EBM入門 - W-G-X edition

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August 16, 22

スライド概要

Scrum.orgが提唱する経験的アプローチによる意思決定とアウトカムの計測のフレームワークである「エビデンスベースドマネジメント」(EBM: Evidence-Based Management)の入門となる資料です。

※講演承ります。
https://servantworks.co.jp/contact/

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サーバントワークス株式会社 代表取締役/アジャイルストラテジスト/アジャイルコーチ/エバンジェリスト DASA Ambassador DASA DevOps 認定トレーナー 株式会社Helpfeel アドバイザー 講演や支援のご相談はぜひお気軽に(ご相談は無料です)! PSPO II, PSM II, SPS, PAL-EBM, PAL I, PSU I, PSK I, PSD I, PSPO I, PSM I, CSM

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関連スライド

各ページのテキスト
1.

長沢 智治 Tomoharu Nagasawa © 2022 Servant Works Inc.

2.

長沢 智治 @tnagasawa 現職: サーバントワークス株式会社 代表取締役 NOTA株式会社 アドバイザー DASA アンバサダー キャリア: エンジニア © 2022 Servant Works Inc. 改善コンサルタント エバンジェリスト プロダクトマネージャー

3.

長沢 智治 • ソフトウェア開発現場および、ビジネス企画の業務改善コンサルタント/コーチ • ビジネス戦略および、マーケティング戦略のアドバイザー • 講演・執筆・翻訳・監訳 © 2022 Servant Works Inc. @tnagasawa

4.

エビデンスベースドマネジメント Evidence-Based Management 改善とアジリティを可能にする価値の計測 © 2021 Servant Works Inc.

5.

EBMの背景 EBMによるマネジメントと計測が活きるシーン © 2021 Servant Works Inc.

6.

問われる変化速度 外部の変化速度が、組織内の変化速度を上回っているのであれば、 その組織の終わりは近い。 GE 元CEO ジャック・ウェルチ © 2022 Servant Works Inc.

7.

エビデンスベースドマネジメント(EBM)とは 組織が不確実な条件下で、継続的に改善するのに役に立つアプローチ: 顧客のアウトカム 組織の能力 ビジネスの結果 常に計測し、変化することが価値になる © 2022 Servant Works Inc.

8.

複雑さ Stacy Matrix 不確実 2000s 1990s 2010s 混沌 2020s chaotic IT 有効 IT はコストセンター ビジネス IT 不可欠 IT コア WHAT IT 便利 IT はビジネス戦略 complex 煩雑 complicated IT 確実 © 2022 Servant Works Inc. 複雑 明白 煩雑 obvious complicated HOW 不確実

9.

ゴールまでの不確実性によるアプローチの使い分け 定義済みアプローチ © 2022 Servant Works Inc. 経験的アプローチ

10.

EBMは、経験的アプローチ 透明性 経験主義に基づいたフレームワーク: • 組織の価値を提供する能力を向上 • 戦略的ゴールに向けた道筋を探索 適応 経験主義: • 透明性: 客観的なデータに基づく観察による意思決定 • 検査と適応: 実験による探索と改善 © 2022 Servant Works Inc. 検査

11.

エビデンスベースドマネジメントガイド(EBM Guide) scrum.org/ebm Ken SchwaberとProfessional Scrumコミュニティが開発 英語、日本語をはじめとして、多くの言語に翻訳されている © 2022 Servant Works Inc.

12.

EBMの目的 価値を俊敏に、計測・管理・改善するためのフレームワーク: • 組織の重点課題: • 成果(アウトカム)の改善 • リスクの軽減(リスクの管理) • 投資の最適化・最大化 価値 vs 費用対効果 機会損失 (競合他社・マーケットの優位性) © 2022 Servant Works Inc.

13.

EBMの効果 EBMの武器: 意思決定の客観的な根拠 • 意図的な実験のループ • エビデンス(指標により事実と根拠を積み重ねる) • エビデンス自体も検査と適応する 組織が時間の経過とともに体系的に改善し、ゴールを洗練される (最初から正解があるわけでないので不確かなところから始める) © 2022 Servant Works Inc.

14.

EBMの要素 経験的な組織ゴール 重要価値領域(KVA) 実験ループ • 戦略的ゴール • 現在の価値 • 指標に基づく仮説 • 中間ゴール • 未実現の価値 • 実験とデータ収集 • 即時戦術ゴール • 市場に出すまでの時間 • 検査 • 開始の状態 • イノベーションの能力 • 適応 • 現在の状態 透明性のある意思決定 © 2022 Servant Works Inc.

