医療DX政策動向と研究会提言

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March 29, 24

スライド概要

弊社社員が、企画立案し社会貢献活動として携わっている「医療DX研究会」(主催:公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 近畿地区協議会)の主任研究員として、機関誌JAHMC(ジャーマック)2024年3月号に2023年度調査研究事業成果報告として、「医療DX政策動向と研究会提言」を寄稿しました。ご参考になれば幸いです。

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各ページのテキスト
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*本稿は下記に掲載された記事です。許可を得て転載しています。無断複写・転載を禁じます。 誌 上 研 修 Continuing Education 【転載元】機関誌 JAHMC(ジャーマック)2024 年 3 月号 医療 DX の新しい潮流 公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会 第 35 巻第 3 号(通巻第 412 号) 編集•発行 https://www.jahmc.or.jp/ 最終回 医療 DX 政策動向と 研究会提言 当協会近畿地区協議会 医療 DX 研究会 主任研究員、公認情報セキュリティ監査人、 プライバシーマーク主任審査員 / 主任講師、認定登録 医業経営コンサルタント とし、近畿地区から公募した研究員 13 人 (京都 本連載「医療DXの新しい潮流」はこれまで 8 回にわたり、大道道大氏(社会医療法人大道会 理事長/(一社)日本病院会副会長・ICT推進委員 会委員長)のインタビュー記事からスタートし、当 医療 DX 研究会の外部有識者の方々にご執筆い ただいた。当協会会員にとって大変有益となる知 見をご教示いただき、心から感謝を申し上げた い。 第9回(最終回)は、2023年度近畿地区協議会 調査研究事業「医療 DX 政策動向の調査研究」の 成果として取りまとめた、医療 DX 推進のための 提言を寄稿する。 1. 目的と体制 (1) 医療 DX 研究会の目的 国の医療 DX 政策推進により変革「X」を目指 す医業経営者の高度化する要求や期待に応えられ るよう、新しい知識や経験を積むとともに、互い に切磋琢磨する「場」として、当研究会を近畿地 区の個人会員および法人正会員、賛助会員に提供 するものである。 (2) 医療 DX 研究会の体制 国 の 医 療 DX 政策の理解を深めるため、2023 年度テーマは「医療 DX 政策動向の調査研究」 ● 図表1 研究会理念 府支部 3 人、滋賀県支部 1 人、奈良県支部 1 人、兵 庫県支部 4 人、大阪府・和歌山県連合支部 4 人)を 中心に、個人(パーソナルデータに関する人間 中心のアプローチ)、病院、学術、情報システ ム、 製薬、法曹のそれぞれの立場で参画いただいた外 部有識者 8 人を加え、計 21 人の有志体制とし た。 2. 調査研究結果 (1)医療 DX 政策動向 内閣官房「医療 DX 推進本部」が 2023 年 6 月 に公表した「医療 DX の推進に関する工程表」か ら医療 DX の取り組み内容とスケジュールを確認 した注 1。 まず、7 年後の 2030 年度を目途に、5 つの実 現目標を目指していくとしている。 ■ 2030 年度実現目標 ①国民のさらなる健康増進 ②切れ目なく質の高い医療等の効率的な提供 ③医療機関等の業務効率化 ④システム人材等の有効活用 ⑤医療情報の二次利用の環境整備 また、当面の具体的な施策として次のことが示 されていることも確認した。 ■ 2026 年度までの具体的な施策 ①マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速等 ②全国医療情報プラットフォームの構築 ③電子カルテ情報の標準化等 ④診療報酬改定 DX ⑤医療 DX の実施主体 注 1:詳細は、ニュースレター「医療 DX 通信」Medical DX Times 02 号を参照(当研究会ウェブサイト[https://hbs.one.ne.jp/ jahmc-kinki/]からダウンロード可)。 JAHMC 2024 March 23

