>100 Views
June 22, 26
スライド概要
2026/6/17(水) 13:00 - 18:50 開催
CCoE Summit ’26
https://cloudonair.withgoogle.com/events/ccoe-summit26
博士(情報学)。2012年に修士号を取得した後、西日本電信電話株式会社に入社。プライベートクラウド基盤やアプリケーション開発を経験した後、様々な技術(NW、サーバ、クラウド、プログラミング)を組合せることで、データ活用を推進するためのプラットフォームを運営。2019年から社会人ドクターとして研究活動を行い、2023年に博士号を取得。「実社会に役立つデータ活用」を推進する技術者兼研究者。
CCoE Report 2026 CCoE研究分科会 2026年度調査レポート CCoE研究分科会運営メンバ 高須賀将秀
目次 1. はじめに 3 2. 年度別比較 5 3. 設置歴・予算ごとの分析 9 4. 動向・ニーズ 13 5. まとめ 17 2
1. はじめに CCoE とは CCoE(Cloud Center of Excellence)は、組織全体のクラウド活用を推進する中核的組織です。 クラウド導入・運用の標準化、ベストプラクティスの確立、技術支援を通じて、効率的かつ安全なクラウド環境の構築を支援します。 本報告書は2022年から実施してきたアンケート調査の最新版として、日本国内におけるCCoEの設置状況、活動内容、課題、そして将来の展望を 包括的に分析しています。組織や企業規模ごとの傾向を把握し、自社のクラウド戦略立案に役立つ知見を提供します。 調査の目的 クラウド活用の成熟度が高まる日本企業において、CCoEの役割と実践方法は多様化しています。 本調査は各組織の取り組みを可視化し、CCoEの効果的な運営モデルを探求することを目的としています。 過去のデータとの比較により、CCoEの進化と今後のトレンドを明らかにします。 3
1. はじめに: 本書の概要とアンケート調査 調査の概要 本書は、2022年・2023年・2025年に実施したアンケート調査結果を基に、CCoEの実態を集計・分析した刊行物の2026年度版です。過去のデータと の比較を通じて、今年度の動向を把握できる内容となっています。 また、企業規模別にどのような施策が実施されているかを明らかにすることで、同規模の他社と比較しながら自社の施策立案にお役立ていただけます 。 2022年 2023年 2025年 2026年 42件 179件 185件 228件 有効回答数 有効回答数 有効回答数 有効回答数(過去最多) 今年度版の特徴 従来の集計・分析結果の共有に加え、「CCoEに実践してほしいこと」「今後CCoEと関係するテクノロジー」「コミュニティへのアウトプット要望」 を深掘りしました。現状把握に留まらず、CCoEへの期待や理想像を読者と共有します。生成AIの本格活用を背景に、回答数は228件と過去最多を更新 しました。 4
2. 年度別比較: クラウド利用動向 クラウド利用形態・利用量の推移 クラウドの利用形態 マルチクラウド オンプレと複数クラウドのマルチクラウド オンプレとクラウドのハイブリッド 2022年から2026年までの調査結果から、企業のクラウド活用状況の変 化を分析しました。回答者はCCoEへの関心が高い層が中心です。 74 マルチクラウド環境の採用が一貫して増加し、特に「オンプレと複 数クラウド」の構成が主流です(90件)。また「複数クラウドで 100アカウント以上」が82件と最多で、大規模・複雑化が進行。中 規模レベルの利用も年々増加しており、CCoE運用ノウハウ習得を 目的とした段階的な導入が進んでいることが示唆されます。 58 62 76 75 11 19 9 35 30 43 2022 2023 2025 2026 複数クラウドで10–100未満 複数クラウドで100以上 90 利用アカウント数 利用形態は業種・企業規模による明確な傾向差は見られませんが、アカウン ト数については大企業ほど多数を管理する傾向が顕著です。 単一クラウドで10–100未満 68 62 82 49 51 20 28 31 2023 2025 2026 47 5
