挙率 60 4 40 2 20 20 25 30 令和2 0 20 25 買受け 4 76.3 1,184 903 68.1 検挙率 30 令和2 3,452 2,352 60 2 40 1,002 20 792 0 0 平成 13 15 20 25 保険 (件) 800 検挙率 30 令和2 (%) 100 80 600 0 平成 13 15 40 20 20 25 募集 (千件) 10 2,540 1,993 30 令和2 0 120 100 80 6 60 4 40 2 0 平成 13 15 182 176 (%) 検挙率 8 78.5 96.7 60 200 ⑧ 804 3 1 ⑥ 0 971 (%) 100 79.0 80 400 認知件数 注 20 (千件) 5 80 6 0 平成 13 15 ④ (%) 100 8 40 2 詐欺事犯者の実態と処遇 20 (千件) 10 0 平成 13 15 1,146 0 60 60 第8 編 検挙率 8 ⑦ 18.8 80 10 2 0 平成 13 15 6,090 (%) 100 12 検挙率 4 (%) 100 1 ⑤ 0 (%) 100 82.8 80 6 60 検挙率 借用 (千件) 8 80 20 0 平成 13 15 ② (%) 100 20 20 25 30 令和2 0 66.9 838 561 検挙件数 1 警察庁の統計による。 2 「売付け」は,売付けを口実として金品をだまし取るものをいう。 3 「借用」は,借用を口実として金品をだまし取るものをいう。 4 「有価証券等利用」は,有価証券等(偽造,変造又は無効のものを含む。 )を利用して金品をだまし取るものをいう。 5 「買受け」は,買受けを口実として金品をだまし取るものをいう。 6 「無銭」は,人を欺いて飲食,宿泊,乗車等し,不法の利益を得るものをいう。 7 「保険」は,保険金受領の資格等を偽り,保険金をだまし取るものをいう。 8 「留守宅」は,留守宅を訪れ,口実を設けて留守家族等から金品をだまし取るものをいう。 9 「募集」は,募集を口実として金品をだまし取るものをいう。 10 検挙件数には,前年以前に認知された事件に係る検挙事件が含まれることがあるため,検挙率が 100%を超える場合がある。 犯罪白書 2021 313

331.

売付け(8-3-1-3 図①) ① 売付けの認知件数は,平成 17 年(2万 2,052 件)をピークに,翌年から 23 年(3,585 件)まで 減少し続けた後,24 年から 26 年(9,612 件)まで増加したものの,29 年以降は減少を続けていた が,令和2年は 6,090 件(前年比 6.3%増)であった。検挙件数は,平成 17 年(4,407 件)をピー クに,翌年から減少傾向にあったが,令和2年は 1,146 件(同 7.1%増)であった。なお,平成 17 第3章 詐欺事犯の動向等 年から 20 年までの間,オークション利用詐欺の検挙件数が 1,000 件を超えていたことにも留意が 必要である(4-5-2-1 表 CD-ROM 参照)。検挙率は,16 年(15.3%)から上昇傾向にあり,23 年 には,認知件数の減少等により 50.2%に達したが,その翌年から減少し,近年は,おおむね 10% 台で推移している。 借用(8-3-1-3 図②) ② 借用の認知件数は,平成 14 年(6,515 件)をピークに,翌年から減少傾向にあり,令和2年は, 971 件(前年比 0.3%減)であり,平成 14 年の約7分の1の水準である。検挙件数は,同年 (4,789 件)をピークに,翌年から減少傾向にあり,令和2年は 804 件(同 1.9%増)であった。検 挙率は,平成 13 年以降,一貫して 60%を上回っており,22 年以降,おおむね 80%前後で推移し ている。 有価証券等利用(8-3-1-3 図③) 第1節 ③ 有価証券等利用の認知件数は,平成 13 年(4,862 件)以降,減少傾向にあるものの,16 年に 詐欺事犯の動向等 3,000 件を下回った後も,1,300 件台から 2,400 件台の間で推移していたが,令和2年は 1,184 件 (前年比 13.5%減)であった。検挙件数は,平成 13 年(4,223 件)を最多に,翌年から減少傾向に あり,25 年以降はおおむね 800 件台から 1,600 件台の間で推移し,令和2年は 903 件(同 25.0% 減)であった。検挙率は,平成 28 年(92.7%)を最高に,60%を上回る水準で推移している。 買受け(8-3-1-3 図④) ④ 買受けの認知件数は,平成 15 年(4,754 件)を最多に,20 年まではおおむね 3,000 件を上回っ て推移していたが,21 年に大きく減少し,その後も減少傾向にあり,令和2年は 1,002 件(前年 比 23.6%増)であった。検挙件数は,平成 14 年(2,746 件)をピークに,翌年から減少傾向にあ り,20 年に一旦増加したものの,21 年以降はおおむね 500 件台から 1,200 件台の間で推移し,令 和2年は 792 件(同 25.3%増)であった。なお,平成 17 年から 20 年までの間,オークション利 用詐欺の検挙件数が 1,000 件を超えていたことにも留意が必要である(4-5-2-1 表 CD-ROM 参 照) 。検挙率は,17 年(42.4%)を除いて,50%を上回る水準で推移しており,近年は上昇傾向 にある。 ⑤ 無銭(8-3-1-3 図⑤) 無銭の認知件数は,平成 15 年(1万 2,679 件)を最多に,21 年までは1万件台で推移していた が,22 年(9,253 件)以降,減少傾向にあり,令和2年は 3,452 件(前年比 12.0%減)であった。 検挙件数は,平成 18 年(7,210 件)を最多に,翌年から減少傾向にあり,29 年以降は 2,000 件台 で推移しており,令和2年は 2,352 件(同 7.0%減)であった。検挙率は,平成 13 年以降,50% 台前半から 60%台前半の間で推移していたが,令和2年は 68.1%であった。 ⑥ 保険(8-3-1-3 図⑥) 保険の認知件数は,平成 13 年から 16 年(620 件)まで増加し,翌年に大きく減少した後は, 18 年から 24 年までは 400 件台,25 年から 28 年までは 300 件台,29 年以降は 200 件台でそれぞ れ推移していたが,令和2年は 182 件(前年比 30.0%減)であった。検挙件数は,平成 25 年 (283 件)以降,200 件台で推移していたが,令和2年は 176 件(同 24.8%減)であった。検挙率 は,他の手口と比較して総じて高く,平成 18 年(80.0%)を最低に,一貫して 80%以上を維持し ている。 314 令和 3 年版 犯罪白書

332.

留守宅(8-3-1-3 図⑦) ⑦ 特殊詐欺に関係する手口である留守宅の認知件数は,平成 15 年に急増(前年比 786.3%増)し た後,その翌年から令和元年までは 3,000 件台から 9,000 件台で推移していたが,2年は 2,540 件 (同 62.4%減)と大きく減少した。検挙件数は,平成 20 年から 28 年まで 1,000 件台で推移した後, 29 年に 2,000 件台,30 年に 3,000 件台に至ったが,令和2年は 1,993 件(同 39.2%減)であった。 検挙率は,平成 22 年から令和元年までは 30%台から 40%台で推移していたが,2年は 78.5%(同 29.9pt 上昇)と大きく上昇した。 募集(8-3-1-3 図⑧) ⑧ 募集の認知件数は,平成 17 年(9,629 件)をピークに,その翌年から減少傾向にあり,令和2 年は 838 件(前年比 7.7%増)であった。検挙件数は,平成 13 年以降,300 件台から 2,300 件台 の間で増減を繰り返しており,令和2年は 561 件(同 59.8%増)であった。検挙率は,平成 13 年 以降,上昇・低下を繰り返しており,令和2年は 66.9%(同 21.8pt 上昇)であった。 イ 検挙人員 (ア)概要 詐欺の検挙人員(総数・女性)及び女性比の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-4 図のとおり である(特殊詐欺の検挙人員の推移については,8-3-1-23 図参照)。詐欺の検挙人員総数は,平成 21 年(1万 2,542 人)をピークに翌年から減少傾向にあり,令和2年は 8,326 人(前年比 5.8%減) であった。女性の検挙人員は,平成 18 年から 21 年まで 2,000 人台で推移した後,減少傾向にあり, 令和2年は 1,477 人(同 2.6%増)であった。女性比は,平成 13 年(13.2%)から 19 年(18.1%) まで上昇し続け,その後は,14%台から 17%台の間で推移しており,令和2年は 17.7%(同 1.5pt 上昇)であった。2年の詐欺の女性比は,刑法犯検挙人員総数の女性比(21.3%。1-1-1-6 表参照) 第8 編 よりも低い。 令和2年における刑法犯の検挙人員に占める詐欺の検挙人員の割合は,総数では 4.6%であり,女 性では 3.8%であった(CD-ROM 資料 1-1 参照)。 8-3-1-4 図 詐欺事犯者の実態と処遇 詐欺 検挙人員(総数・女性),女性比の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 14 総数 (%) 100 女性 12 80 10 8,326 8 6 40 4 17.7 女性比 20 2 0 平成 13 注 女 性 比 検挙人員 60 1,477 15 20 25 30 令和2 0 警察庁の統計による。 犯罪白書 2021 315

333.

(イ)年齢層別 詐欺の検挙人員について,犯行時の年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-5 図 のとおりである(特殊詐欺の検挙人員の年齢層別構成比については,8-3-1-25 図参照)。詐欺の検挙 人員のうち少年の構成比は,平成 16 年(10.0%(前年比 3.3pt 上昇))に大きく上昇した後,20 年 から 29 年までは7%台から8%台の間で推移していたが,30 年に 11%台に上昇したのを経て,令 第3章 詐欺事犯の動向等 和2年は 8.2%(同 1.6pt 低下)であった。詐欺の検挙人員のうち 20 歳代の者の構成比は,上昇傾向 を示しており,2年における少年及び 20 歳代の者の検挙人員の合計は,詐欺検挙人員の 37.1%(平 成 13 年比 12.0pt 上昇)を占める。40 歳代の者の構成比は,21 年以降,17%台から 19%台の間で 推移し,50~64 歳の者の構成比は,14 年(28.0%)を最高に低下傾向にある一方,65 歳以上の高 齢者の構成比は,上昇傾向にある。令和2年の詐欺の検挙人員に占める高齢者の比率は 8.9%(前年 比 0.1pt 上昇)であったが,令和2年の刑法犯検挙人員総数に占める高齢者の比率(22.8%。1-11-5 図参照)よりも顕著に低い。なお,同年における高齢者の詐欺の検挙人員(745 人)のうち 70 歳以上の者は,430 人であった(CD-ROM 参照)。 8-3-1-5 図 詐欺 検挙人員の年齢層別構成比の推移 第1節 (平成 13 年~令和2年) (%) 100 詐欺事犯の動向等 80 令和2年 65歳 以 上 50~64歳 40~49歳 30~39歳 20~29歳 20歳 未 満 60 40 20 0 平成 13 注 316 1 2 令和 3 年版 15 警察庁の統計による。 犯行時の年齢による。 犯罪白書 20 25 30 令和2 8.9 18.1 17.8 18.1 28.8 8.2

334.

少年による詐欺の検挙人員(触法少年による補導人員を含む。)及び人口比の推移(最近 20 年間) について,犯行時の年齢層別に見ると,8-3-1-6 図のとおりである(少年による特殊詐欺の検挙人員 及び人口比の推移については,8-3-1-26 図参照)。総数では,平成 16 年(1,106 人)に大きく増加 し,18 年に 1,224 人に達し , 翌年から 28 年(748 人)まで減少傾向にあったが,30 年(1,087 人) に再び増加したのを経て,その後は減少している。令和2年における少年による刑法犯の検挙人員 (触法少年による補導人員を含む。 )総数に占める詐欺の割合は,3.1%であった(3-1-1-6 表参照)。 触法少年は,平成 20 年(52 人)を最多に減少傾向にあり,令和2年は 29 人であった。同年におけ る年少少年の検挙人員は,最も多かった平成 20 年(203 人)の約3分の1である 66 人であり,中間 少年の検挙人員は,最も多かった 18 年(511 人)の約2分の1である 240 人であった。これに対し, 年長少年は,16 年(470 人)に大きく増加して以降,30 年(581 人)を最多に 300 人台から 500 人 台の間で推移しており,令和2年は 328 人(前年比 25.3%減)であった。 年齢層別に少年による詐欺の人口比を見ると,一貫して,触法少年が最も低く , 年少少年がこれに 続く。中間少年及び年長少年の人口比は,平成 16 年以降,触法少年及び年少少年の人口比よりも顕 著に高い。26 年以降は,一貫して,年長少年の人口比が中間少年の人口比を上回っている。 8-3-1-6 図 少年による詐欺 検挙人員・人口比の推移(年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (人) 1,400 令和2年検挙人員 年長少年 328 中間少年 240 年少少年 66 触法少年 29 1,200 50 40 1,000 600 20 中間少年 10.5 10 200 0 平成 13 注 年長少年 13.5 詐欺事犯者の実態と処遇 400 第8 編 663 人 口 比 検挙人員 30 800 15 20 25 30 令和2 0 年少少年 3.0 触法少年 0.7 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 3 検挙人員中の「触法少年」は,補導人員である。 4 「人口比」は,各年齢層の少年 10 万人当たりの詐欺の検挙(補導)人員である。なお,触法少年の人口比算出に用いた人口は,10 歳以上 14 歳未満の人口である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口を使用して算出した。 犯罪白書 2021 317

335.

(ウ)職業別 詐欺の検挙人員について,犯行時の職業別構成比の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-7 図の とおりである。被雇用者・勤め人の構成比は,上昇傾向にあり,令和2年(3,013 人)は 36.2%(平 成 13 年比 7.1pt 上昇)であった。年金等生活者(無職者のうち,年金,雇用保険,利子,配当,家 賃等の収入による生活者をいう。)の構成比も,上昇傾向にあり,令和2年(434 人)は 5.2%(同 第3章 詐欺事犯の動向等 3.2pt 上昇)であった。学生・生徒等の構成比は,平成 16 年(8.4%)に大きく上昇し,18 年(1,067 人)の 8.6%を最高に,翌年から低下傾向を示し,28 年(479 人)には4%台となったが,30 年以 降は5%台から6%台の間で推移し,令和2年(461 人)は 5.5%(同 2.2pt 上昇)であった。一方, 失業者の構成比は,平成 15 年(728 人)の 7.1%を最高に,翌年から低下傾向にあり,令和2年 (182 人)は 2.2%(同 4.5pt 低下)であった。また,ホームレスの構成比も,平成 14 年(594 人) の 6.2%を最高に,翌年から低下傾向にあり,令和2年(220 人)は 2.6%(同 3.5pt 低下)であっ た。 8-3-1-7 図 詐欺 検挙人員の職業別構成比の推移 (平成 13 年~令和2年) 第1節 (%) 100 詐欺事犯の動向等 80 令和2年 その他の無職者 37.4 ホームレス 2.6 2.2 失業者 年金等生活者 5.2 5.5 学生・生徒等 被雇用者・ 36.2 勤め人 自営業者・ 10.9 家族従業者 60 40 20 0 平成 13 注 318 15 20 25 30 令和2 1 警察庁の統計による。 2 犯行時の職業による。 3 「年金等生活者」は,無職者のうち,年金,雇用保険,利子,配当,家賃等の収入による生活者をいう。 4 「その他の無職者」には , 主婦を含む。 令和 3 年版 犯罪白書

336.

(エ)暴力団構成員等 詐欺について,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下(エ)に おいて同じ。)の検挙人員及び検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率の推移(最近 10 年間)を 見ると,8-3-1-8 図のとおりである(特殊詐欺の暴力団構成員等検挙人員等の推移については,8-31-27 図参照) 。暴力団構成員等による詐欺の検挙人員は,平成 26 年(2,337 人)を最多に,翌年か ら減少し続けている。暴力団構成員等の比率は,26 年(22.3%)を最高に,翌年から低下し続け, 令和2年は 15.0%であるが,同年の刑法犯の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率(4.1%。 4-3-2-3 表参照)よりも顕著に高い。同年の暴力団構成員等による詐欺の検挙人員を地位別に見ると, 首領及び幹部の合計は 12.2%,組員は 18.2%,準構成員は 69.7%であった。 8-3-1-8 図 詐欺 暴力団構成員等検挙人員等の推移 (平成 23 年~令和2年) (人) 2,500 令和2年 準構成員 組員 幹部 首領 2,000 (%) 100 870 227 115 37 80 60 1,500 1,249 40 1,000 注 20 暴力団構成員等の比率 25 15.0 30 令和2 詐欺事犯者の実態と処遇 0 平成 23 第8 編 500 0 1 警察庁の統計による。 2 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 3 「暴力団構成員等の比率」は,検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率である。 犯罪白書 2021 319

337.

(オ)外国人 外国人による詐欺の検挙人員及び検挙人員総数に占める外国人の比率の推移(最近 20 年間)を見 ると,8-3-1-9 図のとおりである(特殊詐欺の外国人検挙人員等の推移については,8-3-1-28 図参 照) 。外国人による詐欺の検挙人員は,平成 13 年以降,増加傾向を示したが,19 年に 425 人に達した 後は,おおむね 400 人台で推移しており,令和2年は 463 人(前年比 5.3%減)であった。2年の外 第3章 詐欺事犯の動向等 国人による詐欺の検挙人員を国籍別に見ると,中国(195 人,42.1%)が最も多く,次いで,韓国・ 朝鮮(81 人,17.5%) ,ベトナム(50 人,10.8%) ,ブラジル(16 人,3.5%)の順であった(警察 庁の統計による。 ) 。同年の詐欺検挙人員総数に占める外国人の比率は,5.6%であり,同年における刑 法犯の検挙人員総数に占める外国人の比率(5.2%)とほぼ同程度であった(警察庁の統計による。 ) 。 8-3-1-9 図 詐欺 外国人検挙人員等の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 500 463 (%) 50 第1節 400 40 詐欺事犯の動向等 300 30 200 20 100 10 外国人の比率 0 平成 13 注 15 5.6 20 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計による。 2 「外国人の比率」は,検挙人員総数に占める外国人の比率である。 ウ 犯行態様 (ア)犯罪供用物 令和2年における詐欺の認知件数について,犯罪供用物等別構成比(犯罪供用物の種類が2以上あ る場合には,主たるものによる。)を見ると,8-3-1-10 図のとおりである。 8-3-1-10 図 詐欺 認知件数の犯罪供用物等別構成比 (令和2年) 犯罪供用物あり 総 数 (30,468) 49.5 電話・携帯電話・ファックス 注 320 77.6 犯罪供用物なし 12.6 3.7 11.9 22.4 その他 パソコン クレジットカード等 1 警察庁の統計による。 2 「犯罪供用物」は,刑法 19 条1項1号及び2号に規定する物をいい,発見,押収された物に限らず,被害者参考人等の供述等によっ て推定される物を含む。 3 犯罪供用物の種類が2以上ある場合には,主たるものによる。 4 「クレジットカード等」は,クレジットカード,キャッシュカード,消費者金融カード及びプリペイドカードである。 5 「その他」は,変(偽)造硬貨・紙幣,チラシ・パンフレット,手形・小切手,証券・債権証,商品券,通帳等を含む。 6 ( )内は,件数である。 令和 3 年版 犯罪白書

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(イ)共犯者 8-3-1-11 図は,令和2年における詐欺の検挙事件(触法少年の補導件数を含まない。また,捜査 の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。以下 (イ)において同じ。)及び刑法犯検挙事件総数について,共犯率(共犯による事件数(共犯人数不明 (共犯事件であるものの,共犯者の人数が明らかでないものをいう。以下(イ)において同じ。)のも のを含む。)の占める比率をいう。)及び共犯者数別構成比を見るとともに,これを成人又は少年のみ による事件,成人・少年共犯事件別に見たものである。共犯率は,刑法犯検挙事件総数では 13.4% であるところ,詐欺については,総数(38.7%),成人のみによる事件(成人の単独犯又は成人のみ の共犯による事件。37.0%)及び少年のみによる事件(少年の単独犯又は少年のみの共犯による事 件。52.2%)のいずれも刑法犯検挙事件総数の共犯率を大きく上回った。また,共犯による事件の うち4人以上の組によるものが占める比率について,刑法犯検挙事件総数・詐欺の別に見ると,成人 のみの共犯による事件では,それぞれ 1.1%,6.0%,少年のみの共犯による事件では,それぞれ 2.8%,6.0%,成人・少年共犯事件では,それぞれ 19.5%,22.0%であり,いずれも詐欺が刑法犯 検挙事件総数を上回った(3-1-1-7 図 CD-ROM 参照)。また,詐欺は,刑法犯検挙事件総数と比較 して,共犯による事件のうち共犯人数不明のものの構成比が高かった。 8-3-1-11 図 詐欺 検挙事件の共犯率・共犯者数別構成比 (令和2年) ① 詐 総 欺 数 (15,138) 単独 2人組 61.3 7.9 3人組 4人以上の組 共犯人数不明 4.6 6.2 20.0 38.7 63.0 (14,047) 7.9 4.4 6.0 第8 編 成人のみに よる事件 18.7 37.0 少年のみに よる事件 5.8 3.5 6.0 47.8 36.9 詐欺事犯者の実態と処遇 (918) 52.2 成人・少年 共犯事件 (173) ② 19.7 28.9 刑法犯検挙事件総数 総 22.0 共犯人数不明 4人以上の組 1.3 3人組 2.0 2人組 単独 数 29.5 86.6 (270,430) 6.2 13.4 1.7 成人のみに よる事件 88.0 (250,161) 3.9 1.1 5.5 3.7 12.0 少年のみに よる事件 74.6 (18,814) 12.5 4.1 2.8 6.0 25.4 成人・少年 共犯事件 (1,455) 注 46.7 21.1 19.5 12.7 1 警察庁の統計による。 2 検挙時の年齢による。 3 触法少年の補導件数を含まない。 4 捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。 5 「共犯人数不明」は,共犯事件であるものの,共犯者の人数が明らかでないものを計上している。 6 ( )内は,件数である。 犯罪白書 2021 321

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エ 微罪処分 詐欺の検挙人員のうち微罪処分(第2編第2章第1節参照)により処理された人員及び微罪処分率 (検挙人員に占める微罪処分により処理された人員の比率をいう。)の推移(最近 20 年間)は,8-31-12 図のとおりである。微罪処分により処理された人員は,平成 18 年(3,045 人)を最高に,翌年 から減少し続け,令和2年は 758 人(前年比 14.9%減)であった。 第3章 詐欺事犯の動向等 微罪処分率は,平成 13 年から 19 年(24.6%)まで上昇傾向にあったが,翌年から低下傾向にあ り,令和2年は 9.1%(前年比 1.0pt 低下)であった。 8-3-1-12 図 詐欺 微罪処分人員・微罪処分率の推移 (平成 13 年~令和2年) (千人) 4 (%) 50 40 3 第1節 30 詐欺事犯の動向等 微罪処分率 2 20 1 758 10 9.1 0 平成 13 注 322 15 20 25 1 警察庁の統計による。 2 「微罪処分率」は,検挙人員に占める微罪処分により処理された人員の比率をいう。 令和 3 年版 犯罪白書 30 令和2 0

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(2) 詐欺に関連する犯罪 ア 偽造 文書偽造等(文書偽造,有価証券偽造及び支払用カード偽造をいう。以下アにおいて同じ。)及び 通貨偽造の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-13 図のとおりで ある。文書偽造等の認知件数は,平成 20 年までは 4,000 件台から 6,000 件台の間で推移していたが, 21 年以降は減少傾向にあり,近年はおおむね 2,000 件前後で推移し,令和2年は 1,821 件(前年比 6.6%減)であった。通貨偽造の認知件数は,平成 14 年から大きく増加し,16 年には 7,675 件に達 したが,その後,大きく減少し,25 年以降は 1,000 件を下回って推移し,令和2年は 217 件(同 33.8%減)であった。検挙率については,文書偽造等はおおむね 80%以上の高い水準で推移してい るのに対し,通貨偽造は 60%を下回る水準で推移している。 8-3-1-13 図 文書偽造等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 文書偽造等 (千件) 8 検挙率 80 6 60 4 40 2 20 0 平成 13 15 20 ② (%) 100 25 30 令和2 0 79.1 1,821 1,441 (%) 100 80 6 60 検挙率 4 認知件数 33.2 40 2 20 0 平成 13 15 20 25 30 令和2 217 0 72 検挙件数 第8 編 注 通貨偽造 (千件) 8 1 警察庁の統計による。 2 ①の「文書偽造等」は,文書偽造,有価証券偽造及び支払用カード偽造をいう。なお,「支払用カード偽造」は,刑法第2編第 18 章 の2の支払用カード電磁的記録に関する罪をいい,平成 14 年から計上している。 詐欺事犯者の実態と処遇 イ 組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺) 組織的犯罪処罰法(本編第2章第1節1項(2)参照)違反のうち組織的な詐欺について,検察庁 新規受理人員の推移を見ると,8-3-1-14 表のとおりである。 8-3-1-14 表 組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺)検察庁新規受理人員の推移 (平成 12 年~令和2年) 区 分 検察庁新規受理人員 区 分 検察庁新規受理人員 注 12 年 - 23 年 277 13 年 2 24 年 22 14 年 18 25 年 253 15 年 106 26 年 207 16 年 106 27 年 121 17 年 281 28 年 106 18 年 241 29 年 38 19 年 322 30 年 24 20 年 240 元年 104 21 年 22 年 306 343 2年 25 1 検察統計年報による。 2 平成 12 年は,組織的犯罪処罰法の施行日である2月1日以降の数値に基づく。 犯罪白書 2021 323

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ウ その他の詐欺に関連する特別法犯 特定商取引法(本編第2章第1節2項(1)参照),犯罪収益移転防止法(同節3項(1)参照) 及び携帯電話不正利用防止法(同項(2)参照)の各違反について,検察庁新規受理人員の推移(最 近 20 年間)を見ると,8-3-1-15 図のとおりである。犯罪収益移転防止法違反は,増加傾向が顕著で あり,平成 23 年に 1,000 人を超え,29 年以降は 2,000 人を超えて推移しており,令和2年は 2,502 第3章 詐欺事犯の動向等 人(前年比 4.3%増)であった。 8-3-1-15 図 犯罪収益移転防止法違反等 検察庁新規受理人員の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 3,000 2,502 2,500 2,000 第1節 犯罪収益移転防止法 1,500 詐欺事犯の動向等 1,000 特定商取引法 500 0 平成 13 注 274 携帯電話不正利用防止法 15 20 25 30 令和2 48 1 検察統計年報による。 2 「犯罪収益移転防止法」は,同法による廃止前の金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する 法律(平成 14 年法律第 32 号。平成 16 年 12 月 10 日前の題名は「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」である。)違反 を含む。 3 「特定商取引法」は,平成 12 年法律第 120 号による改正前の訪問販売等に関する法律(昭和 51 年法律第 57 号)違反を含む。 コラム8 新型コロナウイルス感染症に関連する詐欺事犯 令和2年1月,日本国内で初めて,新型コロナウイルスの感染者が確認され,その後,我 が国の社会,経済,国民生活の在り方は大きな変容を余儀なくされた。このコラムでは,新 型コロナウイルス感染症に関連して発生した詐欺事犯について紹介する。 これまでも大規模自然災害や重大な社会的な事象が発生すると,人々の不安につけ込むよ うな手口による詐欺の発生が報告されている。今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大 でも,多くの国民が,自らや家族の感染,生活の変化,仕事や収入等に不安を感じている。 すると,その不安につけ込んで現金等をだまし取ろうとする手口が確認された。令和2年初 頭,感染予防のためマスクの需要が急激に高まり,全国的にマスクの供給が不足すると,マ スクを確保したいという人々の焦りに乗じ,インターネット上に,マスクの販売を行う旨の サイトを開設し,マスクの在庫があるように装って注文を受け,代金をだまし取ったり,ク レジットカード情報等を盗み取ったりする事案が報告された。その後も,給付金の支給等を 始めとした種々の支援策やワクチンの接種に関連し,行政機関の職員等になりすまして現金 324 令和 3 年版 犯罪白書

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等をだまし取ろうとする手口が報告されている。特殊詐欺を実行する犯罪組織は,新たな社 会不安が発生すると,これを犯行に悪用しようとする傾向があるが,新型コロナウイルス感 染症についてもその例外ではない。行政機関の職員を名乗る男から,同感染症関連の給付金 の振込に通帳等が必要であるから,受取に人を向かわせるという電話を受け,不審に思った 被害者からの通報により,警察官が受け子を逮捕したという事案が報告されている。同年に おける同感染症に関連した特殊詐欺の認知件数は 55 件,その被害額は合計約1億円であり, 検挙件数・検挙人員は 13 件,16 人であった(警察庁刑事局の資料による。)。 一方,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,多くの国民が生活や事業に影響を受 けると,これを支援するために各種の給付金等を支給する制度が設けられた。これらの制度 の中には,支援を必要とする者に迅速に支給を行うべく,必要書類を厳選して申請手続を簡 素なものとするものもあった。すると,これに乗じて,給付金等をだまし取る者が現れた。 例えば,持続化給付金制度は,同感染症の感染拡大に伴う営業自粛等により,特に大きな影 響を受けている中小企業,個人事業者等に対し,事業の継続を支え,再起の糧となるべく, 事業全般に広く使える給付金を給付することを目的とした制度であり,令和2年5月から3 年2月までの間に約 441 万件の申請がなされ,約 424 万件の中小企業,個人事業者等に約 5.5 兆円の給付金が支給された。しかしながら,これらの申請の中には,事業を実施していない のにもかかわらず申請を行う,売上げを偽って申請する,売上減少の理由が同感染症の影響 によらないのに申請に及ぶなどの不正行為に基づく申請が含まれることが判明した。その中 には,自ら不正な申請を行うにとどまらず,友人や知人等に対して不正な申請を行うように 勧誘するという例も見受けられた。同年8月 26 日現在,持続化給付金の給付要件を満たさな いにもかかわらず誤って申請を行い受給したなどとして同給付金の自主返還の申出が行われ 第8 編 た件数は,1万 9,386 件(返還済み件数・金額は,1万 4,028 件,約 151 億円)に及んでい る(中小企業庁長官官房の資料による。)。また,同年7月末現在の持続化給付金に係る詐欺 の検挙件数・検挙人員は 1,445 件,1,703 人であり,その立件額は合計約 14 億 4,200 万円に 及んでいる(警察庁刑事局の資料による。)。 詐欺事犯者の実態と処遇 このほかにも,令和2年以降に発生した詐欺の中には,新型コロナウイルス感染症に起因 して解雇や休業を余儀なくされるなどして生活困窮に陥り,これを背景に犯行をした者が含 まれる可能性もある。法務総合研究所としては,このような同感染症と犯罪動向の関係につ いて,今後も注視していくこととしたい。 【画像提供:中小企業庁長官官房】 犯罪白書 2021 325

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(3)特殊詐欺 特殊詐欺とは,例えば,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯 金口座へ振り込ませるなどの方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(恐喝及び窃 盗を含む。 )の総称をいう(特殊詐欺の類型については,8-3-1-16 表参照)。特殊詐欺は,親族等を 装って被害者に電話をかけて,身近な人が困難な状況に陥っており,金銭が至急必要であるかのよう 第3章 詐欺事犯の動向等 に信じ込ませる手口のオレオレ詐欺によるものが平成 15 年夏頃から目立ち始め,16 年には早くも認 知件数が約2万 5,700 件,被害総額(本章第3節2項(2)参照)が約 284 億円に達した。その後 も,特殊詐欺は,社会情勢の変化等に応じて手口の巧妙化・多様化が進み,今日まで依然として深刻 な情勢にある。 特殊詐欺は,主犯・指示役を中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」,自宅 等に現金等を受け取りに行く「受け子」,被害者からだまし取った金銭を ATM(CD を含む。以下こ の編において同じ。 )から引き出す「出し子」,犯行に悪用されることを承知しながら,犯行拠点を あっせんしたり,架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等を調達したりする「犯行準備役」等から なる犯行グループにより,役割分担の上,組織的に敢行されている。 第1節 8-3-1-16 表 特殊詐欺の類型 詐欺事犯の動向等 オレオレ詐欺 親族,警察官,弁護士等を装い,親族が起こした事件・事故に対する示談金等を名目に金銭等を だまし取る(脅し取る)ものをいう。 預貯金詐欺 親族,警察官,銀行協会職員等を装い,あなたの口座が犯罪に利用されており,キャッシュカー ドの交換手続が必要であるなどの名目で,キャッシュカード,クレジットカード,預貯金通帳等 をだまし取る(脅し取る)ものをいう。 架空料金請求詐欺 未払いの料金があるなど架空の事実を口実とし金銭等をだまし取る(脅し取る)ものをいう。 還付金詐欺 税金還付等に必要な手続を装って被害者に ATM を操作させ,口座間送金により財産上の不法の 利益を得る電子計算機使用詐欺事件又は詐欺事件をいう。 融資保証金詐欺 実際には融資しないにもかかわらず,融資を申し込んできた者に対し,保証金等の名目で金銭等 をだまし取る(脅し取る)ものをいう。 金融商品詐欺 架空又は価値の乏しい未公開株,社債等の有価証券,外国通貨,高価な物品等に関する虚偽の情 報を提供し,購入すれば利益が得られるものと誤信させ,その購入名目等で金銭等をだまし取る (脅し取る)ものをいう。これら金融商品に対して,購入意思のない被害者に名義貸しをさせた後, 名義貸しをしたことによるトラブル解決名目等で金銭等をだまし取る(脅し取る)ものを含む。 ギャンブル詐欺 不特定多数の者が購入する雑誌に「パチンコ打ち子募集」等と掲載したり,不特定多数の者に対 して同内容のメールを送信するなどし,これに応じて会員登録等を申し込んできた被害者に対し て会員登録料や情報料等の名目で金銭等をだまし取る(脅し取る)ものをいう。 交際あっせん詐欺 不特定多数の者が購入する雑誌に「女性紹介」等と掲載したり,不特定多数の者に対して「女性 紹介」等を記載したメールを送信するなどし,これに応じて女性の紹介等を求めてきた被害者に 対して会員登録料金や保証金等の名目で金銭等をだまし取る(脅し取る)ものをいう。 その他の特殊詐欺 上記特殊詐欺の類型に該当しない特殊詐欺をいう。 警察官や銀行協会,大手百貨店等の職員を装って被害者に電話をかけ,「キャッシュカードが不 キャッシュカード詐欺盗 正に利用されている」等の名目により,キャッシュカード等を準備させた上で,隙を見るなどし, キャッシュカード等を窃取するものをいう。 注 326 1 2 令和 3 年版 警察庁刑事局の資料による。 預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類したものである。 犯罪白書

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ア 認知件数・検挙件数・検挙率 (ア) 概要 特殊詐欺の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(統計の存在する平成 16 年以降)を見ると, 8-3-1-17 図のとおりである。特殊詐欺の各類型について集計を始めた時期が異なる点等には留意す る必要があるが,認知件数は,16 年に2万 5,667 件に達した後,翌年から 19 年まで減少し,20 年 (2万 481 件)に一旦増加したものの,21 年に大きく減少して1万件を下回り,22 年には 6,888 件 まで減少した。その後,23 年から 29 年(1万 8,212 件)まで増加し続けたのを経て,30 年からは 減少し続けており,令和2年は1万 3,550 件(前年比 19.6%減)であった。検挙件数は,平成 16 年 から 21 年(5,669 件)まで増加し,23 年(2,556 件)に大きく減少したが,24 年からは増加傾向に あり,令和2年は 7,424 件(同 8.9%増)であり,平成 16 年以降最多となった。 8-3-1-17 図 特殊詐欺 認知件数・検挙件数・検挙率の推移 (平成 16 年~令和2年) ( 千件 ) 30 (%) 100 25 検挙率 80 54.8 20 60 13,550 15 40 10 20 25 注 令和2 0 検挙件数 詐欺事犯者の実態と処遇 認知件数 30 第8 編 20 5 0 平成 16 7,424 1 2 警察庁刑事局の資料による。 各数値は,次の類型の合計である。 平成 16 年~ 17 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺及び融資保証金詐欺 18 年~ 21 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺 22 年~ 29 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺 30 年~令和元年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺及びキャッシュカード詐欺盗 2年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺,キャッシュカード詐欺盗及び預貯金詐欺 3 金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺については,認知件数は平成 22 年2月から, 検挙件数は 23 年1月からの数値をそれぞれ計上している。 4 預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類したものである。 特殊詐欺について,平成 30 年以降における月別の認知件数の推移を見ると,8-3-1-18 図のとおり である。いずれの年も,3月の認知件数が多く,1月の認知件数が最も少ない。前月の認知件数から の増減を見ると,30 年及び令和元年については,2月から3月にかけて増加し,4月から5月にか けて減少した後,6月から7月にかけて増加ないし横ばいとなり,8月に一旦減少するも,9月から 10 月にかけて増加した後,11 月及び 12 月は横ばいとなる動きを見せていたが,2年については, 2月から3月にかけて増加した後,4月以降,おおむね横ばい状態で推移した後,12 月に増加する という動きを示している。 犯罪白書 2021 327

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8-3-1-18 図 特殊詐欺 認知件数の推移(月別) (平成 30 年~令和2年) (件) 1,800 令和2年 1月 999 2月 1,106 3月 1,345 4月 1,190 5月 1,105 6月 1,132 7月 1,071 8月 1,108 9月 1,139 10 月 1,119 11 月 1,004 12 月 1,232 1,600 第3章 詐欺事犯の動向等 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 第1節 0 1 2 3 4 5 平成 30 年 詐欺事犯の動向等 注 6 7 8 令和元年 9 10 11 12月 令和2年 1 2 警察庁刑事局の資料による。 各数値は,次の類型の合計である。 平成 30 年~令和元年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺及びキャッシュカード詐欺盗 2年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺,キャッシュカード詐欺盗及び預貯金詐欺 3 預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類したものである。 (イ) 類型別 特殊詐欺の認知件数及び検挙件数の推移(統計の存在する平成 16 年以降)を類型(8-3-1-16 表参 照)別に見ると,8-3-1-19 図のとおりである。令和2年における類型別の認知件数は,オレオレ詐 欺(6,407 件。同年においては「預貯金詐欺」を含む。特に断らない限り,以下この項において同 じ。 )が最も多く,次いで,キャッシュカード詐欺盗(2,850 件),架空料金請求詐欺(2,010 件), 還付金詐欺(1,804 件) ,融資保証金詐欺(295 件),ギャンブル詐欺(98 件),金融商品詐欺(58 件) ,交際あっせん詐欺(22 件)の順であり,その他の特殊詐欺が6件であった。 特殊詐欺の各類型について集計を始めた時期が異なる点等には留意する必要があるが,各年におけ る各類型の認知件数が特殊詐欺全体の認知件数に占める割合を見ると,オレオレ詐欺は,融資保証金 詐欺が最も高い割合を占めた平成 17 年及び 18 年を除いて最も高く,19 年以降,35%台から 64%台 の間で推移し,令和2年は 47.3%であった。平成 30 年から集計されているキャッシュカード詐欺盗 の各年の認知件数が特殊詐欺全体の認知件数に占める割合は,令和元年(22.4%),2年(21.0%) において,オレオレ詐欺に次いで高かった。他方,平成 17 年に 46.0%と最も高い割合を占めた融資 保証金詐欺は,22 年(5.3%。前年比 15.1pt 低下)に大きく低下して以降,低下傾向にあり,令和 2年は 2.2%であった。また,金融商品詐欺も,平成 24 年の 22.8%を最高に,25 年(15.6%)から 低下傾向にあり,令和2年は 0.4%であった。同年の検挙率を類型別に見ると,キャッシュカード詐 欺盗(90.9%),融資保証金詐欺(67.1%),その他の特殊詐欺(66.7%),金融商品詐欺(63.8%), 交際あっせん詐欺(63.6%)及びオレオレ詐欺(56.3%)が,特殊詐欺全体(54.8%)を上回った (CD-ROM 参照)。 328 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-19 図 特殊詐欺 認知件数・検挙件数の推移(類型別) (平成 16 年~令和2年) ① オレオレ詐欺 (千件) 16 14 12 10 8 令和2年 認知件数(オレオレ詐欺) 認知件数(預貯金詐欺) 検挙件数(オレオレ詐欺) 検挙件数(預貯金詐欺) 6 4 2 0 平成 16 20 25 2,272 4,135 1,890 1,715 30 令和2 (平成 16 年~令和2年) ② 架空料金請求詐欺 (平成 18 年~令和2年) ③ 還付金詐欺 (千件) 10 (千件) 10 8 6 6 4 4 2 2 2,010 490 20 25 0 平成 18 30 令和2 1,804 450 20 25 (平成 16 年~令和2年) ④ 融資保証金詐欺 金融商品詐欺 (千件) 10 8 8 6 6 4 4 295 2 0 平成 16 198 20 30 令和2 (平成 22 年~令和2年) ⑤ (千件) 10 詐欺事犯者の実態と処遇 0 平成 16 第8 編 8 25 30 令和2 認知件数 2 0 平成 22 58 37 25 30 令和2 検挙件数 犯罪白書 2021 329

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(平成 22 年~令和2年) ⑥ ギャンブル詐欺 (平成 22 年~令和2年) ⑦ (件) 1,000 交際あっせん詐欺 (件) 100 第3章 詐欺事犯の動向等 800 80 600 60 400 40 98 200 0 平成 22 35 25 詐欺事犯の動向等 その他の特殊詐欺 第1節 ⑧ 800 14 0 平成 22 30 令和2 (平成 22 年~令和2年) (件) 1,000 22 20 25 30 令和2 (平成 30 年~令和2年) ⑨ キャッシュカード詐欺盗 (千件) 4 2,850 2,591 3 600 2 400 6 200 4 0 平成 22 25 0 平成 30 令和元 30 令和2 認知件数 注 1 2 検挙件数 1 警察庁刑事局の資料による。 2 金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺については,認知件数は平成 22 年2月から,検挙件数は 23 年1月からの数値をそれぞれ計上している。 特殊詐欺のうちオレオレ詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(最近 10 年間)を見る と,8-3-1-20 図のとおりである。平成 23 年は,借金等の返済名目が,24 年及び 25 年は,妊娠中絶 費用等名目が,26 年以降は,横領事件等示談金名目が, 「その他の名目」を除いてそれぞれ最も多く, 27 年以降は,例年,横領事件等示談金名目,借金等の返済名目,妊娠中絶費用等名目の順に多い。 令和2年における「その他の名目」 (6,109 件)の中では,預貯金詐欺が 4,135 件,損失保証金等名 目が 1,377 件であった(CD-ROM 参照)。 330 令和 3 年版 犯罪白書

348.

8-3-1-20 図 特殊詐欺(オレオレ詐欺)認知件数の推移(形態(文言)別) (平成 23 年~令和2年) (千件) 8 その他の名目 7 6,109 6 5 4 3 2 借金等の返済名目 妊娠中絶費用等名目 1 0 平成 23 注 傷害事件等示談金名目 横領事件等示談金名目 痴漢事件等示談金名目 25 30 令和2 118 111 40 23 6 1 警察庁刑事局の資料による。 2 令和 2 年は,預貯金詐欺を含む。 3 「その他の名目」には,親族,警察官等を装って電話をかけ,口座の凍結が必要であるなどと称してキャッシュカード,預貯金通 帳等をだまし取るものなどがあり,令和 2 年は預貯金詐欺に係る認知件数全件を含む。 特殊詐欺のうち架空料金請求詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(最近 10 年間)を 見ると,8-3-1-21 図のとおりである。「その他の名目」を除くと,有料サイト利用料金等名目が一貫 第8 編 して最も多く,同名目が架空料金請求詐欺全体の認知件数に占める割合は,24%台から 60%台の間 で推移しており,令和2年は 52.0%であった。 8-3-1-21 図 特殊詐欺(架空料金請求詐欺)認知件数の推移(形態(文言)別) 詐欺事犯者の実態と処遇 (平成 23 年~令和2年) (件) 3,500 3,000 有料サイト利用料金等名目 2,500 その他の名目 2,000 1,500 1,046 1,000 訴訟関係費用等名目 818 500 0 平成 23 注 1 2 3 情報買取抹消料金等名目 25 30 134 12 令和2 警察庁刑事局の資料による。 令和元年までの「情報買取抹消料金等名目」は,「情報購入代金等名目」をいう。 令和2年の「その他の名目」には,「名義貸しトラブル等名目」を含む。 犯罪白書 2021 331

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特殊詐欺のうち還付金詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(資料を入手し得た平成 24 年以降)を見ると,8-3-1-22 図のとおりである。医療費名目は,29 年を除いて,他の名目より も多い。健康保険・社会保険等名目は,24 年から 28 年にかけて増加し,29 年には医療費名目を上 回ったが,翌年には大きく減少した。令和2年における医療費名目及び健康保険・社会保険等名目の 合計が還付金詐欺全体の認知件数に占める割合は,91.6%であった。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-1-22 図 特殊詐欺(還付金詐欺)認知件数の推移(形態(文言)別) (平成 24 年~令和2年) (件) 1,800 医療費名目 1,600 1,400 1,200 1,105 1,000 第1節 800 健康保険・社会保険等名目 詐欺事犯の動向等 600 400 その他の名目 200 税金名目 0 平成 24 注 1 2 イ 548 102 25 年金名目 25 30 令和2 24 警察庁刑事局の資料による。 本図は,資料を入手し得た平成 24 年以降の数値で作成した。 検挙人員 (ア) 概要 特殊詐欺の検挙人員の推移(統計の存在する平成 16 年以降)を見ると,8-3-1-23 図のとおりであ る。詐欺全体の検挙人員が 22 年以降減少傾向にあるのに対し(8-3-1-4 図参照),特殊詐欺の検挙人 員は,24 年に 1,000 人を,27 年に 2,000 人をそれぞれ上回ると,令和元年には 2,861 人に達し,2 年は 2,621 人(前年比 8.4%減)であった。なお,平成 26 年以降の特殊詐欺4類型(オレオレ詐欺, 架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺をいう。以下この項において同じ。)の検挙人員 を見ると,30 年に 2,609 人に達した後,減少し,令和2年は 1,848 人(同 21.0%減)であった。特 殊詐欺4類型の女性検挙人員を見ると,平成 26 年(48 人)から令和2年(172 人)まで増加傾向に あり,特殊詐欺4類型の検挙人員に占める女性検挙人員の比率も,平成 26 年(3.2%)以降上昇傾向 にあり,令和2年は 9.3%であった(CD-ROM 参照)。 332 令和 3 年版 犯罪白書

350.

