目からウロコのモラルハザード解決法

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November 20, 23

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情報の非対称に関する重要なクラスの問題である「モラルハザード」について解説したスライドです。安田自身の学術研究についても触れています。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

目からウロコのモラルハザード解決法 ~報酬総額にコミットせよ!~ 安田洋祐 大阪大学 大学院経済学研究科 准教授 Eメール: [email protected] ウェブ: https://yagena.github.io/jp/ 2023年11月 1

2.

スライドの流れ 1. モラルハザード問題とは何か? 2. モニタリング vs モチベーション 3. インセンティブ契約の落とし穴 4. 目からウロコの解決法!! 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 2

3.

何が分かるのか 1. モラルハザード問題とは何か? – 「モラル」は関係ない、情報の非対称性が鍵 2. モニタリング vs モチベーション – リモートワークが進まない? ス〇バの時給は安い? 3. インセンティブ契約の落とし穴 – そもそも“契約”が結べない場合にどうする? 4. 目からウロコの解決法!! – 報酬総額にコミットする 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 3

4.

モラルハザード問題とは何か? 「モラル」は関係ない 情報の非対称性が鍵 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 4

5.

モラルハザード問題の例 経済問題 • <問題>外回りの営業マンが勤務時 間中に仕事をサボる 医療問題 • <問題>医師や薬剤師が治療に必要 な量以上の薬を患者に与える – 【原因】上司が部下の努力を直接観察す ることができない – 労働生産性が上がらない… – 【原因】患者は医師・薬剤師の診断が適切 かどうかが分からない – 薬の過剰摂取が止まらない… • <問題>CEOが短期的な利益を上げ る経営にばかり注力する – 【原因】株主がCEOの仕事ぶりを細かく把 握することができない – 会社の屋台骨がぐらつく… 2023年11月 • <問題>自己負担が少ない患者が必 要以上のサービスを需要する – 【原因】医師は患者の病状が深刻かどう か(すぐには)分からない – 医療資源の逼迫が進んでいく… 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 5

6.

情報の非対称性 非対称情報が発生するタイミングが (Aさん:私的情報を持つ、Pさん:持たない) • 取引の前:アドバースセレクション – 市場で多数が同時に取引:レモン市場 – Aさんが先に行動する:シグナリング – Pさんが先に行動する:スクリーニング • 取引の後:モラルハザード – PさんがAさんの振る舞いを観察できない 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 隠された情報 [Hidden Information] →例)Aの能力や好み 隠された行動 [Hidden Action] →例)Aの努力や準備 6

7.

情報の非対称性 非対称情報が発生するタイミングが (Aさん:私的情報を持つ、Pさん:持たない) • 取引の前:アドバースセレクション – 市場で多数が同時に取引:レモン市場 – Aさんが先に行動する:シグナリング – Pさんが先に行動する:スクリーニング モラル(道徳) は関係ない! • 取引の後:モラルハザード – PさんがAさんの振る舞いを観察できない Principal-Agent モデル 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 7

8.

典型的なモラルハザード問題 • Agent(代理人) – 観察不可能な努力水準 e を決定 – 観察可能な売上 x が確率的に実現 – 売上を見ても努力は正確に分からない… • Principal(依頼人) – 賃金契約 w(x) を提示 – 間接的に努力水準に影響を与える 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 8

9.

様々なモラルハザード問題 P 2023年11月 A e 『ミクロ経済学の力』(神取道宏)より引用 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) x 9

10.

標準的な問題:インセンティブとリスク負担 2023年11月 『ミクロ経済学の力』(神取道宏)より引用 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 10

11.

今回の問題:成果を立証できない/主観的評価 依頼人が成果を偽らない インセンティブの供与 2023年11月 二重モラルハザード 『ミクロ経済学の力』(神取道宏)より引用 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 11

12.

モニタリング vs モチベーション リモートワークが進まない? ス〇バの時給は安い? 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 12

13.