15.

EBMのゴール設定 経験的な組織ゴールの設定 © 2021 Servant Works Inc.

16.

ゴール設定の FAST • FAST • Frequent discussions(頻繁な議論) • Ambitiously(野心的な設定) • Specific metrics(特定の、具体的な指標) • Transparent(透明性) © 2022 Servant Works Inc.

17.

ゴール設定の「問い」 • ゴールへの「問い」 p 解決しようとしている問題は何か p 提供しようとしているニーズや要望は何か p 成功をどのように計測するかは明確か p 取り組んでいる機会とは何か p 顧客リサーチ、対話、データからの観察と関連があるか p どのような仮説を検証する必要があるのか © 2022 Servant Works Inc.

18.

改善のカタ 1. 方向性や課題を理解する 2. 現在の状況を把握する 出典: Toyota Kata 3. 次に目指している状態を設定する 4. 目指している状態に向かって繰り返し実行する 1〜4 を何度も繰り返す体系的かつ科学的な仕事のアプローチ © 2022 Servant Works Inc.

19.

組織ゴールと実験ループ(改善のカタ) 出典: 「エビデンスベースドマネジメントガイド」 © 2022 Servant Works Inc.

20.

組織ゴール(ビジネス目標への要素) ビジネス 目標 即時戦術ゴール • 短期目標 • 中間ゴールに 向けた取り組み • チームの目標 中間ゴール • 戦略的ゴールへの 戦略的ゴール • 進捗を示せる目標 • 組織の達成したい 重要な目標 不確実性はあるが、 • 不確実で不確か 不確かでもない • 経験主義が必要 • 実用的な ターゲットが必要 © 2022 Servant Works Inc.

21.

組織ゴールの設定 ❶ 例: 感染症の影響の根絶 (感染者と重症者の数) 戦略的ゴール: 戦略的ゴール • 組織が達成したい重要なもの • 非常に望ましいが未実現の成果に集中し、 • プロダクトのステークホルダーの状況を改善 • 不確実性が高い 例: ワクチンの治験の成功 中間ゴール 中間ゴール: • 達成することで戦略的ゴールの進捗を示せる • 全くわからないわけでもないもの(不確実性はまだ高め) • 実践は、一つに絞る © 2022 Servant Works Inc. 現在の状態

22.

組織ゴールの設定 ❷ 例: ワクチンの試験の成功 中間ゴール 即時戦術ゴール: 現在の状態 • 中間ゴールを目指して取り組む短期的な目標 • チームや複数チームが目指すもの • 不確実性は少ない © 2022 Servant Works Inc. 例: 症状の切り分け、治療法の評価、 ウィルスのDNA配列の特定など

23.

組織ゴールの設定 ❸ 状態: • 開始の状態: 開始時点での戦略的ゴールに対する状態 • どれだけターゲットと離れているか • でも到達可能な見込みがあるか 中間ゴール • 現在の状態: 現在時点での戦略的ゴールに対する状態 • どれだけターゲットに近づけたか • 進展を称賛する|行ったことを検査する • ターゲットは適切か 開始の状態 © 2022 Servant Works Inc. 現在の状態

24.

EBMの実験ループ 経験的な科学的アプローチ © 2021 Servant Works Inc.

25.

実験ループ 実験と計測 仮説 次のターゲット状態へ 向かう1つのアイデア アイデアを試す 先行指標と遅行指標 を計測する • 改善のための仮説を立てる • 実験を行う 実験のループ • 結果を検査する • 学習によって、 ゴールやアプローチを適応させる © 2022 Servant Works Inc. 適応 次は何を試してみるか? EBMのゴールの 調整が必要か? 検査 計測に基づき 何を学んだか?

26.

実験ループ: 改善のための仮説を立てる 仮説 実験 ループ 1. 次のゴールに向かうためのアイデアを考案 2. 実験が成功したかどうかを計測に基づき 適応 どう判断するかを決定 アイデア © 2022 Servant Works Inc. ゴール 実験と計測 成功を定義 OK/NG 検査

27.

仮説 実験ループ: 実験を行い計測する 実験 ループ 1. 実験として、仮説に基づく変更を実行 2. 仮説を実証または、反証するためのデータを収集 実験を実施 © 2022 Servant Works Inc. 実験と計測 データを収集 適応 検査

28.

仮説 実験ループ: 結果を検査する 実験 ループ 1. 結果が計測に基づき改善されているかを確認 2. 何がうまくいき、何がうまくいかなかったを明確化 実行方法 仮説 © 2022 Servant Works Inc. 結果 実験と計測 適応 検査

29.

