NDBを⽤いた臨床疫学研究の留意点

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一般社団法人臨床疫学研究推進機構

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1.

NDBを⽤いた臨床疫学研究の留意点 奥村泰之 公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神⾏動医学研究分野 心の健康プロジェクト 第2回NDBユーザー会 2019/8/23 (⾦) 15:00~15:40 株式会社三菱総合研究所

2.

発表の構成 はじめに レセプト情報の落とし⽳ NDB特有の落とし⽳ 研究疑問の落とし⽳ NDBを活⽤した研究成果 体制整備に向けて 2

3.

精神病床への新規入院患者における在院日数 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,立森久照: Journal of Epidemiology. in press. https://doi.org/10.2188/jea.JE20180096 研究の背景 • • 厚生労働省は,新たに入院する精神障害者は,原則 1 年未満で退院する体制を確保するべきとしている。 在院日数は退院促進施策の基盤となる情報であるが,これまでの推計法では,一病院内の在院日数に限 られ転院を考慮できないなど,方法論上の課題があった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2016年3月の間に,精神病床へ新 たに入院した605,982患者について,入院から地域に退院するまでの日数を評価した。 主要な結果 • • 患者全体における360 日以内の退院率は 85.7%であった。 退院率は,入院料や病院ごとに大きく異なっていた。 読売新聞 2018年10月13日

4.

精神科急性期の医師配置水準とアウトカムの関連 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵,佐方信夫: Neuropsychiatric Disease and Treatment 14: 893-902, 2018. https://doi.org/10.2147/NDT.S160176 研究の背景 • 精神病床での医師数は,入院患者48名に対して医師1名と定められている。この数は,一般病床の3分の 1,フランスやイギリスの6分の1に相当する。 平成 26 年度診療報酬改定より「精神科急性期治療病棟入院料1」において,入院患者 16 人に対して医 師1名を配置した場合に,1日 500 点を加算できるようになった。 この加算は,密度の高い医療を提供し在院日数の短縮を図る観点から新設されたものであるが,高水準 の医師配置が患者のアウトカムの向上に寄与するかを検討した研究は国際的にも限られていた。 • • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年10月から2015年9月の間に,精神科急性期 治療病棟へ新たに入院した13,138患者について追跡した。 主要な結果 高水準の医師配置は,①⻑期入院の抑制,②再入院の抑 制,③退院後の受診回数の増加と関連していた。 20 15 21.3 15 再長長長 (%) 長長長長長 (%) 90日日の長長長長 16.9 10 5 0 退長90日日日の再長長 14.4 13.0 10 5 0 高高高 低高高 高高高 低高高 退長90日日日の外外外外回外 構構構長 (%) • 読売新聞 2018年4月14日 30 30.0 20 30.4 医医高高 22.2 17.5 10 20.6 15.0 16.4 17.5 16.9 高高高 13.4 0 0回 1-2回 3-4回 5-6回 7回日回 低高高

5.

精神病床退院後早期の精神科受診と再入院リスクの関連 奥村泰之,杉山直也,野田寿恵: Psychiatry Research 270: 490-495, 2018. https://doi.org/10.1016/j.psychres.2018.10.020 研究の背景 • • • 精神病床退院後早期から精神科へ受診することは,回復と予防を促すために重要と信じられている。 事実,多くの国では,退院後早期の精神科受診を「医療の質」の評価指標としている。 しかし,退院後早期の精神科受診が再入院リスクの減少に寄与するかは,いまだ不明瞭であった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,精神病床へ新 たに入院した統合失調症あるいは双極性障害を有する64歳以下の48,579患者について,入院の180日前か ら,退院の210日後まで追跡して評価した。 主要な結果 • • 毎日新聞 2018年10月29日 退院30日以内に精神科へ受診している割合は85%であり, 米国やカナダよりも高い水準であった。 退院30日以内に精神科へ受診していない人と比べると, 精神科へ受診した人では,その後の180日以内に再入院 する割合が46%低かった (21.7% vs. 37.5%)。 180日日日の再長長 (退長31日日かか210日日) 21.7 外外ああ 早長の精精精外外 外外ああ 37.5 外外なな 0 10 20 再長長長 (%) 30 外外なな

6.

日本における抗認知症薬の処方量 奥村泰之,佐方信夫: International Journal of Geriatric Psychiatry 33: 1286-1287, 2018. https://doi.org/10.1002/gps.4892 研究の背景 • これまでの抗認知症薬のエビデンスには,①臨床試験の参加者と実臨床の年齢層などの乖離が大きい, ②抗認知症薬のリスク・ベネフィットバランスには議論がある,という重大な限界があった。 こうした事実から診療ガイドラインにおいて抗認知症薬処方の推奨度を弱くしている国もあるが,日本 における推奨度は強いため,抗認知症薬の処方量が大きくなっていることが予想される。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2015年4月から2016年3月の間に,抗認知症薬を 処方された1,733,916患者について評価した。 主要な結果 • • 毎日新聞 2018年5月28日 抗認知症薬の人口あたりの処方率は,年齢とともに高くなり, 85歳以上では17%に達していた。 総処方量のうち,85歳以上の患者への処方が47%を占めていた。 抗抗抗抗抗抗処処抗の構構構長 人人あああの抗抗抗抗抗の処処長 17.0 85 歳日回 9.4 80-84歳 年年年年 2.6% 1.2% 6.3% 15.2% 27.8% 0.0 0 70-74歳 75-79歳 0.5 65-69歳 65-69歳 46.8% 1.4 70-74歳 0-64歳 0-64歳 4.2 75-79歳 5 10 処処長 (%) 15 80-84歳 85歳日回

7.

