知的障害の子どもを持つ保護者への情報提供資料_01~12(全内容掲載版)

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August 01, 23

スライド概要

知的障害のある子どもを持つ保護者に対して有用と思われる下記の情報提供内容をまとめております。

1.福祉サービスの基礎知識
(申請から利用までの流れ、障害支援区分、自己負担額)
卒業後にかけての不安に対応する内容
2.進路について
(一般就労、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、生活介護)
3.就職時の支援について
(ジョブコーチ支援事業、就労定着支援)
4.就労に関する相談ができる場所と職業訓練について
(ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、障害者職業センター、障害者職業能力開発校、委託訓練、職場適応訓練)
5.卒業後に相談できる場所について
(自治体の窓口、相談支援事業者、障害者就業・生活支援センター、自助グループ)
6.在宅系の福祉サービスについて
(ショートステイ、ホームヘルプ、ガイドヘルプ)
7.障害者医療費助成制度について
8.障害年金について
9.親元を離れた際の生活の場について
(グループホームと利用時に支給される助成金、入所施設)
10.公的なセーフティネットについて
(生活保護、入所施設利用時の生活費負担の軽減)
11.親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について
(障害者扶養共済制度、家族信託、生命保険信託、特定贈与信託)
12.障害者の意思決定や日常の手続きを支援する制度について
(成年後見制度、日常生活自立支援事業)

知的障害特別支援学校にのみならず、保護者さまや知的障害の方に関わる仕事をされている方にも広くご利用いただければと思います。
資料については自由に改変いただけますが、営利目的での使用および再配布はご遠慮ください。
なお、内容においては、書籍や政府機関の情報を参照して細心の注意を払って作成していますが、制度の変更や万が一の誤記等によって内容が正しくない恐れがあります。
また、本内容に基づいて情報提供を行い、不利益が生じた場合の筆者は責任を一切負いません。

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兵庫教育大学大学院における修士論文執筆に際して作成した資料を共有しています。 研究において分析した知的障害の子どもを持つ保護者の持つ不安に対して応える内容をまとめております。 知的障害特別支援学校にみならず、保護者さまや知的障害の方に関わる仕事をされている方にも広くご利用いただければと思います。

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

知的障害の子どもを持つ保護者への情報提供資料 ~子どもの高等部卒業から親なき後に備えて~

2.

福祉サービスの基礎知識(利用までの流れ) 1.まずは相談から サービスの利用を希望する方は、自治体の窓口や相談 支援事業所に相談して内容を詳しく聞いてみましょう。 2.利用を申請する サービスを利用する場合、自治体の窓口で利用申請を 行います。 3.サービス等利用計画案を作ってもらう 申請が受理されるとどのようなサービスを利用するかと いうサービス等利用計画案を作成する必要があります。 この計画案は、相談支援専門員などに相談しながら作成 しましょう。計画案ができたら、自治体の窓口に提出し ます。

3.

福祉サービスの基礎知識(利用までの流れ) 3.障害支援区分の認定を受ける(必要な場合) 障害のある方にどの程度支援が必要かを調査する ため、認定調査員がご自宅などへ訪問し調査を行い、 主治医位の意見書などと併せて障害認定区分の認定 がなされます。 *一度認定されると一定の期間(3年程度)の有効 期間があります。自治体にもよりますが、高等部在 籍中に認定を行い卒業後スムーズに福祉サービスを 利用できるように配慮している場合が多いです。 認定の結果は相談支援専門員に伝えてサービス等 利用計画案を完成させてもらいます。

4.

福祉サービスの基礎知識(利用までの流れ) 4.支給が決定される 自治体はサービスの利用意向やサービス等利用計 画案などを勘案して、支給決定します。支給される 場合は受給者証が届くので、相談支援専門員に提示 して、サービス等利用計画(本計画)を作ってもら います。 5.本計画への署名し、後日事業者と契約する 相談支援専門員から説明を受け、了承できれば署 名します。署名済みの本計画は自治体に相談支援専 門員から提出されます。 その後、利用したいサービス提供事業所と契約し て福祉サービスを利用することができます。

5.

福祉サービスの基礎知識(障害支援区分) • 障害支援区分とは? 障害のある方にどの程度支援が必要かを、認定員 の訪問調査や主治医の意見書などを基に6段階で判 断します。区分6が最も支援が必要で、区分1に近 いほど支援があまり必要でないと判断されます。 • 障害支援区分の認定が必要な主な福祉サービス 区分1以上→ホームヘルプ、ショートステイ、 区分2位上→生活介護(50際以上の方) 区分3位上→ガイドヘルプ、生活介護、 入所施設(50際以上の方) 区分4以上→入所施設

6.

福祉サービスの基礎知識(障害支援区分) • 障害支援区分が必要でない福祉サービスもある 障害支援区分に関わらず利用できるサービスも多くあります。 • 障害支援区分に関わらず利用できる主な福祉サービス 就労継続支援A型 就労継続支援B型 就労移行支援 就労定着支援 グループホーム など

7.

福祉サービスの基礎知識(自己負担額) • 自己負担額は原則1割 福祉サービスの自己負担額は原則1割ですが、負 担額の上限が設けられています。 • 9割の方の福祉サービスの自己負担額は0円 18歳以上の障害のある方の福祉サービスの自己負 担額は本人とその配偶者の合計収入で決まります。 なお、障害年金は収入として算入しないこともあっ て、福祉サービスを利用する約9割の方が自己負担 無しに利用することができています。

8.

福祉サービスの基礎知識(自己負担額) • 本人とその配偶者の年収と自己負担額 区分1 障害年金を除く年収が約100万以下、生活保護受給世帯→0円 区分2 障害年金を除く年収が約100万~約600万→月額9300円まで *グループホームを利用する場合は区分3に該当 区分3 障害年金を除く年収が約600万以上→月額37200円まで • 区分の目安 ほとんどの方が区分1となりますが、フルタイム勤務で一般就 労している方は区分2となる可能性があります。

9.

進路について 事例 Aさんは一般就労を望んでいますが、実習では仕事 をする力は十分だと評価された一方で、自分のやり 方で仕事を進めてしまう傾向があったり、ゲームを やりすぎて寝過ごし、始業に遅れてしまったりと卒 業後すぐに就労するには保護者と担任のどちらも不 安を覚えていました。 話し合いの結果、まずは就労移行支援で社会人の マナーや仕事をする上で重要なことを学び、将来的 には就労定着支援を受けながら一般就労を目指すこ とにしました。

10.

