これが教師の生きる道? ースマホ時代のことばと学習ー

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February 17, 16

スライド概要

第9回専門日本語教育研究協議会(2016年2月16日@大阪大学)での、角南北斗の発表スライド。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

これが教師の生きる道? スマホ時代のことばと学習 角南 北斗(Sunami Hokuto) 2016.02.16 @Osaka University 第9回 専門日本語教育研究協議会

2.

もう 先生とか いらないかも?

3.

[1] 自己紹介と 本講演の立ち位置

4.

角南 北斗 Sunami Hokuto

5.

フリーランス

6.

Web + 学習

7.

フリーランスになる前のこと 大阪大学大学院で日本語教育を専攻(修士) コミュニカ学院(日本語学校)で講師 ✓ 中上級クラスを3年ほど担当 国際交流基金関西国際センターで教材開発 ✓ 学部生のころからフリーランスになって以降も 計10年ほど勤務(週2日程度)

8.

教師から支援者へ路線変更 自身が教師として教育を行うことから、 IT分野からの教育支援へ、軸足を移すことに ✓ 教育現場とITとの深い溝を見たのが原因 大学院 → Web系専門学校 → フリーランス ✓ 最初は教育機関のWebサイトを中心に制作 最近はIT教材の開発・コンサルティングを ✓ 単なる技術屋ではなく予算獲得から学会発表まで

9.

日本語でケアナビ 外国人介護福祉士向け語彙学習ツール

10.

介護の漢字サポーター 介護福祉士試験の漢字学習を効率的に

11.

経済のにほんご 経済学部の留学生向けに4言語対応

12.

NIHONGO eな 日本語学習サイトの活用方法を紹介

13.

Classroom Resources JFシドニー運営の教材提供サイト

14.

日本語以外では講師業も ITスキル・情報教育 ✓ 情報リテラシー ✓ OfficeやAdobeのソフトの入門 ✓ 情報検索:図書館司書向け コミュニケーション・マネジメント ✓ プレゼンテーション入門 ✓ 飲食店開業入門:調理師学校の学生向け

15.

Web 学習 技術者 教師 複数の領域をつなぎ、 その重なりをデザインする仕事

16.

Design

17.

User

18.

Learner

19.

本セッションの立ち位置 日本語教育業界ど真ん中、ではない話を 教師視点ではなく、学習者視点での話を ✓ 教師としての事情はいったん脇に置きましょう ITの具体的な活用事例や実践報告ではない、 そもそも「なんでITなの?」という話を ✓ 事例は続くセッションでふれられる…はず

20.

[2] 専門日本語教育って 簡単じゃなくない?

21.

専門日本語教育 日本語以外の専門領域をどう扱うか?

22.

私の「日本語以外の」専門 情報技術 デザイン プレゼンテーション マネジメント

23.

参加者の「日本語以外の」専門 アカデミック 看護・介護 ビジネス一般 年少者、生活者、留学生 その他いろいろ

24.

専門***な教育で 本当にあったアレな話

25.

Case 1 ビジネス〜の罠

26.

今学期の「ビジネスで役立つIT」の授業は この教科書に合わせて教えてくださいね。 えっ、この教科書の内容チョー古くね? Macの画面イメージが15年前のやけど。 この章、普通にウソ書いてるやん。 著者は基本的な理解すら怪しそうやな。 これが役立つようなビジネスの現場って、 どんだけ旧時代的なやり方なんだよ・・。

27.

専門領域の理解は難しい その専門分野の現場経験がない教師には、 適切な理解がそもそも難しい場合が多い。 ✓ ビジネスとアカデミックを対比させるにも 両方をそれなりに知らないと難しいのでは? 現場にいても、そもそも理解の怪しい人、 知識のアップデートを怠っている人は多い。 ✓ よく知っている人ほど表立って発言しませんし・・

28.

Case 2 教科書のない世界

29.

…このように、日本語の授業の中で プレゼンスキルの育成に取り組んでいます。 この授業でのプレゼンスキルの定義は どのようなものでしょうか? 一般的な手法をそのようにアレンジする 意図を説明していただきたいんですが。 教師の好きなプレゼンスタイルを 学習者に押し付けてるように見えますが。

30.

あ、教科書的なものはないようですし、 私はプレゼンが専門じゃありませんし・・ いや、専門じゃないのは分かりますけど 教えるならそうも言ってられないのでは。 教科書はないですけど、関連する書籍を 20冊くらい読めば見えてきますよね? 20冊ですか・・・(ドン引き)

31.

