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May 29, 23
スライド概要
ビヨンド の社内勉強会で発表した「AlmaLinux と Rocky Linux の誕生経緯&比較」のスライドです。
CentOS 8のサポート終了に伴い誕生した、「AlmaLinux と Rocky Linux」について詳しく説明していきます。
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AlmaLinuxと Rocky Linuxの誕生経緯&比較 =CentOSってそもそも何なの?
前置き ⚠ ⚠ ⚠ 大雑把な説明 主観的な推測 何かしら誤り や感情入り はある前提
目次 1⃣ 前提 CentOSとは 2⃣ 悲報 CentOSが終わる 3⃣ 勃発 CentOSの後継者問題 4⃣ 生誕 AlmaLinux / Rocky Linux 5⃣ 比較 どう違うのか
1 前提 CentOSとは LinuxOSでRHELのクローンでフリーな奴
CentOS とは Linuxではディストリビューションという配布形態があり、 Linuxカーネル+ソフトウェア郡を組み合わせたソフトウェアセットです。 数多くある組み合わせの一つとして「CentOS」が存在しています。 これは、Red Hat社が有償で展開している 「Red Hat Enterprise Linux(略称:RHEL)」から 商用パッケージを除いてリビルドした、RHELクローンです。
RHELを クローンする理由 ・RHELはRedHat社が整備・セキュリティ対策をしている ・数多くの商用ソフトウェアはRHELに対応させている 上記の通り、RHELは信頼性のあるディストリビューションであり それをクローンして無償で利用できるのは非常にメリットがあります。 ……とはいえ、あくまで企業の成果物をクローンした物なので Red Hat社のサポートは当然受けられません。
なぜ クローンできるのか Linux(カーネル)は、GNU General Public License(略称:GPL) というライセンス(利用条件をまとめたルール)を適用しているOSSです。 「誰でも利用できるが、利用した際は中身を全て公開しなさい」(意訳) というのが基本的なルールであり、 商用で利用した場合でもソースコードを公開しなくてはなりません。 RHELもソースコードが公開されているので、クローンが可能となります。
「商用パッケージ」とは Linux(カーネル)は誰でも利用可能ですが、Red Hat社が保有する ・Red Hat社の商標・権利物(ロゴ・アートワーク・テキスト) ・RHELでしか使えないパッケージ(subscription-manager-migration等) 等は利用出来ないためソースコードから除外されています。 これがまとめられて商用パッケージと呼ばれているのだと思われます。 出典:CentOS-7 (1804) リリースノート https://wiki.centos.org/Manuals/ReleaseNotes/CentOS7.1804/Japanese また、CentOSはリポジトリ変更やRPMパッケージの修正等もされています。 クローンを作るのは語感ほど簡単ではなく労力がかかっています。 そのため、CentOS6の際はRHEL6が出てから半年以上遅れて出ています。
2 悲報 CentOSが終わる 皆がパニック
2020年12月8日 CentOS 方針転換を発表 CentOS Projectの公式サイトにて下記の内容が投稿されました。 内容としては「CentOS 8 のサポート短縮」「CentOS Stream に移行」 「CentOS Project shifts focus to CentOS Stream」 訳:「CentOSプロジェクトはCentOSストリームに焦点を移します」 https://blog.centos.org/2020/12/future-is-centos-stream/
要はCentOS 8 サポート打ち切り ・CentOS 8 サポート期間 予定:2029年5月31日 ⇨ 2021年12月31日 ※発表から約1年後にサポート終了が通告 ⇨CentOS 8 のリリース日 2019年9月24日 リリースされて1年程のため、 CentOS 8に移行したばかりの環境も多かったようで揉めました。
CentOS Stream ……? 方針決定以前より開発が発表されており、 CentOSからの移行先として推奨された CentOS Stream ただし、移行先としては非常に大きな問題がありました。 従来のCentOSと役割も仕様もサポート期間も違うためです。
