GBKS生成AIに関する法的論点_20231020開催

401 Views

October 20, 23

スライド概要

シェア

またはPlayer版

埋め込む »CMSなどでJSが使えない場合

関連スライド

各ページのテキスト
1.

GBKS様主催ウェビナー ChatGPTなど生成AIに係わる 法的論点と今後の課題 ―法的観点から見た現状の問題など含めて― 2023/10/20 荒木法律事務所(Araki International IP&Law) 弁護士・弁理士・カリフォルニア州弁護士 荒木 昭子 © Araki International IP&Law 2023 1

2.

Introduction © Araki International IP&Law 2023 2

3.

荒木法律事務所 日本の人・企業をグローバルマーケットで輝かせることをビジョンとする法律事務所です。 https://arakiplaw.com/ IAM Patent 1000 2023 知財取引(Transactions)部門 「複数法域にわたる案件において国内クライアントをサポートすることを目的としてデザインされ た」事務所であり、「2021年に創設されたコンパクトな事務所は、それ以来、クロスボーダー案件へ の対応能力を示してきた。」 IAM Strategy 300 “Firm founder Akiko Araki is a seasoned attorney who feels at home handling cross-border matters. Her time spent in-house for a Japanese company makes her a savvy negotiator when securing big commercial deals, and she effortlessly enhances global portfolios.” Founder 荒木昭子、弁護士・カリフォルニア州弁護士・弁理士 モルガン・ルイス、ベーカー&マッケンジーを経て、主に日本企業のクロスボーダーの 知財取引・海外法域における訴訟サポートを取り扱うため、2年前に独立し、荒木法律 事務所を創設。それ以来、クロスボーダーのIP・テクノロジー分野の様々な案件を取り 扱ってきた。 ©Araki International IP&Law (2023) 3

4.

背景 [出典]内閣府・知 的財産戦略推進事務 局「本検討会の開催 趣旨・背景」 https://www.kantei. go.jp/jp/singi/titeki 2/ai_kentoukai/gijisi dai/siryou2.pdf

5.

Agenda 1.政府等における検討の動向 2.論点整理 3.データ入力に際して注意すべき事項 4.生成物を利用するに際して注意すべき事項 5.その他 © Araki International IP&Law 2023 5

6.

1.政府等における検討の動向 © Araki International IP&Law 2023 6

7.

[出典]閣僚会議 2023 年9月7日 G7広島AIプロ セス閣僚級会合の概要 https://www8.cao.go.jp/cst p/ai/ai_senryaku/5kai/kaku ryoukyuu.pdf

8.

内閣府「AI時代の知的財産検討会」 [出典]内閣府・知 的財産戦略推進事務 局「本検討会の開催 趣旨・背景」 https://www.kantei. go.jp/jp/singi/titeki 2/ai_kentoukai/gijisi dai/siryou2.pdf

9.

文化庁 [出典]文化庁・AIと著作権に 関する論点整理について https://www.bunka.go.jp/seis aku/bunkashingikai/chosakuk en/hoseido/r05_01/pdf/93918 801_03.pdf

10.

[出典]内閣府・知 的財産戦略推進事務 局「本検討会の開催 趣旨・背景」 https://www.kantei. go.jp/jp/singi/titeki 2/ai_kentoukai/gijisi dai/siryou2.pdf

11.

2.論点整理 © Araki International IP&Law 2023 11

12.

検討のベース 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA) 「生成AIの利用ガイドライン(第1.1版、2023年10月公開)」 (以下「JDLAガイドライン」という。) https://www.jdla.org/document/#ai-guideline

13.

学習段階と生成・利用段階 [出典]「本検討会において検討すべき課題について」 内閣府 知的財産戦略推進事務局(2023年10月4日) https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/ai_kentoukai/gijisidai/siryou3.pdf (以下同じ)

14.

