UE4におけるキャラクタークラス設計

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May 12, 22

ue4

スライド概要

UE4プログラマー向け勉強会 in 大阪で喋った時に使用したスライドです。 https://connpass.com/event/76815/

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関西を拠点にUnreal Engineを専門とするゲームスタジオ、Indie-us Games代表&クリエイター。

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関連スライド

各ページのテキスト
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UE4におけるキャラクタークラス設計 Indie-us Games 代表&クリエイター alwei

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自己紹介 株式会社Indie-us Games代表取締役 名前 : alwei Twitter : @aizen76 Unreal Engine 4 専門会社 関西でUE4をやりたい人を絶賛募集中!

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今回プログラマー向けというわけで…

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いつもより少しだけ難しめの話をします٩( ‘ω’ )‫و‬

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基本的なオブジェクト指向の理解が あると恐らくスムーズに理解できるハズ

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テーマ『キャラクタークラス設計』

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今作ってるゲーム 趣味で個人開発しているTPSのゲームを参考に。 個人で開発中のゲーム 『Blue Gunner』 今年中に完成… 出来たらいいな……

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一般的なオブジェクト指向の3原則 ・継承 ・多態性 ・カプセル化

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一般的なオブジェクト指向の3原則 ・継承 ・多態性 ・カプセル化 ← 本質的に重要なのはここ

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一体なぜ…? 継承と多態性は、UE4を使っていると 何も考えなくともほぼ確実に利用しています。 ブループリントのアクターは常に継承。 関数はあらゆるところでオーバーライドされています。

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カプセル化って? 意外なくらい理解していない人が多い。 むしろこれこそがオブジェクト指向の本質。 以下のURLの説明はとても参考になります。 オブジェクト指向と10年戦ってわかったこと https://qiita.com/tutinoco/items/6952b01e5fc38914ec4e

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現実世界でのカプセル化 私達が普段使っているUSB(Universal Serial Bus)は 最もわかりやすいカプセル化の例です。 様々な機器に挿すだけで自動的に機能が呼び出されます。 これは『挿す』という関数をUSBというインターフェースを 使って呼び出したということになります。

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相手のことはよく知らない カプセル化は必要以上に相手のことを知る必要はありません。 制限されたインターフェースを使うことで、 お互いのことを知らないままでも機能を使うことが出来ます。 これがUE4においても非常に重要になってきます。

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なぜ重要? UE4で作ったプロジェクトは常に大規模になりやすい。 カプセル化を常に意識して作らなければ、 ブループリントやC++でも参照関係が複雑となり、 読み込みが遅くなったり、不安定なバグを生み出す原因に。 特に商業ゲームではこれを意識しないと開発後半で泣く。

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UE4におけるカプセル化

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インターフェースシステム UE4ではインターフェースを使った、 オブジェクト間の依存を持たせない仕組みが存在。 『ブループリント インターフェース』 https://docs.unrealengine.com/latest/JPN/Engine/Blueprints/ UserGuide/Types/Interface/index.html 『インターフェース(C++)』 https://docs.unrealengine.com/latest/JPN/Programming/Unre alArchitecture/Reference/Interfaces/index.html

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インターフェースシステム インターフェースを使うとお互いの情報を完全に隠蔽し、 依存関係を持たないまま、相手の機能を呼び出せます。 USBインターフェース パソコンはマウスの事を知らないが、 マウスの機能を使う事が出来る。

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UE4で実際に使うと… キャラクターブループリント側から アニメーションブループリントヘインターフェースで呼び出し BPインターフェース キャラクターブループリント アニメーションブループリント

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外部とのやりとりの隠蔽 外とのやりとりは基本的にインターフェースを経由 Weapon BP Inventory BP Enemy Character BP Anim BP

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依存関係のチェック リファレンスビューワーを使うと依存関係がわかります。 アセットを右クリックして開く。

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依存関係には常に注意 何が問題になる? ・アセット依存による読み込み時間の増大 ・依存BP(C++)の増大によるコンパイル時間の増大 ・不要な依存や一部破損によるクラッシュ率の増大 ・不要アセットがパッケージされてデータ容量の増大 ・ソースコントロール上で不要なチェックアウトの発生 etc..

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大規模な開発ほど注意が必要 よくやっちゃうけどCastとかもあまりよくない…

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継承 vs 包含

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オブジェクト指向で良くある論議 継承(is-a)すべき?包含(has-a)しておく? 継承は便利で使いやすい。 コード(ノード)も少なくなる。 ついつい継承を使ってしまう人も多いですが。

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オブジェクト指向で良くある論議 一般論で言えば包含(合成)の方が都合が良いと言われます。 『クラスの「継承」より「合成」がよい理由とは? ゲーム開発におけるコードのフレキシビリティと可読性の向上』 http://postd.cc /why-composition-is-often-better-than-inheritance/ では包含でいいのでは?

