【Unity道場京都スペシャル4】「あそびのデザイン講座」ーUnityでゲームをつくろう 

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January 27, 20

スライド概要

2020/1/25に開催されたUnity道場京都スペシャル4の講演スライドです。
講師:安原 広和(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社)
Unityのイベント資料はこちらから:https://www.slideshare.net/UnityTechnologiesJapan/clipboards

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リアルタイム3Dコンテンツを制作・運用するための世界的にリードするプラットフォームである「Unity」の日本国内における販売、サポート、コミュニティ活動、研究開発、教育支援を行っています。ゲーム開発者からアーティスト、建築家、自動車デザイナー、映画製作者など、さまざまなクリエイターがUnityを使い想像力を発揮しています。

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各ページのテキスト
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Unity道場-京都スペシャル - あそびのデザイン講座 特別編 - 安原広和 1/25/2020 2

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それ以上は分割できないヒトの最小単位は2人だ The smallest indivisible human unit is two people, not one; 1人ではない one is a fiction. その寄り集まる魂たちの織りなす交流の網の中から、 From such nets of souls societies, the social world, ヒトのいとなみが生まれるのだ human life springs. トニー・クシュナー Tony Kushner 3

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はじめに 歴史というか、自分が体験してきた ゲーム業界のはなし 4

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2025 自分の手がけた「ゲーム機」の変遷 VR/AR ヘッドセット 2015 通信・オンライン機能 3D ポリゴン機 2005 みなさんが 生まれた頃 1995 1997年辺りに「インターネットの普及」と 「3Dグラフィックボード」の進化という 業界の産業革命が起きた 16 bit CSゲーム機 1985 コンシューマ機 1975 初通信・オンライン機能 初3D ポリゴン機 8 bit CSゲーム機 アーケード機 5

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A.D.2000年以前 2000年以降 1990年代中期までは 3DグラフィックにはSGI社などの専用機が必須 安くても一台2500万円 家庭用PCで3Dグラフィックが あそべるようになった 2500万円が25万円に! 6

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その後、どうなったかといえば・・ 7

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ゲームの技術 アメリカが総合力を発揮! スマホ アプリ 「すごいリアル!」 シミュレーションのため 他業種エンジニアの参入 これがマーケットに合致 PS3の登場 2005年 軍産技術 映画産業 2000年 CG関係 ハード、ソフト 学者、研究者 日本のゲーム 欧米のゲーム 現実のシミュレーション開発 8

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スマホ市場はゲーム業界にとって全く新しい「新天地」でした いままでゲームをしなかった人たちが ゲームをし始めた スマホ 2007年 市場 従来のコンシューマ機 市場 それまでの「ケータイゲーム機」の台数と 同じ数のスマートデバイスが売れた (約1.5億台) 9

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ゲームに関する人口のデモグラフィ ・ ・ ・ ・ 女性向けゲーム 高年齢向けゲーム スマホ無料ゲーム Amazon(地方でも買える) 10

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2010年頃までのゲーム業界では、 別の会社や別のスタジオで共通する汎用 ゲーム制作エンジンはほぼ存在しなかった 理由 会社ごとにカリカリにチューンした「社内製エンジン」や「ライブラリ」を使ってた 「他社とは違うことができる」、それが会社の優位性をみせる手段だった ハードの壁を崩す汎用ゲーム制作エンジンの需要が高まる CPU GPUの パワーアップ スマホゲーム 市場の拡大 PS3くらいの見栄えは可能 UnityはiOS用アプリの 開発ツールとしてスタート 他社ハードへの 平行リリース ハードウェア会社のソフト不足 協力会社との連携の容易さ 11

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スマホゲーム アプリ市場の拡大 「AssetStore」から多くの高品質の素材が 簡単に手に入れられて自分の作品に実装できる 小規模での開発 ゲーム供給者の拡大 Unityが手軽に使えるようになって 良いことはたくさんあるけど、困ったことも出てきました 12

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Unityで作った作例でよくみかける事例 事例 「とりあえず何でもできるゲーム」です 広い世界です どこへでも行けます エネミーと戦います アイテムを集めます 簡単にここまで作れて、動かすだけで「たのしい」・・・ 13