固定給 w のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A Yes 給料は w でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 13

14.

ゲームを後ろから解く ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・同じ利得なら努力する ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A w ≧ w-1 Yes 給料は w でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 14

15.

ゲームを後ろから解く ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A w ≧ w-1 Yes 給料は w でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 15

16.

ゲームを後ろから解く w ≧ 1 の場合 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・同じ利得ならOKする ・よそで働く利得は 1 H P A A 給料は w でどう? (5-w, w-1) Yes No 1≦w (0, 1) 2023年11月 L (-w, w) 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 16

17.

ゲームを後ろから解く w ≧ 1 の場合 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A 給料は w でどう? (5-w, w-1) Yes No 1≦w (0, 1) 2023年11月 L (-w, w) 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 17

18.

ゲームを後ろから解く w ≧ 1 の場合 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A 給料は w でどう? (5-w, w-1) Pは赤字(–w)! Yes No 1≦w (0, 1) 2023年11月 L (-w, w) 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 18

19.

ゲームを後ろから解く w < 1 の場合 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A 給料は w でどう? (5-w, w-1) Aを雇えない… Yes No 1>w (0, 1) 2023年11月 L (-w, w) 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 19

20.

どうやって努力させるのか? 1. Aの行動をモニタリングする – Lを見つけたら –z だけおしおきする 2. 内発的動機(モチベーション)を引き出す – Hを選ぶとAの利得が y だけ上がる 3. 成功報酬(インセンティブ)を与える – 成功したときに b だけ報酬を与える 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 20

21.

固定給(w)+モニタリング(-x) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A Yes 給料は w でどう? No L (-w, w-z) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 21

22.

固定給(w)+モニタリング(-x) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A w-1 ≧ w-z ⇔ z ≧ 1 なら Yes 給料は w でどう? No L (-w, w-z) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 22

23.

固定給(w)+モニタリング(-x) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A (5-w, w-1) [インセンティブ条件] Yes 給料は w でどう? No L w-1 ≧ w-z ⇔ z ≧ 1 なら (-w, w-z) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 23

24.

固定給(w)+モニタリング(-x) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1) A A w-1 ≧ 1 ⇔ w ≧ 2 なら Yes 給料は w でどう? No [参加条件] L (-w, w-z) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 24

25.

最適なモニタリング • おしおきを十分大きく(z ≧ 1)にする • 固定給はギリギリAが受け入れる水準 ⇒ w=2 • Pの利益は 5-2=3 となる • <問題点> – モニタリングできない ⇒ リモートワークが進まない理由? – おしおきにもコストがかかる(追い出し部屋、訴訟リスク…) – Aのモチベーションが低下する危険性 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 25

26.

固定給(w)+モチベーション(y) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1+y) A A Yes 給料は w でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 26

27.

固定給(w)+モチベーション(y) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1+y) A A w-1+y ≧ w ⇔ y ≧ 1 なら Yes 給料は w でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 27

28.

固定給(w)+モチベーション(y) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A (5-w, w-1+y) [インセンティブ条件] Yes 給料は w でどう? No L w-1+y ≧ w ⇔ y ≧ 1 なら (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 28

29.

固定給(w)+モチベーション(y) ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w, w-1+y) A A w-1+y ≧ 1 ⇔ w ≧ 2-y なら Yes 給料は w でどう? No [参加条件] L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 29

30.

最適なモチベーション • モチベーションを十分(y ≧ 1)高める • 固定給はギリギリAが受け入れる水準 ⇒ w=2-y • Pの利益は 5-(2-y)=3+y ≧ 4となる • <注意点> – Pの利益は大きく、Aの利得は1(モニタリングと同じ) – 給料 w はとても低い ⇒ ス〇バの時給が低い理由? – y が高いと w はマイナスに! ⇒ オンラインサロンが最強!? 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 30

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インセンティブ契約の落とし穴 そもそも“契約”が結べない時にどうする? 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 31

32.

