アライナー治療期間に影響を及ぼす要因(2023)

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December 03, 23

スライド概要

歯科医師、特に矯正医向けの最新矯正論文情報サイト。日々の診療や臨床、医学研究に役立つ最新海外論文をPubMedから情報を提供します。Evidence-Based Medicine(EBM)、科学的根拠に基づいた海外矯正情報をお届けしています。2023年Angle Orthodontistに投稿された論文の紹介です。本研究は、アライナー治療において、治療期間に影響を及ぼす要因を特定し、ディープラーニングを用いた自動画像処理による治療時期の評価について述べています。治療期間の延長要因は、さまざまな要因によって引き起こされることが分かり、より精密な評価が不可欠であることが示唆された。

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矯正歯科の海外最新論文をPubMedから紹介します。特にマウスピース型矯正(インビザライン)論文中心にお届けします。

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各ページのテキスト
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Key-words: : Invisalign; Aligner; Artificial intelligence; Deep learning Assessment of malalignment factors related to Invisalign treatment time aided by automated imaging processes Sanghee Lee ; Tai-Hsien Wu ; Toru Deguchi ; Ai Ni ; Wei-En Lu ; Sumeet Minhas ; Shaun Murphy ; Ching-Chang Ko Angle Orthodontist, Vol 93, No 2, 2023 DOI: 10.2319/031622-225.1 紹介者:矯正海外論文サイト https://kyousei-kaigaironbun.com

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©kyousei-kaigaironbun.com 目次 1 • Introduction 2 • Materials and Methods 3 • Results 4 • Discussion 5 • Conclusions 6 • References

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©kyousei-kaigaironbun.com 目次 1 • Introduction 2 • Materials and Methods 3 • Results 4 • Discussion 5 • Conclusions 6 • References

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Introduction ©kyousei-kaigaironbun.com 【目的】 アライナー治療が短期間で治療を終了できると結論付けるには見解は一致していない。 アライナー治療の方が従来の装置による治療よりも5.7ヶ月短い治療期間であった[10]とする 報告もあれば、従来の装置の方がアライナー治療に比べて4.8ヶ月短い治療期間であった[11] とする報告もある。 治療期間の延長を引き起こす要因は様々である。 本研究の目的は、アライナーの治療期間に影響を及ぼす要因を特定することである。

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com 【倫理審査】オハイオ州立大学(No.2020H0459) 【対象者】2016年から2019年に治療を完了した116名の患者 【選択基準】 ・クラウディングあるいはスペーシングを抱える16歳以上で完全永久歯列で あること ・Ⅰ級の臼歯関係を有する患者であること ・デジタル模型と写真による治療前後の記録を有する患者であること 【除外基準】 ・エラスティック以外の補助具を使用していること ・抜歯症例 ・顎矯正手術症例 ・コンプライアンス不良のため早期に治療を終了した患者

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com Lee et al. (2023) Lee et al. (2023) 図1:STL形式でエクスポートされた プレモデル(A)とポストモデル(B) 図2:Geomagic Design X software (Rock Hill, SC)を用いて重ね合わせた

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Materials and Methods Lee et al. (2023) 図3:Two-Stage Mesh Deep Learning (TSMDL)による自動セグメンテーションの 同定 ©kyousei-kaigaironbun.com Lee et al. (2023) 図4:Two-Stage Mesh Deep Learning (TSMDL)によるランドマークの同定

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com Lee et al. (2023) Lee et al. (2023) 図5:ランドマークの位置を特定すること によって各歯に個別の3次元座標系が定義 された 図6:座標変換に基づき頬舌側、近遠心、 圧下/挺出、tipping、ローテーション、 トルクの6種類の不正咬合を表す6つの degrees of freedom(DOM)が特定され、定 量的な変化を測定した。 *[16]に基づき、㎜単位の直線的な値をすべて角度値に等価変換して比較し、1㎜を 2.638°と定義した

