いかにして「コスパのよい」学び方を学ぶか

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August 12, 22

スライド概要

2022PCカンファレンスの分科会(2022.08.12)での、角南北斗の発表スライドです。

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各ページのテキスト
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2022PCカンファレンス(2022.08.12) いかにして「コスパのよい」学び方を学ぶか 角南 北斗(Sunami Hokuto) hello@shokuto.com

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Sunami Hokuto Blog: withcomputer.jp Site: sunamihokuto.com Twitter: @shokuto

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発表者の普段のお仕事 ウェブデザイン・ICT教材開発 ✴ 大学院での専門は日本語教育学 + 趣味でウェブ制作を始める ✴ 教師からウェブ系の技術者へ軸足をシフトして現場支援 非常勤講師として情報系の授業を担当(今回はこの話) ✴ Office・デザイン・プレゼン・知的財産など CIEC理事・広報委員

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いかにして「コスパのよい」学び方を学ぶか

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コス パ Cost Performance

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昔の「コスパ重視」*の受講テクニック 出席日数は必要最低限をキープ 教室では寝る / 他のことをする 教科書は買わないで友達などを活用する 予習・復習・課題・試験対策に時間をかけない *発表者が学生時代の「要領の良い」先輩の話

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教師 い て し を 事 仕 の … る え 言 ら な る今 に 前 う 言 か と パ ス コ ! ぜ う ぼ 学 り か っ し は まず

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コス パ Cost Performance むし デ を 習 学 て し 識 意 ろ き べ す ン ザイ

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今は「コスパ」を左右する要因が多い 1. 自宅のICT環境・ICTの活用スキル 2. タイムマネジメントと時間割のデザイン 3. 自己モニタリングなどの学習マネージメント 4. 学習リソースを積極的に活用する姿勢

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発表者の普段の授業形式について

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授業科目と授業形式 授業科目:Office・デザイン・プレゼン・知的財産など 2019年度以前:一般的な講義/演習形式 2020年度前半:強制的にフルリモート 2020年度後半〜:ハイブリッド・オンデマンド併用

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フルリモート時(2020年前半)の授業形式 教師による説明要素はオンライン文書で ✴ Googleドキュメントにして、大学指定のLMSにリンクを載せる ✴ 解説動画も考えていたが結局文書だけで事足りた 受講生とのやりとりはチャットツールで ✴ Discordで授業ごとにサーバーを立てた Zoomなどのビデオ会議ツールは使用しない 参考:「プール監視員な私と学習環境のデザイン」中東・北アフリカ日本語教育シンポジウム https://www.slideshare.net/hokuto/ss-245034602

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授業の流れ 受講生は各自、文書を読みつつ指定のタスクを行う ✴ 一部のタスクは成果物を提出してもらう(理解確認・評価の材料) 質問があれば、Discordのタイムラインに投げてもらう ✴ 授業時間中は即レス。ダイレクトメッセージにも対応する。 タスクをすべて終えたら後はご自由に ✴ 取り組むスピードが人によって3倍くらい差があるようなので揃えられない

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なぜビデオ会議ツールは使わない? 受講生のPC&ネット環境が十分でなさそう カメラで映しながら行う必要のない内容 ✴ 顔を映されながら授業を進めることに抵抗がある受講生もいた 受講生間で環境や理解度の差が大きく、 教師主導の「足並み揃えた進行」は実際には困難。

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教室再開(2020年度後半)以降の授業形式 フルリモート時と同じく、説明は文書で提供 ✴ 前期に自宅でやっていたことを、後期は教室で行う格好 ✴ 教室実施なので、受講生は口頭で質問などができる。 Discordは利用を継続し、主に授業時間外対応の手段として活用。 教師が授業中に話すのは、補足と個別対応のみ ✴ 重要なこと、全体に向けて言うべきことは全て文書化する

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なぜ「説明は文書で」を継続するのか? 受講生ごとの「取り組み速度」の差の吸収 ✴ 早い人を解放し、教師は遅い人の直接サポートにリソースを割く 教室に来ない受講生(教室とオンラインの併用)や オンデマンド受講生への対応コストの削減 ✴ 資料をまずはしっかり読んで、その上で必要であれば訊ねてください、という シンプルな対応にできるので教師側の無駄が少ない。

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なぜコスパを意識する必要があるのか?

