病院で働く技師による深層学習を用いた研究

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April 11, 20

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第76回 日本放射線技術学会総会学術大会 Symposium 2

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診療放射線技師です.

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各ページのテキスト
1.

病院で働く技師による 深層学習を用いた研究 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部 片山 豊

2.

本日の講演内容に関する利益相反事項は, ☑ ありません

3.

自己紹介 職歴 • • • • • 1998 年: オートバイ用マフラーの開発・製造 2003 年: 大阪大学医学部附属病院 2004 年: 市立泉佐野りんくう総合医療センター 2006 年: 社会医療法人仙養会 北摂総合病院 2007 年: 大阪市立大学医学部附属病院 研究歴 • • • • • • 1. 2. 3. 2006 年: モンテカルロシミュレーションを用いた医療被ばく線量評価 2010 年: スパースコーディングを用いた Stereo Matching1 2013 年: バイラテラルフィルタを用いたデノイズ処理2 2014 年: スパースコーディングを用いた超解像 2017 年: 深層学習を用いた超解像 2018 年: 超解像を用いたデノイズ処理3 日本学術振興会 科研費 脳動脈瘤コイル塞栓術において個々のコイル形態をモニタリングする装置の開発 (JP19K09533) 片山 豊, 上田 健太郎, 日浦 慎作, 他. 骨シンチグラフィへのバイラテラルフィルタの適用. 日本放射線技術学会雑誌, 2013, 69.12: 1363-1371. 片山 豊, 上田 健太郎, 日浦 慎作, 他. PET 画像に対する超解像を用いたデノイズ手法の適用. 日本放射線技術学会雑誌, 2018, 74.7: 653-660.

4.

深層学習を用いた研究の問題点 • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫

5.

深層学習を用いた研究の問題点 • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫

6.

課題の設定 • 深層学習は課題を適切に設定することが大切 • 設定した課題が別ので解決できるなら, 処理速度・誤差要因の少なさ等の理由から, 深層学習を用いて改題を解決する必要は無い • 深層学習を用いることが目的ではない • 目的は課題の解決であり,深層学習は手段の一つ

7.

深層学習を用いた研究テーマ 敵対的生成ネットワーク (Generative Adversarial Networks: GAN) 物体検出 (Detection) 画像認識 (Segmentation) (Super-Resolution) 画像分類 (Classification) 画像解析 超解像 ノイズ低減 (Denoise) 画像処理 自然言語 処理 (Natural Language Processing)

8.

深層学習を用いた研究の問題点 • 画像解析の課題は技師主導に進めにくい • 画像分類・物体検出・画像認識 ⇒ 教師データにはカルテ情報 or 所見が必須 • 正常解剖の画像認識 ⇒ 教師データの作成にトレーニングが必要 • 画像処理の課題は技師主導で進めやすい • 超解像・ノイズ低減 ⇒ 既存アルゴリズムの置換・発展系が多い ⇒ 必ずしも教師データに医用画像を必要としない • 画像評価の方法が未確立 ⇒ 視覚評価以外の画像評価に使う物理的指標が未定

9.

一般的な画像評価手法 • 処理画像の評価には,Peak Signal to Noise Ratio (PSNR) や Structural SIMilarity (SSIM) などの 完全参照画質メトリクスを用いることが一般的 ⇒ 物理指標と視覚評価の結果に相関がない報告4 旧来手法 ↓ 最高値 最新手法 ↓ 最低値 4. Yochai Blau and Tomer Michaeli. The Perception-Distortion Tradeoff. arXiv:1711.06077, 2017

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非参照画質メトリクスの導入 • 非参照画質メトリクス ⇒ 入力画像の統計的な特徴量を使用して画質評価 ⇒ 非参照画質メトリクスは知覚品質を評価 • Naturalness Image Quality Evaluator (NIQE)5 ⇒ 自然画像から学習したモデルと入力画像を比較 • Perception based Image Quality Evaluator (PIQE)6 ⇒ 教師なし手法のため学習したモデルを必要としない • NIQE は自然画像から学習したモデルを使用 • 自然画像と放射線画像は特性が異なるため使用には工夫が必要 • 非参照画質メトリクスを用いた評価は課題の一つ 5. A. Mittal , et al. "Making a “completely blind” image quality analyzer." IEEE Signal Processing Letters 20.3 (2012): 209-212. 6. N. Venkatanath, et al. "Blind Image Quality Evaluation Using Perception Based Features.” In Proceedings of the 21st National Conference on Communications (NCC). Piscataway, NJ: IEEE, 2015.

