カタトニア

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March 13, 24

スライド概要

NEJMのカタトニアのレビューです。救急外来、病棟、精神科でのカタトニアと他疾患の鑑別、治療法についてまとめています。
カタトニア徴候の出現頻度や、原因となる身体疾患など身体疾患の除外が必要となることなどを学びました。

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某病院精神科後期研修医が運営するアカウントです。日々の勉強会の内容など情報発信をしていきますので、 よろしくお願い申し上げます。

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各ページのテキスト
2.

Background • カタトニアはコモンな疾患であるが、その理解は不十分な点が多い。 • 多くの医師はカタトニアは統合失調症の稀な病型と誤解しているが、 • DSM-5,ICD-11では緊張病は気分障害や統合失調症と並ぶ独立した診断 対象としている。

3.

Background • カタトニアに関する神経科学的研究の必要性が認識され、国立精神・神 経医療研究センター(NIH)は、カタトニアの臨床試験を開始した。 • このような最近の動向にも関わらず、カタトニアがしばしば認識されな いのにはいくつかの理由がある。

4.

Background • 第一に、重症度が数時間しか続かない微かな行動異常から、悪性、時に 致死的なものまで多様であること。 • 第二に、臨床的特徴が茫然自失から激越、スムーズな会話から何時間も 続く緘黙と様々に変動することが挙げられる。 • カタトニア患者は周囲や他人と関わらないため、病歴聴取することが困 難であり有病率の推定は9%~30%とされている。

5.

カタトニアの徴候 凝視 視線固定、まばたきの減少 昏睡 緘黙 運動なし、外部刺激に反応しない 理解できない発話、または発話なし 姿勢 自発的な姿勢の維持

6.

カタトニアの徴候 相反する目標についての優柔不断、ためらう動き 両価性 拒絶 常同 要求と反対の行動をとる 繰り返される無目的な振舞い 筋強剛 興奮 しかめ面 筋緊張の亢進、軽度から鉛管硬直まで 非目的な運動、多動、制御不能な情動反応 歪んだ表情、場にそぐわない表情 衒奇症 奇妙な、患者の文化背景に合わない不適切な目的を持った動き

7.

カタトニアの徴候 反響言語 反響動作 語唱 蝋屈症 連続的で方向性のない単語、フレーズ、文の繰り返し カタレプシー 重力に抗する受動的な姿勢保持

8.

カタトニアの臨床場面

9.

救急外来でのカタトニア • 典型的には緘黙、昏迷を呈する。 • 筋強剛が見られた場合はセロトニン症候群(発汗、発熱、反射 亢進を伴う)と悪性症候群(ドパミン拮抗薬が契機となり、高 熱と自律神経機能障害を伴う)が鑑別となる。 • 反復的で無目的な動きを伴う場合、この病型はASDや統合失調 症でみられる。これは慢性精神疾患の悪化を示していることが ある。 • ほとんどが1-2mgのロラゼパム静注で速やかに寛解し、カタト ニア患者の90%に効果がある。

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カタトニアの臨床場面 せん妄

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病棟でのカタトニア • 病棟でのカタトニアは診断に難渋する。 • 抗NMDA受容体脳炎、代謝疾患、大脳局所疾患、ベンゾジアゼ ピン系薬剤、アルコール、オピオイドの離脱はカタトニアをき たすことがある。 • カタトニアがせん妄に隠れている場合もある。 • 産褥精神病や高齢者の尿路感染症など、急性カタトニアの素因 となる状態もある。

12.

病棟でのカタトニア • バイタルサインのモニタリング、カタトニア合併症(栄養不良、 脱水、褥瘡)の予防または治療が必要となる。 • 高熱、頻脈、腎不全、肺炎、代謝障害といった悪性カタトニア の管理を要する。 • 重症患者は筋強剛、緘黙、昏迷を呈し、死に至ることもある。

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カタトニアの臨床場面

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精神科現場のカタトニア • 他の精神疾患が原疾患となる。 • うつ病、双極性障害、統合失調症、自閉スペクトラム症の患者 は凝視、緘黙、無動がみられる。 • 統合失調症患者では常同言語、語唱が見られ、 • これらの症状は数週から数か月に及ぶが、自律神経症状を伴わ ないことが多い。

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精神科現場のカタトニア • カタトニア患者の4分の1で拒絶(経口摂取不良に繋がる)、奇 妙なマンネリズム、儀式(繰り返される動き、例えば無目的に 物を取り換える)といったエピソードが見られる。 • カタトニアの徴候は他の精神疾患との区別が容易ではない。

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カタトニアの臨床場面

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カタトニアの評価 • カタトニアは臨床診断であり、その重症度はBush–Francis Catatonia Rating Scaleで評価される。 • カタトニアの評価にはバイタルサイン、身体所見、血液検査を 含む検査所見が必要である。 • 具体的には神経学的所見、神経画像検査、脳波検査がある。

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カタトニアの評価

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カタトニアの評価

20.

カタトニアの評価

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カタトニアの治療 • カタトニア患者全てに当てはまる対策として、血圧、体温、体 液バランスのモニタリング、水分補給と栄養投与があり、これ に血栓、褥瘡、感染症、拘縮予防が含まれる。 • 一次治療としてはロラゼパム、ECTが60~100%の患者に反応 性を示す。 • ロラゼパムの投与量は調整可能で、1日最大16㎎とされる。 • ECTは1~2週間にかけて4~6回実施すると効果が期待される。

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カタトニアの治療 • 第二治療としてはNMDA受容体拮抗薬であるアマンタジン、精 神病を併発している症例はドパミン拮抗薬が使用される。 • ドパミン拮抗薬はカタトニアを悪化させる可能性があるため、 慎重に検討する必要がある。 • 治療後、悪性症候群が否定された場合は第二世代抗精神病薬 (特にクロザピン)が望ましい。 • 緊張病は再発の早期徴候(運動課題の遂行能力の低下)を監視 する必要がある。