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フルリモート授業を経て起こった変化 多様な状況に対応した授業を求められた結果、 それまで 時間 / 場所 / 手段 がほぼ固定だった学習に 受講生ごとの違いが生まれた。 ✴ 授業は学校に来て教室で受けるしかないという「常識」が壊された

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受講生に繰り返し伝えたこと 2020年度前半:困難な状況を各自乗り越えよ ✴ 特にICT面の環境が十分でない受講生には、取り組み期限の猶予等を持たせつつ、 できる範囲で、諦めず学習を積み上げていくことを促した。 2020年度後半以降:他は気にせず自分の学びに集中せよ ✴ 教室に来ていない他の受講生(のその理由)は気にせずに、 自分にとって最大限学びやすい手段を選ぶよう促した。 ✴ 選べるようにする代わりに、きちんと学べているか?は妥協せず問う。

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選択肢が学習の質を左右する 教師も学習者も「学習デザインの自由度」は上がった ✴ 教室や通学といった「当たり前」を見直す機会になった ✴ 自由度が大幅に上がったぶん、学習の質の幅も大きく広がってしまった うまくデザインできないとき、学習の質の低下も激しい ✴ 教室実施なら、学習環境を押し付けることで質の下限はキープできる ✴ 逆に「教室以外での学習」の比率が大きい場合、教師は直接関与できず、 学習者が自分で判断して学習環境をデザインすることが求められる。

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なぜコスパに注目するのか? 学習のデザインの選択肢が増えたことで、 コストばかりかかってパフォーマンスが出ない学習や、 コスト認識を誤って結局何も得られない学習が、 生まれる可能性が非常に高くなっている。 むしろ「適切に」コスパを意識して学ぶ姿勢を持つべき。

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今は「コスパ」を左右する要因が多い 1. 自宅のICT環境・ICTの活用スキル 2. タイムマネジメントと時間割のデザイン 3. 自己モニタリングなどの学習マネージメント 4. 学習リソースを積極的に活用する姿勢

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1. ICTの活用スキルは学習の根幹要素 PCやネットがない/不安定では学習そのものが困難 ✴ 端末の可搬性やディスプレイのサイズも効率面では影響が大きい OSの基本操作もおぼつかないようでは効率以前の問題 ✴ 授業で作成したファイルの保存失敗・散逸 ✴ 複数のウィンドウやアプリをうまく切り替えて作業できない LMS等の理解が不十分だと情報弱者に ✴ 教師側の指示や情報提供がそもそも受講生に届かない

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2. オンデマンド形式の安易な採用は危険 オンライン実施と教室実施の授業の共存策 ✴ オンライン授業が通学時間帯と重なると出席できないので、原則オンデマンドに オンデマンド授業の学習は深夜や休日になりがち ✴ 1日のうち1コマだけ教室、などのケースは日中の大半の時間が無駄に ✴ そんな無茶な時間割への対応まで学生に求めるのは酷では? 受講生が必要とするタイミングでの支援が困難 ✴ PC関係のトラブルなどは「今この状況」への対応が重要

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3. 学習理解に関する自己モニタリング 自分の学習は順調か?を意識した行動が必要 理解不十分な状態を認識できていない人や、 目先の時間効率をとにかく優先する人への対応が必要。 ✴ 教室で取り組んでいれば様子を見て声をかけられるケースがあるが、 特にオンデマンド形式だとこちらのレスを読んでいない可能性もある。 ✴ 自分の理解度を確認するためのタスクを途中に挟む授業設計も重要

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4. リソース(教師や友達や検索)の活用 特にオンライン受講の場合、察してもらいにくいので、 自分から手を挙げて支援を求める行動が重要。 ✴ 教室であれば「隣の友達に聞く・教室の様子から推測する」ができる人も、 オンラインでその振る舞いをするスキルがあるとは限らない(別のスキル)。 ネットで調べて解決するスキルも個人差が大きい ✴ このスキルを単体の授業だけで向上させるのは、なかなか難しい

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今は「コスパ」を左右する要因が多い 1. 自宅のICT環境・ICTの活用スキル 2. タイムマネジメントと時間割のデザイン 3. 自己モニタリングなどの学習マネージメント 4. 学習リソースを積極的に活用する姿勢

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学生に「コスパよく学べ」と求めるだけでOK?

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教師や大学が目指すべきことは? 以前の教室に戻せば、教師は学習者に介入しやすく、 コスパは一定の範囲に収まる…が、それは良いこと? ✴ それでは学生は「学びの自由を奪われた」と感じるのではないか 自分で学習をデザインしていくスキルは、 卒業後の学びにも不可欠。だから身につけてほしい。

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スキルは勝手に身につくのか? 多くの面で「自己管理」が強く求められる学習環境に 日々に追われて余裕のない受講生を放置していても、 勝手に「コスパよく学べる」ようにはならない。 ✴ 特に1年生は「大学での学び方」のベースがしっかりしていない場合も多く、 さまざまな面で急に自己管理を要求されると対応できないのでは。 授業単位・大学単位での支援が必要ではないか。

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大学全体として必要なこと 学内滞在中の時間をうまく使える時間割編成 ICT環境の整備と活用スキルの育成 基本的な学習ストラテジーの獲得支援 時間やタスクのマネジメント手法の紹介

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それぞれの授業で必要なこと 理解度を自分で測れるタスクを授業に盛り込む 理解が十分な受講生の自由を意味なく縛らない 出席日数ではなく学習成果に目を向けやすい評価方式を

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学生の「学びかた」に対する支援の仕方、 みなさんのご意見も聞かせてください。