抗認知症薬処方前における甲状腺機能検査の実施率 佐方信夫,奥村泰之: Clinical Interventions in Aging 13: 1219-1223, 2018. https://doi.org/10.2147/CIA.S168182 研究の背景 • • • 認知症の診断では,治療可能な疾患による認知症と不可逆な認知症とを鑑別することが重要である。 甲状腺機能低下症は,認知症を引き起こす疾患であり,甲状腺ホルモンの補充により治療可能である。 そのため診療ガイドラインでは,認知症の診断を進める上で甲状腺機能検査を実施することが推奨され ているが,これまで,その実施状況は不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2015年4月から2016年3月の間に新たに抗認知症 薬を処方された262,279患者について,処方開始前1年間における甲状腺機能検査の実施状況を評価した。 主要な結果 • • 朝日新聞 2018年8月24日 甲状腺機能検査の実施率は33%であった。 認知症疾患医療センターにおける検査の実施率は,診療 所の2.2倍であった。 抗抗抗抗抗の処処処処処1年年にににに甲甲甲甲甲甲甲の実実長 32.6 全全 実施年年 25.8 外認診 全全 外認診 病長 38.3 病長 抗抗抗認認医認セセセセ 57.1 抗抗抗認認医認セセセセ 0 20 40 実実長 (%)

8.

子どもにおけるADHD治療薬の処方実態 奥村泰之,宇佐美政英, 岡田俊, 齊藤卓弥, 根來秀樹, 辻井農亜, 藤田純一, 飯田順三: Epidemiology and Psychiatric Sciences. in press. https://doi.org/10.1017/S2045796018000252 研究の背景 • • • 子どもにおけるADHD治療薬の処方率は地域差が大きく,米国は5.3%であるが,イタリアは0.2%である。 多くの国の薬剤シェアは,メチルフェニデートが他剤を圧倒しているが,日本では特異的な規制がある。 処方率や薬剤シェアに関する情報は,薬物療法へのアクセスや規制の在り方を考える上で重要であるが, これまで日本におけるADHD治療薬の処方実態は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,ADHD治療薬を 処方された18歳以下の86,756患者について評価した。 主要な結果 • • アピタル 2018年6月9日 ADHD治療薬の人口あたりの処方率は,0.4%であった。 メチルフェニデートのシェアは64%に留まっていた。 人人あああの ADHD治認抗の処処長 0.4 全全 ADHD治認抗ののメア 0.3 16-18 歳 4.9% 0.6 13-15 歳 36.3% 0.0 0-6 歳 0.00 0.25 0.50 処処長 (%) 0.75 アアアアセアセ 58.8% 0.8 7-12 歳 1.00 ADHD治認抗 徐徐徐メアメメメメメセア 併併

9.

子どもに対する抗精神病薬の副作用モニタリングの実施率 奥村泰之,宇佐美政英, 岡田俊, 齊藤卓弥, 根來秀樹, 辻井農亜, 藤田純一, 飯田順三: Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology 28: 454-3462, 2018. https://doi.org/10.1089/cap.2018.0013 研究の背景 • • • • 世界中で,抗精神病薬の処方を受ける子どもが増えている。 抗精神病薬使用は,糖尿病発症やプロラクチン上昇と関連することが知られている。 この事実から抗精神病薬を処方する際,血糖検査とプロラクチン検査を実施することが望まれている。 しかし,日本における抗精神病薬の副作用モニタリングの実施率は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2014年4月から2015年3月の間に,抗精神病薬を 新規に処方された18歳以下の43,607患者について評価した。 主要な結果 • • 血糖検査率は,処方時点では13.5%,1年時点では23.8%であった。 プロラクチン検査率は,処方時点では0.6%,1年時点では2.0%であった。 日経新聞 2018年7月26日

10.

過量服薬による再入院リスクの関連要因 奥村泰之,⻄大輔: Neuropsychiatric Disease and Treatment 13: 653-665, 2017. https://doi.org/10.2147/NDT.S128278 研究の背景 • 過量服薬など自傷による入院は,自殺ハイリスク者を適切な治療に繋げる好機であるため,入院中に心 理社会的アセスメントを行うことが推奨されている。 しかし,心理社会的アセスメントが過量服薬による再入院の抑制に寄与するかは不確かであった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2012年10月から2013年9月の間に,過量服薬によ り入院した19~64歳の11,740患者について再入院リスクを評価した。 主要な結果 • • 入院中の精神科医師の関与は,再入院抑制との関連は認められなかった。 退院後のベンゾジアゼピン受容体作動薬処方は,再入院リスクの増大と 強く関連する要因であった。 MedPeer 2017年8月24日

11.