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Materials and Methods ©kyousei-kaigaironbun.com Statistical Analysis 治療期間の延長に寄与する因子、および6DOFとトレーの総数との関連を 求めるために回帰分析をおこなった。 6DOFに有意差がなかったため、それぞれの歯の動きの絶対値の最大値を 分析に用いた。 複合スコアの式は線形回帰モデルから導いた。 また、トレーの総数と6DOFの積算値として定義される複合スコアと治療 期間との関連を検証した。

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Results ©kyousei-kaigaironbun.com 表1:人口統計学データ Lee et al. (2023) 対象者は116名(女性88名、男性28名)、平均年齢34.05歳(16-67歳)であった。 加重なしPARスコア(不正咬合と治療の効果を評価するスコア)は 治療前8.64,治療後2.42であった。 治療前の上顎セグメントは3.02,下顎セグメントは2.56であった。 トレーの平均総数は38.73枚(リファイメント含む)であった。

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Results ©kyousei-kaigaironbun.com 表2:それぞれの歯の動きの絶対値の最大値 Lee et al. (2023) ・頬舌側の平均0.86㎜、近遠心の平均0.57㎜、挺出/圧下の平均0.55㎜、 tipping平均4.008°、rotation平均7.178°、torque平均5.798°

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Results ©kyousei-kaigaironbun.com 図8:トレーの総数の男女比較 Lee et al. (2023) 男性の方が女性より8.79枚トレーの総数が多く、 トレーの総数に男女間で有意な差がみられた。

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Results ©kyousei-kaigaironbun.com 表3:性別を調整したトレー総数に対するmovementの効果 Lee et al. (2023) 表4:絶対値の最大値が得られた歯の数の割合 Lee et al. (2023)

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Results ©kyousei-kaigaironbun.com 図9:複合スコアとトレー総数との相関図 Lee et al. (2023) 複合スコアとトレー総数と高い相関があることが示唆された。 プレPARスコアは治療期間に影響を及ぼした。プレの上下前歯部PARスコアと トレー総数に関連がみられた。

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Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com アライナーはトルクを効果的に行うことが出来るとされているが、 本研究においてトルクとトレーの総数との関連は有意傾向であった。P=0.518 Tippingとトレーの総数において、有意な関連は見られなかった。アライナーは tippingの達成は難しくないため、計画的なtippingは比較的短時間で達成するこ とが出来るからだろう。 頬舌側、近遠心などの動きはtippingよりも歯槽骨のリモデリングは広範囲に必 要とされるので長い期間がかかることが知られている。 しかし、本研究では頬舌側、近遠心とトレー総数との有意な関連は見られな かった。このことは、歯冠部の移動のみを測定し、実際の根の移動量を測定し なかったためと考えられる。さらに、抜歯症例が含まれなかったことも影響し た可能性もある。

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Discussion ©kyousei-kaigaironbun.com 挺出/圧下とトレー総数との間に有意な関連は見られなかった。[19]と比較す ると、挺出/圧下の動きは平均0.318㎜とかなり微妙であったためと思われる。 Rotationとトレー総数との関連は見られなかった。Rotation量が多い複雑な症 例は除外したためであろう。 複合スコアはトレー総数と有意な関連を示した。6つのDOFを組み合わせたス コアは、より多くの不正咬合の要因が合わさり、治療に時間がかかるためで あろう。 前歯部PARスコアとトレー総数との間に関連がみられた。 上下顎前歯部の叢生量によって治療期間が左右されることが示唆された。

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Conclusions ©kyousei-kaigaironbun.com ・ディープラーニングによりDOFの膨大な計算が可能になった。 ・あるタイプの歯の移動がアライナーの治療期間に影響すると結論 づける根拠は不十分であった。 ・アライナー治療において、DOFの組み合わせは個々の不正咬合因子 よりも治療期間の予測因子として優れているようである。 ・上下の前歯部の不正咬合は治療期間に有意な効果を及ぼす要因で ある。

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References ©kyousei-kaigaironbun.com

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記事監修 ©kyousei-kaigaironbun.com Dr. 堀井和宏 (Kazuhiro Horii) 日本矯正歯科学会 臨床指導医(旧専門医)・ 認定医 日本舌側矯正歯科学会 American Association of Orthodontists 〒520-0832 滋賀県大津市粟津町4-7 https://www.horii-kyousei.com