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May 12, 22
スライド概要
京都クロスメディア推進戦略拠点さん主催のイベントで講演した際のスライドです。
https://crossmedia.kyoto/seminar_event/20211126
Unreal Engine 4 から Unreal Engine 5へ ~知っておきたい次世代エンジン~ 株式会社Indie-us Games 代表取締役 中村 匡彦
自己紹介 名前 : 中村 匡彦 株式会社Indie-us Games 代表取締役 Unreal Engineの何でも屋。 ゲーム業界のプログラマーを経て、起業。 Twitterでよく情報発信します → @aizen76
Indie-us Gamesについて Unreal Engine専門のスタジオ。 ゲームをメインとしながらも、 映像、製造、建築、VRなど あらゆる業種の案件をやっています。 何かありましたら、いつでもご相談を! https://www.indie-us-games.co.jp/
自社ゲームも作ってます 自社でインディーゲーム『TrinityS』というゲームを制作中! リリースされたらぜひ触ってみてください! https://www.indie-us-games.co.jp/trinitys
セミナー内容 ・UE5の概要 ・UE5の特徴的な新機能 ・UE4からUE5に移行するにあたって ・UE5への準備について
UE5の概要
Unreal Engineについて アメリカ ノースカロライナに本社がある、 Epic Gamesが1998年より販売を始めたゲームエンジン。 フォートナイトでその勢いを更に加速させて、 Unreal Engineに投資することであらゆる ゲームエンジンとも違うユニークさを持つ。
Unreal Engine 5 現在主流である、Unreal Engine 4の次世代ゲームエンジン。 現在早期アクセスとして無料提供中。 来年の早期段階で正式版が提供予定。 ライセンス形態はUE4と全く同一。
早期アクセスリリースの位置付け 早期アクセス版と正式版では大きく変わる可能性あり。 そのため現在のノウハウがそのまま使えるわけではない。 ただし、UE4に慣れている方であればその違いも 吸収しやすいのであえてUE5に触りたい人であればOK。 不具合やフィードバックはぜひ公式へ報告を!
UE5へのアクセス方法 Epic Games Launcherから『UE5』タブから 『早期アクセスのダウンロード』でアクセス。 もしくはGitHubのUnreal Engineリポジトリーから、 『ue5-early-access』ブランチ 『ue5-main』ブランチ のどちらから直接ビルドが可能。 https://github.com/EpicGames/UnrealEngine
UE5 早期アクセス ドキュメント 公式から提供される最も重要なドキュメント。 情報は充実しているが、最新情報は少なめ。 UE5の調べものをするときに、 真っ先に調べるべき情報源。 https://docs.unrealengine.com/5.0/ja/
UE5 大型サンプル『古代の谷』 公式が提供する唯一のUE5サンプル。 大規模なワールドでUE5の新機能の多くを試せる。 サンプル実行にはハイエンドクラスのPCが必要。 https://docs.unrealengine.com/5.0/ja/ContentAndSamples/ValleyOfTheAncient/
注意 基本的な情報は全て早期アクセスバージョンのもの。 フルリリース時のUE5では大きく変わる部分もあります。 現状公開されているEAブランチとMainブランチの UE5はエディターUIなど含め、既に大きく変わっています。
UE5の特徴的な新機能
UE5の特徴的な新機能 ・Nanite ・Lumen ・Open World ・Quixel Bridge ・Animation ・MetaSounds ・その他
Nanite
Nanite 大量の頂点を持つジオメトリーを扱えるようになる。 実質的にポリゴン数制限はなくなったと同然に。
Nanite ZBrushのスカルプトモデルやフォトグラメトリーの スキャンモデルだろうと関係なく扱うことができる! 複雑な設計データを持つCADデータであろうと関係なし。 ディテールのために必須だった法線マップも必要なし。 そのままハイポリゴンディテールをレンダリング可能。
Naniteを設定 Naniteを使うにはStatic Meshアセットで 右クリックコンテキストメニューを表示し、 有効化、無効化を設定することで切り替え。 またはインポート時に有効化も可能。