努力と成果は完全には一致しない ・平均的な売上は 5 ← 結果はいろいろ ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w-a, w-1+a) A A 努力したらボーナス(a) ⇒ 無効な契約 Yes (w, a) でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 32

33.

売上は確率的に決まる Aが努力しない(L)場合 • 0 ・・・ 100% (必ず“失敗”とも解釈できる) ⇒ 売上の期待値は0 Aが努力する(H)場合 • 0 ・・・ 50% ← 失敗 • 10 ・・・ 50% ← 成功 ⇒ 売上の期待値は 5 売上が 0 になる可能性 (1) Aが努力していない (2) 努力したけれど失敗した 2023年11月 (1)と(2)を区別することができない ⇒ 成功報酬を払えば問題解決!? 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 33

34.

インセンティブ契約(w, a)のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 (S→10, F→0) ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 Nature = 自然 S (50%) N 成功したらボーナス(a) ⇒ 有効な契約 H P A A No (-w, w-1) F (50%) 失敗したらボーナス無し ⇒ リスクが大きい Yes (w, a) でどう? (10-w-a, w-1+a) L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 34

35.

インセンティブ契約(w, a)のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 → 期待値で評価 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 リスクの問題は忘れる (Aはリスク中立的) H P (5-w-0.5a, w-1+0.5a) A A 成功したらボーナス(a) ⇒ 期待利得が 0.5a↑ Yes (w, a) でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 35

36.

インセンティブ契約(w, a)のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w-0.5a, w-1+0.5a) A A w-1+0.5a ≧ w ⇔ a ≧ 2 なら Yes (w, a) でどう? No L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 36

37.

インセンティブ契約(w, a)のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P A A (5-w-0.5a, w-1+0.5a) [インセンティブ条件] Yes (w, a) でどう? No L w-1+0.5a ≧ w ⇔ a ≧ 2 なら (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 37

38.

インセンティブ契約(w, a)のゲーム理論分析 ・平均的な売上は 5 ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 H P (5-w-0.5a, w-1+0.5a) A A w-1+0.5a ≧ 1 ⇔ w ≧ 2-0.5a なら Yes (w, a) でどう? No [参加条件] L (-w, w) (0, 1) 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 38

39.

最適なインセンティブ契約 • ボーナスはギリギリAが努力する水準 ⇒ a=2 • 固定給はギリギリAが受け入れる水準 ⇒ w=1 • Pの期待利益は 5-(1+0.5×2)=3 となる • <注意点> – 努力しても結果に応じて異なる報酬 → リスク負担 – 成果に影響しないタスクが疎かに → マルチタスク – 結果が観察できても立証できない可能性 → 主観評価 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 39

40.

マルチタスク問題 2016年ノーベル経済学賞の Popular Science Background https://www.nobelprize.org /uploads/2018/06/populareconomicsciences2016.pdf 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 40

41.

主観評価の問題:成果を立証できない 依頼人が成果を偽らない インセンティブの供与 2023年11月 二重モラルハザード 『ミクロ経済学の力』(神取道宏)より引用 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 41

42.

目からウロコの解決法!! 報酬総額にコミットする 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 42

43.

二重モラルハザードを防ぐには? 1. コミットメント – 売上を捨てる(Money Burning) – 昇進か辞職か(Up or Out) 2. 長期的関係 – 関係的契約(Relational Contract) 3. 相対評価にコミット – トーナメント方式 – 報酬総額が一定 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 43

44.

二重モラルハザードを防ぐには? 1. コミットメント – 売上を捨てる(Money Burning) → 無駄が発生 – 昇進か辞職か(Up or Out) → 無駄が発生 2. 長期的関係 – 関係的契約(Relational Contract) → 割引率に依存 3. 相対評価にコミット → 複数のAgentが必要 – トーナメント方式 → 努力を十分に引き出せない – 報酬総額が一定 → 最適なインセンティブ契約! 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 44

45.