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「何でもできます」 = 「何していいかわかりません!」 ストーリーなんだっけ? エネミー 倒しましたけど? 次どこ行けばいいの? アイテム 何につかうの? アセットを並べただけではゲームになりません・・ 14

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「あそび」以前の状態 目的もなくそぞろ歩く状態 15

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Unityのチュートリアルで「作例ゲーム」の 作り方を一通り学ぶことができます、 しかし、その作り方を学んだあと、自分の作品にどう応用すべきか? を学ぶことができません 確かに、たのしいけど・・なんでだろう? 16

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「なんでゲームはたのしいの?」 世の中にはたくさんのゲームがあります それぞれのゲームには「たのしい」の理由があります 「たのしい」 は 「デザイン(設計)」 されたものです Unityは云わば建設機械、 設計する建築家はあなたです 17

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はじめてUnityに触れた日のはなし ・ 3DのObjectをつくる ・ Materialで色を付ける ・ RigidBodyで重力つける ・ PlysicsMaterialを付けて跳ねるようにする ・ Transformをいじって形を変えてみる 18

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コード書かずに、これが動きます 19

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「キューブ、めっちゃ暴れて、おもしろい・・」 「一個のキューブで、全部はじき出せるかも・・」 20

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自分が思いついた瞬間、 ひとつの「あそび」が生まれました 同時に、2つの大切なモノも生まれます 1、目的 2、制限 22

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1、目的(ゴール) 「全てのオブジェクトをはじき出す」 2、制限(ルール) 「落下させるキューブは1つだけ」 23

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思いついた「あそび」の「ルール」は、 しばしば「定量化」されたり「禁止事項」で示されます 7歩向こうの壺にボール を投げて当てようっと・・ この線超えたらダメね 自分にちょうどよい難易度の 「俺ルール」 24

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「あそび」 1、目的(ゴール) ・ 練習したらできること ボールを壺に当てること あそびの3大「俺ルール」 「プレイヤー」 2、制限(ルール) ・・ 決まった場所から 数字で表せること ボールを投げる やったらダメなこと ・ ボール失くしたら終了 25

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世の中にあるたくさんの「あそび」という行為に 「ゲーム」と呼ばれるジャンルがあります はみ出してる、 かもしれない あそび ゲーム 26

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「あそび」と「ゲーム」 なにがちがうの? 27

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問題 ゲームは「一人あそび」ですか、「二人あそび」ですか? OR 28

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編み物 プラモデル 散歩 音楽を聴く 読書 物語を空想する 一人旅 ボーリング ヨーヨー 楽器を弾く 新聞のクロスワードを解く ・ ・ ・ ・ ビリヤード かくれんぼ 一人カラオケ スケボー 鬼ごっこ 将棋・チェス・麻雀 カードゲームをする ゲーム 飲み会 あやとり 友だちとおしゃべり チームで行う球技 ・ 他者からの客観的な評価(点数など)を期待できる 自分のイメージと戯れる行為、 単純な作業、パッシブな情報の消費 ・ 双方が相手への情報の発信と、それに対してのフィードバック を期待し、逐次的にやり取りを繰り返す行為 手本やテンプレートに向き合う行為 ・ 参加して役割を求められ、同じ時間を共に費やす経験をする 想像を昇華する創作行為 ことが必然となる行為 29

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「ゲーム」は 自分の行動が、相手の行動に影響を及ぼし、 それによる相手の取った行動がまた 自分の次の行動に影響をあたえる、という 双方の行動が常に相手に影響をあたえ続ける「あそび」 ・・といえるかもしれない 30

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「二人であそぶ」 ゲームは、行った操作によって、「フィードバック」を返してくれる相手とあそびます ゲームはプレイヤーにとって一緒にあそぶ時間を過ごしてくれる「人格」です そのような双方向のコミュニケーションを行うことを、こう呼びます interactive(インタラクティブ) 31

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ヒトはコンピュータのおかげで、interactiveなやり取りが実現して 一人の時でも「二人であそぶ」ことが可能になりました コンピュータが、毎回オブジェクトの「状況の変化」を、プレイヤーに フィードバックしてくれる「あそび相手」のいる活動です 32

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自分の行為に対して、フィードバックを返し、 状況を変化させる「相手」と、ともに行う「あそび」 それを、ここでは「ゲーム」と呼びます 33

