大気循環場の将来変化を考慮した台風擬似温暖化実験

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June 08, 26

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海岸工学講演会2023

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金沢大学理工学域地球社会基盤学類 二宮研究室 学会発表などで使用した資料をアップします.

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1.

2023/11/16 海岸⼯学講演会 P0185 ⼤気循環場の将来変化を考慮した 台⾵擬似温暖化実験 〇⽥中桃果1,⼆宮順⼀2,⽵⾒哲也3,森信⼈4 (1⾦沢⼤学⼤学院 ⾃然科学研究科地球社会基盤学専攻) (2⾦沢⼤学准教授 理⼯研究域地球社会基盤学系) (3京都⼤学教授 防災研究所) (4京都⼤学教授 防災研究所)

2.

研究背景・⽬的 研究背景  地球温暖化の進⾏により,⼤きな台⾵災害の発⽣が懸念  地球規模で⾮常に強い熱帯低気圧の発⽣割合の増加(IPCC AR6)  ⽇本付近の台⾵の強度の増加(⽇本の気候変動2020)  将来の最⼤規模の台⾵による災害リスク評価の定量化が必要  擬似温暖化実験(Pseudo Global Warming : PGW)の実施 • 過去に⼤きな被害をもたらした台⾵を対象に,将来気候環境での 台⾵の発達や災害ハザード,リスクの評価 現在気候 再現実験 ⽐較 温暖化による 将来差分を上乗せ 将来気候計算

3.

研究背景・⽬的 既往研究  ⼭⼝ら(2020) • ⻄太平洋の中緯度帯では平均的に台⾵の移動速度が低下 要因 対流圏上層から中層の 循環場の変化 PDOの影響  ⾦⽥ら(2017) • 海洋温度条件が台⾵をより発達させることに有利 • 台⾵による海⾯冷却の⼤きさは,台⾵の強度と移動速度に依存 台⾵の移動速度を変化させ得る循環場を考慮した PGWによる台⾵の変化予測が必要

4.

研究背景・⽬的 研究⽬的  2018年台⾵21号を対象に循環場の将来変化を考慮したPGWの実施  台⾵の強度や経路の変化,海洋の応答等について 過去再現とPGW間で⽐較・評価 ⾼潮などの甚⼤な被害をもたらした2018年台⾵21号 引⽤︓BBC NEWS JAPAN

5.

研究⼿法と使⽤データ 全球気候モデル(GCM)の選択 過去気候Historical実験 (1981~2005年) 南北⾵速の将来変化[m/s] 各25年の⽉別平均から 温暖化差分を算出 将来気候RCP8.5 (2076~2100年) 選択したGCMの9⽉平均の300hPa⾯における 東⻄⾵・南北⾵とSSTの将来変化 300hPa⾯における東⻄・南北⾵速と 海⾯⽔温の変化 相対的に⾵速の u-wind [m/s] v-wind [m/s] SST [K] 2.21 0.05 2.21 -4.87 -0.53 2.59 MPI-ESM-LR(#24) 0.89 0.51 2.89 MRI-AGCM3(#26) -0.98 -1.71 2.76 CESM1-CAM5(#5) -1.10 1.02 3.16 HadGEM2-AO(#17) -3.17 -2.33 3.28 HadGEM2-ES(#18) -2.37 -1.84 4.02 FIO-ESM(#11) 変化量の⼤きい FGOALS-g2(#9) 7つを選択 東⻄⾵速の将来変化[m/s] SSTの将来変化[K]

6.

研究⼿法と使⽤データ 使⽤データ モデルの計算条件  計算に使⽤したモデル • ⼤気海洋結合モデル WRF-ROMS(以降couple) モデル パラメータ 設定内容 共通 積分期間 8⽉31⽇12時から 9⽉6⽇0時(UTC) ⽔平解像度 3 km ⽔平格⼦数 900 × 1050 タイムステップ 8秒 結合間隔 600秒 鉛直層数 55層 微物理 WSM 6-class graupel 雲物理 なし 短波放射 RRTMG ⻑波放射 RRTMG 惑星境界層 YSU ⼤気境界層 Monin-Obukhov Similarity 陸⾯ Thermal Diffusion 初期値・境界値 NCEP FNL 鉛直層数 20層 境界値 HYCOM • ⼤気モデルWRF  地形データ • GEBCO 上陸︓9/4 3:00 WRF 標⾼[m] 計算領域と台⾵の経路 ROMS

7.