進路について(基礎知識) • 雇用契約の有無について 一般就労または就労移行支援A型で働く場合、雇用契約を結び ます。雇用契約を結んで働く場合、最低賃金以上の給与が保証さ れます。また、雇用保険や労災保険に加入し、保険料を納付する ことが必要ですが、失業時に一定の条件を満たしている場合は求 職者給付(失業保険)を受け取ることができます。 雇用契約がない場合は、最低賃金の保証はなく、福祉事業所で 得られた利益を利用者で分配する工賃という形で支払われます。 • 進路先としての福祉サービスの利用について 生活介護を以外の区分では障害支援区分に関わらず、利用でき ます。福祉サービスであるため、利用料の負担が必要ですが、本 人とその配偶者の年収で自己負担額が計算されるため、自己負担 無しで利用できる人がほとんどです。

11.

進路について • 一般就労 民間企業等での就労を指します。法定雇用率が2021年には2.3%でしたが、 2026年には2.7%まで引き上げられる予定であり、それに合わせて当面は求 人も増えていくと思われます。なお、法定雇用率の算定では2名の短時間勤 務者で1名のフルタイム勤務者として計算するので、短時間勤務者としての 採用もありえます。 障害理解は企業によって様々ですが、事業所に障害のある方が5名以上雇 用されている場合、仕事や職場の人間関係をサポートする障害者職業生活 相談員の選任が義務付けられます。雇用されている障害者が多い企業ほど 配慮が得られやすい可能性は高いと考えられます。 給与:雇用契約が有り、最低賃金以上を保証されます。 フルタイム勤務で手取り11万円程度 5時間勤務で7万5,000円程度 勤務時間:フルタイム勤務(約8時間) 短時間勤務(4~5時間程度)

12.

進路について • 特例子会社での一般就労 特例子会社とは、雇用される障害者が5名以上かつ全従業員の2 割以上を占めることなどを要件に設立できる会社です。障害のあ る方が多くを占めるという前提で、職場環境や業務内容が決めら れているため、配慮が手厚く、働きやすい職場である可能性が高 いです。ただし、親会社は子会社を設立できるだけの規模を持っ ている必要があるので、特例子会社自体の数は多くありません。 給与:雇用契約が有り、最低賃金以上を保証されます。 フルタイムで手取り11万円程度 5時間勤務で7万5,000円程度 勤務時間:フルタイム勤務(約8時間) 短時間勤務(4~5時間程度)

13.

進路について ・就労継続支援A型 福祉サービスを利用するという形であるため、1割負担の利用料は かかりますが、就労定着支援A型は労働時間が短いことが多く、市 町村民税非課税世帯の収入を超えない場合が多いと思われます。そ の場合は自己負担無しに利用できます。福祉事業所であるため一般 就労よりも障害のある方に対しての支援や理解は手厚いと考えます。 給与:5時間勤務で7万5,000円程度 雇用契約が有り、最低賃金以上を保証されます。 業務を行う能力が十分でない場合に給与を減額できる特例は 存在しますが、適用される事例は少数であると思われます。 勤務時間:事業所で異なりますが、5時間前後が多いようです。 利用者と職員の比率:利用者7.5名または10名に対し職員1名

14.

進路について ・就労継続支援B型 福祉サービスとして事業所を利用する形となります。事業所として 仕事を請け負ったり、物品を販売したりして得られた利益を工賃とし て利用者で分配します。利用者数は2021年の時点で就労継続支援A型の 約4倍、就労移行支援の約9倍であり、多くの方が利用しています。事 業所の数が多く、仕事内容や事業所の雰囲気が多様なため、利用に際 しては、複数の事業所の見学をお勧めします。 工賃:工賃の平均金額は14,000円程度です。 なお、1年間の収入を12ヶ月で割った金額が 最低3000円以上になる規定があります。 利用時間:半日程度からフルタイムと様々です。 利用者と職員の比率:利用者7.5名または10名に対し職員1名

15.

進路について ・就労移行支援 福祉サービスとして事業所を利用する形となります。原則2年 以内の就労を目指して訓練を行う事業所です。就労を目指すため の訓練が十分に実施されるように利用者に対する職員数が多いと いう特徴があります。一般就労ができた後は、就労定着支援が実 施されるため、職場への定着を促す取り組みにつなげられます。 工賃:ない場合が多い 勤務時間:事業所で様々 利用者と職員の比率: 利用者6名に対し職員1名 利用者15名に対し就労移行支援員1名

16.

進路について ・生活介護 福祉サービスとして事業所を利用する形となります。利用者に対して職 員の数が多く、全体的にゆったりとした雰囲気の事業所が多い傾向があり ます。生産活動等(仕事)を少しでも行う事業所のが8割、ある程度行う 事業所が5割と仕事を自体を行わない事業所もあります。事業所ごとの雰 囲気も異なるので利用に際しては複数の事業所の見学をお勧めします。な お、生活介護のみ障害支援区分3以上(50歳以上は2位上)の要件があ り、満たしている方のみ利用できます。 工賃:ないもある(生産活動等に参加した場合は支払われる) 利用時間:半日程度から一日中と様々 利用者と職員の比率: 利用者の平均障害支援区分 職員1名に対する利用者の人数 4未満 6名 4以上5未満 5名 5以上 3名

17.

就労時の支援について 事例 就労移行支援の事業所を利用していたBさんは地元の スーパーに就職が決まりました。 しかし、就職すると環境ガラリと変わるため、Bさんは 不安です。そこで、利用していた就労移行支援の事業所 から就労定着支援を受けることにしました。 知っている支援員さんが定期的に訪問して、他の職員 さんに配慮事項を伝えたり、調整もしてくれたりしてい ます。無事にAさんも職場に馴染むことができました。

18.

就職時の支援について • 障害のある方の職場定着率 知的障害の方、発達障害の 方の1年時離職率は約30%で他 の障害種に比べて定着率がい いとはいえますが、10人就職 した場合は3人が辞めてしまし ます。 そのため、職場への定着支 援を可能であれば受けましょ う。

19.

就職時の支援について • ジョブコーチ支援 地域障害者職業センターや社会福祉法人が行ってい ます。大きな企業では社内にジョブコーチの役職を 作っている場合もあります。 1~8ヶ月間の支援が受けられ、最初は週3~4日 と手厚くサポートしてくれます。その後も、数ヶ月に 1度訪問してくれます。 特に離職しやすい働き始めの期間をサポートしてく れる心強い制度です。

20.

就職時の支援について • 就労定着支援 就労移行支援など福祉サービスを経由してから就職 した方が利用できます。 月一回以上職場を訪問して最長3年間の支援を受け られます。本人への支援だけではなく、勤務先や関連 機関との連絡調整も行ってくれます。 (就労者の二人に一人が利用しています。) 支援期間終了後は必要に応じて障害者就労・生活支 援センターへ引き継ぎがなされます。

21.

