GTFSデータリポジトリ: GTFSデータの公開や流通を高度化する共通基盤の開発

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March 20, 23

スライド概要

2023年3月20日 デジタルスマートシティ研究会における伊藤昌毅の発表資料

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伊藤昌毅 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授。ITによる交通の高度化を研究しています。標準的なバス情報フォーマット広め隊/日本バス情報協会

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各ページのテキスト
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2023年3月20日 オンライン開催 デジタルスマートシティ研究会 GTFSデータリポジトリ: GTFSデータの公開・流通を高度化する共通基盤の開発 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 日本バス情報協会 代表理事 伊藤昌毅

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伊藤 昌毅 • 東京大学 大学院情報理工学系研究科 附属ソーシャルICT研究センター 准教授 • 専門分野 • • – – ユビキタスコンピューティング 交通情報学 – – – – – – – – 静岡県掛川市出身 2002 慶應義塾大学 環境情報学部卒 2009 博士(政策・メディア) 指導教員: 慶應義塾大学 徳田英幸教授 2008-2010 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別研究助教 2010-2013 鳥取大学 大学院工学研究科 助教 2013-2019 東京大学 生産技術研究所 助教 2019-2021 東京大学 生産技術研究所 特任講師 2021-現在 現職 – 運行管理者(旅客) 経歴 資格 2

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GTFSオープンデータとは? バス停/駅+路線 時刻 運賃 • 乗換案内に必要な情報(バス停・駅+路線 +時刻表+運賃)をWebに公開、誰でも活 用可能に • アプリ開発やデータ分析などが実現可能に

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2019年2月:90 2019年7月:126 5 21年1月 20年10月 20年7月 20年4月 20年1月 19年10月 19年7月 19年4月 19年1月 18年10月 18年7月 18年4月 2018年11月:30 18年1月 2018年7月:23 17年10月 17年7月 事業者数 350 300 250 200 150 100 50 0

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本年も順調にオープンデータが増加 700 600 500 400 300 200 100 0 オープンデータ提供事業者数

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様々な応用が広がっています

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サイネージでの活用

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ゆる〜と 全国日帰り温泉・銭湯マップ • バスの利用を促進する援軍! https://yuru-to.net

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M5Stackを利用したバス発車案内 • 5000円程度のIoT端末で開発 • 時刻表とリアルタイムデータが揃った ことで誰でも作れるように • インターネットで大きな注目を集める https://togetter.com/li/1817346

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QGIS + GTFS-Go • GTFSデータをオープンソー ス(無料)のGIS上で表示 • 行政職員向けの講習会を動画 配信中 – https://www.youtube.com/watc h?v=w2gFMyK67ws

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フリーのデータ作成ツール開発・提供・利用支援 • 西沢ツール – 西沢明氏開発 – 約40+自治体・事業者が利用 • 見える化共通入力フォーマット – 伊藤浩之氏開発 • 当初は三重県のプロジェクトで利用 – 約33自治体・事業者が利用

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その筋屋 • 無償配布されているダイ ヤ編集システム • プロ向けシステムと同等 の機能を備え、バス事業 の運営に利用出来る • GTFS/標準的なバス情報 フォーマット出力機能を 備える – 42事業者がオープンデータ公 開 http://www.sinjidai.com/sujiya/

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標準的なバス情報フォーマット広め隊 • 標準的なバス情報フォーマット (GTFS-JP)データ整備に関わる有志 によるコミュニティ – 2017年夏頃から、国交省検討会の関係者らを 中心に自然発生的に誕生 – 普及に関わるツール開発、勉強会やイベント 開催、関係者への働きかけなどを継続的に実 施 – チャットなどによる活発な情報交換 • 参加者 – – – – – – 大学研究者 乗換案内サービスデータ整備担当 バス事業者向けツール開発者 公共交通コンサルタント 交通事業者職員 自治体職員 等 20名程度

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広め隊による講演会・講習会 • 県や運輸局が実施する勉強会に講師として登壇 • 事業者や自治体にツール導入を指南

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日本バス情報協会(2022年3月〜) • • • • • • 行政、バス事業者等に対するコンサルティング 講習会、勉強会等の開催 データコミュニティに対する技術支援 データプラットフォーム、ツール等の提供 バス運行システム事業者等の連携の推進 調査研究 GTFS・バスデータ整備実習(2022年8月) https://www.busdata.or.jp

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データを世界に広めるためのカタログサイト • 世界のGTFSデータが集約されリポジトリ – 高度なAPIなどを提供 http://transitfeeds.com https://transit.land

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日本では? • 自治体、バス会社、システム企業などのWebページで公開

