リフィーディング症候群

>100 Views

April 04, 24

スライド概要

J Clin Med. 2019 Dec 13;8(12):2202. doi: 10.3390/jcm8122202. PMID: 31847205
リフィーディング症候群に関してのレビューです。病態生理や合併症、栄養投与経路や管理などを学びました。

profile-image

某病院精神科後期研修医が運営するアカウントです。日々の勉強会の内容など情報発信をしていきますので、 よろしくお願い申し上げます。

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
2.

Introduction ・第二次世界大戦中、多くの人々が飢餓に苦しんだ。 アンセル・キーズはミネソタ飢餓実験において兵役を拒否した 36人を対象に長時間の食事制限とその後の再栄養による身体的・ 精神的影響を調査した。 ・被験者のほとんどは深刻な精神的苦痛、抑うつ、社会的引きこ もり、孤立、集中力低下、呼吸数、心拍数の低下を経験した。 ・参加者の何人かは四肢に浮腫を生じた。

3.

Introduction ・Refeeding Syndrome(以下RFSとする)の一般的な 定義はなく、その病態生理はほとんど不明のままである。 ・この主な原因は、RFSの臨床症状が非特異的であり、 しばしば見過ごされ、治療されないことにある。 ・栄養不良患者の48%がRFSを発症していたという解析 結果が出ている。

4.

病態生理 ・飢餓状態ではインスリン産生は減少するが、グルカゴ ン、カテコラミン産生はわずかに亢進している。 ・脳、腎髄質、赤血球など糖依存性の組織でのみ糖代謝 が行われる。

5.

飢餓状態のエネルギー産生 ・グリコーゲンの貯蔵量は低下し、糖新生が活性化する。 ・タンパク質分解亢進による内因性アミノ酸からの糖産 生が亢進する。これにより筋肉量の減少をきたし、機能 低下と体重減少を引き起こす。 ・ビタミン、電解質も低下し、貯蔵量が枯渇する。

6.

飢餓状態のエネルギー産生 ・数日後、脂肪分解が増加し遊離脂肪酸が上昇する。 ・この遊離脂肪酸が肝臓でケトン体となり、これが身体 の主なエネルギー源となる。 ・飢餓状態では代謝が通常の30~50%まで低下する。 (適応期)

7.

再栄養開始時 ・糖が再び主要なエネルギー供給源となり、高血糖となる。 その結果インスリン分泌が増加する。 ・同化の結果として糖、水、電解質の細胞内移動が起こる。

8.

低P血症 ・解糖系はリン酸化を必要とするため、再栄養時はPが 特に重要である。 ・低P血症は横紋筋融解症、溶血、呼吸不全、筋骨格系 障害などを引き起こす。

9.

低K,Mg血症 ・致死的な不整脈、麻痺などの神経筋機能障害、横紋筋 融解症、錯乱、呼吸不全を引き起こす可能性がある。

10.

低ビタミンB1血症 ・糖が乳酸に変換され、代謝性アシドーシスを引き起こす。 ・ウェルニッケ脳症、脚気を引き起こすこともある。

11.

高Na血症 ・Kが細胞内に移行することに伴い、Naが細胞外に移動する。 ・インスリン濃度上昇により腎臓にNaが貯蔵され、血中Naが上昇 する。それに伴いノルアドレナリン、アンギオテンシンⅡが刺激 され、末梢抵抗増大と血管収縮がおこる。 ・これにより末梢の浮腫や心不全を引き起こす。

12.

病態生理と臨床症状

13.

臨床症状 ・末梢浮腫、頻呼吸、頻脈がよくある症状であるが、肺塞栓の除 外も必須である。 ・補給期に炭水化物を導入するとNaと水分の腎排泄が速やかに減 少し、うっ血性心不全、肺水腫、脳浮腫、不整脈を引き起こす。

14.

臨床症状 ・糖供給過多で高血糖を引き起こし、浸透圧利尿、脱水による 代謝性アシドーシス、高浸透圧昏睡、ケトアシドーシス、およ びCO2貯留、過呼吸、呼吸不全を引き起こす。

15.

臨床症状 ・造血障害は、骨髄低形成およびゼラチン状骨髄の形質転換と 関連している。 ・肝臓の低灌流による二次的な虚血性肝炎、低グルタチオンレ ベルによる酸化ストレス、飢餓によるオートファジーにより肝 酵素上昇をきたす。

16.

臨床症状 食欲不振 感覚鈍麻 振戦 頻脈 不整脈 低血圧 うっ血性心不全 ショック 浮腫 突然死 消化不良および吸収不良 嘔吐 便秘 腹痛 脱力感 筋痛 横紋筋融解症 骨軟化症 頻呼吸 呼吸困難 呼吸不全 人工呼吸器依存症 横隔膜筋力低下 運動失調 テタニー せん妄 発作 昏睡 高血糖 代謝性アルカ ローシス 代謝性アシドーシス 呼吸性アルカローシス インスリン抵抗性 血小板減少症 溶血 貧血 白血球機能不全 2,3-DPGの減少 急性尿細管壊死 急性肝不全

17.

リスクアセスメント

18.

RFSの診断 栄養開始後72時間以内に

19.

RFSに対する栄養 ・炭水化物40~60%、脂肪30~40%、タンパク質15~25% という一般的な組成を用いて、リスク層別化にもよるが5~10 日間以内にエネルギー必要量まで上げる。 ・臨床的に不安定な場合は炭水化物の割合を下げることを検討 する。

20.

RFSに対する栄養 ・通常は経口摂取から開始すべきである。 ・経管栄養は極度の栄養不良患者または十分に食事を摂取できない患者に 適応される。 ・非経口栄養は経口および経管栄養が不十分な場合、または超機能不全の 場合に適応となる。 ・経管栄養および非経管栄養では経口摂取に比べてRFSのリスクが高くな るため、カロリーレートを下げて慎重に開始すべきである。

21.

RFSに対する微量元素補充 ・再栄養の少なくとも30分前にビタミンB1(200~300㎎)を予防的に 補充することが基本である。 ・P,K,Mgを適宜補充する。 ・鉄欠乏が明らかな場合でも、栄養開始後1週間は鉄を補充すべきでない。 なぜなら血液産生には大量のKが必要であるため、低K血症が悪化する可 能性があるからである。また、低P血症も誘発する可能性がある。

22.

RFSのモニタリング ・RFSは栄養開始後72時間以内に発生し、急速に進行することがある。 ・脆弱期(10日間)は体液過多および臓器不全(主に腎臓)などのRFS 早期徴候を検出するため、バイタルサインおよび水分補給状態の集中的な モニタリングが必要となる。 ・0.3~0.5kg/日の増加は病的な体液貯留の徴候である可能性があるため、 体重と水分補給状態を毎日確認すべきである。

23.

RFSのモニタリング ・心電図モニタリングはRFSリスクが非常に高い患者や、再栄養前の重度 の電解質異常(K<2.5mmol/L, P<0.32mmol/L, Mg<0.5mmol/L)があ る患者では重度の不整脈やQT延長を示す可能性があるため、最初の3日間 のみ行うことが推奨されている。

24.

RFSのモニタリング

25.

リスクアセスメント

26.

RFSの治療方針

27.

RFSの治療方針

28.

RFSの治療方針