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December 05, 25
スライド概要
本講演へのアンケートにご協力をお願い致します:
https://forms.gle/oKtoxdNLB86n6gYDA
講演動画:
https://youtu.be/Z3h77xJXpTs
講演内容:
UE5 Lumenは、CGライティングのイテレーションに革新的な変化をもたらしました。これをきちんと活用するために必要なのは、自分の目で光を観察し、アーティスティックなセンスを磨き、リアルタイムでライティングを整える能力です。このセッションでは、ライティングの真の目的を振り返り、良いライティングの感覚を得るヒントを提供したいと思います。
講演者:
木村 洋一(株式会社スクウェア・エニックス)
株式会社スクウェア・エニックスについてはこちら:
https://www.jp.square-enix.com/
Unreal Fest Tokyo 2025公式サイト:
https://www.unrealengine.com/ja/events/unreal-fest-tokyo-2025
Unreal Engineを開発・提供しているエピック ゲームズ ジャパンによる公式アカウントです。 勉強会や配信などで行った講演資料を公開しています。 公式サイトはこちら https://www.unrealengine.com/ja/
ライティングのヒント なぜCGアーティストは光に興味がないのか? Lumenがもたらすライティング・イテレーション革命を生かして SQUARE ENIX LT SV 木村洋一 #unrealfest
Contents 1. ライティング・イテレーション革命 2. 光を観察する 3. UE5でのライティングのヒント 4. ライティングの実際の作業 5. まとめ
自己紹介・・ 木村洋一 • 1985~ フリーランス・フォトグラファー (->ライティング) • 1998~ + フリーランス・3DCG アーティスト (->ライティング ) • 2005~ SQUARE ENIX ライティング・テクニカルスーパーバイザー No Lighting No Life (->ライティング)
・2021~ UE5 Lumen 研究に励む ∵ なぜなら~ UE5 Lumenが ↓ CGライティングを探求する者に特別な意義を持つから
1. ライティング・イテレーション革命 写真・CG業界での大きなパラダイムシフト • 写真 2000頃 デジタルカメラの台頭 • CG 2020頃 UE5 Lumen リアルタイム・グローバルイルミネーション 二つの画期的なパラダイムシフトの共通点 その場でライティングの結果が見られる ↓ ライティング・イテレーション革命
1. ライティング・イテレーション革命 ライティング・イテレーション革命は何をもたらすか? 従来 ・経験を積んだものが 実績と知識を基に 定番のライティングを行う リアルタイム化後 ・未経験者が 感性に基づき アドリブでライティングを行う
1. ライティング・イテレーション革命 ライティング・イテレーション革命は何をもたらすか? 実務的経験値の高さ < 光に関する感性・審美眼 光に関する感性・審美眼とは、 光の振る舞いがどの様な時に人の眼を楽しませることができるか?そこを理解しているか否か ライティングの経験が浅くても 光のもたらす美しさを知りそれを追い求める人ならイメージを具現化できる UE5 Lumenにより CGライティングへの門戸が多くの人に開かれた
2. 光を観察する 2.光を観察する ライティングのために必要な、感性・審美眼を高めるには? まずは光の振る舞いによるシーンの変化・心象影響・美的な付加価値 興味を持ちよく観察し理解すること CGアーティストはキャラクターや背景などの造作は良く観察するが、光を意識しない
2. 光を観察する 絵描きが対象を観察する様に ライティングアーティストは光を観察する必要がある 光はどの方向から来たものが、どこをどう照らしているか? 物が素敵に見える光の振る舞いとはどのようなものか? 光を意識するようになる事が重要な第一歩 絵を描く為の着目点 ライティングの為の着目点 ・輪郭・形状 ・光の方向 ・ヘタの形状 ・メインライトのハイライト ・くぼみの具合 ・シェーディングの境界 ・表面の粒・模様 ・右からの弱い光 ・テーブルからの照り返し ・テーブルへの反射 ・明暗の比
2. 光を観察する 光の観察の第一歩 ・映画・写真・絵画などで光の扱われ方に着目する ・現実の生活の中で光が美しいと感じる情景を探す 光を見過ごさない・見逃さない 光の美しいシーンを探し目に焼き付ける 沢山の経験を積み目を肥やしていく 日常の生活の中にライティングの教科書はいくらでもあふれている
2. 光を観察する ライティングハントのすすめ 「光が芸をしているシーンをスナップする。」 街にカメラを持って出かけ「光の感じがちょっと良いと感じるシーン」 それをスナップ写真として撮り歩く
