2-1 薬物動態と相互作用

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October 26, 23

スライド概要

「2-1 薬物動態と相互作用」[臨床★★☆][基礎★★☆]
内容:薬物動態の各過程の詳細と相互作用の機序
・吸収過程と吸収過程における薬物相互作用
・分布過程と分布過程における薬物相互作用
・代謝過程と代謝過程における薬物相互作用 ★特に大切
・排泄過程と排泄過程における薬物相互作用

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「くすりのことをわかりやく、基本から臨床まで」 をモットーに、初学者向けの薬情報をまとめています。 資料は、薬剤師が作成しています

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各ページのテキスト
1.

2-1 薬物動態と 相互作用 ADME の詳細と相互作用の機序

2.

吸収 投与された薬物が、全身循環 血液中に移行する過程

3.

吸収過程の機序 臨床★★☆ 基礎★★★ 【ポイント】 消化管の管腔側から、 細胞膜を通過して吸収される →細胞膜を通過しやすい物質=吸収されやすい →脂質二重膜構造 細胞膜の構成単位 リン脂質 吸収される物質の特徴 • 脂溶性・低分子 •水 担体輸送の基質 • 分子型(弱酸性・弱 油 塩基性の物質の場合) 脂溶性 低分子 + + 親水性 − イオン型 ++ + − イオン型 − − 疎水性 − 分子型 水 リン脂質の二重膜がモザイク上に並び、 ランダムに膜タンパク質が埋め込まれた構造 細胞内部 細胞膜 管腔側

4.

吸収過程の機序 【ポイント】 消化管の管腔側から、 細胞膜を通過して吸収される →細胞膜を通過しやすい物質=吸収されやすい →脂質二重膜構造 吸収される物質の特徴 • 脂溶性・低分子 • 担体輸送の基質 • 分子型(弱酸性・弱 塩基性の物質の場合) 脂溶性 低分子 + + − イオン型 ++ + − イオン型 − − − 分子型 管腔側 細胞膜 細胞内部

5.

吸収過程の相互作用 吸収 全身循環血液 中へ移行 薬効 邪魔 薬物血中濃度 薬効 低下↓ 減弱↓ 〔吸収過程における相互作用の代表例〕 一部の抗菌薬と牛乳等

6.

一部の抗菌薬と牛乳 相互作用 NQ NQ 吸収されない! =効かない!! NQ NQ Ca NQ 抗菌薬 ・テトラサイクリン系抗菌薬 ・ニューキノロン系抗菌薬 VS NQ 二価(2+)の金属イオン等 ・カルシウム ・鉄 ・マグネシウム‥カマグ

7.

分布 投与された薬物が、血液中 から組織へ移行する

8.

分布過程の機序 移行しやすさ 組織への蓄積性 【ポイント】 血漿タンパク質 →血液中では薬物は血漿タンパク質と結合している →主に、アルブミン 細胞膜を・・・ 遊離型:通過する →薬効を発揮する! 結合型:通過できない 血管内 遊離型 細胞内でタンパク質と結合すると・・ 細胞膜を・・・ 遊離型:通過する →血管内を移動し排泄 結合型:通過できない →長く留まる 結合型 アルブミン ついたり、離れたり 細胞内

9.

分布過程の相互作用 【機序】 血漿タンパク質の奪い合い 血管内 血管内 アルブミン アルブミン アルブミン アルブミン アルブミン アルブミン アルブミン 薬効は 1個分 要注意 ・タンパク結合率が高い薬物 ・低アルブミン血症 アルブミン アルブミン アルブミン より血漿タンパク質との親和性が高い に置き換わる →遊離型の が増える →薬効は 5個分 →有害事象が増加

10.

分布過程の相互作用 タンパク結合率 20% 10個 8個 アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン タンパク結合率 90% 相互作用 1個 アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン 相互作用 アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン 10倍!! 10個 アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン アルブ ミン タンパク結合率の高い薬物では、相互作用の影響を強く受ける!

11.

代謝 薬物や異物を、分解したり 排泄されやすい形に変換

12.

代謝過程の機序 チトクローム 【ポイント】 代謝酵素=シトクロムP450(CYP) 場所:肝臓 本体:タンパク質 特徴:分子種が沢山ある →特に、CYP3A4 (遺伝子を翻訳して合成されている) 特徴:遺伝子多型 =酵素の性能が異なる 肝臓 原料 作業員 製品 基質 酵素 生成物

13.

CYP にはいろんな種類がある 2D6 3A4 3A4 3A4 3A4‥最も多く存在する.多くの薬の代謝に関与する. 2D6‥性能差(遺伝子多型による違い)が大きい.

14.

酵素誘導 原料 作業員 製品 原料 作業員 製品 基質 酵素 生成物 基質 酵素 生成物 酵素誘導とは、 遺伝子の翻訳を活性化させて、酵素を増やす

15.

酵素阻害 原料 作業員 製品 原料 作業員 製品 基質 酵素 生成物 基質 酵素 生成物 酵素阻害とは、 酵素の活性中心等に結合し、反応を阻害する

16.

代謝過程の相互作用 酵素が増加↑ 減少↓ 酵素誘導 薬物血中濃度 代謝 薬物が減少 酵素阻害 薬物血中濃度 酵素が阻害↓ 増加↑ 減弱↓ =効かない 薬効 薬効 増強↑ =有害事象

17.