8-3-1-23 図 特殊詐欺 検挙人員の推移 (平成 16 年~令和2年) (人) 3,000 2,621 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 平成 16 注 20 25 30 令和2 1 2 第8 編 警察庁刑事局の資料による。 各数値は,次の類型の合計である。 平成 16 年~ 17 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺及び融資保証金詐欺 18 年~ 21 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺 22 年~ 29 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺 30 年~令和元年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺及びキャッシュカード詐欺盗 2年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺, 交際あっせん詐欺,その他の特殊詐欺,キャッシュカード詐欺盗及び預貯金詐欺 3 金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺については,平成 23 年1月からの数値をそれ ぞれ計上している。 4 預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和2年1月から新たな手口として分類したものである。 令和2年の各都道府県における特殊詐欺の検挙人員について,人口比(各都道府県における人口 10 万人当たりの人員)を地方別・人口規模別に見ると,8-3-1-24 図のとおりである。人口比は,人 詐欺事犯者の実態と処遇 口が多い都道府県で高い傾向があり,これを高等検察庁の管轄に対応する地方別で見ると,関東地方 (東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県及び新潟 県)が 3.1,近畿地方(大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県及び和歌山県)が 2.1,中国地方 が 1.6,中部地方(愛知県,三重県,岐阜県,福井県,石川県及び富山県)が 1.2,北海道・東北地 方が 1.1,四国地方が 0.9,九州・沖縄地方が 0.8 であった。もっとも,都道府県別の検挙人員及び人 口比は,検挙した都道府県の管轄区域によるものであり,検挙された者や被害者が必ずしも検挙した 都道府県の居住者とは限らない点に留意が必要である。 犯罪白書 2021 333

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8-3-1-24 図 特殊詐欺 検挙人員の都道府県別人口比(地方別・人口規模別) (令和2年) ① 地方別 ② 人口規模別 1,000 万人以上 北海道・東北地方 4 第3章 詐欺事犯の動向等 九州・沖縄地方 3 5 4 関東地方 2 1 0 四国地方 中国地方 注 中部地方 100 万人未満 近畿地方 3 2 1 0 500 ~ 1,000 万人 100 ~ 500 万人 1 警察庁刑事局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 「人口比」は,各都道府県における人口 10 万人当たりの特殊詐欺検挙人員である。 3 ①の「北海道・東北地方」は札幌・仙台, 「関東地方」は東京, 「中部地方」は名古屋, 「近畿地方」は大阪, 「中国地方」は広島, 「四 国地方」は高松,「九州・沖縄地方」は福岡の各高等検察庁の管轄に対応する。 第1節 (イ) 年齢層別の推移 詐欺事犯の動向等 特殊詐欺4類型の検挙人員について,犯行時の年齢層別構成比の推移(資料を入手し得た平成 26 年以降)を見ると,8-3-1-25 図のとおりである(男女別については,CD-ROM 参照)。検挙人員に おける 30 歳未満の若年者層の構成比は,詐欺全体では 30%台で推移しているのに対し(8-3-1-5 図 CD-ROM 参照) ,特殊詐欺4類型では 62%台から 73%台の間で推移しており,令和2年は 72.1% であった(前年比 1.2pt 低下)。 8-3-1-25 図 特殊詐欺 検挙人員の年齢層別構成比の推移 (平成 26 年~令和2年) (%) 100 80 令和2年 65歳 以 上 50~64歳 40~49歳 30~39歳 20~29歳 20歳 未 満 60 40 0.6 3.0 8.5 15.7 53.5 18.7 20 0 注 334 平成 26 30 令和2 1 警察庁刑事局の資料による。 2 本図は,資料を入手し得た平成 26 年以降の数値で作成した。 3 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺の検挙人員に限る。ただし,令和 2 年のオレオレ詐欺には預貯金 詐欺を含む。 4 犯行時の年齢による。 令和 3 年版 犯罪白書

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少年(触法少年を除く。)による特殊詐欺4類型の検挙人員及び人口比(各年齢層の少年 10 万人当 たりの検挙人員)の推移(資料を入手し得た平成 26 年以降)を犯行時の年齢層別に見ると,8-3-126 図のとおりである。特殊詐欺4類型の検挙人員は,いずれの年齢層も 30 年(年少少年 40 人(26 年比 25 人増),中間少年 273 人(同 156 人増),年長少年 468 人(同 274 人増))まで増加傾向にあっ たが,令和元年から減少し,2年は,順に 12 人,124 人,209 人であった。少年による特殊詐欺の 人口比も,同様の傾向であり,平成 30 年に年少少年(1.8),中間少年(11.7),年長少年(19.1) に達した後,いずれの年齢層も低下した。 8-3-1-26 図 少年による特殊詐欺 検挙人員・人口比の推移(年齢層別) (平成 26 年~令和2年) (人) 800 700 600 20 令和2年検挙人員 年長少年 209 中間少年 124 年少少年 12 15 345 400 10 300 年長少年 8.6 200 5 100 注 中間少年 5.4 年少少年 0.6 平成 26 30 令和2 0 第8 編 0 人 口 比 検挙人員 500 犯罪白書 2021 詐欺事犯者の実態と処遇 1 警察庁刑事局の資料及び総務省統計局の人口資料による。 2 本図は,資料を入手し得た平成 26 年以降の数値で作成した。 3 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺の検挙人員に限る。ただし,令和2年のオレオレ詐欺には,預貯 金詐欺を含む。 4 犯行時の年齢による。 5 触法少年の補導人員を含まない。 6 「人口比」は,各年齢層の少年 10 万人当たりの特殊詐欺検挙人員である。ただし,令和2年の人口比は,元年 10 月1日現在の人口 を使用して算出した。 335

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(ウ) 暴力団構成員等の推移 特殊詐欺について,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下(ウ) において同じ。)の検挙人員及び検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率の推移(資料を入手し 得た平成 24 年以降)を見ると,8-3-1-27 図のとおりである。暴力団構成員等の検挙人員は,27 年 (826 人)を最多に,翌年から減少傾向にある。検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,26 第3章 詐欺事犯の動向等 年の 35.2%を最高に,翌年から低下し続け,令和2年は 15.3%(前年比 2.9pt 低下)であった。 8-3-1-27 図 特殊詐欺 暴力団構成員等検挙人員等の推移 (平成 24 年~令和2年) (%) 100 (人) 1,000 第1節 800 80 600 60 402 詐欺事犯の動向等 400 暴力団構成員等の比率 20 200 0 注 1 2 3 4 40 平成 24 30 令和2 15.3 0 警察庁刑事局の資料による。 本図は,資料を入手し得た平成 24 年以降の数値で作成した。 「暴力団構成員等」は,暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。 「暴力団構成員等の比率」は,検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率である。 (エ) 外国人 特殊詐欺について,外国人の検挙人員及び検挙人員総数に占める外国人の比率の推移(資料を入手 し得た平成 24 年以降)を見ると,8-3-1-28 図のとおりである。刑法犯の外国人検挙人員は,同年以 降,1万人前後で推移しているのに対し(4-9-2-1 図 CD-ROM 参照) ,特殊詐欺については,29 年 までは 20 人台から 60 人台の間で推移していたが,30 年に 122 人(前年比 96.8%増)と急増した後 も増加し続け,令和2年は 136 人(同 0.7%増)と最多を更新した。2年の外国人検挙人員を国籍別 に見ると,中国(97 人,71.3%)が最も多く,次いで,韓国(10 人,7.4%),ベトナム(7人, 5.1%) ,タイ及びブラジル(それぞれ6人,4.4%)の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。 外国人の比率は,上昇傾向にあり,同年は 5.2%(同 0.5pt 上昇。平成 24 年の 3.2 倍)と最高を記録 した。 336 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-28 図 特殊詐欺 外国人検挙人員等の推移 (平成 24 年~令和2年) (人) 150 (%) 50 136 40 100 30 20 50 10 外国人の比率 0 注 5.2 平成 24 令和2 30 0 1 警察庁刑事局の資料による。 2 本図は,資料を入手し得た平成 24 年以降の数値で作成した。 3 「外国人の比率」は,検挙人員総数に占める外国人の比率である。 (4) 通信傍受の状況 詐欺は,一定の要件の下,犯罪捜査のための通信傍受の対象となる(本編第2章第3節1項参照)。 第8 編 詐欺について,通信傍受実施事件数及び傍受令状発付件数の推移(平成 28 年以降)を見ると,8-31-29 表のとおりである。 8-3-1-29 表 詐欺 通信傍受実施事件数・傍受令状発付件数の推移 詐欺事犯者の実態と処遇 (平成 28 年~令和2年) 年 注 次 通 実 信 傍 施 事 件 受 傍 数 発 受 付 令 件 状 数 28 年 1 5 29 3 12 30 4 16 元 2 5 2 2 3 1 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律 36 条の規定に基づく政府 の国会報告・公表資料による。 2 詐欺及び電子計算機使用詐欺に係る事件に限る。 3 詐欺が犯罪捜査のための通信傍受の対象となる犯罪となった平成 28 年 12 月からの数値を計上している。 犯罪白書 2021 337

355.

コラム9 特殊詐欺撲滅に向けた官民の取組 特殊詐欺は,平成 15 年夏頃にオレオレ詐欺の形態によるものが目立ち始めて以降,今日に 至るまで,我が国において,重大な社会問題となっている。この間,政府においても,特殊 詐欺の撲滅に向けて,特殊詐欺事犯の取締りを進めるとともに,官民一体となった対策を推 第3章 詐欺事犯の動向等 進してきた。警察庁は,早期の段階から,捜査体制を強化していたところ,16 年には,オレ オレ詐欺,架空料金請求詐欺及び融資保証金詐欺を「振り込め詐欺」(19 年 10 月には還付金 詐欺を追加)と総称し,対策の更なる強化を図り,20 年6月には「振り込め詐欺対策室」を 設置し,全庁的な取組体制を確立した。警察庁及び法務省は,同年7月,振り込め詐欺を撲 滅し,真に安心・安全な社会を取り戻すべく,官民を挙げた取組を推進するため,振り込め 詐欺対策における基本的な考え方及び方針を示すものとして,「振り込め詐欺撲滅アクション プラン」を共同で策定・公表した。特殊詐欺の認知件数は,21 年に大幅に減少したものの, 23 年からは増加に転じ,29 年には約1万 8,000 件の高水準に達している(8-3-1-17 図参 照) 。この間,犯罪対策閣僚会議(第5編第1章1項参照)は,「「世界一安全な日本」創造戦 略」 (平成 25 年 12 月 10 日閣議決定)の中で,「特殊詐欺対策の強化」として,「総合的な特 第1節 殊詐欺被害防止対策等の推進」 , 「特殊詐欺等に係る犯行ツールの遮断対策の推進」及び「振 り込め詐欺を始めとする特殊詐欺事件の検挙」を進めることとした。犯罪対策閣僚会議は, 詐欺事犯の動向等 令和元年6月には,「オレオレ詐欺等対策プラン」を決定し,その後,各府省庁において,同 プランに基づき,国民,各地方公共団体,各種団体,民間事業者等の協力を得ながら,特殊 詐欺の撲滅に向けた取組を進めている。これらの取組は多種多様な内容を含むものであるが, このコラムでは,特殊詐欺撲滅に向けた官民の取組のうち,主に,特殊詐欺の被害防止対策 を紹介する。 1 犯行ツールとなり得る携帯電話等の不正利用防止 特殊詐欺は,犯人が被害者と対面することなく,電話等を介して被害者をだますことに特 徴があり,犯人グループとしては,必然的に,検挙を免れるため,身元の特定が困難な電話 を確保することに意を注ぐことになる。特殊詐欺が目立つようになってから間もない段階で は,本人確認の手続を経ることなく入手可能であったプリペイド式携帯電話が多用されてい た。そこで,平成 17 年4月,携帯電話不正利用防止法が成立し(18 年4月全面施行),携帯 電話に係る役務提供契約締結時における携帯音声通信事業者の本人確認義務に関する規定と 共に,携帯電話の不正な譲渡・貸与等に関する罰則を設け,犯人グループが匿名性の高い携 帯電話を入手することを困難とした(本編第2章第1節3項(2)参照)。 その後,携帯電話レンタル事業者には本人確認記録の作成等の義務が課せられていなかっ たことに乗じて,悪質な事業者から匿名で貸与を受けたレンタル携帯電話を利用した特殊詐 欺が急増した。平成 20 年6月,携帯電話不正利用防止法が改正され(同年 12 月施行),携帯 電話レンタル事業者に対し,契約締結時の本人確認とその記録の保存を義務付けた。なお, 同改正により,SIM カード(契約者特定記録媒体)単体の不正売買も処罰の対象とされた。 26 年から,警察は,不正に契約された携帯電話を捜査等で把握した場合に,提供元の携帯電 話事業者に情報を提供し,携帯電話レンタル事業者への役務提供拒否(強制解約)を要請す る制度(以下このコラムにおいて「役務提供拒否の情報提供制度」という。)を開始し,同制 度の運用により,匿名レンタル携帯電話の供給元となっていた悪質な携帯電話レンタル事業 者が減少した。 平成 28 年頃から,MVNO(仮想移動体通信事業者。自ら無線局を開設・運用せずに移動 通信サービスを提供する電気通信事業を行う。)には,実店舗を持たず,インターネット経由 338 令和 3 年版 犯罪白書

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で契約の申込みを受ける事業者が多いことに乗じ,偽変造した身分証明書を用いて偽名で契 約を行い,MVNO から入手した携帯電話が特殊詐欺に使用されることが多くなった。警察 は,同年から,MVNO についても,役務提供拒否の情報提供制度の対象とし,29 年からは, 特殊詐欺の犯行に利用されている携帯電話を把握したときに,当該電話が継続的に悪用され ることを阻止するため,MVNO を含む提供元の携帯電話事業者に対して当該携帯電話の利 用停止を要請する制度を運用している。 携帯電話の不正利用対策が進んだこともあり,近年は,電話転送サービスを悪用して,犯 行グループの携帯電話等から相手方に固定電話番号を表示させて電話をかけるなどの手法が 多用されている。その対策として,令和元年から,警察の要請に基づき,固定電話番号を提 供する電気通信事業者が犯行に利用された固定電話番号を利用停止とするほか,一定の基準 を超えて利用停止要請の対象となった電話転送サービス事業者に対しては,電気通信事業者 が連携して新たな固定電話の提供を一定期間行わないなどの対策を進めている。 2 犯行ツールとなり得る預貯金口座の不正利用防止 特殊詐欺では,犯人が被害者に対し,被害金の振込先として,他人名義や架空人名義の預 貯金口座を指定することも多かった。そこで,平成 16 年 12 月,金融機関等による顧客等の 本人確認等に関する法律(平成 14 年法律第 32 号)が改正され(法律の題名も「金融機関等 による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」に変更され た。 ) ,預貯金通帳等の有償譲受け等に関する罰則が整備された(本編第2章第1節3項(1) 参照) 。 特殊詐欺の犯行に利用された預貯金口座について,金融機関に対する迅速な口座凍結依頼 を実施するほか,凍結された預貯金口座の名義人のリストを警察庁が作成し,一般社団法人 3 第8 編 全国銀行協会等へ提供することにより,不正口座の開設の防止を推進している。 金融機関との連携 特殊詐欺の被害者が多額の現金をだまし取られることを防ぐため,金融機関においては, 顧客に対し,1日当たりの ATM 利用限度額の引下げを推奨している。また,一定年数以上 詐欺事犯者の実態と処遇 にわたって ATM での振込実績のない高齢者の ATM 振込限度額をゼロ円又は極めて少額と し,窓口に誘導する取組を実施している。さらに,被害者が犯人から携帯電話を通じて指示 を受けて自ら ATM を操作して振込を行うことを防止するため,一部の金融機関では,ATM 周辺に,携帯電話の電波を遮断して携帯電話を利用することができなくなる装置や,携帯電 話を利用した際に生じる電波を感知して顧客に警告を発する装置を設置する取組を行ってい る。このように,被害者自身による ATM を使った被害金の振込を予防することに加え,金 融機関では,窓口で高額の払戻しを申し込むなどした高齢者について,現金を必要とする理 由を確認するなどの声掛けをしたり,警察への通報を行ったりしている。 4 その他の事業者との連携 犯人グループが被害者に対して現金の送付を指示する手口が増加したことから,警察と宅 配事業者が連携し,過去に犯行に使用された被害金送付先のリストを活用して,不審な宅配 便の発見や警察への通報等の取組を促進している。また,郵便・宅配事業者やコンビニエン スストアは,荷受時に,運送約款に基づく取扱いができない現金が宅配便に在中していない かどうかの声掛け等による注意喚起を行っている。コンビニエンスストアでは,電子マネー 型の手口による特殊詐欺への対策として,電子マネー購入希望者への声掛けも行っている。 犯罪白書 2021 339

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5 国民から寄せられた情報の活用 警察は,110 番通報のほか,警察相談専用電話(全国統一番号「#(シャープ)9110」), 専用メールアドレス等の様々な窓口を通じ,特殊詐欺に関する情報を受け付けているほか, 平成 27 年からは,匿名通報ダイヤルで特殊詐欺に関する情報を受け付け,国民から寄せられ 第3章 詐欺事犯の動向等 た情報を活用し,携帯電話の契約者確認の求めや,振込先指定口座の凍結依頼等につなげて いる。また,金融機関を経由した手口への対策を講じたこともあり,21 年頃から,受け子 (本項(3)参照)が現金やキャッシュカードを受け取りに来る手口が目立つようになったこ とから,警察では,被害者の協力を得て,いわゆる「だまされた振り作戦」(特殊詐欺の電話 等を受け,特殊詐欺であると見破った場合に,だまされた振りをしつつ,犯人に現金等を手 渡しする約束をした上で警察へ通報してもらい,自宅等の約束した場所に現れた犯人を検挙 する,国民の積極的かつ自発的な協力に基づく検挙手法)を実施して特殊詐欺犯人の検挙を 行っている。 6 地方公共団体の取組 「県民を特殊詐欺被害から守る条例」(熊本県),「柏市振り込め詐欺等被害防止等条例」(千 第1節 葉県柏市)のように,一部の地方公共団体は,特殊詐欺の被害防止,被害者支援等を目的と する条例を制定している。また,高齢者の被害を予防するため,電話機の呼出音が鳴る前に 詐欺事犯の動向等 犯人に対し犯罪被害防止のために通話内容が自動で録音される旨の警告アナウンスを流し, 犯人からの電話を自動で録音する機器を高齢者に無償で貸し出したり同機器の購入に補助金 を支給したりする地方公共団体がある。 7 広報啓発活動の推進 「オレオレ詐欺等対策プラン」の下,全府省庁において,公的機関,各種団体,民間事業者 等の幅広い協力を得ながら,特殊詐欺被害防止のための広報啓発イベントの実施,SNS や ウェブサイト等による情報発信等を通じて,特殊詐欺被害の実態,被害防止対策等を幅広い 世代に対して分かりやすく伝えるための広報啓発活動を展開している。特に,警察は,特殊 詐欺の発生が目立ち始めて間もない頃から,ウェブサイト,ポスター,パンフレット等で, 犯行手口,被害実態,被害に遭わないための注意事項を紹介するなど,被害防止のための広 報啓発活動に取り組んできた。各都道府県警察は,広報啓発効果を高めるため,特殊詐欺犯 人から実際にかかってきた電話を録音した音声をウェブサイトで公開したり,地方公共団体 や防犯ボランティアと連携して紙芝居・寸劇等を用いた防犯教室を開いたり,SNS を活用す るなどの工夫をこらしている。 特殊詐欺の犯人グループは,これまで特殊詐欺撲滅対策の内容に応じ,犯行の手口(連絡 手段,文言,金銭獲得方法等)を多様化・巧妙化させながら,犯行を継続してきた。特殊詐 欺の撲滅のためには,特殊詐欺の犯人について効果的な取締りを推進するとともに,官民を 挙げた被害防止の取組を不断に進めていくことが必要不可欠である。 340 令和 3 年版 犯罪白書

358.

検察 2 (1)被疑事件の受理 ア 全体 8-3-1-30 図は,詐欺の検察庁新規受理人員の推移(最近 30 年間)を見たものである。詐欺は,平 成3年以降,11 年まで1万 1,000 人前後で推移していたが,翌年から増加傾向となり,21 年(1万 9,951 人)にはピークを迎えた。その後,28 年までは1万 7,000 人台から1万 8,000 人台の間で推 移していたが,同年以降は減少し続け,令和2年は1万 3,593 人(前年比 8.2%減)であり,そのう ち,検察官が自ら認知し,又は告訴・告発を受けたのは,206 人であった(検察統計年報による。)。 詐欺のうち電子計算機使用詐欺の検察庁新規受理人員は,平成4年以降,20 人台から 60 人台の間で 推移した後,13 年(120 人)に急増して 19 年までは 50 人台から 110 人台の間で推移していたが, 20 年(346 人)に再び急増して以降は 120 人台から 490 人台の間で推移して 29 年(511 人)にピー クを迎え,その後は減少傾向にあり,令和2年は 343 人(同 0.9%減)であった(CD-ROM 参照)。 8-3-1-30 図 詐欺 検察庁新規受理人員の推移 (平成3年~令和2年) (千人) 20 詐欺 15 13,593 第8 編 10 詐欺事犯者の実態と処遇 5 0 平成3 注 電子計算機使用詐欺 5 10 15 20 25 30 令和2 343 1 検察統計年報による。 2 「電子計算機使用詐欺」は, 「詐欺」の内数である。 犯罪白書 2021 341

359.

イ 少年 8-3-1-31 図は,少年による詐欺の検察庁新規受理人員の推移(最近 20 年間)を年齢層別に見たも のである。少年による詐欺は,平成 13 年以降,増加し続け,16 年(1,409 人)に急増した後は 1,000 人台から 1,600 人台の間で推移していたが,令和2年は 809 人(前年比 25.1%減)であった。年齢 層別では,年長少年の人員が一貫して最も多い。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-1-31 図 少年による詐欺 検察庁新規受理人員の推移(年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (人) 1,800 1,500 1,200 第1節 900 詐欺事犯の動向等 600 809 521 300 245 0 平成 13 15 20 年少少年 注 342 1 2 令和 3 年版 検察統計年報による。 受理時の年齢による。 犯罪白書 25 中間少年 年長少年 30 令和2 43

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(2)被疑事件の処理 ア 概要 詐欺(刑法 246 条及び 248 条に規定する罪に限る。以下アにおいて同じ。)及び電子計算機使用詐 欺の検察庁終局処理人員の処理区分別構成比の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-32 図のとおり である。検察庁終局処理人員の総数に占める家庭裁判所送致の比率(2-2-4-1 図 CD-ROM 参照)は, 近年低下傾向にあり,平成 13 年に 11.9%であったものが,令和2年には 5.3%となったのに対し, 詐欺は,平成 13 年に 3.9%であったものが,その後 30 年の 9.4%を最高に,上昇と低下を繰り返し, 令和2年は 5.2%であった。 8-3-1-32 図 詐欺 検察庁終局処理人員の処理区分別構成比の推移(罪名別) (平成 13 年~令和2年) ① 詐欺 ② (%) 100 (%) 100 5.2 20.7 80 電子計算機使用詐欺 9.5 11.8 80 20.2 22.6 60 60 40 40 51.5 20 注 25 30 令和2 起訴 起訴猶予 0 平成 13 15 その他の不起訴 20 25 30令和2 家庭裁判所送致 検察統計年報による。 ①の「詐欺」は,刑法 246 条及び 248 条に規定する罪に限る。 詐欺事犯者の実態と処遇 1 2 20 20 第8 編 0 平成 13 15 58.5 詐欺及び電子計算機使用詐欺について,起訴,起訴猶予及びその他の不起訴の人員並びに起訴率及 び起訴猶予率の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-33 図のとおりである。起訴人員について見る と,詐欺は,平成 13 年以降,増加し続けて 18 年(1万 2,222 人)に最多となった後,19 年から 28 年までは 8,000 人台から1万 1,000 人台の間で推移していたが,同年以降,減少し続け,令和2年 (6,700 人)は,平成 18 年の約2分の1の水準となっている。電子計算機使用詐欺は,27 年の 405 人を最多に,増減を繰り返しているが,同年以降は,おおむね 200 人を超える水準で推移している (CD-ROM 参照)。 不起訴人員について見ると,詐欺は,平成 13 年以降増加傾向にあったが,25 年(7,753 人)を ピークに翌年からは減少傾向にある。電子計算機使用詐欺は,年による変動が大きいが,26 年以降 は,おおむね 100 人を超える水準で推移している(CD-ROM 参照)。 起訴率について見ると,詐欺は,平成 13 年以降,21 年まで 60%台で推移していたが,翌年に 60%を下回った後は,50%台で推移しており,刑法犯全体(令和2年は 37.4%。2-2-4-2 図①参照) よりも顕著に高い。他方,電子計算機使用詐欺は,50%台後半から 90%台前半の間で推移している (CD-ROM 参照)。 犯罪白書 2021 343

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起訴猶予率について見ると,平成 13 年以降,詐欺は,17 年(21.6%)を底として,翌年以降上昇 傾向にあり,25 年に 31.0%に達した後は,30%前後で推移している。電子計算機使用詐欺は,20 年(4.7%)を底として,翌年から上昇し続け,26 年に 28.6%に達した後は,おおむね 10%台で推 移していたが,令和2年は 25.6%であった。いずれも刑法犯全体(令和2年は 52.2%。2-2-4-4 図 参照)と比較して低い(CD-ROM 参照)。 第3章 詐欺事犯の動向等 なお,令和2年において,組織的犯罪処罰法違反(組織的な詐欺に限る。)の起訴人員は 13 人,不 起訴人員は7人(起訴猶予3人及び嫌疑不十分4人)であり,起訴率は 65.0%,起訴猶予率は 18.8%であった(検察統計年報による。)。 8-3-1-33 図 詐欺 起訴・不起訴人員等の推移(罪名別) (平成 13 年~令和2年) ① 詐欺 ( 千人 ) 20 第1節 15 詐欺事犯の動向等 10 起訴猶予率 (%) 100 起訴率 80 12,342 60 40 20 0 平成 13 15 20 25 30 令和2 0 (%) 100 起訴率 500 80 400 314 300 0 平成 13 15 20 起訴 令和 3 年版 25 起訴猶予 検察統計年報による。 ①の「詐欺」は,刑法 246 条及び 248 条に規定する罪に限る。 犯罪白書 その他の不起訴 30 令和2 64.6 41 20 起訴猶予率 100 1 2 60 40 200 344 6,700 電子計算機使用詐欺 (人) 600 注 2,942 30.5 5 ② 2,700 54.3 0 70 25.6 203

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イ 起訴 8-3-1-34 図は,詐欺の起訴人員の推移(最近 20 年間)を犯行時の年齢層別に見たものである。平 成 13 年から 15 年までは,30 歳代の者が最も多かったが,16 年以降は,20 歳代の者が一貫して最も 多く,令和2年は,2,663 人で,全体の 38.6%を占めている。30 歳代の者は平成 21 年(3,209 人), 40 歳代の者は同年(2,220 人),50~64 歳の者は 14 年(2,400 人),65 歳以上の者は 20 年(576 人) をそれぞれピークに,減少傾向にあるが,20 歳代の者は,18 年(4,140 人)を最多として,16 年以 降おおむね 2,000 人台後半を超える水準で推移している。20 歳未満の者も,17 年(195 人)を最多 として,16 年以降 80 人台から 190 人台の間で推移している(CD-ROM 参照)。 8-3-1-34 図 詐欺 起訴人員の推移(年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (千人) 14 12 10 6,902 8 320 991 6 1,227 4 1,568 2,663 15 20 歳未満 1 2 3 20 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 25 40 ~ 49 歳 30 50 ~ 64 歳 令和2 133 詐欺事犯者の実態と処遇 0 平成 13 注 第8 編 2 65 歳以上 検察統計年報による。 犯行時の年齢による。 年齢不詳の者を除く。 犯罪白書 2021 345

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裁判 3 (1)終局裁判 8-3-1-35 図は,詐欺について,地方裁判所における終局処理人員の推移(最近 20 年間)を見たも のである。地方裁判所における終局処理総人員については,平成 16 年(7万 9,378 人)をピークに 第3章 詐欺事犯の動向等 減少傾向を示している一方,詐欺の終局処理人員は,18 年(5,425 人)まで増加し続けた後,一旦 減少し,21 年(5,422 人)に再び増加したのを経て,22 年以降は減少傾向にあり,30 年以降は 3,000 人台で推移していたが,令和2年は 2,943 人(前年比 17.4%減)であった。 地方裁判所における終局処理総人員に占める詐欺の終局処理人員の比率は,平成 18 年以降,7% 台から8%台の間で推移していたが,30 年以降は低下し続け,令和2年は 6.4%(前年比 1.1pt 低下) であった。 詐欺について,地方裁判所における終局処理人員のうち無罪の人員は,最近 10 年間においては5 人から 20 人の間で推移しており,令和2年は6人であった(司法統計年報による。)。 8-3-1-35 図 詐欺 地方裁判所における終局処理人員の推移 第1節 (平成 13 年~令和2年) (千人) 7 (%) 10 詐欺事犯の動向等 終局処理総人員に占める比率 6 8 5 6 4 6.4 2,943 3 4 2 2 1 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和2 0 司法統計年報による。 (2)科刑状況 詐欺について,平成 13 年・23 年・令和2年の地方裁判所における有期の懲役の科刑状況別構成比 を見ると,8-3-1-36 図のとおりである(なお,平成 16 年法律第 156 号による刑法の改正(平成 17 年1月施行)により,有期刑の上限が 15 年から 20 年に,死刑や無期刑を減軽して有期刑とする場合 の長期の上限が 15 年から 30 年に,有期刑を加重する場合の長期の上限が 20 年から 30 年にそれぞれ 引き上げられた。)。なお,特殊詐欺(本節1項(3)参照)の認知件数が増加したのが平成 15 年頃 以降であることに留意する必要がある。 実刑の者(令和2年については一部執行猶予の者も含み,一部執行猶予は,実刑部分と猶予部分を 合わせた刑期による。)の構成比を見ると,平成 13 年(53.5%)が最も高く,23 年(48.6%)及び 令和2年(47.2%)は,ほぼ同程度である。2年以上3年以下の実刑の者の構成比は,平成 13 年 (18.1%) ,23 年(18.8%)及び令和2年(20.1%)の間に大きな差は認められない。しかしながら, 346 令和 3 年版 犯罪白書

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2年未満の実刑の者の構成比は,平成 13 年(29.4%)が最も高く,次いで,23 年(20.5%),令和 2年(13.0%)の順となっているのに対し,3年を超える実刑の者の構成比は,同年(14.2%)が 最も高く,次いで,平成 23 年(9.3%) ,13 年(6.0%)の順となっている。特に,3年を超え5年 以下の実刑の者及び5年を超え 10 年以下の実刑の者の構成比は,13 年にはそれぞれ 5.2%,0.7%で あったのが,令和2年にはそれぞれ 11.3%,2.8%となっている。また,全部執行猶予の者を見ても, 2年以上3年以下の者の構成比は,平成 13 年には 20.3%であったが,23 年には 26.3%,令和2年 には 30.9%となっている。なお,10 年を超え 30 年以下の実刑の者の人員は,最近 20 年間は 10 人未 満で推移しており,令和2年は2人であった(CD-ROM 参照)。また,詐欺により一部執行猶予付 判決を受けた者は,平成 30 年に1人,令和元年に2人及び2年に3人であった(司法統計年報によ る。 ) 。 8-3-1-36 図 詐欺 地方裁判所における有期刑(懲役)科刑状況別構成比 (平成 13 年・23 年・令和2年) 全部執行猶予 平成 13 年 総 数 (4,317) 46.5 24.3 実 20.3 5.3 24.0 24.2 5.2 48.6 26.3 17.7 18.8 7.3 2.8 1.0 2.0 0.1 52.8 21.1 47.2 30.9 0.8 10.9 20.1 2.1 1年以上2年未満 (全部執行猶予) 1年以上2年未満 (実刑) 5年を超え 10 年以下 (実刑) 2.8 0.1 2年以上3年以下 (全部執行猶予) 2年以上3年以下 (実刑) 10 年を超え 30 年以下 (実刑) 詐欺事犯者の実態と処遇 1年未満 (全部執行猶予) 1年未満 (実刑) 3年を超え5年以下 (実刑) 11.3 第8 編 令和2年 総 数 注 18.1 0.7 51.4 (2,932) 53.5 1.9 平成 23 年 総 数 (4,022) 刑 1 司法統計年報による。 2 令和2年の「実刑」には一部執行猶予を含み,一部執行猶予は,実刑部分と猶予部分を合わせた刑期による。 3 ( )内は,実人員である。 8-3-1-37 図は,詐欺について,地方裁判所における全部執行猶予率及び全部執行猶予者の保護観 察率の推移(最近 20 年間)を見たものである。全部執行猶予率について見ると,平成 16 年以降は 50%台で推移し,令和2年は 52.8%(前年比 0.7pt 上昇)であり,全体の地方裁判所における有期 懲役・禁錮の全部執行猶予率(63.0%。CD-ROM 資料 2-4 参照)よりも低い。 詐欺について,地方裁判所における全部執行猶予者の保護観察率を見ると,平成 13 年(15.7%) 以降,低下傾向にあり,特に,28 年(7.2%)以降低下が続き,令和2年は 5.9%(前年比 0.3pt 低 下)であった。 なお,令和2年に詐欺により一部執行猶予付判決を受けた者(3人)については,その全員が保護 観察に付された(2-3-3-1 表参照)。 犯罪白書 2021 347

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8-3-1-37 図 詐欺 地方裁判所における全部執行猶予率・全部執行猶予者の保護観察率の推移 (平成 13 年~令和2年) (%) 70 第3章 詐欺事犯の動向等 60 全部執行猶予率 52.8 50 40 30 20 全部執行猶予者の保護観察率 10 第1節 0 平成 13 注 5.9 15 20 25 30 令和2 司法統計年報による。 詐欺事犯の動向等 (3)勾留と保釈 詐欺について,令和2年の通常第一審における被告人の勾留状況を見ると,8-3-1-38 表のとおり である。同年における通常第一審全体の勾留率(移送等を含む終局処理人員に占める勾留総人員の比 率)は 74.0%,保釈率(勾留総人員に占める保釈人員の比率)は 30.1%であった(2-3-3-9 表 CDROM 参照) 。一方,詐欺については,勾留率(86.9%)及び保釈率(32.5%)共に,通常第一審全 体を上回った。通常第一審における勾留総人員に占める勾留期間3月を超える者の人員の比率を見る と,全体では 24.5%であるのに対し(2-3-3-9 表 CD-ROM 参照),詐欺では 42.7%であった。 8-3-1-38 表 詐欺 通常第一審における被告人の勾留状況 (令和2年) 終 局 処 理 勾 留 総 人 員 総 人 員 (A) (B) 3,198 注 勾 1月以内 2,778 522 (100.0) (18.8) 留 期 間 3月以内 3月を超える 1,071 1,185 (38.6) (42.7) 保釈人員 (C) 904 勾留率 保釈率 B C A (%) 86.9 B (%) 32.5 1 司法統計年報による。 2 「終局処理総人員」は,移送等を含む。 3 ( )内は,構成比である。 (4)家庭裁判所における処理状況 令和2年における詐欺の少年保護事件について,家庭裁判所終局処理人員の処理区分別構成比を見 ると,8-3-1-39 図のとおりであり,保護観察(38.1%,204 人)が最も高く,次いで,審判不開始 (24.8%,133 人),少年院送致(17.9%,96 人)の順であった。児童自立支援施設・児童養護施設 送致はなかった。 348 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-39 図 詐欺 少年保護事件 終局処理人員の処理区分別構成比 (令和2年) 総 数 (536) 5.6 17.9 38.1 11.4 2.1 0.2 検察官送致(刑事処分相当) 知事・児童相談所長送致 注 24.8 検察官送致(年齢超過) 不処分 少年院送致 審判不開始 保護観察 1 司法統計年報による。 2 ( )内は,実人員である。 詐欺について,刑事処分相当を理由に検察官送致された事件の令和2年における検察庁での処理状 況は 3-3-2-1 表を,同年における少年の通常第一審での科刑状況は 3-3-2-2 表をそれぞれ参照。 矯正 4 (1)受刑者 ア 入所受刑者 (ア)人員 8-3-1-40 図は,詐欺の入所受刑者人員の推移(最近 20 年間)を見たものである。詐欺の入所受刑 者人員は,平成 21 年(2,518 人)を最多に,22 年までは 2,000 人を上回って推移し,23 年から 29 年までは 1,800 人台から 1,900 人台で推移していたが,同年以降は減少し続けている。令和2年は, 1,559 人(前年比 189 人(10.8%)減)であり,そのうち一部執行猶予受刑者は,5人(同2人増) であった(CD-ROM 参照)。 第8 編 また,詐欺の入所受刑者人員の入所受刑者総数に占める比率は,平成 28 年まで7%台から8%台 の間で推移していたが,29 年以降は 10%前後で推移している。一方,女性の入所受刑者総数に占め る比率は,23 年以降5%台から6%台の間で推移している。 詐欺 入所受刑者人員の推移 詐欺事犯者の実態と処遇 8-3-1-40 図 (平成 13 年~令和2年) (%) 14 (人) 3,000 12 2,500 10 2,000 8 1,500 6 1,000 注 9.4 1,559 6.7 4 500 0 平成 13 入所受刑者人員 うち女性人員 入所受刑者総数に 占める比率 女性入所受刑者総数 に占める比率 2 15 20 25 30 令和2 0 118 矯正統計年報による。 犯罪白書 2021 349

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(イ)年齢層 8-3-1-41 図は,詐欺の入所受刑者の年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を,入所受刑者総数と 共に見たものである。詐欺の 30 歳未満の者の構成比は,平成 13 年から 16 年までは 10.7%から 11.7%の間で推移していたが,17 年に 16.1%に上昇し,その後,25 年以降は 20%を,30 年以降は 30%をそれぞれ上回って推移している。27 年以降は毎年上昇し続け,令和2年は 31.2%(前年比 第3章 詐欺事犯の動向等 0.6pt 上昇)であった。2年の詐欺の 30 歳未満の入所受刑者の人員(487 人)を見ると,25 歳未満 の者が約半数(256 人)を占めている(CD-ROM 参照)。50~64 歳の者の構成比は,平成 13 年 (38.3%)を最高に,低下傾向を示し,29 年には 18.5%に低下したが,30 年以降は 20%前後で推移 している。それ以外の者の構成比は,多少の上昇・低下はあるものの,13 年の構成比と令和2年の 構成比を比較しても,大きな差は認められない。 詐欺の入所受刑者と入所受刑者総数を比較すると,詐欺では,前記のとおり,30 歳未満の者の構 成比が上昇傾向を示していたのに対し,入所受刑者総数では,平成 13 年には,30 歳未満の者の構成 比が 24.4%であったのが,その後,低下傾向を示し,令和2年には 15.2%となっている。また,65 歳以上の高齢者の構成比を見ると,入所受刑者総数では,平成 13 年(3.6%)から上昇傾向を示し, 令和2年は 12.9%となっているのに対し,詐欺では,平成 24 年(10.3%)を最高に,おおむね横ば 第1節 いで推移している。 詐欺事犯の動向等 8-3-1-41 図 詐欺 入所受刑者の年齢層別構成比の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 入所受刑者総数 ② (%) 100 12.9 80 26.5 60 詐欺 (%) 100 7.4 19.7 80 19.4 60 24.9 40 20.5 20 0 平成 13 15 15.2 20 30 歳未満 注 1 2 22.3 40 25 30 令和2 30 ~ 39 歳 20 31.2 0 平成 13 15 40 ~ 49 歳 20 50 ~ 64 歳 25 30 令和2 65 歳以上 矯正統計年報による。 入所時の年齢による。 (ウ)入所度数 8-3-1-42 図は,詐欺の入所受刑者人員の推移(最近 20 年間)を男女別に見るとともに,これを入 所度数別に見たものである。男性・女性共に,入所受刑者全体のうち初入者が占める割合が一貫して 最も高く,特に,女性は,平成 24 年以降,初入者が7割以上を占めている。男性は,初入者の人員 が,19 年以降 800 人台後半から 1,100 人台後半の間で推移している一方,3度以上の者の人員は 22 年以降減少し続けている。なお,令和2年における詐欺の男性入所受刑者のうち,3度以上の者の人 員(315 人)の入所度数の内訳を見ると,その約6割を5度以上の者(181 人(うち 10 度以上の者 が 58 人) )が占めている(矯正統計年報による。)。 350 令和 3 年版 犯罪白書

368.

8-3-1-42 図 詐欺 入所受刑者人員の推移(男女別,入所度数別) (平成 13 年~令和2年) ① 男性 ② (人) 200 (人) 2,500 2,000 150 1,441 1,500 315 1,000 188 500 938 0 平成 13 15 注 女性 20 25 118 10 8 100 50 100 30 令和2 0 平成 13 15 1度(初入者) 2度 20 25 30 令和2 3度以上 矯正統計年報による。 (エ)居住状況 8-3-1-43 図は,令和2年の詐欺の入所受刑者の居住状況別構成比を見たものである。 8-3-1-43 図 詐欺 入所受刑者の居住状況別構成比 (令和2年) (16,135) 詐 住居不定以外 18.4 81.6 25.9 74.1 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 犯行時の居住状況による。 3 来日外国人及び居住状況が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 詐欺事犯者の実態と処遇 注 欺 (1,507) 住居不定 第8 編 入所受刑者総数 (オ)就労状況 8-3-1-44 図は,令和2年の詐欺の入所受刑者の就労状況別構成比を見たものである。 8-3-1-44 図 詐欺 入所受刑者の就労状況別構成比 (令和2年) 入所受刑者総数 (16,520) 詐 注 欺 (1,540) 無職 有職 69.3 30.7 75.5 24.5 1 矯正統計年報による。 2 犯行時の就労状況による。 3 学生・生徒,家事従事者及び就労状況が不詳の者を除く。また,「無職」は,定収入のある無職者を含む。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 351

369.

