『No More Heroes 3』独自のストーリー表現のための制作パイプライン【UNREAL FEST EXTREME 2021 WINTER】

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November 08, 21

スライド概要

講演アーカイブ:
https://www.youtube.com/watch?v=WySr_xAtJqQ&list=PLr_Cbd4sUDTyMGAtfqRojwzFxkVXuU-_L&index=10

講演内容:
Nintendo Switchにて今夏リリースした『No More Heroes 3』のプロジェクトにおけるUnreal Engine 4制作パイプラインの成功、課題をカットシーンパートの開発工程を中心にふりかえります。

講演者:
市来 信高(株式会社グラスホッパー・マニファクチュア プロジェクトマネージャー)

UNREAL FEST EXTREME 2021 WINTER公式サイト:
https://unrealengine.jp/unrealfest/extreme2021winter/
#uefest

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Unreal Engineを開発・提供しているエピック ゲームズ ジャパンによる公式アカウントです。 勉強会や配信などで行った講演資料を公開しています。 公式サイトはこちら https://www.unrealengine.com/ja/

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各ページのテキスト
1.

『No More Heroes 3』独自のストーリー表現のための制作パイプライン 株式会社グラスホッパー・マニファクチュア 市来 信高

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自己紹介 株式会社グラスホッパー・マニファクチュア プロジェクトマネージャー 市来 信高 ■主な開発タイトル ・シルバー事件25区(Mobile App) ・サムライチャンプルー(PlayStation 2) ・ BLOOD+ ONE NIGHT KISS(PlayStation 2) ・ NO MORE HEROES(Wii) ・ NO MORE HEROES 2 :DESPERATE STRUGGLE(Wii) ・ SHADOWS OF THE DAMNED(PlayStation 3/Xbox 360) ・ LET IT DIE(PlayStation 4) ・ TRAVIS STRIKES AGAIN:NO MORE HEROES(Nintendo Switch) ・シルバー2425(Nintendo Switch/PlayStation 4)

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワークフロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワークフロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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『NO MORE HEROES 3』紹介 ■2021年8月27日リリース ■シリーズ11年ぶりのナンバリングタイトル ・NO MORE HEROES(2007年発売) ・NO MORE HEROES 2 :DESPERATE STRUGGLE(2010年発売) ・TRAVIS STRIKES AGAIN:NO MORE HEROES(2019年発売) ■銀河系スーパーヒーローランキングの頂点を目指せ 銀河の彼方からやって来たスーパーヒーローを自称する「極悪王子FU」が、 10人の宇宙人とともに「地球征服」を宣言。 伝説の殺し屋トラヴィスは、地球侵略を阻むために銀河系スーパーヒーローランキング の頂点を目指し、再びビーム・カタナを抜く。 ©Marvelous Inc. / Grasshopper Manufacture Inc.

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『NO MORE HEROES 3』紹介 ■60fpsスラッシュアクション ・Joy-Con操作による直感的なトドメスラッシュ、プロレス技 ・新たな能力「デスグローブスキル」「フルアーマー変身」による戦術 ■個性的なボスバトル ・宇宙人ならではの多様なギミックバトル ■フリーマップ新生サンタデストロイ ・シリーズおなじみの舞台サンタデストロイ、そして新たなエリアをバイクで駆け巡る ・ランキング戦に挑むために、街で必要資金を稼げ ■UE4バージョン4.26を使用

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワークフロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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ストーリー表現のカテゴリ 本作のストーリー表現は、一部サブテキストを除き、弊社須田執筆のシナリオを基に制作される。 それらは、表現方法/制作工程別に、大きく分けて4つに区分される。 ■ストーリーカットシーン ■イベントカットシーン ■ムービーパート ■その他のストーリー表現

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ストーリーカットシーン メインストーリー箇所。シーケンサーにて作成(※ワークフローを後述)。 白組様、ビー・トライブ様、AREA35様と共同制作。 Switch実機 Blueprint Maya Sequencer

