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入試問題解説 第 22 回:二 項 係 数 の 重 み づ け 2020 千 葉 大 前期 理系
入試問題解説 問題 正の整数 n に対して, an = n P k=0 n Ck ; bn = n P k=0 n Ck k; cn = n P n Ck k=0 k + 1 ; dn = n P k=0 n Ck k 2 とする。 (1) an を求めよ。 (2) bn を求めよ。 (3) cn を求めよ。 an bn (5) 極限値 lim を求めよ。 n!1 cn dn (2020 千葉大 前期 理系) (4) dn を求めよ。 ■ 本問の学習テーマ・目的 1 ,k2 を掛けて加えたもので k+1 す。この掛ける数を,ここでは「重み」とよぶことにします。(1 + x)n を二項展開し, 本問の 4 つの和は,二項係数 n Ck にそれぞれ 1,k, 代入・微分・積分を使い分けて 4 つの和を求めます。 解説では,重みが k の多項式である場合と,分母に k + s を含む場合について,一般的 な公式を導きます。公式を暗記するのではなく,重みの形から計算方法を選べるように しましょう。 指針 / アプローチ ▼ 二項定理による展開 n ▼ 微分・積分による重みづけ ▼ 代入と極限の計算 1 重み k は x を微分して, k+1 は 積 分 し て つ く り ま す 。 k2 は k(k ¡ 1) + k に分けます。 微分したあとは x = 1 を代入し, 積分は 0 から 1 までの定積分と します。(5) では結果を代入して 約分します。 k (1 + x) を展開します。すぐに x = 1 を代入せず,xk を残して おいて微分や積分に用います。 dn では,xk を 2 回微分したときの係数が k2 ではなく k(k ¡ 1) になることに注意します。 k2 = k(k ¡ 1) + k と分け,2 回微分と 1 回微分を組み合わせましょう。 解答 二項定理より,(*1) (*1) ①は x について n P (1) ①の両辺に x = 1 を代入すると,an = 2n の恒等式です。右辺は 有限個の項の和なので, 項ごとに微分・積分で きます。 (2) ①の両辺を x で微分すると,(*2) (*2) k = 0 の項は定 (1 + x)n = k=0 n(1 + x)n¡1 = n P k=1 k n Ck x ÝÝ ① kn Ck xk¡1 ÝÝ ② bn の k = 0 の項は 0 であるから,②の両辺に x = 1 を代入すると,bn = n2n¡1 (3) ①の両辺を x について 0 から 1 まで積分すると, Z1 Z1 n P (1 + x)n dx = C xk dx n k 0 k=0 --- 1 --- 0 © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 数で,微分すると 0 に なるので,右辺は k = 1 からの和になり ます。
入試問題解説 となる。ここで Z1 0 xk dx = cn = Z1 0 1 であるから,右辺は cn に等しい。よって, k+1 1 (1 + x)n dx = (1 + x)n+1 2n+1 ¡ 1 ˜ = n+1 n+1 0 (4) n ≧ 2 とする。①の両辺を 2 回微分すると, n(n ¡ 1)(1 + x)n¡2 = n P k=2 k(k ¡ 1)n Ck xk¡2 ÝÝ ③ k2 = k(k ¡ 1) + k と分けると,k(k ¡ 1) の和では k = 0; 1 の項が,k の和では k = 0 の 項が 0 になるから, dn = n P k=2 k(k ¡ 1)n Ck + n P k=1 kn Ck となる。よって,②,③の両辺に x = 1 を代入して, dn = n(n ¡ 1)2n¡2 + n2n¡1 = n(n + 1)2n¡2 n = 1 のとき,定義より d1 = 1 であり,これは n(n + 1)2n¡2 に n = 1 を代入した値 1 と 一致する。よって,すべての正の整数 n に対して dn = n(n + 1)2n¡2 である。(*3) (*3) n = 1 のとき③ の右辺は k = 2 から k = 1 までの和となる ので,この式は n ≧ 2 のときに用います。 n = 1 の場合は dn の 定義に戻って直接確か めます。 (5) (1)〜(4) より, an bn 2n+1 = = n+1 cn dn 2 ¡1 an bn n!1 cn dn したがって, lim 1 1¡ 1 2n+1 =1 答案記載上の注意点 答案では,二項展開の式に対してどのような操作(代入・微分・積分)を行ったかを明記し, その結果が問題文の和と一致することを示します。和の範囲と n の条件も確認しましょう。 ▼ ポイント 1:微分後の和の範囲 1 回微分した式は k = 1 からの和,2 回微分した式は k = 2 からの和として書きます。k = 0 の定数項を残したまま形式的に 0 ¢ x¡1 と書くと,x = 0 で意味をもたない式になってしまい ます。微分して 0 になる項は除いて,k = 1 からの和,k = 2 からの和に書き直しましょう。 ▼ ポイント 2:k2 の分解と n = 1 の確認 k2 = k(k ¡ 1) + k を明記し,2 回微分と 1 回微分で求めた和を加えます。2 回微分した式は n ≧ 2 のときに用いるので,n = 1 のときは定義に戻って,求めた式が成り立つことを確かめ ます。 --- 2 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 ▼ ポイント 3:極限の前の約分 cn の分子 2n+1 ¡ 1 を途中で 2n+1 とみなしたりせず,(1)〜(4) の結果をそのまま代入して約 2n+1 となり,分母・分子を 2n+1 で 分しましょう。n や n + 1 などの因数を約分すると n+1 2 ¡1 割れば極限がすぐにわかります。 解説 1. xk を残す意味 学習テーマで述べたように, n P k=0 n Ck wk の wk を「重み」とよびます。本問の 4 つの和は,二 項係数に掛かる重みが違うだけです。最初から x = 1 を代入すると,重みがすべて 1 の和 (an )しか求められません。xk を残しておけば,ほかの重みをつけることができます。例えば ①の両辺に x = t(t は実数)を代入すると n P k=0 k n n Ck t = (1 + t) となります。t = 1 のとき は an ,t = ¡1 のときは符号が交互に変わる和になります。(*4) 微分や積分も,xk から必要な 重みをつくるための操作です。 (*4) 微分・積分の変数 x と区別するため,代 入する値を t で表して います。 2. 重みが多項式の場合 xk を 1 回,2 回,3 回と微分すると,係数には k,k(k ¡ 1),k(k ¡ 1)(k ¡ 2) が現れます。 これらの積をまとめて扱うため,実数 y に対し, Q0 (y) = 1; Qr (y) = y(y ¡ 1)Ý(y ¡ r + 1) (r = 1; 2; : : :) とおきます。r ≧ 1 のとき Qr (y) は r 個の因数の積です。1 ≦ r ≦ n として①の両辺を r 回 微分すると, n P k=r k¡r = Qr (n)(1 + x)n¡r n Ck Qr (k)x となります。 この両辺に xr を掛け,0 ≦ k < r を満たす整数 k では Qr (k) = 0 であることを使うと,和 を k = 0 からの和に戻すことができ, n P k=0 k r n¡r n Ck Qr (k)x = Qr (n)x (1 + x) ÝÝ ④ となります。x = 1 を代入すると, n P k=0 n¡r n Ck Qr (k) = Qr (n)2 ÝÝ ⑤ です。r = 0 のとき④は①そのものです。また,r > n のときは,0 ≦ k ≦ n を満たすすべて の整数 k について Qr (k) = 0 であり,特に Qr (n) = 0 なので,⑤の両辺はともに 0 になり ます。したがって⑤は 0 以上のすべての整数 r について成り立ちます。(*5) (*5) ④は r ≦ n のと では,どんな多項式 P(k) でも Q0 (k); Q1 (k); : : : の定数倍の和で表せるでしょうか。Qr (k) きに限って用います。 r > n でも成り立つの は,x = 1 を代入した ⑤のほうです。 は最高次の項の係数が 1 の r 次式です。m ≧ 1 として,m 次多項式 P(k) の最高次の項を ®m km とします。このとき P(k) ¡ ®m Qm (k) は 0 または m ¡ 1 次以下の多項式になりま --- 3 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 す。残った式の次数が 1 以上なら同じ操作を繰り返します。最後に残った定数を Q0 (k) = 1 の定数倍とみなせば,定数 ®0 ; ®1 ; : : : ; ®m を用いて P(k) = m P r=0 ®r Qr (k) ÝÝ ⑥ と表せます。P(k) が定数の場合も m = 0 として P(k) = ®0 Q0 (k) と表せます。P(k) が つねに 0 なら ®0 = 0 です。また,2 通りに表せたとすると,2 つの式の差は k の値によらず つねに 0 になります。一方,係数が異なる Qr (k) のうち r が最大のものに着目すると,差の 式ではその次数の項が消えずに残ります。これは矛盾です。したがって,この表し方はただ 1 通りです。 例えば k3 ¡ Q3 (k) = 3k2 ¡ 2k,(3k2 ¡ 2k) ¡ 3Q2 (k) = k なので,k3 = Q3 (k) + 3Q2 (k) + n P Q1 (k) です。⑤を用いれば k=0 n Ck k 3 = n 2 (n + 3)2n¡3 と計算できます。 一般に⑥の各項に⑤を用いれば, n P k=0 n Ck P(k) = 2 n m ® Q (n) P r r 2r r=0 ÝÝ ⑦ と表せます。P(k) が n を含まない m 次多項式なら,右辺は 2n と n の m 次式の積です。 本問の bn = 2n n(n + 1) n ,dn = 2n も,この形になっています。 2 4 3. 微分と二項係数の変形の対応 微分を使わなくても二項係数の変形から同じ結果を導けます。0 ≦ r ≦ k ≦ n を満たす整数 r; k について階乗の定義を使うと, Qr (k)n Ck = k! n! ¢ = Qr (n)n¡r Ck¡r (k ¡ r)! k!