就労に関する相談ができる場所と職業訓練について 事例 Cさんは卒業後、一般就労していましたが職場が合わず 退職しました。次の就職先を探すため、ハローワークに 相談してみました。 Cさんは人と接することは苦手でしたが、コツコツと粘 り強く続けることは得意だったので、障害者職業セン ターでいくつかの作業体験を受けてみることを勧められ ました。 製造関係の仕事なら続けられそうだと感じたCさんは求 職登録を行い、ハローワークから提案された企業で一般 職場適応訓練を受けることになりました。

22.

就労に関する相談ができる場所 • ハローワーク 就労を考えている場合は、ハローワークに相 談してみましょう。主に仕事の紹介、場合に よっては採用面接の同行まで行ってくれます。 障害のある方へ支援する場合、障害者就労支 援計画を作成して、障害者職業センターや就労 移行支援事業所などの外部機関と連携して、 チームで手厚くサポートしてもらえます。

23.

就労に関する相談ができる場所 • 障害者就業・生活支援センター 仕事の紹介は行いませんが、主に相談支援や、職業 訓練と職場実習の斡旋などを行ってくれます。 • 障害者職業センター 希望する職業がある場合、障害者職業センターに相 談してみましょう。センター内での作業体験や職業準 備講習などを受けることで希望する職業の適性を確認 できます。

24.

職業訓練について(障害者職業能力開発校・委託訓練) • 障害者職業能力開発校(県立と国立が存在する) 各校・コースによって異なりますが3ヶ月~2年の間で基礎的な社 会人マナーの学習から、清掃、介護、接客などの実際の就職を想定し た学習・実習を行います。 • 障害者職業能力開発校の主なコース 事務系(PCの基本操作) 製造系(ガラス加工、木工など) サービス系(販売、清掃、介護) *兵庫県率障害者高等技術専門学院総合実務科の場合です。 各校でコースは異なります。 • 委託訓練 社会福祉法人やNPO法人などが委託されて行っている訓練です。訓 練期間が原則3ヶ月以内と短期間の訓練が受講できます。

25.

職業訓練について(職場適応訓練) • 一般職場適応訓練 訓練終了後は、その訓練を行った事業所に雇用してもらえ る可能性があります。まず、ハローワークに求職登録を行い、 ハローワークから受講の指示を受けます。訓練中は訓練手当 が支給され、基本手当が日額3,900円程度(居住する地域や 年齢によって若干変動します)、加えて交通費と寄宿手当が 必要に応じて支給されます。訓練期間は原則6ヶ月以内です が、重度障害の場合は1年以内となります。食品加工や清掃 などの様々な業務を通じて訓練がなされます。 • 短期適応訓練 就労を前提に行う訓練です。就労予定先で担当する仕事を 事前に経験することで職場や仕事になれることを目的として います。訓練期間は原則2週間以内、重度障害の場合は原則 4週間以内となります。

26.

卒業後に相談できる場所について 事例 Dさんは子どもが卒業した後、他の保護者さんと話す機 会が減りました。以前は学校の詳しい先生や他の保護者 さんに福祉サービスや評判の良い福祉事業所について教 えてもらっていたので、どこに相談していいか迷ってい ました。 そこへ相談支援員専門員の訪問があったので話してみ ました。困ったことがあれば相談支援専門員が相談に応 じられること、いつでも自治体の窓口に相談できること、 本人からの相談は障害者就業・生活支援センターで丁寧 に対応してもらえることを教えてくれました。

27.

卒業後に相談できる場所 • 自治体の窓口 何か困ったことがあればまず相談してみましょう。福祉サービ スや各種制度の利用に際して説明を受けることができます。 なお、障害年金や福祉サービスの申請を行う場合は窓口に出向 いて行う必要があります。特に障害年金は必要な書類が多いので わからない箇所は確認してから手続きを進めると良いでしょう。 • 相談支援専門員(相談支援事業者) 定期的に会う機会があるので、その度に困りごとがあれば相談 しましょう。困っていることの解決につながる福祉サービスがな いか聞いてみたり、利用を考えている福祉サービスを説明しても らったりすると良いでしょう。

28.

卒業後に相談できる場所 • 障害者就業・生活支援センター 就業面・生活面のどちらの相談も受け付けています。障害のあ る方本人に対しても障害の状態に配慮して、助言を行ってくれま す。また、必要であれば関係機関との連絡調整も行ってくれます。 • 自助グループ(手をつなぐ育成会など) 所属していれば先輩の保護者さんから地域に密着した情報が得 られます。また、グループ内で定期的に障害年金や親なき後を支 える制度などの勉強会を開いている場合があります。所属してい る方からは同じ障害を持つ保護者同士で話しやすいと好意的な意 見が聞かれます。

29.

在宅で利用できる福祉サービス Eさんは急な病気で倒れてしまいました。Eさんの奥 さんはEさんが入院している間、障害のある子どもの世 話とEさんの入院への対応の両立に大変苦労しました。 その後、Eさんが退院したあと、定期訪問でやってき た相談支援員専門員に大変だったことを話すと、何か あったときに備えてショートステイを契約しておくこ とを勧められました。 その後、Eさんが入院することはありませんでしたが、 ショートステイは、将来のグループホーム入居の練習 として定期的に利用することにしました。

30.

在宅で利用できる福祉サービス 卒業後もこれまで利用できていた福祉サービスは変わら ず、利用できますが、サービスの利用に当たっては障害支 援区分の認定を受ける必要があります。 在宅で利用できるショートステイやホームヘルプなどは 障害支援区分が1から利用でき、障害が軽度の方でも利用 できる場合が多いです。 なお、費用は原則1割負担ですが、障害のある方本人と その配偶者の年収によって自己負担額が免除される場合が あり、18歳以降では福祉サービスを利用する約9割の方 が自己負担なしで利用できています。

31.

在宅で利用できる主な福祉サービス(在学中でも利用できます。) • ショートステイ(短期入所):障害支援区分1~ 障害者施設へ短期間入所して、入浴や食事の介 助などの必要な支援を受けられます。 保護者負担の軽減や将来に親元を離れるために 自宅以外で過ごす練習として利用するのが良いか と思います。 また、保護者が病気や急な事故などで入院しな ければならなくなった際にも活用が見込めます。 利用頻度が低くても何かあったときに備えて契約 しておくと安心です。

32.

