宮内新喜学位論文公聴会スライド 自動運航船の実現に向けた離着桟操船の動的モデルと 経路計画の最適化

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March 14, 23

スライド概要

博士課程学生の宮内新喜さんの学位申請論文公聴会の発表スライドです.

論文題名
Optimizing Dynamic Model and Reference Trajectory on Berthing and Unberthing for a Maritime Autonomous Surface Ship
(自動運航船の実現に向けた離着桟操船の動的モデルと 経路計画の最適化)

2023年1月23日発表

学位論文は大阪大学機関レポジトリで公開予定です.

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大阪大学 工学研究科 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 船舶知能化領域です. 研究室の発表スライドなどを共有します. We are Ship Intelligentization Subarea, Dept. of Naval Architecture & Ocean Engineering, Div. of Global Architecture, Graduate School of Engineering, Osaka University.

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各ページのテキスト
1.

Optimizing Dynamic Model and Reference Trajectory on Berthing and Unberthing for a Maritime Autonomous Surface Ship (自動運航船の実現に向けた離着桟操船の動的モデルと経路計画の最適化) 宮内 新喜 大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 博士学位論文公聴会 2023年1月23日

2.

自動運航船 Maritime Autonomous Surface Ship (MASS)の研究動向 2 実船を用いた実証実験をうけて, 基準や規制の検討も加速している 研究開発 IMO, 船級協会 1960年代 金華山丸 「世界初の自動化船」 機関部の遠隔操作 IMOがMASSの実現に向けて基準の論点整理を 実施 (2018-2021, MSC.1/Circ.1638 ) 1980年代 高信頼度知能化船 港内航行誘導システム,自動離着桟システム 各船級協会も相次いでMASSガイドライン策定 2010年代 自動運航船の概念設計プロジェクト AAWA (英RR),MUNIN (欧), ReVolt (DNV) 2020年代 自動運航船の実証実験 MEGURI2040 (日) ACTUV (米) Ghost Fleet Overlord(米) p ABS(2021), BV(2019), ClassNK(2020), DNV(2018), Lloyd(2016) ClassNK「自動運航,自律運航に関するガイド ライン」 p 限定領域 ODD (Operation Design Domain)の 設計,適合検証が必要

3.

自動離着桟の社会的必要性 3 港湾における事故は発生頻度が高く,かつ損害も大きい ヒューマンエラーが主因であることから,自動化すべき 港湾・漁業設備損傷の事故統計 具体的な値 (日本船主責任相互保険組合, 2018による) 保険金事故件数(2008-2016) 内航船 外航船 1,291件 2,481件 保険金額(2008-2016) 内航船 外航船 7,784百万円 (一件当たり 6百万円) 27,805百万円 (一件当たり 11百万円) 一件当たりの金額は 衝突、座礁、沈没、火災に次いで大きい ヒューマンエラー 2008-2016における内航船保険金事故の推移 (日本船主責任相互保険組合, 2018) 事故要因が明確な1,390 件 ヒューマンエラー 84%(1,174 件) 内本船乗組員(船長)と水先人の操船ミスが 69.1%

4.

港内操船と離着桟操船の定義 4 港内操船を,Berthing, Approach, Pre-Approachに整理 港内操船の分類 Berthing操船 Pre-Approach操船 B/T, S/T “右舷一杯” p 通常航海速力で港に進入する E/G “両舷後進微速” Approach操船 Approach操船 p 主機出力を減じ始める p 港内の障害物を避けつつ,目標着桟点に向かう p 着桟点前面1.5-2船幅程度の距離で停止する E/G “両舷停止” E/G “両舷前進微速” Berthing操船 p 岸壁に向けて平行移動して着桟する p 舫作業が並行して行われる場合がある E/G “両舷前進半速” E/G “両舷前進原速” 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会 Pre-Approach操船

5.

自動離着桟の研究動向 5 任意の港湾への拡張と,限界領域(ODD)の検証が必要 実船実証実験 海翔丸(田丸&萩原,2005) p ドラグサクション浚渫船 p 800m先から自動離着桟 MEGURI2040 (日本財団ら,2022) p 内航コンテナ p 大型カーフェリー 技術要素 自動離着桟システムの要素 p p p p p センサ,状態推定 参照経路生成器(リアルタイム,非リアルタイム) 制御器 アクチュエータ 離着桟マネージャ(統制,意思決定) システムの開発に必要な要素 p 運動シミュレーション環境,運動の動的モデル p 離着桟に関する経験的,統計的な情報 p 最適化手法

6.

