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March 17, 26
スライド概要
第21回日本感性工学会春季大会
大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室(土井俊央研究室)
第21回日本感性工学会春季大会 HDT部会企画セッション ヒューマンデザインテクノロジー 研究部会 ティンバーゲンの4つのなぜを活用した デザインリサーチ手法の提案 土井 俊央 大阪公立大学生活科学部居住環境学科デザイン人間工学研究室
UXデザインと主なアプローチ UXデザイン • ユーザがどんな体験に価値を見出すかを起点に考えるアプローチ • より良いUXを提供するための方法として,ISO9241-210の人間中心設計プロセス やデザイン思考などがあるとされている 人間中心設計プロセス(ISO9241-210)やデザイン思考に 共通する考え方 • 「現場観察や調査からユーザをはじめとするステークホルダーの課題を把握し,そ れに基づきアイデアを発想する.そこからプロトタイプの作成と評価を繰り返して 最終的なソリューションへまとめる」アプローチ • ユーザ理解のための調査とデザイン評価が反復的に行われ, インタビューや主観評価は良く用いられる 2 /42
UXデザインのための調査・評価における課題 ユーザ理解としてのインタビュー • 利用状況の理解の他,デザイン対象やそれに関する行為・体験などについての価値 観,考え方,理解などを捉えたい(ユーザのメンタルモデル) → 課題:価値観・意味付けなど広い意味でのユーザの理解(操作に対してだけ でなく)を抽出する体系だった方法・枠組みは確立されていない デザイン評価としての主観評価 • デザイン評価の指標として,満足やロイヤルティ,またはUEQなどの尺度が用いら れる → 課題:単に満足の度合や印象についての数値化にとどまり, 背後にある体験の捉え方とは結び付けづらい 3
本発表のねらい デザインリサーチにおける前述の課題に対するアプローチを検討する 1. インタビュー等でユーザのメンタルモデルを理解・抽出するための枠組み 2. 体験の結果だけでなく,体験の捉え方を想定し得る主観評価 • いずれの課題も,ユーザが製品・サービスやそれに伴う行為/体験をどう理解してい るか,どう意味付けしているかを理解することがポイントになる 上記の点を,体系的に捉える枠組みを検討することを目的とした 4
デザインリサーチにおける課題と本研究での着想 ティンバーゲンの4つのなぜ,の活用 • 動物行動学者であるティンバーゲンが,動物の行動を理解するためには4つの異なる 問いを解明する必要がある,としたもの • 人とモノ・コトとのインタラクションに転用することで,モノ・コト利用に関する 行為の本質を捉えることができるのではないか? 1.至近要因:その行動が引き起こされる直接の要因 2.発達要因:その行動は,動物の個体の一生のうちにどのような発達をたどるか 3.究極要因:その行動は,どんな機能があるから進化したのか 4.進化要因:その行動は,祖先からどのような道筋をたどって出現してきたのか 5
例:ホタルはなぜ光るか?を4つの視点から見た場合 至近要因:その行動はどのような仕組みによって生じているのか • どんなメカニズムで光るのか?→体内の発光物質の化学変化 発達要因:その行動は一生の間にどのように獲得されるのか • 成長過程においてどのように光るようになっていくのか?→卵の段階で発光機を持っている 究極要因:その行動にはどのような意味(価値)があるのか • 何のために光るのか?→配偶相手を引き寄せる 進化要因:進化の過程を通してどのように獲得されたのか • いつ光る仕組みを獲得したのか? →祖先:昼行性で発光しない→飛べないメスが発光→オス・メスとも発光する種が進化 6
人とモノ・コトとのインタラクションへの転用 「スマホで写真を撮る」という行為へのあてはめを試みる 視点 至近要因 発達要因 究極要因 進化要因 行為を説明する要因 写真を撮りたくなる直接的な刺激(撮影対象の美しさやスマホのカメラアプリ の操作感など) 日ごろから撮影する習慣やその中での慣れや使い続けやすさ 撮影によって得られる目的(きれいな写真を撮りたい,情報を記録したい,友 人と共有したい,など) 撮影の文化的・象徴的な意味(自己表現,美意識など)社会や文化の中でどう いう意味を持つようになったのか 7
UXデザインでの活用のために再解釈した4つの視点 デザインリサーチ手法に活用しやすいように, ユーザの理解を問う視点として再解釈した • 人とモノ・コトのインタラクションにおいても解釈できそうだが, 具体的なリサーチ手法への活用を考えると原義そのままではあてはめづらい 視点 行為を説明する要因 ①トリガー 対象がどのようなきっかけで想起・使用されるか ③目的・期待 何を達成できると思っているか ②経験・習慣 ④価値・意味 これまでの経験,学習,生活習慣の中でどのように位置づけられてき たか ユーザにとってどんな意味を持つ存在か 8