在宅で利用できる主な福祉サービス(在学中でも利用できます。) • ホームヘルプ(居宅介護):障害支援区分1~ 食事、入浴などの介助や、調理、洗濯、掃除などの家事 をヘルパーさんが行ってくれます。また、自宅の中だけで なく、通院等介助として通院、公的手続き、福祉サービス の利用相談へ同行することも可能な場合があります。 *余暇目的の外出の同行はできません。 • ガイドヘルプ(行動援助):障害支援区分3~ 一人で行動することに危険が伴う方が利用できます。専 門的な研修を終了したヘルパーさんが外出時における移動 中の安全確保、食事や排泄等の介助を行ってくれます。卒 業後は余暇が充実しづらいという傾向があるため、本人の 余暇充実や保護者負担の軽減に有効です。

33.

在宅で利用できる福祉サービスの一覧 *表は厚生労働省のホームページより引用 特に障害が重度の方は重度訪問介護(障害支援区分4~)、重度障害 者包括支援(障害支援区分6)などの手厚い支援の利用が可能です。

34.

障害者医療費助成制度について 自治体が運営する障害のある方の医療費の自己負担を少なくす る制度です。医療費のみの助成であるため、入院時の差額ベット 代や食費などには適用されません。 自治体によって制度名や対象者の範囲、自己負担額が異なる場 合があります。手続きを行わないと適応されないため、制度を利 用できるか確認の上、利用可能であれば申し込みましょう。 *神戸市の障害者医療費助成制度の場合 制度名:重度障害者・高齢重度障害者医療費助成制度 対象者:療育手帳Aを持つ方(障害が重度の方)のみ 自己負担額 外来:1回600円(月1200円まで) 入院:1ヶ月2400円まで *重度心身障害者は外来・入院とも自己負担なし

35.

障害年金について 事例 手続きが苦手なFさんは子どもの20歳の誕生日が近いの に、障害年金の申請方法がわからず困っていました。 市役所の窓口に相談に行ってみると詳しく教えてもら えました。かかりつけ医に診断書を書いてもらって、な んとか書類を揃えて窓口に提出することができました。 3ヶ月後、無事に年金証書と年金決定通知書が届き、年 金が受給できるようになりました。 *障害年金は申請なしには受給できませんので、必ず申 請しましょう。

36.

障害年金について • 前提として 20歳以前の時点で障害のある方の場合、申請を行うことで障 害の状態に応じた「20歳前の傷病による障害基礎年金」(以下、 障害年金)を受給することができます。 • 受給開始時期 20歳になった翌月から受給できます。申請が遅れても5年以内 ならさかのぼって年金を請求することができますが、20歳にな る前後の3ヶ月の間に医師に記入してもらった診断書が必要にな るため、それがない場合は請求が困難です。基本的には20歳か ら受給できるように申請を行いましょう。

37.

障害年金について • 金額について 例として令和5年度の障害基礎年金の金額は以下のとおりです。 毎年、わずかではありますが変動します。 1級 993,750円 月額約8万円(2級の1.25倍) 2級 795,000円 月額約6.5万円 • 支給について 上記の金額を年6回に分けて、偶数月に本人名義の口座に 振り込まれます。

38.

障害年金について • 申請に必要なもの 年金手帳(所持している場合)、住民票、認印 年金請求書と病歴・就労状況等申立書(申請者が記入) 診断書(医師が記入) 受診状況等証明書 (医師が記入・知的障害の方は不要ですが、他の障害では必要) 本人名義の銀行口座の通帳、所得証明書(本人) *手続きとしては大変な部類に入ると思います。 自信がない場合はプロ(社会保険労務士)を頼ることもできま すが、報酬は発生します。 できれば、保護者の方が行いましょう。

39.

障害年金について • 申請書類を準備する上での注意点 1.診断書 20歳の前後3ヶ月以内に作成してもらう必要があります。日頃 からのお付き合いがないと書きにくい項目が多いので、かかりつ け医に書いてもらうことが望ましいです。 2.病歴・就労状況等申立書 診断から20歳に到るまでを3~5年ごとに区切って詳細に書 いていく必要があります。基本的に生まれてから幼稚園または保 育園等まで、小学校(小学部)低学年、高学年、中学校(中学 部)、高校(高等部)から卒業後などと区切って日常生活や学校 生活について記入します。医師の診断書ではわからない、生活の 中で支障がでている事柄について詳しく記入しましょう。

40.

障害年金について • 申請書類を準備する上での注意点 2.病歴・就労状況等申立書 • 申立書の状況欄は3~5年 ごとに区切って書きます。 (記入欄は別紙で追加する ことができるので、1枚に 収まらなくても大丈夫です。 できる限り詳しく書きま しょう。)

41.

障害年金について • 申請書類を準備する上での注意点 2.病歴・就労状況等申立書 • 日常生活状況の「1」は全く 保護者が関わらなくてもよ い状態です。 例・着替え「2」 →一人で着替えられるが、気温に合 わせた服選びができない。 ・買い物「3」 →お金を払わないといけないことは わかっているが、所持金で購入 できるかの判断ができず、レジに 連れて行って、いくら支払えば いいか声掛けしなければならない。

42.

障害年金について • 申請書類を準備する上での注意点 3.受診状況等証明書(知的障害の診断がある場合は不要) 初診の(はじめて障害の診断を受けた)医療機関で書いてもら う必要があります。もし、初診の医療機関で診断書を書いて貰え ない場合は、2番目以降に受診した医療機関に書いてもらうか、 「受診状況等証明書が添付できない申立書」に加えて障害者手帳 などを添付して提出する必要があります。 • 申請についての相談先 わからない点があれば、市町の市役所または年金事務所にしっ かりと説明してもらいましょう。 育成会などに入っている場合は年金の申請をしたことのある先 輩の保護者さんに聞けると心強いです。

43.

障害年金について • 申請から受給の流れ 1.必要な書類を準備して市役所の窓口に提出する。 ↓ 審査に約3ヶ月かかる。 2.年金証書と年金決定通知書が届く。 ↓ 約1~2ヶ月 3.年金受給が始まる。 *不支給や重度の障害であるのに2級と判定されるなど、年金受給 審査に納得できない場合は「不服申立て」ができます。その場合は 社会保険労務士などのプロに相談するのもいいでしょう。

44.

親元を離れた生活の場について 事例 Gさんは介護施設に就職して時間が立ち、仕事も覚えて余裕 ができてきました。そこでGさんの両親は先々のことを考え、 一人暮らしするように勧めました。Gさんも親元が楽でいいと 思ってはいたものの、高3のときから時々話をされていたの で、思い切って親元を離れることにしました。 仕事や身の回りのことは自分でできるものの、料理や細か い金銭管理が苦手なGさんは、世話人の支援があるグループ ホームに入居することにしました。 はじめは他の入居者と一緒に生活する戸惑いもありました が、すぐに打ち解け、苦手なことを世話人さんに手伝っても らいながら仕事と生活を両立することが出来ました。

45.