本学位論文で取り扱う課題 6 自動離着桟の実現に向けた課題を抽出 離着桟の統計的性質 動的モデルの作成 離着桟は船長による操船の結果で, ODD適合確認のため, 複雑な制御と運動 網羅的なシミュレーションが必要 参照(理想)経路の作成 障害物を避ける離着桟経路を策定 する必要がある p 防波堤,橋脚,岸壁,他船,ブイ • 動的モデルの開発 • 参照経路の作成 • 制御アルゴの開発に資する 統計情報が必要 個船ごとの運動シミュレーション のため,それぞれの動的モデルを 効率的に生成したい! 高精度な運動モデルが必要 p 空間的制約を満たすか否かは運動 性能に依存 p 離着桟時は運動が複雑 単に障害物を避けるだけでなく, ある程度の余裕距離が必要 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

7.

実在する港湾での着桟の例 7 実際の港湾では,非常に狭い領域で着桟する場合も ≈ .3 ,2 " 𝐿! ≈ 5m 95 5m 35 " 𝐿! 2 . ,6 © OpenStreetMap contributors 大阪南港におけるカーフェリーの着桟(牧先生撮影) 宮内新喜 博士学位論文公聴会

8.

本学位論文の貢献 8 4つの観点から貢献した 貢献1 実船のapproach操船とberthing操船における,操船と運動の統計的性質を分析した. 貢献2 システム同定を用いて,港内操船に適用可能な既存の動的モデルのモデルパラメタを最適化する手法を提 案した. 貢献3 新たに提案したMMG-Taylor展開ハイブリッド型の動的モデルを用いて, 動的モデルの生成,選択に人間の介入を減らし,自動化する手法を提案した. 貢献4 実在の港湾における避航領域を考慮したapproach操船のmotion planning手法を提案した. 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

9.

9 各論 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

10.

貢献1 10 実船のアプローチ操船と着桟操船における, 操船と運動の統計的性質を分析した l 研究の新規性 Ø 過去,分析されていなかった,出入港のアプローチ操船における操船と運動の統計的性質 を,実船の航行ログデータを分析することで示した. Ø 動的モデルを生成するという観点から分析を行なった. l 研究の実施内容 Ø ある1隻の内航船について,GNSS,ジャイロコンパス等の計測器の情報を24時間連続で 数ヶ月にわたって記録した. Ø 記録したデータから,アプローチ操船と着桟操船に相当する部分を抽出し,その時系列 データを整理して統計解析を行なった. 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

11.

貢献2 11 システム同定を用いて,港内操船に適用可能な既存の動的 モデルのモデルパラメータを最適化する手法を提案した 研究の新規性 Ø 1軸1舵の船の港内操船に対応した動的モデルのシステム同定を初めて行なった. Ø 提案手法で,典型的な方法で求めた動的モデルと同等以上の運動推定が可能であることを 示した. 研究の実施内容 Ø 港内操船に対応した低速操縦型のMMGモデルのモデルパラメタを推定した. Ø ブラックボックス最適化手法CMA-ESを用いて,航跡の誤差ノルムを最小化する問題と して定式化した問題を解いた. Ø 自走模型の航跡データを学習データに用いてシステム同定した. 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

12.

船の運動を推定する方法 12 自動運航船の開発では, 動的モデルを用いたシミュレーション環境が有用 動的モデル 運動方程式をモデル化する CFD Direct Sim. NS方程式と剛体運動の連成計算 自由航走模型 模型を運動させその航跡を計測 自由航走模型 利点 利点 利点 Fast time simulationが可能 モデル化が少なく精度が高い 直接,運動を観測できる 欠点 船体周辺の流れ場も得られる 欠点 モデルの生成に時間とコストを 要する 欠点 外乱を制御することは困難 計算時間が長い 実時間より速い推定は不可能 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

13.

港内操船の動的モデル 13 港内操船ではモデルが複雑化する 通常航行の動的モデル 港内操船の動的モデル 導出における仮定 港内操船の特徴 定速直線運動からの摂動に立脚 運動の多様化(後進,横移動,その場旋回) Ø 斜航角が小 アクチュエータの多様化,操作の複雑化 Ø プロペラ回転は正転,概ね定常運転,舵角のみ 水深と岸壁の影響 モデル導出における仮定 通常航行では発生しない状態も想定する 港内操船を想定した追加のモデルを用意するもの が多い

14.