教科書のない領域は特に困難 教科書がないとスタンダードが見えにくい ✓ いろんな人が好き勝手に専門を語っている ✓ 数多くあたらないと、理解が偏ってしまう 舐めてかかりがち・自己流で済ませがち ✓ 教科書がない=適当で良い、ではない ✓ その分野への敬意を欠いていては理解は無理

32.

Case 3 ITが絡むと…

33.

…以上より、学習者のTwitterの書き込みと 日本語能力との関連性が見えてきます (キリッ ??? それTwitterの仕組みのせいであって 日本語能力とか関係なくないっすか? それを学習者の能力のせいにするとか オレが学習者ならキレちゃうよね。 日本語教育の専門知識とか関係なく、 Twitterユーザーは同意できない結論やな。

34.

あなたが普通にTwitter使ってて、 こういう分析されたら納得できます? え、あ、そ、そうですね、うーん、 私はTwitterやらないんで何とも・・・ ・・・・・・・・

35.

ITが絡む事例は、より深刻 Webやソーシャルを扱う実践・研究なのに その対象に対する理解や経験が浅い。 ✓ 文献にあたらないどころか体験もしていない ✓ むしろ学習者の方が詳しい場合も多い 教師は、何でも日本語能力に結びつけたり、 何でも学習者のせいにした分析をしがち。 ✓ 戦慄するような研究発表があったり・・

36.

専門分野を扱う難しさ 専門分野を理解することは簡単ではない ✓ 時間や人やお金のリソースを相応に割かないと無理 自分で「理解の不十分さ」に気付くのも困難 ✓ 教室では誰もあなたにつっこまない 不適切な内容を刷り込んでしまったり、 不当な学習評価をしてしまったりする危険。 ✓ 学習者は教師に気を遣って、表立っては言わない

37.

じゃあ、日本語教師は 他の専門は扱うべきでない?

38.

それでも日本語教師はやるべき 現実に現場で必要とされているから 専門日本語教育的なものが行われている。 ✓ 誰が何をどこまで担うのかは、現場の事情が大きい それこそが日本語教師の生きる道でもある ✓ その理由については、このセッションの後半で

39.

[3] IT活用の可能性を探る という時代の終わり

40.

専門日本語教育における IT活用の可能性を考える

41.

イベントのお題として、いまさらITを 「活用の可能性を考える」ものとして 捉えていること自体が、もうめっちゃ アレだと思うのですよ。

42.

IT = 鉛筆 もはやITは、学習手段として日常的なもの

43.

俺的コンピューターの歴史 1998 2009 iMac発売 iPhone発売 2016 イマココ! 普通にPCを現場で使用

44.

時は、スマホ時代

45.

2015年のスマホ普及率 83% 20代 73% 30代 61% 40代 49% 50代 出典:ヤフーマーケティングソリューション http://yahoojp-marketing.tumblr.com/smartphone?year=2015&id=0

46.

本イベント参加者のスマホ率 なし 4% ガラケー 23% スマホ 73%

47.

高校生のスマホ率 96.1% 出典:デジタルアーツ http://www.daj.jp/company/release/2015/0209̲01/

48.

女子高校生のスマホ利用時間 15時間以上 9.7% 平均7時間 出典:デジタルアーツ http://www.daj.jp/company/release/2015/0209̲01/

49.

スマホは生活必需品に 必要なときに使うモノではなく、 常に何かの形で使っている手放せないモノ。 ✓ 日中は学校にいる高校生が7時間使うという感覚 スマホはあらゆることができる究極の道具 ✓ ゲーム、音楽、写真・動画、会話、調べもの全般 パソコンとはまったく違う、気安いアイテム

50.

IT = 鉛筆 もはやITは、学習手段として日常的なもの

51.

だからスマホ(IT)は 普通に使えばいいじゃない

52.

スマホの活用ってどうするの?

53.

教師のスマホことはじめ いきなり学習の文脈で考えるから難しい 教師ひとりだけ(学習者を巻き込まない)で 始められることから慣れていくといい ✓ メモはカメラを使って撮る ✓ 日常的に使えるアプリを見つける

55.

出典: アプリマーケティング研究所 (女子高生にとって「パソコンの死」はいつ? 未だ40%がパソコンをつかう理由と「授業中スマホい じり」の実態。原宿の女子高生110人アンケート。)http://appmarketinglabo.net/jk-deathofpc/

56.

見えるプレゼンタイマー

57.

スマホのアプリは探せばよい スマホのアプリは見つけて入れるだけ ✓ 導入手順は共通しているので慣れればよい ✓ PC向けよりシンプルなものが多く、概要把握が楽 アプリを紹介するサイトはたくさんある ✓ 例えば「iPhoneアプリ レビュー」などで検索 ✓ 日本語学習系なら「NIHONGO eな」とか 授業の実例本や記事もある(日本語教育以外で)

58.