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以上の医療 DX 政策動向について、当研究会で ④他産業への人材の流出が進み、 人材確保が困難 5) ⑤変革「X」が何度も叫ばれながら、私たち国民 は次のように考察した。 は主体的な変革「X」を進めず、経済の長期低 ■医療 DX 政策動向に関する考察 ①政策上の「医療 DX」は、主として、国、地方自治 体、社会保険診療報酬支払基金などの行政等の業 務改革、効率化で、従として、各ステークホルダー が当該「医療 DX」の恩恵、影響を受ける構図になっ ている。 ②国 は、Personal Health Record( 以 下、PHR) の利活用による本人主体の予防・健康づくり、セル フケア・セルフメディケーションの推進(公的医療 保険外)により、国民皆保険制度を支える将来像 を描いている。 ③当 該 PHR +生成 AI(人工知能)の利活用により、 将来的に本人と医療機関の関係が変わる可能性を 秘めている。 ④標準型電子カルテの提供は、200 床未満の病院や 診療所の電子カルテ普及率の低迷に対する対策の 1 つとして、期待される。 ⑤医療機関は、政策上の「医療 DX」に協力するとと もに、少子高齢化&人口減少下における種々の経 営課題に対して、医業経営上の「医療 DX」も避け られず、公定価格(保険診療)や人員配置基準が ある中で、初期投資・運用費を業務改革、効率化 で賄う必要がある。 迷、国際競争力が低下。その結果、海外から の労働力の流入はあまり期待できず、逆に国 内の人的資源が海外へ流出する負のスパイラ ルに陥っている。 ⑥私たちの生活を維持するために必要な労働力が 足りなくなる「労働供給制約社会」が訪れる 6)。 このままでは「急病でも救急車がなかなか来な い、救急車で運ばれても受け入れてくれる病院が なく自宅で亡くなるなど、新型コロナウイルス禍 の異常事態が恒常化する事態」が訪れると非常に 危惧する。 そのような危機的な状況を避けるために、 「医 療 DX」等で医療機関の組織改革、業務効率化、 働き方改革、その他、種々の法・制度改正も含め て、早急に取り組みを開始することが重要である ことに疑いの余地はない。 しかしながら、医療機関が医療 DX を進める際 (2)医療機関の内外環境 に種々の問題点や障害がある。 次に医療 DX に取り組む医療機関の内外環境に 当研究会調査および第 27 回日本医業経営コン 着目し、次の 6 点を重視すべき要因を認識する 「医 サルタント学会京都大会研究会議注 2 により、 に至った。 療機関」 「医療 DX 政策」 「法・制度」に内在して ①国民医療費が年々増大する将来見通し 1) ②物価高騰の影響等により病院の医業利益率が 2) 過去最低 、赤字病院割合が増加 3) ③生産年齢人口の減少が続く中、高齢者が増加 4) ●図表 2 医療 DX を進める際の問題点や障害 いることが浮かび上がり、特性要因図で整理し構 造化した(図表 2) 。 3. 研究会提言 当研究会は、医業経営上の「医療 DX」を次の ように定義する。 ■医業経営上の「医療 DX」 医業経営マネジメントプロセスの整合性を確保した 組織変革「X」 (図表 3 青矢印)を医療機関の揺るが ずブレない背骨とし、地域住民の要求や期待に耳を傾 け地域住民起点で、院内プロセスや院外との連携プロ セスを見直し、医療提供サプライチェーンプロセスの 標準化と効率化を図った Information and Commu nication(以下、ICT[図表 3 緑矢印] )により、地域 住民が認識していない問題や諦めている問題を解決す る新たな地域住民価値を創造(イノベーション)する (図表 3、4) 。 注 2:京都大会研究会議報告書は、当研究会ウェブサイト(https:// hbs.one.ne.jp/jahmc-kinki/)からダウンロード可。 24 JAHMC 2024 March