過量服薬による入院の原因薬剤 奥村泰之,佐方信夫,高橋邦彦,立森久照,⻄大輔: Journal of Epidemiology 27: 373-380, 2017. https://doi.org/10.1016/j.je.2016.08.010 研究の背景 • • 過量服薬は,救命救急センターへの搬送率が高いなど,急性期医療資源の負担が大きい傷病である。 過量服薬の原因薬剤に関する情報は,その予防施策を立案・推進するために重要であるが,これまで日 本における過量服薬の実態は,不確かであった。 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,2012年10月から2013年9月の間に,過量服薬によ り入院した21,663患者について評価した。 主要な結果 • • MEDIFAX 2017年3月17日 入院前のベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率は63%であった。 75歳以上では,ジギタリスなど循環器病薬による中毒が多かった。 長長90日日日ののセののアののセ処処長 循循循病抗ににに中中の外診 (T46) 63.1 全全 59.3 75歳日回 4.9 全全 年年年年 24.3 75歳日回 全全 68.1 65-74歳 69.6 50-64歳 62.7 19-34歳 35.9 12-18歳 0 35-49歳 0.2 19-34歳 0.1 40 処処長 (%) 60 80 50-64歳 35-49歳 19-34歳 12-18歳 0-11歳 5.3 0-11歳 20 65-74歳 0.9 12-18歳 1.4 0-11歳 75歳日回 0.8 50-64歳 73.8 35-49歳 4.7 65-74歳 0 10 20 外診長 (%) 30

12.

外来患者に対する抗不安・睡眠薬の処方実態 荒川亮介,奥村泰之,池野敬,金吉晴,伊藤弘人: 臨床精神医学 44 (7):1003-1010. 2015. 研究の背景 • 診療ガイドラインでは,抗不安・睡眠薬処方に対する推奨は慎重であり,短期間の処方に留めるなど, 限定された状況に限られている。加えて,抗不安・睡眠薬の多くを占めるベンゾジアゼピン受容体作動 薬同士の併用については,その有効性を支持する根拠はなく,不合理な多剤処方とみなされている。 これまでの抗不安・睡眠薬の処方実態に関する研究は,健保組合の患者に限られるなど限界があった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースの2011年10月診療分のサンプリングデータセットを用いて, 外来患者 (精神科32,968名,非精神科649,577名) に対する抗不安・睡眠薬の処方率と抗不安・睡眠薬の2剤 以上の処方率について評価した。 主要な結果 • • 抗不安・睡眠薬の処方率は,精神科では75%,非精神科では14%であった。 2剤以上の多剤処方率は,精神科では55%,非精神科では20%であった。 2剤日回の抗抗抗・睡睡抗の処処長 抗抗抗・睡睡抗の処処長 75.3 精精精 54.5 精精精 外認精 精精精 非精精精 14.4 非精精精 0 20.4 非精精精 20 40 処処長 (%) 60 0 20 処処長 (%) 40

13.

統合失調症に対する抗精神病薬の処方実態 奥村泰之,野田寿恵,伊藤弘人: 臨床精神薬理 16: 1201-1215, 2013. 研究の背景 • 統合失調症に対して抗精神病薬を3剤以上の併用することを支持する科学的根拠はない,一方で,高用量 の抗精神病薬使用は副作用発現リスクの増大と関連することが知られている。 これまでの抗精神病薬の処方実態に関する研究は,一部の病院の患者に限られるなど限界があった。 • 研究の方法 • レセプト情報・特定健診等情報データベースの2011年10月診療分のサンプリングデータセットを用いて, 統合失調症患者 (入院7,391名, 外来5,710名) に対する抗精神病薬の3剤以上の処方率について評価した。 主要な結果 • • 朝日新聞 2013年8月20日 入院における抗精神病薬の多剤処方率は42%であった。 外来における抗精神病薬の多剤処方率は19%であった。 長長にににに3剤日回の抗精精病抗の処処長 42.1 全全 19.4 全全 11.5 80歳日回 外外にににに3剤日回の抗精精病抗の処処長 年年年年 2.7 80歳日回 全全 23.1 70-79歳 38.6 60-69歳 11.6 70-79歳 50-59歳 22.1 40-49歳 56.3 40-49歳 22.8 30-39歳 57.0 30-39歳 22.2 52.9 20-29歳 0 20 40 処処長 (%) 80 50-59歳 40-49歳 30-39歳 20-29歳 10-19歳 15.5 10-19歳 60 60-69歳 18.7 20-29歳 37.8 10-19歳 70-79歳 17.9 60-69歳 50.8 50-59歳 80歳日回 0 20 40 処処長 (%) 60 80

14.

タイムライン①サンプリングデータ 「統合失調症に対する抗精神病薬の 処方実態」投稿 承諾通知書の受領 3/28 7/12 2012/4 2013/4 2014/4 2015/4 5/14 申出書の提出 10/16 10/29 データの受領 「外来患者に対する抗不安・睡眠薬 の処方実態」投稿 14

15.

タイムライン②特別抽出 承諾通知書の受領 「過量服薬による⼊院の原因薬剤」 投稿 3/29 11/12 2014/4 2015/4 7/17 申出書の提出 2016/4 2017/4 7/3 データの受領 7/8 「過量服薬による再⼊院リスクの関 連要因」投稿 15

16.

タイムライン③特別抽出 「抗認知症薬処方前における甲状腺 機能検査の実施率」投稿 1/18 「精神病床への新規⼊院患者におけ「日本における抗認知症薬の処方量」 承諾通知書の受領 る在院日数」投稿 投稿 12/20 12/19 2016/4 2017/4 10/21 申出書の提出 1/30 2018/4 9/1 データの受領 2/5 「子どもにおけるADHD治療薬の処 方実態」投稿 12/26 2/28 「精神病床退院後早期の精神科受診 「精神科急性期の医師配置水準とア と再⼊院リスクの関連」投稿 ウトカムの関連」投稿 1/29 「子どもに対する抗精神病薬の副作 ⽤モニタリングの実施率」投稿 16

17.