(n ¡ k)! ÝÝ ⑧ です。r = 1 のときの kn Ck = n n¡1 Ck¡1 は bn を求めるときによく使う変形です。r = 2 と すれば dn の計算にも使えます。(*6) (*6) ⑧は k ≧ r の範 1 ≦ r ≦ n とすると,k < r の項は 0 なので,⑧を用いて 囲で使います。 0 ≦ k < r では左辺 Qr (k)n Ck が 0 なの で,右下の添字が負に なる二項係数を用いる 必要はありません。 n P k=0 n Ck Qr (k) = Qr (n) n P k=r n¡r Ck¡r = Qr (n)2 n¡r となり,⑤と一致します。 2 つ目の等号では,k が r から n まで動くとき k ¡ r が 0 から n ¡ r まで動くことから,二 項定理を用いて和を 2n¡r としています。 ①の両辺を 1 回微分した②で xk¡1 の係数を比較すると,kn Ck = n n¡1 Ck¡1 (1 ≦ k ≦ n )と なります。⑧は,これを r 回微分した場合に広げたものです。微分と二項係数の変形を別々の 公式として覚える必要はありません。 --- 4 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止
入試問題解説 4. 分母に k + s を含む場合 1 本問の は xk を積分すると現れます。正の整数 s に対して k+1 なので,①の両辺に xs¡1 を掛けて 0 から 1 まで積分すれば, n P n Ck k=0 k + s = Z1 0 xs¡1 (1 + x)n dx Z1 0 xk+s¡1 dx = 1 k+s ÝÝ ⑨ となります。s は正の整数なので被積分関数は多項式です。なお,s 回積分するのではなく, xs¡1 を掛けて 1 回積分します。 Z 2 u = 1 + x とおくと右辺は (u ¡ 1)s¡1 = s¡1 P j=0 1 (u ¡ 1)s¡1 un du になります。 (¡1)s¡1¡j s¡1 Cj uj と展開して積分すると, n P n Ck k=0 k + s = s¡1 P j=0 (¡1)s¡1¡j s¡1 Cj 2n+j+1 ¡ 1 n+j+1 (*7) s > 1 でも ÝÝ ⑩ (1 + x)n を展開し直す となります。これで,n + 1 個の項の和を s 個の項の和に書き換えられました。s が小さけれ ば,n がいくら大きくても少ない項数で計算できます。s = 1 の場合が本問の cn です。(*7) 1 1 C = C と変形する方法もあります。この等式は階乗 n + 1 n+1 k+1 k + 1n k で表せばすぐに確かめられます。j = k + 1 とおくと,j は 1 から n + 1 まで動くので,この また,s = 1 なら 等式を用いて cn = P 1 n+1 2n+1 ¡ 1 n+1 Cj = n + 1 j=1 n+1 となります。j = 0 の項を含まないので,2n+1 から n+1 C0 = 1 を引いています。 5. 重みを組み合わせた和 実数 t に対し,P(k)tk のように重みを組み合わせた和も求められます。微分で Qr (k) の重 みをつけ,両辺に xr を掛けてから x = t を代入します。⑥の P(k) について n ≧ m とする と,④と二項定理より, n P k=0 k n Ck P(k)t = m P r=0 ®r Qr (n)tr (1 + t)n¡r ÝÝ ⑪ となります。m > n の場合は,r > n のとき 0 ≦ k ≦ n でつねに Qr (k) = 0 となるので, ⑪の右辺の和を r = n までとした式が成り立ちます。なお,⑪において t = 0 のときの t0 や,t = ¡1 のときの (1 + t)0 などは 1 として扱います。t = 1 を代入すると⑦になります。 重み 二項展開の式に対する操作 k t x = t を代入します。t = 1 のときは重みが 1 です。 P(k) 1 k+s Qr (k) の定数倍の和で表し,微分してから x = 1 を代入します。 P(k)tk xs¡1 を掛けて 0 から 1 まで積分します。 微分で Qr (k) の重みをつけ,xr を掛けてから x = t を代入します。 --- 5 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止 必要はありません。置 換後に (u ¡ 1)s¡1 を 展開します。
入試問題解説 表の P(k) は k の多項式です。二項係数を含む和ではまず重みを確認し,xk にその重みをつ ける操作を考えましょう。 ■ 復習のポイント 本問では,次のポイントを重点的に復習しましょう。 ★★★★★ 重みに応じた操作:xk に対する代入・微分・積分を使い分ける ★★★★★ 重みが k の多項式の場合:1; k; k(k ¡ 1); : : : の定数倍の和に直す ★★★★★ 2 つの解法の関係:微分と二項係数の変形を対応させる ★★★★☆ 分母の処理:xs¡1 を掛けてから積分し,分母 k + s をつくる ★★★★☆ 適用範囲:和の範囲と n ・r・s の条件を確認する --- 6 --- © ブリザードマン @HhG2cL9UOLRSz4I 無断転載・共有禁止