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Continuing Education さらに、変革「X」を、次のように定義する。 ●図表 3 医  業経営上の「医療 DX」 (医業経営マネジメント&医療提供サプライチェーン構造図) ■変革「X」 少子高齢化&人口減少という今までに経験したこと のない厳しい時代に入り、過去の人口ボーナス期の 成功体験を捨て現在の人口オーナス期に適し、さらに は、グローバルに通用する新しい社会的価値創造を 目指し、私たち国民の幸せを追求する。 一方、当研究会は、変革「X」とデジタル「D」 の関係性について、次のように考える。 ■変革「X」とデジタル「D」の関係性 ⑴変革「X」は、 デジタル「D」ではなく、強い意思「W」 (Will)によって起こすもので、デジタル「D」は、 単なる手段の 1 つでしかない。 ⑵デジタル「D」単体には有用性はない。 標準化→ 連携、結合→ネットワーク化して初めて、有用性が 確保できる。 ⑶デジタル「D」に狭窄し目的化してしまいがちになる ため、注意を要する(不必要なデジタル「D」化は 避ける。あえてデジタル「D」化しないこともある) 。 ⑷「医療 DX」のメリットは、種々の障害を乗り越え た先にある。ステークホルダーはそれぞれの立場で 「覚悟」を決め、真摯に取り組む姿勢が、健全で持 続可能な社会を創造する。 ■地  域住民の要求や期待に耳を傾け地域住民起点で、院内プロセスや院外 との連携プロセスを見直し、医療提供サプライチェーンプロセスの標準化 と効率化を図る。 ■地  域住民が認識していない問題や諦めている問題を発見し、それらの問 題を解決する新たな地域住民価値を創造(イノベーション)する。 ●図表 4 医業経営上の「医療 DX」 (変革のマトリックス図) 以上の定義および考え方に基づき、 「国民」 「国・ 地方公共団体」 「私たち、認定登録 医業経営コン サルタント」の対象区分ごとに提言を公表する。 【国民への提言】 ⑴ 受 身ではない主体的で自立的・自発的な健康増 進マネジメント力を高める。 前述の「医療 DX の推進に関する工程表」にお いて、 「国民自身の予防を促進し、より良質な医療 以上、来る労働供給制約社会(言い換えると、 やケアを受けられるように、社会や生活の形を変え 医療サービス提供制約社会)に向けて、国民 1 ていく」と記述し、2030 年度の実現目標の第 1 番 人ひとりが受身ではない主体的で自立的・自発的 目に「国民の更なる健康増進」を挙げ、 「誕生から な健康増進マネジメント力の向上が求められる。 現在までの生涯にわたる保健・医療・介護の情報 を PHR として自分自身で一元的に把握可能となり、 個人の健康増進に寄与」を高らかにうたっている。 さらに、 「本工程表は、基本的に政府の取組を 内容としているが、 医療 DX の実現に当たっては、 医療機関・薬局・介護事業所等、そこで働く医療・ 介護関係者、そして何よりも国民一人一人が自立 【国・地方公共団体への提言】 ⑴ 国民皆保険制度で発生した医療情報(リアルワー ルドデータ注 3)を利活用し新しい価値を創出し、 持続可能な社会保障制度の構築を着実に進めら れる環境を整備する。 ⑵ 人員配置・施設基準などのインプット基準から医 療の質などのアウトカム基準へ、医療報酬制度 を変革「X」する。 ⑶ その他、関係法令を見直す。 的・自発的に取組を進めていくことが不可欠」と、 政府の認識を示している。 注 3 :日常の実臨床の中で得られる医療データの総称。 JAHMC 2024 March 25

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(1)国民皆保険制度で発生した医療情報(リア セキュリティ対策などの本業以外の過大な負担を ルワールドデータ)を利活用し新しい価値 かけないためにも、多大な税金で初期投資や運用 を創出し、持続可能な社会保障制度の構築 費を賄う「全国医療情報プラットフォーム」で国 を着実に進められる環境整備 民 1 人ひとりの生涯の国民皆保険医療リアルワー 毎年 40 兆円を超える膨大な日本の国民医療費 ルドデータを保管、管理、監視することが期待さ は、本人負担分と保険料では賄えず、約 40%を れ、健康保険法などの関係法令の改正および整備 7) 公費で賄っている 。つまり、傷病などの健康リ が望まれる。 スクを国民全員で共有し費用を負担し合う共助で ④国民皆保険医療リアルワールドデータの二次利 ある社会保険方式を基本としつつ、皆保険制度を 用の促進 維持するために、公費を投入している。そのおか 一次利用(本人の治療)だけでなく、二次利用 げで私たち国民は安価で高度な医療を消費してい (公衆衛生、医学研究、過度に海外依存しない国 るのである。 