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イベントカットシーン 各種イベント用に制作した低コストのシーケンサー。 インゲームモーション又はイベント用に制作したモーションを使用。 絵コンテは用意せず、社内スタッフによる演出でSequencer上のレイアウトを行った。 Switch実機 Blueprint Sequencer

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ムービーパート プレイヤーがコスチューム変更できる仕様のため、ストーリー表現は基本的にはリアルタイム での表現だが、一部の2Dアニメーションなど特殊な表現の場合にはムービー方式採用。 再生にはUE4のMedia Frameworkを使用。 神風動画様、AC部様、白組様、エド・マカリスター様と共同制作。

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その他のストーリー表現 アドベンチャーパート、NPC会話、特殊演出においては主にUMGを用いて、 カットシーンとは別のアプローチでストーリー表現を行った。

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外部プロダクションとの協業体制 本作のストーリーカットシーン、ムービーパート制作は、外部プロダクションと 弊社少人数のコアチームとの協業体制にて行った。 ■開発環境の共有 ・カットシーン制作において、VPNを通じて開発環境を共有 ・SLACKでの情報共有 ■マインドの共有 迷ったときは、振り切った方を選択する。 振り切った個性の集合で、作品としての表現の幅が生まれる。

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワークフロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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カットシーン制作のワークフロー ストーリーカットシーンは以下のワークフローに沿って制作を行った。 ① シナリオ ② 絵コンテ シナリオ 絵コンテ 音声収録 Vコンテ モーキャプ シーンレイアウト アニマティクス モーション ブラッシュアップ シーケンサー インポート インゲーム接続 VFX ③ 音声収録 ④ ビデオコンテ ⑤ モーションキャプチャ Maya ⑥ シーンレイアウト(Maya・UE) ⑦ アニマティクス(Maya) ⑧ モーションブラッシュアップ(Maya) ライティング ⑨ Sequencerにインポート(Maya・UE) UE4 ⑩ インゲームにSequencerを実装(UE) ⑪ VFX・ライティング・物理調整(UE) ⑫ 字幕・サウンド・最適化(UE) 物理調整 字幕調整 サウンド 最適化

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カットシーン制作のワークフロー ① シナリオ シナリオ作成の前段階として、主要キャラクター、背景のコンセプトアートを制作。 プロトタイプ版の開発にて、おおよその形が定まったゲーム構成に芯を通す形で作成される。

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カットシーン制作のワークフロー ② 絵コンテ FIXしたシナリオを基に絵コンテを制作。演出の方向性を打ち合わせを重ねて固める。 完成した絵コンテを元に、カットシーン全体尺の確認、必要なアセット割り出しなど作業工数精査を行い、 どうしてもコストや表現的に厳しい箇所に関しては、代替の演出方法などを検討した。

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カットシーン制作のワークフロー ③ 音声収録 本作は英語音声でのカットシーンのため、シナリオを英語翻訳したのちに、海外での音声収録を行った。 シリーズおなじみの声優キャスティングにて、絵コンテでFIXした会話時の距離感や動きに注意しながら収録。 NMH1-NMH2では、モーションキャプチャーの方を先行し、アクションによって定まった尺に合わせて 音声収録を行う方式だったが、今作ではボイスアクティングの方を優先し、音声収録を先行する方式を採用。 フェイシャルリターゲットの分析ツール用に声優さんの表情をGoProで撮影しながら収録。

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カットシーン制作のワークフロー ④ ビデオコンテ モーションキャプチャに向け、完成した絵コンテと音声収録データを元にビデオコンテを作成。 ビデオコンテは、会話のテンポや間の演出を定めるもので、この後の各シーンの尺の指標として重要な役割を持つ。

