実践的Reaper勉強会

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May 25, 23

スライド概要

2022年1月に株式会社プラスシグナル主催で神戸電子専門学校にて開催されたREAPER勉強会の登壇時のスライド資料です。実演動画は含みません。

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ゲームメーカー2社で合計約30タイトルのサウンドディレクターを務め効果音制作、音楽制作、動画の音響、サウンドプログラミングなどの多種多様なサウンド職種や様々なゲームエンジンを経てUnreal Engine 4に出会い衝撃を受ける。 後に2017年に株式会社プラスシグナルを立ち上げ独自に活動を開始。 Unreal Engineの普及によってサウンドクリエイターを取り巻くワークフローやチーム編成に変革を起こしたいと考えている。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

実践的 REAPER 勉強会 2022/1/15 株式会社プラスシグナル 大久保悟

2.

アジェンダ ◦ ①REAPERの基本機能の紹介 ◦ (休憩) ◦ ②ボイス編集 ◦ (休憩) ◦ ③効果音作成 ◦ ④その他 2023/5/25

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はじめに ◦ SNSでの共有や画面の撮影はOKです。むしろ拡散してください。 ◦ スライドは後日SlideShareで共有させていただきます。 ◦ 配布した動画や音素材の再配布はしないでください。 ◦ ハッシュタグは誰もつぶやいていなかった時に悲しいので用意してません。 ※)もしも金銭的な話や団体名、個人名が出てしまった時には、念のため それらの内容はSNSに上げないで下さい

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自己紹介 大久保悟(ゲームサウンドデザイナー) 1996年~2008年 株式会社コナミデジタルエンタテインメント 2008年~2017年 株式会社カプコン 2017年~ 独立。株式会社プラスシグナルを設立 Reaper歴は実は1年半くらい? Reaperを使う前はNuendoとVEGASが中心。今でもこれらは使う。 ・Nuendo(MIDIを多用したり、サラウンドの場合) ・VEGAS(動画編集) と使い分け。今でも用途によってはこれらを使う。

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まあ自分のことはどうでも良いですから 是非Reaperを覚えて帰ってくださいね。 ノウハウを持ち帰って実際に手を動かして下さい。 もし良いと思ったら身近な人にも伝えてあげてくださいね。

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折角なので少し脱線(仕事で使うツール) ・DAW ProTools、Nuendo、Reaper、VEGAS ・WaveEditor ・ゲームエンジン系 Unity、Unreal Engine4、Visual Studio ・仕事補助 Excel、PowerPoint、Teams、Slack、ChatWork、Zoom RX8Advance、SoundForgePro ・プラグインソフトウェア ・ネットワーク系 Perforce、Subversion、GitLab、FFFTP、PcolP ChromeRemote、FileZila 多すぎて書けない。めちゃ多い。 ・ミドルウェア WWISE、ADX2 ・他インストールしているもの Bandicam、Ruby、Python、VLC、ffmpeg、 ActivePerl、GIMP、AllRename、Volt、Ready、 各ゲームプラットホームの専用ツール。

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改めてReaperとは何ぞや? DAWの1種 ProTools、Cubase/Nuendo、StudioOne、Logicなどがライバル? ゲームサウンドクリエイターを中心に徐々に普及しているイメージ 米国のGameSoundConの調査において、ゲーム制作会社が サウンドクリエイターに期待するスキル。2020年6月の時点で ProTools 38% Reaper 31% ProToolsに迫る勢い。

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Reaperの良い所 ◦ 時短に便利な機能が沢山 ◦ バグフィックス、更新頻度が早い ◦ 動作が超軽いし起動も超早い ◦ 安い!(個人ライセンスで60ドル、法人でも200ドル!バージョンアップが永久に無料!) ◦ 波形エディタと連動(Sound ForgeやRXやWaveLabなど) ◦ レンダリングオプションが豊富。勿論動画も読めるし書き出せる(外部ソフト依存) ◦ 見た目もショートカットもカスタマイズしまくれる ◦ マルチCHオーディオでは今の所最強(64chオーディオを再生できる) ◦ VSTの安定度は体感的にNo.1 ◦ ドングルいらず。一度ライセンス認証したら別のPCでも問題なく起動できる。

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Reaperのイマイチな所 ◦ ドキュメント、チュートリアルが英語に集中しがち。 ◦ 日本ではあまり普及していないし教育にも取り入れられていない。 →他DAWに比べてかなり自力で学ばないといけない。 ◦ 自分向けにカスタマイズをしないと使いにくい。ここで挫折する人が多い。 ◦ UIがデフォルトだとなんか古い。ダサイ。 ◦ 実は私もいまだに分からない機能が沢山ある。機能多すぎ。 ◦ 色んなソフトと連携しているので最初の設定が難しい。 ◦ AATが読み込めない