動的モデルのモデルパラメータを取得する方法 港内操船では,SIを用いれば効率的にモデルを構築できる 可能性がある 拘束模型試験 システム同定(SI) ある定常状態の流体力を計測し モデルパラメータをシリアルに 同定 あるシステムについて,既定の入力に対する応答と等価な応答を 得るシステムモデルを同定する 船の操縦運動のシステム同定 利点 確立した方法 与えられた操船(入力)に対して入力を与えた船の航跡(応答) と一致する動的モデルのパラメータを同定する 欠点 利点 ユーザーが取得可能な情報からモデルを構築できる 数本程度の航跡と入力から同定できる 実船から直接推定できる 欠点 外挿域での安定性 港内操船では試験点数が増加 試験水槽が必要 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会 14

15.

研究目的 15 システム同定によって港内操船に適用できる動的モデルを 構築できるか検証する l 既存の港内操船動的モデルのうち,最も複雑な動的モデルを同定する Ø 港内操船に対応した低速操縦型のMMGモデルのモデルパラメータを推定した. l ブラックボックス最適化手法CMA-ESを用いて,最適化問題としてシステ ム同定を解く l 自走模型の航跡データを学習データに用いてシステム同定した. 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

16.

推定対象の動的モデル 16 低速操縦型のMMGモデルの係数を推定する 3自由度のMMGモデル*,** 定常力を船体のコンポーネントごとに分解して モデル化 低速操縦型のMMGモデル 船体 cross-flowモデル プロペラ 定常力を船体のコンポーネントごとに分解して モデル化 * Ogawa & Kasai, 1978, ** Yasukawa & Yoshimura, 2015 (Yoshimura et. al., 2009) 多項式型のモデル (Hasegawa & Fukutomi, 1994) 舵 プロペラ逆転時の舵力もモデル化(北川ら, 2015) 風 多項式型のモデル(藤原ら,1998)

17.

最適化問題の定義 17 シミュレーションと実航跡との誤差を 最小化する問題として定義 探索パラメータ⾏列 𝜽 ⽬的関数ℱの設定 ("#$%&) 学習データ𝒟 ("#$%&) でℱ を最⼩化するパラメータ⾏列𝜽()" を探索 ℱは学習データと𝜽を使った 𝑡* = 100 s の運動シミュレーションの 瞬時の状態量誤差ノルムの2乗の総和 推定対象のMMGモデルのモデルパラメタで 前進船体抵抗𝑋+- , とプロペラ単独特性係数 を除いた57変数を最適化 探索範囲 ベンチマーク EFDモデル 𝜽に自船と他船の拘束模型試験や経験式 パラメタの値を用いたモデルをベンチマーク として使用 目的関数の状態量ベクトルは𝒛は3種類を比較 EFD (Experiment Fluid Dynamics)モデル 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

18.

CMA-ES: Covariance Matrix Adaption-Evolution Strategy ブラックボックス最適化手法CMA-ESを使用 CMA-ESの概念 CMA-ESの特徴 l 目的関数の関数景観が不明な問題 (=ブラックボックス問題)に対応できる l 目的関数の勾配情報が不要 l 数百次元まで対応できる l 困難な最適化問題にも対応可能 Ø 多峰性,変数分離不可能,不連続,悪スケール CMA-ESの概念図* l 本研究は,矩形制約**IPOP-CMA-ES***を使用 * Reproduction of Fig.2 of Maki et. al, 2020a ** Sakamoto & Akimoto, 2017. *** Auger & Hansen, 2005 準パラメータフリー 18

19.

CMA-ESを用いたシステム同定の流れ 19 自走模型の航跡との差が最小となるモデルのパラメータ𝜽!"# を探索 解候補の生成 解候補のパラメタ更新 • 正規分布から解候補 𝜽. , … , 𝜽/ を𝜆個生成 • • 𝜽はMMGモデルのモデルパラメタ ℱ(𝜽. ; 𝒟 "#$%& ), … , ℱ(𝜽/ ; 𝒟 "#$%& )が上位の 𝜽. , … , 𝜽/ を用いて正規分布を更新 • 解が収束したら𝜆を倍増させリスタート 運動シミュレーション 目的関数取得 • 𝜽. , … 𝜽/ と制御入力𝐮%&)0" (𝑡)を与え運動計算 解候補 𝜽. , … , 𝜽/ の適合度を評価 • 各解の状態量の時系列 𝒙1%2 𝑡 を生成 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

20.