2. 年度別比較: 課題と活動停滞要因 認知度・コミュニケーションの状況 活動停滞要因の推移 社内認知度・情報共有のスタイルから、組織の成熟度の変化が見て取れ ます。 組織の成熟度向上に伴い、より具体的な課題が表面化しています(問14 ・複数回答)。 118 重要性の理解不足 主要な発見: 認知度は「IT部門の一部」(105件)が最多で、「会 社全体」まで浸透しているのは25件に留まります。一方コミュニケ ーションは「全て非同期」が169件(74%)と圧倒的多数。短時間 ・非同期で効率的に情報共有を行う、軽量な運営スタイルが定着し ています。 99 オーナー・協力者の不在 95 スキル不足 知名度不足 活動の価値を定量的に示し、経営層を含む組織全体に重要性を訴求する取り 組みが引き続き必要です。 102 予算または工数不足 73 主要な発見: 「重要性の理解不足」が118件で最大の障壁。2025年 で課題化した認知面の問題が続く一方、「予算・工数不足」(102 件)が再び上位に。経営層と現場の双方で、CCoEの価値訴求が課 題です。 6
2. 年度別比較: 設置年数・予算規模 22年度と比べ、23年度以降は「これから設立」の回答が一貫して多数を占めます。これは関心層の裾野が広がったことを示し、設置年数・予算規模も 同様の傾向です。2026年は設立検討中(これから)が156件と過去最多となりました。 CCoE設置年数 これから 3年未満 予算規模(予算あり企業) 3年以上 1–1000万円 1000万–1億円 1億–10億円 38 31 32 7 34 16 52 40 14 156 114 120 13 10 14 3 2023 2025 16 36 4 7 20 2022 11 2026 2022 15 17 2023 2025 2026 ※ 2026年は回答228件のうち「予算なし」が164件。予算確保はCCoE定着の大きな分岐点となっています。 7
2. 年度別比較: 業種と組織体制 22年度と比較して23年度以降は、CCoEが「未設置・これから」もしくは「専任メンバーを置かない」小規模体制が多数を占めます。CCoEを認識した うえで立ち上げを検討する裾野の広い層が、回答者の中心になっていることが推測されます。 2022年 2023年 2025年 2026年 CCoEのある 業種 TOP3 1. 金融 2. インターネット 3. 通信 1. サービス 2. インターネット 3. 製造 1. 製造 2. 通信 3. 金融 1. 製造 2. サービス 3. インターネット 組織体制 TOP3 1. 10〜30名 2. 10名以下 3. 30〜50名 1. 10名以下 2. 10〜30名 3. 30〜50名 1. 10名以下 2. 10〜30名 3. 30〜50名 1. 専任なし/未設置 2. 専任5名以下 3. 専任5名以上 ※ 2026年は設問形式を「CCoE専任メンバー数」に変更(過去年度の「構成人数」とは区分が異なります)。 8
3. 設置歴・予算ごとの分析 会社規模に応じたCCoEの形態 従業員規模によって、CCoEの設置状況や成熟度に明確な違いが確認されました(問3×問8)。 会社規模 最も多い設置状況 成熟したCCoEの割合 100名未満 ほぼ全てが「これから」(28件中22件) 3年以上はごく僅か 500〜4999名 「これから」が中心 一部で3年以上の実績 5000名以上 「これから」27件・「3年未満」12件 「5年以上」20件と突出 CCoEの構成人数・設置年数とクラウド利用量の関係 ・ 専任メンバーがいない/バーチャル組織 → 10〜100アカウント規模が中心 ・ 複数名の専任組織・5000名以上の大企業 → 100アカウント以上の大規模環境を運用 上記より、CCoEの体制規模に比例してクラウド利用量・成熟度が高くなる傾向が読み取れます。大企業ほど早期にCCoEを立ち上げ、長く運営している実態 が明確です。 9
