カーボンニュートラル社会を実現するエネルギー設備導入計画

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February 22, 24

スライド概要

2023年2月22日(木)開催のJST新技術説明会での講演資料。
神奈川大学電力・エネルギーシステム研究室が有する技術シーズのうち,エネルギーミックス最適化モデルについて紹介しています。

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神奈川大学工学部准教授。電力・エネルギーシステム研究室を主宰。電力システム工学,オペレーションズ・リサーチが専門。電力需給シミュレーションや再生可能エネルギーの発電運用最適化,エネルギーデータの確率モデリングに関する研究に従事。 研究室サイト:https://powersysgroup.jp/

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各ページのテキスト
1.

カーボンニュートラル社会を実現する エネルギー設備導入計画技術 工学部 電気電子情報工学科 准教授 根岸信太郎 1

2.

研究背景(社会ニーズ) • 気候変動対策としてカーボンニュートラルな エネルギー供給体制への転換が必要 • 日本では2050年にカーボンニュートラルを達成することを宣言 2030年には,2013年比46%のCO2排出量削減 SDGsにもエネルギー技術に関する項目が設定 2

3.

研究背景(社会ニーズ) • 低炭素電源の代表である太陽光発電(PV)や風力発電のような 変動性再生可能エネルギー(VRE)中心のエネルギー供給体制実現に 向けてエネルギーミックスの長期的な移行計画を立てる必要 • VRE普及に伴って電力需給での「調整力」必要量が増加 • スポット市場や需給調整市場をはじめとしたエネルギー関係制度が 複雑化しているため,設備投資に関係する収益性や コストパフォーマンスが見通しにくい 3

4.

研究背景(社会ニーズ) 従来 需要ピーク 揚水式など 水力発電 従来の電力システムが 負担する電力 将来 太陽光発電 石油 需要曲線 揚水用動力 火力発電 LNG 揚水用動力 火力発電 石炭 原子力発電 原子力発電 流込式水力発電 流込式水力発電 0時 6時 12時 18時 24時 0時 6時 12時 18時 24時 電力需給で最後のしわ取りを行い 周波数の維持を担当するのが「需給調整力」 PV・風力発電の 導入量増加 短周期変動が増大・予測誤差の対応に 必要な調整力容量がより必要になる 火力発電機の 運転台数が減少 火力機の運転が減少し 調整力そのものが減少する 4

5.

研究背景(社会ニーズ) カーボンニュートラル社会での「調整力」の確保 • 需要家側の協力を得て電力需要を増減させるデマンドレスポンス(DR) • 早い応答時間で充放電が可能な蓄電設備の設置 • PV・風力発電の発電出力制御 • 火力発電に関わる炭素回収・再利用サイクル(メタン・アンモニア) 社会全体でみたときの疑問点 色々なエネルギー技術があるけれど… どの技術を,いつごろ,どれくらい導入していけばよいのかわからない 長期的な電力・エネルギー需給の模擬ができ,経済的・環境的価値の評価ができる ディスパッチシミュレーションツールが必要 5

6.

エネルギーディスパッチシミュレーションとは? ある地域での電力需要に対するディスパッチ例 • 電気もしくは熱需要に対してどのエネルギー源を割り当てるか (ディスパッチするか)を決めるシミュレーション技術 • 1日~数日単位では発電機の運用計画などに利用 • 数年以上の単位では電源の設備計画などに利用 6

7.

従来技術とその問題点 従来のディスパッチシミュレーションツール • Times:国際エネルギー機関(IEA)が開発 エネルギー利用技術や最終エネルギー技術を総合的に評価可能 • BALMOREL:Elkraft Systemが開発 電気及び熱需要に関する分析に特徴 電力セクタを分析する際の課題 • 代表日による分析:長期の分析を行う際は,計算負荷に合わせて 1年のうち数日の代表日を使った分析 発電機や蓄電設備の運用(メンテナンス・日をまたぐ蓄電)が 考慮できない • 需給調整力の考慮:時間ステップ内の需要や再エネ発電出力は既知かつ 固定であると想定 短周期的な変動に対応して周波数を安定させるための 「需給調整力」も含めて評価することが考慮できない 7

8.

新技術の特長・従来技術との比較 【本研究室の新技術】長期エネルギーディスパッチ シミュレーション技術 数理最適化をベースとした 長期間のエネルギーディスパッチシミュレーション技術 時間粒度:1時間(1年8,760時間) シミュレーション期間:数十年 高時間解像度で 長期間の分析が可能 各時間ステップで 需給調整力容量確保の制約 安定した電力供給が 可能な容量を評価可能 メンテナンス期間の確保や 蓄電設備運用の制約を導入 より実運用に近い コスト評価が可能 8

9.