学習データセット𝒟 ("#$%&) , テストデータセット𝒟 ("()") 3つの𝓓(𝐭𝐫𝐚𝐢𝐧) と1つの𝓓(𝐭𝐞𝐬𝐭) を自走模型試験結果から生成 データセットの構成 R: ランダム操船,T:旋回試験,Z:Zigzag試験,B:模擬着桟 自走模型 阪大犬飼池における自走模型試験 20

21.

ランダム操船 21 状態と制御にロバストなモデルを生成するため ランダム操船を採用 ランダム操船とは どのような運動で学習,検証するかはSIで重要 ü 旋回やZ試験,危急停止だけでは状態量 や制御に偏り ü 制御の入力が定常または周期的 港内操船の操船と運動は多様 ü 網羅的な港内操船のパターンは未整理 ランダム操船は可能な限り多様な状態,制御を 取るよう手動で操船 状態量,制御,外乱の分布

22.

最適化の推移 22 多峰性が確認された 4 10 103 0.0 2.0 4.0 6.0 Iteration 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会 8.0 104

23.

結果 23 既存手法(EFDモデル)より良い精度を達成した 7.0 評価の方法 ℱ.! 𝜽/01 ; 𝒟 23415∗ /𝑇 ( 23415∗) 6.0 EFD 𝑧z1-R +−R 5.0 𝑧z1-TR + − TR 4.0 23415∗ /𝑇 ( 23415∗) 𝑧z1-TZR + − TZR 𝑧z2-R ,−R 3.0 𝑧z2-TR , − TR 𝑧z2-TZR , − TZR 2.0 𝑧z3-R -−R 𝑧z3-TR - − TR 1.0 𝑧z3-TZR - − TZR 0.0 Test-B 2023/1/23 ℱ.! 𝜽/01 ; 𝒟 Test-R Test-T Test-Z 宮内新喜 Test 博士学位論文公聴会 ℱ#! :𝒛𝟐 の誤差ノルムを使うℱ (𝐓𝐞𝐬𝐭*∗) 𝒟 :データセットTest-* (𝐓𝐞𝐬𝐭*∗) 𝑇 :データセットTest-*の合計時間

24.

結果 時系列 2023/1/23 24 宮内新喜 博士学位論文公聴会

25.

貢献2のまとめ 25 SIによって,港内操船の動的モデルを得ることができた 4300秒(1.2時間)の自走模型試験結果 拘束模型試験より少ない実験時間 実船ログからも動的モデルを生成できる道筋をつけた 課題 モデルの自由度を上げる 学習データ量への依存性 解の多峰性 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

26.

貢献3 26 港内操船の動的モデルの生成,選択に人間の介入を減らし, 自動化する手法を提案した 研究の新規性 Ø アクチュエータの構成に寄らず,簡単に導出できる新しい動的モデルを提案した Ø 提案動的モデルについて,その人間の作業を減らしつつモデル化式を選択し,パラメタ同 定する方法を提案した 研究の実施内容 Ø 人間の介入への依存を減らすモデリング手法を検討し,モデル化の前提と要求を整理した Ø 動的モデルの構造を提案した Ø ブラックボックス最適化手法CMA-ESを用いて,航跡の誤差ノルムを最小化する問題と して定式化した問題を解いた. Ø 自走模型の航跡データを学習データに用いてシステム同定した. 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

27.

動的モデルの生成 27 動的モデルの生成は大まかに4段階に分類でき, 要所で人間の介入(作業,意思決定)が必要 モデルの導出 モデル化式(モデルの構造) を導出 モデルの選択 どのモデルを使うかを選ぶ モデルパラメータの取得 • 実績値,データベース 2023/1/23 • 拘束模型試験 モデルの検証 • システム同定(SI) 対象船の航跡と比較 宮内新喜 博士学位論文公聴会

28.