論点(JDLAガイドラインの構成) 1.データ入力に際して注意すべき事項 (1) 第三者が著作権を有しているデータ(他人が作成した文章等) (2) 登録商標・意匠(ロゴやデザイン) (3) 著名人の顔写真や氏名 (4) 個人情報 (5) 他社から秘密保持義務を課されて開示された秘密情報 (6) 自組織の機密情報 2.生成物を利用するに際して注意すべき事項 (1)生成物の内容に虚偽が含まれている可能性がある (2)生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある (3)生成物について著作権が発生しない可能性がある (4) 生成物を商用利用できない可能性がある (5)生成AIのポリシー上の制限に注意する

15.

3. データ入力に際して注意すべき事項 © Araki International IP&Law 2023 15

16.

著作権の問題 「単に生成AIに他人の著作物を入力するだけの行為は原則として著作権侵害に該当しません。 もっとも、当該入力対象となった他人の著作物と同一・類似するAI生成物を生成する目的がある場合 には、入力行為自体が著作権侵害になる可能性があります。 また、生成されたデータが入力したデータや既存のデータ(著作物)と同一・類似している場合は、 当該生成物の利用が当該著作物の著作権侵害になる可能性もありますので注意してください。具体的 には「6(2)生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある」の部分を参照して ください。 また、ファインチューニングによる独自モデルの作成や、いわゆるプロンプトエンジニアリングのた めに他者著作物を利用することについても原則として著作権侵害に該当しないと考えられます。」 [出典]JDLAガイドライン

17.

著作権:学習段階 学習用データセットに著作物が含まれている場合

18.

著作権:生成段階 プロンプトに著作物が含まれる場合

19.

著作権法の保護の客体:著作物 「著作物」とは? (法2条1項1号) 著作物の例示(法10条) ① 思想又は感情を →表現者の何らかの考えや気持ちが表れていれば よい ② 創作的に(創作性) →何らかの個性が表れている必要がある ③ 表現したものであって、 →著作権法はアイディアではなく表現を保護する 9号:プログラムの著作物 データベースの著作物(法12条の2) データベースでその情報の選択又は体系的 な構成によつて創作性を有するものは、著 作物として保護する。 ④ 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの © Araki International IP&Law 2023 19

20.

著作物の要件:創作性  著作者の何らかの個性が表現されていること ⇔特許法:新規性・進歩性が必要(29条)  創作性が否定される場合 - 不可避的な表現・ありふれた表現 →プログラム:選択の幅が狭い、個性が現れていない場合には創作性を否定 例)知財高判平成23年2月28日裁判所ウェブサイト(携帯電話プログラム事件) 「コンピュータに対する指令の組合せという性質上,表現する記号や言語体系に制約があり,かつ, コンピュータを経済的,効率的に機能させようと すると,指令の組合せの選択が限定されるため, プログラムにおける具体 的記述が相互に類似せざるを得ず,作成者の個性を発揮する選択の幅が制 約される場合があり得る。プログラムの具体的表現がこのような記述から なる場合は,作成者の個 性が発揮されていない,ありふれた表現として, 創作性が否定される。」    生年月日の月と日の値を受け取り,星座を示す整数値を返す関 数を,switch文とif文を用いて月ごとに日付に応じた値を返すように切 り換えるこ とにより表現するプログラム 同プログラム中の,生年月日の月と日によって決定される星座を求めるに当たり,上記の計算や処理 を行う点は,作成におけるアイデアであると いえる。 上記アイデアを実現するために,基本的な命令であるswitch-case 文if-else 文を組み合わせて単純な条件分岐をする,一般 的,実用的な記述であ り,その長さも短いものであるから,作成者の個 性が発揮された表現と評価することはできない。 © Araki International IP&Law 2023 20

21.

外国の著作物の保護 [出典]文化庁令和5年度著作権テキスト57頁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93908401_10.pdf

22.