技術内容 システムの入力と出力 入力データ • 長期エネルギーディスパッチ シミュレーション技術 エネルギー設備価格 長期シナリオ • 燃料価格長期シナリオ • 年間CO2排出量制約 • 電力需要データ • PV,WP発電出力 エネルギーミックス 最適化モデル 広域的電力需給 解析モデル プロファイル • (オプション)環境省 再エネ導入シナリオ 2つのモデルで シミュレーションを実施 出力データ • 各年の設備導入量 • 各時刻の設備運用 (発電量・充放電量・ 需給調整力) • CO2排出量 • 発電コスト • 各時刻のマージナル コスト (電力価格) 9

10.

技術内容 長期エネルギーディスパッチシミュレーション技術の全体像 10

11.

技術内容 数理最適化とは? 最適化問題と呼ばれる数理モデルをアルゴリズムを用いて解く方法 最適化問題:制約条件𝑆を満たす決定変数𝒙のうち,目的関数𝑓 𝒙 を 最小にする解𝒙∗ を求める問題 例えば「〇年目の設備容量」, 「時刻〇の発電出力」 Minimize 𝑓 𝒙 目的関数 例えば「コストを最小化する」 subject to 𝒙∈𝑆 決定変数 制約条件 例えば「予算は〇〇円」, 「機械の生産能力は〇〇以下」 11

12.

技術内容 エネルギーミックス最適化モデル 数十年単位の期間の電源容量および運用を1時間粒度で最適化 CO2排出量削減目標を達成するための電源計画・運用の変化を評価可能 需給調整力の確保も明示的に盛り込んでいる点に特徴 目的関数 割引率付き評価期間内の総コスト(設備費+燃料費) → 最小化 汎用性の高い線形計画問題(LP)として定式化 制約条件 • 需給バランス制約 • 必要調整力(上げ/下げ)の 容量確保制約 • 出力上下限制約 • 予備力制約 • 年間設備利用率制約 • メンテナンス制約 • 年間CO2排出量制約 決定変数 • 各年の設備容量(火力機・原子力機・ 揚水機・再エネ・蓄電池 etc…) • 各種別の発電出力・充放電電力 • 発電機調整力提供量(上げ/下げ) • 太陽光・風力発電の出力抑制量 • CO2排出量 12

13.

技術内容 広域的電力需給解析モデル 日本全国の発電機運用を1時間粒度,1台レベルで最適化 独自のモデリングで,求解精度を落とさずに最適化に必要な時間を大幅に削減 目的関数 1日の発電機運用コスト(燃料費+起動費) → 最小化 燃料費関数を線形化し,混合整数線形計画問題(MILP)として定式化 制約条件 • 需給バランス制約 • 必要調整力(上げ/下げ)の 容量確保制約 • 発電機出力上下限制約 • 起動停止変数制約 • メンテナンス制約 • マストラン制約 • 連系線運用制約 決定変数 • 発電機(火力機・原子力機・ 揚水機)発電出力 • 発電機調整力提供量(上げ/下げ) • 発電機起動停止変数 • 連系線計画潮流 • 連系線による調整力の地域間融通容量 • 地域間での調整力融通時における連系 線の最大潮流変化量 13

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アウトプット例 技術内容 各年の 発電機容量 (導入計画) シナリオ別の 発電量 14

15.

想定される用途 【入力】 機器のエネルギーフロー シナリオに基づく 固定費・可変費 新規エネルギー技術の 事業性・政策評価 【出力】 年ごとの導入見込量 システム内での運用 コストパフォーマンス 【入力】 エネルギー需要パターン 街づくりにおける エネルギー機器の選択肢 予算の制約 エネルギー供給システムの 長期デザイン 【出力】年ごとの設備計画 システム内での運用 コストパフォーマンス 15

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実用化に向けた課題 計算コスト上昇対策 • 計算年数,対象技術の増加による計算コスト (特にメモリ不足)への対応 • 計算時間短縮に向けたモデリング 外部化している要素の内部化 研究室で有している ラックサーバ • 現状は電力セクタに限定したモデル化 • 他のエネルギー需要とのカニバリは考慮できない • 他産業の経済状況も含めたモデルへの拡張 16

17.

企業様への期待 • 新規エネルギー技術のコスト感やエネルギーフローを 提供いただき,国内もしくは国外のシェア獲得に向けた 戦略作成をお手伝いさせていただきたい • 共同研究,委託研究でのシナリオ分析も可能 • 御社の技術者を研究員として派遣いただき,本モデルを 使用しながら分析を行っていただくことも可能 17

18.

お問い合わせ先 神奈川大学 研究推進部 産学官連携課 TEL 045-481 - 5661 FAX 045-481 - 6077 e-mail sankangaku-renkei@kanagawa-u.ac.jp 18