産のワクチンや医薬品等の開発、ヘルスケアサー 国民皆保険制度における医療提供サービスの消 ビスなど)による恩恵を国民全体が受ける権利が 費に伴い発生した医療情報(リアルワールドデー あり、国民全体にそれらの恩恵を還元するために タ) (以下、 国民皆保険医療リアルワールドデータ) は、医療分野の特性を十分に踏まえた関係法令の は、本人の要配慮個人情報であると同時に、前述 改正や特別法の制定が望まれる。 の趣旨から国民全員で共有すべき貴重な医療情報 (2)人員配置・施設基準などのインプット基準 資源であり、国民全体の財産であるといえる。し から医療の質などのアウトカム基準へ たがって、全国に分散した個々の保険医療機関任 限られた財源を診療側委員、支払側委員、公益 せにせず、安全保障上も国が保管・管理し、さら 委員の枠組みで費用の側面のみに注視した医療報 には利活用して国民全体にその恩恵を還元する責 酬の決め方は、種々のゆがみ(ドラッグラグ&ド 務があるのではないか。 ラッグロス、医療従事者の待遇など)を生み出し ①国民皆保険医療リアルワールドデータの分析に ており、国民の医療ニーズや期待に十分に対応で 基づく政策立案 エビデンスに基づく効率的で質の高い医療提供 きていない。 労働供給制約社会の到来を見越して、 人員配置・ を目的とした政策立案を可能にするため、国(行政) 施設基準などの「インプット基準」から国民皆保 は、国民皆保険医療リアルワールドデータを積極 険医療リアルワールドデータに基づいた医療の質 的に分析し、最適な医療リソース配分を実施するた などの「アウトカム基準」にバージョンアップし、 めの基礎情報として利活用することが求められる。 医療報酬制度を変革「X」することが望まれる。 ②国民皆保険医療リアルワールドデータの一次利 一方、医業はサービス産業であり GDP の重要 用(本人の治療)時の個人情報保護法との不整 な構成要素である。また、医業および医療関連産 合の解消 業はわが国の根幹となる基盤産業であり、経済安 厚生労働省施策「医療機能の分化・強化、連携 全保障上の産業でもある。医業および医療関連産 の推進」を前提とした国民皆保険制度において、 業の拡大は、低迷している日本の GDP の増大、 医療情報の連携先への提供時の本人同意プロセス 海外からの人的資源の流入促進につながる。たと を個々の保険医療機関の現場責任とせず、個人情 えば、革新的な薬が開発されれば、効果的な予防 報保護法の法令例外適用とすべく、健康保険法な や治療を促進され、傷病の治療コストダウン、介 どの関係法令の改正および整備が望まれる。 護離職 注4 の抑制などにつながるとともに、医業 ③「  全国医療情報プラットフォーム」で国民皆保 険医療リアルワールドデータの保管・管理・監視 全国に分散した個々の保険医療機関にサイバー 26 JAHMC 2024 March 注 4: 介護に起因した労働総量や生産性の減少による経済損失額は 2030 年時点で約 9 兆円に迫る(経済産業省第 1 回企業経営 と介護両立支援に関する検討会資料 3(2023 年 11 月 6 日) ) 。

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Continuing Education での雇用の増大、 医療関連産業からの税収が伸び、 医療費の財源が潤う良循環を目指すことが望まれ る。 つまり、乏しい財源、限られた医療資源を費用 【私たち、医業経営コンサルタントへの提言】 ⑴ 医療機関の外部環境変革「X」を促進する。 ⑵ 医療機関の内部環境変革「X」を支援する。 (1)医療機関の外部環境変革「X」の促進 の側面のみに注視した分配のフレームワークを見 医療 DX を円滑に進めるためには、政府、自治 直し、医療経済効果を取り入れ、医業および医療 体、住民のステークホルダー間の真摯な対話が避 関連産業のイノベーションによる日本の GDP の けて通れず、 互いの信頼関係の構築が必須である。 増大、税収アップによる医療費の財源が潤う良循 来年度を起点とした 3 カ年計画で、国、厚生 環への変革「X」が望まれる。 労働省、自治体に働きかけ、微力ながら医療機関 (3)その他、関係法令の見直し の外部環境の変革「X」促進に向けて挑戦する(た ①マイナンバーの紐付けに誤りのある事案発生 個別最適で作った行政機関等のデータベースに 保存している標準化されていない国民情報を一意 とえば、私たちの研究会活動にご賛同いただき、 変革「X」を目指す自治体で、 「市民向け医療 DX タウンミーティング」の開催など) 。 