法定利用行為に対する禁止権 著作権侵害: • 著作権を有する著作物を無許諾で利用する者に対し、著作権侵 害に基づく差止・損害賠償請求をすることができる • 侵害の要件:①依拠性、②類似性、③法定利用行為  依拠性→偶然の一致は侵害ではない  類似性→他人の著作物の本質的な特徴を直接感得できること  法定利用行為に限られる © Araki International IP&Law 2023 22

23.

著作権=支分権の束 著作者人格権:公表権、氏名表示権、同一性保持権 著作者の権利 ※一身専属権であり、譲渡の対象とならない 著作権:複製権、上演権、演奏権、上映権、 公衆送信権、伝達権、口述権、展示権、 頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、 編集権、編曲権、変形権、翻案権 (著作隣接権) ※財産権であり、譲渡の対象となる  無方式主義:著作物の創作と同時に、何らの手続きを要しないで発生する(⇔特許権)  著作権:他人による無許諾での著作物の利用を禁止する効力 →法定利用行為に対する禁止権 © Araki International IP&Law 2023 23

24.

権利制限規定 [出典]文化庁令和5年度著作権テキスト60頁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93908401_11.pdf

25.

権利制限規 定:非享受 目的利用 (著作権法 30条の4) (著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用) 第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現 された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的と しない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法 によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種 類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害 することとなる場合は、この限りでない。 一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化の ための試験の用に供する場合 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構 成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類 その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号におい て同じ。)の用に供する場合 三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚に よる認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過 程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該 著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

26.

非享受目的利用 ①著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目 的としない場合 ②その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用す ることができる ③ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の 利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 例: 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、 音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うこと をいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合

27.

非享受目的:例 [出典]文化庁・著作権法の一部を改正する法律 概要説明資料 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_02.pdf 著作物に表現された思想又は感情を受け入れ味わい楽しむといった作用を含むか?

28.

著作権:学習段階 学習用データセットに著作物が含まれている場合

29.

非享受目的利用 ①著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としな い場合 ②その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することが できる ③ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不 当に害することとなる場合は、この限りでない。 例: 二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影 像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。 略)の用に供する場合 三 著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機 による情報処理の過程における利用その他の利用(略)に供する場合

30.

著作権:生成段階 プロンプトに著作物が含まれる場合

31.

生成段階における著作物のインプット は? 学習段階と同様に著作権法30条の4[非享受目的利用]の適用 が問題となる • 「情報解析」に該当するか? →「大量の情報」に該当せず、「情報解析」に該当するとはいえ ないのではないか? • 「情報解析」に該当しないとしても、「非享受目的」に該当す るといえないか? →画像をインプットしてそれに類似する画像のアウトプットを想 定する場合は?

32.

著作権の問題 「単に生成AIに他人の著作物を入力するだけの行為は原則として著作権侵害に該当しません。 もっとも、当該入力対象となった他人の著作物と同一・類似するAI生成物を生成する目的がある場合 には、入力行為自体が著作権侵害になる可能性があります。 また、生成されたデータが入力したデータや既存のデータ(著作物)と同一・類似している場合は、 当該生成物の利用が当該著作物の著作権侵害になる可能性もありますので注意してください。具体的 には「6(2)生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある」の部分を参照して ください。 また、ファインチューニングによる独自モデルの作成や、いわゆるプロンプトエンジニアリングのた めに他者著作物を利用することについても原則として著作権侵害に該当しないと考えられます。」 [出典]JDLAガイドライン

33.

著作権の問題 「単に生成AIに他人の著作物を入力するだけの行為は原則として著作権侵害に該当しません。 もっとも、当該入力対象となった他人の著作物と同一・類似するAI生成物を生成する目的がある場合 には、入力行為自体が著作権侵害になる可能性があります。 また、生成されたデータが入力したデータや既存のデータ(著作物)と同一・類似している場合は、 当該生成物の利用が当該著作物の著作権侵害になる可能性もありますので注意してください。具体的 には「6(2)生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある」の部分を参照して ください。 また、ファインチューニングによる独自モデルの作成や、いわゆるプロンプトエンジニアリングのた めに他者著作物を利用することについても原則として著作権侵害に該当しないと考えられます。」 [出典]JDLAガイドライン

34.