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GTFSデータリポジトリ • GTFSデータを集約し配 信するプラットフォーム – バス会社・自治体などが GTFSデータを登録 – WebやAPIを通じてデータを 利用 • 2021年度から国土交通 データプラットフォーム 実証実験の一環で開発 https://gtfs-data.jp

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GTFSデータリポジトリのメリット • GTFSデータ公開には細かい作法がある! – ダイヤ改正があっても固定URLで公開… – CKANではものたりない… • データ提供者(交通事業者・自治体など)にとって – データ公開の手間の削減 – データのチェックによりミスの防止 – よりデータが発見されやすくなる • データ利用者にとって – データ収集の手間の削減 – データ品質の向上

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データ利用者向けWebページ(フィード一覧) 都道府県、事業者名・IDでフィルタリング オープンデータに 適したライセンス 静的と リアルタイム のURL 有効期間 更新日 https://gtfs-data.jp/search?pref=富山県 23

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データ利用者向けWebページ(フィード詳細) サイネージなど向け:当日有効な静的データ用URL Googleなど向け:次または当日の静的データ用URL リアルタイムはバスロケサーバ等のURLを参照 問い合わせ対応用メールアドレス(この例では空) 過去~現在~予定の時系列でデータを蓄積 https://gtfs-data.jp/search?pref=富山県&target_feed=chitetsu*chitetsubus 24

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データ登録者向け画面 組織(事業者・自治体)管理 フィード管理 ファイル登録 乗換検索CP等の データ利用者向け 更新内容を設定 画面から ファイル登録 1組織が 複数フィードを 管理可能 過去の履歴も残る 25

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連携システム Web APIを通じて各種システムと連携 ※API(Application Programming Interface):ソフトウェア同士が情報をやり取りする仕組み 国土交通データプラットフォーム QGISプラグイン「GTFS-GO」(開発:MIERUNE社) 一覧からフィードを選択 ※QGIS: 無料で使えるオープンソースのGIS 運行頻度等を可視化 3D地図や道路等の 各種インフラ情報と重ねて表示 画面操作だけで QGISに読み込み 26

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QGISプラグイン「GTFS-GO」に連携機能を追加 運行頻度マップの作成が可能 GTFSデータリポジトリ連携機能 GTFSリポジト リ連携を追加 デジタル田園都市のWell-Being指標の更新も可能に 運行頻度が必要 12年前のデータを更新できる 27

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参考)GTFS-GOが欧米で話題に、運行頻度図が高評価 UKのスタートアップThe Data City社 CTOのTweetをきっかけに話題に GitHub上の評価☆が急上昇 SEPTA地域鉄道 (米国ペンシルバニア州) https://twitter.com/yfreemark/status/1565030476439494658 英国内の鉄道 287RT, 1619いいね https://twitter.com/thomasforth/status/1564683686330736646 FLiXBUS (ドイツ・欧州各国) https://twitter.com/BorisMericskay/status/1565301466243506177 オープンソースとオープンデータによる 公共交通EBPMエコシステムに貢献 28

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データ登録時のメリット = 厄介なGTFS配布のお作法を簡単に 29

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GTFS配布のお作法を簡単に 分類 項目 面倒事 リポジトリによる改善 初期 設定 オープンデータサイト開設 記載内容、配布方法、庁内説明に悩む サイト開設が不要 or 簡易になる Google初期設定 不慣れな用語、契約手続き - データ 準備 関係者間で受け渡し データ整備業者 ⇔ 市町村/事業者 ⇔ 県交通課 ⇔ 県情報課 でメール等 複数・共同管理が可能 品質検証 英語のエラーの解釈、データ修正 検証ツールを自動実行、日本語解説 オープンデータサイト更新 有効期間、改正内容等の記載、ファイル差替 リポジトリ上のフォームで定型化、 自社サイトは更新不要 乗換検索CPへの連絡 オープンデータサイトと同様の内容をメール APIを用いた自動化により連絡不要 Googleへの設定 ダッシュボードからの設定、指摘対応 固定URLによる配布 Google・サイネージ等の自動連携に必要 時系列データの配布 CPには改正約2週間前に配布、 サイネージ用は当日差替 利用者 に送付 自動化 の要件 手動運用では困難 固定URLを初期設定、手動設定不要 時系列(現行/予定/過去)データを 固定URLで配信 30