港内操船シミュレーション環境の構築における問題とは 28 アクチュエータ構成ごとに人間が作業,意思決定するため モデル生成の作業負担が大きい l パラメータ増加に伴うモデルパラメータ取得のコスト増加 l 特殊な試験設備(試験水槽)が必要 l 動的モデルに関する知識が必要 Ø 模型試験結果の解析,パラメータの物理的な意味の理解 l 動的モデルの選択が必要 特殊な試験設備と流れ場の観察に基づくモ Ø 港内操船用モデルはさまざま デル選択を要せず,アクチュエータ構造が l アクチュエータ構成とモデル構成の多様性 Ø モデル構造が変わる度にコーディング 2023/1/23 宮内新喜 変わる度にモデル構造て悩まなくても良い モデルが欲しい! 博士学位論文公聴会

29.

動的モデルの要求性能 29 既存手法の課題から,新しい動的モデルの要求性能を設定した 要求性能 1. モデルの複雑さを機械的に増加できる 2. アクチュエータ構成が変わっても機械的にモデル構造を導出できる 3. 既存手法と同程度の精度 4. 剥離やプロペラ逆転などの顕著な特性変化を再現できる 5. モデルや船の流体力学に対する深い知識を必要としない 6. 拘束模型試験を必要としない 7. 様々な状態量と制御の組み合わせに対して安定して動作する 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

30.

動的モデルの基本方針 30 要求性能を満たすための基本方針を設定 基本⽅針 1. Abkowtizモデルを踏襲し,Taylor展開多項式からモデル構造を導出する 2. MMG低速操縦モデル*を踏襲し,流れ場やアクチュエータ動作の特徴ごとにモデルパラーメタを設定する 3. 船の航跡からシステム同定でモデルパラメータを取得する 1. ふ 4. 複数のモデル構造を導出,SIで同定し,最も適当なモデルを選択する 5. 最適化計算の目的関数とデータセットの工夫で安定性を確保する 6. 実船から直接推定する前提で,スケール換算は行わない 7. 水上と水下の流れ場に分解してモデル構造を導出する 2023/1/23 *例えば,小林 英一, 浅井 滋, 低速域の操船運動を表す数学モデルに関する一検討, 関西造船協会誌, 1984, 193 巻, p. 27-37, 宮内新喜 博士学位論文公聴会

31.

問題設定 31 1軸2舵船の3自由度運動が対象 3-DoF 運動⽅程式 3自由度運動の状態量・制御入力 ミッドシップを原点とおく 流体力を水面下と風圧力に分けてモデル化 (本研究ではBTは無視) 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

32.

モデルの構造の導出 32 Taylor展開によって動的モデルの多項式を導出 多項式の導出 Taylor展開 原点 (𝒔3 = 0, 𝒂3 = 0)近傍でTaylor展開 流体力を状態量と制御の関数と仮定 適当な状態量𝒔3 ・制御の特徴量𝒂3 を設定 ここで, 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

33.

Sub-Model 33 港内操船における運動特性の変化を表現するため 「Sub-Model」としてモデルパラーメタを複数設定 Sub-Model の設定 Sub-Modelとは l l 条件ごとの微係数ベクトルの値の組み合わせを Sub modelと呼ぶ l Sub-Model 2 ü 前後進速度の符号で切り替え l Sub-Model 3 ü 前後進速度の符号と舵角で切り替え(前進のみ 導出の単純性と モデルの複雑さを両立するため l Sub-Model 4 ü 前後進速度の符号と舵角で切り替え l 流れ場の特徴を捉えるよう,任意に設定する 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

34.

スウェー方向のモデル 34 スウェー,ヨーも内積で多項式を表記: 𝒀𝐇𝐏𝐑 = 𝒀(𝒊) ⋅ 𝒛𝐨𝐝𝐝 奇数乗項ベクトル スウェーの微係数ベクトル 線形項 2次項 3次項 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

35.

データセットとモデルパラメータ同定 35 3つのデータセットを用いて動的モデルを生成,検証 Trainデータセット Validationデータセット • 最適化計算の実施 • 評価関数に適合するよう,モデル パラメータを探索 • ランダム操船(7407秒) • ハイパーパラメタの選定 Testデータセット • 最適パラメータの選択 • ランダム操船(1201秒) • 未知データに対する検証用 • ランダム操船(1201秒)と 危急停止操船(4本,計1648秒) 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

36.

データセットの分布 ランダム操船は概ね一致した分布 危急停止とランダム操船は一致しない 36

37.