仮説 実験ループ: 学習しゴールや手段を適応する 実験と計測 実験 ループ 1. 中間ゴールの正当性、戦略的ゴールの妥当性 をもとに見直しを検討する 適応 2. ゴールは、外部要因によって変化することがある 中間ゴール © 2022 Servant Works Inc. • 達成: 新しい中間ゴールを選択 • 未達: 継続・中止・ピボットを判断 戦略的ゴール 適切でなくなった場合: 適応させる|置き換える 検査

30.

価値のあるものとその指標(エビデンス) 活動 アウトプット 目標のために行って いる行動・振る舞い アウトカム(成果) 目標のために作成す るもの ユーザーが体験する 望ましい成果 • 作業の実行 • プロダクトのリリース • ミーティング参加 • レポート • レポート作成 • プロダクトの • 新しい能力 • ・・・ レビューと結果 • 改善された能力 • 以前は達成できなかったも の ・・・ 計測が容易 © 2022 Servant Works Inc. • 計測が困難

31.

計測は重要だが、容易な計測には注意 • 継続できなければ、目標設定も評価もできない • 容易な計測を選択しがちになってしまう • 「活動」と「アウトプット」 • 容易に計測できるものが、目標達成に適切な指標とは限らない: 多くの時間働 く 行動 © 2022 Servant Works Inc. × 多くの機能 を提供する アウトプット = 顧客満足 アウトカム(成果)

32.

EBMの重要価値領域 ビジネス価値領域 (経験的に計測すべき指標の領域) © 2021 Servant Works Inc.

33.

価値の分類 ❶ • 顧客やユーザーの価値 1. 顧客やユーザー: 自分達の世界に及ぼす肯定的な影響を潜在的な価値として予測する 2. のちにそれを価値として確認しようとする 3. 少なくとも、肯定的・否定的であってもアウトカム(成果)が発生する • 組織やチームが目指すもの: インパクトの頻度 • 社会的な価値 • 例えば、SDGsに向けたアウトカム(成果)は、社会的な価値となる • 政治的な意志、目的に沿った熱意・集中・胆力・斬新なアプローチが必要 参考: 「カンバンガイド」、「カンバンガイドの定義集」 © 2022 Servant Works Inc.

34.

価値の分類 ❷ • 知識の価値(≒ 学習) • リスク管理: リスクについて学び、知識を得ることでリスクを下げたり、管理できるようになる • コスト: 何もしないコスト、機会コスト、遅延コスト、発見コスト、提供コスト、失敗需要によるコスト、技術的負債によ るコスト • 学習ループ: シングルループ学習とダブルループ学習 ダブルループ学習 実践 メンタル モデル シングルループ学習 結果 参考: 「カンバンガイド」、「カンバンガイドの定義集」 © 2022 Servant Works Inc. 防衛の メカニズム

35.

価値の分類 ❸ • 組織的な価値 • 組織の評価・評判、健全性、発展性が考慮されること • 新しいプロダクト、顧客の発見・開発、 • 効果性や効率性の向上 • 市場シェアの拡大 • 従業員・顧客・株主の創造性の増加 参考: 「カンバンガイド」、「カンバンガイドの定義集」 © 2022 Servant Works Inc.

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価値の例 プラスティック容器への不満 • 脱プラスティック • コスト削減 → 再利用性(エコ)かつ、衛生的 PoCせずにソリューションを提供 資金と時間を浪費する可能性が高い PoCを実施 【知識の価値】 成否に関わらず学びになる 【顧客の価値】 顧客の要望に望ましいインパクトがある場合 【ユーザーの価値】 購入者の要望に望ましいインパクトがある場合 【組織的な価値】 • 特許や安全基準などの認証機関の認可を得る • 持続可能なコストの顕在化 【社会的な価値】 環境問題改善に寄与 © 2022 Servant Works Inc. 参考: 「カンバンガイド」、「カンバンガイド《付録》実現手段と詳細説明」

37.

重要価値領域(KVA) 市場価値 実現できる 可能性のある 付加価値とは? 未実現の価値 UV 現在の価値 CV 現在、組織が どのような価値を 提供しているのか? アジリティ ビジネス価値 組織は価値の 改善にどれくらい 効果があるのか? イノベーション の能力 A2I 市場に出す までの時間 © 2020 Scrum.org. All Rights Reserved. 組織的な能力 出典: 「エビデンスベースドマネジメントガイド」 © 2022 Servant Works Inc. T2M 新しい価値提供に どれくらいの時間が かかるのか?