登録商標・意匠(ロゴやデザイン) 「商標や意匠として登録されているロゴ・デザイン等を生成AIに入力することは商標権侵害や意匠権 侵害に該当しません。 もっとも、この点は著作物と同様、あくまで「入力行為」に関するものである点に注意が必要です。 故意に、あるいは偶然生成された、他者の登録商標・意匠と同一・類似の商標・意匠を商用利用する 行為は商標権侵害や意匠権侵害に該当します。 すなわち、生成AIにロゴやデザインを入力する際には登録商標・意匠の調査の必要性は乏しいですが、 生成物を利用する場合には調査が必要です。」 [出典]JDLAガイドライン [商標]AIに入力:「商標的利用」とはいえない。 [意匠]画像の意匠 ①機器の操作の用に供されるもの(操作画像) ②機器がその機能を発揮した結果として表示されるもの(表示画像) →AIへの入力が「作成」行為に該当する?

35.

著名人の顔写真や氏名 「著名人の顔写真や氏名を生成AIに入力する行為は、当該著名人が有しているパブリシティ権の侵害 には該当しません。 ただし、生成AIを利用して生成物された著名人の氏名、肖像等については、それらの氏名や肖像等を 商用利用する行為はパブリシティ権侵害に該当しますので注意してください。」 [出典]JDLAガイドライン [パブリシティ権] 「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」に侵害となる。 ①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合 ②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合 ③肖像等を商品等の広告として使用する場合 (ピンク・レディー事件最高裁判決)

36.

個人情報 「【ChatGPT】においては入力したデータが【OpenAI社】のモデルの学習に利用されるこ とになっていますので、【ChatGPT】に個人情報(顧客氏名・住所等)を入力する場合、 当該個人情報により特定される本人の同意を取得する必要があります。そのような同意取 得は現実的ではありませんので、個人情報を入力しないでください。 【ただし、利用する生成AIによっては、特定の条件を満たせば個人情報の入力が適法にな る可能性もあります。詳細は【セキュリティ部門】にお問い合わせください。】」 [出典]JDLAガイドライン

37.

取得・利用目的 • 個人情報を取り扱うに当たっては利用目的をできる限り特定し、原則とし て利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。 (個情法17条・18条) • 個人情報を取得する場合には、利用目的を通知・公表しなければならない。 なお、本人から直接書面で個人情報を取得する場合には、あらかじめ本人 に利用目的を明示しなければならない。(個情法21条) • 要配慮個人情報の取得には、原則として本人の同意が必要(個情法20条2 項)。

38.

Open AIに対する注意喚起の概要 [出典]個人情報保護委員会ウェブサイト https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_kouhou_houdou.pdf (令和5年6月2月)

39.

第三者提供 (第三者提供の制限) 第二十七条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、 個人データを第三者に提供してはならない。 (略) 5 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、 第三者に該当しないものとする。 一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一 部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合 二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合 三 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、そ の旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目 的並びに当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあって は、その代表者の氏名について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置い ているとき。

40.

第三者提供 「個人情報」 (個情法第2条第1項) 生存する個人に関する情報であって、 ① 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録 (電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができな い方式をいう。)で作られる記録をいう。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、 動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。)によ り特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それ により特定の個人を識別することができることとなるものを含む。) ② 個人識別符号が含まれるもの のいずれかに該当するものをいいます。 「個人データ」(個情法第 16 条第3項) 「個人情報」を容易に検索することができるように体系的にまとめた「個人情報データ ベース等」(問Ⅱ-4参照)を構成する「個人情報」。

41.

