5-1 免疫抑制薬

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November 08, 23

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「くすりのことをわかりやく、基本から臨床まで」 をモットーに、初学者向けの薬情報をまとめています。 資料は、薬剤師が作成しています

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各ページのテキスト
1.

5-1 免疫抑制薬 免疫系に作用する薬物の種類と作用機序

2.

免疫系の KEY POINT 疫病(感染症)を免れる 抗原 提示 ③ヘルパーT細胞の指示を受けた細胞 障害性T細胞は、異常細胞を攻撃する 細胞障害性T細胞 抗体 産生 ヘルパーT細胞 ①異物を貪食し 情報を伝える “手配書” ②ヘルパーT細胞 が指令を出し、 免疫を活性化 “司令塔” 細 胞 性 免 疫 B細胞 抗体 ④B 細胞は活性化 ⑤抗体が異物を 攻撃する され形質細胞に なり、抗体を産 “ミサイル” 生する 液 性 免 疫

3.

抗体の分類・概略 IgG • 血液中に最も多く含まれる • 細菌やウイルスからの防御 IgA 主に二量体 Ig, immunoglobulin 免疫グロブリン IgD • 血清中や粘膜面に 存在(分泌型) • 母乳にも含まれる IgM IgE • 細菌やウイルスに 感染したときに作 られる(一次免疫 応答) • Ⅰ型アレルギー反 応

4.

免疫抑制薬の分類 攻撃 免疫抑制薬 異物 攻撃 臓器移植・骨髄移植 移植片 移植時の拒絶反応 自己 過剰な免疫反応は、さまざまな症状や 疾患を引き起こす 自己免疫性疾患 • 副腎皮質ステロイド薬 • カルシニューリン阻害薬 • シクロスポリン • タクロリムス水和物 • 代謝拮抗薬(プリン拮抗薬) • アザチオプリン • ミゾリビン • ミコフェノール酸モフェチル • mTOR 阻害薬 • エベロリムス • 抗体薬

5.

免疫抑制薬の作用機序 カルシニューリン 阻害薬 カルシ ニューリン シクロスポリン タクロリムス IL-2↑ 増殖 CD3 抗原 IL-2 細胞障害性 T 細胞 mTOR阻害薬 ヘルパーT細胞 代謝拮抗薬 アザチオプリン 増殖 B細胞 CD20 抗原 抗体 産生 抗体

6.

有害事象/易感染性 機 序 免疫が低下するため 現在、免疫抑制薬使用中は 「生ワクチンは控える」推奨だが 病状が安定している場合、 接種することもある • 細菌感染症 • 結核 • 深在性真菌症 • ニューモシスチス肺炎(PCP)→ST 合剤(バクタ ®) 免疫 • クリプトコックス症 低下 • ウイルス感染症の再活性化 潜伏感染 再活性化 • 単純ヘルペスウイルス • サイトメガロウイルス • B型肝炎ウイルス 予防投薬 対策 基本的な感染対策: 手洗い・うがい・マスク、人混みを避ける

7.

一般名 先発名 タクロリムス, FK506 プログラフ 顆 グラセプター カ 注 徐カ 免疫抑制薬 TD M ハイリスク薬 患者さん向け説明:臓器移植時 免疫機能を抑え、拒絶反応を抑える薬です 患者さん向け説明: 異常な免疫機能を抑え、症状を改善する薬 主な作用機序 • T細胞由来のサイトカイン産生を阻害し、免疫反応を抑制する 主な適応症、用法・用量等 観察項目 注意すべき 副作用 PK 特徴 臓器移植における拒絶反応の抑制, 重症筋無力症, 関節リウマチ他 バイタル, 腎機能検査値 感染症の合併・増悪‥発熱、のどの痛み、感冒様症状、倦怠感 腎機能障害‥尿が出にくい、体がむくむ、疲れやすい、目が腫れぼったい CYP3A4 で代謝される TDM 対象薬剤である(有効血中濃度域が狭く、PK に個人差が大きい) ※全血試料 禁 過敏症、シクロスポリン・ボセンタン投与中 併禁 生ワクチン、シクロスポリン、 ボセンタン、K保持性利尿薬 K保持性利尿薬、生ワクチン

8.

