【CEDEC2019】心理的に安全な状況を作り出し、すべてをかき混ぜる方法

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September 20, 19

スライド概要

CEDEC2019の講演資料となります。
 https://cedec.cesa.or.jp/2019/session/detail/s5ca0e89f4cbe6.html

2019年現在、ゲーム開発現場においてよく聞かれるようになった心理的安全性という言葉につきまして、まだまだ勘違いされている方が多いのが現状であると思われます。
心理的安全性が高ければ、不安や疑問を気軽に言えるようになりますが、ただ不安を言えるだけではなく、お互いが安心して良い事も悪い事も指摘しあえ挑戦できる状態になります。

この資料では、心理的安全性とは何か?という点から、筆者自身が転職後数ヵ月でチームやプロジェクト、組織を変化させた心理的安全性を高めるための活動や振る舞いに関して記述しております。

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株式会社ヘキサドライブの資料共有用アカウントです。 公式ブログ:https://hexadrive.jp/hexablog/ note   :https://note.com/hexadrive

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

心理的に安全な状況を作り出し、 すべてをかき混ぜる方法 株式会社ヘキサドライブ QAエンジニア 森田 和則

2.

自己紹介 森田 和則 株式会社ヘキサドライブ QAエンジニア 【略歴】 2005年クローバースタジオ株式会社にプログラマーとして入社。 プラチナゲームズ株式会社を経て、2018年11月株式会社ヘキサ ドライブへ。前職含め、過去にリードプログラマー/マネー ジャーを経験し現在はQAエンジニアに。 【社外活動】 ・GAME CREATORS CONFERENCE ’19 セッションWG ・コミュニティ「スクラム道関西」代表 ・スクラムフェス大阪実行委員 【キーワード】 アジャイル、スクラム、心理的安全性、チームビルディング、 組織改善、保健室の先生

3.

転職のため、信頼貯金0からのスタート

4.

不安でいっぱい...

5.

入社から3ヵ月後... 他プロジェクトから相談を受ける 「ポストモーテムの ファシリテーションをやってほしい」 スタッフとほとんど関わりがないまま ポストモーテム開催

6.

実は... 根耳に水かと言えばそうではなかった

7.

入社してすぐに感じた事 • スタッフの多くが真面目 ⇒ 真面目が故に、「〇〇すべき」の言動や行動が ⇒ いわれた事に疑いなく全力 • 安心して働ける ⇒ 怒鳴る人がいるわけでもなく、安全に仕事は出来るが 作った物に対しての突っ込みや、感情のぶつけ合いが 少ないと感じた。

8.

ゲームに100%面白い完成図は存在しない。 売れるかどうかも分からないものを作っている。 感情(熱量)をぶつけ合い、 全員で作るほうがより良いものが出来るはず

9.

自身が貢献出来る事 • 感情をぶつけあえる 関係や場づくり – プロジェクト内、セクション内の関係改善 • 既にある”良いもの”を吸収しあえる関係や場づくり – 組織改善 – プロジェクト間、セクション間、部署間の関係改善 背中を押したり,サポートを行う事

10.

ゆらぎを起こす

11.

かき混ぜた結果 プロジェクト配属 大阪の全プロジェクトで必須ツールに ツールの押し売り Jenkinsおじさん活動 PGセクションのワーキンググループ運営 メンター制度推進 “ふりかえり”について講演 チームビルディング支援 ポストモーテム開催 チームビルディング支援 CEDEC公募期間 2018年11月 12月 2019年1月 2月 3月 東京でも… 4月 5月 6月 7月 8月

12.

かき混ぜた結果 • 「“ポストモーテム”=魔女狩り」のようなイメージを持っていたス タッフが減った • 多くのプロジェクトで”ふりかえり”が定着 – 毎週末開催や、月1回開催等 – 不安や不満を吐き出しつつ、問題をもみほぐせるように • 東西で全社的にチームビルディング支援を行えるように • ”チームビルディング”を意識するスタッフが増えた

13.

※休憩時間ではありません

14.

心理的安全性について

15.

心理的安全性とは Psychological safetyを和訳した心理学用語 メンバー一人ひとりが、気兼ねなく発言でき、 「本来の自分を安心してさらけ出せる」 と感じられるような雰囲気や場、状態

16.

不安 • 無知だと思われないか? – そんな事も知らないのかと思われそうで聞けない • 無能だと思われないか? – ひとりでなにも出来ないと思われるのが怖い • ネガティブだと思われないか? – 難癖だと思われないか • 邪魔ばかりする人間だと思われないか? – 人の作業の邪魔になると思って聞けない エイミー・C・エドモンドソン著、野津智子訳, チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ, 英治出版

17.

プロジェクト・アリストテレス Googleで行われた “チームのパフォーマンス"に関する研究 「Googleにおいて、 高いパフォーマンスの チームを作るには?」 影響する5つの因子

18.

心理的安全性の誤解 心理的安全性 とは 馴れ合いの 世界ではない

19.

