走行デザインレビューシステムの紹介【UNREAL FEST 2023 TOKYO】

22.4K Views

June 02, 23

スライド概要

講演アーカイブ:
https://youtu.be/dcWYiLHL47Y

講演内容:
車種開発日程の短期化・魅力的な商品開発に向けて早期の動的評価の需要に応えるべく、開発車種を走行させながらレビューするシステムを開発。そこで使用している技術などを紹介。

講演者:
宇木 孝太郎(株式会社SUBARU)
天野 幹久(株式会社SUBARU)
向井 亨光(シリコンスタジオ株式会社)

株式会社SUBARUについてはこちら:
https://www.subaru.jp/

シリコンスタジオ株式会社についてはこちら:
https://www.siliconstudio.co.jp/

UNREAL FEST 2023 TOKYO 公式サイト:
https://unrealengine.jp/unrealfest/2023/

profile-image

Unreal Engineを開発・提供しているエピック ゲームズ ジャパンによる公式アカウントです。 勉強会や配信などで行った講演資料を公開しています。 公式サイトはこちら https://www.unrealengine.com/ja/

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

走行デザインレビューシステムの紹介 株式会社SUBARU 宇木 孝太郎 株式会社SUBARU 天野 幹久 シリコンスタジオ株式会社 向井 亨光

2.

会社紹介 株式会社SUBARU 創立 1953年(昭和28年)7月15日(創業:中島飛行機 1917年(大正6年5月)) 主な事業内容 【自動車】 自動車ならびにその部品の開発・製造、修理および販売 【航空宇宙】 航空機、宇宙関連機器ならびにその部品の製造、販売および修理 1分 Copyright © SUBARU CORPORATION All Rights Reserved. 2

3.

自己紹介 宇木 孝太郎(うき こうたろう) ◆3DCGテクニカルアーティスト ゲーム業界でコンシューマーゲームソフトの開発に多数参画 2014年に富士重工業株式会社(現:株式会社SUBARU)に入社 コンセプトカー開発や先行研究車両の研究から量産開発まで、ゲームテクノロジーを 活用したデジタル技術によるデザイン開発に従事 2016年頃より、Unreal Engineを取り入れた研究開発に取り組んでいる また、ゲーム業界時代からの無類のクルマ・バイク好きである。 3

4.

走行デザインレビューシステムとは? 4

5.

Copyright © SUBARU CORPORATION All Rights Reserved. 自動車本来の姿でのデザイン開発 5

6.

従来の自動車デザイン評価 実物大のクレイモデル(粘土)で制作 6

7.

従来の自動車デザイン評価 止まってる状態での開発が基本 7

8.

自動車というのは走るもの 8

9.

自動車本来の姿でのデザイン開発実現を目指し CGやVRを活用した様々な手法(≒ビジュアライズ)に挑戦 Copyright © SUBARU CORPORATION All Rights Reserved. 9

10.

取り組み事例① 実写合成による走行シーン再現 マッチムーブを応用し、バックプレートと車両挙動を撮影・再現 オリジナルパノラマカメラで、走行状態のHDRI/環境ファイルを撮影 10

11.

取り組み事例② オリジナルフルCG背景制作 11

12.

新たな課題・ボトルネック 今ココ アニメーションが超苦手 CGスタッフにCADエンジニアが多い 超精密なクラスAモデルの制作はできても、アニメーションは・・・ 12

13.

自己紹介 天野 幹久(あまの みきひさ) ◆デジタルモデラー / CGデザイナー 2016年 富士重工業株式会社(現:株式会社SUBARU)に デジタルモデラーとして入社。 デジタル・クレイ両方のモデリングスキルと経験を活かし、現在はUnreal Engineを 活用した社内外向けのプレゼンテーションコンテンツの制作や、 デザインレビューシステムの開発に従事。 趣味はスノーボード。 ◆携わった車種 XV , FORESTER , SOLTERRA 等... Copyright © SUBARU CORPORATION All Rights Reserved. 13

14.

走行アニメーション作成が苦手の理由 ◆車両の動きの再現の難しさ (走る/曲がる/止まる、路面の状況による変化など・・・) ◆走行用に適した広いCG環境が少ない (静止状態での評価用のHDRI環境はあるが・・・) レンダリングの長さも考えると・・・ 静止評価用のHDRIイメージ 走行アニメーションによる評価を多用できなかった 14

15.

