持続可能な教材開発プロジェクトのために教師がWebですべきこと

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August 14, 16

スライド概要

2016PCカンファレンス(@大阪大学 2016.08.12)分科会での角南北斗の発表スライド。

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教育系ウェブデザイナー

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各ページのテキスト
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2016 PC CONFERENCE(2016.08.12 持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと 角南 北斗(web designer

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発表者について

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Sunami Hokuto Blog: withcomputer.jp Site: sunamihokuto.com Twitter: @shokuto

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教育系Webデザイナー 専門は日本語教育学 ✴ このキャンパスで6年間学びました 教師 から 教材開発者 へと軸足をシフト ✴ 技術者と教師をつなぐディレクターとして ✴ 情報教育やプレゼンの分野で講師業は継続

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発表者と教材開発プロジェクト 日本語学習に関するサイトやアプリを 研修機関や大学教員などと共同開発。 ✴ 辞書ツールや教材紹介サイトなど ✴ 制作そのものの技術的サポートだけでなく、 研究費の申請書や論文を書いたり、 授業やイベントの設計もしたりします。

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと

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教材開発の経験はありますか?

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Web以前の教材開発 関係者用の簡易的な自主制作教材か、 きちんと作り込む出版物か、の二択。 出版教材はコストがかかるだけでなく、 コストを回収できる商品でないとダメ。 ✴ 出版社のビジネスモデルに合うかどうか ✴ 学外がターゲットのニッチな教材は難しい

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Webを使った教材開発 印刷物では不可能な表現や機能が可能 ✴ 紙よりスマホの方を好む学習者も多い時代 世界中の学習者に教材を届けられる ✴ 出版よりコストを抑えられる場合もあり、 商業ベースに乗せにくいニッチなものでも可能。 ✴ 海外など出版物の販売ルート外にも届けられる

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サイトやアプリのおかげで 教材を作るための手段は増えた。 結果、世の教材も充実した.. か?

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと

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サイトやアプリの教材が ある日消えてなくなってしまう?

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教材提供が続かない現実 初回公開以後、アップデートされない ✴ データの誤りや機能的不具合があっても放置 ✴ やがて最新の利用端末では動かなくなる 数年後には公開が終了してしまう ✴ 予算がなくなったので公開終了です (テヘッ ✴ 担当が他大学に異動したので消しました (キリッ

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そもそも利用者に周知されてない 教材がターゲットに届いていない ✴ 授業で強制的に利用者が確保される場合でも 関係教員の協力が十分に得られていない ✴ 学外の一般対象だと広報効果はかなり厳しい 教材がいかに使われるか?について 教員側の意識(+資金やスキル)が低い ✴ 作ることで燃え尽きてしまう人が多い

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なんでそうなるねん!

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そうなりがちな理由を 出版教材とサイト・アプリ教材の 比較で考えてみる。

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出版教材における出版社の仕事 教材が出版物の場合、 多くの作業を出版社がしてくれる。 ✴ 企画と構成のアドバイス ✴ 版下データ作り ✴ 印刷、製本、流通 ✴ 販売、販促活動、在庫管理

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IT教材における制作会社の仕事 教材がサイトやアプリの場合、 多くの作業は外注するか自前で賄う ✴ 企画と構成のアドバイス ← 自前? ✴ 版下データ作り ← Web制作会社に外注 ✴ 印刷、製本、流通 ← サーバー会社に外注 ✴ 販売、販促活動、在庫管理 ← 自前?

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教材データの作成 出版社は版下を「無料で」作ってくれる ✴ そういうビジネスモデルなので、 教師側はそのコストは気にしなくてもいい サイトやアプリの教材の場合、 制作会社にお金を払って作ってもらう。 ✴ 制作内容によって支払う金額や納期も変化 ✴ コストを意識せざるをえない

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教材の公開(公開状態の維持) 出版物は出版社が流通に乗せてくれ そのコストも負担してくれる。 ✴ そういうビジネスモデルなのでお任せできる サイトやアプリの公開は ホスティング会社などにお金を払い続ける ✴ 「え?作ってからもお金がかかるの!?」

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広報・宣伝 販促活動の大半は出版社が行なう ✴ そういうビジネスモデルなので(略 ✴ 販促のツール、ルート、ノウハウを持っている 制作会社は基本的には作るだけ ✴ 教師は予算もツールもルートもノウハウもない? ✴ コンサルしてくれる会社はごくわずか&高コスト

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利用者の声の収集と評価 出版物では売上が大きな評価指標 ✴ 売上がすべてではないがビジネス的には大きい サイトやアプリは評価が曖昧にされがち ✴ 評価指標や目標を教師が設定していない ✴ 特に無償公開モノは収益面の期待がなく 作り手の自己満足で終わりがち。