第三者提供規制の適用 そもそも「提供」に該当しないと構成できないか? クラウドサービス提供事業者が、当該個人データを取り扱わないことと なっている場合には、当該個人情報取扱事業者は個人データを提供したこ とにはならないため、「本人の同意」を得る必要はありません。 ※データを取り扱わないこととなっている場合: ①契約条項によって当該外部事業者がサーバに保存された個人データを取 り扱わない旨が定められており、 ②適切にアクセス制御を行っている場合等 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A [Q7-53]

42.

第三者提供規制の適用 「委託」に該当すると構成できないか? ①AI事業者の学習に利用されない場合 →自社の利用目的の範囲内か? ②AI事業者の学習に利用される場合 →「委託」の範囲を超えないか?

43.

個人情報委員会「生成AIサービスに関する注意喚起等について」 [出典]個人情報保護委員会ウェブサイト https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_kouhou_houdou.pdf (令和5年6月2日)

44.

外国にある第三者への提供となる場合 個情法第28条 1 原則:本人の同意が必要 2 個人の権利利益を保護する上で我が国と同等の水準にあると認められる個人情報の保護に関する制 度を有している外国として個人情報保護委員会規則で定める国への移転→EU及び英国 3 個人データの取扱いについてこの節の規定により個人情報取扱事業者が講ずべきこととされている 措置に相当する措置(第三項において「相当措置」という。)を継続的に講ずるために必要なもの として個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している者 ①個人情報取扱事業者と個人データの提供を受ける者との間で、当該提供を受ける者における当該 個人データの取扱いについて、適切かつ合理的な方法により、法第四章第二節の規定の趣旨に沿っ た措置の実施が確保されていること。 〈例〉外国にある事業者に個人データの取扱いを委託する場合:提供元及び提供先間の契約、確認 書、覚書等 ②個人データの提供を受ける者が、個人情報の取扱いに係る国際的な枠組みに基づく認定を受けて いること。

45.

自社の秘密情報 自組織の秘密情報 「自【社】内の機密情報(ノウハウ等)を生成AIに入力する行為は何らか の法令に違反するということはありませんが、生成AIの処理内容や規約の 内容によっては当該機密情報が法律上保護されなくなったり特許出願がで きなくなったりしてしまうリスクがありますので、入力しないでくださ い。」 [出典]JDLAガイドライン

46.

他社の秘密情報 他者からの秘密保持義務を課されて開示された秘密情報 「外部事業者が提供する生成AIに、他社との間で秘密保持契約(NDA)な どを締結して取得した秘密情報を入力する行為は、生成AI提供者という 「第三者」に秘密情報を「開示」することになるため、NDAに反する可能 性があります。 そのため、そのような秘密情報は入力しないでください。」 [出典]JDLAガイドライン

47.

秘密保持契約 第三者とのNDAの対象となる秘密情報を第三者のAIサービスに入力する行為→NDA違反に ならないか? ①不開示条項違反とならないか? 「ガイドライン」では「①生成AI提供者が入力データに監視目的での限定されたアクセス しかしない、あるいは一切アクセス・保存しない場合において、②組織が秘密情報の利用 目的として定められている目的のために生成AIに秘密情報を入力(プロンプトエンジニア リングのために利用することも含む)して分析・生成する行為については、NDAに違反し ないでしょう。」とあるが… ②目的外利用禁止条項に違反しないか? - AI事業者の「学習」に用いられれる場合:目的外利用 - AI事業者の「学習」に用いられない場合

48.

不正競争防止法:営業秘密の要件 [出典]経産省ウェブサイト https://www.meti.go.jp/polic y/economy/chizai/chiteki/tra de-secret.html © Araki International IP&Law 2023 48

49.

[出典]経済産業省・知的財産政策室「不正競争防止法テキスト」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/unfaircompetition_textbook.pdf

50.

不正競争防止法:限定提供データ [出典]経済産業省・知的財産政策室「不正競争防止法テキスト」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/unfaircompetition_textbook.pdf

51.

