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June 18, 26
スライド概要
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 中村聡史研究室
2026.06.18 HCI218 スマートフォンアプリケーショの UIアンチパターンの分類と 蓄積方法の検討 阿部和樹 中村聡史(明治大学)
背景 突然ですが… 私(阿部)は現役の アプリ開発 エンジニアです 1
背景 アプリ開発の現場で起きた問題 お知らせから ユーザを評価する 方法がわからない 2
背景 アプリ開発の現場で起きた問題 通知を タップ 取引ナビ を確認 落札者を 評価する ボタンの場所のわかりづらさ、過度なステップ数 3
背景 アプリ開発の現場で起きた問題 通知を タップ 取引ナビ を確認 落札者を 評価する 元々は商品ページに評価ボタンがあった → 画面の情報をスマートにしようとボタンを減ら した結果、ユーザ体験が低下 (到達までのステップ数増加) ボタンの場所のわかりづらさ、過度なステップ数 4
背景 なぜ問題が発生するのか? • どの導線から来たか? • 何回戻ったか/迷ったか • その結果(誤操作/中断/離脱) 失敗は“画面”ではなく “遷移と操作の一連の流れ”に埋まる • • 商品ページの画面だけでは、問題が発生することを予見できなかった 一連の操作の流れ(インタラクティブな操作)で発生する問題は発見しづらい 5
背景 失敗の知見は蓄積・再利用しにくい 個人の経験 「前にも似た問題があった」 社内報告 文章中心で共有される スクリーンショット 画面だけは残る 再現しにくい 自由記述・ 静的画像中心 類似事例を検索しにくい 設計時に参照しにくい • 「なぜそのUIが使いづらかったのか」という知見は個々のプロジェクト内に留まる • 既存の事例収集はスクショなど静的な記述に留まり、インタラクティブな操作に関する情報が 十分に構造化されていない 6
背景 失敗事例を開発設計に活用できる知識基盤の構築 実アプリ操作 構造化 分類・検索 設計時に参照 迷い・誤操作・ 中断を発見 操作列・期待・挙動 利用文脈を記録 類似の事例を 探せるようにする 同じ失敗を 未然に避ける • 開発・設計の段階で失敗事例(アンチパターン)に気づくことで ユーザ体験を損なう=機会損失を減らす • 画面の問題だけでなく、一連の操作によって発生する問題を知見として蓄積する 7
背景 失敗事例を開発設計に活用できる知識基盤の構築 実アプリ操作 構造化 分類・検索 設計時に参照 迷い・誤操作・ 中断を発見 操作列・期待・挙動 利用文脈を記録 類似の事例を 探せるようにする 同じ失敗を 未然に避ける 今回の研究で扱う範囲 • 開発・設計の段階で失敗事例(アンチパターン)に気づくことで ユーザ体験を損なう=機会損失を減らす • 画面の問題だけでなく、一連の操作によって発生する問題を知見として蓄積する 8
関連研究 ユーザビリティ評価 UIデータセット・AI ダークパターン研究 状態可視性、一貫性、 エラー回復などの評価観点 画面構造や操作トレースを 収集・活用する手法 意図的な誘導が ユーザに与える不利益 Usability Heuristics[Nielsen 1994] Usability of mobile applications[Harrison 2013] Rico[Deka 2017] DroidAgent [Yoon 2023] The Dark (Patterns) Side of UX Design[Gray] 意図的な誘導ではない使いにくさを、操作手順・利用文脈まで含めて 「失敗事例」として蓄積・再利用する方法は明確になっていない 9
今回のスコープ アンチパターンを蓄積するための前調査を行う 本研究で行うこと 今回は行わないこと • 実際のアプリの事例を整理 • タスク遂行段階に基づく初期分類 • 実際の収集の仕組み化 • 失敗事例の報告に必要な • 分類・検索による設計支援 要素と手続きを整理 問題の分類と報告要素を整理し、将来の知識基盤に必要な情報を明確にする 10
目的 スマートフォンアプリ操作で見られる UIアンチパターンの実例を収集し、 発生要因の分類と報告に必要な要素・手続きを明らかにする 検討項目1 実アプリ操作で顕在化するUIアンチパターンの 種類と発生要因 検討項目2 UIアンチパターンを再現・理解可能に報告する ための要素と手続き 11
事例収集タスク 実際のスマートフォンアプリからアンチパターンの事例を収集 • Google Play Store・App Storeに公開さ れているアプリを操作 • アンチパターンに該当する事例を動画 と文章で収集する • 対象としない事例 - 意図的な誘導 - 通信障害やクラッシュによる操作不能 12
事例収集タスク 分析対象:30件の操作事例・23アプリ 30件 23個 20 / 10 分析対象事例 対象アプリケーション iOS / Android 2026/4/2~ 2026/5/24 収集・確認期間 対象サービス種別 ニュース、動画、地図・交通、EC、クーポン・小売、オークション、電子書籍、SNS、メール、フードデ リバリ、生成AIなど 収集方法:実際にアプリを操作し、画面録画・スクリーンショット・観察メモ・問題説明文を記録 13
事例収集タスク 収集方法:実際にアプリを操作し、画面録画・スクリーンショット・観察メモ・問題説明文を記録 14