2. 光を観察する ライティングハントのすすめ 「光が芸をしているシーンをスナップする。」 UE5内のシーンでも色々なところを見て 「光の感じがちょっと良いと感じるシーン」の スクリーンショットを撮る
閑話休題 ※Hillside Sample Project UE5でライティングハントを行う際の環境として、 Hillside Sample Projectを推奨させていただいています。 非常に広範囲に様々な雰囲気の街並みが高品質に作られており ウォークスルー的にそのワールド内を散策するだけでもたのしめます。 天候や時間帯を変え光の美しいシーンを探してみてください。
2. 光を観察する 光の観察で気が付くこと 対象が単に明るく照らされて、物がよく見える状況はライティング的にはつまらないもの 晴天の昼の陽の光より、夕方の傾いた陽の光がドラマチックと気づく
2. 光を観察する 光の観察で気が付くこと 同様に・・・ 室内シーンで天井からのシーリングライトの光は絵が平面的で退屈なものと気づく
2. 光を観察する 光の観察で気が付くこと それに対し・・・ 窓際のスタンドの灯りやテーブル上のライトの灯りで照らせばぐっと雰囲気がよくなる +
2. 光を観察する 光の観察で気が付くこと さらに・・・ 夜に窓の外から怪しげな光が入ってくると映画のシーンの様になる
2. 光を観察する 光の観察の成果を生かす 光の観察の成果は光の美や印象などとして漠然と記憶に残っていく これを次のステップでは キーワードに紐づけて具体性を身に着けていく 光の印象を言葉に変える習慣をつけるようにしそのボキャブラリーを増やしていく 言語化により具体性を持たせることができる 煌びやか 情緒的 怪しげ 不気味 静寂 硬質
2. 光を観察する 光を観察する まとめ 光を意識して見過ごさない・見逃さない 光の美しいシーンを探し目に焼き付ける 沢山の経験を積み目を肥やしていく どういう光の状況が人の眼に好ましいのか?よく理解しておく 光の印象を言語化しそれを具体化する術をマスターする 光をよく見て感性・審美眼を磨いていく
3. UE5でのライティングのヒント 3.UE5での具体的なライティングのヒント 実際にUE5内でライティングをする際に・・・
3. UE5でのライティングのヒント ライティングの練習は日中屋外を避ける ・昼間の太陽光によるライティングはすでに固まっているから 新たなライティングを発見し難い ・夜間や室内・無機的な空間などで始めるのがベター 自由な発想でライトの配置がしやすくその効果を確認できる ∵ 夜の街や室内などで光の素敵な情景を見ることが多い筈
3. UE5でのライティングのヒント Exposureをロック 実写の撮影ではAutoExposureをオフにしている。 同様にUE5でもExposureをロックしておく UE5のAutoExposureを作動させなくし基準を明確に ∵ 暗い明るいはライティングに非常に重要な要素 Min EV100 Max EV100を同じ値にする AutoExposure ON AutoExposure Locked
3. UE5でのライティングのヒント WhiteBalanceはデフォルトで 実写ではAutoWhiteBalanceもオフにする + UE5ではWhiteBalanceはデフォルトとし シーンの色は基本的にライトで作る ∵ 光の色が心象効果に大きく影響する ライトの色で色づくりをした例 (Temperatureはデフォルトのまま) ライトの色はすべてデフォルトの白 PPV内Temperatureでシーンの色を作った例 Temperatureで画面の色を暖色に調整
3. UE5でのライティングのヒント ライトのPivotをライティング対象の位置にする 光がどの方向から来るのか? どこをどう照らしているか? これら光の方向を容易に制御できる方法 ∵ 光の来る方向が印象を支配するから PivotOffSetでxに100~300程度(ライトからの距離になるので適当ではいけない)の値を入れPivotをキャラクターの胸あたりにすると非常にライティング調整が楽になる
閑話休題 ※Lumen HitLighting ちなみに以前Lumenではキャラクターなどのスケルタルメッシュは周囲からのGIの影響を 受けることはできても影響を与えることはできませんでした。 5.5からのRayLightingMode HitLightingではそれさえも可能になりPathTracingと遜色のないGI効果を得られます。 Ray Lighting Mode ProjectDefault(Surface Cache) Ray Lighting Mode Hit Lighting
3. UE5でのライティングのヒント 光の質とは? 狭い範囲から来た光 硬い光 広い範囲から来た光 柔らかい光 光源のサイズで光の硬さ柔らかさを操る ∵ ライティング効果の印象や質感描写 影のボケ具合などに大きな影響する ライトまでの距離 300 SourceRadius 5