3 勃発 CentOSの後継者問題 インフラエンジニアたち悩みの種
CentOS Stream 用途が全然違う ●CentOS ●CentOS Stream 役割:REHLのクローン 役割:RHELの開発版 仕様:固定リリース サポート:10年 ▶ 仕様:ローリングリリース サポート:5年
CentOS Stream はREHLのクローンではない 旧:開発モデル Fedore RHEL CentOS ・Fedora 2018年:IBMが買収 2019年:IBMは更に Red Hatを買収 ダウンストリーム 新:開発モデル Fedore CentOS Stream アップストリーム ※ミッドストリーム RHEL ・CentOS 2014年: Red Hatが商標を取得 CentOS Projectを支援する
CentOS Stream 後継には成りえなかった CentOSは安定性のあるRHELのクローンであることが魅力でした。 しかし、CentOS SteamはRHELの開発版のため根本的に違います。 さらに常時アップデートするローリングリリース形式のため、 変更が多くかかる上に、RHELに無いものを先に取り入れます。 よって互換性と不具合のリスクが高く、本番環境用にはあまり向きません。 また、サポート期間も5年と従来の10年の半分なのも難点でした。
4 生誕 AlmaLinux / Rocky Linux 立ち上がる2つのプロジェクト
CloudLinux社 「AlmaLinux」を発表 ・2020年12月10日、CloudLinux社は、2021年の第1四半期に、 RHEL8(および将来のリリース)の無料のオープンソースのコミュニティ主導の1:1 バイナリ互換フォークをリリースする予定と発表。 ・「Alma」はスペイン語・ラテン語で魂を意味しており、 Linuxコミュニティへの敬意を表して「AlmaLinux」という名前が選ばれた。 ・CloudLinux社は、ホスティングサーバー用有償ディストリビューション 「Cloud Linux」の開発・販売をしている。 ※Cloud LinuxはCentOSベースのため、RHEL系。
CentOS Projectの創始者 「Rocky Linux」を発表 ・12月8日の発表同日、CentOS Projectの発表記事のコメント欄にて CentOSの初代創設者であるGregory Kurtzer氏が後継Projectを発表。 ・プロジェクト名は初期のCentOSの共同創設者であるRocky McGaugh氏の名前 をオマージュして「Rocky Linux」と命名する。 ・2020年12月22日、Rocky Linuxは、 初期リリースの目標が2021年の3月から5月の間であることを発表。
5 比較 どう違うのか 出自とスポンサーと運営の雰囲気
現状において大差はない ※2022/07時点 Alma Linux Rocky Linux 目的・役割 RHELとの完全互換(クローン) RHELとの完全互換(クローン) 費用・クラウド 無料・主要3クラウドで利用可能 ※GCPのみ公式ではサポートしていない 無料・主要3クラウドで利用可能 ※GCPも公式でサポート 開発元 Cloud Linux Rocky Enterprise Software Foundation(RESF) バージョン 8.3 8.4 8.5 8.6 9.0 8.4 8.5 8.6 ライセンス GPLv2 BSD 主な差異 ・対応バージョンが多い ・CloudLinux社を中心としたコミュニティ主導 ・GCPがスポンサーなのはRcoky Linuxのみ ・完全なコミュニティ主導 サポート 10年 10年
パートナー・スポンサー企業 ・主要クラウドのAWSとAzureは両方を支援 ・共通の支援企業も多い(半導体大手のarm社等) ・Plesk(サーバー統合管理ソフト) ・cPanel(サーバー統合管理ソフト) ⇨Cloud Linux 社に関した企業が見られる ・GCPがスポンサーになっている。 ・Vmware ⇨GCP(Google)ではRockyを公式サポート
どちらを選べばいい? 「正直どっちでもよい」と思います。 Alma Linuxの方がバージョン対応が多いので、勢いがあるように見えます。 ただ、Rocky LinuxはGoogleもスポンサーなので総合的には差がない印象です。 懸念点となる「CentOSのように方針転換しないか?」については、 今後どうなるかは現時点では誰にもわかりません。 とはいえ、同じ事が起きてもまた新たな後継者が生まれるような気もしています。
おわり ご清聴ありがとうございました Linux公式マスコットキャラクター Tux くん