Naniteのマジック Naniteはポリゴンのクラスター化を自動で行い、 レンダリングに必要なポリゴンを最小限まで抑える。 独自ラスタライザーとGPU駆動レンダリングで超高速描画を実現。
Naniteの制限 Skeletal Meshでは現状利用不可能。 回転やスケールは対応するが、メッシュ変形はできない。 Custom Depth Stencil、頂点ペイントも未対応。 不透明を除く、全てのブレンドモードにも現在は未対応。 特にガラスや草の表現に使えないので注意。 その他多くのレンダリング機能に未対応のものが多い。
Lumen
Lumen 完全に動的なグローバルイルミネーションとリフレクション。 複数のレイトレーシング手法をハイブリッドで扱える。 Screen Space GI Lumen GI
Lumenを設定 プロジェクト設定内からLumenの設定を行う。 ソフトウェア レイトレーシングモードは視点から近距離のみ Mesh Distance Fieldをトレースする 『Detail Tracing』モードと、 Global Distance Fieldを使って 全てのメッシュに対してトレースする 『Global Tracing』モードがある。
Surface Cache メッシュを囲むように作成されて、ライティング等を更新。 Mesh Distance Fieldと併用することで高品質なライティングを 実現するためのLumen Sceneと呼ばれるものが出来上がる。
Surface Cacheの注意点 Surface Cacheを生成することで高品質なライティングを 実現しているため、メッシュが細かく分割されている必要がある。 そのまま配置 メッシュをマージ
Lumenの制限 ライトマップによるライトベイクとは併用できない。 現状フォリッジも早期アクセス段階では未対応。 動いているオブジェクトに対してのノイズがでやすい。 現状も改善を続けている段階。 透明マテリアルはLumenのリフレクションに対応しない。
Open World
Open World 新機能 UE4にあったWorld Compositionは非推奨となり、削除予定。 新機能World Partitionが代替する機能となる。 World Partitionは大規模なレベルを 自動的に分割し、レベルストリーミング の管理を用意してくれるシステム。 多人数作業を行う際にも便利。
World Partition グリッドベースでワールドをセル単位に分割。 セル単位で部分的に領域をロード、アンロードできる。
Data Layer レベル上のアクターを細かく分割して、レイヤーという単位で 簡単に扱うことが可能。 エディターだけでなく BPから直接レイヤーを ロード・アンロードを 動的に行う事も可能。
One File Per Actor レベル上の1アクターに1ファイルとして割り当てられる。 複数の作業者が同時に同じレベルで作業が可能に! レベル上を操作してもレベルは編集扱いにならない。 平行作業のためのサブレベル化は不要となる。 最終的にパッケージビルドで単一のumapファイル化されます。
Large World Coordinate UE4では単精度浮動小数(float 32bit)で座標を管理。 この制限により巨大なワールド作成が難しかった。 UE5では倍精度浮動小数(double 64bit)で制作できるように 将来的に拡張されるようになる予定。
Quixel Bridge
Quixel Bridge Epic Games傘下のQuixelが提供するMegascansライブラリーへ 直接アクセスして、そのままUE5エディター上へと追加可能。
Quixel Bridge導入方法 BridgeプラグインをONにして、エディター再起動。 新規アセット作成で『Quixelコンテンツを追加』から 欲しいアセットをD&Dするだけで持ってこれる。 アカウントはEpic Gamesアカウントと同一のものでOK!
MegascansはUEユーザーは無料 大量の3Dアセットが用意されているが、 UEを使っているユーザーは全て無料で利用可能。 バリエーションも非常に豊富で洋風はほぼ揃っている。 和風はまだまだ少ないが少しずつ増えている。 Epic Games Japan内にもフォトグラメトリチームが 在籍しているそうなので、今後に期待!
Animation
Control Rig エディター上でアニメーションを作成・制御できる機能。 映像用途だけでなく、ランタイム時も制御できる!