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カットシーン制作のワークフロー ⑤ モーションキャプチャ ビデオコンテを演技タイミングの指標として音声を流しながら、モーションキャプチャー収録。 キャプチャーに備えて、必要アセットの精査、シーンごとの立ち位置や接触があるオブジェクトの寸法を割り出す。 また、ボーン構造をFIXさせた仮キャラクターモデル、一部背景モデルを用意。 モーションキャプチャは、活劇座様にコーディネイト、アクション参加頂いた。

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カットシーン制作のワークフロー ⑥ シーンレイアウト(Maya・UE) モーションキャプチャーデータを基にMaya上で、シーンレイアウトを作成。 予めアンリアルエンジン上で、各カットシーンのひな型となるマスターシーケンスを作成し、 それをエクスポートした物をMayaで作業を行うベースのシーンデータとして使用。

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カットシーン制作のワークフロー ⑦ アニマティクス(Maya) Mayaから書き出したアニマティクスにて、カメラレイアウトを定める。 一部のシーンではアニメーション演技、カット割りも、キャプチャー、 Vコンテ時のものから変更することもあった。 タイミングやスケールが演技に関連するエフェクトに関しては、仮モデルにてアタリをつけた。 何度かイテレーションを重ねて、より詳細な演出内容を固めていった。

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カットシーン制作のワークフロー ⑧ モーションブラッシュアップ(Maya) カメラレイアウトがFIXした段階で、この後の工程であるUE4へのインポートを行うが、 UE4上の作業と並行して、Maya上でのモーションデータのブラッシュアップも アニメーションFIX→フェイシャルFIXと段階的に進行する。

24.

カットシーン制作のワークフロー ⑨ Sequencerにインポート(Maya・UE) シーケンサーはカスタマイズは行わずに使用。 たくさんのカット数があるシーンが多い為、マスターシーケンスにカット単位でサブトラック(Shots)を用意する形を基本とする。 Mayaから手動でインポートするには時間がかかる為、エクスポーターを作成し、 カットシーン単位で一括でFBXエクスポートした物をUE4へインポート出来るようにした。

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カットシーン制作のワークフロー ⑩ インゲームにSequencerを実装(UE) インポートしたシーケンサーを再生を行うパーシスタントレベルのサブレベルに配置し、呼び出し/完了の接続を行う。 接続に関しては、その時のゲームの状況によって、ローディングの有無/特殊なプレイヤーモード切替/ゲームプレイとの シームレス接続の有無など複数のパターンがあったため、ステージのレベルデザイナーやプログラマとのケースバイケースでの 連携が必要な箇所だった。実際にバグが多く発生した箇所のため、接続における情報共有、ルール化は次作への反省点。 シーケンサーを再生するサブレベル内のブループリントにて、シネマスコープの上下黒帯表示、サウンド/字幕呼び出し、 カットシーンスキップ時の処理、再生中のスラッシュ入力などの特殊処理を実装。 タイミングの取得が必要な場合には、シーケンサーのイベントトラックを使用。

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カットシーン制作のワークフロー ⑪ VFX・ライティング・物理調整(UE) インゲーム実装したシーケンサーのアニメーションがFIXした段階からエフェクト実装を開始。 同時並行で、ライティング、被写界深度などのポストプロセス、物理調整作業を行う。 トゥーン調のシェーディングのため、キャラクターにあたるライティングは各カット毎に光源調整を行った。 物理調整については、カットシーンではアップカットが多いため、インゲーム用の物理設定では違和感が出る箇所があった。 そのような一部のシーンのキャラにおいては、カットシーン専用のフィジックスアセットを用意することで対応した。

27.