[出典]経済産業省・知的財産政策室「不正競争防止法テキスト」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/unfaircompetition_textbook.pdf

52.

4. 生成物を利用するに際して注意すべき事項 © Araki International IP&Law 2023 52

53.

生成物の利用

54.

生成物の内容に虚偽が含まれている可能性 「大規模言語モデル(LLM)の原理は、「ある単語の次に用いられる可能性が確率的に最 も高い単語」を出力することで、もっともらしい文章を作成していくものです。書かれて いる内容には虚偽が含まれている可能性があります。 生成AIのこのような限界を知り、その生成物の内容を盲信せず、必ず根拠や裏付けを自ら 確認するようにしてください。」 [出典]JDLAガイドライン

55.

生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害 する可能性 「① 著作権侵害 生成AIを利用して出力された生成物が、既存の著作物と同一・類似している場合は、当 該生成物を利用(複製や配信等)する行為が著作権侵害に該当する可能性があります。 そのため、以下の留意事項を遵守してください。 ・ 特定の作者や作家の作品のみを学習させた特化型AIは利用しないでください。 ・ プロンプトに既存著作物、作家名、作品の名称を入力しないようにしてください。 ・ 特に生成物を「利用」(配信・公開等)する場合には、生成物が既存著作物に類似し ないかの調査や生成物の利用が権利制限規定(著作権法30条1項や同30条の3等)に該当す るかの検討を行うようにしてください。」 [出典]JDLAガイドライン

56.

著作権侵害 • 著作権を有する著作物を無許諾で利用する者に対し、著作権侵 害に基づく差止・損害賠償請求をすることができる • 侵害の要件:①依拠性、②類似性、③法定利用行為  依拠性→偶然の一致は侵害ではない  類似性→他人の著作物の本質的な特徴を直接感得できること  法定利用行為に限られる © Araki International IP&Law 2023 56

57.

どのような場合に「依拠性」が認められるか? [出典]文化庁・AIと著作権に 関する論点整理について https://www.bunka.go.jp/seis aku/bunkashingikai/chosakuk en/hoseido/r05_01/pdf/93918 801_03.pdf

58.

「権利侵害」:著作権以外 「② 商標権・意匠権侵害 画像生成AIを利用して生成した画像や、文章生成AIを利用して生成したキャッチコピーなどを商品ロ ゴや広告宣伝などに使う行為は、他者が権利を持っている登録商標権や登録意匠権を侵害する可能性 がありますので、生成物が既存著作物に類似しないかの調査に加えて、登録商標・登録意匠の調査を 行うようにしてください。 ③ 虚偽の個人情報・名誉毀損等 【ChatGPT】などは、個人に関する虚偽の情報を生成する可能性があることが知られています。虚偽 の個人情報を生成して利用・提供する行為は、個人情報保護法違反(法19条、20条違反)や、名誉 毀損・信用毀損に該当する可能性がありますので、そのような行為は行わないでください。」 [出典]JDLAガイドライン

59.

生成物に著作権が発生しない可能性 「仮に生成物に著作権が発生していないとすると、当該生成物は基本的に第三者に模倣さ れ放題ということになりますので、自らの創作物として権利の保護を必要とする個人や組 織にとっては大きな問題となります。 この論点については、生成AIを利用しての創作活動に人間の「創作的寄与」があるか否か によって結論が分かれますので、生成物をそのまま利用することは極力避け、できるだけ 加筆・修正するようにしてください。」 [出典]JDLAガイドライン

60.

[出典]文化庁・ AIと著作権に関す る論点整理につい て https://www.bunk a.go.jp/seisaku/bu nkashingikai/chos akuken/hoseido/r 05_01/pdf/939188 01_03.pdf

61.

