プレス部品製造ライン設備における 耐摩耗強化と生産性向上 株式会社ハヤシ 1/ 26 岩本 泰光 山崎 聡
本日のアジェンダ ・会社紹介 ・ハイテン化による困りごと ・摩耗対策の事例紹介と課題 ・まとめ 2 /26
株式会社ハヤシとは・・ ・本社は大阪で、広島、名古屋、東京、群馬に営業拠点を置く商社 ・取扱商材は金型標準部品、特注部品の設計製作、生産設備治具等 ・会社設立から63年を迎えました ・事業ドメイン:「プレス部品づくり支援」 3 /26
~自動車産業のハイテン化による問題~ ・燃費改善に向けた軽量化、安全性能の追求による高強度化 →高張力鋼板(ハイテン材)、超高張力鋼板(メガハイテン材) の利用が増加 →それに伴い様々な問題が・・ 4 /26
~自動車産業のハイテン化による問題~ ・プレス成形におけるスプリングバックや割れの問題 ・金型部品の摩耗や破損など寿命低下問題 →材料の改良や成形ノウハウの蓄積が進んでいる トランスファー金型の ハイテン材搬送における 課題が浮き彫りに 5 /26
トランスファー金型のハイテン材搬送における課題 ・明らかに摩耗が起きているのに、搬送エラーが発生するまで放置 ・ベテランの作業員でなければメンテナンスが難しい →この課題の対策がしっかりしてないと ・現場の安全性確保が出来ない ・煩雑な作業コストの排除が出来ない ・ライン停止による生産性低下を防げない 6 /26
・トランスファー金型の搬送装置 (フィンガ)に用いられるツメの材質は SS400などの一般鋼材が主流 → → 入手しやすく、安価=「消耗部品」 肉盛修理、交換が当たり前 人的コスト ・修理、交換の手間 ・作業員の安全性確保 ・材料のミスキャッチによるライン停止 → 生産性低下 被加工材のハイテン化が進み、この課題がより一層浮き彫りに 7 /26
~今回の発表概要~ 搬送装置であるフィンガのツメに耐摩耗性に優れた材料を用いて、 適切な熱処理を行うことで、搬送装置の寿命を伸ばすことが出来た ・メンテナンス工数の削減 ・人的コストの削減 ・生産性の向上 改善した! 8 /26
~ハイテン材搬送における摩耗対策事例~ ←ツメにハイテン材を貼り付ける! しかし・・ 非常に手間 & それほど効果が出ない <仮 説> ・摩耗の原因はハイテン材の硬さによる → ツメ自体をハイテン材の硬さや衝撃に耐えうる ものにすれば・・ 9 /26
仮説を立てたら検証するまで ① SS400(通常利用) ② 耐摩耗・耐衝撃性鋼材(30HRC) ③ 耐摩耗鋼材(43HRC) ④ 耐摩耗鋼材(熱処理あり、61HRC) ⑤ 耐摩耗鋼材(熱処理あり、72HRC) 実際に稼働中のトランスファープレスに取り付けてテスト (※被加工材 1,180MPa級ハイテン、ロッカーインナーを成形) 10 /26
表 プレスショット数とサンプル磨耗状況 番号と硬度 プレスショット数 9,000st 32,000st 63,000st 92,000st ①SS400 摩耗あり - - - ②30HRC ざらつきあり ざらつきあり - - ③43HRC 摩耗あり 2~3mmの傷 - - ④61HRC 摩耗なし 摩耗なし 摩耗なし 摩耗なし ⑤72HRC 若干の傷 若干の傷 傷が進行 傷が進行 11 /26
サンプル⑤ 72HRC サンプル③ 43HRC ・チッピング発生 ・熱処理の結果、脆性 が発生? ・摩耗あり ・傷が進行、2~3mm の深さに 63,000ショット 経過時 の⑤の様子 32,000ショット 経過時 の③の様子 サンプル② 30HRC サンプル④ ・表面硬さ<ハイテン材 ・当初からざらつき 61HRC ・摩耗なし 117,000ショット 経過時 の④の様子 8,000ショット 経過時 の②の様子 硬すぎてもダメ・・ 柔らかくてもダメ・・ 12 /26
~以上の検証から分かったこと~ ハイテン貼り付けで 成果が出ない要因? ・仮説は正しかった! ・ただし硬さだけでなく靭性(粘り強さ)も必要! ・耐摩耗鋼材に熱処理を加え、61HRC程度の表面硬さを出せば良い! 【結果】プレス部品製造ラインで 130万ショットでも摩耗 が見られず 13 /26