ユーザ理解への活用:メンタルモデルを把握する視点 ユーザ理解のために把握したいこと • メンタルモデル: 人が外界の現実を理解・説明するための抽象的な精神世界のモデル • ここではユーザインタフェースの操作手順や構造理解に限定せず, 製品やサービスそのものや関連する行為についてユーザがどのように理解し, 意味付けているかという広い意味で扱う 通常,インタビューやアンケート自由記述などによって把握が試みられる が,どんな質問で何を捉えればよいかはインタビューアの技量による 9
ユーザ理解への活用:調査手法への適用案 インタビュー:半構造化インタビューの起点として 1. トリガー • どんなきっかけで写真を撮りたくなりますか? • スマホで写真を撮るのはどんな時ですか? 2. 経験・習慣 • いつ頃からスマホで写真を撮るようになりましたか? • 昔と比べて写真の撮り方や撮る頻度は変わりましたか? 3. 目的・期待 • 何のためにスマホで写真を撮りますか? • スマホで写真を撮ることで何を得ていると思いますか? 4. 価値・意味 • スマホで写真を撮ることはあなたにとってどんな意味がありますか? 10
事例:文章完成法によるアンケート 質問項目(空欄を埋める文章を回答してもらった) • 私が電子付箋を使おうとするのは__なときである。 • 私が電子付箋を使うことは,私の生活の中で__な行為になっている。 • 私が電子付箋を使う目的は___だ。 • 電子付箋にメモをするという行為は,私にとって__な意味(価値)を持っている。 アンケートの試行 • 大学生6名 • はじめて使用する電子メモパッドを 数日程度利用後に回答 11
得られた回答 回答者 (1) トリガー (2) 経験・習慣 (3) 目的・期待 (4) 価値・意味 P001 机に向かって勉強や作業してい 習慣的 るよう 覚えておきたいことを思い出す 思い出す行為の補助をする ため P002 後でしたいけど、忘れたくない ちょっと付け足し ことをメモする 小さなことを忘れないようにす 日常生活を少しスムーズにする ること P003 後日の自分自身へ向けたメモを 少し変わった(まだ慣れない) 書く 次の日にやるべきことがあり、 やるべきことを忘れないでいら それについて自分自身にメモを れる 残すこと P004 すぐに消すようなちょっとした 必ずしも必要ではないよう メモを手書きで書きたいよう 紙として残す程ではないが、忘 手の感覚にだけ残るよう れないようにしたいため P005 やることリストを作りたい やることを明確化すること P006 簡単なメモをしたいと思うよう手軽に何か描けるよう あまり発生しない 頭の中を整理する しばらく書き留めておきたいこ 思いついたらすぐ形に残せる とをすぐに書きたいから 12
主観評価への活用:UXの評価項目として 4つの視点をもとに主観評価を行う • 単なる満足度評価ではなく,その理由を考えることができる • 漠然と満足度を考えるのではなく,評価の視点を持てる • それぞれの回答者が行為にどういう意味を見出しているか, という観点から評価できるのでは? 例:「スマホで写真を撮る」を対象にした評価項目案 • ①この製品は「撮りたい」という感覚をどれだけ喚起するか • ②この製品は現状の自身の撮影習慣に合うと思うか • ③この製品は自身の撮影目的に合うと思うか • ④この製品は自身にとって写真を撮るという行為の価値を高めると思うか 13
事例:4つの視点に基づく評価 先ほどの電子メモパッドに対して,4つの視点で5段階の評価 1. 2. 3. 4. メモをするという行為を自然に喚起するか 現状の自身の付箋やメモの利用習慣に合うと思うか 自身の付箋やメモの利用目的に合うと思うか 自身にとっての付箋やメモを使うという行為の価値を高めると思うか 5 重回帰分析(目的変数;総合満足度) 評点 4 数 β SE t VIF (1) 0.03 0.20 0.13 2.97 (2) 1.00 0.20 5.10 * 2.00 (4) 0.44 0.20 1.84 2.97 変 3 2 *: p<0.05 1 (1) (2) (3) (4) 14
ユーザ理解の手法との接続 ユーザごとの観点で評価できるのでは? • インタビューや文章完成法によって得られた各ユーザの「行為を行う理由」を評価 項目として,それに対してどれだけ評価対象製品が適合していると思うか • この場合,ユーザごとによって質問項目は変わるが,前述の方法よりもユーザはよ り具体的に自身のニーズに対する適合性を評価できる可能性がある 例) 回答者 P001 (3) 目的・期待 覚えておきたいことを思い出すため P002 小さなことを忘れないようにすること P003 次の日にやるべきことがあり、それに ついて自分自身にメモを残すこと それぞれの目的・期待に対して どの程度適合しているか? 15
まとめ UXデザインにおけるユーザ理解,デザイン評価を行うための手法に対し て,「ティンバーゲンの4つのなぜ」から着想を得た4つの視点を活用す ることを提案した • ユーザ理解:ユーザのメンタルモデルを把握するためのインタビュー,文章完成法 • デザイン評価:評定尺度法による主観評価 大学生を対象とした簡易的な試行を実施 インタビューやアンケートを構成するために参考となる枠組みとして 利用できる可能性 16