生成物を商用利用できない可能性/生成AIのポリ シーのレビュー  AIサービスの利用規約において、生成物の利用に関する規定 を確認する必要あり 〈例〉 商用利用が制限される場合  サービスのポリシーにおける制約にも注意 〈例〉 アダルトコンテンツ 法的助言、医療、金融等

62.

5.その他 © Araki International IP&Law 2023 62

63.

その他:AIと発明 [出典]内閣府・知 的財産戦略推進事務 局「本検討会の開催 趣旨・背景」 https://www.kantei. go.jp/jp/singi/titeki 2/ai_kentoukai/gijisi dai/siryou2.pdf

64.

Discussion © Araki International IP&Law 2023 64

65.

プロフィール 取扱業務 知的財産権及びIT・情報法分野の案件を広く取り扱う。米国弁護士(カリフォルニア州)として、テクノロジー関係のクロスボーダーの取 引・紛争解決案件で日本企業を代理しており、特に知財ライセンス・訴訟の分野の経験が豊富である。 ヘルスケア、IT 等を含む様々なインダストリーの企業に対し、データのライセンスや国内外の個人情報保護に関するアドバイスを提供。特 許の分野では、標準必須特許(SEP)のライセンスの経験を有しており、パテントプールに 関する案件も複数取り扱う。 国際知的財産保護協会(A.I.P.P.I.)Digital Economy委員会の副委員長を務める。なお、日本の弁護士・弁理士資格も有している。 主要実績  外国の多国籍企業との特許のグローバルポートフォリオライセンス交渉において日本企業を代理し、契約締結をサポート。  米国の連邦地方裁判所における特許訴訟におけるディスカバリや陪審トライアルでクライアントをサポートし、肯定的な陪審評決の取得に貢献。  特許ライセンス契約、特許譲渡契約、特許ブローカー契約等の知的財産関連契約のレビュー。 荒木 昭子(Akiko Araki) Araki International IP&Law  AI関連技術を有するクライアントに対し、データのライセンス等の契約レビュー等のアドバイスを提供。 荒木法律事務所 米国弁護士(カリフォルニア州) 弁護士・弁理士(日本)  外国企業に対し、日本の個人情報保護法にかかるアドバイスを提供。 Email: akiko.araki@arakiplaw.com  日本企業に対し、GDPRやCCPA準拠にかかるアドバイスを提供。  重要な技術移転を伴うM&A取引において、技術移転にかかる契約交渉において当事者を代理。  外国企業の日本進出に伴い、日本の薬事、通信、広告・表示等の規制準拠についてアドバイスを提供。  知的財産、税務、証券、保険等の複雑な訴訟で企業を代理。  外資系企業に対して、日本の労働法制、人員整理に関するアドバイスを提供。 主な執筆 著書  『米国特許法講義』(共著、商事法務、2020年9月) 論文  「American Axle事件における特許適格性要件の解釈と米国特許法101条改正の最新動向」『IPジャーナル』(2021年9月)  「米国における診断方法の特許適格性が争点となったAthena事件における最高裁の上告不受理決定と101条改正の現状」『A.I.P.P.I.』(共著、一般社団 法人日本国際知的財産保護協会、2020年4月)  「日本の営業秘密保護にみる政策の動き:シリコンバレーと比較して」『IPジャーナル』(2019年12月)  「TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC米国連邦最高裁判決による裁判地決定ルールの変更:パテント・トロールの抑止に有効か―我が 国の企業への影響」『A.I.P.P.I.』(共著、一般社団法人日本国際知的財産保護協会、2017年9月) © Araki International IP&Law 2023 65

66.

CONTACT 荒木法律事務所 Araki International IP&Law 254, Shin-Tokyo Building, 3-3-1, Marunouchi, Chiyoda-ku, Tokyo 100-0005, Japan Managing Partner:荒木昭子 akiko.araki@arakiplaw.com Website: https://arakiplaw.com/ The information in this presentation is not intended to constitute legal advice and your use of the presentation does not constitute an attorney-client relationship. © Araki International IP&Law 2023 66