基質・阻害薬・誘導薬の代表例 基質 薬の開発の際に薬物代謝を調べるために使う指標薬 阻害薬 誘導薬 CYP1A2 カフェイン、チザニ ジン α-ナフトフラボン オメプラゾール、ラ ンソプラゾール CYP2B6 - セルトラリン、フェ ンシクリジン、チク ロピジン フェノバルビタール CYP2C8 レパグリニド モンテルカスト、ケ ルセチン リファンピシン CYP2C9 CYP2C19 s-ワルファリン ランソプラゾール、 オメプラゾール チクロピジン CYP2D6 デキストロメトル ファン キニジン、パロキセ チン CYP3A ミダゾラム、トリア ゾラム イトラコナゾール、 ケトコナゾール、ベ ラパミル リファンピシン リファンピシン リファンピシン < 酵素阻害>アゾール系抗真菌薬、シメチジン <酵素誘導> 古典的抗てんかん薬、抗結核薬(リファンピシン)

18.

排泄 薬物やその代謝物が 体内から除去される

19.

排泄過程の機序/腎排泄 【ポイント】 ネフロン‥腎臓の機能単位 →腎小体+腎細管 →ボーマン嚢+糸球体 ※薬物の排泄について 糸球体 場所:糸球体 役割: 遊離型薬物を濾過して除去 尿細管 場所:近位尿細管 役割:輸送担体 (トランスポーター) が積極的に排出する(血管→尿) 尿細管 場所:遠位尿細管 役割:受動輸送 濾過 分泌 再吸収 イオン型⇄分子型 →分子型薬物が再吸収

20.

排泄過程の相互作用 糸球体濾過の機序 血流 タンパク 結合率に 影響する薬 遊離型↑ ↓ 濾過量が増加 ↓ 血中濃度が低下 ↓ 薬効減弱 老廃物 栄養素 薬物(遊離型) タンパク質 薬物(結合型) 糸球体濾過 ‥ 老廃物を 血圧で濾過 腎血流量を 減少させる薬 濾過される 濾過量が減少 ↓ (体内から除去) 血中濃度が上昇 ↓ 濾過されない 有害事象↑ (体内に残る) 例)NSAIDs

21.

尿細管 尿細管 再吸収 分泌 原尿 原尿 − MTX A薬 B薬 NSAIDs B が A の尿細管分泌を阻害 →A が排泄されない →A の血中濃度が上昇 →有害事象↑ − イオン型 − − + + − 分子型 イオン型 ++ + 特徴:分子型の薬物が再吸収される 薬物によっては(特に弱塩基性) 尿 pH が変わると、 イオン型/分子型の割合が異なる

22.

2-1 薬物動態と 相互作用 代謝過程の相互作用 特に、グレープフルーツについて

23.

酵素阻害 原料 作業員 製品 原料 作業員 製品 基質 酵素 生成物 基質 酵素 生成物 酵素阻害とは、 酵素の活性中心等に結合し、反応を阻害する

24.

フェロジピンの初回通過効果 小腸 肝臓 CYP3A4 CYP3A4 https://www.cmaj.ca/content/185/4/309

25.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 ①相互作用のメカニズム グレープフルーツに含まれる成分が 薬物の代謝(CYP3A4)を阻害する →薬物の血中濃度が上昇する フラノクマリン類 • ベルガモチン • 6’,7’-ヒドロキシベルガモチン(DHB) 薬物 • 6’,7’-エポキシベルガモチン 及び、各2量体 阻害 CYP3A4 代謝 分解

26.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 ①相互作用のメカニズム グレープフルーツに含まれる成分が 薬物の代謝(CYP3A4)を阻害する →薬物の血中濃度が上昇する フラノクマリン類 • ベルガモチン • 6’,7’-ヒドロキシベルガモチン(DHB) • 6’,7’-エポキシベルガモチン 及び、各2量体 果肉にも皮にも存在 白色種もルビー種 も含有 不可逆的阻害 (数日間持続)

27.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 ②どこまでダメなの? グレープフルーツ:果肉を食べる グレープフルーツ:ジュースを飲む グレープフルーツ:ジャムを食べる 一緒に摂取しなければOK? 相互作用を回避するためにあけるべき時間は、 影響の程度によって、薬ごとに違います

28.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 ③他の柑橘類は? グレープフルーツ スウィーティー メロゴールド 晩白柚 レッドポメロ 文旦 サワーポメロ 甘夏 橙 八朔 メキシカンライム パール柑 サンポウカン レモン 日向夏 スイートオレンジ 多い 中程度 齋田哲也ら、 医療薬学、32 (7)、693-699 (2006) から作図 ポンカン 伊予柑 柚子 カボス スダチ 金柑 微量 温州みかん デコポン 検出されない

29.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 免疫抑制薬 Ca 拮抗薬 ④どんな薬に注意が必要? 高脂血症治療薬 CYP3A4 で代謝される薬物 初回通過効果の影響が大きい薬物 患者の脆弱性

30.

グレープフルーツと 医薬品の相互作用 リスクに応じて、適切な対処が必要 (全部ダメではない) 他の果物は、また別のリスクが・・・ グレープフルーツは美味しいです。 医薬品服用中でないときには、お召し上がりください!