で紐付けるマイナンバーが機能すべきところ、マ (2)医 療機関の内部環境変革「X」の支援注 6: イナンバー提供義務の法的ルールを整備しないま 医療と IT を医業経営レベルで橋渡しする ま、情報連携を急いだ結果、マイナンバーの提供 人材の育成 がない場合、標準化されていない基本情報から手 作業で紐付ける作業を強いられている。 (独)情報処理推進機構(IPA)は、日本および 米国の一般企業の DX について調査・分析し、 その結果、アナログな人海戦術において、他人 DX 推進への課題や求められる取り組みの方向性 に紐付く潜在的リスクが顕在化した。人に依存し などをまとめた「IPA DX 白書 2023」を 2023 年 ないマイナンバー提供義務を法的ルールで担保で 3 月 16 日に公表した。その一部を以下に要約し きるように、健康保険法などの関係法令の改正お て示す。 注5 よび整備が望まれる 。 ②令和 5 年改正次世代医療基盤法 旧次世代医療基盤法時の医療機関および認定 事業者への行政指導 8)に示されるように、協力 する医療機関等の責任が重い。今回創設された 「仮名加工医療情報」は患者本人が特定され得る ため、さらに本人通知やオプトアウト対応など の責任が重くなり、医療機関等の協力(医療情 報の提供)が期待したほど促進されず、改正法 による恩恵(新薬開発など)を国民全体が十分 に享受できないのではと懸念する。医療機関等 が積極的に協力しやすい仕組みになるように再 設計することが望まれる。 注 5:マイナンバー提供義務について、健康保険法施行規則等を一部 改正(2023 年 6 月 1 日施行)したが、事業主に対する記載義 務の追加のみで、被保険者本人(従業員)のマイナンバーの提 供に関する義務の法的ルールがない。 注 6: 「医療機関への提言」は、医業経営コンサルタントが医療機関に コンサルティングすべきことなので当該提言に内包した。 ●先行する一般企業の DX 状況 •「成果が出ている」企業の割合 米国企業は約 9 割であるが、日本企業は約 6 割 程度と、かなり低く、投資に見合った成果が出てい ない企業が多い。 • DX 人材の獲得・確保の取り組み 日米ともに「社内人材の育成」を行っている割合 が最も高いが、米国は日本より「特定技術を有する 企業や個人との契約」 、 「リファラル採用(自社の社 員から友人や知人などを紹介してもらう手法) 」など、 社外からの様々な獲得手段をとっている企業の割合 が高い。 I T 分野に見識がある役員の割合が米国対比、大 幅に低く、日本の経営層の IT に対する理解が不十 分であることが DX の取り組みの阻害になっている。 • 経営者・IT 部門・業務部門の協調 「十分にできている」 「まあまあできている」を合 わせた割合は、米国では 8 割であるのに対して日本 は 4 割弱となっており DX を全社的に推進していく 上での課題となっている。 • DX の推進のための企業文化・風土の状況 「職位間や部門間含め社内の風通し」 、 「リスクを 取り、チャレンジ」 、 「企業の目指すことのビジョン や方向性の明確化」 、 「個人の事情に合わせた柔軟な 働き方」など、すべての項目が米国との差は大きく、 DX の推進のための企業文化・風土の変革性が低い。 JAHMC 2024 March 27

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Continuing Education 4. おわりに ●まとめ • 顧客価値創造やビジネスモデルの変革といったト ランスフォーメーションのレベルの成果創出が不 十分であり、本来の目的「X =変革」に向けてさ らなる取り組みの深化が必要。 • また DX を推進する上でリーダーシップをとる経 営層の IT についての見識が低く、 経営層と IT 部門・ 業務部門との協調も不十分であることは課題であ り、マインドシフトや取り組み方の見直しを進めて いく必要がある。 • 人材の獲得 • 確保について、米国企業は社外から の獲得手段を活用する割合が高く、日本企業も積 極的な活用が不可欠である。 • DX の推進の土壌となる企業文化 • 風土について も現状では DX に必要な要素が備わっている割合 は低い状況であり、DX の推進のための企業文化・ 風土の変革が求められる。 