? の る や つ い 、 ゃ じ ? ! ょ し で 今

59.

? の る や …ほとんどの人はやらない つ い 、 ゃ じ ? ! ょ し で 今

60.

それどころか…

61.

紙よりITが優れてるっていう 著名な先生の研究結果を 今すぐ挙げてもらえるかね?

62.

パソコンはテキストと違って 水に濡れたらアウトだよねぇ?

63.

授業は紙で全然OK。 問題なくやれてるよ? 君、何が言いたいの?

65.

パトラッシュ、僕はもう疲れたよ http://dic.nicovideo.jp/a/パトラッシュ、僕はもう疲れたよ

66.

「ITはオプションにすぎない」 「何を教えるかが一番大切」 学びの前提に沿っていれば それは正しい

67.

[4] 変わりゆく「行動・ことば・学習」 と日本語教師

68.

行動 ことば 学習

69.

行動 ことば 学習

70.

スマホを持つようになって 行動の仕方が変わった

71.

待ち合わせの約束も 下準備が必要なくなった

72.

さっき道を聞かれたんだよね。 でもその人、手にスマホ持ってるの。 まったく何のためのスマホだよ(笑) ITリテラシーのなさにビビるわ。

73.

ググレカス(Gugrecus) http://ja.uncyclopedia.info/wiki/ググレカス

74.

手で文字を書くのって 久しぶりだな・・・

75.

現実の変化と教育への影響 教科書にある「日常場面」の非日常化 ✓ 「先生、そこでスマホ使わずに人に話しかけるとか 普通ありえなくないですか?」 スマホで調べれば済む知識に価値はあるか? ✓ 記憶していることの意味が各方面で問われている 手で漢字を書けるスキルはどのくらい重要? ✓ SNSでは定期的に話題に上って議論が紛糾している

76.

行動 ことば 学習

77.

声 → 文字 → 声

78.

日常会話のメインの手段は 声ではなく文字になりつつある

79.

日常会話のメインの手段は 声ではなく文字になりつつある

80.

出典:http://portal.nifty.com/kiji/160126195572̲1.htm

81.

❖ 乾杯しても爽快感がまったくない ❖ 声を出すのが恥ずかしくなってくる ❖ 3時間の飲み会でも疲れがない ❖ 大人数でも全員が会話に参加できる ❖ 一体感はむしろある ❖ 細かな感情表現が不要で対人関係が楽

82.

http://do-ra.org/2015/10/16/19151/

83.

ワロタ

84.

http://appmarketinglabo.net/reajyu-bomb/ 明るい自虐「リア充爆発しろ」

85.

http://atohs.hatenablog.com/entry/saaru 表現「行きたさある」は ネット社会と相性が良さそう

86.

ネット発の言葉の広がり ネットの世界は以前より日常的になった ✓ リアルとバーチャルなどと分ける意味は薄い ✓ 各コミュニティのレベルではまだ壁はある ネットの文字表現は口頭会話に伝わっていき やがて普通の言葉になっていくのかも。 ✓ 生きた日本語、生きた場面はネットにこそある?

87.

言葉を選ぶより スタンプを選ぶ

88.

https://twitter.com/Maraiy23/status/613610280476504064/photo/1

90.

http://www.c-lab.link/nettrend/20140821ika

92.

あわゆき・森嶋良子 「LINEスタンプ つくり方&売り方手帖」

93.

使いたくなるスタンプとは? 誰が・どんな時に・どのように使うか考える 自分の得意分野(知識や経験)を生かす 普通の会話でよく使うセリフを作る ✓ よびかけ、あいさつ、リアクション ✓ いま何をしているかの伝達 ✓ 感情表現や状態(おなかすいた等)

94.

LINEスタンプ 現場のかずお

95.

日本語の教材と通じるものがある

96.

言葉よりボタンで

97.

出典:http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinoharashuji/20151104-00051106/

100.

http://masaki0720.tumblr.com/post/65258617692/ facebookのいいねが1日5回までになったらどうなるか

101.

デザインされていく ことば 私たちの「ことば」は、サービスの機能になる ✓ 押しやすいボタン、用意されたボタンによって、 あるいは、あえて使いにくいボタンによって、 私たちの日常会話が組み立てられていく。 サービスのデザイナーが「ことば」を作り、 コミュニケーションをデザインする時代。 ✓ デザイナーにとっては面白い時代ではある。 日本語教師にとってはどうか?

102.

行動 ことば 学習

103.

学習者の学習目的 日本で学ぶため・働くために 既存コンテンツの消費の手段として ✓ 日本のアニメや漫画、ゲーム、音楽、小説などを より楽しむ手段としての日本語学習 ✓ 旅行会話などもここに含める その他趣味の一環として

104.