3. 設置歴・予算ごとの分析 CCoE設置歴ごとの活動内容(実施施策 TOP3・問15) 設置歴ごとに、ここ一年で実施された施策の上位を見ていきます。 CCoE設置歴 これから 1年未満 3年未満 5年以上 1位 コスト最適化・モニタリング・指導 コスト最適化・モニタリング・指 導 コスト最適化・モニタリング・指 導 社内コミュニティ運営 2位 セミナー/ハンズオン/勉強会 予防的統制(IAM等) ガイドライン整備 コスト最適化・モニタリング・指 導 3位 ガイドライン整備 発見的統制(CASB等) セミナー/ハンズオン/勉強会 セミナー/ハンズオン/勉強会 立ち上げ前〜初期では「コスト最適化・モニタリング・指導」というFinOps的な活動が共通の出発点。設立から年数を経るとガイドライン整備・ 統制へと広がり、5年以上の成熟組織では「社内コミュニティ運営」が首位となり、人を中心とした文化醸成・定着フェーズへ移行していること が分かります。 10
3. 設置歴・予算ごとの分析 CCoE規模(専任メンバー)ごとの活動内容(TOP3・問15) CCoE規模 バーチャル/専任なし 専任5名以下 専任5名以上 1位 ガイドライン整備 コスト最適化・モニタリング・指導 コスト最適化・モニタリング・指導 2位 個別プロジェクト相談窓口 予防的統制(IAM等) ガイドライン整備 3位 コスト最適化・モニタリング・指導 セミナー/ハンズオン/勉強会 社内コミュニティ運営 ガイドライン整備とコスト最適化はどの規模でも共通して行われています。専任メンバーが増えるほど、予防的統制(ガバナンス)や社内コミュニテ ィ運営といった、より組織横断的・継続的な活動へと比重が移ります。 人数よりも「設置年数」と「専任体制の有無」がアクティビティの幅に影響しています。専任化と継続運営こそが、CCoEを統制・文化醸成フェ ーズへ進める鍵といえます。 11
3. 設置歴・予算ごとの分析 予算規模ごとの活動内容(実施施策 TOP3・問15) 予算規模 予算なし 1–1000万円 1000万–1億円 1億円以上 1位 コスト最適化・モニタリング・指導 コスト最適化・モニタリング・指導 ガイドライン整備 コスト最適化・モニタリング・指 導 2位 セミナー/ハンズオン/勉強会 予防的統制(IAM等) コスト最適化・モニタリング・指導 社内告知・ノウハウ公開 3位 ガイドライン整備 セミナー/ハンズオン/勉強会 セミナー/ハンズオン/勉強会 予防的統制・ベストプラクティス 整備 予算の有無に関係なく「コスト最適化・モニタリング・指導」と「ガイドライン整備」が優先されており、ここにCCoE設置の意義が求められていると 考えられます。続いてセミナーやハンズオン等の組織横断的な啓もう活動が行われています。 予算規模が大きくなるほど、予防的統制(ガバナンス)・ベストプラクティス整備・社内へのノウハウ展開といった、全社横断のプラットフォーム的 アクティビティの比重が高まり、予算に応じた高度な役割が期待されていることが確認できました。 12
4. 動向・ニーズ ここ1年のアクティビティ傾向(問15・複数回答) 82 コスト最適化・モニタリング・指導 「コスト最適化・モニタリング・指導」(82件)がトップ。「セ ミナー/ハンズオン」「ガイドライン整備」が同数で続きます。 23年まで多かった個別プロジェクト支援は順位を下げ、組織横断 ・全社最適のフェーズに移行している動向が読み取れます。 予防的統制(IAM最適化等)が58件と上位に定着し、ガバナ ンス活動がCCoEの中核業務として根付いてきました。人を 中心とした啓もう活動と、全社統制の二軸が並走しているの が2026年の特徴です。 セミナー/ハンズオン/勉強会 60 ガイドライン整備 60 58 予防的統制(IAM等) 47 社内告知・ノウハウ公開 ベストプラクティス整備 38 社内コミュニティ運営 38 個別プロジェクト相談窓口 37 35 個別プロジェクト技術支援 共通基盤の設計・構築・運用 25 発見的統制(CASB等) 24 是正的統制(自動修復等) 8 13