(カ)その他 令和2年の詐欺の入所受刑者の婚姻状況別構成比(婚姻状況が不詳の者を除く。)を見ると,配偶 者(内縁関係にあるものを含む。以下この項において同じ。)がある者の構成比が 17.7%,未婚の者 の構成比が 48.8%,離死別の者の構成比が 33.5%となっており,未婚の者の構成比が入所受刑者総 数(41.4%)と比べて高く,離死別の者の構成比が入所受刑者総数(39.5%)と比べて低い(矯正 第3章 詐欺事犯の動向等 統計年報による。)。 令和2年の詐欺の入所受刑者の教育程度別構成比(教育程度が不詳の者を除く。)を見ると,大学 在学・中退・卒業が 15.4%,高校卒業が 36.4%となっており,入所受刑者総数の大学在学・中退・ 卒業が 10.5%,高校卒業が 30.2%であるのと比べると,高校卒業以上の学歴を有する者の構成比が 高い(矯正統計年報による。)。 令和2年の詐欺の入所受刑者(1,559 人)のうち,39 人(2.5%)が来日外国人(国籍別の内訳は, 中国 31 人,ブラジル及びナイジェリア各2人,その他4人)であり,49 人(3.1%)が暴力団関係 者(幹部 17 人,組員 26 人,地位不明6人)であった(矯正統計年報による。)。 イ 出所受刑者 第1節 8-3-1-45 図は,令和2年の詐欺の出所受刑者の帰住先別構成比を,出所受刑者総数と共に出所事 由別に見たものである。満期釈放等により釈放された者については,帰住先が「その他」の者の構成 詐欺事犯の動向等 比が最も高く,次いで,父・母,知人の順になっているのに対し,仮釈放により釈放された者につい ては,父・母の者の構成比が最も高く,次いで,更生保護施設等,配偶者の順となっている。 8-3-1-45 図 詐欺 出所受刑者の帰住先別構成比(出所事由別) (令和2年) ① 出所受刑者総数 満期釈放等 (7,728) 2.8 15.0 5.6 3.3 3.0 5.2 7.7 5.5 8.7 43.2 0.4 仮 釈 放 33.5 (11,195) 10.5 4.9 4.2 0.1 8.0 34.3 1.9 2.3 ② 詐欺 満期釈放等 (525) 2.7 13.3 4.6 3.2 7.8 4.0 6.1 6.9 5.0 46.5 2.4 仮 釈 放 45.2 (1,330) 9.9 0.2 5.9 3.8 1.9 27.9 2.9 父・母 雇主 注 352 1 2 3 4 5 6 7 令和 3 年版 配偶者 社会福祉施設 兄弟姉妹 更生保護施設等 その他の親族 自宅 知人 その他 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 「帰住先」は,刑事施設出所後に住む場所である。 「配偶者」は,内縁関係にある者を含む。 「更生保護施設等」は,更生保護施設,就業支援センター,自立更生促進センター及び自立準備ホームである。 「自宅」は,帰住先が父・母,配偶者等以外で,かつ,自宅に帰住する場合である。 「その他」は,帰住先が不明,暴力団関係者,刑終了後引き続き被告人として勾留,出入国在留管理庁への身柄引渡し等である。 ( )内は,実人員である。 犯罪白書

370.

(2)少年鑑別所被収容者 ア 少年鑑別所被収容者の人員の推移 詐欺の少年鑑別所被収容者(観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所し た者で,かつ,当該年において逃走,施設間の移送又は死亡以外の事由により退所した者をいう。以 下アにおいて同じ。)の人員の推移(最近 20 年間)を男女別に見ると,8-3-1-46 図のとおりである。 総数は,平成 13 年以降,増減を繰り返しながらも全体的に増加傾向にあり,30 年(812 人)をピー クに,その後は2年連続で減少したものの,令和2年は,333 人と,平成 13 年(100 人)の約 3.3 倍となっている。女子比は,14 年以降は 10%台,23 年以降は 10%を下回って推移していたが,令 和2年は,再び 10%を上回る 16.5%であり,少年鑑別所被収容者総数に占める女子比(9.7%。3-23-2 図 CD-ROM 参照)よりも高い(CD-ROM 参照)。 8-3-1-46 図 詐欺 少年鑑別所被収容者の人員の推移(男女別) (平成 13 年~令和2年) (人) 1,000 800 600 400 333 200 男子 278 15 20 25 30 令和2 第8 編 0 平成 13 注 女子 55 1 矯正統計年報による。 2 「被収容者」は,観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所した者で,かつ,当該年において逃走,施設間 の移送又は死亡以外の事由により退所した者をいう。 詐欺事犯者の実態と処遇 イ 審判における決定等 詐欺について,令和2年に収容審判鑑別(第3編第2章第3節3項(1)ア参照)を終了した者の 審判における決定等別構成比を見ると,8-3-1-47 図のとおりである。少年院送致が 40.8%(115 人) と最も高く,次いで,保護観察 36.2%(102 人),決定未了(観護措置の取消し及び試験観察) 19.1%(54 人)の順であり,同年に収容審判鑑別を終了した者の総数(3-2-3-6 表参照)と比較し て,少年院送致と決定未了の構成比が高い(CD-ROM 参照)。 8-3-1-47 図 詐欺 収容審判鑑別を終了した者の審判における決定等別構成比 (令和2年) 検察官送致 2.1 審判不開始・不処分 1.4 児童自立支援施設等送致 0.4 保護観察 少年院送致 決定未了 36.2 40.8 19.1 総 数 注 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 観護措置(少年鑑別所送致)又は勾留に代わる観護措置により入所し,かつ,令和2年に退所した者(ただし,鑑別の判定が保留, 判定未了等の者を除く。)を計上している。 3 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 4 「決定未了」は,観護措置の取消し及び試験観察である。 5 ( )内は,実人員である。 (282) 犯罪白書 2021 353

371.

(3)少年院入院者 ア 少年院入院者の人員の推移 8-3-1-48 図は,詐欺の少年院入院者の人員及び少年院入院者総数に占める比率(「詐欺率」とい う。以下(3)において同じ。)の推移(最近 20 年間)を年齢層別に見たものである。 少年院入院者の人員は,平成 16 年に大きく増加した後も,100 人未満で推移していたが,24 年に 第3章 詐欺事犯の動向等 100 人を上回ってからは,27 年まで増加し続け,翌年から一旦減少したものの,30 年には 336 人に 達し,その後は2年連続して減少した。少年院入院者総数が減少傾向にある中(3-2-4-1 図参照), 詐欺の少年院入院者が増加したことから,詐欺率は,13 年には 0.4%であったが,30 年には 15.9% に達し,その後は2年連続して低下した。 年齢層別に見ると,平成 13 年以降,一貫して年長少年(入院時に 20 歳に達している者を含む。以 下(3)において同じ。)が最も多く,次いで,中間少年,年少少年(入院時に 14 歳未満の者を含 む。 )の順であり,年長少年が占める構成比はおおむね 60%台から 70%台の間で推移していたが, 令和2年は 58.7%であった(CD-ROM 参照)。 男女別に見ると,女子は,年による変動が大きく,平成 13 年から 24 年までは 10 人未満で推移し ていたが,25 年以降は 30 年の 23 人を最多に,10 人を上回る年もあり,令和2年は 11 人(前年比 第1節 5人増)であった(CD-ROM 参照)。 詐欺事犯の動向等 8-3-1-48 図 詐欺 少年院入院者の人員等の推移(年齢層別) (平成 13 年~令和2年) (人) 350 300 (%) 20 年長少年 中間少年 年少少年 18 16 詐欺率 250 14 10 150 8 6 100 4 50 0 平成 13 注 354 2 15 20 25 30 令和2 0 7.5 121 71 48 2 1 矯正統計年報による。 2 入院時の年齢による。ただし, 「年少少年」は 14 歳未満の者を含み,「年長少年」は入院時に 20 歳に達している者を含む。 3 「詐欺率」は,少年院入院者総数のうち詐欺の者が占める比率である。 令和 3 年版 犯罪白書 詐 欺 率 入院者数 12 200

372.

イ 少年院入院者の特徴 (ア)教育程度,就学・就労状況,保護者の状況 8-3-1-49 図及び 8-3-1-50 図は,平成 28 年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の教育 程度別構成比及び就学・就労状況別構成比を,いずれも男女別に見たものである。 教育程度は,令和2年の少年院入院者総数(3-2-4-4 図参照)と比較して,男子は,高校中退の者 及び高校卒業・その他(大学(短期大学を含む。)在学・中退,専修学校在学・中退・卒業等)の者, 女子は,中学卒業及び高校中退の者の構成比がそれぞれ高い。 就学・就労状況は,令和2年の少年院入院者総数(3-2-4-5 図参照)と比較して,男子は無職の者 の構成比が高い一方,女子は有職の者の構成比が高い。 8-3-1-49 図 詐欺 少年院入院者の教育程度別構成比(男女別) (平成 28 年~令和2年の累計) 中学在学 1.4 中学卒業 男 女 注 子 19.7 (986) 子 (60) 高校在学 5.0 18.5 18.3 8.3 高校中退 48.7 高校卒業・その他 11.8 60.0 8.3 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 教育程度は,非行時における最終学歴又は就学状況である。 3 「その他」は,大学(短期大学を含む。)在学・中退,専修学校在学・中退・卒業等である。 4 ( )内は,実人員である。 8-3-1-50 図 詐欺 少年院入院者の就学・就労状況別構成比(男女別) 第8 編 (平成 28 年~令和2年の累計) 男 注 子 (60) 有職 学生・生徒 46.1 34.1 19.7 45.0 41.7 詐欺事犯者の実態と処遇 女 子 (984) 無職 13.3 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 就学・就労状況は,非行時による。 3 就学・就労状況が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 平成 28 年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の保護者状況(非行時による。)別構成比 を見ると,男子は,実父母が 33.5%,実母が 39.1%,実父が 9.5%,女子は,実父母が 30.0%,実 母が 41.7%,実父が 13.3%であり,同年の少年院入院者総数(3-2-4-7 図参照)と比較して,男子 は実父母の構成比が高い一方,女子は実父母の構成比が低かった(法務省大臣官房司法法制部の資料 による。 ) 。 犯罪白書 2021 355

373.

(イ)共犯,不良集団関係 詐欺の少年院入院者の共犯者数別構成比の推移(最近 20 年間)を見ると,8-3-1-51 図のとおりで ある。 共犯者数が不特定多数である者は,平成 13 年から 15 年までいなかったが,23 年以降その構成比 が上昇傾向にあり,令和元年には 71.4%に達したものの,2年は 55.4%であった。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-1-51 図 詐欺 少年院入院者の共犯者数別構成比の推移 (平成 13 年~令和2年) (%) 100 80 令和2年 不特定多数 55.4 4人以上 8.9 3.0 3人 5.0 2人 27.7 単独 60 第1節 40 詐欺事犯の動向等 20 0 平成 13 注 1 2 3 15 20 25 30 令和2 矯正統計年報による。 共犯者数が不詳の者を除く。 共犯者数は,複数の非行名がある場合に,詐欺以外の非行の共犯者数が計上されていることがある。 平成 28 年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の不良集団関係別構成比を男女別に見る と,8-3-1-52 図のとおりである。同年の少年院入院者総数(3-2-4-6 図参照)と比較して,男女共 に不良集団関係のない者の構成比が高い一方,男子は暴力団の構成比が高い。 8-3-1-52 図 詐欺 少年院入院者の不良集団関係別構成比(男女別) (平成 28 年~令和2年の累計) 暴力団 暴走族 男 子 (940) 4.6 3.9 不良生徒・学生集団 2.8 地域不良集団 不良集団関係なし 23.7 65.0 1.7 女 注 356 子 (59) 22.0 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 不良集団関係は,非行時による。 3 不良集団関係が不詳の者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 76.3

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(ウ)被虐待経験 8-3-1-53 図は,平成 28 年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の被虐待経験別構成比を 男女別に見たものである。男女共に,同年の少年院入院者総数(3-2-4-8 図参照)と比較して虐待な しの構成比が 10pt 以上高い。 8-3-1-53 図 詐欺 少年院入院者の被虐待経験別構成比(男女別) (平成 28 年~令和2年の累計) 1.5 0.1 男 子 (986) 0.8 71.7 22.7 3.1 女 子 (60) 33.3 5.0 13.3 45.0 3.3 身体的 注 性的 ネグレクト 心理的 虐待なし 不詳 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 虐待の定義は,児童虐待防止法による。ただし,ここでは保護者以外の家族による少年に対する虐待や,18 歳以上の少年に対する 虐待も含む。 3 「身体的」は,少年の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれのある暴行を加えることをいい,「性的」は,少年にわいせつな行為をす ること又は少年をしてわいせつな行為をさせることをいい, 「ネグレクト」は,少年の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又 は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ることをいい,「心理的」は,少年に著しい心理的外傷を与える言動を行うこ とをいう。 4 複数の類型に該当する場合は,主要なもの一つに計上している。 5 ( )内は,実人員である。 5 更生保護 第8 編 (1)仮釈放 8-3-1-54 図は,詐欺について,出所受刑者(仮釈放者,一部執行猶予の実刑部分刑期終了又は満 期釈放により刑事施設を出所した者に限る。)の人員及び仮釈放率の推移(最近 20 年間)を見たもの である。出所受刑者の人員は,増加傾向にあったが,平成 22 年(2,452 人)をピークに翌年から減 詐欺事犯者の実態と処遇 少傾向を示したのを経て,28 年以降は 1,900 人前後で推移し,令和2年は 1,855 人(前年比 3.4%減) であった。 仮釈放率は,仮釈放者の人員が横ばいで推移した一方,満期釈放者等(満期釈放等により刑事施設 を出所した者をいう。)の人員が減少傾向にあったことから,平成 22 年から上昇傾向にあり,令和2 年は,71.7%(前年比 3.5pt 上昇)と,出所受刑者総数の仮釈放率(59.2%。2-5-2-1 図参照)と比 べて 12.5pt 高かった。 犯罪白書 2021 357

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8-3-1-54 図 詐欺 出所受刑者人員・仮釈放率の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 1,500 (%) 100 1,330 仮釈放率 第3章 詐欺事犯の動向等 80 71.7 1,000 60 40 525 500 20 第1節 0 平成 13 15 20 詐欺事犯の動向等 満期釈放者等 注 25 30 令和2 0 仮釈放者 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「満期釈放者等」は,満期釈放等により刑事施設を出所した者をいう。 3 女性の満期釈放者等及び仮釈放者の人員の推移等については,CD-ROM 参照。 (2)保護観察 ア 保護観察開始人員の推移 8-3-1-55 図は,詐欺について,仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者,保護観察処分少年 (交通短期保護観察の対象者を除く。以下この項において同じ。)及び少年院仮退院者の保護観察開始 人員並びに全部執行猶予者の保護観察率の推移(最近 20 年間)を見たものである。 保護観察開始人員について見ると,仮釈放者は,増減を繰り返していたが,平成 22 年以降おおむ ね 1,200 人前後で推移しており,令和2年は 1,295 人(前年比 2.2%増)であった。保護観察付全 部・一部執行猶予者は,おおむね減少傾向にあり,2年は 107 人(同 12.3%減)であった。全部執 行猶予者の保護観察率は,平成 14 年(15.0%)をピークとして低下傾向にあり,令和2年は 5.4% (同 0.8pt 低下)と,保護観察開始人員総数の全部執行猶予者の保護観察率(7.0%。CD-ROM 資料 2-8 参照)と比べて 1.6pt 低かった。 一方,保護観察処分少年は,平成 18 年(213 人)及び 20 年(215 人)をピークに,その後増減を 繰り返していたが,29 年(264 人)及び 30 年(339 人)に大きく増加した後は,翌年から減少し, 令和2年は 210 人(前年比 26.1%減)であった。少年院仮退院者は,平成 24 年から 28 年(226 人) まで増加した後,29 年及び 30 年に 180 人台に減少したのを経て,令和元年に一旦増加したが,2年 は 153 人(同 41.8%減)であった。 358 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-55 図 詐欺 保護観察開始人員・全部執行猶予者の保護観察率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 仮釈放者・保護観察付全部・一部執行猶予者 (人) 1,400 (%) 20 18 1,200 仮釈放者 1,295 16 1,000 14 12 800 10 600 8 6 400 全部執行猶予者の 保護観察率 4 5.4 200 2 0 平成 13 ② 15 20 25 30 令和2 保護観察付全部 ・一部執行猶予者 0 107 保護観察処分少年・少年院仮退院者 (人) 400 第8 編 300 詐欺事犯者の実態と処遇 保護観察処分少年 210 200 少年院仮退院者 153 100 0 平成 13 注 1 2 15 20 25 30 令和2 保護統計年報及び検察統計年報による。 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 犯罪白書 2021 359

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イ 男女別 8-3-1-56 図は,詐欺の仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者,保護観察処分少年及び少年 院仮退院者について,平成 28 年から令和2年までにおける保護観察開始人員の男女別構成比を見た ものである。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-1-56 図 詐欺 保護観察開始人員の男女別構成比 (平成 28 年~令和2年の累計) ① 仮釈放者 ② 男性 詐 欺 女性 詐 93.3 (6,276) 保護観察付全部・一部執行猶予者 欺 (636) 男性 女性 89.3 10.7 6.7 詐欺以外 (54,878) ③ 87.2 12.8 保護観察処分少年 ④ 男子 第1節 詐 欺 (1,291) 詐欺以外 (15,947) 86.1 15.5 少年院仮退院者 女子 13.9 84.5 男子 詐 欺 (1,009) 女子 94.4 5.6 詐欺事犯の動向等 詐欺以外 (41,828) 注 89.5 10.5 詐欺以外 (10,094) 92.1 7.9 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 ( )内は,実人員である。 ウ 年齢 8-3-1-57 図は,詐欺の仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者,保護観察処分少年及び少年 院仮退院者について,平成 28 年から令和2年までにおける保護観察開始人員の年齢層別構成比を男 女別に見たものである。 仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者を見ると,いずれの保護観察においても,男性は, 女性と比べて 20 歳代の者の構成比が高く,65 歳以上の高齢者の構成比が低い。また,女性の仮釈放 者は,他の保護観察と比べて 50 歳以上の者の構成比が顕著に高い。令和2年の保護観察開始人員総 数(2-5-3-2 図参照)と比べると,詐欺の方が 20 歳代の者の構成比が高い(CD-ROM 参照)。 一方,保護観察処分少年及び少年院仮退院者を見ると,いずれの保護観察においても,男子は,女 子と比べて 18・19 歳及び 20 歳以上の者の構成比が高い。また,令和2年の保護観察開始人員総数 (3-2-5-2 図参照)と比べると,詐欺の方が 16 歳未満の者の構成比が低く,18・19 歳及び 20 歳以上 の者の構成比が高い(CD-ROM 参照)。 360 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-1-57 図 詐欺 保護観察開始人員の年齢層別構成比(男女別) (平成 28 年~令和2年の累計) ① 仮釈放者 男 性 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 65 歳以上 25.9 29.5 19.9 18.0 6.6 (5,856) 女 ② 性 (420) 9.8 20.0 27.1 30.2 保護観察付全部・一部執行猶予者 男 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 56.5 16.7 性 (568) 女 性 26.5 25.0 13.2 4.4 保護観察処分少年 男 16 歳未満 16・17 歳 18・19 歳 5.1 30.3 64.6 子 (1,112) 女 ④ 12.0 65 歳以上 2.5 30.9 (68) 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 12.1 20 歳未満 0.2 ③ 12.9 子 (179) 8.4 33.5 58.1 少年院仮退院者 子 16・17 歳 18・19 歳 20 歳以上 13.6 51.4 33.8 (952) 第8 編 男 16 歳未満 1.3 女 28.1 47.4 24.6 詐欺事犯者の実態と処遇 注 子 (57) 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察に付された日の年齢による。 3 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 エ 居住状況 8-3-1-58 図は,詐欺の仮釈放者,保護観察付全部・一部執行猶予者,保護観察処分少年及び少年 院仮退院者について,平成 28 年から令和2年までにおける保護観察開始人員の居住状況別構成比を 年齢層別に見たものである(満期釈放等の居住状況別構成比については,8-3-1-45 図参照)。 仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者を見ると,いずれの保護観察においても,親族と同 居する者の構成比は,年齢層が上がるに従って低くなっているが,65 歳以上の仮釈放者と 50~64 歳の仮釈放者は,ほぼ同水準である。また,保護観察開始人員総数と比べると,詐欺の仮釈放者は, 30 歳未満の者は親族と同居する者の構成比が高く,50~64 歳の者及び 65 歳以上の者は配偶者と同 居する者及び更生保護施設に居住する者の構成比が高い。詐欺の保護観察付全部・一部執行猶予者 は,全ての年齢層において,保護観察開始人員総数よりも親族と同居する者の構成比が低く,30 歳 未満の者以外の年齢層において,更生保護施設に居住する者の構成比が高い(CD-ROM 参照)。 詐欺の保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,保護観察開始人員総数と比べると,全ての 年齢層において,両親と同居する者の構成比がやや高い(CD-ROM 参照)。 犯罪白書 2021 361

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8-3-1-58 図 詐欺 保護観察開始人員の居住状況別構成比(年齢層別) (平成 28 年~令和 2 年の累計) ① 仮釈放者 総 数 (6,276) 第3章 詐欺事犯の動向等 30 歳 未 満 10.9 21.0 (1,813) 40 ~ 49 歳 (1,281) 17.9 6.8 28.3 6.1 0.8 1.6 33.1 7.4 29.4 13.5 5.8 4.7 1.9 2.3 8.8 29.0 6.3 20.5 4.9 20.9 5.5 2.5 2.7 13.3 3.9 17.3 14.8 5.9 8.1 31.5 1.5 50 ~ 64 歳 16.0 (1,180) 4.3 8.6 9.2 48.1 6.8 0.9 24.6 (443) 2.9 2.6 0.2 65 歳 以 上 ② 4.8 3.7 (1,559) 30 ~ 39 歳 2.1 2.2 1.1 14.0 48.1 4.3 6.3 0.5 保護観察付全部・一部執行猶予者 第1節 総 数 (636) 詐欺事犯の動向等 30 歳 未 満 (343) 2.7 9.6 5.5 29.4 17.7 ③ 5.5 16.8 10.5 18.2 22.4 4.4 9.7 14.8 2.9 6.4 13.7 11.1 2.7 7.1 16.3 8.1 7.0 19.8 1.3 15.6 (77) (17) 7.7 22.1 16.8 1.2 50 ~ 64 歳 65 歳 以 上 5.7 2.7 (113) (86) 16.2 3.9 2.9 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 21.2 5.9 3.5 14.0 19.8 1.3 10.4 6.5 15.6 11.8 28.6 20.8 58.8 23.5 保護観察処分少年 総 数 1.6 0.1 46.2 (1,291) 8.4 32.9 1.1 3.6 3.8 2.2 ④ 少年院仮退院者 0.6 総 数 (1,009) 1.9 38.0 7.6 36.9 4.2 5.1 3.3 2.6 配偶者と同居 更生保護施設 注 362 両親と同居 雇主宅 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察開始時の居住状況による。 3 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 4 「配偶者」は,内縁関係にある者を含む。 5 「その他」は,居住状況が不詳の者を含む。 6 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書 父と同居 単身居住 母と同居 その他 その他の親族と同居

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オ 保護観察終了人員の状況等 8-3-1-59 図は,詐欺の仮釈放者,保護観察付全部執行猶予者,保護観察処分少年及び少年院仮退 院者について,平成 28 年から令和2年までにおける保護観察終了人員の終了事由別構成比を見たも のである。同年の保護観察終了人員総数(2-5-3-8 図及び 3-2-5-7 図参照)と比べると,少年院仮退 院者では,保護処分の取消しで終了した者の構成比が低く,期間満了で終了した者の構成比が高い が,その他の保護観察では保護観察終了人員総数とほぼ同様の傾向を示している。なお,保護観察付 全部執行猶予者では,仮釈放者と比べて取消しで終了した者の構成比が高いが,これは両者における 保護観察期間の長短の影響が考えられる。 なお,平成 28 年から令和2年までに保護観察を終了した詐欺の保護観察付一部執行猶予者は,い なかった。 8-3-1-59 図 詐欺 保護観察終了人員の終了事由別構成比 (平成 28 年~令和2年の累計) 期間満了 仮 釈 放 者 仮釈放の取消し 3.4 96.4 (6,186) その他 0.2 刑の執行猶予 の取消し 保護観察付 全部執行猶予者 75.7 (758) 2.0 71.4 (1,243) 11.1 0.2 退院 7.9 85.2 6.8 0.1 詐欺事犯者の実態と処遇 注 17.3 第8 編 (1,052) 保護処分 の取消し 解除 保 護 観 察 処 分 少 年 少 年 院 仮 退 院 者 22.3 1 保護統計年報による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 仮釈放者の「その他」は,保護観察停止中時効完成,死亡等であり,それ以外の「その他」は,死亡等である。 4 「保護処分の取消し」は,保護観察開始前の非行・犯罪によって,競合する新たな処分を受けたことにより,前の保護処分が取り消 される場合等を含む。 5 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 363

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8-3-1-60 図①は,詐欺の仮釈放者,保護観察付全部執行猶予者,保護観察処分少年及び少年院仮 退院者について,平成 28 年から令和2年までにおける保護観察終了人員の終了事由別構成比を終了 時の就学・就労状況別に見たものである。いずれの保護観察においても,取消しで終了した者の構成 比は,保護観察終了時に無職であった者の方が,有職であった者と比べて顕著に高い。また,同年の 保護観察終了人員総数(仮釈放者及び保護観察付全部執行猶予者は 8-3-1-60 図②,保護観察処分少 第3章 詐欺事犯の動向等 年及び少年院仮退院者は 3-2-5-7 図をそれぞれ参照)と比べると,少年院仮退院者を除き,保護観察 終了時に無職であった者の中で,取消しで終了した者の構成比が高い。 8-3-1-60 図 詐欺 保護観察終了人員の終了事由別構成比(終了時の就学・就労状況別) (平成 28 年~令和2年の累計) ① 詐欺 ア 仮釈放者 総 その他 0.2 仮釈放の取消し 3.4 期間満了 数 96.4 (6,186) イ 総 保護観察付全部執行猶予者 期間満了 数 その他 2.0 執行猶予の取消し 22.3 75.7 (758) 0.4 第1節 無 職 11.7 87.8 (1,338) 1.1 詐欺事犯の動向等 有 職 ウ 総 保護観察処分少年 数 71.4 (1,243) 17.3 11.1 48.4 (225) 49.3 0.1 1.7 職 総 90.4 (470) エ その他 0.2 保護処分の取消し 期間満了 解除 職 有 98.9 (4,645) 2.2 無 少年院仮退院者 数 (1,052) 7.9 その他 0.1 期間満了 保護処分の取消し 退院 7.9 85.2 6.8 0.8 無 職 (102) 19.6 24.5 無 55.9 職 73.4 (128) 25.8 0.2 有 職 (875) 75.5 17.0 7.2 1.9 学生・生徒 (206) ② 総 数 無 職 (11,437) 職 (837) 5.3 0.5 92.2 (47) その他 0.3 仮釈放の取消し 4.3 期間満了 95.4 イ 総 8.1 88.5 4.3 学生・生徒 保護観察終了人員総数 仮釈放者 ア 3.3 有 31.9 63.8 保護観察付全部執行猶予者 数 (2,644) 期間満了 (令和2年) その他 3.2 執行猶予の取消し 74.6 22.2 0.5 (3,849) 90.2 9.3 1.5 有 注 364 職 (7,107) 98.4 6.3 無 職 (940) 56.2 37.6 0.1 有 1.3 職 (1,499) 86.6 12.1 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「総数」は, 「無職」 ,「有職」及び「学生・生徒」のほか,家事従事者,定収入のある無職者及び不詳の者を含む。 4 仮釈放者の「その他」は,保護観察中時効完成,死亡等であり,それ以外の「その他」は,死亡等である。 5 「保護処分の取消し」は,保護観察開始前の非行・犯罪によって,競合する新たな処分を受けたことにより,前の保護処分が取り消 される場合等を含む。 6 ①において,保護観察付一部執行猶予者の保護観察終了人員はいなかった。 7 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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第2節 再犯・再非行 検挙 1 (1)再犯者 8-3-2-1 図は,詐欺により検挙された者のうち,再犯者(前に道路交通法違反を除く犯罪により検 挙されたことがあり,再び検挙された者をいう。以下(1)において同じ。)の人員及び再犯者率 (検挙人員に占める再犯者の人員の比率をいう。以下(1)において同じ。)の推移(最近 20 年間) を見たものである(再非行少年については,(3)参照)。再犯者の人員は,平成 21 年(6,997 人) まで増加傾向にあり,その後はおおむね 6,000 人前後で推移していたところ,令和元年に大きく減少 し,2年は 4,837 人(前年比 6.3%減)であった。他方,初犯者の人員は,平成 13 年から増加し続 けていたが,19 年(5,991 人)をピークに,翌年から減少傾向に転じ,令和2年(3,489 人)は平成 19 年と比べて 41.8%減であった。再犯者率は,同年まで低下傾向にあり,その後,初犯者の人員が 減少傾向にあった一方,再犯者の人員がおおむね横ばい状態にあったため,上昇傾向を示したが,令 和元年に低下に転じ,2年は 58.1%(同 0.3pt 低下)であった。また,詐欺の再犯者率を刑法犯検挙 人員総数の再犯者率(5-2-1-1 図参照)と比較すると,平成 13 年には詐欺の方が 22.9pt 高く,その 後も詐欺の方が一貫して高いが,両者の差は縮小傾向にあり,その差は令和2年には 9.0pt となって いる。 8-3-2-1 図 詐欺 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移 (平成 13 年~令和2年) (%) 70 第8 編 (千人) 15 60 58.1 再犯者率 詐欺事犯者の実態と処遇 50 10 8,326 40 員 再犯者率 人 初犯者 30 3,489 5 20 再犯者 0 平成 13 注 15 20 4,837 10 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計による。 2 「再犯者」は,詐欺により検挙された者のうち,前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり,再び検挙された者を いう。 3 「再犯者率」は,詐欺の検挙人員に占める再犯者の人員の比率をいう。 犯罪白書 2021 365

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(2)有前科者 8-3-2-2 図は,詐欺により検挙された成人のうち,有前科者(道路交通法違反を除く犯罪の前科を 有する者をいう。以下(2)において同じ。 )の人員(前科数別)及び有前科者率(成人検挙人員に 占める有前科者の人員の比率をいう。以下(2)において同じ。)の推移(最近 20 年間)を見たもの である。有前科者の人員は,平成 21 年(4,817 人)まで増加傾向にあったが,同年をピークに,翌 第3章 詐欺事犯の動向等 年から減少傾向に転じ,令和元年に大きく減少して,2年は 2,822 人(前年比 7.6%減)であった。 有前科者率は,刑法犯成人検挙人員総数の有前科者率(5-2-1-2 図参照)と比較して一貫して高いが, 刑法犯成人検挙人員総数の有前科者率がほぼ一定しているのに対して低下傾向にある。 令和2年に詐欺により検挙された成人のうち,有前科者を見ると,前科数別では,前科1犯の者の構成比 が最も高く,次いで前科5犯以上の者の順であったが,平成13年以降,前科1犯の者の構成比は上昇傾向 にあるのに対し,前科5犯以上の者の構成比は低下傾向にある。もっとも,詐欺は,刑法犯成人検挙人員総 数と比べて前科5犯以上の者の構成比が高い。なお,詐欺は,令和2年の有前科者のうち同一罪名の前科 を有する者の構成比が36.9%であり,刑法犯成人検挙人員総数(52.2%)と比べて低い(CD-ROM 参照) 。 8-3-2-2 図 詐欺 成人検挙人員中の有前科者人員(前科数別)・有前科者率等の推移 第2節 (平成 13 年~令和2年) (千人) 5 (%) 50 再犯・再非行 有前科者率 4 40 令和2年検挙人員 5犯以上 796 4犯 247 3犯 331 2犯 505 1犯 943 36.7 2 20 2,822 員 30 有前科者率 人 3 13.5 1 0 平成 13 注 10 同一罪名有前科者率 15 20 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計による。 2 検挙時の年齢による。 3 「有前科者」は,道路交通法違反を除く犯罪の前科を有する者をいう。 4 「有前科者率」は,詐欺の成人検挙人員に占める有前科者の人員の比率をいう。 5 「同一罪名有前科者率」は,詐欺の成人検挙人員に占める,前に同一罪名(詐欺)の前科を有する者の人員の比率をいう。 (3)再非行少年 8-3-2-3 図は,詐欺により検挙された少年のうち,再非行少年(前に道路交通法違反を除く非行によ り検挙(補導)されたことがあり,再び検挙された少年をいう。以下(3)において同じ。 )の人員及び 再非行少年率(少年の検挙人員に占める再非行少年の人員の比率をいう。以下(3)において同じ。 )の 推移(最近 20 年間)を見たものである。再非行少年の人員は,増減を繰り返しながら平成 30 年まで増 加傾向にあったが,その後は減少している。再非行少年率は,19 年まで低下傾向にあった後,30 年 (61.7%)をピークに上昇傾向にあったが,その後再び低下し,令和2年は54.4%(前年比 2.1pt 低下) であった。詐欺により検挙された少年の再非行少年率は,少年の刑法犯検挙人員総数の再非行率(5-25-1図参照)と比較して顕著に高く,2年においては,その差は19.7ptであった(CD-ROM 参照) 。 366 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-2-3 図 少年の詐欺 検挙人員中の再非行少年の人員・再非行少年率の推移 (平成 13 年~令和2年) (人) 1,200 (%) 70 再非行少年率 60 1,000 54.4 50 検挙人員 634 40 600 員 30 345 400 20 200 0 平成 13 注 1 2 3 4 5 2 再非行少年率 人 800 10 うち再非行少年 15 20 25 30 令和2 0 警察庁の統計による。 犯行時の年齢による。ただし,検挙時に 20 歳以上であった者を除く。 触法少年の補導人員を含まない。 「再非行少年」は,前に道路交通法違反を除く非行により検挙(補導)されたことがあり,再び検挙された少年をいう。 「再非行少年率」は,詐欺の少年検挙人員に占める再非行少年の人員の比率をいう。 検察・裁判 第8 編 (1)起訴人員中の有前科者 令和2年に詐欺により起訴された者のうち,有前科者(前に罰金以上の有罪の確定裁判を受けた者 に限る。以下(1)において同じ。 )の人員及び有前科者率(起訴人員に占める有前科者の人員の比 詐欺事犯者の実態と処遇 率をいう。以下(1)において同じ。)は,5-2-2-1 表のとおりである。 近時,詐欺により起訴された者の有前科者の人員は一貫して減少しているが,有前科者率は, 30%台後半で推移している。 令和2年について見ると,詐欺により起訴された者の有前科者率(37.5%)は,起訴人員総数の 有前科者率(44.0%)より低かった。一方,詐欺により起訴された者の有前科者のうち,懲役・禁 錮の前科を有する者の比率は,起訴人員総数の有前科者と比較して高く,罰金のみの前科を有する者 の比率は低かった(5-2-2-1 表参照)。 また,令和2年に詐欺により起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中,一部執行猶予中,仮 釈放中又は保釈中であった者の人員は,5-2-2-2 表のとおりである。 近時,詐欺により起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中であった者及び仮釈放中であった 者はいずれもおおむね減少傾向にあり,令和2年は,前者は 460 人(前年比4人減),後者は 38 人 (同3人増)であった。また,犯行時に保釈中であった者は,10 人前後で推移しており,2年は 12 人(同1人増)であった。 (2)全部及び一部執行猶予の取消し 8-3-2-4 表は,詐欺により全部執行猶予を言い渡された者について,保護観察の有無別の人員及び 取消事由別の取消人員等の推移(最近 10 年間)を見たものである。全部執行猶予を取り消された者 は,平成 23 年以降減少傾向にあり,令和2年は 155 人(全部執行猶予取消人員総数の 4.5%)であっ 犯罪白書 2021 367

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た。このうち,取消事由が再犯である者は,保護観察付全部執行猶予中の者が 20 人(前年比4人増), その他の者(単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。)が 119 人(同5人減)であった。 詐欺により全部執行猶予を言い渡された者について,取消人員の言渡人員に対する比率(以下(2) において「執行猶予取消率」という。なお,取消人員は,当該年に全部執行猶予を取り消された者で あり,当該年よりも前に全部執行猶予の言渡しを受けた者も含まれる。このため,厳密には取消人員 第3章 詐欺事犯の動向等 の言渡人員に対する比率は,実際の全部執行猶予の取消しの比率を意味しないが,そのおおよその傾 向を見ることができる。 )は,全罪名の執行猶予取消率(5-2-2-3 表参照)よりも平成 23 年以降一貫 して低く,29 年まで低下傾向にあったが,30 年にやや上昇した後は 10%前後で推移している。再 犯を事由とする執行猶予取消率を保護観察の有無別に見ると,保護観察付全部執行猶予中の者は 26.0%と全罪名の執行猶予取消率(23.6%)より高く,その他の者は 8.8%と全罪名の執行猶予取消 率(10.0%)より低かった。 8-3-2-4 表 詐欺 全部執行猶予の言渡人員(保護観察の有無別) ・取消人員(取消事由別)の推移 (平成 23 年~令和2年) 第2節 取 消 全部執行 全部執行 猶 予 の 猶 予 の 再 犯 次 言渡人員 保 護 単 純 取消人員 保 護 観 察 付 執行猶予 その他 余 観察中 年 再犯・再非行 (A) (B) (C) (D) (E) 事 罪 由 遵守事項 その他 違 反 D A (%) E B (%) F C (%) 26.8 10.6 (F) 23 年 1,962 157 1,805 260 42 191 24 3 - 13.3 24 2,101 169 1,932 252 48 172 24 8 - 12.0 28.4 8.9 25 1,996 134 1,862 191 30 134 22 5 - 9.6 22.4 7.2 26 2,356 156 2,200 197 28 148 15 6 - 8.4 17.9 6.7 27 1,969 172 1,797 194 17 156 18 1 2 9.9 9.9 8.7 28 2,036 133 1,903 177 35 118 20 4 - 8.7 26.3 6.2 29 2,087 124 1,963 180 26 136 12 6 - 8.6 21.0 6.9 30 1,761 102 1,659 178 22 144 10 2 - 10.1 21.6 8.7 元 1,644 102 1,542 160 16 124 17 3 - 9.7 15.7 8.0 2 1,430 77 1,353 155 20 119 14 1 1 10.8 26.0 8.8 注 1 検察統計年報による。 2 懲役の全部執行猶予に関するものである。 3 「全部執行猶予の言渡人員」は,裁判が確定したときの人員であり,控訴審又は上告審におけるものを含む。 4 「単純執行猶予」は,全部執行猶予のうち,保護観察の付かないものをいう。 5 「取消事由」の「再犯」は刑法 26 条1号に,「余罪」は同条2号に, 「遵守事項違反」は同法 26 条の2第2号に,「その他」は同法 26 条3号,26 条の2第1号若しくは第3号又は 26 条の3のいずれかに,それぞれ該当する事由である。 6 「全部執行猶予の取消人員」は,同一人について一つの裁判で2個以上の刑の全部執行猶予の言渡しが同時に取り消された場合,そ のうち主要なものが詐欺である場合に1人として計上している。 7 「取消事由」の「再犯」の「その他」は,単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。 刑の一部執行猶予制度が開始された平成 28 年から令和2年までの間に詐欺により一部執行猶予を 言い渡された者は4人(全て保護観察に付されている。)であり,うち同年までに同猶予を取り消さ れた者はいなかった(検察統計年報による。)。 3 矯正 (1)再入者 ア 人員 詐欺の入所受刑者人員のうち,初入者及び再入者の人員並びに再入者率(第5編第2章第3節1項 参照)の推移(最近 20 年間)を男女別に見ると,8-3-2-5 図のとおりである。男性の再入者率は, 368 令和 3 年版 犯罪白書

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平成 13 年(55.8%)からおおむね低下傾向にあったが,28 年以降は横ばいで推移している。女性を 見ると,詐欺の入所受刑者総数は,15 年(197 人)をピークにおおむね減少傾向にあるが,再入者 率は年による変動が大きい。女性の再入者率は,男性と比べて一貫して低く,令和2年は男性が 34.9%であったところ,女性は 15.3%であった。これは,いずれも入所受刑者全体の再入者率 (58.0%。5-2-3-1 図①参照)と比べて低い。 8-3-2-5 図 詐欺 入所受刑者人員(男女別,初入者・再入者別)・再入者率の推移 (平成 13 年~令和2年) ① 男性 ② (人) 3,000 再入者率 34.9 50 1,500 30 初入者 1,000 20 500 10 再入者 0 平成 13 15 20 25 30 令和2 (%) 60 再入者率 15.3 150 40 2,000 注 (人) 200 (%) 60 2,500 女性 1,441 20 初入者 50 0 40 118 30 100 938 503 50 100 10 再入者 0 平成 13 15 20 25 30 令和2 18 0 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 詐欺の入所受刑者の年齢層別構成比の推移(最近 20 年間)を初入者・再入者別に見ると,8-3- 第8 編 2-6 図のとおりである。初入者・再入者共に,50~64 歳の者の構成比は,平成 13 年からおおむね低 下傾向にあるが,初入者では,30 歳未満の者の構成比が上昇傾向にあり,令和2年(43.7%)は, 平成 13 年(19.1%)と比べると,約2倍に上昇している。また,初入者における 30 歳未満の者及 び 30 歳代の者の各構成比の割合は,再入者と比べて,いずれも一貫して高い。 詐欺事犯者の実態と処遇 8-3-2-6 図 詐欺 入所受刑者の年齢層別構成比の推移(初入者・再入者別) (平成 13 年~令和2年) ① ② 初入者 (%) 100 3.5 14.3 80 15.2 60 23.3 40 43.7 0 平成 13 15 20 30 歳未満 1 2 (%) 100 15.2 80 30.5 60 27.8 40 20 注 再入者 25 30 令和2 30 ~ 39 歳 20 20.2 0 平成 13 15 40 ~ 49 歳 20 50 ~ 64 歳 25 30 令和2 6.3 65 歳以上 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 入所時の年齢による。 犯罪白書 2021 369

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イ 前刑罪名 令和2年の再入者の前刑罪名(前回入所した時の罪名をいう。以下この項において同じ。)別構成 比を罪名別に見るとともに,詐欺について更に年齢層別に見ると,8-3-2-7 図のとおりである。詐欺 について,同一罪名再入者(再入罪名と前刑罪名が同一である者をいう。以下この項において同じ。) の構成比は,総数で 44.3%であり,年齢層別に見ると,65 歳以上の者(70.9%)が最も高く,次い 第3章 詐欺事犯の動向等 で,50~64 歳の者(44.0%),40 歳代の者(37.9%)の順であった。また,30 歳未満の者において は,前刑罪名が窃盗の者の構成比が約4割を占め,最も高い。 同一罪名再入者の構成比について罪名別に見ると,詐欺は,窃盗及び覚醒剤取締法違反より低く, 傷害・暴行より高い。また,詐欺以外の罪名においても,詐欺が前刑罪名である者が一定割合含まれ ているが,いずれも1割に満たない(窃盗は 3.6%,傷害・暴行は 3.4%,覚醒剤取締法違反は 2.1%) 。 8-3-2-7 図 再入者の前刑罪名別構成比(罪名別,年齢層別) (令和2年) ① 詐欺 総 数 44.3 第2節 (521) 11.1 22.6 4.0 17.9 3.0 再犯・再非行 30 歳 未 満 36.4 (33) 39.4 21.2 2.9 30 ~ 39歳 36.2 (105) 40 ~ 49歳 27.6 37.9 (145) 50 ~ 64歳 29.7 44.0 (159) 14.3 19.0 9.7 16.4 4.8 17.6 5.0 70.9 (79) ② ③ 16.5 2.4 数 77.9 (3,591) 5.3 3.6 覚醒剤取締法 総 ④ 78.4 (3,254) 6.8 傷害・暴行 数 (444) 24.8 23.0 窃盗 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 入所時の年齢による。 3 「前刑罪名」は,前回入所した時の罪名をいう。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 3.9 3.4 詐欺 令和 3 年版 10.8 2.1 数 総 370 8.9 窃盗 総 注 17.0 2.5 1.3 65 歳 以 上 17.9 15.8 覚醒剤取締法 33.1 傷害・暴行 その他 8.9