親元を離れた生活の場について • グループホーム(共同生活援助) 事業者が一軒家や公営住宅、アパートなどを借りて運営を 行います。一軒あたりの入居者は男性のみまたは女性のみで 募集されることがほとんどです。基本的に一人一室(4畳半 以上の広さ)で施錠できる部屋が提供されます。浴室・洗面 所・リビング・ダイニング・トイレは共用部となります。 世話人1人につき、4~6人の利用者が入居します。世話 人は食事の提供や家事の手伝い、健康・金銭管理の援助など 日常生活全般の支援をしてくれます。基本的に日中は外部の 福祉事業所を利用したり、就労先で勤務したりします。 障害支援区分に非該当な軽度の方でも利用できます。重度 の方向けのグループホームも増えつつありますが、入所施設 程には支援が手厚くはないため、対応できる事業者かどうか 見極める必要があります。

46.

親元を離れた生活の場について • グループホームの利用に関する助成金 グループホーム入居者に対しては国からの助成金が支給されます。また、自治 体によって金額が異なりますが、自治体独自の助成金を支給している場合が多く あります。 グループホームを利用する場合は、自治体の助成金があるかどうかを調べて、 活用しましょう。 • 助成金の額 特定障害者特別給付費(国からの助成金) →1万円 *家賃が1万円以下の場合は実費 グループホーム利用者家賃助成(神戸市の場合) →上限15,000円 *家賃から特定障害者特別給付費(1万円)を引いた額の半分

47.

グループホームの生活費試算 一般的なグループホームの場合 生活費 1日あたり 1ヶ月(30日) 35000 家賃 食費朝夕 食費昼 水道光熱費 850 600 25500 18000 約9割の方は福祉サービスの利用料負担はあり ませんが、一般就労をしている方は費用負担が発 生する可能性があります。 16000 日用品費 3000 通信費 3000 合計 実際に存在するグループホームの費用(家賃、 食費朝夕、水道光熱費、日用品費)を参照しまし た。Wi-fi完備とのことなので格安携帯で通信費は 3000円、昼食は600円で試算しています。 100500 ・福祉サービス利用料負担の目安 *障害支援区分非該当の方が、神戸市で世話人1 人に対して6人が入居するグループホームを30日 間利用する場合 サービス報酬170×1単位単価10.68円×30日 ×0.1(1割負担)≒ 5500円

48.

グループホームの生活費試算 収入 フルタイム勤務 年金1級 短時間勤務 または 就労継続支援A型 年金2級 就労継続支援B型 就労継続支援B型 年金1級 年金2級 生活介護 年金1級 移行支援支援 年金1級 障害年金 65000 65000 80000 65000 80000 65000 グループホーム助成金(国) 10000 10000 10000 10000 10000 10000 グループホーム助成金(市) 12500 12500 12500 12500 12500 12500 給料(手取り)または工賃 110000 75000 14000 14000 0 0 合計 197500 162500 116500 101500 102500 87500 生活費+自己負担額 106000 100500 100500 100500 100500 100500 91500 62000 16000 1000 2000 -13000 生活費を除いた自由に使えるお金 グループホーム助成金は自治体によって異なりますが、家賃から国からの助成金を差し引き、その半額 を補助する自治体が多いため、家賃35000円に対して12500円で試算しています。給与・工賃は障害者雇用 や就労継続支援A型での一般的な手取り額、工賃は就労継続支援B型の平均的な水準で試算しています。就 労移行支援は工賃の支払いがある場合は少く、生活介護でも工賃が支払われる事業所が一部であるため、 今回は支払いはないものとして試算します。 月々の余裕がない場合もあるので、親元にいる間に障害年金を貯蓄しておくなどの準備が必要かもしれ ません。特に就労移行支援利用者は就労後のグループホーム利用が現実的かと思われます。

49.

親元を離れた生活の場について • グループホームに入居する時期 20~30代で入居する方 が約3割、保護者が高齢 となる40代、50代になる と一気に入居者が増えて くる印象です。 ちなみにグループホー ムに入っても、土日や盆 正月は帰省する方は多い です。保護者の負担軽減 と本人の自立に向けて早 い段階からの利用をおす すめします。 表は日本知的障害福祉協会・令和3年度 全国グループホーム実態調査報告から引用しています。

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親元を離れた生活の場について • 入所施設 社会福祉法人や国、自治体などが運営しています。 敷地内に生活介護や就労継続支援B型が併置している 場合が多く、敷地内で生活が完結しやすいです。 障害支援区分4以上(50歳以上は障害支援区分3 位上)でないと入所できないため、比較的障害の重 い方のみ利用できます。 近年は、グループホームを増やし、入所施設の規 模を縮小していく施策を行っているため、なかなか 空きが少く、入居しづらい状況が続いています。

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公的なセーフティネットについて 事例 Hさんは障害者雇用枠で一般就労をして65歳で退職 するまで働いてきました。親元を離れた後はグループ ホームに入っていたので、身の回りのことで特に問題に なるようなことはなかったのですが、退職後は年金だけ では足りず、貯蓄から生活費を捻出していました。 70代になったころ遂に貯蓄が底を尽き、身寄りも無 かったことから、グループホームの世話人から生活保護 の受給を勧められました。Hさんもはじめは難色を示し ましたが、他に方法がなかったことから世話人に同行し てもらって自治体の窓口に出向いて申請を行い、後日生 活保護の受給が決まりました。

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公的なセーフティネットについて • 生活保護について 生活保護とは、日本国憲法第25条の理念に基づいて、生活に困窮す る国民に対して必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を 保障する制度です。 障害のある方が各種助成金や減免制度の適用、親族からの援助等を 受けた場合にも生活が困窮してしまう場合には利用を検討すべきです。 • 生活保護を受給できる条件 生活保護は、「利用し得る資産、能力、扶養義務者による扶養等あ らゆるもの」を活用し、それでもなお最低限度の生活を営めない状態 にある場合に受給することができます。例えば、一定の資産(預貯金 や有価証券等)を持っている場合は、そちらの活用や売却を求められ、 受給できません。

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公的なセーフティネットについて • 生活保護における資産の扱い 資産がある場合は基本的に売却して生活費に充てることを求められ ます。持ち続けていたほうが自立につながる場合を除いて資産を保有 したまま、生活保護を受給することはできません。 持ち家 →売却価格が安く、住み続ける方が合理的な場合は保有が許されます。 家に資産価値がある場合には、売却やリバースモーゲージ(家を担保にして お金を借り、返済しない場合は家の所有権を譲渡する)の利用を求められます。 自動車 →原則、保有できません。ただし、通勤・通所手段に公共交通機関使用できない 場合などには許可される可能性があります。 預貯金(1ヶ月分の最低生活費以上)、有価証券、貴金属等 →保有は認められません。

