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June 15, 26
スライド概要
このスライドの原稿:
AIと一緒に技術発表スライドを日本語で作るとき、問題になるのは「AIをどう使いこなすか」ではありません。AIが作った見た目のよいスライドを、発表者が自分で説明できる技術資料へ昇華できるかどうかです。
日本語圏の技術イベントや勉強会で発表され、Speaker Deck などで共有されるような、実装や技術的判断を説明するスライドを扱います。
ここでいう技術発表スライドは、実装、設計、運用、調査、技術的な判断を説明する発表資料です。Speaker Deck の年間ランキングは、日本語圏で技術発表スライドが共有される文化を示しています。
この2つの側面があるため、スライドは単に文字を減らせばよいわけではありません。発表中に見せる画面は圧縮しながら、背景、根拠、判断基準、出典、注意点は、あとから追える形で残す必要があります。
全体の流れは次のとおりです。
対象を、日本語圏で共有される技術発表資料として定義する。
同じスライドに、ライブの画面と、あとから読む持ち帰り資料という2つの側面があることを想定する。
AIスライドが読みにくく見えるのは、AIを使ったからではなく、見た目、説明、図、根拠、解釈が混ざりやすいからである。
AI作文は局所的には自然でも、全体の整合性、重複、指示文脈への偏りを見落としやすい。
Easy と Simple を理解すると、AIに任せてよい作業と、人間が減らすべき作業が見えやすい。
内容設計から始め、根拠と解釈を分け、発表中に見せる一言だけを削り出す。
最後は一晩寝かせて、少し他人目線で読み返し、発表で言える言葉へ戻す。
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技術発表スライドとは
この話では、日本語圏の技術イベントや勉強会で発表され、Speaker Deck などで共有されるようなスライドを扱います。
内容としては、実装、設計、運用、調査、技術的な判断を説明する発表資料です。プロダクト紹介だけの営業資料や、授業用の教材一般ではなく、技術者が自分の経験や調査から学びを共有するデッキを想定します。
Speaker Deck の年間ランキングは、日本語圏で技術発表スライドが共有される文化を示しています。このページで説明したいのは Speaker Deck そのものではなく、「ここで扱う技術発表スライドが何を指すか」です。
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スライドの2つの役割
発表中のスライドは、聞き手が話についていくためのガイドです。タイトル、用語、短い箇条書き、図、コード片などが、今どの話をしているのかを示します。
しかし、共有後のスライドは短い技術記事のようにも読まれます。ライブの画面だけでなく、あとから読む文脈もスコープに入れる必要があります。そのため、背景、制約、判断基準、出典が何も残っていないと、あとから読めない資料になります。
つまり、同じスライドに、発表中に見る画面と、あとから読む持ち帰り資料という2つの側面があることを想定します。画面には聞くためのガイドを置き、読後に必要な背景や根拠は追える形で残す。これが、ここで扱う技術発表スライドの出発点です。
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AI生成スライドは読みにくい?
AIで作ったスライドに対して、「読みにくい」「品質が低い」と感じられることがあります。これは、AIがスライドを作れないというより、見た目、図、説明を足す方向へ進みやすく、情報が混ざりやすいからだと考えられます。
たとえば、「TSKaigi 2026 の発表資料の体感半数以上が AI 生成感あるものだった」という記事では、読みにくさとして、小さい文字、文字やイラストの詰め込み、複数カラム、装飾過多などが挙げられていました。
これは観測材料です。この観測だけで「AIスライドは悪い」とは言えません。ただ、AIが作るスライドは、見た目、図、説明パネル、完成感を増やす方向へ進みやすい、という説明を始める材料にはなります。
ここで扱いたい AI 生成感は、見た目だけではありません。読みにくさは、文字サイズや装飾だけでなく、発表者が何を判断したのかが見えないときにも強くなります。AIが提案した筋書きに対して、自分の意見や経験を乗せられていないと、発表者の資料ではなく、AIの提案を並べた資料に見えます。
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AI作文アンチパターン