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事前準備① ・インストール https://www.reaper.fm/index.php (60日は無料 / 購入しても個人ライセンスだと60ドルと超安) ・Pythonをインストール https://www.python.org/downloads/ バージョンは何でも良いがインストールパスは覚えておくこと。 ※スクリプトを使った複雑な時短機能を使えるようになります。

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事前準備② ・Option -> Preferences の Enable Python for use with ReaScript にチェック ・Custom Path to Python dll Directory にインストールしたPathを設定

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事前準備③ ・VLC(動画再生ソフト)をインストール https://www.videolan.org/vlc/index.ja.html ※)Reaperで動画の読み込み、書き出しが出来るようになります。 ・ffmpegをDLしておく。解凍したフォルダ内のexe、dllをReaperのフォルダC:\Program Files\REAPER (x64)へコピペする。 https://ffmpeg.org/ 2023年現在必要ありません ※)Reaperで読み書きできる動画の種類が増えます。 tomoさんのnoteに解説があります。 https://note.com/suntomo/n/n4b3ffc119544

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事前準備④ Option->Preference->Video/Import/Misc を添付画像のようにしてください。 動画の読み書きに必要な設定です。

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事前準備⑤ ・ReaPackとSWS-Extentionを入れる https://reapack.com/ https://www.sws-extension.org/ ※)自分でスクリプトを組めなくても上記のような既に便利に組んで頂いたスクリプトがパッケージになって配布されています。 tomoさんのnoteにインストール方法の解説があります。 https://note.com/suntomo/n/n0bf3905a21de

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事前準備⑥ スクリプトを最新にシンクロナイズする。

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事前準備⑦ ◦ 何かしら波形編集ソフトをインストール。フリーだとSoundEngineFreeがあります。 RX8やSoundForgeをお持ちの方はそれがあれば十分です。 https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/soundengine/ RX 8 ELEMENTSが12/12まで3500円!これはプロ仕様。もっていて損はない!

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事前準備⑧ Option->Preference->External Editor に⑦でインストールしたexeを指定

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事前準備⑨ ・File -> Project Setting のAdvanceタブの Enable ”Preserve pitch” when changing rate for new items のチェックを外す。ピッチシフトが楽になります。

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事前準備⑩ デフォルトだと起動時に毎回前回のプロジェクトを開くのでここを設定します。

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事前準備⑪ ここのチェックを外すと起動時に毎度新規プラグインをチェックしないので超高速起動できる

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事前準備⑫ ◦ デフォルトだとreapeaksという拡張子のファイルはWAVと同じ階層にできてウザイので一か所にまとめる設定をする 2023/5/25

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事前準備⑬ ◦ 折角なのでフリーのVSTプラグインも色々入れてみよう。別に自分で買っても良し。 Blue Cat's Freeware Plug-ins Pack II - Download Freeware Audio Plugins (VST, VST3, AAX, Audio Unit) (Freeware) (bluecat Plugin installer | MeldaProduction

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事前準備やっと終わり! ◦ 日本語化パッチは自由に。ただドキュメントが英語に集中しているので大久保は英語で使ってます。 ◦ これがReaperの良い所でもあり悪い所でもあります。 ◦ 色々自力で準備しないといけないのですが、低価格の多機能・高機能の秘密はここにあります。

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事前準備おまけ ◦ Reaperの見た目を変える。 Options -> Themes から自分好みの配色にできます。また有志が作ったレイアウトやUIも配布されています。 https://teihenndtm.hatenablog.com/entry/2019/02/28/171334 2023/5/25

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事前準備おまけ ショートカットやレイアウトなどの設定はPreference -> Generalsから エクスポート&インポートできます。新しいPCにインストールしても俺仕様にすぐできます。

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では本題に入りましょう!

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基本操作① ◦ WAVのインポート(3分) ◦ Itemのエディット (5分) →Itemとは? →Sキーで分割 →フェードイン/アウト →リバース →タイムストレッチ →ピッチ、音量の変更 →Alt+Ctrl ◦ Itemのエンベロープ(5分) ◦ Audio Editorとの連携 (5分)

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基本操作② ◦ エフェクトをかける(5分) →トラックFXとItem FX ◦ フォルダツリー(10分) →信号のルーティングについて解説 ◦ レンダリングを覚える ◦ リージョンを覚える (15分) (15分) ◦ ショートカットのカスタマイズを覚える (10分) ◦ スペクトラムエディット ◦ 試しにスクリプトを使ってみる(これが本題)