レセプト情報の落とし⽳ 17

18.

レセプトの種類 医科 DPC ⻭科 調剤 18

19.

レセプトの記載事項 RE IR HO SY SI IY 医療ビッグデータの利活⽤等について (NDBを中心として) (https://www.jahis.jp/files/user/5-1%20赤 ⽻根室⻑特別講演資料.pdf) 19

20.

レコードに含まれる情報 医療機関情報 レコード  都道府県  医療機関コード (匿名化) 傷病名レコード      傷病名コード 診療開始日 転帰区分 疑い病名フラグ 主傷病 レセプト共通 レコード     患者ID1 患者ID2 男⼥区分 年齢階級 保険者レコード  合計点数 診療⾏為レコード     診療⾏為コード 使⽤量 回数 実施日 医薬品レコード     医薬品コード 使⽤量 回数 実施日 20

21.

医療機関情報の落とし⽳ 項目 解説 診療科名 欠測が多いため,大部分のケースでは信頼でき ない。精神科など⼀部の診療科では,診療科に 特有の診療⾏為により類推できる。 病棟名 レセプトに記⼊されていないため,施設内にあ る同⼀⼊院料の複数病棟を判別できない。 21

22.

傷病名情報の落とし⽳ 項目 解説 傷病名 請求のための保険病名が付与されることや,す でに治っている病名が⻑期にわたり付与される ことが珍しくない。 疑い病名 請求のために疑い病名を付与して,検査等を⾏ うことがある。疑い病名のまま,⻑期にわたり 当該傷病の診療がなされることがある。 主傷病 多数の傷病に主傷病フラグが付与されることが ある。 診療開始日 特定⼊院期間のDPCレセプトには診療開始日の 記録がないため,⼊院後に発症した傷病の「発 症日」を特定できない。当該医療機関の診療開 始日であり,実際の診療開始日ではない。 22

23.

診療⾏為情報の落とし⽳ 項目 解説 ⼊退院日 レセプトには正確な⼊退院日の記録がない。 DPCレセプトの⼊退院日と,医科レセプトと包 括対象医科レセプトの⼊院料等の算定により⼊ 退院日を推定する必要がある。 緊急⼊院 医科レセプトでは,緊急⼊院・予定⼊院を区別 できない。 救急受診 休日加算・深夜加算が算定される状況を除いて, 救急受診を特定できない。 検査の状況 ⼀部の特定⼊院料や管理料では,検査が包括算 定になるため,検査の状況を把握できない。 23

24.

医薬品情報の落とし⽳ 項目 解説 処方量 特に,外用薬・頓用薬では,1日あたりの処方 量を正確に求められない。 投薬の状況 ⼀部の特定⼊院料や管理料では,投薬が包括算 定になるため,投薬の状況を把握できない。 24

25.

その他の落とし⽳ 項目 解説 点数 費⽤を要因分解することは難しい (例: 心不全と 糖尿病による医療費を分けて計上)。 DPCレセプト 特定⼊院期間を超えるDPCレセプトでは,コー ディングレコードに重複して,診療⾏為と医薬 品情報が記録されているため,重複を除外する 必要がある。 実施日 診療⾏為・医薬品情報の実施日の記録は,医科 レセプトでは,2012年4⽉診療分以降に義務化 された。実施日が重要となる研究は2012年度以 降にする必要がある。 25

26.

⼊退院日の推定法 算定開始日を「⼊院日」 算定終了日を「退院日」とみなす 今回⼊院年⽉日注 今回退院年⽉日 (追跡終了日) ⼊院中の年⽉日 DPC-BUレコード DPC-BUレコード 変換 ⼊院中の年⽉日1 ⼊院中の年⽉日2 統合 算定開始日 2日目 ⼊院中の年⽉日3 3日目 SIレコード ・ ・ ・ ⼊院料等の算定日1 ⼊院料等の算定日2 算定終了日 ⼊院料等の算定日3 注. DPCにおける7日以内の再⼊院は,⼀連の⼊院とみなされるため, 外泊レコードを参照する必要がある 26

27.

⼊退院(棟)エピソードのバリエーション エピソード 定義 全べての⼊退院 ⼊院料の算定開始日から終了日まで 病床区分の⼊退棟 当該病床区分の算定開始日から終了日 まで (例: 精神病床への⼊退棟) ⼊院料の⼊退棟 当該⼊院料の算定開始日から終了日ま で (例: 救命救急⼊院料への⼊退棟) ⼀施設の⼊退院 当該施設における⼊院料の算定開始日 から終了日まで 27

28.

傷病名情報のバリエーション 項目 医科レセプト DPCレセプト 傷病名コード ○ ○ ICD-10コード × ○ 疑い病名フラグ ○ ○ 主傷病フラグ ○ × (傷病名区分で類推可) 傷病名区分コード × ○ 診療開始日 × ○ 28

29.