事例紹介 代表的なアンチパターンの事例5つ 1 操作手段が隠れたタブ編集 2 キーボードに隠れる送信ボタン 3 その場で探しにくいクーポン一覧 4 原因と回復方法が示されないエラー画面 5 選択状態が再起動後に保持されない 15
事例1:操作手段が隠れたタブ編集 ニュースアプリ タブ編集の操作手段が見つからない ユーザの期待 実際の挙動 タブ編集は設定画面や明示的な 編集ボタンから実行できると期 待する 実際にはタブを長押しすると編 集画面が現れるが、操作手段が 明示されない 問題の結果 ユーザは機能が存在しないと判断したり、不要な設定探索を繰り返 す可能性がある 分類タグ 発見可能性 意味理解 16
事例2:キーボードに隠れる送信ボタン 動画アプリ 入力後に送信ボタンへ到達しづらい ユーザの期待 実際の挙動 報告内容を入力したら、そのま ま送信できると期待する ソフトウェアキーボードが表示 され、送信ボタンが隠れる。閉 じる操作が必要になる 問題の結果 入力完了後にタスク継続できないと誤解し、報告を中断する可能性 がある。 分類タグ 操作到達性 利用文脈不一致 17
事例3:その場で探しにくいクーポン一覧 小売アプリ レジ前で目的のクーポンを探しにくい ユーザの期待 実際の挙動 利用場面に応じて、対象クーポ ンを短時間で見つけ、誤操作せ ず提示できると期待する 商品別に細分化されたクーポン を探索する必要があり、「使用 済みにする」表現も誤認しやす い 問題の結果 発見の難しさ・探索負荷・利用場面の時間制約が重なって、 提示ミスや焦りが生じる 分類タグ 発見可能性 意味理解 入力・探索負荷 利用文脈不一致 18
事例4:原因と回復方法が示されないエラー画面 ECアプリ エラー原因と次の操作が分からない ユーザの期待 実際の挙動 エラー時には原因と復帰手順が 示され、再操作できると期待す る 画面には一般的なエラーのみが 表示される。実際の原因はログ イン認証期限切れ 問題の結果 更新を繰り返しても回復できず、再ログインという解決策に到達し づらい 分類タグ 状態把握 エラー回復 19
事例5:選択状態が再起動後に保持されない 生成AIアプリ 前回選択したモデルが保持されない ユーザの期待 実際の挙動 一度明示的に選択したモデルが 、次回起動時にも保持されると 期待する アプリ再起動後にモデル選択が リセットされ、異なる条件で利 用が始まる 問題の結果 ユーザが気づかないまま異なる性能条件でタスクを継続する可能性 がある 分類タグ 状態把握 画面遷移 20
事例収集結果・分析 「どの段階でユーザが困ったか」でUIアンチパターンを整理 操作前 操作前–操作時 操作時 操作後 操作列全体 失敗後 周辺条件 発見可能性 意味理解 操作到達性 状態把握 画面遷移 エラー回復 利用文脈不一致 入力・探索負荷 8分類は既存のユーザビリティ観点と30件の問題構造を照合し、今後 のUIアンチパターン記述スキーマに使う分類軸として整理 21
事例収集結果・分析 入力・探索負荷 16 発見可能性 14 意味理解 14 状態把握 8 画面遷移 8 利用文脈不一致 1事例あたり 平均2.43タグ 7 操作到達性 エラー回復 30件の事例に 対して 73件の分類タグ 4 2 単一の原因ではなく、複数の設計要因が重なって発生することを示唆 22
事例収集結果・分析 発見した問題を元に8つの分類を定義 1 操作手段が隠れたタブ編集 発見可能性 意味理解 2 キーボードに隠れる送信ボタン 操作到達性 利用文脈不一致 3 その場で探しにくいクーポン一覧 発見可能性 意味理解 4 原因と回復方法が示されないエラー画面 状態把握 エラー回復 5 選択状態が再起動後に保持されない 状態把握 画面遷移 入力・探索負荷 利用文脈不一致 23
考察 • 発見された問題としては以下が多かった - 発見可能性の低下 - 意味理解の困難 - 入力・探索負荷の増大 • 1つの「使いにくさ」は、 複数の要因が重なって成立する 例:クーポン一覧 発見可能性 入力・探索負荷 意味理解 利用文脈不一致 目的のクーポンが見つからない、項目数が多 い、文言を誤解しやすい、レジ前という時間 制約がある。 24
考察 問題の報告に必要な要素 タスク ユーザが達成しようとした目的 実際の挙動 UIがどう振る舞ったか 操作ステップ 問題発生までの画面遷移・操作列 問題結果・深刻度 誤操作、再入力、離脱、不安、探索時間 増大 再現条件・利用文脈 OS、端末、ログイン状態、片手/移動中 等 推定要因 配置、文言、フィードバック不足、状態 保存不備等 問題発生画面・UI 要素 ボタン、フォーム、メニュー、モーダル 等 分類タグ・根拠 主分類、補助分類、分類理由 ユーザの期待 何が起きると予想したか 確認記録・公開時 配慮 録画時刻、再現確認、匿名化、個人情報マスク 25
今後の展望 今回 今後 • 分析対象は30件・23アプリに限定 • 複数評価者による分類確認 • 分類は単一評価者による初期分類 • 事例の構造化に向けた収集・ 共有の仕組み化 27
今後の展望:収集プレシステム 28
まとめ • 実アプリ操作から30件のUIアンチパターン事例を 収集し、操作シーケンス・利用文脈を含めて整理 • 8分類軸で多重ラベル付与を行い、入力・探索負荷、 発見可能性、意味理解に関する問題が多いことを 確認 • 再現・理解可能に報告するための手続きと記述ス キーマを整理し、知識基盤への要件を示した 29