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目の前で操作をするので真似てみてください

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レンダリングについて

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どの範囲を書き出すか? どのトラックを書き出すか? 書き出し範囲の後方追加 書き出し先フォルダ ファイル名:かなり自由自在 Render時に自動で レベル調整をしてくれるオプション サウンドフォーマット ファイルフォーマット Render実行 (Bounceや書き出しに該当)

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おまけ ◦ View -> MonitorFXは他DAWにない機能かも。マスタートラックの最後にかかりますが、Render(いわゆるバウンスや書き出 し)の時に自動でバイパスになるエフェクトです。スピーカー補正ソフトやアナライザーを挿して使います。 ◦ 他DAWではバウンスの時にイチイチこれらをバイパスしていたりするかと思いますが、Reaperではその必要がありません。

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豆知識(キャリブレーション系のソフト)

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豆知識(アナライズソフト)

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ケーススタディ、超実践!本日の最重要項目 ①多数あるボイスを全てクリーチャーボイスに加工してみよう。 台本に応じてリネームをしてレベル調整をしてトリミングもやろう。 ②動画が用意されたゲームキャラの各種動作音を作成してそ れぞれを単品のWavに分けて用意しよう。

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音声素材について 今回学習用素材につきましては 神戸電子専門学校様よりご提供頂きました。 一同、神戸電子専門学校様に感謝!

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ボイス編集 課題1 ◦ キャラクターは3体 ◦ 01_~ 半身男で半身女のミュータント ◦ 02_~ ロボット ◦ 03~ ゴブリン ◦ ファイル名はVoiceList.xlsxに沿ってリネームをする。 ◦ ボイスの音量を一定整える。

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自動トリミング

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自動並び替え(アルファベット順) 2023/5/25

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自動で空白を入れて再整列 2023/5/25

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一括で名前を書き換え 2023/5/25

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自動でレベル合わせ

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自動でリージョン作成

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一度に全部書き出す!超楽!これがないと死ぬ

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ボイス編集について ◦ ボイス編集を受託する時、1ファイルあたりいくらという単価で計算をすることが多い。 ◦ となると!どこまで効率化できるか?で時間あたりの収入激変! ◦ 今回は数十で済んだがゲームでは時には数万ファイルにも及ぶ音声がある。手作業と自動でどれだけの差が 出るか収入や自分が使える時間に変換して想像してみて下さい。 ◦ ファイルが多いのはボイスだけではなくBGMや効果音もそう。大乱闘スマッシュブラザーズでは2万以上の効果 音があったらしいですよ(CEDEC2019にて)。時短技術大事ですね。

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スピードがあれば ◦ 沢山仕事ができる。沢山稼げる。 ◦ 定時で帰るなど余裕のある生活ができる。 ◦ 趣味やインプットに時間を使える。 ◦ ブラッシュアップに時間を割けるのでクオリティーも上がる。 ◦ 作業的な時間を減らし、よりクリエイティブな部分に脳のリソースを回せる。 ◦ 多少のミスや手違いがあっても挽回する事ができる。 →Reaperはそのために強力なツール

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つまり

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次は効果音を作ってみよう

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勉強会で使う効果音素材について スタジオ(evance inc.様)で収録してきたもの ・Voice1.wav、Voice2.wav ・Cancer1.wav、Cancer2.wav シンセで大久保が用意したもの ・Whoosh_Impact.wav、他

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動画素材について

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2023/5/25

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実演するので真似てください。

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実演手順 ◦ ①トラックを4つ作って名前をつける ◦ ②子トラックを作成する ◦ ③マスタートラックにリミッターを入れる ◦ ④動画をトラックに入れてreposition ◦ ⑤各トラックに自由にSEを作成 ◦ ⑥リージョンを作る ◦ ⑦Render Matrixを設定 ◦ ⑧Render ◦ ⑨ついでに動画も試しにRenderしてみよう

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Region Render Matrix ◦ FS_Sというリージョンは →FSという親トラック以下の音のみをレンダリング ◦ VC_ATK1というリージョンは →VCという親トラック以下の音のみをレンダリング 他のトラックが重なっていてもレンダリング時に含まれません。

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余談 ゲーム制作ではこの後どうするのか? ゲームエンジン(UE4やUnity)で直接サウンドアセット化、 もしくは ミドルウェア(WWISEやADX2)に搭載してアセット化 をしてゲームエンジン上でサウンドの実装をする。その際に ・同時発音数、プライオリティ ・距離減衰の設定 ・カテゴリ設定 ・アニメーション上での再生フレーム など様々なパラメータを決める。