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UE4で包含させる

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コンポーネントを使う UE4には多才なコンポーネント があります。 これらをアクターに追加する事 で簡単に包含を実現可能。 明確に機能を分離する。

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では継承は悪なのか? これもよく言われますが、継承を使うことで オブジェクトの多態性などが実現できます。 ただしなんでもかんでも継承するのはよくない。

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なんでもかんでもコンポーネント これはこれでマズい!! コンポーネントを追加するという事は アクターを1つ追加するという事と 実はあまり大差がなかったりする。

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コンポーネントの問題 Epic Games Japan 岡田さんの過去スライドより https://www.slideshare.net/EpicGamesJapan/robo-recallvr

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コンポーネントの問題 Epic Games Japan 岡田さんの過去スライドより https://www.slideshare.net/EpicGamesJapan/robo-recallvr

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コンポーネントコスト コンポーネントを増やすという事は、 それだけ高いコストをし払うという事。 特に大量に出現するようなアクターでの コンポーネントは最低限にしましょう。

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ケースバイケース

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どう使いわけるか? ■ 継承が有利に働くケース ・大量に出現するキャラの共通処理を作る ・継承クラスでの多態性を実現したい時 ・クラスの親子関係を持ちたい場合

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どう使いわけるか? ■ 包含が有利に働くケース ・クラス機能を明確に分割可能な時 ・多種多様なクラスで汎用処理を使いたい ・複雑な依存性を作りたくない

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クラス設計って大変… ┐(-。-;)┌

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AIキャラクタークラス

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AIキャラクタークラス プレイヤーキャラクタークラスよりも 圧倒的に数が多いのが、このAIキャラクタークラス。 敵だけではなく、 汎用NPCでも同様。

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AIについて 過去に登壇した時に使ったこのスライドが UE4のAIについて簡潔にまとめているのでおすすめ。 『はじめてのAI~ 愛のあるAIを作ろう』 https://www.slideshare.net/masahikonakamura50/ai-ai-62023284

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AIについて ろっさむさんが書かれた、こちらの記事もおすすめ! 『【UE4】味方AIの作り方!AIとは何かを学びながら、 ブループリントで味方キャラクターを実装しよう』 https://qiita.com/4_mio_11/items/9e8af2ce82ee2a7625b5

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AI概略図(抜粋)

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やくわり分担 ・Characterクラス(見た目&コリジョン担当) ・Animationクラス(アニメーション担当) ・AI Controllerクラス(AI制御担当) ・Behavior Tree(AIフロー担当) ・Behavior Treeタスク(AIロジック担当) ・Blackboard(AIデータベース担当) ・AI Components(AI共通コンポーネント担当)

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クラス基礎設計 クラス基盤部分は多くの場合、共通なことが多い。 設計段階で共通部分を抜きだす。 ・プロパティ部分(Health, Speedなど) ・メソッド部分(Init, Action, Moveなど)

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クラス基礎設計 AIの場合、他にも共通部分が多々ある。 ・AI Controller ・Behavior Tree ・Blackboard

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汎用タスクを作る UE4でAIを作る上で最も効率的に 使い回しやすいのが、ビヘイビアツリータスク。

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汎用タスクを作る時のポイント 基盤部分のクラスメンバー以外は使わない。 一方的にビヘイビアツリーから参照されるのみにする。

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汎用タスクを作る時のポイント もしクラス固有機能が使いたければ、 必ずインターフェースを経由する。 依存性さえなければ、そのタスクはあらゆる部分で 使いまわすことが可能となり、バグも発生しない。

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やりすぎない なんでもかんでも汎用化すればいい というものでもないということを念頭に置く。 使い勝手の悪いクラスやコンポーネントを用意しても 最後まで使わないという事は多々あります。

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複雑過ぎる処理 ボスキャラクターなど複雑でスペシャルな処理が 必要なキャラクターは特に汎用化が難しい。 そういう時は汎用化の方が 面倒なので専用タスクにしましょう!

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イベントドリブン設計

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イベントドリブン設計 UE4のAIシステムはイベントドリブン(駆動)で 動かせるように最初から設計されています。 イベントが発生するまでは何も処理させない。 イベントが来て始めてAIは行動する。

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Tickを使わない みんな大好きEvent Tick 。 厳密に言えばこいつもイベントですが、 CPU負荷が簡単に高くなってしまいがちだったり、 複雑な設計の場合には、処理がすぐ煩雑になる。

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Behavior Treeはイベントドリブン Behavior Treeはタスク、デコレーター、サービスといった ノードを使う事で、イベントドリブンに処理されます。 イベントドリブンに処理する事によって、 CPU処理負荷は最低限のものに。 サービスの場合は呼び出しインターバルを 秒単位で設定する事も出来ます。

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AIのイベント AI Perception Componentを使うと、 AIのためのイベントを沢山取得できるようになる。 ・視覚(発見時や消失時) ・聴覚(音発生や寿命) ・痛覚や位置予測なども

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AIのイベント AI Perception Componentの素晴らしき記事。 『【UE4】AI Perception の紹介と使い方』 https://qiita.com/Dv7Pavilion/items/741402f4da609ec595a2 『【UE4】AI Perception の紹介と使い方 その2』 https://qiita.com/Dv7Pavilion/items/2984f2b03711492aa451

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まとめ

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キャラクタークラス設計まとめ ・インターフェースでカプセル化しよう ・継承と包含はケースバイケースで使いわけよう ・AIクラスは汎用化してタスクなどを上手く分けよう ・イベントドリブンで設計しよう