4. 動向・ニーズ 今後CCoEに実践してほしい内容(問16・複数回答) 83 ベストプラクティス整備 79 コスト最適化・モニタリング・指導 前ページの動向への裏付けとなるように、組織横断的なものが上 位に並びました。最多は「ベストプラクティス整備」(83件)で 、続く「コスト最適化」「予防的統制」とともに、全社で再現可 能な仕組みづくりへの期待が高まっています。 75 予防的統制(IAM等) ガイドライン整備 63 セミナー/ハンズオン/勉強会 62 53 是正的統制(自動修復等) 50 共通基盤の設計・構築・運用 注目は「是正的統制(自動修復等)」が53件へ大きく伸びた 点です。FinOps/SREの観点での運用自動化、すなわち“作 る”より“安全に回す”ニーズが顕在化しています。CCoEには 全社の運用コストとガバナンスを担う役割が一層期待されて います。 47 発見的統制(CASB等) 42 社内告知・ノウハウ公開 38 個別プロジェクト技術支援 社内コミュニティ運営 35 個別プロジェクト相談窓口 34 14
4. 動向・ニーズ: 今後関係するテクノロジー 今後CCoEの活動と関係してきそうなテクノロジーを確認しました(問17・複数回答)。AI技術に関する要望が圧倒的多数を占め、228件中208件(91% )が「生成AI」を挙げています。これに開発者志向の強いプラットフォームエンジニアリング、CNAPP/CSPM/CWPP等のサイバーセキュリティが続きま す。 回答数: 208 生成AI(Generative AI) 「AIを使って生産性を上げる」段階を超え、 開発プロセスや意思決定そのものを変革する“ 中核技術”と位置付ける声が多数。人材不足へ の対応としてAI活用ガイドラインの整備・推 進をCCoEが主導することへの期待が高まって います。 回答数: 99 回答数: 62 プラットフォーム エンジニアリング CNAPP/CSPM/CWPP などサイバーセキュリティ 各開発チームへのクラウド展開を効率化する 思想として注目。個人スキルに依存しがちな 内製開発を、共通基盤・セルフサービス化を 通じて全社へ安全に広げる役割がCCoEに求め られています。 マルチクラウド・ハイブリッド化に伴いセキ ュリティガバナンスの整備が不可欠に。AI駆 動開発が進む中、全開発者へのセキュリティ 文化醸成と統制の共通化・自動化が優先課題 と考えられています。 15
4. 動向・ニーズ: コミュニティへの要望 会社という単位を離れ、Jagu'e'r CCoE研究分科会のアウトプットとして「何があれば良いか」を確認しました(問20・自由記述)。寄せられた声は、大 きく次の3つのテーマに集約されました。 事例・ケーススタディ集 立ち上げロードマップ& 成熟度モデル 認知向上・経営層への訴求 最も多かった要望。業種・規模・業態(特 にJTCや親子会社体制)別に、立ち上げか ら成長過程の課題、乗り越え方までを描い たストーリー。失敗事例・ネガティブな知 見の共有を望む声も目立ちました。 立ち上げ期から成熟期までを俯瞰するロー ドマップ、役割定義テンプレート、スター ターキット、そして自社の現在地を診断で きる「CCoE Maturity Model(成熟度モデ ル)」やチェックリストへの要望。 社内でCCoEの認知・評価を高める方法論。 担当者から管理職・本部長・役員まで、各 層がメリットを感じ協力的になる説明手法 や、設立によって得られたメリットを明示 できる資料が求められています。 ※ 「AI時代にクラウド活用がどう変わるか」をテーマにした継続的な情報発信や、技術書典での書籍化を望む声も寄せられました。 16
5. まとめ 回答数は228件と過去最多を更新。CCoEは大企業中心から中小企業・「これから設立」層まで関心が広がり、活動も個別支援か ら全社横断的・統制的な取り組みへとシフトしています。 最大の障壁は「重要性の理解不足」(118件)。長続きするCCoEには、専任メンバー・経営層の支援・予算確保が重要であるこ とが、設置歴・規模別の分析から改めて明らかになりました。 今後の関係技術は「生成AI」が91%と圧倒的。AI活用・プラットフォーム化・セキュリティ統制を軸に、CCoEはより専門的か つ横断的な組織へ進化していくことが予想されます。 これからもCCoE研究分科会の活動は続いていきます。 皆様とともに日本のCCoEを盛り上げていきます。 17