最適化問題の定義 37 実航跡との誤差と発散へのペナルティを 最小化する問題として定義 最適モデルパラメータ Train最適とValidation最適 ⽬的関数の設定 ⽬的関数ℱを最⼩化するパラメータ⾏列𝜽()" を探索 ⽬的関数ℱは 誤差ノルム ℒ ,先験的な加速度範囲に対する逸脱ペナルティ 𝑃4%5 , L1正則化項λ 𝜽 . の和 誤差ノルムℒは 瞬時の状態量誤差ノルムの2乗の総和 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会 過学習の回避と汎化性能の向上のため, 最適化計算の過程で⽣じる𝜽 "#$%& のから Validationデータセットで最適なものを 最適モデルパラメータとして選択

38.

結果 38 Validation, Testの両者で 既存手法より良い推定性能を得た Test データセット(ランダム操船) Test データセット(緊急停止)

39.

Testデータ: ランダム 39 未知データでも,既存手法より良く推定 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

40.

貢献3のまとめ 40 人間の作業や意思決定への依存を減らした, 新しい動的モデルと,その生成手法を提案した l 提案モデルは,Taylor 展開により単純なルールに従い導出でき,かつ港内操船の 複雑な運動に対応できるモデルの自由度の高さをもつ l 単純なルールに従って導出した動的モデルであっても, 既存手法で生成した 動的モデルと同等以上の精度 l 単純なルールに従いモデルを導出,選択できるので,ユーザーが航跡を準備すれ ばモデル生成自体を自動化できる 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

41.

貢献4 41 実在の港湾における避航領域を考慮した approach操船のmotion planning手法を提案 研究の新規性 Ø 船舶の運動性能を陽に考慮しつつ、人間の操船者がとるような障害物への適切な離隔距離 を確保する経路計画手法を提案した Ø 着桟だけでなく離桟にも適用可能であることを示した 研究の実施内容 Ø 離着桟に適用可能な避航領域の設計 Ø 提案避航領域を反映した離着桟の経路計画計算 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

42.

着桟の参照経路 42 時間的,動学的拘束条件によって参照経路は分類できる Path Trajectory Motion 時間的制約を考慮しない, 位置または速度に対する拘束 時間的制約を考慮した, 位置または速度に対する拘束 運動性能を制約として満たす Trajectory and/or and/or subject to: subject to: 状態量 and/or 2023/1/23 に対し 宮内新喜 博士学位論文公聴会

43.

先行研究とその課題 43 制約条件に適切な離隔距離を考慮した研究は少ない l 船体内接長方形の頂点と障害物の干渉を最適制御のペナルティに与える(Maki et. al., 2020a, b) l 船体と障害物を凸包として最適制御の制約条件に与える(Martinsen et. al., 2019) Ø 船体を内接する凸包として表現した Ø 非凸な空間制約は,凸集合に分解しグラフ探索(Martinsen et. al., 2020) 凸包による空間的制約(Fig. 3 of Martinsen et. al., 2019) 障害物を考慮した最適制御 (Fig.4 of Maki et al., 2020a) 宮内新喜 博士学位論文公聴会

44.

研究の目的と概要 44 高精度な運動モデルを用いて 空間的制約を満たす“離”着桟の経路最適化手法を構築する 衝突回避アルゴリズム構築 • 余裕距離を保った操船を目指す • 船体周辺に避航領域を作成 • 領域と岸壁の干渉にペナルティ 最適化計算 • 複雑なMMGモデルで運動推定 • 風の外乱を考慮 • CMA-ESで制御入力を最適化 実港湾での計算で検証 • タグなしの着桟,離桟 • 複数の港湾で検証計算を行う • 上手くいかないケースとその対策 宮内新喜 博士学位論文公聴会

45.

離着桟経路計画の問題設定 45 制約付き最小化問題として定式化し,制御入力を探索 3-DoF 定式化 3自由度運動の状態量 制約のなかで, 評価関数 J が最小となる 離散制御入力 制御入力 subject to: 外乱 は風のみ UT UT U -vm o UA nST np nBT x u r y 宮内新喜 博士学位論文公聴会 と終端時刻 tf を探索

46.