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公的なセーフティネットについて • 生活保護における扶養照会 生活保護が申請された場合、自治体は申請者の親族に対して仕送り や同居による扶養が可能かどうかなどの問い合わせを行います。 • 扶養照会の範囲 民法上で「扶養義務」がある3親等までの親族が対象となります。具 体的には、父母、祖父母、きょうだい、おじ、おば、甥姪が対象とな ります。ただし、扶養照会は担当者による裁量もあるため、おじやお ば、甥姪に対しては扶養照会が行われない場合もあります。

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公的なセーフティネットについて • 支給される生活保護費について 居住地域等の条件から最低生活費が計算され、そこから収入が差し引 かれ、不足分についての支給が受けられます。なお、障害年金の等級に よって、生活保護費に15,000円~25,000円程度の障害者加算が付きます。 • 生活保護における障害年金やグループホーム助成金等の扱い 生活保護を受給する場合でも障害年金やグループホーム助成金につい ては支給を受けられます。しかし、支給された金額は収入として認定さ れるため、支給された金額の同額が生活保護費から差し引かれます。 • 生活保護における福祉サービス利用料、医療費の扱い 福祉サービス利用料の自己負担はありません。医療費は無料となりま すが、福祉事務所で医療の申請を行い、指定医療機関で医療要否意見書 を記入してもらい、その後医療券を発行してもらう必要があります。

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公的なセーフティネットについて • 事例で登場したHさんが生活保護を受給した場合の保護費 下記の条件で令和4年度の保護費において試算しています。 ・障害年金2級を受給している ・神戸市のグループホーム(家賃35,000円)に住んでいる *障害年金、グループホーム助成金は支給されているが、その同額分 が保護費から差し引かれているため考えないものとしています。 生活保護費 生活扶助 76420 障害者加算 17870 住宅扶助 35000 合計 129290 別の資料で試算したグループホーム生活者 の1ヶ月あたりの生活費が100,500円であった ので、生活保護費から差し引くと月々3万円程 度の余裕が生まれると考えられます。

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公的なセーフティネットについて 事例 Iさんには重度の障害のある子どもがいます。卒業後 は子どもが安心して入れる施設をずっと探していました が、ついに施設が見つかり、入所できることが決まりま した。しかし、Iさんの子どもは生活介護を利用してい るため、収入は障害年金だけです。Iさんは施設の利用 料が払えるか不安になりました。 施設の方からの説明で、入所施設に入った場合は、利 用料や費用等の様々な減免制度が適用され、収入が少な い場合でも一定の金額が手元に残ることを知ってIさん は安心しました。

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公的なセーフティネットについて • 施設に入所している障害のある方の生活費負担の軽減について 障害のある方本人の収入が障害年金のみか、年金に工賃を加えた程度 である場合は、福祉サービス利用料の他に食費や光熱費も軽減されます。 これらの減免に加えて、必要に応じて補足給付もなされ、本人の手元に はお金が月々25,000円程度残るように調整がなされます。 *なお、入所施設での減額を受けるには両親の扶養から外れている必要 があります。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 事例 *Jさんが40代前半の場合 Jさんは自分が先立った後の子どものことを考え、ふと不安 になりました。学校からの配布物に、親なき後に子どもにお 金を支給できる障害者扶養共済制度のパンフレットが入って いたため、記載されていた都道府県の窓口に問い合わせてみ ました。 担当者からの説明では、途中で加入をやめた場合にはほと んどお金が戻ってこないデメリットはあるものの、Jさんの年 齢では比較的安く加入できることや税金の優遇があることな どがわかり、加入することにしました。 後日、Jさんは自治体の窓口で加入の手続きを行いました。

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お子さんにお金や資産を残す場合は慎重に・・・ 障害のあるお子さんが多額のお金や資産を持つとデメリットが多いです。 例 • 法定成年後見人に親族以外の専門家が指名される可能性が非常に高くなる。 • 選ばれた専門家の成年後見人報酬が上がる。 • 不動産などに重度障害のある方の名義が入ると、後見人がつかないと売却できないこ とが多い。 *後見人がついた方の不動産は、その方の住んでいないものであれば、後見人が自由に 処分できるようになるので、自宅以外の不動産を残すことはおすすめしません。 • 多額のお金をうまく扱えない方も多い。 • 多額の資産を持っていることがわかるとだまし取られるおそれも・・・ そのため、一度にお金を渡さず、少額を毎月渡すことが有効です。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 障害者扶養共済制度 月々9300円からの支払いで加入する保護者が亡くなった後に、一口月2万円(二口月4万) が生涯支給されます。地方自治体が運営する制度なので、掛け金の割に保障が非常に厚いです。 利点 • 65歳以上、加入歴20年の両方を満たすとそれ以上掛け金は必要なくなる。 • 加入期間中、払い終わった後のどちらの場合も、加入者に万一があったら、お子さんに生涯 の保証が得られる。 • 支給された給付金に対して税金がかかりません。生活保護を受ける場合も支給分の生活保護 費は減額されず、別途支給されます。 • 小規模企業共済等掛金控除とすることで、加入する方の所得によりますが年末調整または確 定申告で掛け金の2割程度(所得税・住民税共に10%の方の場合)が戻ってくる。 • 掛け金を上回る受給額が期待できる。 (45歳になる直前に加入すると総保険金額約350万円、年末調整で戻ってくる総額約65万円、総受給額約600万円) *お父さんが加入し、年の差25歳の息子が受給する場合で、お二人とも現在の平均寿命 (81歳)まで生きるシミュレーションです。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 障害者扶養共済制度 欠点 • 45歳の区分から区分が上がるごとに総支払金額が割高になっていきます。 • 払いきるまで、掛け捨て保険に近い性質なので、途中で脱退した場合は少額(5~25万)しか返ってき ません。お子さんが先に亡くなってしまった場合も弔慰金として少額(5~25万)しか返ってきません。 • 保護者が65歳以降になると入ることができません。 加入時の年度の4月1日時点の年齢 掛金月額(1口あたり) 35歳未満 9,300円 35歳以上40歳未満 11,400円 40歳以上45歳未満 14,300円 45歳以上50歳未満 17,300円 50歳以上55歳未満 18,800円 55歳以上60歳未満 20,700円 60歳以上65歳未満 23,300円