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深層学習を用いた研究の問題点 • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫

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Scikit-Learn Algorithms Cheat-Sheet Scikit-Learn: Python のオープンソース機械学習ライブラリ

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データセットの利用 • 公開されているデータセットの利用であれば, アルゴリズムの開発のみ • 画像と病理が紐付いている疾患のデータセットが多い ChestX-ray14 (NIH) 30,805 人/112,120 枚 CheXpert (Stanford ML Group) 65,240 人/224,316 枚 MINIC-CXR (MIT) 65,370 人/227,835 枚 ⇒ 公開データにはラベル間違いがある (ChestX-ray14) ⇒ 公開データを用いる場合はラベルのチェックが必要

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データセットの作成 • 深層学習で精度を出す根幹はデータの質と量 • モデルの性質や目的によって必要なデータが変わる • どの様な特徴を抽出してどの様なモデルを作るかが重要 • 深層学習は学習データが多くなることで性能向上 • 正しいデータは多ければ多いほど良好データセット • 必要な医用画像を大量に取得することが最大の課題

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データセットの作成 • 画像解析 (病気の検出や分類) の教師データ • 病気のある画像のみが必要 • 病気の組成がわかる • 病理検査の結果があればベスト • 画像処理の教師データ The standard digital image database with and without chest lung nodules Japanese Society of Radiological Technology • 必要な特徴が得られるのであれば自然画像で問題ない ⇒ ImageNet や DIV2K で 公開されているのデータセット • 自然画像のみでは査読者の • 理解が得られない可能性 DONG, Chao, et al. Image super-resolution using deep convolutional networks. IEEE transactions on pattern analysis and machine intelligence, 2015, 38.2: 295 -307.

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深層学習を用いた研究の問題点 • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫

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開発環境 • GPU が搭載された 全てのコンピュータに環境構築が可能 • CUDA を使った GPGPU には NVIDIA 製 GPU が必要 ⇒ 開発環境の構築や整合性を図ることが必要 • NVIDIA 製 GPU を搭載した Windows 限定になるが, Neural Network Console (Sony) の導入 • 高価だが事前に 開発環境が組み込まれている コンピュータの導入 ⇒ 環境構築が不要,研究に集中できる

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Automated Machine Learning • 機械学習モデルの設計・構築を 自動化するための手法全般,またはその概念 • Cloud Service ⇒ Google/AutoML Tables,IBM/AutoAI, ⇒ Microsoft/Automated ML,Sony/Prediction One ‥ • 用意したデータを基にモデルの構築を行う ⇒ 専門家でなくても高品質なモデル生成が可能 • Coding についての学習を省略 ⇒ 深層学習の基礎となる数学や統計の学びに充当

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深層学習を用いた研究の問題点 • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫

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研究を継続するための工夫 • 最新の論文を検索し世間のトレンドに注目 ⇒ 深層学習を用いた研究が非常にトレンド • 深層学習で解決する課題と仮説の選び方 ⇒ 自動化の課題選びと同じ ⇒ 人間が行っていることを置換

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深層学習を用いた研究の現状 • 工学系では幻滅期7 ⇒ 医用画像による病変検出は医師の代替 • AI でないとできないことがない • テクノロジーとしの面白さが少ない • 医療系では明瞭期 (臨床応用期) ⇒ AI の普及は臨床の現場で有意義 ⇒ 便利なツールが登場しているので簡単に導入可能 • 画像解析・画像処理ともに導入の目的が明確 ⇒ 深層学習を臨床の現場にどう落とし込むかが課題 ⇒ 研究テーマは臨床の現場にある 7. ガートナー. 日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル. 2019年

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最後に • 課題の設定 • 課題に相応しいデータセットの作成 • 開発環境の構築 • 研究を継続するための工夫