傷病名コードに対応するICD-10コード のバリエーション 2つのICD-10コード 傷病名 血管性認知症 傷病名 ICD-10-1 ICD-10-2 コード (基礎疾患の (症状発現の分 分類番号) 類番号) 8842571 F019 アルツハイマー型認知症 8842549 G309 F009 前頭側頭葉型認知症 8844891 G310 F020 レビー小体型認知症 8845840 G318 F028 29

30.

傷病名情報の利⽤法による影響 精神病床⼊院204,003名 ICD-10-1 ICD-10-1 + ICD-10-2 ICD-10-1 + ICD-10-2 + 主主病に限に 78.2 統統統統抗 78.1 53.6 患者調査54% 精神保健福祉資料53% 2.7 抗抗抗 20.2 13.9 0 20 患者調査19% 精神保健福祉資料25% 40 60 80 100 構構構統 (%) 奥村泰之, 佐方信夫:傷病名情報の利⽤法による患者数推計に及ぼす影響の検討. 厚生労働科 学研究費補助⾦ 研究分担報告書 30

31.

投薬や検査が包括評価となる対象例① 対象 医科レセプトにおける 特定⼊院料 療養病棟⼊院基本料 レセプトでの 記録状況 投薬 × 検査 × × × コメント ●特掲診療料 (投薬・検査など) の 多くが包括評価となる。 ●児童・思春期精神科⼊院医療管理 料では投薬が包括範囲外であるな ど,特定⼊院料の種類によって包 括範囲が異なる。 ●特定⼊院料の算定があっても, DPCレセプトではコーディング データレコードに投薬と検査の状 況が記録されている。 ●投薬と検査の多くが包括評価 ●出来高評価の薬剤は、抗悪性腫瘍 剤、医療⽤⿇薬などに限定 31

32.

投薬や検査が包括評価となる対象例② 対象 レセプトでの 記録状況 投薬 × 検査 × 有床診療所療養病床⼊ 院基本料 × × 短期滞在⼿術等基本料 △ △ 特定⼊院基本料(障害 者施設等⼊院基本料) コメント ●障害者施設等⼊院基本料を算定す る病棟に90日を超えて⼊院してい る患者は,投薬と検査の多くが包 括評価となる。 ●投薬と検査の多くが包括評価とな る。 ●血液形態・血液化学検査などが包 括評価となる。 ●短期滞在⼿術等基本料3の場合、 投薬と検査の多くが包括評価とな る。 32

33.

投薬や検査が包括評価となる対象例③ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 ○ 検査 △ 生活習慣病管理料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 慢性維持透析患者外来 医学管理料 ○ △ ●便・尿・血液形態・血液化学検査 などが包括評価となる。 ⼩児科外来診療料 △ × ⼩児かかりつけ診療料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 ●検査は包括評価となる。 外来診療料 ●便・尿・血液形態検査の⼀部が包 括評価となる。 33

34.

投薬や検査が包括評価となる対象例④ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 ○ 検査 × 認知症地域包括診療料 ○ × ●550点未満の検査は包括評価とな る。 ⼿術前医学管理料 ○ △ ●⼿術前1週間以内に⾏う,血液形 態・血液化学検査などが包括評価 となる。 ⼿術後医学管理料 ○ △ ●⼿術後3日以内に⾏う,血液形 態・血液化学検査などが包括評価 となる。 地域包括診療料 ●550点未満の検査は包括評価とな る。 34

35.

投薬や検査が包括評価となる対象例⑤ 対象 レセプトでの 記録状況 コメント 投薬 △ 検査 ○ 在宅がん医療総合診療 料 △ × ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 介護⽼⼈保健施設 ・介護療養型医療施 設・介護医療院 × × ●⼀部を除き,介護保険で給付され る。 在宅時医学総合管理 料・特定施設⼊居時等 医学総合管理料 ●院内処方の場合,投薬が包括評価 となる。 35

36.

NDB特有の落とし⽳ 36

37.

商⽤DBとNDBの相違 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 全ての項目を利⽤できない 全てのレセ電算コードを利⽤できない 医薬品マスタ等の整備が必要 医療機関マスタの整備が必要 診療年⽉の統合が必要 レコードの共通化が必要 患者IDがユニークではない 被保険者台帳がない 37

38.

全ての項目を利⽤できない 出⼒する項目に○ レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するホームページ (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/reseputo/index.html) 38

39.

全てのレセ電算コードを利⽤できない レセプト情報・特定健診等. 情報データベースの第三者提供 (https://www.mhlw.go.jp/file/06Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000117728.pdf) 39

40.

医薬品マスタ等の整備が必要* *診療⾏為・傷病名マスタも整備する データ抽出期間とソースマス タの年次を合わせる ⼀般名・薬剤クラス・⽤量を 付与 レセ電算コード 商品名 ⼀般名 薬剤クラス 用量 610406268 プリンドリル錠3 3mg bromperidol 定型抗精神病薬 3 610406269 プリンドリル錠6 6mg bromperidol 定型抗精神病薬 6 610406361 ルナプロン錠3mg bromperidol 定型抗精神病薬 3 610463035 インプロメン細粒1% bromperidol 定型抗精神病薬 10 40

41.

医療機関マスタの整備が必要* *医療機関は都道府県コードと医療機関コードで⼀意になる 施設類型を付与 都道府県コード 医療機関コード 施設類型 01 0110210 診療所 01 0111085 その他の病院 01 0116381 大学病院等 41

42.