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ウ 再犯期間 令和2年の再入者のうち,前刑罪名が詐欺の者の再犯期間(第5編第2章第3節4項参照)を前刑出 所時の年齢層別に見ると,8-3-2-8 図①のとおりである。前刑罪名が詐欺の再入者のうち,65 歳以上の 者では,再犯期間が6月未満の者の構成比が約5割を占めており,再入者総数(8-3-2-8 図②)の同年齢 層における構成比(32.3%)と比べて顕著に高い。また,30 歳未満の者では,再犯期間が1年未満の者 の構成比(32.8%)が再入者総数(8-3-2-8 図②)の同年齢層における構成比(25.9%)と比べて高い。 前刑罪名が詐欺の再入者のうち,再入罪名も詐欺の者(226 人)の再犯期間別構成比について見る と,前刑罪名が詐欺の再入者全体(8-3-2-8 図①)と比べて,再犯期間が1年未満の者の構成比は, 30 歳未満の者(23.8%)が低い一方,30 歳代の者(39.2%),40 歳代の者(36.0%),50~64 歳の 者(57.8%)及び 65 歳以上の者(77.5%)は高い(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。 8-3-2-8 図 ① 詐欺 再入者の再犯期間別構成比(前刑出所時の年齢層別) (令和2年) 詐欺(前刑罪名:詐欺→再入罪名:全罪名) 総 数 3月未満 6月未満 1年未満 2年未満 3年未満 4年 未満 5年 未満 5年以上 15.0 11.4 13.6 16.4 12.4 7.7 4.3 19.1 (507) 30 歳 未 満 (67) 30 ~ 39歳 (127) 40 ~ 49歳 (118) 13.4 6.0 16.4 13.4 7.5 14.9 7.5 20.9 3.1 10.2 7.9 11.8 17.3 15.0 7.9 26.8 3.4 9.3 9.3 22.1 (131) 11.0 21.2 12.2 13.0 12.2 7.6 24.6 9.9 12.2 5.3 第8 編 50 ~ 64歳 13.6 13.0 3.1 65 歳 以 上 21.9 (64) 26.6 20.3 12.5 7.8 4.7 詐欺事犯者の実態と処遇 3.1 ② 再入者総数(前刑罪名:全罪名→再入罪名:全罪名) 総 数 (9,486) 30 歳 未 満 (883) 30 ~ 39歳 (2,228) 40 ~ 49歳 (2,721) 50 ~ 64歳 (2,524) 65 歳 以 上 (1,130) 注 3月未満 6月未満 9.8 9.4 6.5 7.1 5.9 7.9 7.7 2年未満 3年未満 4年 未満 5年 未満 5年以上 15.8 21.3 13.3 8.9 5.8 15.8 12.3 12.9 17.4 14.6 19.9 15.5 8.7 12.6 1年未満 10.3 12.8 22.9 17.7 5.7 10.3 9.4 14.0 22.3 27.7 7.8 21.6 9.1 13.0 6.2 8.2 15.8 5.0 11.0 3.3 18.6 13.7 17.1 20.8 13.0 7.4 6.1 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再犯期間」は,前回の刑の執行を受けて出所した日から再入に係る罪を犯した日までの期間をいう。 4 「前刑罪名」は,前回入所した時の罪名をいう。 5 前刑出所時の年齢による。再入者の前刑出所時年齢は,再入所時の年齢及び前刑出所年から算出した推計値である。 6 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 371

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エ 保護処分歴 令和2年の詐欺の入所受刑者の保護処分歴別構成比を初入者・再入者別に見るとともに,これを年 齢層別に見ると,8-3-2-9 図のとおりである。保護処分歴を有する者の構成比は,初入者及び再入者 のいずれも若い年齢層の者ほど高い傾向にあり,特に,再入者のうち 30 歳未満の者の構成比は,入 所受刑者全体(61.8%。5-2-3-3 図参照)と比べて高い。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-2-9 図 詐欺 入所受刑者の保護処分歴別構成比(初入者・再入者別,年齢層別) (令和2年) ① ② 初入者 少年院送致 保護観察等 総 数 (1,038) 83.5 9.1 7.4 30 歳 未 満 16.1 12.1 (454) 第2節 30 ~ 39歳 保護処分歴なし 71.8 87.2 (242) 再犯・再非行 93.7 (158) 16.3 10.9 72.7 (521) 30 歳 未 満 54.5 (33) 12.1 33.3 30 ~ 39歳 (105) 24.8 13.3 61.9 40 ~ 49歳 (145) 8.3 13.8 77.9 12.6 10.7 76.7 0.7 50 ~ 64歳 98.6 (148) 65 歳 以 上 100.0 (36) 注 保護処分歴なし 数 4.4 40 ~ 49歳 0.7 総 保護観察等 少年院送致 5.8 7.0 1.9 再入者 50 ~ 64歳 (159) 65 歳 以 上 (79) 2.5 11.4 86.1 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 入所時の年齢による。 3 「保護観察等」は,保護観察及び児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 4 複数の保護処分歴を有する場合,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,それ以外の者は「保護観察等」に計上している。 5 ( )内は,実人員である。 オ 暴力団関係者 令和2年の詐欺の入所受刑者の暴力団関係者率(第4編第3章第2節3項(2)参照)を初入者・ 再入者別に見ると,8-3-2-10 図のとおりである。 8-3-2-10 図 詐欺 入所受刑者の暴力団関係者率(初入者・再入者別) (令和2年) 暴力団関係者 1.3 注 372 初 入 者 再 入 者 98.7 (1,038) (521) 非関係者 6.7 93.3 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「暴力団関係者」は,犯行時に暴力団対策法に規定する指定暴力団等に加入していた者及びこれに準ずる者をいう。 3 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)出所受刑者の再入所状況 平成 23 年及び 28 年の詐欺の出所受刑者について,出所年を含む5年間又は 10 年間における再入 率(第5編第2章第3節2項参照)を出所事由別(仮釈放又は満期釈放等の別をいう。以下同じ。) に見ると,8-3-2-11 図のとおりである。5年以内及び 10 年以内の各再入率は,満期釈放者等(同項 参照)及び仮釈放者のいずれにおいても,出所受刑者全体(5-2-3-6 図参照)と比べて低い。一方, いずれの出所年の出所受刑者においても,満期釈放者等は,仮釈放者よりも再入率が相当高く,出所 受刑者全体(5-2-3-6 図参照)と比べて,その差は顕著である。なお,28 年の詐欺の出所受刑者に ついて,各年の再入所者に占める再入罪名別構成比を見ると,再入罪名が詐欺の者の構成比はそれぞ れ 62.2%(28 年) ,52.1%(29 年) ,42.4%(30 年),44.3%(令和元年),20.5%(2年)と低下 傾向にあるが,各年とも再入罪名が窃盗の者は約2~3割と,一定の割合を占めている(法務省大臣 官房司法法制部の資料による。)。 8-3-2-11 図 ① 詐欺 出所受刑者の出所事由別再入率 5年以内 ② 10 年以内 (平成 28 年) (平成 23 年) (%) 60 (%) 60 50 50 40 34.3 26.4 30 20 10.7 11.5 3.9 0 出所年 0.4 3.8 2年以内 16.7 7.7 3年以内 注 10.8 4年以内 40 22.5 12.5 30 20 10 5年以内 仮釈放(1,252 人) 33.1 29.8 18.3 14.5 34.8 19.7 5.7 0 出所年2年以内 5年以内 10 年以内 満期釈放(1,058 人) 総数(2,299 人) 仮釈放(1,241 人 ) 詐欺事犯者の実態と処遇 満期釈放等(644 人) 総数(1,896 人) 20.4 41.8 52.6 第8 編 10 39.1 47.6 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再入率」は,①では平成 28 年の,②では 23 年の,各出所受刑者の人員に占める,それぞれ当該出所年から令和2年までの各年の年 末までに再入所した者の人員の比率をいう。 平成 28 年の詐欺の出所受刑者について,5年以内の再入率を入所度数別,男女別(初入者・再入 者別)及び年齢層別に見ると,8-3-2-12 図のとおりである。入所度数別では,3度以上の者は,2 度の者よりも再入率が相当高く,出所受刑者全体(5-2-3-7 図①参照)と比べて,その差は顕著であ る。男女別(初入者・再入者別)では,初入者及び再入者のいずれにおいても,男性の方が女性より も再入率が高い傾向にあり,年齢層別では,30 歳未満の者の5年以内再入率が他の年齢層と比較し て最も低い。 犯罪白書 2021 373

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8-3-2-12 図 詐欺 出所受刑者の5年以内再入率(入所度数別,男女・初入者・再入者別,年齢層別) (平成 28 年) ① ② 入所度数別 第3章 詐欺事犯の動向等 50 44.1 40 27.8 30 20 10.7 15.1 3.1 3.0 0.9 0 出所年 2年以内 19.7 6.2 3年以内 1度(1,115 人) 3度以上(522 人) 第2節 ③ 46.6 37.7 10 男女・初入者・再入者別 (%) 60 (%) 60 50 37.6 40 23.6 26.6 30 20 8.6 4年以内 10.2 5年以内 2度(259 人) 31.9 10 23.8 8.5 28.6 17.9 3.3 1.1 0 0.9 3.0 出所年 2年以内 6.4 3.3 3年以内 男性・初入者(1,024 人) 女性・初入者(91 人) 42.9 39.8 28.6 8.8 10.4 6.6 7.7 4年以内 5年以内 男性・再入者(753 人) 女性・再入者(28 人) 年齢層別 再犯・再非行 (%) 60 50 40 30 18.5 20 10 9.9 16.8 5.3 9.3 2.6 4.8 0 0.9 出所年 2年以内 22.6 21.8 15.0 9.6 3年以内 30 歳未満(332 人) 50 ~ 64 歳(452 人) 注 26.1 24.7 28.1 25.5 21.3 18.9 15.7 13.6 4年以内 5年以内 30 ~ 49 歳(869 人) 65 歳以上(243 人) 1 2 3 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 ③の「年齢層」は,前刑出所時の年齢による。再入者の前刑出所時年齢は,再入所時の年齢及び前刑出所年から算出した推計値であ る。 4 「再入率」は,平成 28 年の出所受刑者の人員に占める,同年から令和2年までの各年の年末までに再入所した者の人員の比率をい う。 5 平成 28 年の詐欺の出所受刑者のうち,女性の再入者については,同年末までに再入所した者はいなかった。 平成 12 年から令和元年の各年の詐欺の出所受刑者について,2年以内再入率の推移を出所事由別 に見ると,8-3-2-13 図①のとおりである。満期釈放者等の2年以内再入率は,平成 12 年に 53.7% を記録した後,出所年による変動はあるものの,低下傾向にあり,令和元年は 22.5%と,平成 12 年 と比べて 31.2pt 低下している。仮釈放者の2年以内再入率は,12 年に 13.5%を記録した後,低下傾 向にあり,令和元年は 3.2%と,平成 12 年と比べて 10.3pt 低下している。 平成9年から 28 年の各年の詐欺の出所受刑者について,5年以内再入率の推移を出所事由別に見 ると,8-3-2-13 図②のとおりである。満期釈放者等の5年以内再入率は,12 年に 71.6%を記録した 後,低下傾向にあり,28 年は 41.8%と,12 年と比べて 29.9pt 低下している。仮釈放者の5年以内 再入率は,9年に 33.2%を記録した後,低下傾向にあり,28 年は 12.5%と,9年と比べて 20.7pt 低下している。 374 令和 3 年版 犯罪白書

392.

2年以内再入率及び5年以内再入率について,出所受刑者総数(5-2-3-9 図①②参照)と比べると, 満期釈放者等及び仮釈放者のいずれにおいても,最近 20 年間で大幅に低下している。 8-3-2-13 図 ① 詐欺 出所受刑者の出所事由別再入率の推移 2年以内 ② 5年以内 (平成 12 年~令和元年) (平成9年~ 28 年) (%) 80 (%) 80 70 70 60 60 50 50 40 40 30 10 0 平成 12 9.3 3.2 15 20 25 令和元 満期釈放等 注 30 22.5 20 41.8 22.5 20 12.5 10 0 平成9 仮釈放 15 20 25 28 総数 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 前刑出所後の犯罪により再入所した者で,かつ,前刑出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者を計上している。 3 「再入率」は,各年の出所受刑者の人員に占める,出所年を1年目として, ①では2年目(翌年)の,②では5年目の,それぞれ年末 までに再入所した者の人員の比率をいう。 (3)少年院入院者の保護処分歴 第8 編 平成 28 年から令和2年までにおける詐欺の少年院入院者の保護処分歴別構成比を男女別に見ると, 8-3-2-14 図のとおりである。令和2年の少年院入院者総数(5-2-5-2 図②参照)と比べると,女子 では大きな違いは見られないが,男子では保護処分歴を有する者の構成比が低い。また,詐欺の少年 院入院者の保護処分歴別構成比の推移(最近 10 年間)を見ると,男子の保護処分歴を有する者の構 詐欺事犯者の実態と処遇 成比は,平成 23 年には約7割であったが,26 年に約5割に低下し,その後はおおむね5割台後半か ら6割台前半の間で推移している(CD-ROM 参照)。 8-3-2-14 図 詐欺 少年院入院者の保護処分歴別構成比(男女別) (平成 28 年~令和2年の累計) 男 女 注 子 少年院送致 保護観察 16.2 39.9 (986) 子 (60) 児童自立支援施設等送致 1.1 保護処分歴なし 42.8 1.7 6.7 31.7 60.0 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 3 複数の保護処分歴を有する場合,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,それ以外の者のうち保護観察歴がある者は「保護観察」 に,児童自立支援施設等送致歴のみがある者は「児童自立支援施設等送致」に計上している。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 375

393.

保護観察 4 (1)保護観察開始人員中の有前科者 詐欺の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者について, 有前科者(今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。以下(1)にお 第3章 詐欺事犯の動向等 いて同じ。 )の保護観察開始人員及び有前科者率(保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率 をいう。以下(1)において同じ。 )の推移(最近 10 年間)は,8-3-2-15 図のとおりである。仮釈 放者(全部実刑者・一部執行猶予者)の有前科者率は,平成 23 年から 28 年まで6割台で推移してい たが,29 年からは5割台で推移し,令和2年(54.8%)は,平成 23 年よりも 9.6pt 低下している。 保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率は,26 年まで4割台で推移した後,27 年からは3割 台で推移し,令和2年(31.8%)は,平成 23 年よりも 9.9pt 低下している。また,詐欺の仮釈放者 (全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率は,全ての仮釈 放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部・一部執行猶予者の有前科者率(5-2-4-1 図 CD-ROM 参照)と比べると,顕著に低く,令和2年では,前者で 28.6pt,後者で 43.2pt,それ ぞれ低くなっている。 第2節 8-3-2-15 図 詐欺 保護観察開始人員(前科の有無別)・有前科者率の推移 再犯・再非行 (平成 23 年~令和2年) ① 仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者) (人) 1,500 有前科者率 ② (%) 100 1,293 80 584 1,000 60 54.8 40 500 20 0 平成 23 25 30 令和2 91 (人) 200 (%) 100 有前科者率 150 60 100 40 50 20 397 0 80 107 221 懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科あり 罰金前科あり 注 保護観察付全部・一部執行猶予者 0 平成 23 25 30 令和2 0 73 31.8 5 24 5 懲役・禁錮(全部執行猶予)の前科あり 前科なし 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「有前科者」は,今回の保護観察開始前に罰金以上の刑に処せられたことがある者をいう。 3 「有前科者率」は,保護観察開始人員に占める有前科者の人員の比率をいう。 4 前科の有無が不詳の者を除く。 5 複数の前科を有する場合,懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科がある者は「懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前 科あり」に,懲役・禁錮(全部実刑・一部執行猶予)の前科がなく,かつ懲役・禁錮(全部執行猶予)の前科がある者は「懲役・禁錮 (全部執行猶予)の前科あり」に,罰金の前科のみがある者は「罰金前科あり」に,それぞれ計上している。 (2)保護観察対象者の再処分等の状況 詐欺の仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・再処分率 (第5編第2章第4節2項参照)の推移(最近 10 年間)を,男女別・年齢層別・就労状況別に見る と,8-3-2-16 図のとおりである(なお,保護観察付一部執行猶予者の保護観察終了者はいなかっ た。 ) 。 男女別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部執 行猶予者共に,男性が女性よりも高い傾向にある。 376 令和 3 年版 犯罪白書

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年齢層別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者),保護観察付全部 執行猶予者共に,年による変動が大きい年齢層もあるものの,おおむね仮釈放者(全部実刑者・一部 執行猶予者)は 50~64 歳の者が高く,保護観察付全部執行猶予者は 30 歳未満の者が高い傾向にあ る。また,全ての仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶予者の取消・ 再処分率(5-2-4-3 図参照)と比較すると,令和2年においては,仮釈放者(全部実刑者・一部執行 猶予者)では全ての年齢層で詐欺が低いのに対して,保護観察付全部執行猶予者では,30~49 歳の 者を除く年齢層で詐欺が高くなっている。 保護観察終了時の就労状況別に取消・再処分率を見ると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予 者) ,保護観察付全部執行猶予者共に,無職であった者は,有職であった者と比べ,取消・再処分率 が一貫して高い。また,全ての仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者)及び保護観察付全部執行猶 予者の取消・再処分率(5-2-4-3 図参照)と比べると,仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者), 保護観察付全部執行猶予者共に,有職者の取消・再処分率は詐欺が低く,無職者の取消・再処分率は 詐欺が高い傾向にあったが,令和2年においては,有職者について,保護観察付全部執行猶予者 (22.5%)で 4.4pt,詐欺が上回った(CD-ROM 参照)。 8-3-2-16 図 詐欺 保護観察終了者の取消・再処分率の推移(男女別,年齢層別,就労状況別) (平成 23 年~令和2年) ① 仮釈放者(全部実刑者・一部執行猶予者) ア 男女別 イ 10 10 3.8 25 30 男性 ウ 令和2 女性 4.3 4.2 3.9 3.1 5 0 平成 23 25 30 歳未満 50 ~ 64 歳 30 詐欺事犯者の実態と処遇 1.2 第8 編 5 0 平成 23 年齢層別 (%) 15 (%) 15 令和2 30 ~ 49 歳 65 歳以上 就労状況別 (%) 15 10 9.7 5 0 平成 23 1.4 25 30 有職 令和2 無職 犯罪白書 2021 377

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② 保護観察付全部執行猶予者 ア 男女別 イ 年齢層別 (%) 70 (%) 70 60 60 50 50 第3章 詐欺事犯の動向等 40 36.3 30 23.1 20 25 30 男性 ウ 40 30 32.1 20 20.0 10 10 0 平成 23 50.0 45.8 令和2 女性 0 平成 23 25 30 歳未満 50 ~ 64 歳 30 令和2 30 ~ 49 歳 65 歳以上 就労状況別 (%) 70 第2節 60 55.6 50 40 再犯・再非行 30 22.5 20 10 0 平成 23 25 30 有職 注 378 令和2 無職 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「取消・再処分率」は,保護観察終了人員のうち,再犯若しくは遵守事項違反により仮釈放若しくは保護観察付全部執行猶予を取り 消された者,又は保護観察期間中に再犯により刑事処分(起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに 限る。 )を受けた者の人員(双方に該当する者は1人として計上される。 )の占める比率をいう。 3 イの「年齢層」は,保護観察終了時の年齢による。 4 ウの「就労状況」は,保護観察終了時の就労状況により,就労状況が不詳の者を除く。「無職」は,学生・生徒,家事従事者及び収 入のある無職者を除く。 5 保護観察付一部執行猶予者の保護観察終了人員はいなかった。 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-2-17 表は,詐欺の仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者について,保護観 察が開始された年(最近 10 年間)ごとに,保護観察が開始された日から5年以内に再犯又は遵守事 項違反により仮釈放又は刑の執行猶予の言渡しを取り消された者の人員を見たものである(仮釈放者 (一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者については,CD-ROM 参照)。平成 23 年から 27 年までの各年に保護観察が開始された者の取消状況を見ると,仮釈放者(全部実刑者)のうち仮釈放 を取り消された者の比率は 2.8 から 4.8%の間で,保護観察付全部執行猶予者のうち全部執行猶予を 取り消された者の比率は 21.5 から 30.3%の間でそれぞれ推移しており,全ての仮釈放者(全部実刑 者)及び保護観察付全部執行猶予者(5-2-4-4 表参照)と比べて,顕著な違いは見られなかった。 8-3-2-17 表 ① (平成 23 年~令和2年) 仮釈放者(全部実刑者) 年 次 仮釈放を取り消された者の人員 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 23 年 1,203 31 14 - 24 1,179 … 28 25 1,187 … … 26 1,248 … 27 1,257 … 28 1,189 29 30 - - 16 - 41 16 … … … … … … 1,249 … 1,276 … 元 1,266 2 1,287 元年 2年 B (%) 計(B) A - … … … … 45 3.7 - 2 - … … … 46 3.9 - - - - … … 57 4.8 35 15 2 - 1 - … 53 4.2 … 24 9 2 - - - 35 2.8 … … … 29 9 1 - - [39] [3.3] … … … … … 39 17 2 1 [59] [4.7] … … … … … … 28 7 2 [37] [2.9] … … … … … … … … 20 12 [32] [2.5] … … … … … … … … … 27 [27] [2.1] 保護観察付全部執行猶予者 年 次 全部執行猶予を取り消された者の人員 保 護 観 察 開始人員(A) 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年 29 年 30 年 元年 2年 第8 編 ② B (%) 計(B) A 23 年 178 11 25 9 5 2 2 … … … … 54 30.3 24 186 … 13 14 11 6 7 3 … … … 54 29.0 25 141 … … 6 9 5 5 6 - … … 31 22.0 26 159 … … … 4 9 12 10 - 2 … 37 23.3 27 181 … … … … 5 19 3 7 4 1 39 21.5 28 146 … … … … … 5 17 8 3 1 [34] [23.3] 29 137 … … … … … … 2 8 6 7 [23] [16.8] 30 124 … … … … … … … 1 7 7 [15] [12.1] 元 121 … … … … … … … … 2 8 [10] [8.3] 2 102 … … … … … … … … … 3 [3] [2.9] 詐欺事犯者の実態と処遇 注 詐欺 仮釈放・保護観察付全部執行猶予の取消状況 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察が開始された日から5年以内に,仮釈放又は保護観察付全部執行猶予を取り消された者の人員を年次別に計上している。 なお, [ ]内は,開始された日から5年に満たない各年の累積人員及び比率である。 3 余罪(刑法 29 条1項2号・3号)により仮釈放を取り消された者を除く。 4 余罪(刑法 26 条2号・3号,26 条の2第3号)により保護観察付全部執行猶予を取り消された者を除く。 犯罪白書 2021 379

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(3)少年の保護観察対象者の保護処分歴及び再処分の状況 令和2年における詐欺の保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く(以下(3)におい て同じ。 ) 。同年中に保護観察が開始された者に限る。)について,保護処分歴別構成比を男女別に見 ると,8-3-2-18 図のとおりである。詐欺の保護観察処分少年は,全ての保護観察処分少年の保護処 分歴別構成比(5-2-5-2 図①参照)と比べると,保護処分歴を有する者の構成比が,男子(16.6%) 第3章 詐欺事犯の動向等 で 2.3pt,女子(8.5%)で 1.8pt,それぞれ低かった。 8-3-2-18 図 詐欺 保護観察処分少年の保護処分歴別構成比(男女別) (令和2年) 男 子 少年院送致 1.2 保護観察 子 (47) 注 保護処分歴なし 14.1 (163) 女 児童自立支援施設等送致 1.2 83.4 2.1 6.4 91.5 第2節 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「児童自立支援施設等送致」は,児童自立支援施設・児童養護施設送致である。 4 複数の保護処分歴を有する場合,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,それ以外の者のうち保護観察歴がある者は「保護観察」 に,児童自立支援施設等送致歴のみがある者は「児童自立支援施設等送致」に計上している。 5 ( )内は,実人員である。 再犯・再非行 8-3-2-19 表は,平成 23 年から令和2年までの間に保護観察が終了した詐欺の保護観察処分少年及 び少年院仮退院者について,再処分率(第5編第2章第5節4項参照)の推移を見たものである。保 護観察処分少年の再処分率は 11%台から 21%台の間,少年院仮退院者の再処分率は6%台から 16% 台の間でそれぞれ推移している。全ての保護観察処分少年及び少年院仮退院者の再処分率の推移(52-5-5 表参照)と比較すると,少年院仮退院者では詐欺が一貫して低くなっており,同年(12.0%) は 7.5pt 低かった。 8-3-2-19 表 ① 詐欺 保護観察対象少年の再処分率の推移 (平成 23 年~令和2年) 保護観察処分少年 処 年 380 次 保護観察 再処分率 終了人員 分 懲役・禁錮 実 刑 内 罰 全 部 一 部 執行猶予 執行猶予 一 般 23 年 173 13.9 1.2 - 2.3 - 24 195 21.5 0.5 - - 25 161 18.0 - - - 26 178 18.5 - - - 27 195 11.8 - - 1.0 28 185 17.8 - - 29 201 19.4 0.5 - 30 242 12.8 - 元 304 15.5 0.3 2 311 11.3 - - 令和 3 年版 犯罪白書 容 金 交 通 少年院 送 致 保護観察 その他 0.6 5.8 4.0 - 0.5 - 11.3 9.2 - 0.6 0.6 10.6 6.2 - - - 8.4 10.1 - - 1.0 5.6 4.1 - 1.1 - 0.5 9.7 5.9 0.5 2.0 0.5 1.0 8.0 7.5 - - 1.7 - 0.4 6.2 4.1 0.4 - 1.0 - 0.3 7.2 6.3 0.3 0.3 0.3 1.3 6.4 2.9 -

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② 少年院仮退院者 処 年 注 次 保護観察 再処分率 終了人員 分 懲役・禁錮 実 刑 内 罰 全 部 一 部 執行猶予 執行猶予 一 容 金 般 交 通 少年院 送 致 保護観察 その他 23 年 56 16.1 1.8 - - - - 10.7 3.6 - 24 64 12.5 - - - - 1.6 7.8 3.1 - 25 79 11.4 - - 1.3 - - 7.6 2.5 - 26 101 12.9 - - - 1.0 - 9.9 2.0 - 27 180 6.1 - - - - 1.1 3.3 1.7 - 28 210 12.4 - - 1.0 - 0.5 8.1 2.4 0.5 29 205 7.8 - - - - - 5.4 2.4 - 30 189 12.7 - - - - 1.1 9.0 2.6 - 元 223 8.1 - - 0.4 - - 5.8 1.8 - 2 225 12.0 - - - - - 7.1 4.9 - 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 保護観察処分少年は,交通短期保護観察の対象者を除く。 3 「再処分率」は,保護観察終了人員のうち,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申請によ る保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けた者の人員の占める比率を いう。 「処分内容」の数値は,各処分内容別の再処分率である。 4 「罰金」のうち,「交通」は,過失運転致死傷等(刑法 211 条に規定する罪については,車両の運転によるものに限る。)並びに交通 関係4法令及び道路運送法の各違反によるものであり,「一般」は,それ以外の罪によるものである。 5 「その他」は,拘留,科料及び起訴猶予である。 平成 23 年から令和2年までの間に保護観察が終了した詐欺の保護観察処分少年及び少年院仮退院 者のうち,再処分(保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申 請による保護処分及び起訴猶予の処分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限 第8 編 る。 )を受けた者について,再処分に係る非行名・罪名別の構成比を見ると,8-3-2-20 図のとおりで あり,詐欺の構成比は,13.7%であった。その他を除く非行名・罪名について,各年の構成比を見 ると,平成 30 年を除いて窃盗が最も高い。詐欺の構成比は,上昇傾向にあったが,令和2年は前年 より 13.5pt 低下し,8.1%であった(CD-ROM 参照)。 詐欺事犯者の実態と処遇 8-3-2-20 図 詐欺 保護観察対象少年の再処分非行名・罪名別構成比 (平成 23 年~令和2年の累計) 保護観察 対象少年 (497) 注 窃盗 道路交通法 詐欺 傷害 その他 28.4 16.1 13.7 11.9 30.0 1 法務省大臣官房司法法制部の資料による。 2 「保護観察対象少年」は,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。 )及び少年院仮退院者である。 3 「再処分」は,保護観察期間中に再非行・再犯により新たな保護処分又は刑事処分(施設送致申請による保護処分及び起訴猶予の処 分を含む。刑事裁判については,その期間中に確定したものに限る。)を受けることをいう。 4 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 381

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詐欺被害者 第3節 1 詐欺 (1)被害件数 第3章 詐欺事犯の動向等 詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を除く。以下(1)において同じ。 )の男女別の認知 件数及び被害発生率(人口 10 万人当たりの認知件数をいう。以下(1)において同じ。)の推移(最 近 20 年間)を見ると,8-3-3-1 図のとおりである。認知件数については,平成 23 年以降は,女性が 男性を上回っており,13 年には,女性が男性の約2分の1であったが,令和2年は,女性が男性の 約 1.3 倍であった。被害発生率については,男性は,平成 17 年に 68.9 に達したが,その後大きく低 下し,近年はおおむね 20 前後で推移している。女性は,23 年以降,男性を上回って推移しており, 近年はおおむね 20 台で推移している。 8-3-3-1 図 詐欺 認知件数・被害発生率の推移(男女別) (平成 13 年~令和2年) 第3節 (千件) 70 80 詐欺被害者 認知件数(女性) 認知件数(男性) 60 被害発生率(男性) 70 60 50 40 被害発生率(女性) 40 30 22,113 20 30 20 10 被害発生率 認知件数 50 12,421 19.1 15.8 10 9,692 0 平成 13 注 15 20 25 30 令和2 0 1 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。 2 被害者が法人その他の団体である場合を除く。 3 「被害発生率」は,人口 10 万人当たりの認知件数(男女別)をいう。 4 一つの事件で複数の被害者がいる場合は,主たる被害者について計上している。 平成 13 年・23 年・令和2年における詐欺の認知件数について,主たる被害者の年齢層別構成比を 総数・女性別に見ると,8-3-3-2 図のとおりである。認知件数に占める主たる被害者の年齢が 65 歳 以上の者に係るものの構成比は,総数・女性共に,令和2年(47.0%,58.3%),平成 23 年(36.8%, 48.9%) ,13 年(17.6%,25.2%)の順に高くなっている(なお,特殊詐欺(本章第1節1項(3) 参照)の認知件数が増加した時期が平成 15 年頃以降であることに留意する必要がある。)。令和2年 の主たる被害者の年齢が 65 歳以上の者に係る件数は,総数では1万 389 件,女性では 7,238 件であ るが,そのうち 70 歳以上の者に係る件数は,それぞれ 8,986 件,6,598 件であった。 382 令和 3 年版 犯罪白書

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8-3-3-2 図 詐欺 被害者の年齢層別認知件数構成比 (平成 13 年・23 年・令和2年) ① 総数 平成 13 年 17.5 (26,957) 15.7 16.0 30.4 6.0 11.6 2.9 平成 23 年 (20,133) 10.9 12.5 11.7 25.2 9.3 27.5 2.9 令和2年 (22,113) 11.0 10.0 17.2 12.2 6.3 40.6 2.7 ② 女性 平成 13 年 18.0 (9,343) 12.5 12.8 28.8 6.6 18.7 2.7 平成 23 年 (10,458) 9.5 8.5 7.4 7.9 9.0 22.8 37.8 11.1 2.9 令和2年 (12,421) 10.6 11.5 5.2 53.1 2.7 20 歳未満 注 20 ~ 29 歳 30 ~ 39 歳 40 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 65 ~ 69 歳 70 歳以上 第8 編 1 警察庁の統計による。 2 被害者が法人その他の団体である場合を除く。 3 一つの事件で複数の被害者がいる場合は,主たる被害者について計上している。 4 ( )内は,件数である。 (2)被害者と被疑者の関係 平成 13 年・23 年・令和2年における詐欺の検挙件数(捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴 詐欺事犯者の実態と処遇 訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)について,被害者と被疑者の関係別構成比 を見ると,8-3-3-3 図のとおりである。面識あり(知人・友人,職場関係者等)の構成比は,平成 13 年は 17.9%であったが,23 年は 10.8%,令和2年は 10.2%となっている。 8-3-3-3 図 詐欺 被害者と被疑者の関係別検挙件数構成比 (平成 13 年・23 年・令和2年) 平成 13 年 0.3 17.9 (29,946) 平成 23 年 (21,948) 令和2年 (15,138) 0.1 10.8 48.0 41.1 0.1 10.2 50.1 親族 注 37.7 44.1 39.6 面識あり 面識なし その他 1 警察庁の統計による。 2 捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。 3 「その他」は,被害者が法人その他の団体である場合である。 4 ( )内は,件数である。 犯罪白書 2021 383

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(3)被害額 詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を含む。)について,認知件数及び被害額の推移(最 近 20 年間)を見ると,8-3-3-4 図のとおりである。認知件数は,平成 17 年(8万 5,596 件)をピー クとして減少し,近年は4万件前後で推移していたが,30 年から更に減少し,令和2年は3万 468 件(前年比 5.4%減)であった。被害額は,平成 20 年に 700 億円台に達した後,400 億円台に減少 第3章 詐欺事犯の動向等 したが,24 年に 800 億円台に至り,26 年には約 846 億円に達した。その後は,減少傾向にあったが, 令和2年は約 640 億円(同 36.3%増)であった。現金被害額は,平成 26 年に約 810 億円に達した後 は減少し続けていたが,令和2年は約 592 億円(同 39.1%増)であった。 8-3-3-4 図 詐欺 認知件数・被害額の推移 (平成 13 年~令和2年) (万件) 10 (億円) 1,000 その他の被害額 現金被害額 認知件数 第3節 8 64,007,823 千円 800 被 害 額 認知件数 詐欺被害者 4,761,184 千円 600 6 4 400 59,246,639 千円 30,468 2 200 0 平成 13 注 1 2 2 15 20 25 30 令和2 0 警察庁の統計による。 被害者が法人その他の団体である場合を含む。 特殊詐欺 (1)被害件数 令和2年における特殊詐欺(被害者が法人その他の団体である場合を除く。以下(1)において同 じ。 )の認知件数について,被害者の男女別・年齢層別構成比を特殊詐欺の類型(8-3-1-16 表参照) 別に見ると,8-3-3-5 図のとおりである。 特殊詐欺総数では,男性が 26.4%,女性が 73.6%を占めた。融資保証金詐欺(男性 70.1%)は, 男性の構成比が女性の構成比を上回った。また,交際あっせん詐欺(同 90.9%)及びギャンブル詐 欺(同 70.4%)も,同様であった(CD-ROM 参照)。他方,預貯金詐欺(女性 83.8%),オレオレ 詐欺(同 80.1%)及びキャッシュカード詐欺盗(同 79.2%)は,女性の構成比が男性の構成比を上 回り,いずれも被害者の約8割が女性であった。 特殊詐欺総数では,65 歳以上の者が 85.7%を占めた。65 歳以上の者の構成比が高い類型は,預貯 金詐欺(98.4%) ,キャッシュカード詐欺盗(96.7%)及びオレオレ詐欺(94.0%)であり,特に, 預貯金詐欺は,80 歳以上の者の構成比が 68.8%に達していた。一方,40~64 歳の者の構成比が高 384 令和 3 年版 犯罪白書

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い類型は,交際あっせん詐欺(68.2%),ギャンブル詐欺(46.9%),融資保証金詐欺(44.3%)及 び架空料金請求詐欺(41.2%)であり,その中でも,交際あっせん詐欺は,40~64 歳の男性の構成 比が 63.6%であった。(CD-ROM 参照)。 8-3-3-5 図 特殊詐欺 被害者の男女別・年齢層別認知件数構成比(類型別) (令和2年) ① 特殊詐欺総数 男性 26.4 5.1 女性 73.6 10.0 9.7 5.8 1.5 ② 29.2 36.8 1.9 類型別 ア オレオレ詐欺 男性 19.9 6.6 0.6 イ 女性 80.1 12.3 3.1 0.3 32.2 42.9 2.0 預貯金詐欺 16.2 4.5 57.7 25.0 11.2 0.5 ウ 83.8 0.0 1.1 架空料金請求詐欺 5.4 52.4 21.7 18.2 7.8 19.5 19.1 第8 編 47.6 6.0 2.2 還付金詐欺 33.2 3.3 66.8 20.7 9.1 0.1 オ 詐欺事犯者の実態と処遇 エ 8.6 46.4 11.5 0.3 融資保証金詐欺 70.1 21.2 29.9 30.7 16.3 13.3 13.6 3.0 1.9 カ キャッシュカード詐欺盗 20.8 7.0 79.2 12.5 32.3 1.3 2.0 男性 女性 注 1 2 45.0 40 歳未満 40 ~ 64 歳 65 ~ 79 歳 80 歳以上 40 歳未満 40 ~ 64 歳 65 ~ 79 歳 80 歳以上 警察庁刑事局の資料による。 被害者が法人その他の団体である場合を除く。 犯罪白書 2021 385

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(2)被害額 特殊詐欺による被害総額(現金被害額)及び実質的な被害総額(被害総額に,詐取又は窃取された キャッシュカードを使用して ATM から引き出された金額を加えた額をいう。以下(2)において同 じ。統計の存在する平成 22 年以降に限り,同年から 24 年まではオレオレ詐欺によるもののみを計上 している。 )の推移(16 年以降)を見ると,8-3-3-6 図のとおりである。被害総額は,同年(約 284 第3章 詐欺事犯の動向等 億円)から 20 年まで 250 億円以上で推移し,21 年(約 96 億円)に大きく減少した。実質的な被害 総額は,26 年(約 566 億円)まで増加し続けたが,その翌年から減少し続け,令和2年は約 285 億 円(前年比 9.7%減)であった。被害総額と実質的な被害総額の差は,平成 27 年から令和元年まで は広がり続けたが,2年は約 106 億円(同 11.4%減)であった。各年の被害総額(平成 22 年以降は, 実質的な被害総額)を特殊詐欺の認知件数(8-3-1-17 図参照。なお,未遂も含まれる点に留意する 必要がある。 )で割った金額の推移を見ると,16 年(約 111 万円)から増加傾向にあり,23 年に 200 万円を,24 年に 400 万円を超え,26 年(約 422 万円)に最高額に達した後,その翌年から減少 傾向にあったが,令和2年は約 211 万円(同 12.3%増)であった。 8-3-3-6 図 特殊詐欺 被害総額等の推移 第3節 (平成 16 年~令和2年) (億円) 600 詐欺被害者 被害総額 実質的な被害総額 500 17,946,333 千円 400 28,523,359 千円 300 200 100 0 平成 16 注 20 25 30 令和2 1 2 3 4 警察庁刑事局の資料による。 本図は,統計の存在する平成 16 年以降の数値で作成した。 「被害総額」は,現金被害額である。 「実質的な被害総額」は,詐取又は窃取されたキャッシュカードを使用して,ATM から引き出された額を被害総額に加えた額をい い,統計の存在する平成 22 年以降の数値で作成した。ただし,同年から 24 年まではオレオレ詐欺による実質的な被害総額のみ計上し ている。 5 千円未満切捨てである。 特殊詐欺の被害総額の推移(平成 16 年以降)及び実質的な被害総額の推移(22 年以降)を特殊詐 欺の類型別に見ると,8-3-3-7 図のとおりである。令和2年における実質的な被害総額を見ると,架 空料金請求詐欺(約 80 億円) ,オレオレ詐欺(約 68 億円),預貯金詐欺(約 58 億円),キャッシュ カード詐欺盗(約 43 億円),還付金詐欺(約 25 億円),金融商品詐欺(約4億円),融資保証金詐欺 (約4億円)の順に多かった。各類型の推移を見ると,架空料金請求詐欺が最も多かった 26 年,27 年及び令和2年を除いて,オレオレ詐欺が最も多い(なお,預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含 されていた犯行形態を同年1月から新たな類型として分類したものであるが,同年においても,オレ 386 令和 3 年版 犯罪白書

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オレ詐欺と預貯金詐欺の合計額は,架空料金請求詐欺を上回る。)。 特殊詐欺の被害総額(平成 22 年以降は実質的な被害総額。以下(2)において同じ。)におけるオ レオレ詐欺の構成比は,同年(70.4%)を最高に,16 年から 23 年までは 50%台から 70%台までの 間で推移した後,24 年から 27 年までの間は 30%台に低下したものの,28 年以降は,30%台後半か ら 50%台前半の間で推移し,令和2年は 44.2%(預貯金詐欺を含む。前年比 7.0pt 上昇)であった。 架空料金請求詐欺による被害額の構成比は,平成 22 年までは,おおむね 10%台から 30%台で推移 した後,23 年及び 24 年は 10%未満と低下したが,26 年からは,おおむね 30%台で推移し,令和2 年は 28.0%(同 3.3pt 低下)であった。 令和2年の類型別被害総額を当該類型の認知件数(8-3-1-19 図参照。なお,未遂も含まれる点に 留意する必要がある。 )で割った金額は,金融商品詐欺は約 718 万円,架空料金請求詐欺は約 397 万 円,オレオレ詐欺(預貯金詐欺を含む。)は約 197 万円,キャッシュカード詐欺盗は約 150 万円,還 付金詐欺は約 138 万円,融資保証金詐欺は約 133 万円であった。 8-3-3-7 図 特殊詐欺 被害総額等の推移(類型別) (平成 16 年~令和2年) ① 被害総額 (平成 22 年~令和2年) ② 実質的な被害総額 (億円) 600 (億円) 600 500 500 400 400 17,946,333 千円 300 300 100 25 オレオレ詐欺 融資保証金詐欺 注 30 令和2 預貯金詐欺 金融商品詐欺 200 100 0 平成 22 6,792,410 千円 25 架空料金請求詐欺 キャッシュカード詐欺盗 詐欺事犯者の実態と処遇 20 371,065 千円 4,263,784 千円 416,257 千円 393,375 千円 2,491,514 千円 7,975,541 千円 5,819,412 千円 第8 編 366,323 千円 416,257 千円 393,293 千円 2,491,514 千円 7,973,936 千円 1 千円 6,305,009 千円 200 0 平成 16 28,523,359 千円 30 令和2 還付金詐欺 その他の類型 1 警察庁刑事局の資料による。 2 「被害総額」は,現金被害額をいい,統計の存在する平成 16 年以降の数値で作成した。 3 「実質的な被害総額」は,詐取又は窃取されたキャッシュカードを使用して,ATM から引き出された額を被害総額に加えた額をい い,統計の存在する平成 22 年以降の数値で作成した。ただし,同年から 24 年まではオレオレ詐欺による実質的な被害総額のみ計上し ている。 4 各数値は,次の類型の合計である。 平成 16 年~ 17 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺及び融資保証金詐欺 18 年~ 21 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺 22 年~ 29 年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせ ん詐欺及びその他の特殊詐欺 30 年~令和元年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせ ん詐欺,その他の特殊詐欺及びキャッシュカード詐欺盗 2年 オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺,還付金詐欺,金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせ ん詐欺,その他の特殊詐欺,キャッシュカード詐欺盗及び預貯金詐欺 5 金融商品詐欺,ギャンブル詐欺,交際あっせん詐欺及びその他の特殊詐欺については,認知件数及び被害額は平成 22 年2月から, 検挙件数及び検挙人員は 23 年1月からの数値をそれぞれ計上している。 6 預貯金詐欺は,従来オレオレ詐欺に包含されていた犯行形態を令和 2 年 1 月から新たな手口として分類したものである。 7 千円未満切捨てである。 犯罪白書 2021 387

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3 被害回復 詐欺について,被害回復給付金(第6編第2章第2節3項)の支給状況及び被害回復分配金(同節 4項)の支払状況の推移を見ると,8-3-3-8 表のとおりである。 第3章 詐欺事犯の動向等 8-3-3-8 表 ① 詐欺 被害回復給付金の支給状況・被害回復分配金の支払状況の推移 (平成 18 年~令和2年) 被害回復給付金 年 次 支給手続開始決定 件数 ② (平成 20 年度~令和2年度) 被害回復分配金 年 給付資金額 度 支払額総額 18 年 - - 20 年度 19 - - 21 2,190,957,908 20 - - 22 1,503,871,701 21 6 73,333,496 23 1,111,140,660 22 3 24,949,896 24 2,168,342,811 23 8 138,268,384 25 1,299,686,895 24 9 269,523,625 26 1,327,027,205 第3節 25 7 69,610,437 27 1,283,303,389 26 7 126,883,983 28 1,819,988,630 詐欺被害者 27 8 72,381,002 29 1,282,678,294 28 1 47,952,393 30 856,702,661 29 7 357,484,227 元 696,728,366 30 7 374,335,973 2 元 12 204,674,360 2 7 657,043,551 1,097,684,369 (金額の単位は,円) 518,700,763 (金額の単位は,円) 注 388 令和 3 年版 犯罪白書 1 2 3 官報及び預金保険機構の資料による。 ①の「給付資金額」は,開始決定時における額である。 ①については,被害回復給付金支給制度が開始した平成 18 年 12 月から,②については,被害回復分配 金支払制度が開始した 20 年6月からの数値をそれぞれ計上している。