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効果音(主にキャラ動作)制作について ◦ 大体1つのキャラで10個~300個くらいのアニメーションがある。差が大きい ◦ 全部のアニメーションに1個1個音をつけていくわけではない。足音などは使い回したりする。 ◦ ゲームではこの各単品WAVをミドルウェアなどに入れて複雑にトリガーをして組み合わせていく ◦ ゲームやミドルウェアでの実装時にピッチや音量を変えて複数のWAVを重ねて鳴らすこともある。 ◦ 動画を見ながらの方が正確に作れる。時間を無駄にしない。動画キャプチャと簡単な動画編集スキルは必須。 ◦ 地面の属性の種類などが多い場合、倍々で制作数が増えていく ◦ ゲームの効果音の仕事をする際にWAVファイルのみを納品する仕事だと個数で見積りを取ることになるが、 実装まで含めて見積りを取る場合は工数で見積りを取れる。

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脱線しますが・・・・主にプロになりたい学生の方に向けて ◦ Reaper以外にも様々な時短方法があります。実際はあの手この手のツールの組み合わせ技で勝負します。 ◦ どんなツールのどの機能をどの順番で使えば最もミスが少なく短時間で仕事を終えられるか?かなり差が出ます。 ◦ 個人や学校で制作をしている時に、この作業はこれが 実際の仕事だった場合どこまでのスピードとクオリティーを求められて その作業がいくらのお金になるのだろう? と時々で良いので想像を膨らませてみてください。いつもじゃなくて良いです。

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おまけ

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Udemyのガイド ゲームエンジン上でのサウンドの実装方法を 解説した講座を開いています。受講生が1400人を 超えています。 ミドルウェアの使い方に関しては各ミドルウェアの 会社のHPに講座があったりするのですが、 ゲームエンジンそのものでのサウンド実装は講座が 少ないので是非

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2023/5/25

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その他、ためになる本

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その他、ためになる本 サウンドの項目がVRに関係なくよくまとまっている 2023/5/25

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その他、ためになる本

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その他、ためになる本

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もう少しだけオジサンの戯言にお付き合いください

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今のゲームサウンド界(効果音、実装系)について 慢性的に人手不足! 就職は狭き門!無理ゲー!? あれー!?何か矛盾してね!? おかしいよね!?

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要因を推測 元インハウス最前線のムキムキクリエイティブおっさん多し ◦ サウンド制作部署があるは大手のみ。内製が減り、外注のサウンド制作会社が増えた。 ◦ 外注のサウンド制作会社は小規模な会社が多く新卒採用をあまりやらない。学生にも存在を認知されていない。 ◦ 外注サウンドは小規模が故に基本的に即戦力になりそうな人を欲しがってしまう。要求スペック高くなりがち。直採用多し。 ◦ DAWを触れるだけでは戦力になれない。そんな人多すぎる。他に必要なスキルが沢山あるが習得できているか? ◦ 応募者がゲームエンジンやミドルウェアの存在すら知らないケースも多々。情報収集力と独習力の育成が重要。 ◦ 学校 → 現場 までの間で職務訓練を経験できる場が少ない。 ◦ 企業・現役クリエイターと学生の接点が薄い。極薄。 ポテンシャル。業界に入ってからも必要。育成コストにも直結。 自分がやりたい事、進みたい方向性が具体的に定まっていないと向上しない。

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慢性的に人手不足! 就職は狭き門!無理ゲー!? でも!誰も得しないよね?

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何とか状況を変えないと! このままじゃダメだ!

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これが勉強会を開催した根本的な理由です。

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以上 市尾先生と神戸電子専門学校様に感謝! 良きクリエイティブライフを!

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折角なので最後に ◦質疑応答やコミュニケーションをとってみましょう。 2023/5/25

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今後の展望 人材育成 ◦ 学生のうちから自分での情報収集と独習クセを伸ばす教育。 ◦ 時間制限とクオリティーリファレンスを設けたカリキュラムの用意。 ◦ 学校や本職クリエイターの垣根のない勉強会、交流会の開催。(既にあると言えばあるが学生がいない、来ない) ◦ 学校や本職クリエイターの垣根のない研究成果の発表、共有の場を作る。 (既にあると言えばあるが学生がいない、来ない) ◦ インディーゲーム制作に若手をアサインしてサウンド制作風景や内容を完全にオープンにしてコンテンツ化して配信。 ◦ 学生と新卒の中間の存在があっても良いのではないか? 啓蒙 ◦ 異業種とのコネクション。新しい仕事の創出。 マッチング ◦ サウンドクリエイターの分類、データベース化。 ◦ 新しいサウンドクリエイトのニーズの掘り起こし 2023/5/25