AI作文の難しさは、1文ずつ見ると自然に見えることです。段落単位では筋が通っているように読めても、スライド全体で見ると、前のページと同じことを言っていたり、結論が少しずつ変わっていたりします。
技術スライドでは、この弱さが目立ちます。発表資料は、1枚の文章ではなく、複数ページで主張を積み上げる成果物だからです。各ページが局所的に整っていても、全体として同じセリフを繰り返していたり、問題提起と結論がずれていたりすると、読者はどこへ向かっている資料なのかを見失います。
AIは、同じ強い言い回しを何度も使っても、自分では疑問を持ちにくいです。強い対比や否定から入る構文は、ページ単体では締まって見えます。しかし複数ページに続くと、発表者の判断より、生成されたパンチラインの反復に見えてしまいます。
もうひとつ注意すべきなのは、文章が指示文脈に偏ることです。修正指示、調査メモ、発表者だけが知っている前提は、草稿では役に立ちます。しかし公開するノートに残ると、読者に向けた説明ではなく、作成過程の都合に引っ張られた文章に見えてしまいます。
だから、AIで作ったスライドは、ページ単位ではなくスライド全体で読み返します。文が自然かどうかだけでなく、同じことを繰り返していないか、前後の主張がつながっているか、指示文脈に寄りすぎた表現が残っていないかを確認します。
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Easy と Simple を理解する
Rich Hickey(Clojure 作者)の "Simple Made Easy" に従うと、AIスライドの問題は、作りやすさと役割の混ざらなさに分けて考えられます。
スライド作成でいう作りやすさ、つまり Easy は、見た目、出力、操作感です。装飾、関係図、説明パネルを足すほど、作った感じは出やすくなります。一方で役割の混ざらなさ、つまり Simple は、構造、役割、判断です。何を言うか、何を持ち帰るか、どこまで見せるかを絞ることです。
Simple は、スライドを薄くするという意味ではありません。発表用の一言、持ち帰り用の説明、根拠、解釈、例、出典を、それぞれ混ぜずに置くという意味です。
AIに作らせた後に必要なのは、追加ではなく削減です。説明パネルを増やす、図を足す、言い換えを足すのは簡単です。難しいのは、何を言うか、何を持ち帰るか、どこまで見せるかを絞ることです。したがって、Easy と Simple の対比は1枚の説明にまとめ、以降のページでは「役割を混ぜない」という判断基準として使います。
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画像生成に注意
発表スライドの中心は、必ずしも視覚表現ではありません。特に技術発表では、スライドは「美しく見せるもの」よりも、「話を要約して伝えるもの」として機能する必要があります。
AIの画像生成や図作成は、ビジュアルを素早く足せます。ただし、指示が粗いと、外から見えるスタイルを足す方向へ進み、「それっぽいが何も言っていない」虚無な図解になりがちです。抽象的な背景画像、きれいなだけの関係図、情報を詰めたインフォグラフィックは、見た目に注意を集めるわりに、ページの目的や前後関係を読みにくくします。
たとえば、AIを中心に置き、その周りに「人」「資料」「成果」「未来」を丸で配置し、矢印でつないだ図です。見た目はそれらしいですが、矢印が何を意味するのか、どの判断理由を支えるのか、なぜその配置なのかがわかりません。これが虚無な図解です。
図を入れるなら、「この矢印は何を意味するのか」「この配置はどの判断を支えるのか」「図がないと説明できないことは何か」を先に言語化します。画像や図は、判断を説明するときだけ使います。
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アウトラインを作ると筋が通る
AIは最初の草稿作り、言い換え、構造化、抜け漏れ確認に向いています。しかし、AIが作った文章をそのままスライドに貼ると、説明の量も語彙もAI側に引っ張られます。
そこで、まず話す内容を文章で作ります。次にアウトラインを作り、ページ順、主張、根拠の位置を確認します。この段階では、スライドに出す一言まで決めきりません。まず、話の筋が通っているかを見ます。
見た目の調整は一番最後です。スライド版を先に整えると、完成に近づいた感覚が出ます。しかし内容が固まっていない段階では、これは Easy に寄った進め方です。スライド版で内容を精査すると、文章の筋だけでなく、余白、カードの高さ、ページ番号まで同時に気になり始めます。すると、本来直すべき話の筋より見た目の破綻に注意を取られやすくなります。
だから、内容、根拠、ページ順、タイトルの流れが安定するまでは、下書きテキストとアウトラインで進めるほうがよいです。
