自治体DXにアジャイルな マインドとスキルはどれほど役立つのか

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January 12, 23

スライド概要

RSGT2023 (Day2)での登壇資料です。
※ 一部配布用に写真をカットしています。

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本業は永和システムマネジメント http://agile-studio.jp のアジャイル実践者。副業で福井県のCDO補佐官としてDX支援やってます。

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各ページのテキスト
1.

自治体DXにアジャイルな マインドとスキルはどれほど役 立つのか ~自治体でのDXを支援するのに役立つ3つの力 #RSGT2023 福井県未来戦略アドバイザー(CDO補佐官) 岡島 幸男

2.

岡島 幸男 @okajima_yukio

3.

福井県CDO補佐官として ● 自治体をアジャイルに ● 地元福井への貢献 ● 新しいことへのチャレンジ

4.

副業で自治体を支援する 広島県福山市が元祖 ● 福井県も同様のモデルで副 業人材を募集していた ● 転職を前提とするフル任用で は集めにくい専門家の知見を 得られる ● コロナ禍でリモートが前提と なったことも大きい

5.

自分のスキルと経験で貢献したいと訴えた

6.

本日お伝えしたいこと ● 自治体におけるDXの特徴は何か ● 実際どのような支援をしているのか ● アジャイル実務で培った経験や知識がどう役に立っているのか

7.

自治体DXとは ~ システムとしての自治体と対峙する

8.

DXを取り巻くステークホルダー 県議会 各部局 CDO DX推進課 国 (総務省) ベンダー 知事 人事課 住民 市町 CDO 補佐官

9.

政策としての自治体DX 多くの関係者による、大きな仕掛けが、すでに動き始めている。

10.

福井県のDX状況 https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/casestudy/00029/ アウトプットが出始めている。 「みち情報ネットふくい」 除雪状況

11.

私の問題意識と実現したいこと ● 職員に、根本的な変化の火種、遺伝子を組み込みたい ● 変革体験を組織に広めたい ● 意識を「やるべきこと」から「やりたいこと」に ● 政策がひと段落した後にもカルチャーとして継続するように

12.

どう攻略するか? ~ アジャイル経験で身につけた 3つの力を活かす

13.

1.ツボ探索力 ~ フォーカスする

14.

ツボ探索力 ● 主にプロダクトオーナーとしての経験や学びが活きている ● ステークホルダーの利害を中心にシステムの構造を見出す ● システムのレバレッジポイント(介入点)をつかむ力

15.

レバレッジポイント ● 数字(パラメータ) ● バッファ ● ストックとフローの構造 ● 時間的遅れ ● バランス型フィードバック ● 自己強化型フィードバック ● 情報の流れ ● ルール ● 自己組織化 ● 目標 ● パラダイム ● パラダイムを超えた極みの領域 よ り 効 果 的

16.

自治体というシステム 県議会 各部局 CDO DX推進課 国 (総務省) ベンダー 知事 人事課 住民 市町 CDO 補佐官

17.

知れば知るほど 読書 職員と雑談 直接会えないので… ● 打ち合わせの合間 ● メッセンジャー

18.

ややこしくて固い 県議会 各部局 CDO DX推進課 国 (総務省) ベンダー 知事 人事課 住民 CDO 補佐官 市町 「予算」「法令」「説明責任」をベースとするシステムはとても強固で目標やルールは変えにくい。

19.

注力するポイントを決める ● 数字(パラメータ) ● バッファ ● ストックとフローの構造 ● 時間的遅れ ● バランス型フィードバック ● 自己強化型フィードバック ● 情報の流れ ● ルール ● 自己組織化 ● 目標 ● パラダイム ● パラダイムを超えた極みの領域 促 す 「情報の流れ」に注目しこれを良くすることで、自己組織化を促そう。 よ り 効 果 的

20.

2.右腕力 ~ 支える

21.

右腕力 ● そもそも、補佐官≒右腕、だよね ● 主にスクラムマスターとしての経験や学びが活きている ● いいなりではダメ。自分の想いも必要 ● 不利な状況でもチームが前に進む策を提案する ● 裏方としてサポートする

22.

ファシリテーター 1. 2. 3. 4. コロナ禍まっさかりで、福井県庁に行きにくい状況 安全に、効率よく、さらにお金を使わず BPMNを教えられるか オンラインサービスの組み合わせを提案 結果、普通にできた。役所だからといって不都合はない

23.

アドバイザー ● 〇〇審査員 ● 〇〇評価委員 ● 〇〇ワーキング 必要なことはなんでもやる。知ってることは惜しみなく伝える。ベストを尽くし信頼感を築く。 これもある意味、情報の流れを作り出す行為。

24.

船中八策メソッド ④実現 ①相談 DX推進課 人事課 ③文書で提案 ②知見を総合 現場に直接関われなくても、自分のアイディアでなくても、役に立つなら良い。

25.

「アジャイル内製化による自分事カルチャーの浸透」への遠さを実感していた、夏頃。

26.

福井県高浜町から DX支援の依頼。

27.

現場にきてくれ、とのことで。

28.

高浜町のDXにおける課題 ● 自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド への移行もにらんだBPMNスキルの獲得 ● ノーコード内製化による業務効率化と、人手不足の 解消 本当の 狙い 働き方カルチャー変革 さらに魅力ある街づくり 共感! 右腕として 支援したい

29.

組織定着に向けたプラン 学ぶ BPMN ノーコード 腕試し 自ら 作る 自ら 作る 実際の 業務 実際の アプリ 定着させる 実務 利用 実務 利用 皆が使う ↓ 興味喚起 ↓ 認められ ↓ 文化醸成 必要 なら 高浜町の特性・関係性を把握しながら(ツボ探索力の発揮)、担当の方の計画を右腕的に補強。 プロセスや ルール

30.