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 事例 *Jさんが50代後半の場合 Jさんは自分が先立った後の子どものことを考え、ふと 不安になりました。障害者扶養共済制度の利用も考えま したが、Jさんの年齢では掛金が高く、税金の優遇も仕事 をやめたあとはメリットが少ないことなどがわかり、加 入は見送りました。 インターネットで検索したJさんは生命保険信託や特定 贈与信託があることを知り、Jさんは保険会社へ説明を聞 きに行きました。まだまだ元気なJさんは、自身が更に高 齢になったときに、残っている退職金などを原資にして 終身保険料を支払い生命保険信託を利用する心づもりを しました。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 家族信託 親族に資産を託して、それの中から決めた金額をお子さんに渡してもらう制度 です。公証役場(遺言などを管理する役場)に信託契約書を提出して取り決めを 法的に有効にする必要があります。 利点 ・取り決めの内容を柔軟に決めることができます。 ・納得してもらえるなら無報酬でもお願いできます。 欠点 ・公証役場に契約書を提出するなど利用までのハードルが高いです。手続きは司 法書士などの専門職を頼るのが現実的かと思います。 ・税務署とのやり取りが必要になる場合があるので、任される親族への負担が大 きい。 ・月々高額の支給をすると所得税・住民税がかかります。 ・任せる相手によっては使い込みの恐れがあります。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 生命保険信託 終身の生命保険金などを原資にして契約で決めた金額を定期的にわたすことができま す。障害の有無に関わらず、利用できるサービスです。 利点 • 指図権者(お金の出し入れを指示する人)が必要ですが、必要に応じて指示を出すだ けなのであまり負担になりません。 • 初期手数料は5,500円、年間手数料は年額22,000円と割安で、総じて特定贈与信託より 手数料が安い傾向があります。 *手数料は2023年7月時点でのプルデンシャル生命の場合です。 なお、取扱会社による条件の開きが大きく比較が必要です。 • お子さんの後に受け取り手がなければお世話になった団体などに寄付できます。 欠点 • 終身生命保険などを別途契約するため、保険料相当の金額を支払う必要があります。 • 月々高額の支給をすると所得税・住民税がかかります。 • 生命保険金がなくなると信託が終了します。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について 特定贈与信託 保護者さんが健在なうちに銀行と契約を行い、贈与を行います。契約時点で完結するので、契約直後 に何かあっても生前贈与加算などで相続税の影響を受けません。契約で決めた金額をお子さんに定期的 にわたすことができます。 利点 • お子さんの後に受け取り手がなければお世話になった団体などに寄付できます。 • 軽度~中度の方は3000万まで、重度の方は6000万までの非課税枠が設定され、枠内なら無税 で渡せます。 (ただし、多額の贈与をしても十分に使い切れない可能性はあります。) 欠点 • 契約にあたって成年後見人をつけることを求められる可能性があります。 • 契約後は解約の取り消し、中途解約、受益者の変更が非常に難しいです。 • 信託した金額が尽きると、契約が終了します。 • 総じて生命保険信託より手数料が高額です。初期手数料は3.3%と高く、年間手数料は1.65%、安全性の 高い国債運用を行う代わりに年間手数料を割り引く場合でも0.88%になります。1000万円以上の贈与 から受け付けるため、利用のハードルが高いです。 *手数料等は2023年7月時点でのみずほ信託銀行の場合です。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 44歳までの方→障害者扶養共済制度 掛金総額を大幅に上回る支給が期待でき、65歳まで働くとすると節税 のメリットが最大限利用できるので障害者扶養共済制度がお勧めです。 • 45歳~49歳の方→ ①障害者扶養共済制度 ②生命保険信託 障害者扶養共済制度の掛金はやや上がりますが掛金総額を十分に上回 る支給が期待できます。今の年齢から20年仕事を続ける場合は節税のメ リットが最大限発揮できます。 継続的に支出をしたくない方は手数料が比較的安い生命保険信託を探 して、将来的に加入するのが良いと思われます。

68.

親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 50歳~54歳の方→ 障害者扶養共済制度 または 生命保険信託 障害者扶養共済制度の掛金は上がりますが掛金総額を上回る支給は期待できます。 しかし、節税のメリットは基本的に働き続けている間に得られるためため、退職後 はあまりメリットを得られません。 手数料が比較的安い生命保険信託を探して、将来的に加入するのも良いと思われ ます。 • 55歳以上の方→ ①生命保険信託 ②障害者扶養共済制度 障害者扶養共済制度の掛金は更に上がりますが、それでも掛金総額を上回る支給 される期待はできます。ただし、節税される期間は長くありません。 退職後のライフプランを考慮して、問題の出ない金額設定を行い、手数料が比較 的安い生命保険信託を探して、将来的に加入するのが良いと思われます。

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親なき後に一定の金額を子どもに支給する制度について どの制度を利用すべきかの目安 • 信頼できる親族がいて負担をいとわず協力してくれる場合 → ①障害者扶養共済制度 ②家族信託 基本的には障害者扶養共済制度を検討したほうが良いですが、年齢的に掛金が上 がり、利用を見合わせる場合は家族信託が検討できます。 信頼できる親族に任せる方が費用がかからず、必要なときに柔軟にお金を渡して もらえます。しかし、生涯に渡って行うことを考えると負担が大きくなるため、障 害のある方より同程度の年齢か若い方で、負担をいとわず協力してくれる方を見つ ける必要があります。 • 多額の金額を渡したい方(おすすめはしませんが)→ 特定贈与信託 多額の金額を渡したい場合、非課税で贈与できる特定贈与信託が向いています。 ただし、手数料が高い場合が多く、本人が使い切れない恐れがあります。契約後の 取り消しや変更が非常に難しい点も踏まえて利用を検討しましょう。

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親の支援なき後に備えて 事例 Kさんは自身が高齢になったため、子どもの将来を考え、自分や奥 さんがなくなった後は子どもを信頼できる人に任せたいと思いました。 調べた結果、障害のある方にも成年後見制度が使えることがわかり、 司法書士に相談して詳しい説明を受けました。後見制度を利用すると 月額2万円程度の報酬が必要になることや途中でやめられないことが わかりました。Kさんの子どもは中程度の障害がありますがグループ ホームに入っているので、日常的なケアは必要ありません。まだまだ Kさんは子どもの手続きや財産管理などは行え、奥さんも元気なので、 すぐには成年後見制度を使わず、Kさんの子どもが将来の後見人を指 定する任意後見制度を利用することにしました。 話し合いの結果、任意後見人にはグループホームを運営している社 会福祉法人が引き受けてくれ、Kさんの子どもも同意したので、司法 書士の手を借りて申請を行いました。

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障害者の意思決定や日常の手続きを支援する制度について 成年後見人制度 障害のある人に代わって財産の管理や重要な決定を下す後見人を定める制度です。 財産全てに代理権のある「後見」、申請した範囲と借金や相続など重要な行為のみ 影響力のある「補佐」、本人が認めた範囲のみ影響がある「補助」が役割として存 在します。後見人は本人に代わって契約したり、不当な契約を取り消したりするこ とができます。また、1名の被後見人に対して、財産管理をする後見人と身上監護を 行う後見人の2名をつけるなど、複数名の後見人の指定も可能です。 *なお、「後見」の権限が最も強く、「補助」は弱く、その間が「補佐」です。 後見人等が権利を行使できる例 • 一人ではグループホームの選択・契約は難しいので、後見人が本人にとって暮らし やすそうなグループホームを見つけ、「代理権」を用いて契約した。 • 一人で家にいるときに訪問販売で英会話セットを売りつけられた。 →それを知った補佐人は「取消権」を用いて契約を解除した。 権利を行使できない例 • 外出する度にグループホーム利用者全員分のケーキを買ってきてしまう。 →日常生活に関する行為は影響できないため、権利を行使できない。

72.