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オープンデータサイトが不要 or 簡易に 意外と面倒な オープンデータサイト管理 リポジトリ 洗練された統一的な方法で簡単に管理 項目 GTFSリポジトリの方法 ページ構成 全国統一の方法で、 必要な項目が整理済 ライセンス オープンデータに適した CC0, CC-BYを選択(カスタム可) • ファイルアップロード(ファイル名に注意) ファイル名 ・URL 自動的に固定URLを発行 • 情報更新(更新日、有効期間、改正内容) 時系列 従来 ◼ 初期準備 • 内容の検討(ページ構成、ライセンス等) • 関係部署との調整(情報部門等) ◼ 更新時 • 改正日に時系列(現行/予定/過去)の整理 • 情報部門に連絡(組織によっては必要) (現行/予定/過去) 改正日に自動で差し替わる 更新日・ 有効期間 自動で反映 更新内容 定型化+更新メモ 乗換検索CP等の データ利用者向け 更新内容を設定 画面から ファイル登録 (有効期間はfeed_info.txt参照) これから配布する方 → 自社オープンデータサイトは不要です 既にオープンデータサイトから配布している方 → 自社サイトは最低限の内容を残し、 GTFSリポジトリのみを更新、自社サイトからリンク(後述) 31

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固定URL配信 背景 自動連携には固定URLが必要 例:九州産交バス(バスロケから固定URLで配信) デジタルサイネージ「その看板」(起動時等に更新) 従来 改正ごとにURLが変わる システムの都合でファイル名を固定できない場合も 例:兵庫県サイト 神戸市コミュニティバス Google Maps(指定時刻に更新) https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks05/documents/gtfs-kobe-shiokaze20220401.zip マイ時刻表などの情報提供システム(深夜に更新) リポジトリ 固定URLで配信 データカタログサイト(通称 嶋田リスト) https://api.gtfs-data.jp/v2/organizations/kobecity/feeds/kobe-shiokaze/files/feed.zip 非固定URLの場合、嶋田先生が手動で有効期限等を確認…… 32

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時系列(現行/予定/過去)データの固定URL配信 背景 利用システムにより 必要なデータが異なる 従来 予定データ配信と固定URLの両立は困難 例:山形県サイト 河北町路線バス(2022年2月22日時点) 改正日 システム 必要なデータ 必要な時 サイネージ 当日データ 当日未明 乗換CP 予定データ 改正約2週前 Google 固定URL 次または現行 データ データ分析 過去を含む指定日 データ データ分析の例: GTFS-GO 過去を含む指定日 更新日 予定:~/kahoku_gtfs.zip 現行:~/kahoku_gtfs_1.zip サイネージ等との自動連携には 改正日未明にURL変更が必要 =非現実的 例:京成トランジットバス(2023年2月6日時点) 予定:~/latest/KeiseiTransitBus_gtfs_jp.zip 現行:~/KeiseiTransitBus_gtfs_jp.zip 過去:~/KeiseiTransitBus_gtfs_jp_20220801.zip 改正約1週前 どちらも1ヶ月以上前から予定データを配信していて国内トップレベルに素晴らしい!!!のですが手動運用に限界はあります 任意 リポジトリ 固定URLが改正日に自動差替 or API検索 システム 必要なデータ URL サイネージ 当日 ~/フィードID等/feed.zip 乗換CP 予定 ~/フィードID等/feed.zip?rid=next_1 Google固定URL 次または現行 ~/フィードID等/feed.zip?rid=next データ分析 過去を含む指定日 ~/findByAttributes? feed_id=[フィードID]&target_date=[日付] 33

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乗換CPへの連絡・Googleへの手動設定が不要に 従来 乗換CP:メール送付 To: kohei-ota@test-bus.co.jp Bcc: data@navitime.co.jp,data@jorudan.co.jp,data@val.co.jp,data@ekitan.com Date: 2022/03/01 10:00:00 Subject:手須戸バスGTFSデータ更新のお知らせ(2023/04/01) 乗換検索CP バスデータ担当各位 お世話になっております、手須戸バスの太田です。 次回ダイヤ改正のGTFSデータを送付いたしますので、取込お願いします。 改正日:2023/4/1 更新内容: ・ダイヤ改正 ・停留所名変更(手須戸高校前) ・運賃改定 ----------添付(testbus_gtfs_20230401.zip)----------- 従来 Google:ダッシュボードで手動更新 リポジトリ 乗換CP:連絡不要、API等で更新把握 個別連絡していた情報(予定データ、有効期間、更新内容)が リポジトリのAPI等から自動取得可能になる ↓ 個別連絡は不要、リポジトリから取っていってもらう形に リポジトリ Google:手動更新不要、固定URL設定 以下の設定をすれば、改正ごとの更新は自動で行われる • データ転送方法に「Webサイトから自動取得」を設定 • 固定URL(次または現行)を設定 • 自動取得時刻を設定 リポジトリだけ更新すれば、 オープンデータ、乗換CP、Googleも更新される 34