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これは「ゲーム」ですか? アイテムをすべて 集めて 「なる早」で ゴールしましょう ちょっと、「作業」を させられてる感・・ 34

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これはどうでしょう? アイテムをすべて 集めて 「なる早」で ゴールしましょう ちょっと ゲームっぽい・・ 35

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この場合、アイテムを早く取るために、 自分なりの「戦略」や「スキル」が必要になります 1、「戦略」 2、「スキル」 36

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速くゴールするために、いろいろと考える・・ 1、戦略 「とる順番を考える」 2、スキル 「正確に動かす」 なるべく追いかけないで 待つほうがいいかな・・ よく見たら 円軌道で動いてる・・ これは脳をつかわなくては いけない「考える」活動です 37

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「たのしい」の起こし方 システム2 苦悩/チャレンジ 2、 考えながら行動させる 緊張 1、 ストレスを与える 解決/達成 3、 達成感・興奮! 38

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人は「動くもの」に惹かれます。 動いているものを見つけると 無意識に「動く先」を予想しています 見知 予想 結果 「予想」と「結果」を絶えず繰り返してます 39

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目標への「欲求」が生じると 実際に「動くもの」へ働きかける場合 「予想」は「実践」の準備に緊張します 予想 欲求 見知 結果 実践 考えて「予想」した末に「実践」して「結果」を達成した、 という一連のサイクルが「感情」を刺激します 40

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「ゲーム体験」 の基本構造 結果 見知 欲求 = 目標と意思 一致した 予想 結果をイメージする やってみる たのしい! 緊張 「結果」と考えた「戦略」が このクルクルとまわる部分が 実践 (生じた緊張を解消するサイクル) 一致した場合に緊張が解消して 「たのしい」を生じさせます 興奮、安心、喜びの感情が起きます 41

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日常のヒトが脳を使って「解決方法」を考える 身近な緊張は、「タイミング」をはかる「あそび」などがあります じっくり考えて・・ 「なわとび」などが「タイミング」を計るあそびです 42

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欲求 結果 = 実践 ・ 周期のある回転 ・・等速円運動など ・ 周期のある移動 ・・単振動など 予想 周期運動するモノを「避けたり」、「当てたり」させる だけで、ちょっとした「たのしさ」は生まれます 43

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次に、これはどうでしょう? 「なる早」で ゴールしましょう 44

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「あそび相手」の登場 プレイヤーは、ずっと「相手」の動きを意識し「緊張」し続けます なので、思いがけない失敗をしたり、判断に迷ったりします 「相手」がいると「タイミング」を計るより、 常にリアルタイムで「戦略」や「スキル」を求められます あ、こっちに来た! 一旦、こっちに 誘き寄せて、と・・ 45

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「あそび相手」が、このサイクルを常に回し続けてくれます 「なる早」で ゴールしましょう 46

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「あそび相手」=「競争する相手」がいる効用 47

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ゲームに勝つことが、ヒトには 大きな「ごほうび」として機能します 「勝利・優位」(他者よりも優れている証明)は、 目に見えない「報奨・ごほうび」です 48

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俺、勝ったかも! 何かの「勝利」を達成して得られるもの ・ ・ ・ ・ 自尊心 自己肯定感 「不安」の払しょく 精神の「安定・安心」 ヒトは競争の結果を「比較」するのが好き 負けた・・ なんかモヤる・・ 「競争」によって得られる「報奨」はヒトにとって大きな喜びです 49

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「ゲーム」は、ヒトをほめて伸ばす「学習装置」である もらえる報酬は「勝つこと」だけではありません 50

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もう一つの「ゲーム」の「たのしさ」の理由 「褒めてもらえるから!」 51

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ごほうびは「褒める」という意味です 褒められると、どういう気持ちになりますか? 「うれしい」 うれしいですね またやろう、と思います 52

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なぜゲームはたのしいのか? なぜ子供はゲームをやめないのか? 「褒めてもらえるから!」 53

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ゲームは「うれしい!」「やったー!」の後に 必ず「ごほうび」を与えてプレイヤーを「褒めて」あげます ゴール、おめでとう! スコア最高得点! 1000ゴールド ゲット! 勇者の盾を 手に入れた!! レベルアップ! HP、MPを回復します! プレイヤーを褒めて「報酬系」システムを起動させて ヒトに学習させるものが「ゲーム」だ、ともいえます 54