そこで注目したのがUnreal Engine ◆Unreal Engineの魅力 ・高品質なグラフィック, 豊富な素材 ・ゲームエンジンならではの物理演算 ・充実したテンプレート, ブループリント 15

16.

Unreal Engine活用事例① ◆世界観を表現する絵作り 16

17.

Unreal Engine活用事例② -VR検証 17

18.

Unreal Engine活用事例③ -Vehicle Template活用 18

19.

走らせてみた 19

20.

何か物足りない・・・。 20

21.

リアルな走行状態を再現するには足りない要素が沢山ある 21

22.

Unreal Engineは奥深い・・・ 22

23.

シリコンスタジオ様に協力を依頼 23

24.

自己紹介 向井 亨光(むかい ゆきてる) 新規事業企画/プリセールス/プロジェクトマネージャー 2013年 シリコンスタジオ株式会社入社 リアルタイム3DCGの技術をコアコンピタンスとし、Unreal Engineを活用した ソリューションを様々な業界のお客様へ提供 24

25.

会社紹介 シリコンスタジオ株式会社 1999年 設立 1999年11月 上場 東証グロース(2015年2月23日) 本社所在地 東京都渋谷区恵比寿1-21-3 資本金 466百万円(2022年11月末現在) 連結従業員数 261名(2022年11月末現在) 関連会社 イグニス・イメージワークス株式会社 株式会社イリンクス 25

26.

走行デザインレビューシステムPoCの実施 すでに2回のPhaseを実施しており、今回主に紹介するのはPhase2 ◆Phase1でのご要望 ・動的な動きを見ながらレビューしたい ・2台を並走させ比較検討したい ・既存のデザインデータをうまく活用したい 26

27.

Phase1のご要望に対する対応 ◆動的な動きを見ながらレビュー ・動的な動きを再現できるワイディングロードを背景として作成 ・スタティックメッシュの車両データに対する挙動対応 ◆2台並走させ比較検討 ・スプライン1本用いて2台を並走させる仕組みを構築 ・地形(ランドスケープ)に自動的にスプラインを沿わせる仕組み構築することによる作業効率化を実施 ・2台並走のためのカメラ設定 ◆デザインデータの活用 ・Unreal Engineに付属しているCADデータインポートツールDatasmithを活用 ・Datasmithを改造しマテリアル再現度を向上 27

28.

ワインディングロードの作成 28

29.

2台並走用走行パスの仕組み作成 ◆道路の真ん中にスプラインを引けば2台並走が可能 ◆7つのカメラも切り替え可能 29

30.

デザインデータの活用 ◆Datasmithを活用することで形状・マテリアルを両方再現 ・マテリアル再現性が低い箇所があったのでソースを改変し精度を向上 ・Datasmithで取り込んだデータがスタティックメッシュであるためPhase1は手付けの挙動ア ニメーションにて対応 30

31.

Phase1で出来る様になったこと ◆車両データを入れるだけでCGに不慣れな人でも走行状態で確認可能 31

32.

一方、課題も・・・ ◆利便性が高い反面・・・ ・走行環境 / アニメーションが固定されており、汎用性が低い ・手付けのアニメーションによる挙動の追及の難しさ ・車両データの容量により質感、パフォーマンスを上げにくい 等の課題が・・・ 32

33.

Phase2に向けて ◆汎用性を上げる為に ・作成もしくはStoreで配布されているCG環境を活用 ・走行ルートを簡単に指定可能 ◆リアリティの高い挙動や表現を簡単に設定出来る為に ・Unreal Engineの物理演算を活かす ・Niagara等を使用した走行中の空気感の演出 様々なシーンでリアリティの高い挙動を持った 走行アニメーションが作成出来るプログラムを目指す 誰でも 33

34.

作業分担の適正化 SUBARU側の取り組みを増加 / 強化 ◆イメージの共有に手間が掛かった・・・ ダイレクトに伝える為に社内で走行環境を制作 ◆質感やパフォーマンスを上げにくい・・・ 車両データの最適化見直し Silicon Studio様には SUBARUの商品性 及び 起伏や高低差の表現のし易さから 荒野をイメージして作成 プログラム部分に注力頂く 34

35.