診療年⽉の統合が必要 レセプト種類×診療年⽉×レコードごとに ファイルが存在 MED ├─201301 │ MED_HO.csv │ MED_IR.csv │ MED_IY.csv │ MED_RE.csv │ MED_SI.csv │ MED_SY.csv │ ├─201302 │ MED_HO.csv │ MED_IR.csv │ MED_IY.csv │ MED_RE.csv │ MED_SI.csv │ MED_SY.csv DPC ├─201301 │ DPC_BU.csv │ DPC_CD.csv │ DPC_HO.csv │ DPC_IR.csv │ DPC_IY.csv │ DPC_RE.csv │ DPC_SB.csv │ DPC_SI.csv │ DPC_SK.csv │ DPC_SY.csv │ ├─201302 │ DPC_BU.csv │ DPC_CD.csv │ DPC_HO.csv │ DPC_IR.csv │ DPC_IY.csv │ DPC_RE.csv │ DPC_SB.csv │ DPC_SI.csv │ DPC_SK.csv │ DPC_SY.csv PHA ├─201301 │ PHA_CZ.csv │ PHA_HO.csv │ PHA_IY.csv │ PHA_RE.csv │ PHA_SH.csv │ ├─201302 │ PHA_CZ.csv │ PHA_HO.csv │ PHA_IY.csv │ PHA_RE.csv │ PHA_SH.csv 統合 統合MED │ MED_HO │ MED_IR │ MED_IY │ MED_RE │ MED_SI │ MED_SY 統合DPC │ DPC_BU │ DPC_CD │ DPC_HO │ DPC_IR │ DPC_IY │ DPC_RE │ DPC_SB │ DPC_SI │ DPC_SK │ DPC_SY 統合PHA │ DPC_BU │ DPC_CD │ DPC_HO │ DPC_IR │ DPC_IY │ DPC_RE │ DPC_SB │ DPC_SI │ DPC_SK │ DPC_SY 42

43.

レコードの共通化が必要 3つのキーにより連結可能 (レセプト通番, ID1, ID2) 共通RE 共通SY (レセプトテーブル) (傷病テーブル) 共通IY 共通SI (医薬品テーブル) (診療⾏為テーブル) 43

44.

レコードの共通化が必要(共通RE) 連結キー 項目 医科 DPC 調剤 診療年⽉ RE RE RE ⼊院年⽉日 BU 退院年⽉日 BU 性別 RE RE RE 年齢区分 RE RE RE 医療機関コード IR IR RE 都道府県 IR IR RE ⼊院外来区分 RE ー ー 点数 HO HO HO レセプト通番 ー ー ー ID1 ー ー ー ID2 ー ー ー 44

45.

レコードの共通化が必要(共通SY) 特定⼊院期間は傷病名区分(医療資源病名/続発 症など)の記録があるが,診療開始日がない 項目 医科 DPC 調剤 傷病名コード SY SB/SY ー ICD-10コード ー SB ー 疑い病名フラグ SY SB/SY ー 主傷病フラグ SY SY ー 傷病名区分 ー SB ー 診療開始日 SY SY ー 転帰区分 SY BU/SY ー レセプト通番 ー ー ー ID1 ー ー ー ID2 ー ー ー 45

46.

レコードの共通化が必要(共通SI) 特定⼊院期間を超える場合の 重複を消す必要がある 項目 医科 DPC 調剤 診療⾏為コード SI CD/SI ー 実施日 SI CD/SI ー 数量 SI CD/SI ー レセプト通番 ー ー ー ID1 ー ー ー ID2 ー ー ー 46

47.

レコードの共通化が必要(共通IY) 特定⼊院期間を超える場合の 重複を消す必要がある 項目 医科 DPC 調剤 医薬品コード IY CD/IY IY 処方日 IY CD/IY CZ 調剤日 ー ー CZ 使⽤量 IY CD/IY CZ 頓服フラグ IY CD/IY SH レセプト通番 ー ー ー ID1 ー ー ー ID2 ー ー ー 47

48.

患者IDがユニークではない 項目 解説 ID1 保険者番号・被保険者番号・記号・生年⽉日・性 別から生成される。離職などの影響を受ける。 ID2 ⽒名・生年⽉日・性別から生成される。医療機関 間における表記揺れなどの影響を受ける。 48

49.

⼀部の集団が含まれていない 集団 大きさ 生活保護受給者 212万人[1] 公費単独は収集対象外 37万床[2] 介護⽼人保健施設 介護療養型医療施設 5万床[2] 介護医療院 1万床[3] の⼊所者 理由 ⼀部を除き介護保険で給付される 交通事故者* 116万件[4] ⼀部を除き自賠責保険等で給付される 労働災害被災者* 160万件[5] 労災保険で給付される 正常分娩者* 77万人[6-7] 自費で支払われる 紙レセプト 1.5%[8] 紙レセプトは収集対象外 *商⽤DBの被保険者でも同様の問題は生じる [1] 平成29年度被保護者調査: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16.html [2] 平成29年介護サービス施設・事業所調査︓ https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/24-22-2.html [3] 介護医療院の開設状況について: https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000505270.pdf [4] 2017年度自動⾞保険の概要: https://www.giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2017.pdf [5] 平成29年度労災保険事業年報: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/hoken-jigyo/gaiyou/h29_nenpou.html [6] 平成29年人⼝動態調査: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html [7] 平成29年医療施設 (静態・動態) 調査: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/dl/09gaikyo29.pdf [8]レセプト請求形態別の請求状況: https://www.ssk.or.jp/tokeijoho/tokeijoho_rezept/tokeijoho_rezept_h30.files/seikyu_3103.pdf 49

50.

