研究とメディア活動を両立するための3つのコツ

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April 30, 23

スライド概要

2016年9月11日(日)に早稲田大学で開催された「日本経済学会秋季大会」のチュートリアル・セッション
【若手・女性研究者のための特別セッション|座長:井深陽子氏(慶應義塾大学)】
で使用した報告用スライドです。学会情報は以下の公式サイトをご参照ください:
http://www.jeameetings.org/2016f/index.html

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

研究とメディア活動を 両立するための3つのコツ 安田洋祐 | 大阪大学 1 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

2.

講演の流れ  経済学会と経済論壇を繋ごう  研究しながらメディアに出る  経済論壇のジレンマ<理論分析>  みなさんへのメッセージ 2 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

3.

安田のスケジュール(最近2週間)  8月29日(月):有斐閣にて教科書(共著)執筆 8月30日(火):とくダネ!出演、共同研究、オイコノミア打ち合 わせ、欲望の資本主義打ち合わせ 9月3日(土):大学院入試面接 9月5日(月):週刊東洋経済インタビュー収録 9月6日(火):とくダネ!出演 9月8日(木):教授会 9月9日(金):研究会(報告)、研究会(委員) 9月10〜11日:日本経済学会 (9月13日:とくダネ!出演、オイコノミア打ち合わせ)  メディア関係ー6(+2)件、それ以外ー6件         3 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

4.

経済学会と経済論壇を繋ごう 4 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

5.

経済学研究者のよくある誤解  一般の方も誰がまともな研究者かくらい判断できる     できない! → 調べるコストが大きい 「メディアに出ている経済学者がエラい先生」 バランスを欠く見方が学問的知見として広まる危険性 研究系の経済学者を使わないのはメディア側の問題     5 そうでもない! → きちんとした専門家へのニーズは大きい 供給側の問題:「メディアに出るのは堕落・時間のムダ」 理系におけるサイエンス・ライターの不在 メディア系学者の内部で仕事を紹介し合う悪循環 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

6.

情報の非対称性 → 解消できる?すべき?  一般の読者・視聴者    メディア・論壇系経済学者    最新学説や経済学の全体像をよく知らない しかし、一般読者の関心やケンカ(論争)に強い 研究系経済学者    誰が研究実績のある経済学者か分からない しかし、経済や経済学に関するニーズは強い メディアでの情報発信への関心や手段に乏しい しかし、最新学説や経済学の全体像には詳しい なぜ役割分担が固定されてしまったのか?  6 解決策を含めて<理論分析>で検討! 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

7.

研究しながらメディアに出る 7 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

8.

研究とメディア活動を両立する3つのコツ 1. 研究時間を作る 2. 研究グセをつける 3. 満足感・達成感を下げる 8 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

9.

1. 研究時間を作る  予定を立てる   スケジュール管理の単純・ 短縮化   Google Calendarを共有 増える依頼をきちんと断る   9 「空いている時間にまとめて やろう!」はNG 依頼主は増える仕事が他の 活動に与える(負の)影響を 考慮せずに連絡してくる → 放っておくと過剰に どのように取捨選択すれば良 いだろうか? 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

10.

アリエリー教授のアドバイス  何か頼みごとをされるた びに、「来週だったらどう するか」を考える。    時間を作りたい→OK 他の約束より優先できない →NG 予定表を見てその日に動 かせない予定が入ってい た(例:出張だった)ことに 気づいたと想像。   10 残念に感じる→OK ホッとする→NG 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

11.

2. 研究グセをつける  文献調査&検討 → 執筆・編集   頭を動かすことよりも手を動かすことが重要! 共同研究  定期的に会合を入れる=コミットメント  セミナー・学会参加  レフェリー 11 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

12.

3. 満足感・達成感を下げる  研究以外からの満足感は禁物!   同世代で活躍する研究者のcvを見て凹む   講義ノートの作成、メディア原稿の執筆、ゼミ生の活躍、etc (研究への渇望を阻害するリスク大) いかに研究をサボっているかが客観視できる とにかく投稿し続ける  12 レフェリーからのダメ出し → (適度に)自信を無くせる 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

13.

経済論壇のジレンマ<理論分析> 13 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

14.

経済論壇のジレンマ    あるメディア(出版社)が経済書の執筆者を探している 2人の経済学者 ー 真の経済学者とダメな経済学者 ー が執筆者の候補に挙がった 彼らはどちらが真の経済学者かを知っているが、出版社 は知らない この時、出版社は真の経済学者に執筆を依頼すること ができるだろうか?  メカニズムデザイン(遂行理論)によって分析!  14 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

15.

経済論壇のジレンマ:解題(1)  実現可能な結果は以下の3つとする     社会の状態(私的情報)には2通りの可能性    a:経済学者Aに依頼する b:経済学者Bに依頼する c:第3者(素人/評論家)に依頼する X:「Aが真の経済学者」 Y:「Bが真の経済学者」 出版社(経済論壇)の目的   15 真の経済学者に依頼する:X → a, Y → b この目的は果たして達成できるだろうか? 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

16.