副腎皮質ステロイド薬 • 体内で作られている生理活性物質 ‥「副腎」の「皮質」で産生されている「ステロイド」ホルモン • 強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持っている • 治療量は体内に存在する量の50倍量 プレドニゾロン換算 →体内でさまざまな影響をもたらす 2.5〜5 mg 副腎皮質 ステロイド 核 核内受容体 転写 転写を活性化 転写を抑制 mRNA 翻訳 タンパク 質 ‥抗炎症因子を活性化 ‥炎症因子を抑制

9.

副腎皮質(cortical) 副腎 皮質 ステロイド 皮質 髄質 ステロイド骨格 副腎皮質で作られるステロイド ・〔糖質コルチコイド〕コルチゾール ‥糖新生促進 ・〔鉱質コルチコイド〕アルドステロン‥Na, K 調節 ・〔男性ホルモン〕アンドロゲン‥生殖器官の機能維持等 副腎皮質ステロイド薬は、主に、糖質コルチコイド作用を目的に使う 糖質コルチコイド作用/鉱質コルチコイド作用の強さは、薬ごとに違う

10.

有害事象/ステロイド離脱症候群  ホルモン分泌の調節機構 副腎皮質ステロイド薬を 長期間治療で使用する 視床下部 (CRH) ↓ 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン 「十分あるから作るな」 下垂体前葉 負 =負のフィードバック (ACTH) の 副腎皮質刺激ホルモン ↓ フ ィ 自己判断で休薬 副腎皮質 ー ド ↓ 副腎皮質ホルモン バ 体内の副腎皮質ステロイドが不足 ッ 標的組織 ク =ステロイド離脱症候群 倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下など 体内にある量:2.5〜5 mg よくなったと感じても、絶対に、自己判断で休薬しない 対策 減量・休薬する場合、漸減投与(徐々に減量)

11.

副腎皮質ステロイド 全身投与・長期投与/有害事象 クッシング症候群(コルチゾール↑)と同様の症状

12.

長期投与時 機 序 対策 長期投与時 機序 対策 有害事象/感染症 免疫が低下するため 基本的な感染対策: 手洗い・うがい・マスク、人混みを避ける 必要に応じて予防投薬 有害事象/骨粗鬆症 骨代謝・カルシウム代謝に影響 →骨密度が低下 ステロイド 骨粗鬆症 3ヶ月以上服薬 副腎皮質ステロイド服用者 非服用者の 1.9 倍骨折リスク ビスホスホネート製剤 〔骨粗鬆症治療薬〕‥破骨細胞を抑制する 活性型ビタミン D3 製剤

13.

長期投与時 減量で改善する副作用 ムーンフェイス 満月様顔貌 中心性肥満 ステロイド筋症 対策 〔機序〕 食欲の亢進、脂質の代謝障害のため →あらかじめ説明し、 食事制限が必要な場合もある 〔機序〕 骨格筋が萎縮することで、筋力が低下 →治療・予防のため、理学療法 心理的負担が大きい症状である 治療後、減量に伴い、回復することを説明

14.

副腎皮質ステロイドの有害事象 〔機序〕糖新生を促進し、血糖を上昇させる 糖尿病 (ステロイド糖尿病) ※投与開始後、早期から起こる 〔機序〕脂質代謝障害するため、または、 動脈硬化性疾患 直接、動脈硬化を促進するため ※少量でも影響するといわれている 対策 それぞれに、 ・体重が増えないように注意 (抗腫瘍効果のために使う時を除く) ・必要に応じて、食事制限 ・必要に応じて、治療薬 〔機序〕胃を保護するサイトカイン産生を阻害 (ステロイド潰瘍) するため 〔対策〕胃酸分泌抑制薬、粘膜保護薬 潰瘍

15.

副腎皮質ステロイドの有害事象 精神神経症状 〔機序〕脳内の受容体を刺激するためと考え られている 早期に起こる 〔症状〕軽い躁状態、うつ状態、不眠、不安 〔対策〕不均等投与  不均等投与 朝 生理的な 分泌 投与方法 昼 夕 不均等投与‥日内変動に合わせる メリット:副作用(不眠)の防止 例) 1日6錠(3-2-1)