被保険者台帳情報がない 特定日にレセプト発生していない理由* を判別できない *①未受診,②生活保護受給,③死亡 項目 内容 被保険者番号 ID 資格取得日 保険の加⼊日 資格喪失日 保険の離脱日 資格喪失事由 死亡等の離脱理由 50

51.

研究疑問の落とし⽳ 51

52.

発症から治療までの時間 DB診断 発症 異変の 認識 受診 診断 治療 52

53.

DB診断は最下層 病気の発症 臨床診断 DB診断 53

54.

DB診断には誤分類バイアスが存在* *臨床診断にも存在 臨床診断 (reference standard) DB上の 診断 (index test) 陽性 陰性 陽性 A (真陽性) C (偽陽性) 陰性 B (偽陰性) D (真陰性) レセプト診断では 「せん妄」は 過少になる レセプト診断では 「統合失調症」は 過剰になる 54

55.

誤分類バイアスの要因 偽陽性 偽陰性 服薬アドヒアランスの不良 市販薬の服⽤ 適応外処方のための病名 適応症のない病名 医療保険外の診療 (労災など) ⼀般健康診断における検査 包括算定における検査・処方 55

56.

感度=病気ありを当てる割合 特異度=病気なしを当てる割合 臨床診断 (reference standard) DB上の 診断 (index test) 陽性 陰性 陽性 A (真陽性) C (偽陽性) 陰性 B (偽陰性) D (真陰性) 感度 A/(A+B) 特異度 D/(C+D) 56

57.

陽性適中率=検査陽性の内,正しい割合 陰性的中率=検査陰性の内,正しい割合 臨床診断 (reference standard) 陽性 DB上の 診断 (index test) 陽性 陰性 A (真陽性) B (偽陰性) 陰性 C (偽陽性) 陽性適中率 A/(A+C) D (真陰性) 陰性適中率 D/(B+D) 57

58.

指標の重要性,DB診断の使い方に依存 指標 DB診断の使い方 感度  割合の高い曝露の定義 特異度  アウトカムの定義  割合の低い曝露の定義 陽性適中率  患者の選択基準 陰性適中率  患者の除外基準 Chubak J et al: J Clin Epidemiol. 2012 Mar;65(3):343-349 58

59.

曝露の精度によるバイアス 割合の高い曝露では 感度の影響が大きい 割合の低い曝露では 特異度の影響が大きい (例: ICUのせん妄, 外来高齢者のNSAIDs服⽤) 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 感感 -30 -20 -10 0 0.5 曝曝の構統 -40 1% 10% 50% 80% -50 -40 1% 10% 50% 80% リリリ構の減減長 (%) -10 -20 -30 曝曝の構統 -50 リリリ構の減減長 (%) 0 (例: ⼀般外来の統合失調症) 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 特特感 注) 真のリスク比が2.0で,曝露に非差異的誤分類が生じる場合 (図左: 特異度100%,図右: 感度100%) Chubak J et al: J Clin Epidemiol. 2012 Mar;65(3):343-349 59

60.

アウトカムの精度によるバイアス 発生率の低いアウトカムでは 特異度の影響が甚大 感度の影響は⼩さい (例: ⼀般外来の統合失調症) 0.2 0.4 0.6 0.8 50% 20% 10% 1% -40 -30 -20 -10 0 0.0 アアアアアの発発長 -50 -40 50% 20% 10% 1% リリリ構の減減長 (%) -10 -20 -30 アアアアアの発発長 -50 リリリ構の減減長 (%) 0 (特異度100%の場合は影響なし) 1.0 感感 0.90 0.92 0.94 0.96 0.98 1.00 特特感 注) 真のリスク比が2.0で,アウトカムに非差異的誤分類が生じる場合 (図左: 特異度99%,図右: 感度100%) Chubak J et al: J Clin Epidemiol. 2012 Mar;65(3):343-349 60

61.

有病率×精度による選択基準の適中率 有病率が低いと 特異度の影響が甚大 感度の影響は⼩さい (特異度100%の場合は影響なし) 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 感感 (図左: 特異度99%,図右: 感度100%) Chubak J et al: J Clin Epidemiol. 2012 Mar;65(3):343-349 40 60 80 100 0.0 有病長 20 50% 10% 5% 1% 0.1% 0 20 50% 10% 5% 1% 0.1% 陽陽陽中長 (%) 80 60 40 有病長 0 陽陽陽中長 (%) 100 (例: ⼀般外来の統合失調症) 0.90 0.92 0.94 0.96 0.98 1.00 特特感 61

62.

有病率×精度による除外基準の適中率 感度の影響は⼩さい 特異度の影響は⼩さい 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 感感 80 60 40 有病長 20 50% 10% 5% 1% 0.1% 0 20 50% 10% 5% 1% 0.1% 陰陽陽中長 (%) 80 60 40 有病長 0 陰陽陽中長 (%) 100 (感度100%の場合は影響なし) 100 (特異度100%の場合は影響なし) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 特特感 (図左: 特異度99%,図右: 感度99%) Chubak J et al: J Clin Epidemiol. 2012 Mar;65(3):343-349 62

63.