~ホッパーでの検証~ ホッパーにもフィンガー同様に同じ 硬さのハイテン材を貼り付けたが、 キズ、シワが発生。 【結果】フィンガー同様に熱処理を加え、ホッパーに貼り付ける事で 摩耗見られず。 14 /26
~ブランク材受けの検証~ ・ハイテンのブランク材を受ける材料受けでは同じ個所にそれらが当 たることで凹みが発生し、材料取り出し時に引っ掛かりがあった。 【拡大】 【結果】フィンガー、ホッパー同様に、摩耗が見られず。 15 /26
~以上の検証から分かったこと~ ・今回の対策で、既存のツメの摩耗によって発生していた ミスグリップやチョコ停の防止、メンテナンス等の 工数削減において、確実に効果があげられる! ・しかも、形状によらない! 16 /26
~課題について① 熱処理後の反り~ ・薄板(t=4.5)に熱処理をしたら反りがどうしても発生する。 材料サイズが大きいほど、反り量も多くなる。 150×300mmで 1~3mmの反り 150×300 ・また耐摩耗鋼材は非常に硬い! →まっすぐに矯正する事が難しく、薄板(t=4.5)は研磨も不可。 17 /26
~課題について② メンテナンス性~ ・生産現場でフィンガーなどの微調整 がしにくい。(曲げにくい) 曲げるのに焼きを入れると硬度が下 がる懸念がある。 今回は4カ所に焼き入れを行って曲げ た後に、硬度を測定したがHRC50前 後と硬度が下がっていた。 再度の熱処理は可能だが、リードタ イムが余分にかかる。 18 /26
~課題について③ 耐久性とコスト~ 20万ショット 130万ショット 耐久性はSS400と 比べると高い ・SS400に比べて、当社独自規格のフィンガーは耐久性が高いのは明 らかだが、コストはSS400のフィンガーと比べると3~5倍のコスト アップとなる。ただし、メンテナスフリーでもある。 19 /26
日本のプレス部品づくり業界が勝ち抜いていくために ・現在は100年に一度の自動車産業 の大変革期! ・その中で、世界を相手にしていか なければならない! →生産性の低下を招くあらゆる要因 を排除しなくてはいけない 20 /26
「金型づくり」ではカイゼンの動きがあるが・・ ・金型づくりにおいては、 メーカーの垣根を超え、日本特有の匠の技 とDXを組合せたハイブリッドな方法論により、設計の段階から見直し をかけることで、金型づくりを効率化する動きが進められている。 →自動車金型づくり効率化推進会議 2024年、トヨタ自動車や日産自動車、本田技研 工業、マツダなど自動車(9社)や金型、鋼材、 部品、鋳物、CAD/CAMメーカーなどで発足し、 現在35社が参加する。共通化に向け議論を重ね ており、25年内に実用し、26年にも効率化の実 現を目指す。 金型づくり効率化推進会議の様子 21 /26
「生産ライン」での生産性低下が起きている・・ ・ハイテン材の普及に伴って発生する 摩耗に起因する生産性低下への対策は、 多くのプレス部品づくりの現場で発生 している、まさに喫緊の課題である。 →対策することで、ライン停止による 生産性低下防止の他にも、 現場の安全性確保、煩雑な作業コスト の排除にもつながる! 22 /26
大切な考え方 23 /26
「対症療法」ではなく 「予防措置」! 常に「生産現場の声」 に耳を傾ける! 「イニシャル」 ではなく 「トータル」で 考える! 購買、生産現場、設計など 「全社的な取組」とする! 24 /26
これこそが 世界に誇る日本の プレス部品づくり 業界 ______________________________________________ ______________________________________________ _____________ を、更に強化するための、 大切な考え方である!! 25 /26
ご清聴ありがとうございました 26 /26