予算がまったくない中、 月次研究会は Web ミー ティングで行い、研究員はもちろん外部有識者の 方々も無償で真摯に前向きに取り組んでいただ き、高貴な志に対して感謝の念に堪えない。 来年度から本研究会提言に基づき、机上研究 フェーズから実践イノベーションフェーズに移行 する。当研究員が自ら変革「X」し、当協会会員 を含め、 それぞれのステークホルダーに、 イノベー ションの種まきを行う。 少子高齢化&人口減少という今までに経験した ことのない厳しい時代に入り、医療分野だけでは なく、日本の全業種、あらゆる組織は、変革「X」 以上のことは、医療 DX 政策の推進により、医 業経営の変革「X」が求められる医療機関にも言 えることである。 医療機関が医療 DX を推進する上での重要な要 日本の全業種、あらゆる組織が変革「X」し生 き残る上でも、 「医療、介護、福祉」分野は、す べての業種、組織とって「健康で安心して社会活 因について、先行する一般企業の DX 状況を踏ま 動ができる」基盤であり、 「医療、介護、福祉」 えて、次の仮説「医療 DX の重要成功要因」を導 の変革「X」が正しく進むことが重要である。 き出した。 ■医業経営上の「医療 DX」の重要成功要因(仮説) 私たち、認定登録 医業経営コンサルタントは、 変革「X」を目指す医業経営者に対して、微力な CSF1 注 7 自院の目指すビジョンや方向性を再定義 し、全職員のみならず地域住民と共有。 がら、少しでも支援できれば幸いである。 CSF2 ト  ップが強い意志を持って関与し、推進体制 づくりや取り組み内容にコミット。 注 8:医業経営リスク対策、経営基盤の強化、新しい社会的価値創 造など、医業経営上の「医療 DX」推進を支援する。 CSF3 リ  スクを取りチャレンジすることが尊重される 組織文化・風土への変革。 CSF4 医業経営層と業務部門・ IT 部門との協調。 2024 年度を起点とした 3 カ年計画で協力医療 機関を募り仮説を検証するなど、変革「X」を 目指す医業経営者の高度化する要求や期待に適 切注 8 に応えられるよう、次に示す「医療と IT を医業経営レベルで橋渡しする人材の育成」を 行う。 ■来年度以降の 3 カ年計画 ⑴医療 DX の実践医療経営コンサルティング・プロ セスガイドラインの策定注 9 (形式知の共有)2024 年度~ ⑵医療 DX コンサルティングの実践力養成 OJT (形式知の内面化)2025 年度~ ⑶新入会員(3 年以内)のインターン制度の試行 (新規入会促進と維持)2026 年度~ 28 しなければ生き残れない。 JAHMC 2024 March 注 7:Critical Success Factor(重要成功要因)の略 注 9:医 療 DX は情報セキュリティの確保が前提であるため、当研究会 の前身「サイバーセキュリティ演習研究会」で得た知見を盛り込む。 [参考文献] 1)厚生労働省ウェブサイト「2040 年を見据えた社会保障の将来見通 し(議論の素材) 」等について(2018 年 5 月 21 日) 2) (独法)福祉医療機構「2022 年度 病院の経営状況(速報値)に ついて」 (2023 年 10 月 30 日) 3) (一社)日本病院会、 (公社)全日本病院協会、 (一社)日本医療 法人協会「2023 年度病院経営定期調査の中間報告について」 (2023 年 10 月 10 日) 4)厚生労働省令和 4 年度第1回医療政策研修会・第 1 回地域医療 構想アドバイザー会議資料 1「第 8 次医療計画及び地域医療構想 に関する状況」 (2022 年 9 月 15 日) 5)第 169 回社会保障審議会医療保険部会(2023 年 10 月 27 日) 6)リクルートワークス研究所「未来予測 2040 労働供給制約社会 がやってくる」 (2023 年 3 月 28 日) 7)厚生労働省ウェブサイト「我が国の医療保険について」 8)個人情報保護委員会「医療分野の研究開発に資するための匿名加 工医療情報に関する法律の医療情報取扱事業者等である個人情報 取扱事業者に対する個人情報の保護に関する法律に基づく行政上 の対応について」 (2022 年 11 月 2 日) ▶医療 DX 研究会 発行 ニュースレター「医療 DX 通信」 Medical DX Times ダウンロード申込・お問い合わせはこちらまで➡ https://hbs.one.ne.jp/jahmc-kinki/