経済論壇のジレンマ:解題(2) Aが真の経済学者の場合(X)    Aの選好:a > b > c Bの選好:b > c > a Bが真の経済学者の場合(Y)    Aの選好:a > c > b Bの選好:b > a > c 選好パターンの解釈     真の学者は素人よりもマシなダメな学者を好む ダメな学者は専門家からの批評や糾弾を恐れる 実は、出版社の目的は絶対に達成できない! (どんなメカニズムを使ってもナッシュ遂行できない) 16 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

17.

経済論壇のジレンマ:解題(3) Aが真の経済学者の場合(X) → aを実現したい    Aの選好:a > b > c Bの選好:b > c > a Bが真の経済学者の場合(Y) → aの望ましさは上昇    Aの選好:a > c > b Bの選好:b > a > c マスキン単調性=ナッシュ遂行の必要条件      17 Xでaが選ばれるなら、Yでもaが引き続き選ばれる そうでない目的はナッシュ均衡によって遂行できない (出版社の目的はマスキン単調性を満たさない) しかし、出版社にはさらなる悲劇が… 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

18.

現実的なメカニズム(ゲーム型式) B 名乗り出る 相手に譲る A 名乗り出る c a 相手に譲る b c 18 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

19.

Aが真の学者である場合(X)の利得表 A B 名乗り出る (支配戦略) 名乗り出る 1 0 相手に譲る 0 2 ナッシュ均衡 2 1 19 相手に譲る 1 0 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

20.

経済論壇の悲劇  真の経済学者Aではなく、ダメな経済学者Bが選ばれる のが唯一のナッシュ均衡  真の経済学者がBの場合には、Aが選ばれてしまう  現実的なメカニズムのもとでは、常にダメな経済学者が 仕事を依頼されてしまう!  著者自身からの申し出に頼るようなナイーブな依頼方法 だとダメな経済学者の本ばかり出版する羽目になる!?   ダメな経済学者は「名乗り出る」のが支配戦略! 現実的な解決策はあるか? 20 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

21.

解決策!? 新たな結果(d)の導入 Aが真の経済学者の場合    Aの選好:a > d > b > c Bの選好:b > c > a > d Bが真の経済学者の場合    Aの選好:a > c > b > d Bの選好:b > d > a > c 新たな結果 d の解釈     21 ダメな学者批判で有名な辛辣な学者への執筆依頼 辛辣な学者への書評依頼を事前にコミット (その上でAとBどちらに依頼するかはランダムに決定) マスキン単調性が満たされるように! 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

22.

新たなメカニズム B 名乗り出る 相手に譲る A 名乗り出る d a 相手に譲る b d 22 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

23.

Aが真の学者の場合(X)の利得表 B 名乗り出る 相手に譲る A 名乗り出る (支配戦略) ナッシュ均衡 0 2 相手に譲る 3 2 1 23 1 0 2 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

24.

経済論壇の平和  真の経済学者Aが選ばれるのが唯一のナッシュ均衡に  真の経済学者がBの場合も、きちんとBが選ばれる  修正版メカニズムのもとでは、常にきちんと真の経済学 者が仕事を依頼される!  研究業績や研究者としてのキャリアがあり、労を厭わず にダメな経済学(者)批判を行う人物がキーパーソン   存在自体が鍵!(均衡経路においては何もしなくて良い) ダメな経済書に批判の声を上げることで、ダメな経済学 者の影響が下がり、質の高い情報発信に繋がる? 24 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

25.

みなさんへのメッセージ 25 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

26.

「加藤陽子氏に聞く」(週刊東洋経済9月10日号)   26 歴史書は今、自虐史観や 「世間学問知」がお花畑 状態にあるようだ。 実証的に支持されないこ とを言っていれば職を失う 立場にある人間が、まじ めに書いているから安心 といわれながら、「学説 知」と「世間学問知」の間 を信頼感で埋める役割を 担えればいいと考えてい る。 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

27.

経済論壇では…  経済書も、極論や「オレ流経済学」でお花畑状態では?  専門知と極論・オレ流の間を信頼感で埋めよう!  今すぐできること    27 メディア発信する経済学者の間接的サポート (情報拡散、炎上回避の助け舟、建設的コメント) ダメな経済書・議論をスルーせずにNo! (なぜダメなのか論拠を提示、「教科書嫁」は逆効果) 中身の優れた非経済学者とのコラボ (経済学の方法論は敵対するための武器ではない) 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

28.

最後にお願い 安田から 「執筆・登壇・出演」 などのお願いがあった 場合は、ぜひぜひお引 き受けください m(._.)m 28 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月

29.

参考リンク集  研究者のメディア活動について    経済学者リスト(安田作成)     http://www.gaya.jp/media/what_is_science.htm 東京大学の池谷裕二教授(薬学)によるサイト。 国内: https://sites.google.com/site/economistsjapan/list2 海外: https://sites.google.com/site/economistsjapan/list 注意書きを読みご参考ください。改訂情報順次募集中! IDEAS: Top 25% Institutions and Economists in Japan  29 https://ideas.repec.org/top/top.japan.html 日本経済学会@早稲田大学 2016年9月