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コラム 10 詐欺被害者の声 詐欺の被害者は,経済的な被害はもちろんのこと,精神的な被害にも苦しむ者が少なくな い。このコラムでは,ある特殊詐欺事件の被害者が語った経済的・精神的被害や加害者に対 する思いを紹介する。なお,事件の内容等については,個人の特定ができないようにする限 度で修正を加えている。 1 詐欺被害に遭って ある日,自宅の電話が鳴りました。電話を取ると,相手は,警察の者と名乗りました。相 手は,私の家族が交通事故を起こしたので,逮捕されないようにするためには示談金が必要 だと言ってきました。私は,頭が真っ白になってしまい,お金を払わなければ家族が逮捕さ れるということで頭が一杯になり,パニック状態のまま,家族を助けたいという一心で預金 を引き出し,言われるがままに,ATM からお金を振り込みました。 その後,電話の相手と連絡がつかなくなったことなどから,すぐに詐欺だと分かり,警察 に被害届を出しました。最初は,事実を受け入れられずパニック状態が続いていましたが, 日が経つにつれ,当日の自分の行動一つ一つを後悔する気持ちがどんどん湧いてきました。 また,私が助けようとした家族本人からも「馬鹿だ」と責められてしまいました。自宅の電 話が鳴ると,事件のことを思い出して怖くなり,事件のことや家族に責められたことを思い 出して眠れなくなる日もありました。頭痛が続き,満足に食事をとることもできず,日に日 に痩せていき,何かをする気力もなくなっていきました。被害に遭った時期は,新しい生活 に向けた準備をしていたところでしたので,本当だったらもっと楽しい生活を送っていたは ずなのにと思うとつらい気持ちになりました。また,少ない給料の中から一生懸命貯めた預 金がなくなってしまったことで,経済的にもとても苦しい思いをしました。言い出したらき 第8 編 りがないくらいつらいことがたくさんありました。でも,被害に遭ったことを恥ずかしいと 思っていましたし,家族から口外しないように言われていたので,事件のことは親しい友人 にすら話せませんでした。 その後,転居等を機に,被害に遭ったことは忘れて新しい生活を始めたいというように気 詐欺事犯者の実態と処遇 持ちが変わっていきました。そのような時,警察から加害者が逮捕されたという連絡を受け ました。よかったなと思った反面,加害者への怒りや,だまされたことの悲しみ等の気持ち が一気にあふれ出たように感じました。事件と向き合いたくないという気持ちが大きかった ので,裁判を傍聴することはしませんでしたが,普段どおりの生活をしているつもりでも, 事件を忘れることはできませんでした。そこで,加害者は一体どうなったのだろうと気にな り,検察庁に問い合わせて初めて被害者を支援する制度があることを知り,利用することに しました。 2 被害者支援制度を利用して 被害者支援制度を利用してよかったと感じています。まず,被害者等通知制度(第6編第 2章第1節5項参照)で,半年に1回ではあるものの,加害者が刑務所でどのように過ごし ているのかを教えてもらうだけでも気持ちが和らぐところがありました。意見等聴取制度 (同項参照)では,被害弁償も謝罪もない状態で仮釈放になるのは許せないという意見を述べ させていただきましたが,このように意見を伝えられる制度があってよかったと思います。 心情等伝達制度(同項参照)で私の気持ちを繰り返し伝えたことで被害弁償につながったこ とや,加害者から,自分の気持ちを書いたと思われる手紙をもらえたこともうれしかったで す。また,私は,被害に遭ったことについて,身近な存在にも相談したりできないまま長い 時間を過ごしていたのですが,これらの制度を利用する中で,被害者担当の保護観察官や保 犯罪白書 2021 389

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護司に話を聞いてもらうことができ,自分の気持ちの整理にもつながりました。 3 加害者に対する思い 加害者からは,裁判が始まった頃に,弁護士を通じておわびの手紙が届きました。謝罪の 言葉等が書かれていましたが,普段使いそうもない難しい表現が使われており,本当に反省 第3章 詐欺事犯の動向等 して謝罪の気持ちを伝えようと書いた文章ではないように感じられ,余計に腹が立ちました。 その後,加害者からの連絡はなかったのですが,加害者が仮釈放された後,私が心情等伝達 制度を利用して思いを伝えたところ,加害者から謝罪の手紙が届きました。この手紙は,裁 判の時と違い,自分の言葉で書いてあったように感じられ,心に響きました。また,だまし 取られたお金の一部が弁償され,加害者は,残りのお金もできる限り弁償すると手紙に書い ていました。しかし,仮釈放期間が終了すると,連絡は途絶えました。加害者の弁護士に何 度も連絡すると,2回被害弁償がありましたが,最近は連絡がありません。弁償できない事 情があるならば,せめてそれを伝えてほしかったのですが,それすらなかったため,加害者 にまただまされてしまったようで悔しく思いました。加害者に反省の気持ちがあると思って しまった自分にも腹が立ちました。今は,加害者が反省せずに再犯してしまっているのでは 第3節 ないかという思いもあります。 4 犯罪被害者の立場になって 詐欺被害者 被害者の立場になってみて思ったことは,まず,被害者に多少なりとも落ち度があったと しても,被害者を責めるような発言をしないでもらいたいということです。私も含め,特殊 詐欺の場合,だまされる方も悪いと言われることがあると思います。でも,悪いのは加害者 なのです。詐欺の被害者は,いやというほど自分自身を責めている方が多いと思います。そ のような被害者を更に傷付けるようなことを言うのはやめてください。むしろ,そうやって 自分を責めている被害者には,はっきりと「あなたは悪くない。悪いのは加害者ですよ。」と いうことを言ってもらいたいです。私自身,心情等伝達制度を利用した際,担当の保護観察 官からそう言ってもらえて救われた気持ちになりました。 詐欺の加害者の処遇に当たる方には,加害者がいるということは,私のような被害者がい るということを常に意識して指導を行っていただきたいと思います。一人一人の加害者に よって,事件を起こした時の事情等が違うように,一人一人の被害者には,それぞれの事情 や背景があります。例えば,だまし取られたお金が被害者にとってどういうものだったのか, 被害者がどのような立場に置かれているのかなどの事情も把握した上で指導に当たってもら いたいと思います。犯罪被害者には決して「卒業」はありません。同じように,加害者に 「卒業」はないという意識を持たせるように指導してもらいたいです。加害者は刑務所から出 た時を区切りに考えることができるかもしれませんが,被害者には,そのような区切りはあ りません。刑を終えることと被害者への償いを果たすことは別のものだと思います。加害者 が反省することや再犯しないことは当然のことであり,被害者への謝罪や弁償を行うことな く,被害者の気持ちを無視したままでは,加害者が真に更生したとは絶対に言えないと思っ ています。私の場合,仮に被害弁償が全額行われ,加害者から謝罪があったとしても,事件 をなかったことにはできません。悔しさ,怒り,つらさを抱えて事件後長い間生きてきたこ とを,なかったことにはできません。このような被害者の思いを,加害者本人はもちろん, 加害者処遇に関わる方にも知っていただきたいです。被害者にとって,加害者はできれば無 関係でいたい存在です。しかし,その一方で,加害者が反省や被害弁償を行い,更生を果た すことは,被害者がその後の人生を前向きに生きていくために欠かせないものであると思っ ています。 390 令和 3 年版 犯罪白書

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4章 第 再犯防止に向けた各種施策 この章では,詐欺事犯者の再犯防止に向けた各種施策や取組の現状を紹介する。 第1節 1 矯正 刑事施設 刑事施設においては,刑事収容施設法等に基づき,法務省矯正局の定める標準プログラムを基準 に,具体的な指導内容及び方法に加え,施設の実情,対象者の資質,指導効果等を考慮した指導時間 数,頻度及び期間を定めて,6種類の特別改善指導を行っている(第2編第4章第3節3項(2)参 照) 。 一方,詐欺及び特殊詐欺事犯受刑者に対する再犯防止指導については,全国的に統一された標準的 なプログラムは策定されていないが,一般改善指導(第2編第4章第3節3項(2)参照)の一つと して,同受刑者に対する指導を実施しており,令和2年度には 273 人(実施施設数は 37 庁(支所を 含む。 ) )が受講を開始した(法務省矯正局の資料による。)。特殊詐欺事犯受刑者に対する再犯防止指 導は,同受刑者に,被害者の心情及び事件の重大性を認識させ,しょく罪の方法を考えさせるととも に,再犯を防止するため,事件に至るまでの自己の問題点等を振り返らせ,健全な金銭感覚及び職業 観を身に付けさせることを目的として法務省矯正局が作成した視聴覚教材(DVD 教材)及びワーク ブックを各施設の実情に応じて活用することなどにより実施されている。なお,視聴覚教材とワーク 第8 編 ブックは,セットで構成されており,自己学習又はグループワークのいずれの形式での使用も可能な 教材となっているほか,被害者団体等の方々が外部講師として指導を行う際にも使用できるように なっている。 詐欺事犯者の実態と処遇 コラム 11 函館少年刑務所における特殊詐欺再犯防止指導 平成 28 年 12 月に施行された再犯防止推進法において,犯罪をした者等に対し,その特性 に応じて必要な指導及び支援を行うことが規定されたことなどを踏まえ,法務省矯正局(以 下「矯正局」という。 )は,29 年3月,特殊詐欺を行った受刑者を対象とする指導のための 視聴覚教材及びワークブックを作成した。 函館少年刑務所は,特殊詐欺再犯防止指導に力を入れている刑事施設の一つである。同刑 務所においては,矯正局が教材等を作成する前の平成 28 年から,特殊詐欺事件を犯した受刑 者を8人程度のグループに編成し,グループワーク等を通じて,特殊詐欺に至った各自の問 題性を理解し,その改善を図り,再犯をしないための具体的な方策を考えさせる指導を行っ ている。令和3年5月末までに,延べ 40 人がこの指導を受講した。 12 単元(1単元は 60 分)からなるこの指導を担当する教育専門官によると,特殊詐欺事 件を犯した受刑者の中には,自らの責任から目を背け,被害者の心情を十分に理解していな い者も少なくないという。そこで,同教育専門官らは,似たような課題を持つ者同士による 話合いを通じて,被害者が失ったものや,被害者に与えた精神的影響等について深く掘り下 げていくように努めている。指導の初期の段階では,被害者が失ったものとして,直接の被 害金額を挙げる者が多いが,指導が進むにつれ,「老後の貯えとして少しずつ貯めてきた金銭 犯罪白書 2021 391

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を奪われ,生きる希望を失ってしまったかもしれない。」,「詐欺に遭ったことで家族から責め られたかもしれない。」といった金銭以外の精神的な損害や周囲に及ぼした様々な影響にも思 い至るようになるという。 また,特殊詐欺に至った者の中には,健全な仕事に就いていなかったことや,自身の収入 第4章 再犯防止に向けた各種施策 をはるかに超えて遊興やギャンブルに費消してしまったことが犯罪の要因となっている者も いることから,指導においては,このような要因を排除するための具体的な行動に結び付け させることにも留意しているという。受講者は,話合いを通じて,社会において不安定な生 活をしてきたことにより,周囲からの信用を失い,自身の未来の選択肢を狭めてきたことに も気付き,健全な仕事に就いて収入の範囲で安定的な生活を送ることが再犯防止のために重 要であることを自覚していくと前記教育専門官は説明した。 前記教育専門官に,改善指導のやりがいについて聞いたところ,受講者に気付きを与える ことができたときにやりがいを感じるとして,次のような経験を述べた。 被害者の心情や置かれた状況を考えることなどを行う単元において,被害弁済の在り方に ついて受講者に質問したところ,ある受講者は,被害金額を完済することさえできれば自ら の責任を果たすことになると考え,想定される自身の出所後の収入等を勘案し,高齢の被害 者に対し,20 年をかけて完済したいと回答したが,指導者からの質問や他の受講者との話合 いを通じて,少しずつ被害者の立場に立って考えることができるようになり,単元の後半で 第1節 は, 「被害弁済の期間について,自分の収入や生活を基に考えていたが,被害者の気持ちのこ とは余り考えていなかったことに気付くことができた。」,「被害弁済を受けたとしても,被害 矯正 者の心の傷が癒えることはないかもしれないが,被害者が健康であるうちに,一刻も早く弁 済したい。 」などと述べるに至ったとのことである。 「このような気付きの積み重ねが再犯防止につながると信じ,これからも真剣に一人一人の 受刑者と向き合っていきたい。」と前記教育専門官は語った。 2 少年院 少年院においても,各施設の実情に応じ,特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われている。特に, 東京矯正管区管内の少年院について見ると,同矯正管区が作成した「特殊詐欺少年に対する鑑別・指 導の手引」に基づき,各少年院の実情に応じて,工夫しながら指導計画を作成している。 指導計画の例(8-4-1-1 表参照)を見ると,まず,個別に面接を実施し,指導担当者とのラポール を形成することから始めることで,動機付けを高めるとともに,次に行われるグループワークでの自 己開示を行いやすくさせることにつなげている。グループワークでは,講義形式の集団指導にとどま らず,特殊詐欺再非行防止指導を受けている特殊詐欺在院者同士で考えを出し合うようにしており, これまで自分だけでは考えつかなかった新しい考えに触れさせている。特に,再非行防止のため,出 院後に想定されるリスクをグループワークで討議する過程で,他の在院者の様々な考え方に触れるこ とは,自らの在り方を考えることができるようになることにつながる。また,単元ごとに振り返り作 文を作成させ,グループワークの中で考えたことや気付いたことを整理・理解させるようにしてい る。全ての単元終了後には,改めて個別面接を行い,指導の効果を把握するとともに,次回の指導グ ループに向けた改善点の検討等を行っている。 392 令和 3 年版 犯罪白書

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8-4-1-1 表 少年院における指導計画の例 単 元 方 法 1 自己理解と改善への動機付けを高めさせる 個別面接 2 特殊詐欺の問題性を考えさせる 講義,課題作文 3 特殊詐欺に至る考え,感情,行動を振り返らせる 講義・討議,課題作文 4 ものの見方や考え方の癖を考えさせる 講義,演習 5 被害者について考えさせる 演習,集団討議 6 金銭感覚について考えさせる 演習 7 再非行しないための対策を考えさせる 録音教材,集団討議 注 法務省矯正局の資料による。 そのほか,全国の少年院では,各都道府県警察本部と連携した特殊詐欺再非行防止指導の取組が行 われており,令和元年 10 月1日現在の調査では,全国の少年院 49 庁(当時。分院を含む。)のうち 20 庁において,所在地の都道府県警察本部と連携した指導を行っている。例えば,多摩少年院にお いては,在院者に対し,東京都都民安全推進本部,警視庁,公益財団法人暴力団追放運動推進都民セ ンター等が企画・実施している演劇(特殊詐欺に関わるきっかけや,特殊詐欺グループの背後にある 暴力団組織等とのつながりや危険性を演劇という手段で表現したもの)を観覧させるなどの取組が行 われている。 多摩少年院及び新潟少年学院における特殊詐欺再非行防止指導 第8 編 コラム 12 少年院では,各施設の実情に応じ,特殊詐欺在院者の再非行防止に関する取組が行われて いる(本項参照)。このコラムでは,2か所の少年院の指導実践例を紹介する。 多摩少年院 詐欺事犯者の実態と処遇 1 多摩少年院では,平成 29 年から独自のプログラムを用いた指導を行っている。同少年院の 担当者は,試行錯誤を続けながら,同プログラムで使用するテキストの作成を行った。その 過程で,同少年院の担当者は,特殊詐欺在院者には,いわゆる「受け子」の役割を果たした 者が多く, 「受け子」の役割を果たした者は,被害者が傷ついている姿を直接見ていないた め,罪障感の深まりに欠けることに気付いた。「受け子」の少年は,だまされている被害者宅 を訪問して,金銭を受け取る際,自分や親族の身に起きている問題を解決してくれると誤信 した被害者から,「(金銭を受け取りに来てくれて)ありがとう。」と言われ,感謝をされるこ とさえある。しかし,少年は,その後の被害者の姿を見ることはなく,被害者がどれだけの 被害を受けたのかを直接把握する機会はほとんどない。そこで,同少年院の担当者は,罪障 感を深めさせるためには,特殊詐欺に至る考え方に気付く内容や,健全な金銭感覚を学ぶ内 容の授業等から始め,特殊詐欺に加担するに至った自身の問題と向き合わせ,自身の責任を 理解させることが必要と考えた。自身の責任についての理解が進んだ後,被害者が金銭をだ まし取られたことで絶望し,自己を責め,ときには親族等からも非難され,自殺に追い込ま れるといった実際の事例等を通じて,被害者感情に直面させ,罪障感の醸成を図ることとし た。同少年院では,このように作成したテキストを用い,特殊詐欺在院者の罪障感を深めさ せている。 犯罪白書 2021 393

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2 新潟少年学院 東京矯正管区では,同矯正管区管内の少年鑑別所及び少年院に収容された特殊詐欺に関与 した少年(少年鑑別所 255 人,少年院 118 人)についての各調査結果に基づき,同少年たち を「生活全般問題タイプ」 ,「家庭機能不全タイプ」及び「生活全般低調タイプ」の三つのタ 第4章 再犯防止に向けた各種施策 イプに分類し,これに応じ,特殊詐欺在院者に対して,重点的に指導すべき事項等を取りま とめた手引を作成している。新潟少年学院では,同手引を元に,施設内で検討を重ね,平成 29 年に「特殊詐欺再非行防止指導実施要領」を策定(令和3年3月改正)した。そして,同 実施要領に基づき,「自己理解と改善への動機付けを高めさせること」,「特殊詐欺の問題性を 考えさせること」,「特殊詐欺に至る考え,感情,行動を振り返らせること」,「ものの見方や 考え方の癖を考えさせること」 , 「被害者について考えさせること」,「金銭感覚について考え させること」 , 「再非行しないための対策を考えさせること」の全7単元からなる特殊詐欺再 非行防止指導計画を作成し,これを実施している(8-4-1-1 表参照)。その際,特殊詐欺在院 者を指導する上で,大きな課題となっているのが罪障感の醸成である。特殊詐欺は,犯人グ ループ内の役割が細分化されていることに加え,少年院に入院してくる特殊詐欺在院者の大 半は, 「受け子」,「出し子」などの末端の役割を担っており,被害者の心情を実感できにくい という課題がある。指導担当者の実感として,特殊詐欺在院者の再非行防止を根底で左右し ているものは,被害者に対する罪障感の醸成ができるか否か,すなわち,特殊詐欺在院者が 第1節 心からの反省に至るか否か,とのことである。そこで,同少年院では,特殊詐欺再非行防止 指導の中で,一般的な生活費や老齢基礎年金等老後に必要となる資金等を特殊詐欺在院者に 矯正 計算させて,そのような資金等の一部をだまし取られたことで被害者が受けたであろう失望, 不安,落胆等の感情や,現実的な生活面での困難を中心に実感できるよう指導する工夫を 行っている。 3 2か所の少年院の指導実践例から 2か所の少年院での指導実践例では,特殊詐欺在院者の指導の中心に「罪障感の醸成」を 挙げていることが分かる。特殊詐欺在院者の「罪障感」を深めるためには,その前提として, 指導者(法務教官)自身が,変化し続ける特殊詐欺の実態,被害者の置かれた状況や困難を 具体的に知ること,特殊詐欺在院者個々の特性や知的能力等が罪障感の醸成に影響を及ぼす ことへの留意が必要である。前者については,研修等の場を提供することなどが考えられる が,後者については,特殊詐欺在院者個々の理解力等に応じた指導が必要となり,その意味 では,個別面接とグループワークを適切に組み合わせることが必要となる。また,特殊詐欺 在院者が特殊詐欺被害者の実情を知り,これを通じて罪障感をより深めるためには,特殊詐 欺被害者や同被害者の周辺の方々の声を直接聴くなど,特殊詐欺在院者の指導への参画を得 ることなどの視点も重要と考えられる。 394 令和 3 年版 犯罪白書

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第2節 更生保護 この節では,更生保護における詐欺事犯者に対する処遇について概観する。 地方更生保護委員会においては,生活環境の調整(第2編第5章第2節2項参照)において保護観 察所に対する指導・助言・連絡調整を行い,調整機能の充実強化を図るとともに,刑事施設からの仮 釈放又は少年院からの仮退院の審理において,被害者等から仮釈放・仮退院に関する意見等を聴取す る意見等聴取制度を実施している(第6編第2章第1節5項参照)。 保護観察所においては,生活環境の調整により改善更生に適した環境作りを行うとともに,CFP (第2編第5章第3節2項(1)参照)を活用し,犯罪又は非行に結び付く要因や過程等に関する適 切な仮説に基づく的確かつ最もふさわしい介入方法を選択して保護観察処遇を実施するとともに,保 護観察の実施状況に応じアセスメントに基づく各種措置等の判断を適期適切に行うことにより,実効 性のある保護観察を実施している。また,保護観察対象者の問題性その他の特性を,その犯罪・非行 の態様等によって類型化して把握し,類型ごとに共通する問題性等に焦点を当てた類型別処遇(同項 (2)ア参照)を行っている。 詐欺事犯者についても,同様に前記の生活環境の調整及び保護観察が実施されているが,特殊詐欺 事犯者に対しては,令和3年1月から,保護観察処分の対象となった事案に特殊詐欺への関与が含ま れる者やそれ以外の者で,現に特殊詐欺グループへの関与が認められる者を「特殊詐欺類型」の保護 観察対象者に認定し,最新の知見に基づく,より効果的な処遇が行われている。同年3月 31 日現在, 特殊詐欺類型に認定された保護観察対象者は 852 人(保護観察処分少年 224 人,少年院仮退院者 124 人,仮釈放者(全部実刑者)288 人,保護観察付全部執行猶予者 216 人)である(法務省保護局 の資料による。)。 特殊詐欺類型の保護観察対象者に対する処遇として,特殊詐欺グループとの関係に焦点を当てた指 第8 編 導が行われている。特殊詐欺グループは,暴力団等と比較すると集団としての凝集性が低い傾向があ り,本人自身がグループに所属しているという感覚を持っていない場合もある。このような場合は, 離脱意思を強化するような働きかけに代えて,グループ以外の居場所を持てるような働きかけが有効 な場合があるため,特殊詐欺類型の保護観察対象者に対しては,就労や就学を中心とした健全な生活 詐欺事犯者の実態と処遇 を送るための指導等を行っている。 一方,特殊詐欺類型の保護観察対象者がグループの実態を認識していたり,所属しているという意 識があったりする場合は,まず離脱意思やグループへの関与の程度を把握し,その程度に応じた指導 や支援を行っている。さらに,少年の場合には地元不良集団とのつながりから詐欺グループ加入に至 る場合も見られることから,交友関係改善の指導を行い,離脱を実行させるための規制として,特別 遵守事項(第2編第5章第3節参照)や生活行動指針(同節参照)に基づく指導も行っている。特殊 詐欺グループには暴力団等が関与している場合も少なくないことから,同グループからの勧誘や脅迫 等への対応に警察の協力を得るほか,保護者との関係が不良又は希薄である少年等の場合には,生活 環境の調整等の段階から,家族に対して本人の自立に向けた問題解決能力の伸長への協力を求めるな どしている。 また,特殊詐欺類型の保護観察対象者の中には,仲間からの影響により,犯罪を容認し,自らの詐 欺行為を自分達にとって都合の良い受け止め方をして,多額の金銭を得るなどの成功体験によってそ の考え方がより強化されているものも少なくない。そこで,特殊詐欺類型の保護観察対象者に対して は,特殊詐欺が被害者に与えた影響について理解させ,罪障感を深めさせるとともに,謝罪や被害弁 済等の今後行うべきことを考えさせている。さらに,老人ホームでの社会貢献活動(第2編第5章第 3節2項(5)及び第3編第2章第5節3項(4)参照)に参加させるなど特殊詐欺の被害に遭いや すい高齢者と身近に接し,その思いの一端に触れさせることも行っている。 犯罪白書 2021 395

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コラム 13 被害者から被害に関する心情等を伝達された 保護観察対象者に対する指導の実例 このコラムでは,詐欺の保護観察対象者に対する処遇の一例として,詐欺の被害者から, 心情等伝達制度(第6編第2章第1節5項参照)等により,被害弁償の希望を含む被害に関 第4章 再犯防止に向けた各種施策 する心情等を伝達された保護観察対象者に対してなされた指導の実例を紹介する。なお,事 例の内容は,個人の特定ができないようにする限度で修正を加えている。 会社を経営していた A 男(50 歳代)は,顧客等の知人数名から多額の金をだまし取り,実 刑判決を受けた。A 男は,離婚し,両親とも疎遠であったことから,刑事施設仮釈放後に更 生保護施設に入所し,6か月間の職業訓練を受けることとなった。担当保護観察官は,厳し い被害感情を踏まえ,被害者の立場を理解させ,現実的で具体的な被害弁償の方法を考えさ せることを処遇方針の一つに挙げ,指導に当たることとした。 A 男は,更生保護施設入所後,「現時点では被害弁償をすることはできない。それなのに謝 罪の手紙を送ればかえって被害者の怒りを買うのではないかと心配している。かといって, 生計が安定した後で謝罪しても,それまで連絡がなかったことで不快な思いをさせてしまう と思う。自立した段階で,弁護士等を間に挟んで被害者に直接謝罪するような形がよいので はないかと考えているが,悩んでいる。 」といったことを述べた。それ以後,A 男は,被害弁 第2節 償や謝罪を検討したものの,収入に乏しく被害弁償ができない段階では,かえって口ばかり の謝罪となって被害者を憤慨させるのではないかと考え,被害弁償も謝罪もできずにいた。 更生保護 仮釈放から約1か月後,被害者の一人が心情等伝達制度を利用したため,担当保護観察官 は,A 男にその結果を伝達した。A 男は,神妙な面持ちで覚悟を持って聞いている様子であっ たが,被害金額全額の返済計画をどう立てたらよいかという悩みを述べた。担当保護観察官 は,自分が今できることについて真摯に対応することが必要であり,たとえ少額であっても 被害弁償を継続することで誠意を見せるしかないのではないかと説示した。また,担当保護 観察官は,できないことをできると伝えることは被害者を更に傷つけることになることから, 就労して自立した後は必ず被害弁償を行うように指導した。 仮釈放から約3か月後,担当保護観察官は,A 男に対し,被害者二人の心情等を伝達した。 A 男は,改めて謝罪の気持ちを述べるとともに,できる限り被害弁償に努めたい旨述べた。 担当保護観察官は,被害弁償のためにも生活を安定させ,被害者に対して現状が説明できる ような生活を送ること,被害者の気持ちを考えながら継続した返済を行っていくことについ て指導した。また,A 男が問題を抱え込みやすい性格であったことから,更生保護施設入所 中は担当保護観察官が相談に乗ること,同施設退所後も一人で問題を抱え込まないような対 人関係を築くことが必要であることを説示した。加えて,一人の被害者からは同施設入所中 から返済を求められていたことを取り上げ,その理由について本人に考えさせた上で,実際 に詐欺の被害を受けた被害者は,言葉だけでは信じられないこと,被害者に対する謝罪の言 葉や手紙も大切であるが,何よりも行動で示していくことが重要であることを指導した。 A 男は,「本来なら面と向かって謝罪するのが筋であり,きちんとした対応をするためにも 刑が終了してから被害者に連絡しようと考えていた。」と述べていたが,被害者の心情等を 知ったこともあり,更生保護施設入所中に被害弁償を行うことを決断し,同施設入所から約 5か月後,二人の被害者に対して謝罪文と弁償金を送付した。A 男は,「被害者から今後厳し いことを言われるかもしれないが,それだけ大きなことをしたのだということを痛感してい る。今後も丁寧に対応していくしかない。毎月弁償を続けたい。また,今は保護観察官に相 396 令和 3 年版 犯罪白書

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談できるが,期間満了後に相談できる相手も見つけなければいけない。」といったことを述べ た。担当保護観察官は,A 男の被害者に対する気持ちを整理し,被害弁償を継続して実施し ていけるようサポートすることとした。 A 男は,翌月も二人の被害者に対して弁償金を送った。A 男は,「現在は少額しか返済でき ないが,今後収入が増えれば増額したい。できない約束はせず,相手の気持ちを受け止めた い。他の被害者にも同じように弁償できるようにしたい。許してはもらえないが,これから が本当の償いである。」などと述べた。担当保護観察官は,A 男が被害者の心情を真剣に考え ていると受け止め,誠実に対応すれば気持ちは被害者にも伝わると A 男を励ました。 A 男は,6か月の職業訓練終了後間もなく仕事を決め,就職先の寮に転居した。その後も 就労を続けながら被害者への弁償金の送金を続け,期間満了により保護観察が終了した。 保護観察所においては,保護観察対象者に対し,自己の犯罪行為を振り返らせ,犯した罪 の重さを認識させることを通じて再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに,被害者等に 対し,その意向に配慮しながら誠実に対応することを保護観察における指導の柱の一つとし ている。そのため,保護観察期間中はもとより,同期間が終了した後も謝罪や被害弁償等を 継続して実施できるよう,相談・支援機関となり得る法テラス等の公的機関や専門家を保護 観察対象者に紹介したり,これらの機関等と連携した支援体制を整えることが重要である (第2編第5章第3節2項(2)エ参照)。 なお,本事例においては,保護観察対象者からの被害弁償は,保護観察期間が終了した後 も金額が増額されて継続されているとのことである。 第8 編 詐欺事犯者の実態と処遇 犯罪白書 2021 397

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第 5章 特別調査 前章までに各種統計資料に基づいた詐欺事犯の動向や再犯防止に向けた各種施策の実情について概 第5章 特別調査 観した。さらに,法務総合研究所では,広く詐欺事犯者について,その実態や特性等を明らかにする とともに,特殊詐欺が大きな社会問題となっている情勢を考慮し,特殊詐欺を行った者の実態,特 性,処分後の成り行き等を明らかにし,その者の社会復帰を含む効果的な再犯防止対策の検討に役立 てることを目的として,詐欺事犯者に関する特別調査を実施し,その結果を分析した。 この章においては,特別調査の内容及び同調査で明らかになった事項について紹介する。 第1節 第1節 調査の概要 今回,法務総合研究所では,全国各地の地方裁判所(支部を含む。以下この章において同じ。)に おいて,平成 28 年1月1日から同年3月 31 日までの間に,詐欺(既遂・未遂を問わず,また準詐 調査の概要 欺,電子計算機使用詐欺,犯罪収益移転防止法若しくは組織的犯罪処罰法の各違反又はこれらの幇助 罪・教唆罪を含み,特殊詐欺(本編第3章第1節1項(3)参照)に該当する恐喝及び窃盗を含む (同項(3)参照) 。以下断りのない限り,この章において同じ。)により有罪判決の言渡しを受け, 調査時点で有罪判決が確定していた者を調査対象者とした。 その結果,特別調査における調査対象者の実人員は,1,343 人(以下この章において「全対象者」 という。 )であり,この全対象者に関して,全国各地の地方裁判所において,平成 28 年1月1日から 同年3月 31 日までの間に,詐欺により有罪判決の言渡しを受け,その後,有罪判決が確定した事件 (以下この章において「調査対象事件」という。)について,裁判書等の資料に基づき,調査対象事件 の概要,対象者の基本的属性・科刑状況・再犯状況等に関する調査を実施したほか(以下この章にお いて「全対象者調査」という。),被害状況についても可能な限り調査した。全対象者調査の結果(再 犯状況に関するものを除く。)については,次節で紹介する。 全対象者の中で,犯行の手口に特殊詐欺が含まれている者(以下この章において「特殊詐欺事犯者」 という。 )は,408 人であった。特殊詐欺の検挙人員は大都市圏に多い傾向がうかがわれること(8-31-24 図 CD-ROM 参照)なども踏まえ,特殊詐欺事犯者のうち,東京地方裁判所,横浜地方裁判所, さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者(202 人,49.5%)については, 全対象者調査に加え,刑事確定記録等を用いて,可能な限り,より詳細な調査を行った(以下この章に おいて「確定記録調査」という。 ) 。特殊詐欺事犯者の調査の結果については,本章第3節で紹介する。 さらに,全対象者のうち,全部執行猶予の判決の言渡しを受け,その後,判決が確定した者(以下 この章において「全部執行猶予者」という。)については,全対象者調査に加え,その判決の言渡日 から平成 31 年3月 31 日までの間の再犯に関する調査を実施し,再犯に及んだ者については,その再 犯に係る裁判書等の資料に基づいて,調査を実施した(以下この章において「再犯調査」という。な お,再犯調査における「再犯」は,調査対象事件の判決言渡し後に新たに行った犯罪に限る。)。再犯 調査における調査対象者の実人員は,84 人であった。再犯に関する調査(全対象者調査(再犯状況 に関するものに限る。)及び再犯調査)の結果については,本章第4節で紹介する。 398 令和 3 年版 犯罪白書

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第2節 全対象者調査の結果 この節では,特別調査における全対象者(本章第1節参照)の調査結果を基に,調査対象事件(同 節参照)の概要,全対象者の特徴,科刑状況等の実態を明らかにする。 1 調査対象事件の概要 (1)犯行の手口 調査対象事件における犯行の手口別構成比を見ると,8-5-2-1 図のとおりである。全対象者の人員 は 1,343 人であるところ,複数件の詐欺を行った対象者が含まれる上,複数の対象者による共犯事件 を1件と計上していることから,調査対象事件である詐欺の事件数は,延べ 2,515 件であった。 調査対象事件総数に占める構成比は,特殊詐欺(33.3%)が最も高く,次いで,通帳等・携帯電 話機の詐取(13.7%),保険金詐欺(生活保護,年金,給付金,診療報酬等の不正受給を含む。以下 この章において同じ。)(8.1%),無銭飲食,無銭宿泊及び無賃乗車(以下この章において「無銭飲食 等」という。)(7.8%),偽造又は不正入手したクレジットカードを利用した商品詐欺(以下この章に おいて「偽造クレジットカード等使用詐欺」という。) (7.1%)の順であった。 8-5-2-1 図 不 動 産 利 調査対象事件 犯行の手口別構成比 用 詐 欺 1.1 買 受 け 名 目 の 金 品 詐 欺 3.5 借 用 名 目 の 金 品 詐 欺 6.2 6.5 偽造クレジットカード等使用詐欺 7.1 無銭 飲食等 7.8 保険金 詐欺 8.1 通帳等・携帯電話機の 詐取 13.7 詐欺事犯者の実態と処遇 注 総 数 2,515 件 特殊詐欺 33.3 第8 編 売 付 け 名 目 の 金 品 詐 欺 その他 12.8 法務総合研究所の調査による。 (2)共犯 調査対象事件における共犯率(共犯による事件数の占める比率)・共犯者数別構成比を総数・犯行 の手口別に見ると,8-5-2-2 図のとおりである。共犯率は,総数では約5割(49.7%)であり,犯行 の手口別では,特殊詐欺が 99.8%と顕著に高く,次いで,保険金詐欺(49.0%),通帳等・携帯電話 機の詐取(27.2%),無銭飲食等(5.1%)の順であった。共犯による事件の総数に占める共犯者数 別構成比を犯行の手口別に見ると,いずれの手口においても,2人組の構成比が最も高い。特殊詐欺 は, 2 人 組 が 49.8% と 最 も 高 く, 次 い で, 3 人 組(19.1%) , 5 ~ 9 人 組(14.8%), 4 人 組 (12.3%) ,10 人以上の組(3.7%)の順であり,他の手口と比べると,多人数による共犯事件の構成 比も高い。なお,氏名不詳の共犯者がいる場合には,裁判書等で「氏名不詳者ら」等と認定されてい る場合も含めて,氏名不詳の共犯者を「1人」と計上していることから,実際の共犯者数よりも少な い可能性があることに留意を要する。 犯罪白書 2021 399

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8-5-2-2 図 調査対象事件 共犯率・共犯者数別構成比(総数・犯行の手口別) 1.3 総 数 50.3 (2,515) 25.4 10.7 4.9 7.5 49.7 0.2 第5章 特別調査 特 殊 詐 欺 49.8 (837) 19.1 12.3 14.8 99.8 通帳等・携帯 電話機の詐取 1.2 72.8 (345) 19.7 51.0 (204) 21.1 16.7 1.0 2.9 7.4 49.0 無銭飲食等 1.0 94.9 第2節 (195) 1.2 5.2 27.2 保険金詐欺 3.7 4.1 5.1 単独 全対象者調査の結果 注 2人組 3人組 4人組 5~9人組 10 人以上の組 1 法務総合研究所の調査による。 2 氏名不詳の共犯者がいる場合には,裁判書等で「氏名不詳者ら」等と認定されている場合も,氏名不詳の共犯者を 1 人として計上し ている。 3 ( )内は,件数である。 調査対象事件のうち共犯者がいる事件について,共犯者に氏名不詳の者が含まれるか否かを総数・ 犯行の手口別に見ると,8-5-2-3 図のとおりである。共犯者に氏名不詳の者が含まれる事件の構成比 は,総数では 67.5%であり,犯行の手口別では,特殊詐欺は 91.1%と顕著に高く,次いで,通帳 等・携帯電話機の詐取(29.8%) ,無銭飲食等(20.0%)であった。保険金詐欺では,共犯者に氏名 不詳の者が含まれる事件はなかった。 8-5-2-3 図 総 調査対象事件 氏名不詳の共犯者の有無別構成比(総数・犯行の手口別) 数 (1,251) 特 殊 詐 欺 通帳等・携帯 電話機の詐取 保険金詐欺 400 20.0 1 法務総合研究所の調査による。 2 共犯者がいる事件に限る。 3 ( )内は,件数である。 令和 3 年版 犯罪白書 32.5 8.9 70.2 100.0 (100) 注 67.5 29.8 (94) (10) なし 91.1 (835) 無銭飲食等 あり 80.0

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2 全対象者の特徴 (1)基本的属性 全対象者の人員は,1,343 人(男性 1,189 人,女性 154 人)であり,犯行時の平均年齢は,38.5 歳(男性 38.2 歳,女性 41.6 歳)であった。なお,最低年齢は,男性・女性共に 18 歳で,最高年齢 は,男性 77 歳,女性 80 歳であった。 全対象者の総数(1,343 人)から,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除いた人員 は,1,271 人であった。異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者について見ると,無銭飲食 等及び借用名目の金品詐取を行った者が5人,通帳等・携帯電話機の詐取及び偽造クレジットカード 等使用詐欺を行った者が3人であるなど,いずれの組合せも多くはなかった。なお,異なる手口によ り2件以上の詐欺を行っていた者のうち,その手口に特殊詐欺を含む者について,特殊詐欺以外に 行った詐欺の手口を見ると,通帳等・携帯電話機の詐取が2人,偽造クレジットカード等使用詐欺が 1人,不動産利用詐欺が1人,その他が4人であった。 全対象者の総数(1,343 人)から,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除いた人員 (1,271 人)について,犯行の手口別構成比を見ると,8-5-2-4 図のとおりである。特殊詐欺が 31.5% (401 人)と最も高く,次いで,通帳等・携帯電話機の詐取 15.3%(194 人) ,無銭飲食等 11.3% (144 人) ,保険金詐欺 11.0%(140 人) ,偽造クレジットカード等使用詐欺 6.3%(80 人)の順であっ た。以下,本章において,犯行の手口ごとの特徴を把握するため,犯行の手口別に全対象者の調査結 果を見ることがあるが,その場合には,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除くとと もに,該当者数が多かった上位4手口を見ることとする(その他の手口については,CD-ROM 参照) 。 8-5-2-4 図 全対象者 犯行の手口別構成比 数 (1,271) 31.5 注 11.3 11.0 通帳等・携帯電話機の詐取 偽造クレジットカード等使用詐欺 買受け名目の金品詐欺 6.3 5.6 5.1 9.8 無銭飲食等 売付け名目の金品詐欺 不動産利用詐欺 詐欺事犯者の実態と処遇 特殊詐欺 保険金詐欺 借用名目の金品詐欺 その他 15.3 1.3 第8 編 2.7 総 1 法務総合研究所の調査による。 2 異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 3 ( )内は,実人員である。 全対象者(各属性等が不詳の者を除く。)の属性等を総数・犯行の手口別に見ると,8-5-2-5 表の とおりである。 犯行時の年齢層を見ると,特殊詐欺は 30 歳未満の者の構成比が 56.6%と最も高く,無銭飲食等は 50~64 歳の者の構成比が 34.7%と最も高い。 前科(調査対象事件より前の,道交違反又は道路交通取締法,同法施行令若しくは道路交通取締令 の各違反を除く,罰金以上の刑に処せられた事件をいう。以下断りのない限り,この章において同 じ。 )の有無及びその内容を見ると,特殊詐欺(63.6%),通帳等・携帯電話機の詐取(62.4%)及 び保険金詐欺(62.9%)は,前科を有しない者の構成比が高く,無銭飲食等(52.8%)は,同種前 科を有する者の構成比が高かった。 全対象者のうち,確定判決において詐欺以外の罪も認定された者は 341 人(25.4%)であり,そ の主な罪名(重複計上による。 )は,窃盗(158 人)が最も多く,次いで,文書偽造(91 人),薬物 犯罪(覚醒剤取締法違反等の違法薬物に関する犯罪。以下この章において同じ。)(58 人),住居侵入 (29 人) ,横領(遺失物等横領を含む。) (25 人)の順であった。 犯罪白書 2021 401

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8-5-2-5 表 属 性 性 第5章 特別調査 年 齢 等 全対象者 属性等別人員(総数・犯行の手口別) 区 分 総 数 特殊詐欺 通帳等・携帯 電話機の詐取 無銭飲食等 保険金詐欺 別 男 性 1,189 (88.5) 393 (98.0) 145 (74.7) 143 (99.3) 108 (77.1) 女 性 154 (11.5) 8 (2.0) 49 (25.3) 1 (0.7) 32 (22.9) 層 30 歳 未 満 433 (32.2) 227 (56.6) 41 (21.1) 16 (11.1) 42 (30.0) 30 ~ 39 歳 346 (25.8) 113 (28.2) 45 (23.2) 30 (20.8) 38 (27.1) 40 ~ 49 歳 269 (20.0) 40 (10.0) 54 (27.8) 32 (22.2) 29 (20.7) 50 ~ 64 歳 223 (16.6) 19 (4.7) 39 (20.1) 50 (34.7) 25 (17.9) 65 歳 以 上 72 (5.4) 2 (0.5) 15 (7.7) 16 (11.1) 6 (4.3) 就労状況 有 職 554 (41.5) 144 (36.3) 111 (57.5) 11 (7.7) 84 (60.0) 無 職 781 (58.5) 253 (63.7) 82 (42.5) 132 (92.3) 56 (40.0) (80.1) 339 (84.8) 176 (91.2) 57 (39.6) 129 (92.1) 居住状況 住 居 あ り 1,074 住 居 な し 267 (19.9) 61 (15.3) 17 (8.8) 87 (60.4) 11 (7.9) 科 同 種 前 科 あ り 214 (15.9) 27 (6.7) 15 (7.7) 76 (52.8) 5 (3.6) 異 種 前 科 あ り 418 (31.1) 119 (29.7) 58 (29.9) 45 (31.3) 47 (33.6) な し 711 (52.9) 255 (63.6) 121 (62.4) 23 (16.0) 88 (62.9) 刑の種類 実 刑 679 (50.6) 270 (67.3) 34 (17.5) 100 (69.4) 35 (25.0) 第2節 前 全対象者調査の結果 注 1 2 3 4 5 6 7 8 9 保護観察付全部執行猶予 50 (3.7) 12 (3.0) 3 (1.5) 15 (10.4) 1 (0.7) 単 純 執 行 猶 予 614 (45.7) 119 (29.7) 157 (80.9) 29 (20.1) 104 (74.3) 法務総合研究所の調査による。 各属性等が不詳の者を除く。 犯行の手口別は,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 「年齢層」は,犯行時の年齢による。ただし,複数の事件がある場合は,そのうちの最初の事件の犯行時の年齢による。 「就労状況」は,判決時による。また,「無職」は,家事従事者を含み,「有職」は,学生・生徒を含む。 「居住状況」は,判決時による。 「前科」は,調査対象事件より前の,道交違反等を除く,罰金以上の刑に処せられたものをいう。 「単純執行猶予」は,保護観察の付かない全部執行猶予をいう。 ( )内は,各属性等の総数又は犯行の手口別の人員における構成比である。 全対象者(前科を有する者に限る。 )について,同種前科の回数別構成比を総数・犯行の手口別に 見ると,8-5-2-6 図のとおりである。特殊詐欺(81.5%) ,通帳等・携帯電話機の詐取(79.5%)及び 保険金詐欺(90.4%)は,同種前科を有しない者の構成比が高かったが,無銭飲食等は,同種前科を 有しない者の構成比は 37.2%にとどまり,同種前科5回以上を有する者の構成比が 17.4%に上った。 8-5-2-6 図 総 全対象者 同種前科の回数別構成比(総数・犯行の手口別) 数 66.1 (632) 19.1 3.3 2.2 4.1 5.1 0.7 特 殊 詐 欺 81.5 (146) 1.4 通帳等・携帯 電話機の詐取 79.5 (73) 無銭飲食等 (121) 17.8 37.2 19.2 22.3 7.4 6.6 9.1 17.4 1.9 保険金詐欺 90.4 (52) なし 注 402 1回 2回 7.7 3回 4回 5回以上 1 法務総合研究所の調査による。 2 前科を有する者に限る。なお, 「前科」は,調査対象事件より前の,道交違反等を除く,罰金以上の刑に処せられたものをいう。 3 犯行の手口別は,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 4 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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(2)犯行の態様等 ア 被害額 全対象者(異なる手口で2件以上の詐欺を行っていた者を除く。)について,調査対象事件の詐欺 被害額別(1人の対象者が2件以上の詐欺を行っていた場合はその合計金額をいい,複数の対象者に よる共犯事件については,それぞれの対象者に詐欺被害額を計上している。)構成比を総数・犯行の 手口別に見ると,8-5-2-7 図のとおりである。特殊詐欺(出し子が ATM から引き出した現金を含 む。 )について, 「なし」 (22.2%)を除く構成比は,1,000 万円以上 5,000 万円未満(27.4%)の構 成比が最も高く,次いで,100 万円以上 500 万円未満(24.2%) ,500 万円以上 1,000 万円未満 (12.0%) ,1億円以上(6.2%)の順であり,「なし」を除いて 10 万円未満はいなかった。無銭飲食 等(59.0%)は1万円未満の構成比が,通帳等・携帯電話機の詐取(8.2%。なお,詐取した物が携 帯電話機やタブレット等の販売価格があるものに限る。),偽造クレジットカード等使用詐欺(42.5%) 及び借用名目の金品詐欺(24.6%)は 10 万円以上 100 万円未満の構成比が,買受け名目の金品詐取 は1万円未満及び 10 万円以上 100 万円未満(それぞれ 23.5%)の構成比が,保険金詐欺(43.6%), 及び売付け名目の金品詐欺(25.4%)は 100 万円以上 500 万円未満の構成比が,それぞれ最も高かっ た(CD-ROM 参照)。 8-5-2-7 図 全対象者 詐欺被害額別構成比(総数・犯行の手口別) 2.9 1.7 総 数 23.7 (1,271) 9.8 10.4 13.2 17.5 7.9 12.9 2.7 特 殊 詐 欺 22.2 (401) 5.2 24.2 12.0 27.4 6.2 2.6 0.5 86.6 (194) 8.2 0.7 59.0 (144) 保険金詐欺 (140) 0.7 20.7 なし 10 万円以上 100 万円未満 1,000 万円以上 5,000 万円未満 注 1 2 3 4 5 6 7 8 37.5 1.4 3.6 詐欺事犯者の実態と処遇 2.8 無銭飲食等 2.1 第8 編 2.1 通帳等・携帯 電話機の詐取 43.6 1万円未満 100 万円以上 500 万円未満 5,000 万円以上 1 億円未満 20.0 0.7 7.1 1万円以上 10 万円未満 500 万円以上 1,000 万円未満 1億円以上 法務総合研究所の調査による。 未遂事件は,「なし」に含まれる。 異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 対象者が2件以上の詐欺を行った場合は,その合計金額である。 同一事件の共犯者がいた場合,対象者ごとに被害額を計上している。 特殊詐欺の被害額は,出し子が ATM から引き出した現金を含む。 通帳等・携帯電話機の詐取の被害額は,詐取した物が携帯電話機やタブレット等の販売価格が認定されているものに限る。 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 403