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教材設計のアドバイス 出版社に教材作りの経験がある場合 質を高める助言も期待できる。 ✴ ニーズ調査、デザインやコンセプトの提案など ✴ 売れてくれないと困るから出版社も真剣 多くの制作会社は教育分野は素人 ✴ 教師の指示通りに作ることに終始しがち ✴ 作業コストのかかる提案はしにくい

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その結果 ターゲットが不明な質の低い教材に 広報もアップデートもできずに資金が枯渇 作り手の労力に見合わない成果 ✴ 作ることが目的、というのは業界として問題

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出版社がやってくれていた役割

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出版社がやってくれていた役割 ☞ 誰も担わなかったから

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出版社がやってくれていた役割 ☞ では誰に担ってもらう?

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出版社はどう? 出版社は技術に明るいとは言えない ✴ サイトやアプリの制作技術もそうだが ビジネス面でも経験が足りない場合が多い 書籍のような定型化と量産が難しい ✴ サイトやアプリを1つずつ作り込むとなると、 小規模な売り切り型の教材はコスト回収が困難

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Webやアプリの制作会社は? 教材単体で売上が見込めるなら良いが… サービス事業化して収益を狙う場合、 教師はリソースの1つにすぎない。 ✴ 多くの利用者が見込める分野にターゲットを絞る ✴ サービス設計において教師の重要度は低く、 リソースの提供者という端役になりがち。

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代わりの誰かは 期待できない。 かくなるうえは…

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと

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教師が自分で何とかする 出版社や制作会社のインフラに乗れるのは マス向けの教材だけ。 ニッチで現場に応じた小さな教材は 教師個人ベースでコストを抑えつつやる。 ✴ ウェブはそうした小さな試みに向く媒体

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小さな教材開発での教師の役割1 学習に関する知見やリソースだけでなく、 そのパッケージングまで意識を向ける。 ✴ それを必要とする学習者はだれ? ✴ その学習者はどこにいる?どうやって届ける? ✴ データの形式や、媒体、デザインは何がいい?

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小さな教材開発での教師の役割2 パッケージングに必要な技術や人材は どこからどのように調達する? ✴ 技術者(制作会社)とパートナーになる ✴ 教材を求める現場(コミュニティ)との連携 ✴ 広報や宣伝に協力してくれる仲間を見つける ✴ 資金調達のための事業デザイン

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Webは個人を活かせるメディア 一人ですべてのスキルを持たなくても、 個が連携することでカバーしあえる。 Webで、個を見つけ、連携し、届ける ✴ SNSを使うことで個は見つかる・連携できる ✴ ソーシャルでは個が個に教材を届けられる ✴ 教師自身がWebを活用すれば理解も深められる

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと

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持続可能な教材開発 プロジェクトのために 教師がWebですべきこと =プロジェクトマネージメント

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それ、あんたが 制作で楽したいから 言ってるんじゃない?

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それ、あんたが 制作で楽したいから 言ってるんじゃない? 確かに半分はそう。 でも半分はもっと大事な理由。

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今後、マネージメントしない教師は 学習者に不要と言われるのでは?

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教師の仕事って? 学びに必要なリソースの多くは 世の中にすでに存在している。 ✴ 教師しか知らないことなんて、そうそうない そのリソースを整えて提供する、 それが教師の仕事だと考えると..? ✴ 授業も教材制作もマネージメントは重要な仕事

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コンテンツを整える人たち 今は「本で / 学校で」の2択ではない 学校の外にも「整えられた学びの環境」が 豊富に存在し選択できる時代。 ✴ MOOCs、YouTuber、学習サービス、SNSなど ✴ 学習者が自分の都合で選べるような状況 ✴ そうした他の「リソースを整える」存在と 教師は競争?協奏?共創?の関係にある

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教師が直面するであろう現実 マスのプラットフォームに乗っかって リソースを携えて待っているだけで、 学習者が寄ってくる時代は確実に終わる。 学習者が寄ってこない場所の教師は どんどん「いらなくなっていく」。

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これからの時代の教師 プラットフォームにあぐらをかかずに、 リソースを整え届けるための能力を 教師自身も持っていることが重要になる。 ✴ それは教育のマネージメントであり 教育のデザインではないか。

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教材だけでなく教育全体も.. マス向けのインフラの力が弱まり、 Webで個人がその多様性を活かす時代 ✴ 学習者も多様、教師も多様、教材も多様 多様かつ変化していく時代に、 教師が教育のプロであり続けるためには マネージメントスキルも重要では?