結果と考察 台⾵再現精度の検証 • トラックや最⼤⾵速はよく⼀致 • 中⼼気圧の急激な減衰を再現 ●︓JMA BT(気象庁) 〇︓JTWC BT(合同台⾵警報センター) ⾚︓Historical(WRF) 緑︓Historical(couple) 最⼤⾵速[m/s] 進路 中⼼気圧[hPa]  Historical実験と観測値の⽐較  2018年21号台⾵をうまく再現出来ている 中⼼気圧 最⼤⾵速

8.

結果と考察 擬似温暖化実験の結果 各モデルの台⾵経路 ⾵速の将来変化に対する経路のずれ 単位時間当たりの 台⾵経路のずれ[m/s]  ⾵速の将来変化と台⾵経路 東⻄⾵速の将来変化[m/s] カラーバーの分布に 対応するように 経路がばらついている 東⻄⾵速の将来変化[m/s] 経路のずれを正負の将来変化 を対象とし,将来変化量の 絶対値で評価 相関係数 WRF︓0.90 , couple︓0.82 →⾵速の将来変化と 経路のずれに強い相関

9.

結果と考察 擬似温暖化実験の結果  台⾵の移動速度と⾵速の将来変化の関係 計算初期値及び陸地の影響を避けるため 台⾵の移動速度と東⻄⾵速の将来変化 上陸直前の9/3PMの平均のデータを使⽤ 移動速度[km/h] 移動速度と⾵速の将来変化の相関係数 ⾵速の将来変化 移 WRF 動 速 度 couple 東⻄⽅向 南北⽅向 0.97 0.53 0.97 0.50 東⻄⾵速の将来変化[m/s] • 東⻄⽅向の⾵速変化とは強い相関 →⻄⽅向の⾵速変化が⼤きいほど移動速度が遅くなる傾向 • 南北⽅向の⾵速変化とはやや正の相関

10.

結果と考察 擬似温暖化実験の結果  台⾵の移動速度と台⾵強度の関係 仮 定 • 移動速度が低下 → 海⾯冷却に伴う海⾯からの熱エネルギーの供給減少 → 台⾵強度が弱まるのでは︖ 最⼤⾵速[m/s] 中⼼気圧[hPa] ⾚︓couple ⿊︓WRF ●︓最⼤⾵速 *︓中⼼気圧 移動速度と台⾵強度の相関係数 移 WRF 動 速 couple 度 最⼤⾵速 中⼼気圧 -0.68 0.56 -0.25 -0.35 移動速度[km/h] • WRF︓台⾵による⽔温低下の影響が加味されないため, 移動速度の低下によって強度が強くなった • couple︓線形な関係は⾒られなかった

11.

結果と考察 台⾵による海⽔温の変化  台⾵通過による海⽔温の低下と台⾵の特徴量 海⾯ ⽔深25m ⽔深50m 4954 km2 1277 km2 19507 km2 ⽔温低下⾯積と台⾵特徴量との相関係数 深さ[m] 移動速度 最⼤⾵速 中⼼気圧 0 0.14 0.67 -0.65 -25 -0.18 0.00 0.04 -50 -0.31 0.11 -0.13 2℃以上低下した⾯積 • 海⾯においては 台⾵強度の指標と相関 • 移動速度に関しては 相関⾒られず 海⽔温[K] 海⽔温変化(9/2と9/3の1⽇平均の差)(例としてMPI-ESM-LR)

12.

結果と考察 災害ハザード(降⽔)の変化  1時間および12時間降⽔量に着⽬してハザードを評価 12時間降⽔量(mm)最⼤値の⾯積分布 ⾯積[km2](130E-142E,30N-40N) 1時間降⽔量(mm)の期間最⼤値の分布図 (9/3 0時~9/6 0時) ⻘︓Historical ⾚︓アンサンブル平均 ⾚(薄) : 各PGW 12時間降⽔量最⼤値[mm] • 台⾵経路の変化により,降⽔域がより幅を持った分布へ変化 • アンサンブル平均は130mmを超える地域がHistoricalより増加し, 被災範囲の増加が⽰唆される

13.

結論 結論と課題  PGWでの台⾵経路や移動速度の変化は循環場の将来変化量によく対応  coupleはWRFに⽐べて台⾵の強度変化量が⼩さく推定され,台⾵通過 に伴うSST低下を考慮したことによるものと考えられる  ハザード強度の増加 • 台⾵経路の違いによってハザードを受ける地域の変化 • 1時間降⽔量で多くの地域における降⽔や 12時間降⽔量で降⽔量の多い地域の⾯積が増加 今後の課題  本研究では7つの温暖化条件を選択したが,不確実性の低減のために 「より多くの温暖化条件・異なる台⾵」や 「特に経路や移動速度の異なる台⾵」で実験の実施が必要  台⾵の変化の定量化のための感度分析が必要