Phase2作業内容 ◆車挙動のクオリティ向上 ・Chaos Vehicleを活用したパスアニメーション機能の実現 ◆空気感の演出 ・走行時に発生する粉塵 ・轍(タイヤ跡) ・風に舞う砂煙 ◆データ取り込みの効率化 ・スタティックメッシュのスケルタルメッシュへの自動変換 ◆UE5化 ・UE4.27 → UE5.0.3に変更 35

36.

スプラインとChaos Vehicleを使用した走行 ◆スプラインを走行パスに、挙動再現はChaos Vehicleにて ・Chaos Vehicleの挙動再現に必要なパラメータを外部より制御できるようにBPを修正 ・スプライン情報、アクセル、ブレーキ など ◆走行シーンにコリジョンを仕込んでおけば挙動はChaos Vehicleにお任せ ・リアルタイムに色々トライ&エラーできる ・カーブ具合を変えてみたり ・速度を変えてみたり ◆走行までの手順 ・走行シーン(レベル)を開く ・走行シーンにスプライン(走行パス)を引く ・走らせたい車両をスプラインに紐づける ・シーケンサでアクセル、ブレーキ等の指定をする 36

37.

Chaos Vehicleを用いたリアルな挙動再現 ◆挙動ベイクモードによる動画出力の両立 ・挙動再現 ・Chaos Vehicleによる挙動再現はリアルタイムで計算 ・フレームレートが遅いと挙動再現が不自然になる ・動画出力 ・ムービーレンダーキューによる動画出力はリアルタイム性は必要ない ・高解像度出力やパストレーサーの活用の場合出力時間をかけたい ◆Chaos Vehicleの挙動をベイクするモードを準備 ・あらかじめ走行パス(挙動)をリアルタイムで色々検討 ・いいパスが見つかったらベイクそれを綺麗にレンダリングというフローが可能に 37

38.

空気感の演出 - 粉塵の再現 ◆Niagaraを使用 ◆複数種類のエフェクトを組み合わせるリアリティ感を向上 ◆以下を調整可能にすることで様々なシーンでの粉塵として活用可能に ・色 ・濃さ ・発生範囲 38

39.

空気感の演出 - 轍の再現 ◆ディスプレイスメントを使用 ◆タイヤの接地具合によって発生度を調整 ◆デフォルトの深さも調整可能 39

40.

空気感の演出 - 風に舞う砂煙の再現 ◆Niagaraを使用 ◆以下を調整可能にすることで様々なシーンでの砂煙として活用可能に ・色 ・濃さ 40

41.

スケルタルメッシュ変換プログラム ◆スタティックメッシュで出力されたfbx形式の車両データを挙動再現可能なス ケルタルメッシュに変換する外部プログラムを開発 ・あるルールにのっとって作られた車両データであればスケルタルメッシュ化が可能 ・fbx形式であればどのようなアプリから出力されたデータにも対応可能 ・開発にはfbxsdkを使用 41

42.

最終成果動画 42

44.

今回の取り組みの成果 ・・・まだまだ課題はあるが 「自動車本来の姿でのデザイン評価」を実現 ◆エクステリア ⇒ ハイライト・リフレクションの変化を車両姿勢・外部環境が変わる中での確認が容易に ◆インテリア ⇒ 外部環境の変化による影響を造形のみならず、視認性や操作性含めた新たな視点での検討が可能に ◆コストメリット ⇒ アニメーション制作コスト削減はもちろん、リソース最適化で元々の強みであった造形力も向上 44

45.

最後に 【Unreal Engineのポテンシャル・魅力】 =色んなジャンルのアーティストやエンジニアがアイデアを発揮できること =自動車業界に様々なソリューションやバリューをもたらしている Unreal Engineをハブに様々な業界の方と交流を深めていくことで よりバラエティー豊かな取り組みにつなげていきたいと思っています。 45

46.

Thank you ! 46

47.

アンケートへのご協力をよろしくお願いします <https://forms.gle/1qSCdsJhRYnmkfEX6> 47