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何かの自発的なアクションの後に、「ごほうび」や「称賛」をともなって 何かを成功裏に獲得した経験は「報酬系」と呼ばれ、 脳に記憶(プログラム)されます ヒトは褒められた行為や活動を記憶します 学んだ! 55

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RPGで花瓶を壊したり、樽を壊すと お金やアイテム(ごほうび)が出てきます 1000ゴールド ゲット! その後、ゲーム内で「樽」を見つけると必ず壊すようになります 「ごほうび」で間接的に褒められて、「報酬系」で記憶したからです 56

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ヒトが「ゲーム」に夢中になるのは ゲームは「ヒトを褒める装置」として機能するからです プレイヤーを褒めて脳の「報酬系」システムを起動させて ヒトに学習させるものが「ゲーム」だ、 といえるかもしれません 57

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ヒトは新しく覚えた行為を上手にやろうとします ヒトの習性に、「学んだ」ことを繰り返し行うと ドーパミンのレセプターが活性化して、 「うれしい気持ち」になる現象があります 例えば、「飛んでくるボールをバットで打ち返す」ことを 学んだヒトは、ボールを打ち返すたびに 「うれしい」気持ちになることが分かっています !! 58

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ゲームに限ったことではなく ヒトは、日常生活で多くの「たのしい」ことが起きています 知ってる曲をマネして歌う ダンスのステップを繰り返す ルールのあるあそび、スポーツをする 決まった道順で配達する 空手の型やヨガのアサナ(型)をする ボールを蹴って棒に当てる 楽器の演奏をする 同じルーチンで家事をする 自分の中にできた「テンプレート」に向かって、 自分で合わせていく行為を「たのしい」と感じます 59

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ゲーム中に覚えたスキルや技を、プレイヤーに 繰り返し使わせることが、「ゲーム」のたのしさにつながります ・ ・ ・ ・ 「エネミーの弱点を攻撃する」 「2段ジャンプして届く場所がある」 「光っている瞬間にアイテムを取る」 「戦うと武器自体が成長する」 などなど・・ ゲームの基本ルールを思い起こさせる場面を繰り返し配置し、 そのアクションの応用、練習をさせる場面やセッティングを考えましょう 60

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なので、ゲームの進行とプレイヤーの関係が・・ プレーヤーの ステータス (強さや熟練度) ゲームの進行にともなって強くなります ゲームの進行 プレイヤーが成長できない、学習できない「ゲーム」は、たのしくない、と云えます 61

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まとめ 「あそび」 目的(ゴール) 練習可能 「ゲーム」 制限(ルール) 定量化 ダメなこと 勝つ(達成する)ために、「戦略」、「スキル」をつかう 「あそび相手」とのインタラクティブな「あそび」 62

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プレイヤーの「あそび相手」とは・・ 63

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しかし、本当にプレイヤーがあそんでいる相手は プレイヤーが「ゲーム」を通して直接やり取りするのは、 フィードバックをくれるインタラクトする「オブジェクト」たちです そのゲームをつくった「あなた」です Game Master 「ゲーム」は双方向でインタラクティブ、常に2人であそぶメディアです プレイヤーの「あそび相手」はクリエイターのあなた自信です 64

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それ以上は分割できないヒトの最小単位は2人だ The smallest indivisible human unit is two people, not one; 1人ではない one is a fiction. 左シフト 左Dでエイムって 無理だから・・ その寄り集まる魂たちの織りなす交流の網の中から、 From such nets of souls societies, the social world, どうだった? ヒトのいとなみが生まれるのだ human life springs. トニー・クシュナー Tony Kushner 65

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「ゲーム」はプレイヤーとクリエーターの両者が一組になった時に はじめて生まれる「インタラクティブ」なメディアです ヒトに寄り添い、いつでも褒めてくれる いつまでも付き合ってくれる、 気軽で最も身近な存在でいられる「ゲーム」を 一緒につくりましょう 今日の話が、なぜ「ゲーム」はたのしいのか? を考えていただけるきっかけになれば幸いです 66

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Unity道場-京都スペシャル - あそびのデザイン講座 特別編 - ありがとうございました オシマイ 67