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検証の自動実行・日本語解説 背景 GTFS検証ツールは主に3つ 提供者 名称 言語 備考 Google Validation Report 英 ダッシュボードから使う MobilityData版の拡張 MobilityData GTFS Schedule Validator 英 Javaアプリ(GUI・CUI) 世界標準版として開発盛ん ヴァル研究所 GTFS-JP データチェッカー 日 Windowsアプリ 運賃チェックあり ・英語エラーの理解が大変 従来 ・対策が分かりづらい ・エラーのままオープンデータ公開 リポジトリ データ登録時に検証を自動実行 ・MoblilityDataのGTFS Schedule Validatorを導入 ・リポジトリへのデータ登録時に検証を自動実行 ・検証結果をリポジトリ上で表示 ・エラーがある場合は掲載不可とする可能性有 リポジトリ 日本語の解説を追加 画面イメージ(現在開発中) 通知名 Notice code 種別 運賃の 重複 duplicate_fare _rule_zone_id _fields ERRO R 経路名 の重複 duplicate_rou te_name 不明な 列 unknown_col umn 件数 解説 230 同じ「発/着(/route)」の組み合わせに、複数の運賃が設定さ れていて、運賃が定まりません。 【対策例】 ・同じ発着地でも系統ごとに運賃が異なる場合は、その系統ご とにroute_idを分けた上で、fare_rules.txtの[route_id]を用 いて運賃設定を分けてください。 WARN ING 3 同一の経路名(route_short_nameとroute_long_nameの組 み合わせ)が複数のroute_idに設定されています。Googleが 指摘する可能性があります。 【対策案】 ・方向や枝系統でroute_idを分けていて同じ経路名の場合は、 route_idの統合を検討してください。 ・route_idの統合が難しい場合は、route_long_nameを分け てください。例「A駅→B港」「B港→A駅」 ・いずれも難しい場合は、理由を説明すればGoogleの審査を 通過する場合があります。 INFO 6 GTFS-JPで追加された列があると表示されます。 例:[jp_parent_route_id], [jp_office_id] translation.txtが旧式の場合に表示されます。 例:[trans_id], [lang] 【対策案】無視して問題ありません。旧式のtranslations.txt は今後認められない可能性があります。 35

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複数・共同管理 従来 複数組織がデータ整備に関わると ファイルのやり取りが煩雑になる 業者・市・県が連携する例 業者 データを作成 検証ツールを実行 市町村にメール添付 ↓ 市 検証結果を確認 Googleに設定 Googleの検証結果を確認 県にメール添付 CPにメール添付 ↓ 県 更新内容を確認 県オープンデータサイトに掲載 改正当日にURL差替 1アカウントで複数組織のデータを管理 リポジトリ 県が一括管理する例 AIGIDアカウント X県 組織 フィード ファイル Aバス Aバス 2022/04/01版 2022/10/01版 B市 B市営バス 2022/04/01版 2023/04/01版 複数アカウントで1組織のデータを共同管理 リポジトリ 交通事業者・データ業者に管理を委託し、県・市が見守る例 AIGIDアカウント 組織 フィード ファイル C自動車が運行、データ作成 C自動車 何かあれば対処 C自動車 共有 D市 Eシステム 2022/04/01版 2022/10/01版 C自動車が運行、データ作成 D市 共有 Cバス D市街巡回バス 2022/04/01版 2023/04/01版 Eシステムがデータ作成 D市生活バス 2022/04/01版 何かあれば支援 Y県 Googleのダッシュボードと同様にアカウント・組織を紐づけて管理 36

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実証実験公募状況(3/7現在) 2022年度の公募結果 ◼組織数:75 うちデータ登録済:37 • 県一括登録:徳島県(19組織)、三重県(14組織)、滋賀県(4組織) • 個別登録 :7バス事業者、1鉄軌道、30市町 • ※岡山県、岐阜県などで県から市町村・バス事業者に働きかけていただいている 累計 ◼組織数:141 うちデータ登録済:103 • 先行3県(山形、富山、兵庫:66組織)を含む ◼データ数:143 • 先行3県(山形、富山、兵庫:93件)を含む 37

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今後について ◼GTFSデータリポジトリの開発と運営 • (一社)日本バス情報協会協力のもと、(一社)社会基盤情報流通推進協議会が 継続的に開発・運営していきます。 • 新規データ登録者の受付も、引き続き行います。 ◼A. データ登録について、データ登録者に費用を求めない方針 • 単なる維持だけでなく、機能向上・品質向上・普及に必要なコストを補う サービスモデルの検討 38