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イ 被害回復・示談 全対象者(既遂事件を行った者に限る。また,被害回復・弁償の有無,示談の有無が不詳の者は, それぞれ除く。 )の被害回復・示談別構成比を全対象者・全部執行猶予者別に見ると,8-5-2-8 図の とおりである。全部執行猶予者のうち全部の被害回復・弁償をした者の構成比(40.1%)は,全対 象者のうち全部の被害回復・弁償をした者の構成比(26.0%)を上回った。全部執行猶予者のうち 第5章 特別調査 全部の被害者と示談に至った者の構成比(37.8%)は,全対象者のうち全部の被害者と示談に至っ た者の構成比(24.1%)を上回った。 8-5-2-8 図 ① 全対象者 被害回復・示談別構成比(全対象者・全部執行猶予者別) 被害回復・弁償 全 対 象 者 (707) 第2節 全部執行猶予者 (252) 全対象者調査の結果 ② 示談 全 対 象 者 (406) 全部執行猶予者 (143) 注 なし 全部 一部 35.4 26.0 38.6 28.2 40.1 31.7 なし 全部 一部 55.2 24.1 20.7 49.0 37.8 13.3 1 法務総合研究所の調査による。 2 既遂事件を行った者に限る。 3 ①は,被害回復・弁償の有無が不詳の者,②は,示談の有無が不詳の者をそれぞれ除く。 4 ②の「一部」は,一部の被害者との間で示談がなされた場合である。 5 ( )内は,実人員である。 ウ 犯行の動機・理由 本特別調査においては,(特殊)詐欺に至る動機・理由及び背景事情・原因(以下「動機・背景事 情」という。 )として想定し得る項目をあらかじめ複数設定した上で,主として,全対象者調査及び 再犯調査では,裁判書の記載内容を,確定記録調査では,これに加えて調査対象者の捜査段階及び裁 判時における供述内容を基に,犯行に至った動機・背景事情として前記項目に該当するものを選別し て集計する調査を行った(重複計上による。以下この章において同じ。)。 全対象者(犯行動機・理由が不詳の者を除く。)が詐欺を行った動機・理由を総数・犯行の手口 別・年齢層別に見ると,8-5-2-9 図のとおりである。 総数では, 「金ほしさ」 (60.4%),「生活困窮」 (20.5%),「友人等からの勧誘」 (19.1%),「軽く考 えていた」 (3.3%)の順に割合が高かった。犯行の手口別に見ると,特殊詐欺では,「金ほしさ」 (70.1%)の割合が最も高く,次いで, 「友人等からの勧誘」(36.1%),「生活困窮」(7.2%)の順で あったが,他の手口と比べると, 「友人等からの勧誘」の割合が高く,「生活困窮」の割合が低かっ た。また, 「軽く考えていた」(5.8%)の割合は,総数(3.3%)及び他の手口より高かった。無銭飲 食等では, 「生活困窮」 (51.4%)の割合が顕著に高く,「金ほしさ」(9.7%)の割合が総数及び他の 手口より顕著に低かった。保険金詐欺では,「金ほしさ」 (75.0%)の割合が総数及び他の手口より高 く, 「軽く考えていた」 (1.3%)の割合が総数及び他の手口より低かった。 年齢層別に見ると,いずれの年齢層でも,「金ほしさ」の割合が最も高かった。「金ほしさ」に次い で高い割合を占めたのは,30 歳未満の者では「友人等からの勧誘」(26.1%)であったが,その他の 年齢層では「生活困窮」であった。特に,50~64 歳の者及び 65 歳以上の者では,動機・理由に「生 活困窮」があった者が約3分の1を占めた。 404 令和 3 年版 犯罪白書

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8-5-2-9 図 ① 全対象者 犯行動機・理由(総数・犯行の手口別・年齢層別) 犯行の手口別 0 10 20 30 40 50 60 60.4 金 生 ほ し さ (460) 活 困 54.5 9.7 33.7 8.8 19.1 (145) 21.8 1.4 70.1 20.5 (156) 友人等からの勧誘 (%) 80 75.0 7.2 窮 70 51.4 36.1 13.8 3.3 5.8 軽く考えていた 4.0 (25) 4.2 1.3 だまされた・脅された (22) 第8 編 0 0 2.9 5.5 4.0 詐欺事犯者の実態と処遇 2.5 2.1 所属組織の方針 2.0 (19) 0 1.3 2.0 2.1 2.0 勧誘者との交友関係の維持 (15) 0 3.8 0.7 0.3 S N S の 勧 誘 3.0 (5) 0 0 そ の 他 (76) 1.4 10.0 8.9 10.0 36.1 総数 (761) 特殊詐欺 (291) 通帳等・携帯電話機の詐取 (101) 無銭飲食等 (72) 保険金詐欺 (80) 犯罪白書 2021 405

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② 年齢層別 0 10 20 30 40 50 60 60.4 金 第5章 特別調査 生 ほ し さ (460) 活 困 46.9 14.2 窮 (156) 19.6 18.7 5.5 (145) 58.5 70.1 53.6 20.5 19.1 友人等からの勧誘 (%) 80 70 33.6 32.1 26.1 第2節 17.9 全対象者調査の結果 3.3 4.9 軽く考えていた 3.0 (25) 1.6 0 2.9 3.4 だまされた・脅された 3.6 (22) 0.8 0 所属組織の方針 (19) 0 勧誘者との交友関係の維持 (15) 2.5 1.9 3.3 2.3 2.0 1.9 3.0 0 0 0.7 1.5 S N S の 勧 誘 0.3 (5) 0 0 そ の 他 4.5 10.0 11.3 (76) 7.1 注 406 18.8 総数 30 歳未満 30 ~ 49 歳 50 ~ 64 歳 65 歳以上 (761) (268) (337) (128) (28) 1 法務総合研究所の調査による。 2 各項目に該当した者(重複計上による。)の比率である。 3 異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 4 犯行動機又は理由が不詳の者を除く。 5 「年齢層」は,犯行時の年齢による。ただし,複数の事件がある場合は,そのうちの最初の事件の犯行時の年齢による。 6 凡例の( )内は,総数,犯行の手口別又は年齢層別の実人員であり,縦軸の( )内は,各項目の該当者の人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

424.

(3)科刑状況 全対象者に対する有期の懲役の科刑状況別構成比を,総数・犯行の手口別に見ると,8-5-2-10 図 のとおりである。なお,全対象者の中には,詐欺以外の事件も含めて有罪判決を受けたものが含まれ ていることに留意する必要がある。 総数では,全部実刑の者(なお,一部執行猶予の者はいなかった。)が 50.6%,全部執行猶予の者 が 49.4%であった。全部執行猶予の者のうち保護観察付全部執行猶予の者(50 人)は 3.7%であっ た(CD-ROM 参照) 。全部実刑の者の構成比は,詐欺の令和2年の地方裁判所における全部実刑の 者の構成比(47.2%。8-3-1-36 図参照)とおおむね同程度であった。総数について,実刑の刑期を 見ると,2年以上3年以下の者の構成比(22.0%)が最も高く,次いで,3年を超え5年以下の者 (12.4%) ,1年以上2年未満の者(10.0%),5年を超え 10 年以下の者(3.6%)の順であった。全 部執行猶予を付された懲役刑の刑期を見ると,2年以上3年以下の者の構成比(28.4%)が最も高 く,次いで,1年以上2年未満の者(20.6%),1年未満の者(0.4%)の順であった。 犯行の手口別に見ると,全部実刑の者の構成比は,無銭飲食等(69.4%)が最も高く,次いで, 特殊詐欺(67.3%),保険金詐欺(25.0%),通帳等・携帯電話機の詐取(17.5%)の順であった(な お,無銭飲食等は同種前科を有する者の構成比が高いことに留意する必要がある(8-5-2-6 図参 照) 。 ) 。実刑の刑期を見ると,特殊詐欺及び保険金詐欺では,いずれも2年以上3年以下の者の構成 比(それぞれ 30.2%,12.9%)が最も高く,次いで,3年を超え5年以下の者(それぞれ 21.2%, 5.7%)の順であり,無銭飲食等及び通帳等・携帯電話機の詐取では,いずれも1年以上2年未満の 者の構成比(それぞれ 29.9%,6.7%)が最も高く,次いで,2年以上3年以下の者(それぞれ 25.0%,5.7%)の順であった。5年を超える者の構成比は,特殊詐欺(9.0%(うち 10 年を超える 者は 0.7%))が顕著に高く,次いで,保険金詐欺(1.4%(同 0.7%))であった。 全対象者 有期刑(懲役)科刑状況別構成比(総数・犯行の手口別) 全部執行猶予 49.4 総 数 20.6 (1,343) 28.4 10.0 2.3 32.7 特 殊 詐 欺 31.4 (401) 0.2 全部実刑 50.6 6.5 通帳等・携帯 電話機の詐取 24.3 (144) (140) 21.2 4.9 16.5 6.7 12.5 29.9 25.0 4.3 0.7 1年未満 (全部執行猶予) 2年以上3年以下 ( 全部実刑 ) 注 1年以上2年未満 (全部執行猶予) 3年を超え5年以下 ( 全部実刑 ) 5.7 3.1 2.1 25.0 55.0 2年以上3年以下 (全部執行猶予) 5年を超え 10 年以下 ( 全部実刑 ) 0.7 2.1 75.0 20.0 8.2 17.5 69.4 1.4 保険金詐欺 0.4 82.5 30.6 無銭飲食等 3.6 67.3 66.0 (194) 12.4 30.2 0.5 1.0 22.0 詐欺事犯者の実態と処遇 0.4 第8 編 8-5-2-10 図 12.9 5.7 0.7 0.7 1年未満 1年以上2年未満 ( 全部実刑 ) ( 全部実刑 ) 10 年を超え 30 年以下 ( 全部実刑 ) 1 法務総合研究所の調査による。 2 犯行の手口別は,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 3 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 407

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第3節 特殊詐欺事犯者の調査の結果 この節では,特殊詐欺事犯者(本章第1節参照)のうち,東京地方裁判所,横浜地方裁判所,さい たま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者(以下この節において「確定記録調査 対象者」という。 )を対象に行った確定記録調査(同節参照)の結果を基に,同対象者が行った特殊 第5章 特別調査 詐欺事件の概要,同対象者の特徴,科刑状況等の実態を明らかにする。 1 特殊詐欺事件の概要 確定記録調査対象者の人員は,202 人(男性 199 人,女性3人)であった。確定記録調査対象者 が行った特殊詐欺には,1人の確定記録調査対象者が複数件の特殊詐欺を行った場合があるほか(85-3-5 図参照),複数の確定記録調査対象者が共に同一の者を被害者とする特殊詐欺を行った場合が 第3節 ある。確定記録調査対象者が行った特殊詐欺の延べ件数から,被害者や主要な事実等が共通する事件 の数を除くと,その件数は 336 件であった(以下この節においては,特に断りのない限り,確定記 録調査対象者が行った特殊詐欺の延べ件数から,被害者や主要な事実が共通する事件の数を除いたも 特殊詐欺事犯者の調査の結果 のを「特殊詐欺事件」という。)。特殊詐欺事件の犯行類型別(8-3-1-16 表参照)構成比を見ると, 8-5-3-1 図のとおりである。オレオレ詐欺の構成比(59.2%,199 件)が最も高く,次いで,金融商 品詐欺(8.3%,28 件) ,架空料金請求詐欺(6.3%,21 件),ギャンブル詐欺(5.7%,19 件)の順 であった。融資保証金詐欺,交際あっせん詐欺及びキャッシュカード詐欺盗はなかった。 8-5-3-1 図 特殊詐欺事件 犯行類型別構成比 オレオレ詐欺 総 数 還付金詐欺 0.6 架空料金請求詐欺 金融商品詐欺 その他の特殊詐欺 59.2 (336) 8.3 6.3 5.7 17.0 預貯金詐欺 3.0 ギャンブル詐欺 注 1 法務総合研究所の調査による。 2 ( )内は,件数である。 特殊詐欺事件(架け子が詐称した身分が不詳のものを除く。)について,架け子(本編第3章第1 節1項(3)及び本節2項(1)参照)が詐称した身分(複数の身分を詐称した場合,最初に詐称し た身分又は主に詐称した身分)別の構成比を見ると,8-5-3-2 図のとおりである。家族・親族を詐称 した事件の構成比は,約6割に上っている。個別に見ると,「被害者の子・孫」の構成比(54.0%, 181 人)が最も高く,次いで,「企業等の社員・従業員」 (37.3%,125 人),「その他の親族」 (4.8%, 16 人)の順であり,この三つの身分で 96%を超える。 8-5-3-2 図 特殊詐欺事件 架け子が詐称した身分別構成比 1.5 2.1 家族・親族 58.8 総 数 (335) 54.0 37.3 4.8 0.3 被害者の子・孫 注 408 その他の親族 企業等の社員・従業員 警察官 1 法務総合研究所の調査による。 2 架け子が詐称した身分が不詳の事件を除く。 3 複数の身分を詐称した場合,最初に詐称した身分又は主に詐称した身分として計上している。 4 ( )内は,件数である。 令和 3 年版 犯罪白書 その他の公務員 その他

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2 特殊詐欺事犯者(確定記録調査対象者)の特徴 (1)基本的属性 特殊詐欺の犯行グループは, 「主犯・指示役」を中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだま す「架け子」 ,自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」 ,被害者からだまし取るなどしたキャッ シュカード等を用いて ATM から現金を引き出す「出し子」,犯行に悪用されることを承知しながら, 犯行拠点をあっせんしたり,架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等を調達する「犯行準備役」等 が役割を分担し,組織的に犯行を敢行している。 確定記録調査対象者について,その役割に着目し,被害金の直接的な受取の有無,犯行への関与の 在り方,犯行を指示する立場にあるかという観点から類型化すると,8-5-3-3 図のとおりである。な お,類型化を行った結果,特殊詐欺の役割が不詳の者等が6人いたため,本節において,特殊詐欺の 役割類型別で見るときは,これらの者を分析対象から除外した。 確定記録調査対象者(196 人)を役割類型別に見ると,被害金を直接受け取る「受け子・出し子」 が 46.4%を占めた。被害金を直接受け取らない者については,物資の調達等により犯行を補助する 立場である「犯行準備役」が 15.8%,犯行を主導する立場のうち犯行を指示する立場にある「主犯・ 指示役」が 9.7%,「架け子」が 28.1%であった。 8-5-3-3 図 特殊詐欺事犯者 特殊詐欺の役割類型別人員等 調査対象者 196 人 犯行への関与の 在り方 注 犯行を主導する立場 犯行を指示する 立場にある 指示を受けて 実行する立場にある 主犯・指示役 19 人(9.7%) 架け子 55 人(28.1%) 物資の調達等により 犯行を補助する立場 犯行準備役 31 人(15.8%) 詐欺事犯者の実態と処遇 犯行を指示する 立場にあるか 被害金を 直接受け取る 被害金を 直接受け取らない 第8 編 被害金の直接的な 受取の有無 受け子・出し子 91 人(46.4%) 1 法務総合研究所の調査による。 2 確定記録調査対象者 202 人のうち,特殊詐欺の役割が不詳の者等を除く 196 人で類型化を行った。 3 ( )内は,構成比である。 犯罪白書 2021 409

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確定記録調査対象者の属性等を総数・役割類型別に見ると,8-5-3-4 図のとおりである。 犯行時の年齢層を見ると,総数,「架け子」,「犯行準備役」及び「受け子・出し子」については, いずれも 30 歳未満の者が過半数を占め,次いで,30 歳代の者,40 歳代の者の順であったが,「主 犯・指示役」においては,30 歳代の者(57.9%)が半数を超え,次いで,30 歳未満の者(31.6%), 40 歳代の者(10.5%)の順であった。また,50 歳以上の者(7人)は,全員が「受け子・出し子」 第5章 特別調査 であった。 判決時の就労状況を見ると,無職の者(家事従事者を含む。以下この項において同じ。)の構成比 は, 「主犯・指示役」 ・ 「犯行準備役」については,それぞれ 52.6%,45.2%である一方,「架け子」 については,90.9%と顕著に高かった。 検挙時の婚姻状況を見ると,配偶者がいる者の構成比は,総数及び各役割類型のいずれについても 10%台から 20%台であり,「架け子」 (13.0%)及び「受け子・出し子」 (10.1%)は,総数(15.2%) を下回った。 第3節 検挙時の前歴を見ると,前歴を有しない者の構成比は,役割類型別では「主犯・指示役」 (16.7%) が最も低く, 「架け子」 (32.1%)が最も高かった。また,同種のものを含む前歴(同種のみ,同種及 び異種)を有する者の構成比を見ると,「犯行準備役」 (21.4%)及び「主犯・指示役」 (16.7%)は, 特殊詐欺事犯者の調査の結果 「受け子・出し子」 (5.9%)及び「架け子」 (3.8%)よりも高かった。 検挙時の保護処分歴を見ると,総数及びいずれの役割類型においても,保護処分歴を有しない者の 構成比が 60%台から 70%台を占めるが,「主犯・指示役」が 61.1%と最も低かった。他方,役割類 型別に保護処分歴を有する者が占める構成比を見ると,少年院送致歴を有する者の構成比は,「主 犯・指示役」 (27.8%)が最も高く,保護観察処分歴を有する者の構成比は,「架け子」(20.4%)が 最も高かった。 検挙時の暴力団加入状況を見ると,総数では非加入の者の構成比(80.0%)が最も高く,次いで, 準構成員・周辺者(11.0%) ,構成員(5.2%),元構成員等(3.9%)の順であった。役割類型別に 構成員の構成比を見ると, 「主犯・指示役」(23.5%)は,「犯行準備役」(7.7%)及び「架け子」 (5.3%)よりも高く,「受け子・出し子」には,構成員がいなかった。また,役割類型別に構成員, 準構成員・周辺者及び元構成員等の合計人員の構成比を見ると,「主犯・指示役」 (47.1%)及び「犯 行準備役」 (46.2%)は,いずれも半数近くを占め,「受け子・出し子」(11.4%)及び「架け子」 (7.9%)よりも顕著に高かった。 410 令和 3 年版 犯罪白書

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8-5-3-4 図 ① 特殊詐欺事犯者 属性等別人員(総数・特殊詐欺の役割類型別) 年齢層 総 30 歳未満 数 55.4 (202) け 子 58.2 (55) 54.8 (31) 受け子・ 出し子(91) 61.5 数 (197) 主犯・ 指示役(18) 架 け 10.9 35.5 9.7 22.0 離婚 62.4 15.2 22.3 27.8 70.4 (54) 58.1 61.8 22.2 13.0 16.7 22.6 10.1 少年院送致 数 15.8 14.3 (196) け 子 (54) 犯行準備役 (31) 28.1 27.8 9.3 11.1 20.4 16.1 12.9 受け子・ 18.4 12.6 出し子(87) なし 69.9 61.1 70.4 71.0 69.0 (201) 有職 無職 31.3 68.7 主犯・ 指示役(19) 架 け 子 (55) 47.4 90.9 54.8 (31) 受け子・ 出し子(90) ④ 総 架 (190) 子 (53) 犯行準備役 (28) 受け子・ 出し子(85) 異種のみ なし 63.2 27.4 同種のみ 2.1 16.7 66.7 16.7 1.9 64.2 32.1 1.9 21.4 50.0 28.6 3.5 69.4 24.7 2.4 暴力団加入状況 構成員 5.2 総 数 (155) 元構成員等 3.9 非加入 11.0 け 子 (38) 80.0 準構成員・周辺者 主犯・ 指示役(17) 架 67.8 同種・異種 7.4 数 け 45.2 32.2 前歴 主犯・ 指示役(18) 52.6 9.1 犯行準備役 ⑥ 保護観察 架 19.4 数 23.5 17.6 52.9 5.9 5.3 92.1 2.6 犯行準備役 3.8 34.6 (26) 受け子・ 出し子(70) 詐欺事犯者の実態と処遇 保護処分歴 主犯・ 指示役(18) 総 就労状況 第8 編 受け子・ 出し子(89) 総 8.8 有配偶 子 (31) 注 30.9 未婚 50.0 犯行準備役 ⑤ 10.5 7.7 婚姻状況 総 57.9 31.6 犯行準備役 ③ 30.7 ② 50 歳以上 3.5 主犯・ 指示役(19) 架 40 ~ 49 歳 10.4 30 ~ 39 歳 7.7 53.8 5.7 88.6 5.7 1 法務総合研究所の調査による。 2 各属性等が不詳の者を除く。 3 「年齢層」は,犯行時の年齢による。ただし,複数の事件がある場合は,そのうちの最初の事件の犯行時の年齢による。 4 「就労状況」は,判決時のものである。また, 「無職」は,家事従事者を含み,「有職」は,学生・生徒を含む。 5 「婚姻状況」は,検挙時のものであり,内縁関係によるものを含む。 6 「前歴」は,検挙時のものである。 7 「保護処分歴」は,検挙時のものである。「保護処分歴」が複数ある場合は,少年院送致歴がある者は「少年院送致」に,保護観察歴 のみがある者は「保護観察」に計上している。なお,児童自立支援施設・児童養護施設送致歴のみがある者はいなかった。 8 「暴力団加入状況」は,検挙時のものであり, 「非加入」は,暴力団加入歴があった者は含まない。 9 各属性等の総数又は特殊詐欺の役割類型別の人員における構成比である。 10 ( )内は,実人員である。 犯罪白書 2021 411

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(2)犯行の態様等 確定記録調査対象者が行った特殊詐欺の事件数(判決時に認定された事件のうち,特殊詐欺に該当 する事件の総数をいう。なお,複数の被害者がいる事件は異なる事件として計上している。)別構成 比を総数・役割類型別に見ると,8-5-3-5 図のとおりである。「主犯・指示役」及び「架け子」につ いては,事件数が5件以上の者の構成比が最も高く(それぞれ 42.1%,43.6%),事件数が1件であ 第5章 特別調査 る者の構成比は最も低かった(それぞれ 15.8%,5.5%)。他方,「受け子・出し子」及び「犯行準備 役」においては,事件数が1件である者の構成比が最も高かった(それぞれ 54.9%,45.2%)。 8-5-3-5 図 総 特殊詐欺事犯者 特殊詐欺の事件数別構成比(総数・特殊詐欺の役割類型別) 数 (202) 第3節 主犯・指示役 15.8 (19) 特殊詐欺事犯者の調査の結果 架 け 子 (55) 5.5 犯 行 準 備 役 (31) 受け子・出し子 (91) 注 1件 2件 3件 4件 5件以上 35.6 21.3 12.9 4.5 25.7 21.1 38.2 45.2 21.1 9.1 42.1 3.6 12.9 54.9 43.6 12.9 15.4 3.2 25.8 13.2 6.6 9.9 1 法務総合研究所の調査による。 2 「特殊詐欺の事件数」は,判決時に認定された事件のうち,特殊詐欺に該当する事件の総数である。なお,複数の被害者がいる場合 は,異なる事件として計上している。 3 ( )内は,実人員である。 確定記録調査対象者について,それぞれが関与した特殊詐欺事件(確定記録調査に係るものに限ら ない。 )のいずれかにおいて,他に果たした役割(複数ある場合は重複計上する。)を総数・役割別に 見ると,8-5-3-6 図のとおりである。役割別(同図②)では,「ア 主犯又は出し子・受け子の指示 役」 (19 人)は, 「リクルーター(架け子,受け子,出し子等を犯行グループに勧誘する役割) 」 (36.8%) , 「架け子」 (15.8%),「受け子」 (10.5%),「被害品運搬役」 (10.5%),「出し子・受け子の 見張り役」 (5.3%),「道具調達役」(5.3%)の役割を果たしたことがある者がいた。「イ (58 人)及び「ウ 架け子」 出し子又は受け子」 (97 人)は,総じて他に果たした役割がある者の割合は低い が,その中では, 「リクルーター」の経験がある者の割合が最も高かった(前者は 5.2%,後者は 4.1%) 。 412 令和 3 年版 犯罪白書

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8-5-3-6 図 ① 特殊詐欺事犯者 特殊詐欺の役割(総数・特殊詐欺の役割別) 総数(201) 0 主 10 出し子・受け子の 指 示 役 け 子 出 し 子 受 け 子 3.0 47.3 3.0 17.9 被害品運搬役 3.5 道 具 調 達 役 ② 4.5 他 5.5 特殊詐欺の役割別 ア 主犯又は出し子・受け子の指示役(19) 0 10 20 30 け 子 出 し 子 0 受 け 子 他 0 出し子・受け子の 指 示 役 架 け 子 2.1 1.0 4.1 被害品運搬役 0 道 具 調 達 役 そ 注 の 他 し 子 0 受 け 子 30 40 (%) 50 エ の 20 30 40 (%) 50 1.7 5.2 3.4 5.2 他 その他(43) 0 主 出し子・受け子の 0 見 張 り 役 リクルーター 出 そ 犯 0 (%) 50 3.4 道 具 調 達 役 出し子又は受け子(97) 主 40 被害品運搬役 0 5.3 20 30 1.7 リクルーター 10.5 10 20 出し子・受け子の 0 見 張 り 役 36.8 0 犯 10 詐欺事犯者の実態と処遇 ウ 0 第8 編 リクルーター 道 具 調 達 役 架け子(58) 主 5.3 被害品運搬役 イ 出し子・受け子の 指 示 役 10.5 出し子・受け子の 見 張 り 役 の 40 (%) 50 15.8 架 そ (%) 50 28.9 リクルーター の 40 6.5 出し子・受け子の 見 張 り 役 そ 30 3.0 犯 架 20 犯 10 2.3 出し子・受け子の 指 示 役 架 け 子 出 し 子 0 受 け 子 そ の 他 16.3 9.3 14.0 9.3 3.1 1.0 1 法務総合研究所の調査による。 2 特殊詐欺の役割が不詳の者を除く。 3 ②のアからエは,調査対象者が及んだ特殊詐欺事件のいずれかで,各役割を担ったことがある者を計上している。「エ 出し子・受け子の見張り役,リクルーター,被害品運搬役又は道具調達役である。 4 各項目に該当した者(重複計上による。)の比率である。 5 ( )内は,実人員である。 その他」は, 犯罪白書 2021 413

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確定記録調査対象者(報酬の有無が不詳の者を除く。)のうち共犯者がいる者(193 人)について, 報酬の有無を総数・役割類型別に見ると,8-5-3-7 図①のとおりである。「主犯・指示役」及び「犯 行準備役」の全員に報酬があり,「架け子」 (96.4%)及び「受け子・出し子」 (92.1%)のいずれも, 報酬があった者の構成比が9割を超えた。 確定記録調査対象者(報酬を受け取った又は受け取る約束をしていた者のうち,報酬額が不詳の者 第5章 特別調査 を除く。 )のうち共犯者がいる者(175 人)について,報酬額(複数の事件がある場合は,各事件の 報酬額の合計をいう。)別構成比を総数・役割類型別に見ると,8-5-3-7 図②のとおりである。なお, 報酬額は,裁判書等の資料から読み取ることのできる最低金額であり,確定記録調査対象者自身の供 述等の証拠によることも少なくないと思われる点等に留意する必要がある。報酬額 100 万円以上の 者の構成比は,「主犯・指示役」では 42.9%,「架け子」では 34.7%であり,「受け子・出し子」では 2.4%にとどまった。他方,約束のみ(報酬を受け取る約束をしていたものの,実際には受け取って いないことをいう。)の者の構成比は,「受け子・出し子」では 56.1%,「犯行準備役」では 41.7%で 第3節 あった。 8-5-3-7 図 特殊詐欺事犯者の調査の結果 ① 特殊詐欺事犯者 報酬の有無・報酬額別構成比(総数・特殊詐欺の役割類型別) 報酬の有無 総 数 (193) あり なし 95.3 4.7 主犯・指示役 100.0 (16) 架 け 子 96.4 (55) 犯行準備役 100.0 (27) 受け子・ 出 し 子 (89) ② 92.1 報酬額 総 数 (175) (14) 架 け 子 (49) 1万円以上 10 万円未満 38.9 17.7 犯行準備役 (24) 21.4 14.3 7.9 約束のみ 1万円未満 0.6 主犯・指示役 3.6 27.4 14.3 28.6 42.9 41.7 11.4 10 万円以上 100 万円未満 21.4 8.2 100 万円以上 500 万円未満 500 万円以上 14.3 26.5 12.5 8.2 41.7 4.2 1.2 受け子・ 出 し 子 (82) 注 414 56.1 4.0 1.2 24.4 15.9 1.2 1 法務総合研究所の調査による。 2 調査対象事件に共犯者がいる者に限る。①は報酬の有無が不詳の者,②は報酬を受け取った又は受け取る約束をしていた者のうち,報 酬額が不詳の者を除く。 3 「報酬額」は,裁判書等の資料から読み取ることのできる最低金額であり,複数の事件がある場合は,各事件の報酬額の合計である。 4 「約束のみ」は,報酬を受け取る約束をしていたものの,実際には受け取っていないことをいう。 5 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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(3)犯行の動機・背景事情 確定記録調査対象者(犯行の動機・理由が不詳の者を除く。)が特殊詐欺に及んだ動機・理由を総 数・役割類型別に見ると,8-5-3-8 図のとおりである。 特殊詐欺に及んだ動機・理由としては,総数及びいずれの役割類型についても,「金ほしさ」及び 「友人等からの勧誘」の割合が突出して高かった。総数及び「受け子・出し子」は,「金ほしさ」の割 合が最も高く(総数では 66.1%,「受け子・出し子」では 78.4%),「架け子」は,「友人等からの勧 誘」の割合が最も高く(67.3%) , 「主犯・指示役」及び「犯行準備役」は,「金ほしさ」及び「友人 等からの勧誘」の割合が同率で最も高かった(「主犯・指示役」では 53.3%,「犯行準備役」では 57.1%) 。また, 「友人等からの勧誘」は,「受け子・出し子」では 23.9%であり,総数及び他の役割 類型よりも低かった。 「金ほしさ」及び「友人等からの勧誘」を除くと,「主犯・指示役」では「所属組織の方針」の割合 (13.3%)が他の役割類型よりも高く,「受け子・出し子」では「軽く考えていた」 (10.2%),「だま された・脅された」 (8.0%),「生活困窮」の割合(6.8%)が他の役割類型よりも高かった。 第8 編 詐欺事犯者の実態と処遇 犯罪白書 2021 415

433.

8-5-3-8 図 特殊詐欺事犯者 犯行動機・理由(総数・特殊詐欺の役割類型別) 0 金 ほ し 10 20 30 40 50 第5章 特別調査 53.3 52.7 57.1 さ (127) 44.8 友人等からの勧誘 (86) 23.9 第3節 軽く考えていた 特殊詐欺事犯者の調査の結果 (12) 生 活 困 窮 (7) 0 7.1 0 10.2 6.8 2.1 (4) 67.3 1.8 0 勧 誘 者 と の 交友関係の維持 78.4 3.6 1.8 (5) 66.1 8.0 2.6 所属組織の方針 57.1 (%) 80 6.3 6.7 7.3 0 0 53.3 70 7.3 6.7 1.8 (14) だ ま さ れ た・ 脅 さ れ た 60 1.8 13.3 7.1 6.7 2.3 0.5 0 S N S の 勧 誘 0 (1) 0 1.1 そ 注 416 の 1 2 3 4 令和 3 年版 0 他 0 (3) 1.6 3.6 2.3 法務総合研究所の調査による。 犯行動機又は理由が不詳の者を除く。 各項目に該当した者(重複計上による。)の比率である。 凡例の( )内は総数又は特殊詐欺の役割類型別の実人員であり,縦軸の( 犯罪白書 総数 (192) 主犯・指示役 (15) 架け子 (55) 犯行準備役 (28) 受け子・出し子 (88) )内は各項目の該当者の人員である。

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確定記録調査対象者(背景事情が不詳の者を除く。)が特殊詐欺に及んだ背景事情を総数・役割類 型別に見ると,8-5-3-9 図のとおりである。 特殊詐欺に及んだ背景事情としては,総数及びいずれの役割類型においても,「無職・収入減」, 「不良交友」及び「借金」の割合が高く,経済状況や交友状況が背景事情の多くを占めた。役割類型 ごとに見ると,「主犯・指示役」,「架け子」及び「犯行準備役」は,「不良交友」,「無職・収入減」 , 「借金」の順に高く(「主犯・指示役」では順に 68.8%,37.5%,12.5%,「架け子」では 58.5%, 49.1%,18.9%,「犯行準備役」では 67.9%,25.0%,17.9%),「受け子・出し子」は,「無職・収 入減」 (70.7%)が顕著に高く,次いで,「借金」 (26.8%),「不良交友」 (22.0%)の順であった。 8-5-3-9 図 特殊詐欺事犯者 背景事情(総数・特殊詐欺の役割類型別) 0 10 20 30 40 50 49.1 25.0 (98) 70.7 44.3 不 良 交 借 12.5 金 (41) 職 ・ 退 学 (4) 0 0 0 気 ・ け が 0 (2) 0 そ 注 22.0 の 1 2 3 4 他 0 (7) 67.9 22.4 18.9 17.9 26.8 2.2 5.7 1.2 詐欺事犯者の実態と処遇 病 (81) 68.8 第8 編 辞 58.5 友 (%) 80 70 53.6 37.5 無 職 ・ 収 入 減 60 1.1 2.4 3.8 6.3 7.1 4.9 法務総合研究所の調査による。 犯行時の背景事情が不詳の者を除く。 各項目に該当した者(重複計上による。)の比率である。 凡例の( )内は総数又は特殊詐欺の役割類型別の実人員であり,縦軸の( 総数 (183) 主犯・指示役 (16) 架け子 (53) 犯行準備役 (28) 受け子・出し子 (82) )内は各項目の該当者の人員である。 犯罪白書 2021 417

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被害状況等 3 (1)被害者の年齢層 特殊詐欺事件(被害者の年齢が不詳の事件を除き,一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それ ぞれ計上している。 )について,事件当時の被害者の年齢層別構成比を見ると,8-5-3-10 図のとおりで 第5章 特別調査 ある。65 歳以上の高齢者の事件(292 件)が 86.1%であり,特に 75 歳以上の者の事件(191 件)が 56.3%を占めた。 8-5-3-10 図 1.2 総 特殊詐欺事件 被害者の年齢層別構成比 1.8 数 9.4 (339) 11.5 18.3 56.3 1.5 第3節 30 歳未満 注 30 ~39 歳 40 ~49 歳 50 ~64 歳 65 ~69 歳 70 ~74 歳 75 歳以上 特殊詐欺事犯者の調査の結果 1 法務総合研究所の調査による。 2 被害者の年齢が不詳の事件を除く。 3 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 4 事件当時の被害者の年齢による。 5 ( )内は,件数である。 (2)被害者の居住状況 特殊詐欺事件(被害者の居住地が不詳の事件を除き,一つの事件に複数の被害者がいる場合は,そ れぞれ計上している。)について,事件当時の被害者の居住地別構成比を見ると,8-5-3-11 図のとお りである。関東地方の構成比が最も高く(81.5%),次いで,中部地方(5.3%),近畿地方(4.1%), 中国地方(3.8%) ,北海道・東北地方(2.9%),九州・沖縄地方(1.8%),四国地方(0.6%)の順 であった。確定記録調査は,特殊詐欺事犯者のうち,東京地方裁判所,横浜地方裁判所,さいたま地 方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者を対象に行ったものであるが(本章第1節参 照) ,被害者が関東地方以外の地方に居住する者である事件が約 2 割を占めた。 8-5-3-11 図 特殊詐欺事件 被害者の居住地別構成比 関東地方以外 18.5 総 数 81.5 (340) 5.3 4.1 3.8 2.9 関東地方 注 北海道・東北地方 中部地方 近畿地方 中国地方 四国地方 0.6 1.8 九州・沖縄地方 1 法務総合研究所の調査による。 2 被害者の居住地が不詳の事件を除く。 3 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 4 事件当時の被害者の居住地による。 5 「北海道・東北地方」は札幌・仙台, 「関東地方」は東京,「中部地方」は名古屋,「近畿地方」は大阪,「中国地方」は広島,「四国地 方」は高松, 「九州・沖縄地方」は福岡の各高等検察庁管内の都道府県に被害者の居住地がある場合をいう。 6 ( )内は,件数である。 特殊詐欺事件(被害者の同居人の有無及び被害者の年齢が不詳の事件を除き,一つの事件に複数の 被害者がいる場合は,それぞれ計上している。)について,被害者が最初に犯人グループと接触した ときの被害者の同居人の有無別構成比を総数・被害者の年齢層別に見ると,8-5-3-12 図のとおりで ある。総数では,被害者が単身居住であった事件の構成比は,30.8%(91 件)であった。被害者に 同居人がある事件について,被害者の同居相手を見ると,配偶者及びその他の親族の構成比(配偶者 以外の親族のみと同居している場合も含む。)が最も高く(41.7%,123 件),次いで,配偶者のみ 418 令和 3 年版 犯罪白書

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(26.8%,79 件),親族以外の者(0.7%,2件)の順であった。被害者の年齢層別に見ると,被害者 が単身居住であった事件の構成比は,70 歳以上が最も高く(34.3%),次いで,65~69 歳(33.3%), 40 歳代(16.7%)の順であった。65~69 歳及び 70 歳以上については,被害者が単身居住であった 事件及び同居相手が配偶者のみの事件の合計が,それぞれ全体の 66.7%,59.7%を占めた。 8-5-3-12 図 特殊詐欺事件 被害者の同居人の有無別構成比(総数・被害者の年齢層別) 同居人あり 69.2 総 数 30.8 (295) 26.8 41.7 0.7 40 歳 未 満 66.7 (6) 40 ~ 49 歳 16.7 (6) 50 ~ 64 歳 (28) 83.3 10.7 39.3 65 ~ 69 歳 50.0 33.3 (39) 70 歳 以 上 34.3 (216) 単身 同居(配偶者のみ) 33.3 25.5 同居(配偶者及びその他の親族) 33.3 40.3 同居(親族以外の者) 1 法務総合研究所の調査による。 2 被害者の同居人の有無及び被害者の年齢が不詳の事件を除く。 3 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 4 被害者が最初に犯人グループと接触したときの被害者の同居人の有無による。 5 事件当時の被害者の年齢による。 6 「同居(配偶者及びその他の親族)」は,配偶者以外の親族のみと同居している場合を含む。 7 ( )内は,件数である。 第8 編 注 33.3 詐欺事犯者の実態と処遇 (3)犯人からの接触状況 特殊詐欺事件(被害者への最初の連絡方法が不詳の事件を除き,一つの事件に複数の被害者がいる 場合は,それぞれ計上している。 )について,犯人グループから被害者への最初の連絡方法別構成比 を見ると,8-5-3-13 図のとおりである。固定電話の構成比(86.2%)が顕著に高く,携帯電話 (7.6%)と合わせて電話によるものが9割を超えた。 8-5-3-13 図 特殊詐欺事件 被害者への最初の連絡方法別構成比 固定電話 総 注 数 (340) 86.2 1 法務総合研究所の調査による。 2 被害者への最初の連絡方法が不詳の事件を除く。 3 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 4 ( )内は,件数である。 携帯電話 その他 7.6 3.5 電子メール 2.6 犯罪白書 2021 419

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(4)被害者の相談状況 特殊詐欺事件(被害者の相談の有無が不詳の事件を除き,一つの事件に複数の被害者がいる場合 は,それぞれ計上している。 )について,被害者が相談(被害者が,犯人グループからの連絡を受け てから金品を詐取されるまでの間に,連絡を受けた内容を誰かに話すことをいう。以下(4)におい て同じ。 )した状況等を総数,既遂事件・未遂事件別に見ると,8-5-3-14 図のとおりである。 第5章 特別調査 「相談あり」の構成比は,既遂事件では 15.7%,未遂事件では 81.0%と,顕著な差があった。被害 者が相談した事件について,相談した相手の内訳を見ると,既遂事件(37 件)は,64.9%が「同居 の家族・親族」に相談していたが,金品を詐取されるに至った。未遂事件(81 件)は,「同居してい ない家族・親族」に相談した事件の構成比が 29.6%であり,既遂事件(13.5%)よりも高い。また, 「金融機関職員」に相談した6人は,全員が未遂事件であった。 8-5-3-14 図 第3節 ① 特殊詐欺事件 被害者の相談状況(総数・既遂事件・未遂事件別) 相談の有無 総 数 特殊詐欺事犯者の調査の結果 (335) 既遂事件 (235) 相談あり 相談なし 35.2 64.8 15.7 84.3 未遂事件 81.0 (100) ② 19.0 相談した相手 総 数 (118) 同居の家族・親族 同居していない家族・親族 48.3 24.6 その他 5.1 コンビニ店員 0.8 金融機関職員 既遂事件 64.9 (37) 21.2 13.5 18.9 2.7 未遂事件 (81) 注 420 40.7 29.6 7.4 22.2 1 法務総合研究所の調査による。 2 「相談」は,被害者が,犯人グループからの連絡を受けてから金品を詐取されるまでの間に,連絡を受けた内容を誰かに話すことを いう。 3 被害者の相談の有無が不詳の事件を除く。 4 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 5 ②は被害者が相談した事件に限る。 6 各項目の総数・既遂事件・未遂事件別の事件数における構成比である。 7 ( )内は,件数である。 令和 3 年版 犯罪白書