心理的安全性が高いチームは • リスクある行動をとっても、 このチームなら大丈夫だと信じられる • 不確かなことでも、質問・指摘し合える • 非を認める事ができる • 失敗をおそれず皆で挑戦できる

20.

より高みを目指し、安心して斬り合える Photo by Ina Zhynko on Unsplash

21.

言える化 Lv1 • 思い込みを取り除き、気軽に発言できる • 不確かな事でも発言できる Lv2 • 相談が出来る • 「助けて」と言える Lv3 • 問題や間違いを指摘しあえる

22.

言える化を始める為には • コミュニケーション量・タイミングを増やす – 質は大切だが、まずは質よりも量 – 信頼を得る必要がある • 相互理解 – 相手が何を考えているのか、何を大切にしているのか – 自己開示

23.

話しやすい・相談しやすい 環境を作る 実例紹介

24.

管理者・支援者としてのふるまい 1. 話しやすそうな雰囲気を作る 2. “私”を知ってもらう 3. 早期に行動をしてもらえるようにする 4. 最小コストでかきまぜる

25.

1. 話しやすそうな雰囲気を作る 休憩時間以外でリフレッシュする際は、 コーヒーを持ってフロアを歩いて行く。そして... 直接話しかける or 雑誌を手に取ったり近くにいるだけ

26.

起きた事 • 「そういえば、相談したい事があったんですよ!」 – 相談したいが、出来ない理由がある。相手も忙しい... • 趣味や好きな事、相手の事が知れた • 一度にいろんな人に話をしにいくと... – コーヒーを飲みすぎてお腹タプタプに

29.

2.”私”を知ってもらう 支援者が突然目の前に現れても “私たち(チーム)”に何をしてくれるのかわからない Photo by Markus Spiske on Unsplash

30.

お 誰前 や ね 問ん 題

31.

社内であっても何度でも自己紹介

32.

3. 早期に行動をしてもらえるようにする • 行動に感謝をする – 相談したり質問する行動を続けてほしい – 悪い報告があった際、報告という行動は継続してほしい • 質問や相談をされたら、変化が無くても報告をする – 何もしていないと思われる為、行動をしている事は伝える 自発的に良い行動を繰り返してほしい

33.

行動科学マネジメントとは 良い行動が増えるかどうかは、行動の結果次第。 行動にフォーカスし、良い行動を繰り返してもらえるようにする。 行動意欲を上げ、 「しなければいけない(Have to)」から 「やりたい(Want to)」に 変えていくメソッド 石田 淳著, マンガでよくわかる 教える技術2 <チームリーダー編>,かんき出版

34.

4. 最小コストでかきまぜる • 多くの人とコミュニケーションをとっておく – “将来”協力してもらう(かもしれない)スタッフとは 早期に接点を増やしコミュニケーションをとっておく。 相談しやすい状況を作っておく。 • 効果的なタイミングで、より多くの人に発信する – 状況を把握し、効果的なタイミングで情報発信する – 周りを巻き込み多くの人に伝える事で興味ある人間を探す 例)ふりかえり に 別プロジェクトのメンバーを呼ぶ

35.

種をまきまくる 出来る事しか出来ない。いきなり変わる事も出来ない。 ゆっくり仲間を探していく。 Photo by Fineas Gavre on Unsplash

36.

チーム内をかき混ぜる

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チーム内をかき混ぜるには • 相互理解/相互信頼 – 相手を知る自分を知る • 偏愛マップ、ドラッガー風エクササイズ等 – 謙虚、尊敬、信頼 (「Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか」より) • チームについて考える – 良いチームとは何か? – 私たちの”失敗”とは何か? – 私たちはどうなりたいのか?

38.

チームは勝手に出来るものではない 誰か一人が考えるものではない 全員で作り続けるもの Photo by Randy Fath on Unsplash

39.

かきまぜ続けたその先に 人と人をつなぎコラボレーションを誘発していくことで、 チームやプロジェクトを越えて、より大きなパワーを生み 出せるはず。 組織を大きなプロジェクトととらえ、 全員でチャレンジできる環境を作る事で よりよいゲームを作ることが出来るはず

40.

最後に

41.

ゲーム開発に100%の完成図は存在しないが、 スタッフが安心して自分自身をさらけ出し、 感情(熱量)をぶつけ合い、全員で作る事ができれば、 100%以上の作品が完成するはず そのきっかけを作り続けよう

42.

参考文献一覧 【Webサイト】 • Google, 「効果的なチームとは何か」を知る, re:Work, 閲覧日 2019-08-21, https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-teameffectiveness/steps/introduction/ 【書籍】 • エイミー・C・エドモンドソン著、野津智子訳, チームが機能するとはどういうことか ― 「学習 力」と「実行力」を高める実践アプローチ, 英治出版, 2014年. • Brian W. Fitzpatrick著、Ben Collins-Sussman著、角 征典訳, Team Geek ―Googleのギーク たちはいかにしてチームを作るのか, オライリージャパン, 2013年. • 石田 淳著, マンガでよくわかる 教える技術2 <チームリーダー編>, かんき出版, 2015年.