※配布にあたって画像削除しました。 ホワイトボードを前にチームでワークショップしている 姿を想像してください。 実際の業務を改善することを目的とした BPMNワークショップ。部門横断でメンバーを選定。

31.

※配布にあたって画像削除しました。 ホワイトボードにそれぞれの業務モデリングの成果が 貼ってあるところを想像してください。 それぞれの宿題に対しアドバイス。現場に来ることで五感をフルに使ってサポートできる。

32.

※配布にあたって画像削除しました。 ホワイトボードを前にプロセスの無駄について議論し ているところを想像してください。 死亡届の業務に削れるムダはないか、 VSMを実施。

33.

※配布にあたって画像削除しました。 会議室で、チームが kintoneの使い方を学んでいると ころを想像してください。 リアルとオンラインを組み合わせての kintone実践演習。

34.

※配布にあたって画像削除しました。 ホワイトボードに付箋を貼りだしてふりかえりをしてい るところを想像してください。 ふりかえりやかんばんなどの見える化ツールは情報の流れを良くしていく。

35.

組織への定着度合(2023年1月) 学ぶ 腕試し 自ら 作る 自ら 作る 死亡届 アルコール チェック 定着させる 実務 利用 実務 利用 皆が使う ↓ 興味喚起 ↓ 認められ ↓ 文化醸成 必要 なら 実際に現場の改善につながるものを作って全庁に広めていこうとの気運ができてきた。 プロセスや ルール

36.

自己組織化のはじまり 右腕の感動ポイント ● ● ● ● ● 数年先を見越した計画 部門横断でCoEチームを結成 自分たちで集まってふりかえりを実施 学んだところを自分たちで復習 いわれなくても宿題をやる

37.

高浜町のコワーキングスペース「高浜まちなか交流館」。ここでの出会いがきっかけで気が付いた 3つ目の大切な力。

38.

3.民間活力 ~ 力づける

39.

民間活力 ● 町の人の力を活かす ● 町の人を見習う ● 中から支援することで力づける

40.

デジタル回覧板を自分で立ち上げた町の人 ● 高浜まちなか交流館の方が独自に ボトムアップに始めた ● 徐々に浸透し町からも認められ「既 成事実化」 ● スキャンしたデータとLINEと簡単な Webページによるシステム 自分だったらこのような「実際に役立つデジタル化」をどう企画・設計・実装するか?

41.

ニーズ VS ソリューション 解決者・ 技術提供者 問題領域 解決案 問題領域 解決案 解決案 解決案 当事者であ り解決者 当事者が中からニーズに基づいてアプローチするほうが圧倒的にうまくいく。 困りごとの当 事者 本当のニーズ 遠い! 見えにくい!

42.

中に入り込んで右腕となる 自治体DXに中から関わる方法 ● 副業での補佐 ● 会計年度職員としての採用 ● 企業からの出向 ● などなど 実は、高浜町の DX推進担当の方も、民間出身の方 が多い。

43.

技術者として培った経験を活かす 私の場合 ● システムエンジニアとして ● マーケティング担当として ● マネージャとして 誰かの役に立ちたいという想いが技術者のモチベーション。

44.

ややこしいシステムの一部だとしても 中に入り込むことで、分析し、実験し、検証し、改善していける。

45.

まとめ

46.

アジャイル経験は自治体DXに役立つ ● プロダクトオーナーの経験 ○ ステークホルダーとの関係づくり ○ 最適かつ現実的なレバレッジポイントの見極め ● スクラムマスターの経験 ○ チームのファシリテーション、改善 ○ 各種プラクティスの適用、ワークショップ運営 ● 開発者の経験 ○ 技術者としての現場経験

47.

情報の流れを良くすることで自己組織化を促す ● 大きな自治体ほど、システムは強固で変化が起きにくい ● 組織の目標やルールは、いち補佐官が変えられるものではない ● 数少ないレバレッジポイントは「情報の流れ」 ● 職員自らが、情報を見える化したり、流れる情報を増やしたり、情報を集 め始めればしめたもの ● 部門横断での改善活動や内製化などの取り組みは、情報の流れを変える パワーを持つ

48.

依存されない右腕となる ● あくまで主役は自治体の職員 ● 表面的な解決策や自己満足に陥らないように ● 自走し始めたか、情報が流れ始めたかを確認 ● ゆっくりと進める

49.

組織のトポロジーに応じてふるまいを変える 注意! 良し悪しではない。ツボが違うだけ ● 福井県(大規模) ○ 疎結合なサービス(ファンクション)のイメージ ○ 必要な時に呼び出してもらう ⇒ 船中八策メソッド ○ ステートレス。複数コンテキストの複数課題解決を支援する ● 高浜町(小規模) ○ 密結合なオブジェクトのイメージ ○ ステートフル。コンテキストを共有し小さな目標を達成する

50.

民間活力がもっと必要 ● アジャイル経験者のスキルとマインドセットは自治体に有用です ● 全国の自治体で様々なDX人材が募集されています ● 兼業・副業でも十分成果が発揮できます ● 有意義な経験であり、キャリア的にも無駄になりません ● 補佐官同士で情報交換しさらに効果的な支援を もし今日この場に、仲間の方や、興味がわいた方がいたら、声をかけてください!

51.

組織の中から「変革遺伝子」を浸透させよう 生体内のミトコンドリアのように 1. 2. 3. 4. エネルギーを供給する → 組織の成長のために アポトーシス(変革促進) → 形骸化した習慣を打破し 元々違う遺伝子 → 自分らしさを保ちつつ 一体化する → ワンチームで事に当たる

52.

ありがとうございました。