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特殊詐欺事件のうち未遂事件(一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。) について,最初に詐欺に気付いた者別の構成比を見ると,8-5-3-15 図のとおりである。 最初に詐欺に気付いた者が被害者自身である事件が過半数(52.0%)を占め,次いで,「同居の家 族・親族」 (14.0%),「金融機関職員」 (12.0%),「同居していない家族・親族」 (9.0%)の順であっ た。 8-5-3-15 図 総 特殊詐欺(未遂)事件 最初に詐欺に気付いた者別構成比 数 (100) 被害者自身 同居の家族・親族 52.0 14.0 同居していない家族・親族 その他 12.0 9.0 13.0 金融機関職員 注 1 法務総合研究所の調査による。 2 未遂事件に限る。 3 一つの事件に複数の被害者がいる場合は,それぞれ計上している。 4 ( )内は,件数である。 4 科刑状況 確定記録調査対象者について,有期の懲役の科刑状況別構成比を,総数並びに特殊詐欺の事件数別 及び役割類型別に見ると,8-5-3-16 図のとおりである。 総数では,約3分の1が全部執行猶予の者,約3分の2が全部実刑の者(一部執行猶予の者はいな かった。 )であった。令和2年における地方裁判所における詐欺の科刑状況別構成比(全部執行猶予 の者 52.8%,全部実刑(一部執行猶予を含む。)の者 47.2%。8-3-1-36 図参照)と比較すると,確 定記録調査対象者は,全部実刑の者の構成比が高かった(なお,特殊詐欺には,詐欺以外の罪名のも 第8 編 のが含まれ得ることに留意する必要がある。)。全部実刑の者の刑期について見ると,2年以上3年以 下の者の構成比(27.2%)が最も高く,次いで,3年を超え4年以下の者(17.3%),5年を超え 10 年以下の者(9.9%) ,1年以上2年未満の者(7.4%),4年を超え5年以下の者(5.0%)の順で あった。 詐欺事犯者の実態と処遇 確定記録調査対象者が行った特殊詐欺の事件数(本節2項(2)参照)別に見ると,事件数ごとに 母数が異なること等に留意する必要があるが,全部実刑の者の構成比は,1件では 34.7%,2件で は 72.1%,3件では 92.3%,4件では 77.8%,5件以上では 92.3%であった。全部実刑の者の刑期 を見ると,1件から4件までは,いずれも2年以上3年以下の者の構成比が最も高く,次いで,1件 から3件までは,3年を超え4年以下の者(1件では1年以上2年未満の者と,3件では5年を超え 10 年以下の者とそれぞれ同率)の順であった。他方,5件以上では,3年を超え4年以下の者 (32.7%)の構成比が最も高く,次いで,5年を超え 10 年以下の者(25.0%),4年を超え5年以下 の者(17.3%) ,2年以上3年以下の者(13.5%)の順であった。他方,全部執行猶予の者の刑期に ついて見ると,2年未満は,特殊詐欺の事件数が1件のものに2人いるのみであり,その余は2年以 上3年以下であった。 特殊詐欺の役割類型別では,全部実刑の者の構成比は,「主犯・指示役」 (84.2%)が最も高く,次 いで, 「架け子」 (83.6%),「犯行準備役」 (64.5%),「受け子・出し子」 (54.9%)の順であった。全 部実刑の者の刑期を見ると,5年を超え 10 年以下の者及び4年を超え5年以下の者の構成比は, 「主 犯・指示役」 , (それぞれ 21.1%)が最も高く,次いで,「架け子」(16.4%,7.3%),「犯行準備役」 (16.1%,6.5%),「受け子・出し子」 (1.1%,なし)であった。 犯罪白書 2021 421

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8-5-3-16 図 ① 特殊詐欺事犯者 有期刑(懲役)科刑状況別構成比(総数,特殊詐欺の事件数別・役割類型別) 総数 総 全部執行猶予 33.2 数 32.2 (202) 第5章 特別調査 0.5 ② 7.4 27.2 17.3 5.0 9.9 0.5 特殊詐欺の事件数別 1 全部実刑 66.8 全部執行猶予 65.3 件 全部実刑 34.7 62.5 (72) 5.6 22.2 5.6 1.4 1.4 1.4 72.1 2 件 27.9 (43) 11.6 39.5 20.9 第3節 92.3 特殊詐欺事犯者の調査の結果 3 件 (26) 7.7 11.5 38.5 19.2 3.8 19.2 77.8 4 件 22.2 (9) 11.1 55.6 11.1 92.3 5 件 以 上 (52) ③ 7.7 3.8 13.5 32.7 17.3 特殊詐欺の役割類型別 主犯・指示役 15.8 (19) 25.0 全部実刑 84.2 10.5 15.8 15.8 21.1 21.1 83.6 架 け 子 16.4 (55) 9.1 21.8 29.1 全部執行猶予 35.5 犯行準備役 32.3 (31) 7.3 16.4 64.5 6.5 16.1 19.4 6.5 16.1 3.2 45.1 受 け 子・ 出 し 子 (91) 1.1 44.0 422 5.5 37.4 11.0 1.1 1年未満 (全部執行猶予) 2年以上3年以下 (全部実刑) 注 54.9 1年以上2年未満 (全部執行猶予) 3年を超え4年以下 (全部実刑) 2年以上3年以下 (全部執行猶予) 4年を超え5年以下 (全部実刑) 1年以上2年未満 (全部実刑) 5年を超え 10 年以下 (全部実刑) 1 法務総合研究所の調査による。 2 「特殊詐欺の事件数」は,判決時に認定された事件のうち,特殊詐欺に該当する事件の総数である。なお,複数の被害者がいる場合 は,異なる事件として計上している。 3 ( )内は,実人員である。 令和 3 年版 犯罪白書

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第4節 再犯に関する調査の結果 この節では,詐欺事犯者の再犯状況と再犯に関連する要因について,全対象者調査(本章第1節参 照)及び再犯調査(同節参照)により明らかになった結果を紹介する。まず,1項では,全対象者の 再犯状況を概観するとともに,犯行時の年齢,前科のほか,犯行の手口等と再犯の有無との関連につ いて分析した結果を紹介する。2項では,さらに,再犯者の特徴に関する示唆を得るため,全対象者 のうち,調査対象事件(同節参照)の判決の言渡しから約3年が経過した時点において再犯に及んだ 全部執行猶予者について,再犯の内容や再犯時の生活状況等を紹介する。 1 全対象者調査による再犯の有無 詐欺事犯者の再犯状況と再犯に関連する要因を概観するため,全対象者のうち,調査対象事件の第 一審の判決言渡日(上訴した者のうち,上訴審により第一審の実刑判決が破棄されて全部執行猶予判 決となった者(17 人)は,上訴審の判決言渡日とする。以下この項において同じ。)から4年間に再 び有罪判決の言渡しを受けた者(最終的に有罪の裁判が確定した者に限る。)の有無等を見る。全対 象者調査における「再犯」とは,罰金以上の刑で再び有罪判決の言渡しを受けて裁判が確定した事件 をいう(道交違反又は道路交通取締法,同法施行令若しくは道路交通取締令の各違反により,罰金以 下の刑に処せられた事件を除く。)。ただし,全対象者調査は,裁判書等の資料に基づいた調査にとど まっているため,この項における「再犯」には,調査対象事件の裁判確定前の余罪又は調査対象事件 により実刑に処せられた者がその受刑中に犯した事件が含まれている可能性があり,厳密な意味での 再犯状況ではないことに留意する必要がある。また,同様の理由により,再犯の犯行日を調査するこ とが困難であったため,調査対象事件の第一審の判決言渡日から4年間に,再犯の第一審の判決言渡 第8 編 しを受けていることをもって,再犯に及んだものと判断した。 なお,調査対象事件により全部執行猶予の言渡しを受けた者については,社会内で再犯に及ぶ可能 性があった期間(以下この節において「再犯可能期間」という。)を4年間確保できる一方,調査対 象事件により実刑に処せられた者の中には,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点にお 詐欺事犯者の実態と処遇 いてもいまだ受刑している者がおり,そのような者については再犯に関する調査の対象に含まなかっ た。さらに,実刑に処せられて受刑し,判決言渡日から4年が経過する前に刑事施設から出所した者 についても,出所日が異なることから,再犯可能期間には長短がある。したがって,この項におい て,全体的な再犯の傾向等を把握するために,出所受刑者・全部執行猶予者別に再犯の状況を見るこ とがあるが,その場合には,比較する対象者の再犯可能期間が異なっていることに留意する必要があ る。 全対象者調査の結果,全対象者 1,343 人のうち,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時 点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除いた 1,231 人に ついて,再犯の有無別人員を見ると,再犯ありは 194 人(15.8%)であった。このうち,詐欺によ る再犯のある者は,74 人(再犯ありの 38.1%)であった。また,再犯による有罪判決の言渡しを受 けた後,2回目の再犯に及び,再び罰金以上の刑で有罪判決の言渡しを受けて裁判が確定した者は, 26 人(再犯ありの 13.4%)であった。 犯罪白書 2021 423

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(1)全対象者 全対象者の再犯の有無別構成比を属性別に見ると,8-5-4-1 図のとおりである。 男女別に見ると,女性の再犯ありの構成比は,1割に満たず,男性と比べて低かった。 年齢層別に見ると,再犯ありの構成比は,65 歳以上の者が最も高かったが,いずれの年齢層も2 割に満たず,その傾向に大きな差はなかった。なお,調査対象事件における犯行時の年齢の平均は, 第5章 特別調査 再犯ありの者が 39.1 歳,再犯なしの者が 38.2 歳であり,それぞれ最高年齢は,再犯ありの者が 75 歳,再犯なしの者が 80 歳,最低年齢は,再犯ありの者が 20 歳,再犯なしの者が 18 歳であった。 調査対象事件による検挙時の前科の有無別に見ると,前科を有する者の再犯ありの構成比は,前科 を有しない者の構成比と比べて顕著に高かった。 8-5-4-1 図 ① 男女別 第4節 男 再犯に関する調査の結果 女 ② 全対象者 再犯の有無別構成比(属性別) 性 再犯なし 17.0 83.0 (1,083) 性 (148) 6.8 93.2 年齢層別 30 歳 未 満 再犯あり 再犯なし 14.9 85.1 15.2 84.8 16.3 83.7 16.8 83.2 (410) 30 ~ 39 歳 (309) 40 ~ 49 歳 (246) 50 ~ 64 歳 (202) 65 歳 以 上 (64) ③ 再犯あり 18.8 81.3 再犯あり 再犯なし 21.8 78.2 前科の有無別 前 科 あ り (570) 前 科 な し (661) 注 10.6 89.4 1 法務総合研究所の調査による。 2 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点における再犯の有無を示す。 3 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除く。 4 「年齢層」は,調査対象事件の犯行時の年齢による。 5 「前科」は,調査対象事件より前の,道交違反等を除く,罰金以上の刑に処せられたものをいう。 6 ( )内は,実人員である。 全対象者の再犯の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に見ると,8-5-4-2 図のとおり である。出所受刑者について,調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時点までの再犯可能期 424 令和 3 年版 犯罪白書

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間を算出するに当たり,刑事施設における受刑期間を減じた日数の平均値(以下この節において「平 均再犯可能期間」という。)を求めると,2年弱(687 日)であった。全部執行猶予者は調査した再 犯可能期間が4年であることも踏まえた上で,再犯の有無別構成比を見ると,出所受刑者の再犯あり の構成比は,2割弱であり,平均再犯可能期間が約半分であるにもかかわらず,単純執行猶予者(保 護観察の付かない全部執行猶予の者をいう。以下この節において同じ。)と比べて高かった。また, 保護観察付全部執行猶予者の再犯ありの構成比は,4割を超え,単純執行猶予者と比べて顕著に高 かった。 8-5-4-2 図 ① 全対象者 総 ② 数 (1,231) 再犯あり 再犯なし 15.8 84.2 出所受刑者[平均再犯可能期間:687 日] 総 ③ 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別) 数 (585) 再犯あり 再犯なし 16.9 83.1 全部執行猶予者 保 護 観 察 付 全部執行猶予者 (47) (599) 注 12.7 再犯なし 40.4 59.6 第8 編 単純執行猶予者 再犯あり 87.3 詐欺事犯者の実態と処遇 1 法務総合研究所の調査による。 2 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点における再犯の有無を示す。 3 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除く。 4 「平均再犯可能期間」は,調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点までの期間から,刑事施設における受刑期間を減じた日数の 平均値をいう。 5 「単純執行猶予者」は,保護観察の付かない全部執行猶予の者である。 6 ( )内は,実人員である。 全対象者の再犯の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に見るとともに,これを年齢層 別に見ると,8-5-4-3 図のとおりである。出所受刑者に関しては,再犯可能期間に長短があることを 考慮に入れる必要があるが,再犯ありの構成比は,50~64 歳の者が最も高く,次いで,65 歳以上の 者であり,これらの年齢層はいずれも約4人に1人が再犯に及んでいた。30 歳未満の者の再犯あり の構成比は,1割程度であり,最も低かった。他方,全部執行猶予者の再犯ありの構成比は,30 歳 未満の者が2割弱で最も高く,次いで,40 歳代の者,30 歳代の者,65 歳以上の者,50~64 歳の者 の順であった。 さらに,再犯ありの者について,詐欺の前科の有無別構成比を,出所受刑者・全部執行猶予者別に 見るとともに,これを年齢層別に見ると,出所受刑者は,再犯ありの総数の5割以上が詐欺の前科を 有し,特に 65 歳以上の者(87.5%),50~64 歳の者(74.1%),40~49 歳の者(70.0%)の各年齢 層に占める詐欺の前科を有する者の構成比は,いずれも7割以上であった。全部執行猶予者は,再犯 ありの総数の1割弱が詐欺の前科を有し,特に 65 歳以上(50.0%)の年齢層に占める詐欺の前科を 有する者の構成比は顕著に高かったが,その他の年齢層の構成比はいずれも1割に満たなかった。 犯罪白書 2021 425

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8-5-4-3 図 ① 全対象者 再犯の有無別構成比(出所受刑者・全部執行猶予者別,年齢層別) 出所受刑者 30 歳 未 満 (170) 第5章 特別調査 30 ~ 39 歳 (155) 40 ~ 49 歳 (123) 再犯あり 再犯なし 平均再犯可能期間 11.2 88.8 [659 日] 16.1 83.9 [664 日] 16.3 83.7 [696 日] 50 ~ 64 歳 25.7 74.3 [742 日] 25.0 75.0 [740 日] (105) 65 歳 以 上 (32) 第4節 ② 全部執行猶予者 再犯に関する調査の結果 再犯あり 再犯なし 17.5 82.5 30 歳 未 満 (240) 30 ~ 39 歳 (154) 40 ~ 49 歳 (123) 50 ~ 64 歳 (97) 65 歳 以 上 (32) 注 14.3 16.3 7.2 12.5 85.7 83.7 92.8 87.5 1 法務総合研究所の調査による。 2 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点における再犯の有無を示す。 3 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除く。 4 「平均再犯可能期間」は,調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点までの期間から,刑事施設における受刑期間を減じた日数の 平均値をいう。 5 犯行時の年齢による。 6 ( )内は,実人員である。 全対象者の再犯の有無別構成比を,犯行の手口別に見るとともに,これを詐欺再犯・その他再犯 ( 「詐欺再犯」は,再犯の判決罪名に詐欺を含むものをいい,「その他再犯」は,再犯の判決罪名が詐 欺以外のものをいう。 )別に見ると,8-5-4-4 図のとおりである。出所受刑者に関しては,再犯可能 期間に長短があることを考慮に入れる必要があるが,再犯ありの構成比は,無銭飲食等が5割を超え て顕著に高く,次いで,通帳等・携帯電話機の詐取(11.8%),特殊詐欺(10.2%)の順であり,保 険金詐欺(3.8%)が最も低かった。詐欺再犯ありの構成比は,無銭飲食等が最も高く,次いで,特 殊詐欺,通帳等・携帯電話機の詐取の順であった。ただし,犯行の手口別の再犯ありの構成比を見る に当たっては,犯行の手口によって,調査対象事件で実刑に処せられた者の構成比(無銭飲食等 69.4%,特殊詐欺 67.3%,保険金詐欺 25.0%,通帳等・携帯電話機の詐取 17.5%。犯行の手口別の 刑の種類別構成比については,8-5-2-5 表参照)や調査対象事件の判決言渡日から4年が経過した時 点においても受刑中の者の割合(特殊詐欺 11.2%(30 人),保険金詐欺 8.6%(3人),無銭飲食等 1.1%(1人) ,通帳等・携帯電話機の詐取(該当なし))に偏りがあるほか,犯行の手口別の平均再 犯可能期間においても,特殊詐欺の 931 日から通帳等・携帯電話機の詐取の 1,335 日まで開きがあ ることに留意する必要がある。 426 令和 3 年版 犯罪白書

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8-5-4-4 図 特 殊 詐 欺 平均再犯可能期間 2.8 7.4 (352) 通帳等・携帯 電話機の詐取 全対象者 再犯の有無別構成比(犯行の手口別) [931 日] 89.8 2.7 9.1 (186) 無銭飲食等 30.2 (139) [1,335 日] 88.2 26.6 43.2 [1,056 日] 0.8 保険金詐欺 [1,291 日] 96.2 (132) 3.0 詐欺再犯あり 注 その他再犯あり 再犯なし 1 法務総合研究所の調査による。 2 異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 3 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点における再犯の有無を示す。 4 調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点において受刑中の者,受刑中に死亡した者及び再犯に及ぶことなく死亡した者を除く。 5 「平均再犯可能期間」は,調査対象事件の判決言渡日から4年経過時点までの期間から,刑事施設における受刑期間を減じた日数の 平均値をいう。 6 「詐欺再犯」は再犯の判決罪名に詐欺を含むものをいい,「その他再犯」は再犯の判決罪名が詐欺以外のものをいう。 7 ( )内は,実人員である。 (2)全部執行猶予者 全部執行猶予者について,その再犯期間(調査対象事件の第一審の判決言渡日から再犯の第一審の 判決言渡日までの期間をいい,複数の再犯がある場合には最初の判決言渡日による。以下この節にお 第8 編 いて同じ。)に係る累積再犯率(各項目の実人員に占める,再犯のあった者の累積人員の比率をいう。 以下この節において同じ。 )を,執行猶予の区分別に見ると,8-5-4-5 図①のとおりである。保護観 察付全部執行猶予者では,調査対象事件の第一審判決後 13 か月(27.7%)まで急激に上昇している が,その後は上昇のペースがやや緩やかになり,36 か月(40.4%)を超えると横ばいになっている。 詐欺事犯者の実態と処遇 一方,単純執行猶予者では,最初から上昇のペースが緩やかであり,両者の累積再犯率の差は,調査 対象事件の第一審判決言渡日から1年経過時点で 20.0pt まで広がっている。更に詳しく見ると,保 護観察付全部執行猶予者の再犯ありの人員のうち,半数以上の者は 11 か月が経過するまでの間に再 犯がある一方,単純執行猶予者の再犯ありの人員のうち,半数以上の者は 17 か月が経過するまでの 間に再犯がある。 8-5-4-5 図②は,全部執行猶予者について,その再犯期間に係る累積再犯率を犯行の手口別に見た ものである。無銭飲食等は,調査対象事件の第一審判決後2か月までは再犯に及んだ者がいなかった ものの,その後,13 か月(39.5%)まで急激に上昇している。特殊詐欺も,2か月までは再犯に及 んだ者がいなかったものの,6か月から 12 か月(7.8%)まで上昇し続け,その後も緩やかに上昇し ている。通帳等・携帯電話機の詐取は,8か月(3.2%)までほぼ一定の割合で上昇し続け,その後 は上昇のペースが緩やかになり,41 か月(10.4%)を超えると横ばいになっている。保険金詐欺は, 48 か月経過時点での再犯ありの人員が4人と少数であり,42 か月(3.9%)まで緩やかに上昇して いる。 犯罪白書 2021 427

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8-5-4-5 図 ① 全部執行猶予者 累積再犯率(執行猶予の区分別,犯行の手口別) 執行猶予の区分別 第5章 特別調査 12.7 6 12 18 24 30 36 42 48(月未満) 再犯期間 保護観察付全部執行猶予者 (47 人) 単 純 執 行 猶 予 者 (599 人) 第4節 注 犯行の手口別 (%) 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0 51.2 累積再犯率 40.4 累積再犯率 (%) 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 0 ② 15.5 10.4 3.9 6 12 18 24 30 36 42 48(月未満) 再犯期間 無 銭 飲 食 等 (43 人) 特 殊 詐 欺 (129 人) 通帳等・携帯電話機の詐取 (154 人) 保 険 金 詐 欺 (102 人) 再犯に関する調査の結果 1 法務総合研究所の調査による。 2 ②は,異なる手口により2件以上の詐欺を行っていた者を除く。 3 「再犯期間」は,調査対象事件の第一審の判決言渡日から再犯の第一審の判決言渡日(複数の再犯がある場合には最初の判決言渡日) までの日数を,1か月を 30 日として換算して計上している。 4 「累積再犯率」は,各項目の実人員に占める,横軸の期間までに再犯のあった者の累積人員の比率をいう。 5 「単純執行猶予者」は,保護観察の付かない全部執行猶予の者である。 2 全部執行猶予者に対する再犯調査の結果 全対象者調査で把握した再犯ありの者のうち,特に,調査対象事件(平成 28 年1月1日から同年3 月31日までの間に,第一審で詐欺により有罪判決の言渡しを受け,その後,有罪判決が確定した事件 をいう。本章第1節参照)により全部執行猶予の判決の言渡しを受けた者であり,かつ,同年4月から 31年3月までの約3年間に再犯に及び,再び有罪判決の言渡しを受けた者(最終的に有罪の裁判が確 定した者に限る。 )を対象として,裁判書等の資料に基づき,再犯状況に関する調査を行った。本調査 では,調査対象事件の第一審判決言渡し後に一定期間の社会内生活を送ることが想定され,調査期間の 確保も可能となる全部執行猶予者に焦点を当て,再犯者の特徴に関する示唆を得る目的で調査を実施し た。再犯調査における「再犯」とは,調査対象事件の判決言渡し後に新たに行った犯罪により,再び罰 金以上の刑で有罪判決の言渡しを受けた事件をいう(過失運転致死傷,道路交通法違反等による事件を 含む。 ) 。 再犯調査の対象者の総数は,84 人であった。性別を見ると,男性 79 人(94.0%) ,女性5人(6.0%) であり,9割以上は男性であった。再犯の犯行時の年齢層を見ると,30 歳未満の者(38 人,45.2%)の 構成比が最も高く,次いで,30 歳代の者(18 人,21.4%) ,40 歳代の者(14 人,16.7%) ,50~64 歳の 者(12 人,14.3%) ,65 歳以上の者(2人,2.4%)の順であった。調査対象事件の刑の種類を見ると, 保護観察付全部執行猶予であった者が 21人(25.0%) ,単純執行猶予であった者が 63 人(75.0%)で あった。調査対象事件の手口(複数の事件で異なる手口がある者を除く。 )を見ると,無銭飲食等(22人, 27.8%)の構成比が最も高く,次いで,特殊詐欺(17 人,21.5%) ,通帳等・携帯電話機の詐取(16 人, 20.3%)の順であった。調査対象事件の被害回復・示談の状況(既遂事件を行った者に限り,被害回復・ 示談の状況が不詳の者を除く。 )を見ると,被害回復・弁償あり(一部の被害回復・弁償を含む。 )の構成 比(16 人,34.8%)は,全対象者の構成比(64.6%。8-5-2-8 図①参照)と比べて顕著に低く,示談あ り(一部の被害者との間における示談を含む。 )の構成比(7人, 38.9%)も, 全対象者の構成比(44.8%。 8-5-2-8 図②参照)と比べて低かった。再犯以前の前科の回数(自由刑に限る。調査対象事件を含む。 ) を見ると,2回以上の構成比が 25.0%(21人)であり,このうち,調査対象事件以外に詐欺の前科を有 428 令和 3 年版 犯罪白書

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する者は4人であった。再犯期間(不詳の者を除く。 )を見ると,1年未満(37 人,49.3%)の構成比が 約5割を占めて最も高く,次いで,1年以上2年未満(19 人,25.3%) ,2年以上3年未満(18 人, 24.0%)の順であった。 (1)再犯の事件態様 再犯調査対象者の再犯の罪名(重複計上による。)は,8-5-4-6 図のとおりである。窃盗(32.1%) の割合が最も高く,次いで,詐欺(27.4%),傷害・暴行,住居侵入(いずれも 7.1%),薬物犯罪 (6.0%)の順であった。殺人,強盗及び性犯罪は,いずれも該当者がいなかった。 さらに,再犯の罪名が詐欺であった者(23 人)について,犯行の手口別構成比を見ると,無銭飲 食等(34.8%,8人)の構成比が最も高く,次いで,特殊詐欺(21.7%,5人)であった。再犯の 事件数を見ると,1件の者の構成比が最も高く(65.2%,15 人),2件以上の者は全て同じ手口を反 復したものであった。また,調査対象事件と同じ手口であった者の人員は,13 人(56.5%)であり, このうち,7人が無銭飲食等であり,3人が特殊詐欺であった。 8-5-4-6 図 再犯調査対象者 再犯の罪名 0 詐 窃 10 20 欺 27.4 (23) 盗 32.1 (27) 傷害・暴行 住居侵入 7.1 (6) 薬物犯罪 領 3.6 (3) 文書偽造 3.6 (3) (1) 詐欺事犯者の実態と処遇 6.0 (5) 器物損壊 第8 編 7.1 (6) 横 (%) 40 30 1.2 そ の 他 注 1 法務総合研究所の調査による。 2 各項目に該当した者(重複計上による。)の比率である。 3 「薬物犯罪」は,覚醒剤取締法違反等の違法薬物に関連する犯罪をいう。 4 「横領」は,遺失物等横領を含む。 5 ( )内は実人員である。 (30) 35.7 犯罪白書 2021 429

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(2)再犯時の生活状況 再犯調査対象者の居住状況(再犯の判決時による。)別構成比は,8-5-4-7 図のとおりである。住 居なしの者の構成比は,約2割であり,全対象者の住居なしの者の構成比(19.9%。8-5-2-5 表参照) と同程度であった。調査対象事件の刑の種類別に住居なしの者の構成比を見ると,保護観察付全部執 行猶予であった者(28.6%)は,単純執行猶予であった者(15.9%)と比べて高かった。 第5章 特別調査 8-5-4-7 図 総 注 数 (84) 再犯調査対象者 居住状況別構成比 住居なし 住居あり 19.0 81.0 1 法務総合研究所の調査による。 2 再犯の判決時の居住状況による。 3 ( )内は,実人員である。 第4節 再犯調査対象者の就労状況(再犯の判決時による。)別構成比は,8-5-4-8 図のとおりである。無 職の者の構成比は,約7割であり,全対象者の無職の者の構成比(58.5%。8-5-2-5 表参照)と比べ 再犯に関する調査の結果 て高かった。調査対象事件の刑の種類別に無職の者の構成比を見ると,保護観察付全部執行猶予で あった者(76.2%)は,単純執行猶予であった者(66.7%)と比べて高かった。 8-5-4-8 図 総 注 再犯調査対象者 就労状況別構成比 数 (84) 無職 有職 69.0 31.0 1 法務総合研究所の調査による。 2 再犯の判決時の就労状況による。 3 「無職」は,家事従事者を含み,「有職」は,学生・生徒を含む。 4 ( )内は,実人員である。 (3)再犯の動機・理由 再犯調査対象者の再犯の動機・理由(重複計上による。 )を見ると,「金ほしさ」の割合(14 人, 63.6%)が最も高く,次いで, 「生活困窮」(9人,40.9%),「軽く考えていた」(8人,36.4%)の 順であった。再犯の犯行の手口別に見ると,再犯の動機・理由に「金ほしさ」があった者は,特殊詐 欺の構成比が最も高く(5人,35.7%) , 「生活困窮」があった者は,無銭飲食等の構成比が最も高 かった(6人,66.7%) 。また,再犯の動機・理由に「金ほしさ」があった者のうち,調査対象事件 の動機・理由に「金ほしさ」があった者は3割に満たなかった一方,再犯の動機・理由に「生活困 窮」があった者のうち半数以上は,調査対象事件の動機・理由に「生活困窮」があった(全対象者の 調査対象事件の動機・理由は,8-5-2-9 図参照)。 430 令和 3 年版 犯罪白書

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6章 第 おわりに 本章では,詐欺事犯に関する各種統計や特別調査により明らかになった傾向・特徴と課題を整理 し,今後の再犯防止対策等を検討する上で留意すべきと思われる点について考察する。 第1節 1 詐欺事犯の動向等 認知・検挙状況等 刑法犯の認知件数が平成 14 年をピークに減少の一途をたどっているのに対し,詐欺の認知件数は, 15 年から大きく増加し,17 年に約8万 6,000 件に達した後,減少と増加を繰り返したものの,近年 も3万件を超える水準を維持している。詐欺の認知件数は,刑法犯認知件数全体やその7割近くを占 める窃盗とは異なる動きを示している。このような詐欺の認知件数の動きは,後述する特殊詐欺の認 知件数の動きと似通っている(なお,特殊詐欺については,その定義上,詐欺のみならず恐喝又は窃 盗として計上されるものも含まれ得ることに留意する必要がある。)。詐欺の認知件数を手口別に見る と,比較的単純な手口である「借用」及び「無銭」については,最近 20 年間で大きく減少している。 近年,刑法犯の検挙人員に占める高齢者の比率(高齢者率)の上昇が進んでいる。詐欺の高齢者率も 上昇傾向にはあるが,令和2年の詐欺の高齢者率は,刑法犯の検挙人員総数の高齢者率と比べて顕著 に低い。詐欺の検挙人員を年齢層別に見ると,20 歳代の者の構成比が上昇傾向にあり,同年には約 3割に達している。これには,後述のとおり,特殊詐欺の検挙人員の約半数を 20 歳代の者が占めて 第8 編 いることも影響しているものと思われる。詐欺の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,平 成 27 年以降低下し続けているが,令和2年でも 15.0%を占めており,刑法犯の検挙人員総数に占め る暴力団構成員等の比率と比較すると顕著に高い。共犯関係では,同年の詐欺の検挙事件の共犯率 は,検挙事件総数の共犯率を大きく上回り,特に,4人以上の組によるものや共犯人数不明のものの 詐欺事犯者の実態と処遇 構成比が高い。 特殊詐欺は,平成 15 年夏頃から目立ち始め,16 年には認知件数が約2万 5,700 件に達し,その後 も 20 年までは2万件前後で推移した。同年に「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」が警察庁及び 法務省により共同で策定・公表されるなど,対策が強化されたこともあり,一旦は大きく減少した が,再び増加し,近年も1万件を超える水準で推移している。特殊詐欺の検挙率は,近年上昇してい るが,令和2年でも 54.8%であり,特殊詐欺が組織的に敢行されるものであることに鑑みると,特 殊詐欺を実行する犯罪組織が活動し続けていることが示唆される。特殊詐欺の認知件数の推移を類型 (8-3-1-16 表参照)別に見ると,平成 17 年及び 18 年を除き,オレオレ詐欺(令和2年は預貯金詐欺 を含む。 )が最も多いが,融資保証金詐欺が平成 17 年,還付金詐欺が 20 年及び 28 年,架空料金請求 詐欺が 29 年をそれぞれピークに増減するなどの動きを見せており,特殊詐欺を実行する犯罪組織が, 社会情勢や特殊詐欺撲滅のために講じられた各種対策(コラム9)の内容等に応じ,成功する可能性 が高いと思われる方法を選択して犯行を継続していることを示唆している。26 年以降の特殊詐欺(特 殊詐欺4類型(本編第3章第1節1項(3)イ(ア)参照)に限る。)の検挙人員の年齢層別構成比 の推移を見ると,30 歳未満の若年者層の構成比が 62%台から 73%台の間で推移する一方,65 歳以 上の高齢者の構成比は 1.0%以下にとどまっている。 犯罪白書 2021 431

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2 処理状況等 検察・裁判では,詐欺(刑法 246 条及び 248 条に規定する罪に限る。)の起訴率は,平成 22 年に 60%を下回った後は,50%台で推移している。詐欺の起訴人員を犯行時の年齢層別に見ると,16 年 以降は 20 歳代の者が一貫して最も多く,令和2年は全体の4割弱を占めている。詐欺の全部執行猶 第6章 おわりに 予率は,平成 16 年以降 50%台で推移しており,令和2年は 52.8%と,全体の地方裁判所における 有期懲役・禁錮の全部執行猶予率よりも低い。 矯正では,最近 20 年間の動きを見ると,詐欺の入所受刑者では,30 歳未満の者の構成比が上昇傾 向にある。入所度数別に見ると,初入者が占める割合が男女共に一貫して最も高く,男性では,平成 22 年以降,入所度数が3度以上の者の人員が減少し続けている。しかしながら,令和2年の詐欺の 入所度数3度以上の男性入所受刑者(315 人)のうち,約6割が5度以上の者であり,10 度以上の 者も 58 人いた。 第1節 更生保護では,平成 22 年以降,詐欺について,仮釈放者の人員がおおむね横ばいで推移する一方, 満期釈放者等の人員が減少傾向にあったことから,仮釈放率が上昇傾向にあり,令和2年の仮釈放率 は,出所受刑者総数の仮釈放率よりも顕著に高かった。詐欺の保護観察開始人員のうち,保護観察付 詐欺事犯の動向等 全部・一部執行猶予者は,おおむね減少傾向にあり,全部執行猶予者の保護観察率も,平成 14 年を ピークとして低下傾向にある。 3 少年による詐欺 少年による詐欺の検挙人員は,平成 16 年に大きく増加し,18 年の 1,224 人を最多に,近年はおお むね 800 人前後で推移している。年齢層別に見ると,26 年以降は,年長少年が最も多い。特殊詐欺 (特殊詐欺4類型に限る。)の検挙人員を犯行時の年齢層別に見ると,少年の構成比は,26 年以降, おおむね2割前後で推移しており,その半数以上を年長少年が占めている。令和2年における詐欺の 少年保護事件について,家庭裁判所終局処理人員を見ると,その4割弱が保護観察,2割弱が少年院 送致であり,検察官送致(刑事処分相当)は 2.1%にとどまった。少年院入院者は,総数では減少傾 向にあるが,詐欺の少年院入院者の人員は,平成 23 年から 27 年まで増加し,一旦は減少したもの の,30 年には 336 人に達して同年の少年院入院者総数の 15.9%を占めた。詐欺の保護観察処分少年 の人員は,18 年及び 20 年をピークに,その後増減を繰り返していたが,29 年及び 30 年に大きく増 加した後,令和元年から減少している。詐欺の少年院仮退院者の人員は,平成 24 年から 28 年まで増 加した後,29 年に減少し,令和元年に大きく増加したが,2年には減少している。 4 再犯・再非行 詐欺の検挙人員の再犯者率及び少年の詐欺検挙人員の再非行少年率は,いずれも平成 20 年以降上 昇傾向を示した後,令和元年以降低下しているが,2年においても,前者は 58.1%,後者は 54.4% であり,刑法犯検挙人員総数又は少年の刑法犯検挙人員総数よりも高い。 一方,詐欺の入所受刑者人員の再入者率は,男性では,平成 13 年からおおむね低下傾向にあり, 28 年以降横ばいで推移しているが,令和2年においても,34.9%であり,入所受刑者全体の再入者 率よりも低い。入所受刑者を年齢層別に見ると,初入者における 30 歳未満の者及び 30 歳代の者の各 構成比は,再入者よりも一貫して高い上,前者については,平成 13 年から令和2年にかけて約2倍 に上昇している。詐欺の出所受刑者の2年以内再入率について,平成 12 年と令和元年を比較すると, 満期釈放者等では 31.2pt,仮釈放者では 10.3pt それぞれ低下している。平成 28 年の詐欺の出所受刑 者の5年以内再入率を出所受刑者全体と比較すると,満期釈放者等が仮釈放者よりも相当に高いこ 432 令和 3 年版 犯罪白書

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と,入所度数が3度以上の者が2度の者よりも相当に高いことなどの特徴がある。また,年齢層別で は,30 歳未満の者の5年以内再入率は,他の年齢層と比較して最も低い。 5 詐欺被害者 平成 23 年以降,女性を被害者とする詐欺の認知件数が男性を被害者とするものを上回って推移し ている。詐欺の認知件数に占める被害者が高齢者であるものの構成比は,特殊詐欺の認知件数が増加 する以前の 13 年は,総数では 17.6%,女性では 25.2%であったが,令和2年は,総数では 47.0%, 女性では 58.3%となっている。この動きは,後述する特殊詐欺の影響を反映したものと思われる。 令和2年における特殊詐欺の認知件数について,被害者の男女別構成比を見ると,男性が約4分の 1,女性が約4分の3を占めており,年齢層別に見ると,65 歳以上の高齢者が被害者であるものが 全体の約7分の6を占めている。特に多いのが,80 歳以上の女性が被害者である事件であり,同年 の特殊詐欺の認知件数の 36.8%を占めた。特殊詐欺による実質的な被害総額は,平成 26 年には約 566 億円に達し,その後減少し続けているが,令和2年でも約 285 億円(認知件数(未遂を含む。) 1件当たり約 211 万円)に上っている。 第2節 1 特殊詐欺対策や詐欺事犯者処遇の経緯と現状 特殊詐欺撲滅に向けた取組 特殊詐欺については,架空・他人名義の預貯金口座や契約者を特定できない携帯電話が犯行ツール として利用されることが多かったため,特殊詐欺が社会問題化してから間もない平成 16 年以降,預 第8 編 貯金口座や携帯電話の不正な利用を防止するための法整備がなされた。特殊詐欺を実行する犯罪組織 が,預貯金口座や携帯電話等の不正利用の防止に向けた規制をかいくぐるように,その手口等を多様 化・巧妙化させていることから,官民を挙げて,その撲滅に向けた取組を進めており,近年も,「オ レオレ詐欺等対策プラン」の下,携帯電話や預貯金口座の不正利用の防止,金融機関等の事業者との 詐欺事犯者の実態と処遇 連携,国民から寄せられた情報の活用,広報啓発活動の推進等の取組を進めている。 2 再犯防止に向けた取組 刑事施設においては,詐欺及び特殊詐欺事犯受刑者について,全国的に統一された標準的なプログ ラムは策定されていないが,一般改善指導の一つとして,特殊詐欺事犯受刑者に対する再犯防止指導 が行われている。同指導では,被害者の心情及び事件の重大性を認識させ,しょく罪の方法を考えさ せるとともに,再犯を防止するため,事件に至るまでの自己の問題点等を振り返らせ,健全な金銭感 覚及び職業観を身に付けさせることを目的として作成された教材が活用されている。少年院において も,各施設の実情に応じ,特殊詐欺再非行防止指導の取組が行われている。コラム 12 では,2か所 の少年院での指導実践例を紹介しているが,いずれもその指導の中心として,「罪障感の醸成」が挙 げられている。 更生保護においては,詐欺事犯者について,他の保護観察対象者と同様に,生活環境の調整や保護 観察が実施されているが,令和3年1月から,保護観察処分の対象となった事案に特殊詐欺への関与 が含まれる者やそれ以外の者で,現に特殊詐欺グループへの関与が認められる者を「特殊詐欺類型」 の保護観察対象者に認定し,最新の知見に基づく,より効果的な処遇が行われるようになっている。 犯罪白書 2021 433

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第3節 特別調査から判明した詐欺事犯者の特徴 本編第5章の特別調査の結果,詐欺事犯者について,その特性や再犯状況等に関し,幾つかの特徴 が見いだされた。 第6章 おわりに 1 全対象者の特徴 調査対象事件(全対象者(特別調査における調査対象者の実人員 1,343 人)が,全国各地の地方裁 判所において,平成 28 年1月1日から同年3月 31 日までの間に,詐欺により有罪判決の言渡しを受 け,その後,有罪判決が確定した事件)を犯行の手口別に見ると,特殊詐欺が総数の3分の1を占め て最も多く,次いで,特殊詐欺を含む他の犯罪のツールとなり得る通帳等・携帯電話機の詐取 (13.7%) ,保険金詐欺(8.1%),無銭飲食等(7.8%)の順であった。特殊詐欺事犯者の特徴につい 第3節 ては,次項で更に詳しく触れることとするため,この項では,他の手口と対照する中で,必要な範囲 でその特徴について触れることとする。 調査対象事件の約半数が共犯による事件であった。しかしながら,犯行の手口別に見ると,無銭飲 特別調査から判明した詐欺事犯者の特徴 食等のほとんど,通帳等・携帯電話機の詐取の約4分の3が単独犯であった。これとは対照的に,特 殊詐欺は,ほぼ全件が共犯事件であり,4人以上の組によるものが約3割を占めており,特殊詐欺が 組織的に実行されていることが裏付けられている。もっとも,特殊詐欺については,共犯者がいる事 件の約9割で,共犯者に氏名不詳の者が含まれており,調査対象事件の判決が言い渡された段階で も,特殊詐欺の犯行グループの全容が解明されるには至っていなかったことがうかがわれる。全対象 者の属性を犯行の手口別に見ると,特殊詐欺では,98.0%が男性であり,30 歳未満(56.6%)及び 30 歳代の者(28.2%)が大多数を占め,65 歳以上の者は 0.5%にとどまった。また,特殊詐欺は, 無職の者が 63.7%,住居を有する者が 84.8%,前科を有しない者が 63.6%を占めた。これとは対照 的に,無銭飲食等は,50~64 歳の者(34.7%)の構成比が最も高く,65 歳以上の者も 11.1%いた。 無銭飲食等は,無職の者が 92.3%,住居を有する者が 39.6%,前科を有しない者が 16.0%であった。 また,無銭飲食等については,前科を有する者に限ると,同種前科を有する者が6割強,同種前科5 回以上を有する者が2割弱を占めた。全対象者について,調査対象事件の詐欺被害額別構成比を見る と,特殊詐欺は,100 万円以上が7割強,1,000 万円以上が4割弱と,被害額が高額に及ぶものの割 合が高い一方,無銭飲食等は,10 万円未満のものがほとんどを占める。被害回復・弁償について見 ると,全部の被害回復・弁償を行った者の構成比は,全部執行猶予者では 40.1%であり,全対象者 (26.0%)よりも高かったが,全対象者の約3分の1,全部執行猶予者の約4分の1は,被害回復・ 弁償をしておらず,裁判段階において,詐欺被害者の被害回復が十分になされていない実態が確認さ れた。犯行の動機・理由を見ると,犯行の手口別及び年齢層別共に,総数では「金ほしさ」が最も割 合が高かったが,犯行の手口別では無銭飲食等,年齢層別では 50~64 歳の者及び 65 歳以上の者に ついて,それぞれ「生活困窮」の割合が高かった。また,特殊詐欺については,「友人等からの勧誘」 の割合も高かった。全対象者に対する有期の懲役の科刑状況を犯行の手口別に見ると,通帳等・携帯 電話機の詐取及び保険金詐欺で,全部執行猶予の構成比が高かった。全部実刑の者の刑期を見ると, 特殊詐欺では2年以上3年以下の者の構成比が最も高く,無銭飲食等では1年以上2年未満の者の構 成比が最も高い。また,全部実刑の刑期が3年を超える者が,特殊詐欺では3割強であったのに対 し,無銭飲食等では 2.1%にとどまった。 全対象者調査の結果から,特殊詐欺事犯者については,若年層の男性が,住居は有するものの,無 職であることを背景に,金ほしさや友人等からの勧誘を契機に犯行に及び,前科は有しないものの, 被害額が高額であることもあり,懲役2~5年の全部実刑,あるいは,懲役2~3年の全部執行猶予 に処せられる者が多いという実像が,無銭飲食等詐欺事犯者については,中年層の男性が,不安定な 434 令和 3 年版 犯罪白書