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とにかく文字を大きく
下書きが固まったあと、スライド本文を作ります。ここで高橋メソッドの感覚を使います。大きな文字を前提にすると、1枚に置ける情報量が自然に減ります。これは見た目の流派ではなく、残す一言を選ばせる制約です。
AIにスライドの見た目を任せると、インフォグラフィックやWebページをデフォルトにして、スライドも同じ感覚でデザインしがちです。小さい文字、説明パネル、複数カラム、装飾で情報量を増やすと、画面としては完成して見えます。しかし発表中に聞くスライドでは、読む量が増えるほど、話者の声を追いにくくなります。
高橋メソッドが広まった理由のひとつは、5分程度のライトニングトークのスピード感と相性がよかったからだと考えられます。短い発表では、画面上の説明を読ませる時間がありません。大きな一言を置くことで、聞き手は現在地だけを見て、詳しい説明は話者の声で追えます。
日本語で説明する技術発表スライドでは、説明をすべて消すわけではありません。説明はノート、補足、脚注、出典カードへ逃がします。発表中に見せる画面には、聞き手が話を追うためのガイドだけを置きます。
この段階の作業は「短く要約する」だけではありません。下書きの中から、ページの主張を代表する語句を選ぶ作業です。選べない場合は、そのページの主張がまだ混ざっています。
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AIに振り回されない
AIの出力をそのまま採用すると、発表者が何を見て、何を根拠にし、どの経験から判断したのかが見えにくくなります。AIに振り回されないためには、観測、根拠、経験を分けて扱います。
観測は、公開記事、実際のスライド、制作中の修正ログなどから確認できる具体的な事実や事例です。感想や評価に進む前に、何が起きていたか、どの表現や構成が問題になったかを切り出します。根拠は、観測材料に出典、条件、確認できる範囲を添え、そこから言えることを限定したものです。経験は、その根拠をもとに発表者が自分の判断や仮説を重ねる部分です。
たとえば、「AI生成感のあるスライドが多かった」という話は観測材料です。そこからすぐ「AIスライドは悪い」とは言えません。言えるのは、特定の記事で、読みにくさとして小さい文字、詰め込み、複数カラム、装飾過多が挙げられていたことです。そのうえで、自分の経験に基づく判断として「AIは Easy な見た目や説明を増やしやすく、ページごとの主張が絡まりやすい」と話します。
この分け方をすると、持ち帰り資料として読んだときに、どこまでがソース由来で、どこからが発表者の経験にもとづく判断なのかが追えます。AIの出力に納得できない場合は、そのまま採用せず、質問対話で前提、根拠、言い換えを確認して改善します。
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omokageを残す
AIに「いい感じのスライド」を任せるだけでは、発表者の語彙から外れやすくなります。特に、強い対比のパンチラインをそのまま採用すると、言い切った気にはなりますが、何を削り、何を残し、どの場面を想定しているのかが曖昧なまま残ります。
自分の言葉へ戻すには、違和感を感覚だけで処理しないことが重要です。たとえば omokage のような文体差分の考え方は、過去の文章と新しい下書きの差を見て、強すぎる対比、借り物の語彙、発表で自分が言わない言い回しを見直す助けになります。
ここで見る数値は、発表者の判断を助ける材料です。最終的に合わせる先は、発表者が自然に言える言葉です。評価に使う語彙も、人間が選びます。
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結局は時間をかける
最後に残したいのは、人間が時間をかけて確認することが重要だという点です。生成過程に時間を使い切ると、読みにくさ、自分の意見ではない文、自分の言い方ではない表現に気づく余裕がなくなります。
ここには認知心理学的な説明もあります。Norton、Mochon、Ariely の IKEA 効果の研究では、人は自分で作ったものを、同等の完成品より高く評価しやすいことが示されています。これはイケア効果と呼ばれます。料理でも、自分の子どもの作品でも、自分に近いものはよく見えやすい。AI生成物も同じで、プロンプトを書き、何度も直し、出力を通して見ていると、他人が読む退屈さや違和感に気づきにくくなります。
だから、完成直後に判断しないほうがよいです。一晩寝かせると、作った直後の熱が下がり、少し他人目線に近づきます。
スライドでも、翌日に通しで読むと、同じセリフの反復、弱い結論、借り物の語彙、前後のつながりの悪さが見えやすくなります。