Full Body IK Control Rigのノードとして提供される。 より高度なアニメーションを少ない手数で実現可能に!
Motion Warping キャラクターのルートモーションを動的に調整できる機能。 ターゲット位置に対して補正を行い、ワープする。 Motion Warping無効 Motion Warping有効
MetaSounds
MetaSounds 完全にプロシージャルな新規のオーディオエンジン。 デジタル信号処理(DSP)をノードベースで処理できる。 オーディオデザイナーがより高度なコントールを可能となる。 これによりワークフローの改善やパフォーマンスも向上。 移植性や拡張性も高めており、中間はJSON形式でシリアル化。 ネットワークを介しての処理にも適している。
MetaSounds
MetaSounds
その他
エディターUIの刷新 全体的にフラットデザインとなり、ビューポートも拡大。 パネルはサイドバーへのドッキングが可能になった。 更にどこからでも呼び出される コンテンツドロワーが追加される。 メニューのボタンも最低限の数になった。
エディターUIの刷新
Chaos物理エンジンが標準化 遂にChaosによる物理制御が標準で使えるように。 • Rigid Body Dynamics (剛体力学) • Rigid Body Animation Nodes と Cloth Physics (クロス物理) • Destruction (破壊) • Ragdoll Physics (ラグドール物理) • Vehicles (ビークル) • Physics Fields (物理フィールド) • Fluid Simulation (流体シミュレーション) • Hair Simulation (ヘアシミュレーション)
Game Features Modular Gameplay 機能をコンポーネントのように簡単に付け外しできるようになる。 プロジェクトによっては一時的に必要な機能も 常に読み込んでおく必要があったりするが、 Game Featuresを使うことで簡単に切り離しが可能。 BPから読み込んだり、 有効化、無効化ができる。
UE4からUE5に移行するにあたって
なくなる機能を把握しておく 新しい機能が増えるが、UE5に移行するにあたって、 UE4にあった機能が一部UE5では削除されることになっている。 仕様変更されるものも多い。 UE4からUE5で仕様変更・非推奨・削除される機能について https://unrealengine.hatenablog.com/entry/2021/10/31/003351
移行可能なUE4バージョン UE5 EA UE4.26 UE4.27 UE5.0
移行可能なUE4バージョン 最低でも4.26か4.27までバージョンを上げておく必要がある。 現時点では4.26からしかUE5 EAにはアップデートできない。 フルリリースのUE5では4.27からでもアップデートが 可能となるように現在も継続開発中。
C++オブジェクトポインター C++を使用している場合、オブジェクトのポインターは UPROPERTYを変数に修飾していた。 UE5ではTObjectPtr型として定義され、修正が必要になる。 UPROPERTY() USceneComponent* Scene; TObjectPtr<USceneComponent> Scene; 修正のためのツールも提供され、ある程度は自動的に変更も可能
PhysXとChaos PhysXによる物理システムはUE5 EAにも残っているが、 後のリリースで削除されるため、Chaosに合わせた調整が必須。 物理Tickレートが変更され、ゲームスレッドから 独自スレッド上で固定レートによる実行に変更となる。 システム変更による挙動変化が発生するため、 物理に依存しているアプリは再調整が必要となる。
プラットフォーム UE4でサポートされていた32bitアプリはサポートせず、 完全に64bitアプリのみとなる。 プラットフォーム名も一部変更となるので、 ビルドスクリプトなどの修正も対応する必要がある。 Windows → WindowsEditor WindowsNoEditor → Windows
UE5への準備について
ラーニングリソース 公式を中心に色々と揃ってきています。 日本語に限定するとまだ少ないですが、 特によさそうなものを中心に紹介。 情報は全て早期アクセス版のものなので、 フルリリース時に異っている可能性も高いのでご注意ください。
UE5 クイックスタート(公式) 早期アクセス版での UE5のエディターの使い方や 基本部分を動画で解説。 日本語字幕付きなので まず最初にやっておいて損なし。 https://www.unrealengine.com/ja/onlinelearning-courses/ue5-early-access-quickstart