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居住状況や就労状況を背景に,生活困窮から犯行に及び,被害額は高額ではないものの,同種前科を 有することもあり,懲役1~3年の全部実刑に処せられる者が多いという実像が,それぞれ浮き彫り にされている。 2 特殊詐欺事犯者調査の結果 (1)特殊詐欺事犯者(確定記録調査対象者)の特徴 確定記録調査対象者(特殊詐欺事犯者(全対象者の中で,犯行の手口に特殊詐欺が含まれている 者)のうち東京地方裁判所,横浜地方裁判所,さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡 しを受けた者)に関し,その行った特殊詐欺事件を犯行類型別に見ると,オレオレ詐欺が約6割を占 めて最も多かった。架け子が詐称した身分については,家族・親族を詐称した事件が約6割であった が,企業等の社員・従業員も4割弱に上っていた。特殊詐欺は,役割分担した上で組織的に敢行され るが,確定記録調査対象者を役割類型別に見ると,「主犯・指示役」9.7%,「架け子」28.1%,「犯 行準備役」15.8%,「受け子・出し子」46.4%であった。役割類型別の特徴を見ると,「架け子」,「犯 行準備役」及び「受け子・出し子」は,いずれも 30 歳未満の者が過半数を占めた一方,「主犯・指示 役」は,30 歳代の者が過半数を占めた。いずれの役割類型でも,前歴を有する者が6割を超えたが, 同種のものを含む前歴を有する者の構成比は,最も高い「犯行準備役」でも2割強であった。また, いずれの役割類型でも,保護処分歴を有する者が3割弱から4割弱を占めた。暴力団加入状況を見る と,構成員,元構成員又は準構成員・周辺者の構成比は,「主犯・指示役」及び「犯行準備役」では 半分弱を占めた上, 「架け子」及び「受け子・出し子」でも1割前後を占めており,暴力団が,特殊 詐欺を実行する犯罪組織,とりわけ犯行を指示する立場に深く関与しているという実態が垣間見え る。特殊詐欺の事件数では, 「主犯・指示役」及び「架け子」では,5件以上の者がいずれも4割強 第8 編 を占めた一方, 「犯行準備役」及び「受け子・出し子」では,1件の者がそれぞれ 45.2%,54.9%で あった。特殊詐欺に及んだ動機・理由では,いずれの役割類型についても,「金ほしさ」及び「友人 等からの勧誘」の割合が突出して高かったが,「主犯・指示役」では「所属組織の方針」が,「受け 子・出し子」では「軽く考えていた」,「だまされた・脅された」及び「生活困窮」の割合が,それぞ 詐欺事犯者の実態と処遇 れ他の役割類型よりも高かった。特殊詐欺に及んだ背景事情については,いずれの役割類型も,「無 職・収入減」,「不良交友」及び「借金」の割合が高く,特に,「受け子・出し子」では,「無職・収入 減」が 70.7%と顕著に高かった。共犯者がいる確定記録調査対象者の報酬については,いずれの役 割類型でも,報酬の有無が不詳の者を除き,報酬があった者の構成比が9割を超えた。その報酬額に ついては,「主犯・指示役」では,100 万円以上の者の構成比が4割強であったのに対し,「受け子・ 出し子」では,100 万円以上の者の構成比は 2.4%にとどまり,約束のみで実際には報酬を受け取っ ていない者が過半数に上っている。 「受け子・出し子」は,金ほしさから特殊詐欺に及んだ者が多い が,実際には,期待したとおりの報酬を得るに至る前に検挙される例が多いものと推測される。 確定記録調査対象者の有期の懲役の科刑状況別構成比を見ると,総数では,全部実刑の者が約3分 の2を占めた。特殊詐欺の事件数別に見ると,全部実刑の者の構成比は,1件でも3分の1を超えて おり,2件,3件,4件及び5件以上では,70%台前半から 90%台前半に及ぶ。全部実刑の者の刑 期は,1件から4件までは,いずれも2年以上3年以下の者の構成比が高く,5件以上では,3年を 超え4年以下の者の構成比が最も高い。5件以上では,5年を超え 10 年以下の者も4分の1を占め た。全部執行猶予の者の刑期については,2年未満が2人(いずれも事件数1件のもの)いるのみで あり,その余は2年以上3年以下であった。役割類型別に見ると,全部実刑の者の構成比は, 「主 犯・指示役」が最も高く,次いで, 「架け子」, 「犯行準備役」,「受け子・出し子」の順であった。5 年を超え 10 年以下の全部実刑の者及び4年を超え5年以下の全部実刑の者は,「主犯・指示役」, 「架 け子」及び「犯行準備役」で,それぞれ2割前後を占めた。 犯罪白書 2021 435

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(2)特殊詐欺事件の被害者の特徴 特殊詐欺事件の被害者について見ると,65 歳以上の高齢者が9割弱であり,特に,75 歳以上の者 が6割弱を占めた。事件当時の被害者の居住状況を見ると,65~69 歳の者及び 70 歳以上の者は, それぞれ約3分の1が単身居住であり,前者は約3分の1,後者は約4分の1が,同居相手が配偶者 のみであった。犯人グループから被害者への最初の連絡方法は,9割弱が固定電話であった。被害者 第6章 おわりに が相談(被害者が,犯人グループからの連絡を受けてから金品を詐取されるまでの間に,連絡を受け た内容を誰かに話すこと)した事件は,既遂事件では 15.7%であったが,未遂事件では 81.0%に 上った。既遂事件は,約7割が「同居の家族・親族」に相談したが,金品を詐取されるに至ってい た。未遂事件では,3割弱が「同居していない家族・親族」に相談しており,「金融機関職員」に相 談した者も 7.4%であった。また,特殊詐欺事件(未遂事件)について,最初に詐欺に気付いた者を 見ると,被害者自身が過半数を占めていたが,「同居の親族・家族」(14.0%),「金融機関職員」 (12.0%)及び「同居していない家族・親族」 (9.0%)であった事件も一定数存在した。 第3節 3 詐欺事犯者の再犯状況と再犯に関連する要因 特別調査から判明した詐欺事犯者の特徴 (1)全対象者調査 全対象者調査では,全対象者のうち,調査対象事件の第一審の判決言渡日から4年間に再び有罪判 決の言渡しを受けた者の有無等を見た。再犯の有無を男女別に見ると,女性よりも男性の方が,再犯 ありの構成比は高かった。年齢層別では,再犯ありの構成比は,65 歳以上の者が最も高かったが, いずれの年齢層も傾向に大きな差はなかった。前科を有する者は,前科を有しない者と比較して,再 犯ありの構成比が顕著に高かった。出所受刑者の再犯ありの構成比は,平均再犯可能期間が約半分で あるにもかかわらず,単純執行猶予者よりも高かった。保護観察付全部執行猶予者の再犯ありの構成 比は,単純執行猶予者と比べて顕著に高かった。年齢層別に見ると,出所受刑者では,50~64 歳の 者及び 65 歳以上の者は,いずれも約4人に1人が再犯に及んでいた。全部執行猶予者では,再犯あ りの構成比が最も高いのは 30 歳未満の者(17.5%)であった。なお,詐欺の前科の有無について見 ると,詐欺の前科を有する者は,出所受刑者では,再犯ありの総数の5割以上であったが,全部執行 猶予者では,再犯ありの総数の1割弱であった。犯行の手口別では,再犯ありの構成比は,無銭飲食 等が5割を超えた一方,特殊詐欺は約1割であった。無銭飲食等では,再犯の判決罪名に詐欺を含む 者が約3割に及んだ。全部執行猶予者について,その再犯期間に係る累積再犯率を見ると,保護観察 付全部執行猶予者は,調査対象事件の第一審判決後 13 か月(27.7%)まで急激に上昇し,その後は 上昇のペースがやや緩やかになり,36 か月(40.4%)を超えると横ばいになっていた一方,単純執 行猶予者については,最初から上昇のペースが緩やかであった。無銭飲食等の全部執行猶予者は,調 査対象事件の第一審判決後2か月までは再犯に及んだ者はいなかったものの,その後,13 か月 (39.5%)までの間に,累積再犯率が急激に上昇していた。 (2)全部執行猶予者に対する再犯調査 再犯調査対象者(全対象者調査で把握した再犯ありの者のうち,調査対象事件により全部執行猶予 の判決の言渡しを受けた者であり,その後,約3年間に再犯に及び,再び有罪判決の言渡しを受けた 者)の属性を見ると,9割以上は男性であった。再犯の犯行時の年齢層別では,30 歳未満の者が最 も多かった,調査対象事件について見ると,刑の種類では,保護観察付全部執行猶予が4分の1,単 純執行猶予が4分の3であった。犯行の手口では,無銭飲食等が最も多く,特殊詐欺がこれに続い た。再犯調査対象者については,調査対象事件で被害回復・弁償や示談を行っていた者の構成比が, 全対象者と比べて低かった。再犯調査対象者の再犯の罪名(重複計上による。)は,窃盗(32.1%) の割合が最も高く,詐欺(27.4%)がこれに続いた。再犯の罪名が詐欺であった者の犯行の手口別 436 令和 3 年版 犯罪白書

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構成比では,無銭飲食等(34.8%)が最も高く,特殊詐欺(21.7%)がこれに続いた。調査対象事 件と再犯が同じ手口であった者の人員(13 人)のうち,7人が無銭飲食等,3人が特殊詐欺であっ た。再犯調査対象者のうち,約2割が住居なしであり,約7割が無職であった。再犯調査対象者が再 犯に及んだ動機・理由は,「金ほしさ」の割合が最も高く,次いで,「生活困窮」,「軽く考えていた」 の順であった。再犯の動機・理由に「金ほしさ」があった者は,特殊詐欺の構成比が最も高く,「生 活困窮」があった者は,無銭飲食等の構成比が最も高かった。 第4節 特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇の在り方 最後に,本特集を通じ明らかになった傾向・特徴を踏まえ,特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇・再 犯防止対策の在り方について検討する。 1 特殊詐欺の撲滅に向けた取組 (1)徹底的な取締りの必要性 特殊詐欺の撲滅のためには,現実に発生する特殊詐欺事犯を検挙し,特殊詐欺を実行する犯罪組織 を撲滅することが肝要である。警察では,特殊詐欺が社会問題化するようになった平成 15 年以降, 逐次捜査体制を強化しながら,特殊詐欺事犯の取締りに当たっている。現在も,「オレオレ詐欺等対 策プラン」の下, 「犯罪者グループ等に対する多角的・戦略的取締りの推進」,「犯行拠点の摘発等に よる実行犯の検挙及び突き上げ捜査による中枢被疑者の検挙の推進」及び「預貯金口座や携帯電話の 不正売買といった特殊詐欺を助長する犯罪の検挙等の推進」に当たっているところであり,これらの 取組は,今後も重要である。特に,特殊詐欺を実行する犯罪組織にとって,預貯金口座や携帯電話 第8 編 は,特殊詐欺の犯行ツールとして欠かせないものである。今回の特別調査(全対象者調査)でも,調 査対象事件総数の 13.7%を通帳等・携帯電話機の詐取が占めていた。特殊詐欺の撲滅のためには, このような特殊詐欺を助長し得る手口については,詐欺のほかにも,携帯電話不正利用防止法,犯罪 収益移転防止法等の各種法令を駆使して取締りに当たる必要がある。また,今回の特別調査(全対象 詐欺事犯者の実態と処遇 者調査)では,特殊詐欺事件の約9割について,共犯者に氏名不詳の者が含まれていた。これは,特 殊詐欺に加担しておきながら検挙を免れている者がいるということを意味する。主犯・指示役を検挙 し,犯罪組織を撲滅するためには,通常の突き上げ捜査に加え,刑事訴訟法等の一部を改正する法律 (平成 28 年法律第 54 号)により導入・拡充された諸制度(通信傍受の対象範囲の拡大及び手続の合 理化・効率化,刑事免責制度等)の活用等が重要である。さらに,今回の特別調査(確定記録調査) では,特殊詐欺を実行する犯罪組織には暴力団が深く関与していることが示唆された。暴力団等の犯 罪組織にとって,特殊詐欺が違法な活動を行うための資金を獲得するための重要な手段となっている 実態がうかがわれる。特殊詐欺撲滅の観点からも,暴力団対策法,いわゆる暴力団排除条例,組織的 犯罪処罰法等を駆使した暴力団対策や組織犯罪対策,刑事施設における暴力団離脱指導等の取組が重 要である。 (2)特殊詐欺を実行する犯罪組織への参加を食い止めるための方策 特別調査(確定記録調査)の結果,特殊詐欺事犯者については,調査対象事件において,種々の役 割を果たしていることが示された。特殊詐欺事犯者の役割類型の中で最も多かったのは,「受け子・ 出し子」であったが,これには,「受け子」が,被害者の自宅等に現金等を受け取りに行く役割,「出 し子」が,防犯カメラが設置されていることが多い ATM 等から現金を引き出す役割であることから, 他の役割類型よりも検挙される可能性が高いことが影響していると思われる。「受け子・出し子」は, 特殊詐欺を実行する犯罪組織が現金を獲得するために必要不可欠な存在であり,「受け子・出し子」 犯罪白書 2021 437

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として犯罪組織へ参加する者を根絶することは,特殊詐欺の撲滅に向けた一つの方策となり得る。特 別調査(確定記録調査)の結果, 「受け子・出し子」については,特殊詐欺に及んだ背景事情として 「無職・収入減」がある者,動機・理由として「金ほしさ」がある者の割合が高く,「受け子・出し 子」が,経済的利益を求めて犯行に加担する者が多いことがうかがえる。「受け子・出し子」の約9 割の者が報酬を受け取るか報酬を受け取る約束をしていたが,実際に報酬を得た者は半分に満たず, 第6章 おわりに 報酬を得られたとしても高額な報酬を得た者はまれであった。それどころか,犯罪組織では従属的な 立場である「受け子・出し子」であっても,その約半数が全部実刑となっている。「受け子・出し子」 として特殊詐欺を実行する犯罪組織に参加する可能性がある者に対しては,「受け子・出し子」の役 割を果たした後に待っている帰結に関する具体的な情報を提供し,「受け子・出し子」として特殊詐 欺に加わることが,決して「割に合う」犯罪ではないと認識させることが,これらの者が特殊詐欺に 加わることを防止する上で有効であると思われる。その機会としては,一般的な周知広報活動の場面 に加えて, 「受け子・出し子」の約6割を 30 歳未満の若年者層が占めている上,約3割が保護処分歴 第4節 を有していたことを考えると,保護処分に係る罪名が詐欺であるか否かに限らず,保護観察や少年院 における指導の一環として行う余地もあるのではないかと思われる。また,コラム 10 で,実際に特 殊詐欺被害に遭った方の声を紹介している。そこでは,特殊詐欺の被害者が,経済的な被害だけでな 特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇の在り方 く,長きにわたり,怒りや悲しみ等の精神的被害を受け続けているという実態が明らかになってい る。一方で,コラム 11 及び 12 から明らかなように,実際に特殊詐欺を行って刑務所に入所した者や 少年院に入院した者の中には,被害者の受けた経済的・精神的被害の大きさに思い至っていない者が 少なくない。 「受け子・出し子」として特殊詐欺を実行する犯罪組織に参加する可能性がある者に対 しては,特殊詐欺の被害者が実際に受け得る経済的・精神的な被害の大きさを具体的に認識させるこ とも,これらの者が犯罪組織に参加するのを食い止めることに寄与するものと期待される。 以上の点は,「受け子・出し子」以外の役割類型の者についても,基本的に当てはまると思われる。 特に, 「受け子・出し子」に続いて多かった「架け子」については,「受け子・出し子」よりも,実際 に報酬を得た者の構成比が高い上,高額の報酬を得ている者の構成比も高い。しかしながら,「架け 子」の8割強が全部実刑となり,その刑期も「受け子・出し子」よりも総じて長いものであることを 考えれば, 「割に合う」ものではないという点では同じである。「架け子」については,経済的な動 機・理由や背景事情に加え,「不良交友」を背景事情とする者,「友人等からの勧誘」を動機・理由と する者の割合が高かった。「架け子」も約6割が 30 歳未満の若年者であり,3割強が保護処分歴を有 していることを考えれば,不良交友関係を有する者に対しては,保護処分の段階で,その解消に向け た指導や,勤労意欲や能力を高めるための就労支援等を行い,あるいは,円滑に就職できるような職 業訓練を実施するといった方策が,特殊詐欺を実行する犯罪組織への参加を予防することにもつなが るものと思われる。 (3)特殊詐欺の被害を防止するための方策 特殊詐欺が社会問題となって以降,各種の広報啓発活動が行われ続けており,現在も,「オレオレ 詐欺等対策プラン」の下で, 「幅広い世代に対して家族の絆の重要性等を訴える広報啓発活動の展開」, 「あらゆる機関・団体・事業者等のウェブサイト,SNS 等による注意喚起」,「高齢者と接する機会の 多い団体・事業者等による注意喚起」及び「子供や孫世代を対象とした職場や学校における広報啓発 の推進」が進められている。そのような中,令和2年においても,特殊詐欺の認知件数は,1万件を 上回り,実質的な被害総額は,約 285 億円に達している。同年の特殊詐欺の認知件数のうち,女性 が被害者のものが約4分の3を占めており,特に,高齢女性は全体の約3分の2を占めている。主要 な被害者層である高齢女性やその家族等に訴求するように工夫された広報啓発活動が必要である。 今回の特別調査(確定記録調査)でも,被害者が高齢者である特殊詐欺事件について,約3分の1 は単身居住,約3割は同居相手が配偶者のみの事件であった。また,既遂事件のうち約3分の2は同 438 令和 3 年版 犯罪白書

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居の家族・親族に相談したにもかかわらず金品を詐取されるに至った一方,未遂事件のうち約3割は 同居していない家族・親族に相談をしている。特殊詐欺の犯人は,被害者を精神的に動揺させて平常 心を失わせることを意図している以上,いかに広報啓発活動がなされていても,実際にだましの電話 を受けた際,被害者が冷静さを保つのは困難な場合がある。そのような場合には,同居の家族・親族 も被害者と同様の心理状態に陥ってしまうおそれもある。だましの電話を受けた被害者が金品をだま し取られるに至らないようにするためには,同居していない家族・親族とのコミュニケーションを深 めておくなど,相談しやすい環境が確保されるのが望ましい。もっとも,家族構成等からそれが困難 な被害者も多くいると思われるため,そのような場合でも被害を食い止められるように,金融機関, コンビニエンスストア等の幅広い事業者の取組も重要である。今回の特別調査(確定記録調査)で も,特殊詐欺事件(未遂事件)の 12.0%では,最初に詐欺に気付いたのは金融機関職員であり,実 際に,金融機関等が詐欺被害防止に貢献している実態がうかがわれた。 加えて,今回の特別調査(確定記録調査)では,犯人グループから被害者への最初の連絡方法は, 9割弱が固定電話であった。固定電話を介した特殊詐欺を予防するためには,電話機の呼出音が鳴る 前に犯人に対し犯罪被害防止のために通話内容が自動で録音される旨の警告アナウンスを流し,犯人 からの電話を自動で録音する機器が有効であり,実際に,一部の地方公共団体がその普及促進に貢献 していることは,注目に値する(コラム9)。 2 詐欺事犯者の特性等を踏まえた処遇の充実 最近 20 年間の動きを見ると,詐欺の出所受刑者の再入率は,大きく低下しており,平成 28 年の出 所受刑者の5年以内再入率及び令和元年の出所受刑者の2年以内再入率は,いずれも出所受刑者総数 と比較して低い。その背景として,近年の再犯防止対策の進展もあると思われるが,詐欺に関して 第8 編 は,その手口別構成比の変化も一因となっている可能性がある。最近 20 年間の詐欺の手口別検挙件 数や特殊詐欺の検挙件数の動向を見ると,特殊詐欺の検挙件数が平成 24 年以降増加傾向にあるのに 対し, 「無銭」 (無銭飲食等)による詐欺の検挙件数は,19 年以降減少傾向にある。後述するように, 今回の特別調査(再犯に関する調査)の結果,無銭飲食等の者は,他の手口の者と比較して,再犯あ 詐欺事犯者の実態と処遇 りの構成比が高い。そのため,再犯に及ぶ可能性が高い者が多い手口である無銭飲食等の構成比が低 下したことが,詐欺出所受刑者全体の再入率の低下に影響を与えている可能性がある。また,28 年 の詐欺の出所受刑者の5年以内再入率を見ると,入所度数3度以上の者の高さが特徴的である。今回 の特別調査(全対象者調査)では,無銭飲食等(前科を有する者に限る。)については,同種前科3 回以上を有する者が約3分の1を占めている。詐欺事犯者のうち無銭飲食等の手口の者は,再入率が 高い類型に該当する者が多分に含まれている可能性が高く,その再犯防止対策が必要である。 一方で,特別調査(再犯に関する調査)から見ると,特殊詐欺事犯者については,平均再犯可能期 間が長くないことに留意する必要はあるが,再犯ありの構成比は1割強にとどまっている。また,特 殊詐欺事犯者に多い属性である「30 歳未満」,「入所度数1度」,「男性・初入者」について,平成 28 年の詐欺の出所受刑者の5年以内再入率に当てはめてみると,いずれも再入率が低い部類に属する。 しかしながら,特別調査(全部執行猶予者に対する再犯調査)では,調査対象事件が特殊詐欺であっ た者 17 人が再犯に及んでいた上,調査対象事件及び再犯事件の手口が共に特殊詐欺であった者も3 人いたという結果も認められる。特殊詐欺が被害者に甚大な経済的・精神的被害を与え得るものであ ることを考えると,特殊詐欺事犯者の再犯防止対策もまた重要である。 この項では,特殊詐欺と無銭飲食等の詐欺事犯者を中心に,特別調査の結果等を踏まえ,詐欺事犯 者の特性等を踏まえた処遇の充実の方向性について検討する。 犯罪白書 2021 439

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(1)特殊詐欺事犯者 特殊詐欺の検挙人員の多くは,30 歳未満の若年者層が占めている。また,特別調査(確定記録調 査)では,特殊詐欺事犯者については,主に,「金ほしさ」や「友人等からの勧誘」を動機・理由と して安易に犯行に加担するという実態が浮かび上がっている。役割類型別の関与の状況を見ると, 「受け子・出し子」は,被害者と直接対面することもあるが,自らが積極的に被害者をだます言葉を 第6章 おわりに 言っていない。その一方, 「架け子」は,被害者をだます言葉を言っているものの,被害者と対面す ることは基本的になく,場合によっては,種々の身分を詐称した複数の「架け子」が分担して被害者 をだますこともある。そのため, 「受け子・出し子」・「架け子」共に,実際には被害者に対して多大 な経済的・精神的苦痛を与えているのにもかかわらず,自らがその原因を作ったことに思いが至って いない者が少なくない(コラム 11 及び 12)。特殊詐欺事犯者の改善更生のためには,自己の責任を 自覚し,被害者の苦しみに思いを巡らせることが必要である。その手段として,刑事施設で行われて いる特殊詐欺再犯防止指導(コラム 11)や,少年院で行われている特殊詐欺再非行防止指導(コラ 第4節 ム 12)の取組は,意義深いものであり,実践の積み重ねを経て,その内容が更に工夫・発展されて いくことが期待される。加えて,心情等伝達制度により,被害に関する心情等に触れることも有効で ある(コラム 13)。更に一歩進んで,被害者に弁償を行い,宥恕を得ようと努力する態度を示すこと 特殊詐欺対策や詐欺事犯者の処遇の在り方 は,社会にも受け入れられ,周囲の者から社会復帰のための協力を得られやすくするものと考えられ る。矯正や更生保護の処遇において,被害者への具体的・現実的な弁償計画を立て,弁償の着実な実 行に向けた努力を行うよう適切な指導監督や援護を行うことは,再犯防止の点でも効果があると考え られる。 また,特殊詐欺事犯者の背景事情に「不良交友」がある者が相当の割合含まれていることを考える と,不良な交友関係からの離脱について指導していくことが有効であると思われる。令和3年1月か ら,更生保護において, 「特殊詐欺類型」の保護観察対象者に対し,最新の知見に基づき,効果的な 処遇が行われているところ,特殊詐欺グループとの関係に焦点を当て,同グループへの関与や離脱意 思の程度に応じた指導・支援等を行っていることは注目に値する。 その上で,特殊詐欺の動機・理由や背景事情には,「金ほしさ」や「生活困窮」等の経済的問題が ある者も少なくないことから,経済的事情の改善につなげるため,勤労意欲や能力を高めるために就 労支援等を行い,または,円滑な就職ができるように職業訓練を実施するなどの方策が必要である。 加えて,近年,特殊詐欺の検挙人員のうち約2割を少年が占めており,これらの少年のうち一定の 者については,審判により,少年院送致や保護観察となる者が含まれている。少年の特殊詐欺事犯 者,特に少年院送致となった者について,円滑な社会復帰を促し,再犯の防止を図るためには,就労 支援の取組に加えて,就学支援の一層の充実が求められる。 (2)無銭飲食等の詐欺事犯者 特別調査(全対象者調査)では,無銭飲食等の詐欺事犯者については,「生活困窮」が犯行の動 機・理由となっている者が約半数を占めている。また,特別調査(全部執行猶予者に対する再犯調 査)では,再犯の動機・理由に「生活困窮」があった者の3分の2が無銭飲食等の者であった。無銭 飲食等の詐欺事犯者については,生活困窮の状況を改善するために,生活状況を改善することが重要 であるが,その前提となる住居や就労先を有していない者も多いことを考えると,早期の段階から安 定した生活環境に向けての支援,勤労意欲や能力を高めるための就労支援のほか,犯行の動機や背景 事情等を考慮した上で生活態度に関する指導等を行うことも重要である。住居を有する者が少なく, 入所度数も多い者が多い無銭飲食等の詐欺事犯者については,満期釈放による出所となる者が相当に いると思われる。満期釈放者対策については,「再犯防止推進計画加速化プラン」でも充実強化を図 ることとされている。無銭飲食等の詐欺事犯者についても,必要に応じ,同プランにも記載されてい るように,生活環境の調整の充実強化と仮釈放の積極的な運用,満期釈放者に対する受け皿等の確 440 令和 3 年版 犯罪白書

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保,満期釈放者の相談支援等の充実等の取組の対象とすることが求められる。 3 まとめ 本編では,特殊詐欺を中心に,詐欺事犯について,分析・検討を進め,その傾向・特徴を踏まえた 対策についても考察を加えた。 平成 15 年夏に特殊詐欺が目立ち始めてから,20 年弱の時間が経過している。この間,我が国では, 刑法犯認知件数や少年による刑法犯検挙人員が大幅に減少し,全体として,治安状況は大きく改善を 果たしてきたが,特殊詐欺の動きは,これまで見てきたように,犯罪全体の動きとは様相を異にして いる。警察庁を中心に,官民を挙げてその撲滅に向けた取組を進めた結果,21 年に特殊詐欺の認知 件数が激減するなど,一定の成果を上げてきたものと評価できるが,令和3年の現在でも,特殊詐欺 事犯の発生は後を絶たず,依然として深刻な情勢にある。近年の我が国の社会・経済・国民生活の変 化,すなわち,情報通信技術の進展に伴う通信・通話手段の多様化・高度化,電子マネー等に代表さ れる支払手段の多様化,我が国の高齢化率や高齢者人口に占める一人暮らしの者の割合の上昇,大規 模自然災害や新型コロナウイルス感染症の感染拡大のように人々の不安を昂じさせる事象の頻発等を 背景に,特殊詐欺を実行する犯罪組織は,特殊詐欺の方法・手段を多様化・高度化させ続けている。 今後も,特殊詐欺を実行する犯罪組織を撲滅するまで,官民を挙げた対策を講じ続けていく必要があ るものと思われる。他方,特殊詐欺対策を進める上では,特殊詐欺事犯者の特性を把握することが有 益であるが,これまで,特殊詐欺事犯者の実態,例えば,動機・理由,背景事情,再犯状況等につい て明らかにする資料は,必ずしも十分には存していなかった。本特集では,各種統計資料等を基に, 詐欺事犯や詐欺事犯者に関する情報を整理して紹介したが,これに加え,特別調査により,特殊詐欺 事犯者の実態の一端を明らかにできたものと考えている。今回の特集が,特殊詐欺対策や特殊詐欺事 第8 編 犯者を始めとする詐欺事犯者の再犯防止に向けた取組を進めるための一助となることを期待するもの である。 なお,今回の特別調査では,主に,捜査段階や裁判段階の供述を基に,詐欺事犯者の犯行の動機・ 理由や背景事情を調査したものであり,そこから得られる情報には一定の制約があったことは否めな 詐欺事犯者の実態と処遇 い。法務総合研究所では,犯罪・非行をした者を対象に,その生活意識や特殊詐欺を含む犯罪・非行 に関する意識等についての調査を行い,犯罪・非行をした者に対する有効な支援・指導を検討するた めの基礎資料を提供することを予定している。 犯罪白書 2021 441

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事 項 索 引 ア カ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 ICD(国際協力部) 会社法・商法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・187 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ICPO(国際刑事警察機構) 外出・外泊・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・279 IOM(国際移住機関) 解除・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・282 IPC(国際監獄委員会) 改善指導・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・283 IPPC(国際刑法監獄委員会) 外部通勤作業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 あおり運転・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 架空料金請求詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 アジア矯正建築会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 覚醒剤取締法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16, 165, 237 ・・・・・・100 アジア太平洋矯正局長等会議(APCCA) 架け子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326, 409 アセスメントに基づく保護観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 貸金業法・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・188 アンシラリーミーティング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・299 過失運転致死傷等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i, 2, 156 家族関係指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 家庭内暴力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 イ 意見等聴取制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 仮解除・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 274, 389, 395 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67, 71, 148, 357 仮釈放(者) いじめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116 仮釈放の取消し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 一時解除・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 仮釈放率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・iii, 68, 206, 214, 357 一部執行猶予受刑者・・・・・・・・・・・50, 151, 173, 247, 349 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 仮退院(少年院) 一般改善指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58, 204, 391 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 仮退院の取消し(婦人補導院) 一般遵守事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 簡易薬物検出検査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77, 80 飲酒運転防止プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 監護者わいせつ・監護者性交等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 観護処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 ウ 受け子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326, 340, 393, 409 エ F 指標受刑者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・222 MJCA(法務省式ケースアセスメントツール) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 ・・・・・・・・・・・・・・ 101, 288 SDGs(持続可能な開発目標) 還付金詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 鑑別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118, 127 キ 危険運転致死傷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i, 2, 156 危険ドラッグ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・168 期日間整理手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 起訴猶予者に係る更生緊急保護の重点実施等(の ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 試行) 起訴猶予率・・・・・・・・・・・・ iii, 36, 161, 172, 201, 210, 343 オ 起訴率・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 35, 161, 172, 182, 220, 343 応急の救護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 逆送事件・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123, 149 横領・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 オレオレ詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 オレオレ詐欺等対策プラン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・338 恩赦・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 器物損壊・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 キャッシュカード詐欺盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 ギャンブル詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64, 139 教誨(師) 教科指導・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60, 136 恐喝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 矯正教育・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 矯正教育課程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134 犯罪白書 2021 443

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矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染 検挙率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 7 防止対策ガイドライン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62 検察審査会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・270 強制執行妨害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・186 原則逆送・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119, 123 矯正指導・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 ・・・・・・ 60 矯正就労支援情報センター(コレワーク) 強制性交等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10, 265 コ 強制わいせつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10, 265 合意制度・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31, 310 京都コングレス(第 14 回国連犯罪防止刑事司法 公契約関係競売入札妨害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・186 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 288 会議) 交際あっせん詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 京都コングレス・ユースフォーラム・・・・・・ 291, 292 講習会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139, 146 京都宣言(持続可能な開発のための 203 アジェ 公職選挙法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 ンダの達成に向けた犯罪防止,刑事司法及び 更生緊急保護・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 ・ ・・・・・・・・・290 法の支配の推進に関する京都宣言) 公正取引委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・187 京都保護司宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・291 更生保護サポートセンター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 脅迫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 更生保護施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 協力雇用主・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 更生保護就労支援事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79, 146 禁止命令等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・195 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91, 139 更生保護女性会(員) ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 金融活動作業部会(FATF) 拘置所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口 交通安全指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 座等の不正な利用の防止に関する法律(金融 交通犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112, 154 機関等による顧客等の本人確認等に関する法 強盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14, 22 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 308, 339 律) 校内暴力・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116 金融商品詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 公判請求率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 34 金融商品取引法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 187, 309 公判前整理手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 公務員犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・229 公務執行妨害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 ク ぐ犯少年・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・iv, 拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つ 104, 113, 118 ける取扱い又は刑罰を受けることからの全て の人の保護に関する宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 交友関係指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 ケ 勾留・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33, 45, 348 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・195 警告(ストーカー規制法) 勾留請求(却下)率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 警告(保護観察) 高齢者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv, 208 刑事施設・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49, 391 国外犯罪被害障害見舞金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・277 刑事施設視察委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 国外犯罪被害弔慰金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・277 刑事和解・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・273 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・279 国際移住機関(IOM) 携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・282 国際監獄委員会(IPC) 及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 国際協力部(ICD) 関する法律(携帯電話不正利用防止法) 国際刑事警察機構(ICPO)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 308, 338 国際刑事裁判所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 刑の一部執行猶予制度・・・・・・・・・・・・・・・70, 81, 175, 368 国際刑事裁判所に関するローマ規程・・・・・・・・・・・・・ 96 刑の執行率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・283 国際刑法監獄委員会(IPPC) 刑法犯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・i, 2, 104 国際受刑者移送法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99 刑務所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 国際商取引における外国公務員に対する贈賄の 刑務所出所者等総合的就労支援対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60, 防止に関する条約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 79, 139, 146 国際捜査共助等に関する法律・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 刑を言い渡された者の移送に関する条約・・・・・・・・ 99 国際組織犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 検挙人員・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・iii, 5, 104, 315 444 令和 3 年版 犯罪白書

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国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 306 (国際組織犯罪防止条約) 国選付添人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30, 119 国選弁護人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100, 286, 295 国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 282 国連被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・284 デラ・ルールズ) 国連薬物・犯罪事務所(UNODC) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20, 95, 100, 282, 292, 293, 295 個別処遇の原則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 コミッション(犯罪防止刑事司法委員会) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 282 ・・・・・・ 60 コレワーク(矯正就労支援情報センター) コングレス(国連犯罪防止刑事司法会議) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 282 CFP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75, 395 ・・・・・・・・・・・・・101 JICA(独立行政法人国際協力機構) 死刑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37, 40, 65, 274 私事性的画像被害防止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・198 施設送致申請・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 持続可能な開発のための 2030 アジェンダの達成 に向けた犯罪防止,刑事司法及び法の支配の ・ ・・・・・・・・・290 推進に関する京都宣言(京都宣言) ・・・・・・・・・・・・・・ 101, 288 持続可能な開発目標(SDGs) (刑の)執行猶予の(言渡しの)取消し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81, 240, 274, 367 指定更生保護施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 指定暴力団・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 指導監督(保護観察) 児童買春・児童ポルノ禁止法・ ・・・・・・・・・・・・・・ 18, 191 児童虐待・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77, 192, 276 児童虐待防止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 192, 276 自動車運転死傷処罰法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 サ 自動車損害賠償保障制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・278 再処分率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 251, 259, 376 在宅審判鑑別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128 再入院・刑事施設入所率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・257 再入院率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・257 再入者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 241, 368 再入者率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 241, 368 再入率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 244, 247, 373 サイバー犯罪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96, 190 サイバー犯罪に関する条約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 裁判員裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 再犯期間・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 249, 371 再犯者率・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 234, 365 再犯防止啓発月間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 再犯防止推進計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・232 再犯防止推進計画加速化プラン~満期釈放者対策 を始めとした“ 息の長い” 支援の充実に向けて~ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ シ 86, 233 再犯防止推進法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・232 再非行少年率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 255, 366 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・306 (狭義の)詐欺(罪) 詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 304, 306, 311 作業報奨金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 詐欺利得(罪)・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・306 殺人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14, 21 サルバドール宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv, 119 児童自立支援施設(送致) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv, 119 児童養護施設(送致) (刑事)司法共助・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79, 145 社会貢献活動(保護観察) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 社会貢献作業(矯正処遇) 社会復帰支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59, 139 社会復帰促進センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49, 66 社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し,立 ち直りを支える地域のチカラ~・・・・・・・・・・・・ 83, 92 修学支援デスク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140 修学支援ハンドブック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 就業支援センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79, 146 住居侵入・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 住居特定審理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70 重点指導施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 銃刀法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 収容審判鑑別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 収容率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50, 202 就労継続奨励金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 ・・・・・・・・・・・・・ 59, 60, 79, 86, 139, 146 就労支援(指導) 就労・職場定着奨励金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 宿泊面会・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 受刑者等専用求人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 受刑者の釈放等に関する情報の提供・・・・・・・・・・・・・ 61 出資法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・188 出所受刑者・・・・・・・・・・・・ 53, 68, 244, 247, 352, 357, 373 主犯・指示役・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326, 409 犯罪白書 2021 445

462.

準詐欺(罪)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・306 生活環境の調整 遵守事項・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・227 (心神喪失者等医療観察法) 傷害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 生活行動指針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71, 145 障害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・225 精神障害・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・225 ・ ・・・・・・・・・・・・283 上級会合(ハイレベルセグメント) 精神保健観察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・228 証券取引等監視委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・187 性犯罪再犯防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 証人等特定事項秘匿決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・273 性犯罪者処遇プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 少年院・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 130, 205, 354 性犯罪被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・265 少年院仮退院者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71, 142, 206, 380 性非行防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 少年院視察委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141 税法違反・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・185 少年鑑別所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124, 353 性暴力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 少年刑務所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 世界保護観察会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100 少年司法運営に関する国連最低基準規則 世界保護司会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・291 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 (北京ルールズ) 窃盗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8, 23 少年法等の一部を改正する法律・・・・・・・・・・・・・ 29, 120 窃盗事犯者指導ワークブック・ ・・・・・・・・・・・・・・ 80, 207 商標法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189 全体会合・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・295 処遇鑑別・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127, 128 専門的処遇プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77, 145 処遇指標・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 処遇調査・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 処遇要領・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 ソ 職業訓練・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 捜査共助・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 98 職業指導・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 相談・支援(更生保護における被害者の関与) しょく罪指導プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 78, 145 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・274 職親プロジェクト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関す 触法少年・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv, 104, 118 る法律(組織的犯罪処罰法) 女子依存症回復支援モデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・204 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94, 176, 277, 306, 323 女子施設地域連携事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61, 204 即決裁判手続・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37, ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・199 女性(犯罪・非行) 損害賠償命令制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・273 45 初入者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 242, 245, 350, 368 自立更生促進センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 自立準備ホーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 新型コロナウイルス感染症・・・・・・・・・62, 82, 137, 324 心情等伝達制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 274, 389, 396 心神喪失者等医療観察制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・226 人身取引・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 278 人身取引対策行動計画 2014・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・278 審判鑑別・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 ス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195, 276 ストーカー(規制法) セ 生活環境の調査 タ 退去強制・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・215 第 14 回国連犯罪防止刑事司法会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 288 (京都コングレス) 大麻取締法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・167 出し子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326, 409 段階別処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 談合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・186 チ 地域援助(非行及び犯罪の防止に関する援助) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 地域再犯防止推進モデル事業・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・233 地域生活定着支援センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61, 70 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・227 (心神喪失者等医療観察法) 地方更生保護委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 ・・・・・・・・・・・・・・ 70, 395 生活環境の調整(更生保護法) 地方再犯防止推進計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・233 中央更生保護審査会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 446 令和 3 年版 犯罪白書

463.

中間処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 調査センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 著作権法・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189 ツ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 通院等指示(保護観察) 通告(保護観察)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 通信傍受法(犯罪捜査のための通信傍受に関する ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・309 法律) テ テロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94, 95, 176, 268 展示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・301 電子計算機使用詐欺(罪)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・306 ト 東京ルールズ(非拘禁措置に関する国連最低基準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 規則) 道交違反・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ i, 16, 159 逃亡犯罪人引渡条約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 逃亡犯罪人引渡法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 道路交通法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 ドーハ宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・286 篤志面接(委員)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64, 139 特殊詐欺 ・・・ 308, 325, 326, 338, 384, 389, 391, 393, 398, 408 特殊詐欺再犯防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・391 特殊詐欺再非行防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・392 独占禁止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・187 特定商取引に関する法律(特定商取引法 / 訪問販 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 307, 324 売等に関する法律) 特定少年・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29, 120 特定生活指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 特定暴力対象者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 特別改善指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 特別活動指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137 特別支援ユニット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 特別遵守事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 特別処遇・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 特別調整・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61, 70, 139 ナ ナショナルステートメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・290 ニ 2年以内再入率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 244, 247, 374 日本司法支援センター(法テラス) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30, 78, 272, 275 入札談合等関与行為防止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・186 入所受刑者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 51, 349 認知件数・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 3 ネ ネルソン・マンデラ・ルールズ(国連被拘禁者処 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・284 遇最低基準規則) ハ 廃棄物処理法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 配偶者暴力防止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 193, 276 ・ ・・・・・・・・・・・・283 ハイレベルセグメント(上級会合) 破産法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 186, 309 罰金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 発生率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 3 犯行準備役・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 326, 409 バンコク宣言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 犯罪収益移転防止法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95, 308, 324 犯罪少年・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv, 104, 118 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(通信傍 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・309 受法) 犯罪対策閣僚会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 232, 278, 338 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関 する法律・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277, 309 (第3次) (第4次)犯罪被害者等基本計画・ ・・・269 犯罪被害者等基本法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・269 犯罪被害者等給付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・277 犯罪防止刑事司法委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94, 282 (コミッション) 犯罪予防活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分 配金の支払等に関する法律・・・・・・・・・・・・・・ 278, 309 特別法犯・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ i, 16, 110 ・・・・・・・・・・・・・101 独立行政法人国際協力機構(JICA) 取消・再処分率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 251, 376 取消率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・251 ヒ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84, 91, 139 BBS 会(員) PFI・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 犯罪白書 2021 447

464.

被害回復給付金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 277, 309, 388 被害回復分配金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 278, 309, 388 被害者参加制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・272 法テラス(日本司法支援センター) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30, 78, 272, 275 法務省式ケースアセスメントツール(MJCA) 被害者等通知制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 269, 274, 389 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 被害者特定事項秘匿決定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・272 法務少年支援センター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 被害者の視点を取り入れた教育・・・・・・・・・・・・・ 59, 136 暴力団・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177, 319, 336, 372 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158, 278 ひき逃げ事件(事故) 暴力団離脱指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 被虐待経験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134, 205, 357 暴力防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 非行及び犯罪の防止に関する援助 暴力防止プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 (地域援助)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 保護観察・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 被拘禁者処遇最低基準規則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・284 保護観察所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67 非拘禁措置に関する国連最低基準規則 保護観察所が行う入口支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 (東京ルールズ) 非行少年率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 微罪処分・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31, 322 保護観察処分少年・・・・・・・ 71, 142, 206, 256, 358, 380 保護観察付一部執行猶予者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71, 175, 206, 249, 376 保護観察付全部執行猶予者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71, フ 175, 206, 249, 376 保護観察の停止・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 FATF(金融活動作業部会) 風営適正化法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (全部・一部執行猶予者の)保護観察率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iii, 71, 347, 358 フォローアップ事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 保護司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 福祉専門官・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 保護司会・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 福祉的支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 保護者会・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139, 146 付審判請求・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・271 保護者参加型プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 婦人補導院・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 保護処分・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119 婦人補導院仮退院者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 保釈・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45, 348 不正アクセス行為・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・190 補導援護・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 不定期刑・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29, 120, 148 不定期刑終了・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 腐敗の防止に関する国際連合条約・・・・・・・・・・・・・・・・ 96 マ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64, 141 不服申立制度(矯正施設) マネー・ローンダリング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95, 306 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 215, 278 不法残留(者) 麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際 振り込め詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・338 連合条約・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95 振り込め詐欺撲滅アクションプラン・・・・・・・・・・・・338 麻薬特例法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・171 不良行為少年・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 ヘ 北京ルールズ(少年司法運営に関する国連最低基 ミ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・170 密輸入(薬物) ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64, 91 民間協力(者) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・285 準規則) ホ ム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38, 40, 69, 148 無期刑(無期懲役) 放火・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 暴行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 法制度整備支援・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 暴走族・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 448 令和 3 年版 犯罪白書 モ 戻し収容・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146

465.

ヤ 薬物依存回復訓練・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 薬物依存離脱指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 薬物再乱用防止プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 薬物処遇重点実施更生保護施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 薬物処遇ユニット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 薬物中間処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90 薬物犯罪・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95, 111, 165, 237 薬物非行防止指導・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136 ユ UNAFEI(国連アジア極東犯罪防止研修所) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100, 286, 295 UNODC(国連薬物・犯罪事務所) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20, 95, 100, 282, 292, 293, 295 融資保証金詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 ・ ・・・・・・・・・235, 238, 249, 366, 367, 376 有前科者(率) ヨ 預貯金詐欺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・326 リ 略式手続・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37, 42 ル 類型別処遇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76, 145, 395 ワ ワークショップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 287, 295 犯罪白書 2021 449