カットシーン制作のワークフロー ⑫ 字幕・サウンド・最適化(UE) 音声は英語のみ、字幕は11言語に対応。 字幕表示のタイミングは、尺がFIXした状態のチェックムービーから割り出し、データテーブル化を行った。 エフェクトFIXのタイミングから、先行実装済のボイスデータ以外のサウンドMA作業を開始。 また、サウンドに関してはミドルウェアのWwiseを使用しており、管理上カットシーンの音声はシーケンサー上には配置せず、 プループリント上でシーケンサーの再生と同時にWwiseのAKEventを呼び出す形とした。 デバッグ期間にて、各種バグ修正、最適化を行った。

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワークフロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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カットシーン制作時の問題点と対処 カットシーン制作時に直面したいくつかの問題点と対処についての紹介。 ・工数オーバー ・揺れ物の物理制御 ・処理負荷 ・カットシーンの音ズレ

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カットシーン制作時の問題点と対処 ・工数オーバー ストーリーカットシーンの絵コンテで割り出した全体尺/アセット総量が、想定していたスケジュール工数をオーバー。 ただ単純にオーバーした箇所のボリュームを削るのではなく、表現方法のアプローチを変えることで、工数削減に対応した。 CRTモニター演出(フェイシャル工数削減) ロングショットワンカット演出(フェイシャル工数削減) マスクで口元が覆われたキャラデザイン

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カットシーン制作時の問題点と対処 ・工数オーバー プログラマ プロジェクト マネージャー キャラクター アーティスト レベルデザイナー RPGウィンドウ風演出 2Dアニメ演出への変更 一部社内スタッフによるモーションアクト

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カットシーン制作時の問題点と対処 ・揺れ物の物理制御 基本的にサブシーケンス単位でSpawnableでアクターを配置していたのと、アニメーションのルートポジションが キャラの足元の原点とはズレていた影響でカット毎にキャラの立ち位置が瞬間移動し、揺れ物が暴れてしまう箇所があった。 処理負荷が影響して揺れ物が暴れてしまう事があり、日々のアセット更新による変化によって開発終盤まで対処した箇所だった。 実機でのテストプレイにて発生した暴れを都度調整という手法で対処したが、有効だった調整方法として Set Simulate Physics の開始タイミングを少し遅らせるのがシンプルで一番効果的だった。

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カットシーン制作時の問題点と対処 ・処理負荷 揺れ物の問題とも関連するが、カットシーン再生中に発生するヒッチ対応のため 開発終盤まで処理負荷の最適化を行っていた。 特に気づきにくかった問題としては以下の原因があった。 ・Spawnableアクターが多いとサブシーケンス再生開始時(カットチェンジ時)に負荷が強い ・モーションのエクスポートミスで高フレームレートになっているデータが存在し、再生時に負荷があった 上記を修正する事で、カットチェンジ時のヒッチを抑えることが出来た。 開発終盤での対応となってしまったため、次回作では早めのプロファイリングによる原因調査を行いたい。

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カットシーン制作時の問題点と対処 ・カットシーンの音ズレ サウンドミドルウェアのWwiseを使用しており、管理上カットシーンの音声はシーケンサー上には配置せず、 プループリント上でシーケンサーの再生と同時にWwiseのAKEventを呼び出す形とした。 実機でのカットシーン再生時に、わずかに音が遅れてズレが生じているという問題がプロジェクト終盤に多く発生。 原因を調査した所、サウンドデータの読み込み時間による影響だったため、AKEventのCallBackを待ってからシーケンサーを 再生する事で解決することが出来た。

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本日の内容 ■『NO MORE HEROES 3』の紹介 ■ストーリー表現のカテゴリ ■カットシーン制作ワーククロー ■カットシーン制作時の問題点と対処 ■まとめ

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まとめ ・制作パイプライン自体に独自性は存在していない。 ・シナリオを核としつつ、そこに外部プロダクションとの相互作用や 開発チーム内での工夫が織り交ざり、独自性として磨かれていくのでは、と考えます。 以上となります。 本セッションが少しでも皆様のお役に立てれば幸いです!

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最後に

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新規開発スタッフ募集中です! 現在弊社グラスホッパー・マニファクチュアでは、新規プロジェクトの立ち上げに伴い 新規開発スタッフを募集しております。 もしも、ご興味のある方は是非弊社HPをご参照ください。 https://www.grasshopper.co.jp/ 世界中のゲーマーを驚かせるビデオゲームを一緒に作りましょう!