評価関数 46 障害物と衝突なく着桟を成功させ,時間を最小化するように設計 l 終端状態量 𝒙(𝑡8 )と目標状態量 𝐱 𝐝𝐞𝐬 の差 p 終端条件の許容値 𝒙!"# を考慮 p 離桟は𝑢 𝑡$ ≥ 𝑥%&',) で許容値を置換 l 十分大きい障害物との干渉ペナルティ 障害物との 終端時刻 干渉ペナルティ 終端状態が𝒙"(6 を満たすときは𝒙"(6 宮内新喜 博士学位論文公聴会 終端状態が𝒙"(6 を満たさないときは, ペナルティ付きで目標との差

47.

衝突回避アルゴリズム 47 避航領域と障害物の干渉をペナルティ関数として与え衝突を回避 l ペナルティ関数C l 船体近傍に避航領域を保持,障害物に対して離隔 p 領域,障害物は多角形で表現 p 井上ら(1994)の航過距離モデルを参考 l 速度で大きさを変化させる p 着桟時に岸壁に接近させるため l 港湾の最小可航幅W をパラメータに領域の最大値を決定 p 港湾の形状変化に対応するため 井上 欣三, 宇佐美 茂, 柴田 登紀子, 制約水域における航過距離と離隔距離に関する操船者意識のモデル化, 日本航海学会論文集, 1994, 90 巻, p. 297-306, 宮内新喜 博士学位論文公聴会

48.

計算対象の港湾 48 狭隘な2港湾で検証計算を実施 大阪南港 さんふらわあターミナル 宮内新喜 東京有明港 10号地その2埠頭 博士学位論文公聴会

49.

南港,入港, 49 複雑な空間的制約を満たす経路を探索できた 宮内新喜 博士学位論文公聴会

50.

貢献4のまとめ 50 実港湾の制約を満たす経路最適化のため,余裕距離を考慮した 衝突回避アルゴリズムを構築した 新たに提案した衝突回避アルゴリズム,運動モデル,CMA-ESを用いて離着桟の経路と制御 入力を最適化した. 実在の2港湾で検証し,障害物に対して余裕距離をもった経路と制御入力が得られた. 提案手法は,運動モデル,開始点,終了点,および空間的な制約のみを必要とし,離着桟の 経路とと制御入力を得られる 宮内新喜 博士学位論文公聴会

51.

51 結論と将来への課題 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会

52.

結論 52 自動離着桟の実現に必要な, 動的モデルと経路計画手法を提案した Future work 主要な貢献 貢献1 操船と運動の統計的性質を分析 貢献2 港内操船に適用可能な既存の動的モデル のモデルパラメタを最適化する手法 貢献3 動的モデルの生成,選択に人間の介入を 減らし,自動化する手法を提案した. 貢献4 避航領域を考慮した離着桟の motion planning手法を提案した. 動的モデル l 学習データサイズへの依存性 l 実船での長時間のデータ取得の実現性 l モデルの必要十分な推定精度の定義 経路計画 l 避航領域の検証,改善 l 経路の追従しやすさ l リアルタイム経路計画との統合

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関連論文 53 貢献1 宮内新喜ら (2022). 内航船の離着桟における操船及び運動の統計的性質, 日本船舶海洋工学会秋季講演会論文集, 35, pp. 77–87. 貢献2 Miyauchi, Y., Maki, A., Umeda, N., Rachman M. D., & Akimoto Y. (2022). System parameter exploration of ship maneuvering model for automatic docking/berthing using CMA-ES. J Mar Sci Technol 27, 1065–1083 https://doi.org/10.1007/s00773-022-00889-3 貢献3 宮内新喜ら (2021). 離着桟・低速時複雑運動を再現する四象限 Abkowitzモデル, 日本船舶海洋工学会秋季講演会論文集, 33, pp. p49–58. Miyauchi Y., Akimoto, Y., Umeda, N., & Maki, A, Development of a Mathematical Model for Harbor-Maneuvers to Realize Modeling Automation, arXiv preprint arXiv:230210459. https://doi.org/10.48550/arXiv.2302.10459 貢献4 Miyauchi, Y., Sawada, R., Akimoto, Y., Umeda, N., & Maki, A. (2021). Optimization on Planning of Trajectory and Control of Autonomous Berthing and Unberthing for the Realistic Port Geometry. Ocean Eng., 245(December 2021), 110390. https://doi.org/10.1016/j.oceaneng.2021.110390 2023/1/23 宮内新喜 博士学位論文公聴会