親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見制度の利点 • 親なき後は後見人が、本人に代わって財産管理や意思決定を行ってくれる安心感が あります。 • 後見人の仕事としてある程度の身上監護(本人の生活や健康の維持を助けること) が期待できます。 成年後見制度の欠点 • 成年後見人候補を挙げることはできますが、裁判所が選任するので後見人を選ぶこ とはできません。(任意後見制度を利用している場合を除く) • 報酬が必要となります。目安としては子どもの資産1000万までが月2万円程度、 1000~5000万で月4万程度、5000万超で月6万程度です。また、身上監護に特別な 困難がある場合は報酬額の50%の範囲で増額されます。 • 現状では一度成年後見制度を始めると途中で辞めることができません。 →後見人の報酬はずっと発生し続けます。 • 後見人によっては財産管理や意思決定の代行のみで、身上監護が十分に行われない ことがあります。また、本人のニーズを理解せずに対応を行う可能性もあります。

73.

親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見人について 任意後見制度を利用し て親が勧めた人を任意後 見人として子どもが同意 するなどの場合を除いて、 基本的に後見人を選ぶこ とはできません。 親族が選任される場合 は2割程度と低く、専門後 見人(司法書士、社会福 祉士、弁護士)が選ばれ ることが大半です。 *ただし、親族を候補者 に挙げる割合自体が低い ため、候補に上げること で専任される可能性はあ ります。 *グラフは最高裁判所の 『後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―』 から引用しています

74.

親の支援なき後に備える制度、サービス 成年後見人について 下記に後見人を任せる相手の一般的な利点と欠点を記述しています。 親族 利点 本人のニーズが良くわかっており、無報酬でも引き受けてくれる可能性が高い 欠点 ほとんど接点のない遠い親族だと財産の使いこみなどが心配される 成年後見人開始後は信託監督人を指定し、報酬を払う必要がある(月1万~2万) 長い期間にわたって行うので負担が大きい 専門後見人 利点 手続きが良くわかっており、任意後見制度利用の場合は信頼できる人を探して任せられる 欠点 本人のニーズを理解できるよう工夫が必要である 法定後見の場合は後見人が信頼できる人間か不明である 報酬が必要になる(月2万程度) 法人(社会福祉法人、弁護士事務所など) 利点 長く関わってもらえやすく、手続きもよくわかっている 欠点 複数人で対応するので本人のニーズ理解ができるかがより心配である(報酬も必要)

75.

親の支援なき後に備える制度、サービス 任意後見制度 法定後見制度では後見人の候補者は挙げることができるものの、誰 が後見人になるかわからないため、その事自体がリスクになります。 法定後見制度ではなく、任意後見制度を利用することで後見人を事前 に決めておくことができます。 *成人した子どもの保護者が子どもの任意後見人を選ぶことはできま せん。保護者が勧めた候補者を子どもが受け入れて届け出るという形 となります。そのため、重度の障害があるために意志の確認が困難な 場合は任意後見契約を締結できない可能性があります。また、子ども が候補者を拒否する場合は任意後見契約が結べません。

76.

親の支援なき後に備える制度、サービス 任意後見制度の利点 • 後見人を信頼できる人に任せることができる。 • 後見を始めるまでは、一般的に報酬が発生しません。 *後見を始める前にも報酬を支払うと契約した場合は除きます。また、任意後見人 として登記する際に、公正証書作成費用等はかかります。 任意後見制度の欠点 • 任意後見人への報酬に加えて、任意後見監督人への報酬が必要となります。 任意後見制度の流れ 1.信頼できる人を「任意後見人候補者」として選びます。 2.具体的な支援内容や報酬額を候補者との間で決めます。 3.決まった契約内容に基づき公正証書を作成してもらい、契約を締結します。 4.作成された公正証書が法務局に送られ、登記されます。 以降、後見の必要が生じた際に、4親等以内の親族や任意後見人などが家庭裁判 所に申し立てます。申立後に任意後見監督人が専任され、任意後見が始まります。

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親の支援なき後に備えて 事例 *Kさんの子どもの障害が軽度である場合 Kさんは自身が高齢になったため、子どもの将来について考え、成 年後見制度の利用を検討しました。 調べた結果、後見制度を利用すると月額2万円程度の報酬が必要に なることや途中でやめられないことがわかりました。Kさんの子ども は軽度の障害があり、複雑な手続きなどを行うことは難しいのですが、 わかりやすく説明してもらえれば自分のことは自分で決められます。 Kさんは受けられる支援に報酬が見合わないと感じました。 相談支援員専門員が訪問した際に、方法がないか聞いてみると日常 生活自立支援事業について教えてもらえました。一回の費用も安い上 に、利用する場合にだけ支払えばいいので金銭的負担がすくないため、 子どもに勧めて何度か練習として利用しました。子どもも必要に応じ て利用するというので、Kさんも自分になにかあっても子どもはやっ ていけると感じました。

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親の支援なき後に備える制度、サービス 日常生活自立支援事業 現状の成年後見人制度は費用負担が大きく、途中でやめられないため、使い勝手がよく ありません。一人での行政や福祉サービスの手続き、金銭管理は難しいものの、補助があ ればなんとか行える方は成年後見制度ではなく、日常生活支援事業を利用するのが良いで しょう。 日常生活自立支援事業の概要 • 支援者:社会福祉協議会職員や専門的な知識を持った生活支援員 • サービス内容: 福祉サービスの利用援助(申し込みや契約の代行など) 金銭管理(医療費や公共料金の支払い手続き、年金や福祉手当の受領手続きなど) 重要書類や通帳等の保管 日常生活の事務手続き(公的書類の取得や届け出、クーリングオフ制度の手続きなど) • 費用:1回で1000円~2500円程度