3. UE5でのライティングのヒント 光の質とは? 狭い範囲から来た光 硬い光 広い範囲から来た光 柔らかい光 光源のサイズで光の硬さ柔らかさを操る ∵ ライティング効果の印象や質感描写 影のボケ具合などに大きな影響する ライトまでの距離 300 SourceRadius 80
3. UE5でのライティングのヒント 光の流れを作る 円環上にグラデーションを作ることを意識する PivotをもとにOptionコピーしIntensityを徐々に弱くする ∵ 日常的な状況で見られるような光の方向性が明確な状況を再現できる
3. UE5でのライティングのヒント 光の色・光質をバラつかせる 同じ設定のライトをコピーしたままで使わない ライトごとに色やサイズに何らかの変化をつけること ∵ 複雑な光の変化が表情豊かで既視感のある自然なシーンを生み出せるから
3. UE5でのライティングのヒント 時には光をカットする ライトで光を足すだけでなく、光を遮る黒い板などを配置し余計な光を引き算する 黒で締めるという高等テクニック ∵余計な光を抑えることで 光の印象を明確にすることができる ・黒締なし
3. UE5でのライティングのヒント 時には光をカットする ライトで光を足すだけでなく、光を遮る黒い板などを配置し余計な光を引き算する 黒で締めるという高等テクニック ∵余計な光を抑えることで 光の印象を明確にすることができる ・黒締あり
閑話休題 ※ライティングとカラーグレーディング・トーンマッピングの関係 ライティング効果に大きな影響を与える重要な要素 カラーグレーディング トーンマッピング ライティングバランスはトーンマッピングにより大きく変化する →トーンマッピングについては別の機会に・・・。 OriginalLUT NoToneMap(ToneCurve 0) FilmicToneMapper(ToneCurve 1)
3. UE5でのライティングのヒント ライティングTipsまとめ 基本的に光を意識してよく観察している人には当たり前のことばかり、 ちょっとしたUE5の使い方テクニックも光を操ることに集中できる為に必要なだけ。 やはり大事なことは 光をよく見て感性・審美眼を磨いておくこと
4. ライティングの実際の作業の心得 4.ライティングの実際の作業の心得
4. ライティングの実際の作業の心得 具体的に実践的なライティング作業を行う上で まず最初に行うこと・・・ ・どのような雰囲気にしたいか目標のキーワードをリスト化する ※印象を言語化しキーワードを見つけていくことは時にプレビズより有効 リスト化する要素 元シーン 未ライティング ・明暗や色使いによる心理的影響の方向性 ・インパクトの強さや印象の強さ ・見やすさ優先か?印象重視か? 等々 ニーズの方向性をキーワードで把握する 目標例 ・夜の雰囲気を出す ・日没直後の空にマジックアワーの残りの色が少しある ・街灯の光が冷たい印象を出す ・建物からは暖色の明かり ・明るい街中ではなく少し寂しく暗い雰囲気に ・少し不気味・不穏な雰囲気に
4. ライティングの実際の作業の心得 具体的に実践的なライティング作業を行う上で 次に行うこと・・・ ・クオリティアップの可能なことをリストアップする ライティングによりクオリティアップできること・・ ・綺麗に見せる Take1 ・印象的に見せる ・立体的に見せる ・主題を強調する 等々 品質アップの目標を明確にする クオリティ調整項目 例 ・キャラのライティング ・背景が明るすぎる 明るく目立たせる
4. ライティングの実際の作業の心得 具体的に実践的なライティング作業を行う上で 最後に行うこと・・・ ・必ずセルフリテイクを行う セルフリテイクで気にする点 ・前後の流れに対し最適化できているか? Take2 ・目標キーワードに沿っているか? ・ライティングが目立ちすぎていないか? ・美しい印象のライティングになっているか? 等々 妥協せずに最適化できる点を探す セルフリテイク ・キャラフェイス明るすぎ 夜らしさを ・不穏な印象が弱い ・不気味さが不足 ・光の方向性不明瞭 ・寒暖が明確でない
4. ライティングの実際の作業の心得 具体的に実践的なライティング作業を行う上で ・・・結果例 Take3 セルフリテイク 調整結果
5. まとめ 5.まとめ リアルタイムグローバルイルミネーションを実現したUE5 Lumenにより ライティング作業のスピードは画期的に改善した。 この大きな進化はライティング・イテレーション革命と言える。 それにより、経験則に頼ってライティングを行う必要がなくなり、感性・審美眼が問われることになった。 CGアーティストはこれを機会にもっと光に興味を持ってよく観察し、 光の美しい情景や心象効果を学び感性・審美眼を磨いてほしい。 磨かれた感性を生かしちょっとしたコツをつかめば、 UE5 Lumenで人の眼を楽しませる素晴らしいグラフィックが作れます。 自分の眼を信じて新しいライティングの美を探究してください。
5. まとめ 最後に・・・・ 光の効果は、美しいものを発見できて面白い それを簡単にその場で試すことができる画期的なツールが目の前にある 光で遊べば、人を喜ばせるビジュアルを作ることができる 光に興味が湧いてきましたか?