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実際の修正ログから見えたこと
この資料を作る過程で出た修正指示を分類すると、手戻りは見た目よりも、話の筋、語彙、根拠の分離に集中していました。
話の筋・ページ間の接続: 32%
言葉の精度・誤読の回避: 28%
根拠・ソース・観測の扱い: 20%
スライドと補足の役割分離: 12%
図・見た目・レイアウト判断: 8%
たとえば、2枚目と3枚目の重複、AIスライドの問題提起が後で回収されないこと、Easy / Simple の語が後続ページに続いていないことは、話の筋の問題でした。「日本語技術」に読める表現、「置く」という曖昧な動詞、「入口」という唐突な比喩は、言葉の精度の問題でした。観測は根拠ではない、ソースリンクを重複させない、読みにくい出典は外す、といった修正は、根拠と観測の扱いの問題でした。
この分布は、AI生成スライドの手戻りが単なる見た目の調整では終わらないことを示しています。人間が戻していたのは、スライドの装飾ではなく、話の筋、語彙、根拠、補足の役割でした。
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結論
AIは、Easy 寄りの装飾や完成感を任せる相手としては便利です。短時間で図を出し、説明パネルを増やし、整った見た目を提案してくれます。しかし、そのままだとスライドは「作った感じ」は出ても、役割が絡まった資料になりやすいです。
人間側に必要なのは、Simple に保つための技術です。内容を理解し、どのページで何を言うのかを決め、根拠と解釈を分け、画面へ出す言葉を減らす。減らすとは、説明を消すことではありません。同じスライドが持つ、発表中に見せる画面と、持ち帰り用に残す説明の両方の側面を意識することです。
そのため、スライド作成は内容の設計から始めます。まず話す筋を文章で作り、根拠と構成を下書きテキストで固める。AIは、草稿、構造化、抜け漏れ確認、言い換え、圧縮の候補出しに使えます。
ただし、最後に効くのは、人間がどれだけ読み返し、発表で自然に言える言葉へ戻したかです。一晩寝かせて、少し他人目線になって読むと、自分の生成物を甘く見るバイアスから離れやすくなります。
目標はこれではありません。
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スライドをできるだけ薄くする。
より適切な目標はこれです。
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AIには Easy 寄りの生成と構造化を手伝わせる。
人間は内容を理解して、Simple に保つために減らす。
最後は、一晩寝かせて少し他人目線になり、自分の言葉へ戻す。
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実践手順
まずスピーカーノートを書く。
各スライドについて、短い技術記事の一節として読める説明を書く。主張、文脈、根拠、例、注意点、次へのつなぎを含める。
スライドをデザインする前に、主張と根拠を対応させる。
重要な主張ごとに、実践例に基づくのか、記事を要約しているのか、一般論に基づくのか、研究に基づくのか、発表者の解釈なのかを分ける。
下書きからアウトラインを作る。
下書きをそのまま貼らず、話す順序、ページ分割、主張と根拠の位置を見る。この段階では、画面に残す一言まで急いで決めない。
画面に残す一言を選ぶ。
アウトラインと根拠が安定してから、発表中に見せる語句を選ぶ。大きい文字で置けない量なら、説明はノートや補足へ逃がす。
一晩寝かせてから通しで読む。
同じことを繰り返していないか、前後の主張がつながっているか、自分が発表で自然に言える言葉になっているかを見る。
最後に見た目と出力を整える。
レイアウトや出力調整は、内容構造が安定してから行う。
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短いルール
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AIは Easy を増やしやすい。人間は Simple に保つ。
内容設計から始め、AIは草稿、構造化、圧縮、根拠確認に使う。
最後は一晩寝かせて、少し他人目線で読み返し、発表で言える言葉に戻す。
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参考ソース
2025's Most Viewed Speaker Deck Presentations: https://blog.speakerdeck.com/2025s-most-viewed-speaker-deck-presentations/