38.

重要価値領域(KVA)のイメージ 市場価値と可能性(投資価値) 反応性と効果性 期待するもの 提供しているもの 組織として応える能力 市場競争 (顧客) 市場価値 © 2022 Servant Works Inc. 組織の能力

39.

現在の価値 (CV: Current Value) 現在、プロダクトが提供している価値 目的 • 現時点で組織が顧客とステークホルダーに提供している価値を理解すること • あくまで現在、存在する価値だけに集中すること CVを継続的に評価するための質問: • ユーザーと顧客の満足度合いと傾向 (+ / ー) • 従業員の満足度合いと傾向 (+ / ー) • 投資家やSHの満足度合いと傾向 (+ / ー) © 2022 Servant Works Inc.

40.

未実現の価値 (UV: Unrealized Value) 潜在的なすべての顧客やユーザーのニーズを持たせば実現可能な将来の価値 目的 • これから組織がプロダクトで実現する価値を最大化するのに役立てること • 現在の体験と期待する体験のギャップが機会となる UV UVを継続的に評価するための質問: • 現在または他の市場で組織が追加的な価値を創造できるか • 追加的なUVを獲得するために追加投資すべきか © 2022 Servant Works Inc. = • 未開拓の機会の追求に労力とリスクをかける価値があるか CV ! " # $ 機 会

41.

「未実現の価値(UV)」でビジネス機会を測る • (プロト)ペルソナの数だけ機会を探る × (プロト) ペルソナ プロダクト • プロダクトの未実現の価値: 満足度のギャップすべてを集約したもの 期待する体験 • 顧客に集中する • 従業員、株主、その他の関係者より顧客 • 顧客に集中することでプロダクトの価値を考える 満足度の ギャップ • 未実現の価値に着目し、 プロダクト投資のバランスを取る 現在の体験 © 2022 Servant Works Inc.

42.

市場に出すまでの時間 (T2M: Time-to-Market) 新しい機能やプロダクトをすばやく提供する組織の能力(反応性) 目的 • 組織が価値を提供するのにかかる時間を最小化するため • 価値を持続的に提供する能力があるか T2Mを継続的に評価するための質問: • 新たな実験と情報からどれだけ速く学べるか • 情報をもとにどれだけ速く適応できるのか • 新たなアイデアを顧客にどれだけ速くテストできるのか © 2022 Servant Works Inc.

43.

イノベーションの能力 (A2I: Ability to Innovate) 顧客のニーズをうまく満たせるような新しい機能を提供する組織の効果性 目的 • 組織が価値を提供する能力を最大限に引き出す A2Iを継続的に評価するための質問: • 新しい価値の提供を妨げる要因はなにか • 顧客やユーザーがイノベーションの恩恵を受ける妨げとなる要因はなにか © 2022 Servant Works Inc.

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重要価値指標 (KVM) • それぞれのKVAに基づく計測すべき指標 • EBMでは、明示やガイダンスは示していない • EBMでは、よくある指標を「例示」している © 2022 Servant Works Inc.

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© 2022 Servant Works Inc.

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Measuring Outcome Game • github.com/ScrumFacilitators/measuringoutcome-ja © 2022 Servant Works Inc.

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EBMの始め方 Starting with EBM © 2021 Servant Works Inc.

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EBMに取り組む手順 1. KVAとKVMを検討する 7. 一つだけ実験する 2. ゴールを理解し設定と確認をする 8. 頻繁に、継続的に検査する 3. 手に入る指標から検討・設定する 9. 適応し、必要に応じて実験を変更する 4. KVAのすべての指標を取り入れる 10.チームや組織全体がEBMを理解できるようにする 5. 現在の状態を計測する 11. 可視化でより良い判断を促す 6. エビデンスに基づく意思決定をする 12.リーダーシップを発揮できるようにする 13.経験主義の観点を大事にし、 従来のプロセスや習慣に惑わされない © 2022 Servant Works Inc.

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EBMクイックスタート研修 [PR] • チームで受講する研修 • 1日コース(4時間または、7時間) • 詳しくはこちら: https://bit.ly/ebm_qs © 2022 Servant Works Inc.

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クイックスタート研修 [PR] © 2022 Servant Works Inc.

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提供 アジリティに関する導入・定着化支援サービス、研修サービスを提供いたしま す contact@servantworks.co.jp ご参加くださり、誠にありがとうございました © 2022 Servant Works Inc. © Servant Works Inc.