学習方法 教師から(教室に通う) 書籍などの教材で

105.

学習方法 教師から(教室に通う) 書籍などの教材で アプリやWebサービスを使って ソーシャルメディアを使って ✓ SNSやYouTubeなど教育サービス以外のもの

106.

Webサイトの紹介数:190 スマホアプリの紹介数:112

107.

えいぽんたん!

108.

学習アプリはどう見られているか Webサービスもアプリも玉石混交 ✓ 英語は市場規模もあってチャレンジの例が多い 初学者は質を適切に判断できないので パッと見で魅力的かどうかが重要になる。 多くは無料で試してみやすいため、 学習方法がいろいろあることは実感できる。

109.

学習手段を選べる時代 コスト、学習目標、学習スタイルに合わせて 学習方法を自分で選ぶことが現実的になった。 ✓ 「教室に通うのは今の自分には重すぎる」 ✓ 「最初はスマホアプリから始めてみよう」 ✓ 「旅行会話くらいならアプリで何とかなるよね」

110.

アプリ版 Google翻訳

111.

これから増えるだろうこと 教室に行かない学習者の割合 教室の学習者が、教室以外でも学ぶこと 教室で、教師が提示した以外の方法で学ぶこと 教室(教師)をリソースの1つと捉え、それを 学習者が自身の希望に合わせて選択すること。 ✓ 自分の学習スタイルを意識すること

112.

ITは学習者を強くする

113.

行動 ことば 学習

114.

スマホ時代がもたらした変化 ITのサポートがあることが行動の前提。 文字コミュニケーションが日常化し、 サービスに日常会話がデザインされる。 学習の選択肢の増加が学習者を強くし、 教師は学習リソースになっていく。

115.

「ITはオプションにすぎない」 「何を教えるかが一番大切」 学びの前提に沿っていれば それは正しい

116.

[5] どれがあなたの生きる道?

117.

世の中は変わっていく 好むと好まざるとに関わらず、 世の中は変化していく(今や結構なスピードで) ✓ IT技術者だってITのすべてに肯定的とは限らない 世の中から切り離された教育を望みますか? ✓ 専門日本語教育と姿勢は共通するのでは?

118.

変化との向き合いかた 変化に対してどう行動するかを考えるには まず変化そのものを感じなければならない。 変化を感じられる環境(=教室の外)にも 身を置く努力をする。 ITというものを自分なりに理解するために、 まず自分自身がやってみる。

119.

もう 先生とか いらないかも?

120.

Paradigm shift

121.

教師にとってITとは ITは、やりたいことをするための道具であり、 本当にすべきことを明確にしてくれる存在。 ✓ ITが自分を変えるきっかけになる ✓ 自分が変わらないままにITを使っていても、 ITの本当の恩恵は受けられない。

122.

僕がラッキーだったこと 教師としてのキャリアを積む前に 新しい考え方に触れることができた ✓ 大学生になったときに、iMacが発売された ✓ 大学時代に「常識を疑うこと」を経験できた 新しいことを学習者として学んでいく過程で ITの恩恵を体感することができた ✓ 日本語・デザイン・Web・プレゼン・飲食店経営..

123.

裏を返せば・・ 教師としてのキャリアが長い人ほど 大きな変化への恐れを抱きやすい。 ✓ 学習者から見捨てられたときがスタート? 自分自身が何かの学習者になる機会は 無理して手に入れないとやってこない。 ✓ 見通しの立たない挑戦は、短期的な利益が少ない

124.

さて、あなたの生きる道は 見えてきましたか?

125.

私の考える 日本語教師の生きる道

126.

道1:リソースのデザイナー 教師と教室の代わりをしてくれるような、 魅力的なリソースを作って売る。 ✓ 教室に来ない学習者のためのリソースは 質も量もまだまだ世の中に足りない。 ✓ 既存コンテンツの消費が目的の学習者には、 総合的な日本語力育成よりニーズ特化が大切 ✓ アプリは有料販売か、無料配布でブランディングに

127.

アニメ・マンガの日本語 *プロジェクトのベースデザインを担当

128.

道2:コミュニケーションのプロ コンテンツの消費にとどまらない、 高度なコミュニケーションを支援する人材。 ✓ 他者との深い関わりの中で生きていく世界は 教科書のない、多様で変化に富むコミュニティ。 ✓ 学習者一人ひとりと世界を共有・俯瞰し、 日本語にこだわらず個別支援を行なうような仕事。 ある意味、脱「日本語教師」かもしれない

129.

「あなたの生きる道」 それを見つけるための一歩を ITとともに踏み出しましょう