発表資料の作り方とスライド本文の削り方: https://blog.kyanny.me/entry/2023/03/20/014514
TSKaigi 2026 の発表資料の体感半数以上が AI 生成感あるものだった: https://www.mizdra.net/entry/2026/05/27/161559
ノンデザイナー向けの資料デザインにおけるロジック: https://gihyo.jp/article/2023/04/powerpoint-design-book-interview
Presentation Zen のデザイン原則: https://www.garrreynolds.com/design-tips
Simple Made Easy: https://www.infoq.com/presentations/Simple-Made-Easy/
文体の一致度を評価するomokageを作った話: https://debimate.jp/post/ja/2026-06-02-%E6%96%87%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%87%B4%E5%BA%A6%E3%82%92%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%99%E3%82%8Bomokage%E3%82%92%E4%BD%9C%E3%81%A3%E3%81%9F%E8%A9%B1/
The IKEA Effect: When Labor Leads to Love: https://www.hbs.edu/ris/Publication%20Files/11-091.pdf
Duarte によるスピーカーノートの一般的な整理: https://www.duarte.com/blog/everything-need-know-using-speaker-notes-in-powerpoint/
認知負荷に関する一般的な整理: https://education.nsw.gov.au/about-us/education-data-and-research/cese/publications/practical-guides-for-educators/managing-cognitive-load-through-effective-presentations
AIで技術発表 スライドを作るコツ
技術発表スライドとは 日本語圏の技術イベントや勉強会で発表され、スライド共有サービスのSpeaker Deckな どで公開される、実装や技術的判断を説明する資料を指す。 ・ 対象は、技術イベントや勉強会で使う発表資料。 ・ 実装、設計、運用、調査、技術的な判断を説明する。 ・ Speaker Deckの年間閲覧ランキングからも、発表資料を公開・共有する文化が うかがえる。 参考:2025's Most Viewed Speaker Deck Presentations
スライドの2つの役割 同じスライドに、ライブの画面と、あとから読む持ち帰り資料という2つの側面があるこ とを想定する。 ・ 画面には、現在地がわかるタイトル、用語、短い箇条書きを残す。 ・ 話を追うためのガイドとして使う。 ・ タイトルや用語、図、コード片で、いま何の話かを示す。 ・ 背景、制約、根拠、判断理由は、あとから追える場所に残す。 ・ 共有後は、短い技術記事としても読まれる。 ・ 背景や判断基準、出典がないと、説明を聞いていない人には伝わりにくい。 ・ 1枚を、発表中に見る情報と、あとから読む情報の両面から設計する。 ・ 発表中は話を追え、あとからは根拠をたどれるようにする。
AI生成スライドは読みにくい? 発表後に単体で読む資料として見ると、見た目、説明、根拠、解釈が混ざりやすい。 ・ 小さい文字、複数カラム、装飾過多が重なると、読む順番が見えにくくなる。 ・ AIは説明や図を足して完成度を出しやすいが、ページの主張までは絞らない。 ・ 持ち帰り資料として読むと、どこまでが根拠でどこからが解釈なのかがぼやけ る。 参考:TSKaigi 2026 の発表資料の体感半数以上が AI 生成感あるものだった
AI作文アンチパターン AIの文は一段落ごとには整って見える。しかし、スライド全体の整合性や重複、作成時の 指示に引っ張られた表現は、人間が見ないと残りやすい。 ・ 各ページではもっともらしくても、全体で見ると主張の順番や結論がつながら ないことがある。 ・ 前のページと同じことを言っていたり、結論が少しずつ変わっていたりする。 ・ 同じセリフや強い対比を繰り返しても、AIは自分で違和感を持ちにくい。 ・ 発表者の指示や修正の都合に文章が寄り、読者向け本文からずれることがある。