Agentが2人(AとB)の場合 • A(/B)に対して個別にインセンティブ契約 – 成功を失敗と偽ることで成果報酬を節約できる – 二重モラルハザード問題が発生 • AとBへの報酬を全体の結果に依存させる – (S, S)、(S, F)、(F, S)、(F, F)の4パターン – もしすべての結果で報酬総額が同じならば… – Pに結果を偽るインセンティブが生じない – 二重モラルハザード問題が解消! 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 45

46.

Aさんの最適なインセンティブ契約(w, a) ・平均的な売上は 5 (S→10, F→0) ・努力するコストは 1 ・よそで働く利得は 1 S (50%) (10-w, w-2+a) F (50%) (-w, w-2) N H P A A Yes (w, a) でどう? No (0, 1) 2023年11月 L (-w, w) ⇒ (w, a) = (1, 2)が最適! 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 46

47.

Bさんの最適なインセンティブ契約(w’, b) ・平均的な売上は 5 (S→8, F→2) ・努力するコストは 0.5 ・よそで働く利得は 2 S (50%) (8-w, w-0.5+b) F (50%) (2-w, w-0.5) N H P B B Yes (w, b) でどう? No (0, 2) 2023年11月 L (2-w, w) ⇒ (w’, b) = (2, 1)が最適! 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 47

48.

支払総額一定:最適な相対評価 B A S F S F w’+b+{w-(w+a)} w+a+{w’-(w’+b)} w’+{w-(w+a)} w+a+(w’-w’) w’+b+(w-w) w+{w’-(w’+b)} w’+(w-w) w+(w’-w’) ・w = w + 0.5a ・・・ Aへの期待支払い額 ・w’ = w’ + 0.5b ・・・ Bへの期待支払い額 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 48

49.

支払総額一定:最適な相対評価 B S A S F 2 2.5 1 3.5 4 0.5 ・w = w + 0.5a = 2.5 ・w’ = w’ + 0.5b = 2 2023年11月 F 3 1.5 支払い総額は一定 ⇒ w + w’ = 4.5 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 49

50.

支払総額を一定にするカラクリ Aに対する支払い • モラルハザード問題 – 最適な契約: w(x) Bに対する支払い • モラルハザード問題 x : Aの結果 • 二重モラルハザード問題 – w(x) + {w’ – w’(x’)} – 最適な契約: w’(x’) • 二重モラルハザード問題 – w’(x’) + {w – w(x)} 期待値 0 2023年11月 x’ : Bの結果 期待値 0 Aへの支払い + Bへの支払い = w(x) + {w’ – w’(x’)} + w’(x’) + {w – w(x)} = w + w’ ⇒ 結果 (x, x’) によらず一定! 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 50

51.

関連研究 • Carmichael, H. L. (1983). The agent-agents problem: Payment by relative output. Journal of Labor Economics, 1 (1), 50-65. – 対称的なエージェントを仮定し、望ましい相対賃金について分析。 – リスク中立な場合に総額報酬が一定 → 我々の(特殊)ケースに一致。 • Rajan, M. V., & Reichelstein, S. (2006). Subjective performance indicators and discretionary bonus pools. Journal of Accounting Research, 44 (3), 585-618. – 対称的かつ(相対的)リスク回避度一定のエージェントを仮定。 – 報酬総額一定という制約のもとで、“最適な”契約を導出。 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 51

52.

続きが気になる方はぜひ論文を! • Moral Hazard and Subjective Evaluation – 石黒真吾氏(大阪大学)との共同研究 – https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3839295 Shingo Ishiguro and Yosuke Yasuda. "Moral hazard and subjective evaluation." Journal of Economic Theory 209 (2023): 105619. ご清聴ありがとうございました m(__)m 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 52

53.

参考文献 - 情報の経済学/契約理論の代表的テキスト 2023年11月 安田洋祐(大阪大学・エコノミクスデザイン) 53