UE5 Resources(公式YouTube) YouTubeでEpic Gamesの 本社が提供している公式の UE5関連のプレイリスト動画。 チュートリアルから、かなり 踏み込んだ内容までいろいろ。 動画によっては日本語字幕が ついているのもポイント高。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLZlv_N0_O1gZmDqpSAEXEmATpv-HgQJYp
ヒストリア ブログ みんなお世話になっている 株式会社ヒストリアさんのブログ記事。 貴重な日本語での情報を 非常にわかりやすく解説。 おそらく国内トップクラスの情報源。 https://historia.co.jp/category/ue5/
Unreal Sensei YouTubeで多くのUnreal Engineチュートリアル動画を配信。 UE5のチュートリアルだけで、なんと12時間も! 翻訳はされていないが、 自動翻訳によりある程度は 理解できる日本語字幕で 読めますので根気があれば。 https://www.youtube.com/c /UnrealSensei/videos
UE4をまだ触ったことがない方 Question UE4は全然知らないのですが、 UE5から触った方がいいんでしょうか? Answer UE5のチュートリアルはまだまだ少ないので、 今はUE4で基礎を学んでからUE5へ行くことをお勧めします。 UE5フルリリース後はUE5からでもいいと思います。
UE4をある程度触っている方 Question UE4は結構触っています。 今からUE5を触った方がいいんでしょうか? Answer ある程度UE4が理解できているのなら、 UE5の理解も難しくないと思いますので今からUE5を 触っておいても問題ないと思います。
ゲームで使いたい方 Question ゲーム作りでUE5に移行すると何が嬉しいでしょうか? 今作っているゲームをUE5へと移行させるべきでしょうか? Answer オープンワールドなど大きいゲームだとメリット大です。 NaniteやLumenを活かしたゲームグラフィックを作りたい ということでなければ無理に移行させる必要はないです。
映像で使いたい方 Question 映像を作っていますが、UE5へと移行した方がいいでしょうか? グラフィック面以外のメリットはあるのでしょうか? Answer 映像を作るだけならUE4でも十分です。 映像向けアップデートはUE5の時点ではあまりありません。 グラフィックを強化したいのであればぜひUE5へ。
建築で使いたい方 Question 建築パースやコンフィギュレーターなどでUE4を使っていますが、 UE5への移行はどのようなメリットがありますか? Answer ライティングが動的になり、建築物ではLumenの有用性が 非常に高く、ライトベイクも必要ないのでコンフィギュレーター のクオリティが非常に上がるのでとてもメリットがあります!
製造で使いたい方 Question 製造の現場でCADなどを活用してプロダクトを開発してます。 UE5はどのように活用できるのでしょうか? Answer UE5はどんな複雑なCADでもインポートできます! 更にDatasmithは多様なCADフォーマットに対応してます。 自動車、ロボット、工業製品などあらゆるものに有用です。
モバイルで使いたい方 Question モバイルでもNaniteやLumenは使えるのでしょうか? UE5はモバイルでも革新的なのでしょうか? Answer 現状モバイルではNaniteやLumenは動作しません。 ただしいつか対応したいという表明をEpic Gamesはしています。 UE5でモバイルがどこまで変わるかはまだわからないです。
XRで使いたい方 Question VRやARなどのXRでUE5を使うことにメリットはありますか? UE5はちゃんと対応するのでしょうか? Answer 正直なところあまりメリットはないと思います。 UE5はVRでも対応しますが、現時点ではNaniteやLumenが VRなどのXRデバイスにちゃんと対応するかはわかりません。
メタバースで使いたい方 Question メタバース向けに今後UE5を使う場合にメリットはありますか? またメタバースについてはどのように考えていますか? Answer 大きなワールドを作成する場合確実にメリットがあります。 これまで実現出来なかった巨大な空間が作成できます。 メタバースはこれからあらゆるものを変えていくと思います。
ご清聴ありがとうございました! 引き続き質問あればどうぞ!