Simple Made Easy Rich Hickey(Clojureの作者)による講演 「簡単であること」と「シンプルであること」を分けて考える。
Easy と Simple を理解する 「Simple Made Easy」の考え方を、スライド制作に当てはめる。作業の「やりやすさ」 と、情報の「役割が混ざらないこと」を分けて考える。 ・ Easy は、見た目、出力、操作感。装飾や説明パネルを足すほど、作った感じは 出やすい。 ・ Simple は、役割の混ざらなさ。主張、根拠、補足、判断が絡まない状態を指す。 ・ Simpleは、スライドを薄くするという意味ではない。 改善は追加ではなく、ページに混ざった役割をほどき、何を出すかを選び直すこ と。
画像生成に注意 AIの画像生成や図は、外から見えるスタイルをすぐ足せる。AIを中心に丸と矢印を並べて も、判断理由が読めないなら虚無な図解になる。 ・ 絵の完成度が上がるほど、聞き手の注意が内容より印象に向く。 ・ 丸や矢印を足しても、関係の種類が説明されなければ曖昧なまま残る。 ・ たとえば、AIの周りに「人」「資料」「成果」「未来」を並べ、矢印でつなぐ。 ・ その配置にした判断理由が読めない図は、発表後の読み返しで弱くなる。 ・ 図がないと説明できないことは何かを、先に言葉にする。
アウトラインを作ると筋が通る AIは作文と構造化が得意なので、まず話す内容の草稿に使う。スライド化する前に、順番 とつながりを見る。 ・ まず話す筋を文章で作り、スライド化する前に流れを確認する。 ・ 各主張について、出典から言えることと自分の解釈を分けて見る。 ここではまだ見た目を作らず、ページ順、主張、根拠の位置だけを見る。 参考:発表資料の作り方とスライド本文の削り方
見た目の調整は一番最後 内容の設計が固まる前に見た目を調整すると、あとから話を直したくなった時の修正が大 きい。まず下書きテキストで進める。 ・ 下書き段階なら、話の順番やページ分割をまだ軽く動かせる。 ・ 見た目の調整は、内容、根拠、ページ順が安定してから行う。 ・ スライド版で内容を精査すると、文章の筋より余白や細部も気になりやすい。 ・ 見た目が気になると、話の筋への注意がそれやすい。
とにかく文字を大きく AIはインフォグラフィックやWebページをデフォルトにして、スライドも小さい文字で詰 めがち。下書きが固まったら、残す一言を大きく置く。 ・ 大きな文字を前提にすると、画面に入る情報量を先に減らせる。 ・ 高橋メソッドは、大きな文字と少ない言葉で構成する発表手法。短い発表でも、 聞き手が話を追いやすくする。 ・ 短い発表では、画面の説明を読んでもらう時間が少ない。詳しい説明は話者の声で補う。 ・ 毎ページで本当に残したい一言を選ぶので、主張の輪郭が強くなる。 ・ 説明はノートや補足、脚注へ残す。すべて消すわけではない。 参考:高橋メソッド
AIに振り回されない AIの出力をそのまま採用しない。観測、根拠、経験に分けて、納得できる判断に戻す。 観測 公開記事、実際のスライド、修正ログから確認できる具体例。まず、何が起きていた かだけを切り出す。 根拠 出典、条件、確認できる範囲を添える。観測から何が言えるかを限定する。 経験 根拠に自分の経験や仮説を重ねる。納得できなければ、AIと質問対話して改善する。
omokageを残す omokageは、文章の文体の一致度を評価するツール。自分の過去の文章と比べると、AI が生成した文章のどこを直すか考えやすくなる。 ・ 自分の文体との差が見えるので、違和感を感覚だけで処理しなくて済む。 ・ ズレた特徴を見ながら、強すぎる対比や、自分では使わない言い切りを直せる。 ・ 最後は、発表で自然に言える語彙へ戻す。 参考:文体の一致度を評価するomokageを作った話
結局は時間をかける AIで生成時間は短くできる。ただし、読み返し、削り、自分の言葉へ戻す時間まで省くと、 読みにくさに気づけない。 ・ 自分が手を入れたものを高く評価しやすい傾向を、イケア効果という。AIと作っ た資料でも、読みにくさを見落とさないようにする。 ・ 一晩置くと心理的距離ができ、作った直後の納得から少し離れられる。 ・ 翌日に通しで読み、重複、弱い結論、借り物の語彙を削る。 参考:The IKEA Effect: When Labor Leads to Love
制作時に多かった修正 この資料を作る過程で出た修正指示を、内容別に分類した結果。話の筋や言葉の精度、根 拠の扱いに修正が集中した。 話の筋・ページ間の接続 32% 言葉の精度・誤読の回避 28% 根拠・ソース・観測の扱い 20% スライドと補足の役割分離 12% 図・見た目・レイアウト判断 8% この資料の制作過程を振り返った内訳。AIで作る資料全般の傾向を示すものではない。