研究疑問の妥当性を類推 有病率は0.2%程で, 陽性適中率が悪いかも Patient: 過量服薬診断を有する⼊院 Exposure: 精神科コンサルあり 曝露の割合は30%程で,感 度・特異度は高いだろうか らバイアスは⼩さいかも Control: 精神科コンサルなし Outcome: 過量服薬による再⼊院 アウトカムの発生率は10%程 で,特異度は高いだろうから バイアスは⼩さいかも Okumura Y, Nishi D: Neuropsychiatr Dis Treat. 2017 Mar 2;13:653-665. 63

64.

日本発のバリデーション研究[1] 文献 データ源 [2] 4つの病院において胃切除術 のために⼊院した胃がん患 者 (n = 584) [3] 健康保険組合の加⼊者 (n = 195,193) 被保険者台帳における レセプトにおける死亡 死亡 [4] 1つの病院の⼊院・外来患者 (n = 50,056) がん登録における乳が レセプトにおける乳がん ん [5] 1つの病院においてオピオイ ドが処方された⼊院患者 (n = 1,158) 診療録におけるオピオ レセプトにおけるオピオ イド処方 イド処方 [6] 1つの病院の⼊院・外来患者 (n = 120) 診療録における診断名 レセプトにおける診断名 [7] 4つの病院における⼊院患者 (n = 315) 診療録における診断・ DPCデータにおける診 診療⾏為 断・診療⾏為 Index test Reference test 診療録における医療関 レセプトにおける抗菌薬 連感染 の処方パターン [1] Koram N et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2019 Feb;28(2):156-170. [2] Lee J et al: J Hosp Infect. 2011 Apr;77(4):316-20. [3] Ooba N et al: PLoS One. 2013 May 31;8(5):e66116. [4] Sato I et al: Biol Pharm Bull. 2015;38(1):53-7. [5] Iwamoto M et al: Jpn J Clin Oncol. 2015 Nov;45(11):1036-41. [6] Takeda T et al: Stud Health Technol Inform. 2016;228:537-41. [7] Yamana H et al: J Epidemiol. 2017 Oct;27(10):476-482. 64

65.

バリデーション研究の推進が喫緊の課題 Koram N et al: Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2019 Feb;28(2):156-170. 岩上ら: 薬剤疫学 23: 95-123, 2018. 65

66.

第35回REQUIRE研究会 9/7 (土) 13:00~18:[email protected]東京医科⻭科大学 バリデーション研究の計画・報告・活用: 大規模医療データベースを活用する研究基盤 演題 演者 バリデーション研究の⼊門 奥村泰之 (東京都医学総合研究所) バリデーション研究の報告事例 二宮英樹 (慶應義塾大学) バリデーション研究の書き方 清水沙友⾥ (医療経済研究機構) バリデーション研究の活⽤法 竹内由則 (東京大学) REQUIRE研究会: http://blue.zero.jp/yokumura/workshop.html 66

67.

NDBを活用した研究成果 67

68.

NDBの第3者提供(2011年度~) 第三者提供の現状について (https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000520125.pdf) 68

69.

239件の承認 第三者提供の現状について (https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000520125.pdf) 69

70.

検索式* 査読付き論⽂に限る PubMed (claims and NDB) OR (National Database of Health Insurance Claims) OR (National Database of Health Insurance Claim) OR (National Database of Japanese Health Insurance Claims) AND (Japan OR Japanese) 医中誌 (レセプト情報・特定健診等情報データベース/AL) or (ナショナルデータベース /AL) and (AB=Y) 70

71.

乏しい研究成果(2019/5/9時点) 特別抽出31,サンプリングデータ9,集計表情報9,オープンデータ15 20 10 Frequency 15 Category 特特特特 1 サセサリセサメセセ 10 集集集集集 4 6 オセサセメセセ 3 5 5 1 0 2 4 8 2 3 0 4 1 0 0 0 2 0 2013 2014 2015 2016 0 1 5 2 2017 2018 2019 Year 71

72.

特別抽出① 主著者 出版年 雑誌 内容 髙田充隆 2013 医療薬学 2010年に低⽤量アスピリン療法を受けた患者のうち, プロトンポンプ阻害薬の併⽤率は,腸溶性製剤では 24%,制酸緩衝製剤では17%であった。 Shinya Matsuda 2014 Asian Pac J Dis Manage 福岡県における2010年10⽉の国⺠健康保険と後期高 齢者医療制度等の加⼊者において,脳梗塞による急 性期治療の二次医療圏内の治療完結率が,80%を超え る医療圏は6つであった。 Shinya Matsuda 2014 Asian Pac J Dis Manage 福岡県における2010年10⽉の国⺠健康保険と後期高 齢者医療制度等の加⼊者において,精神科救急を除 き,精神疾患による二次医療圏内の治療完結率は高 いことが示された。 Etsuji Okamoto 2014 J Epidemiol 2009年度の特定健診受診者における,2010年度の医 科・調剤レセプトの全医療費に対する,特定健診と 医療情報を突合できた人の医療費は,15%であった。 宮川尚子 2014 日本公衛誌 滋賀県における2010年度の特定健診受診者において, コントロール率は,高血圧では約55%であった。 72

73.

特別抽出② 主著者 出版年 雑誌 内容 柴田亜希子 2014 厚生の指標 2010年8⽉~2011年3⽉の間に,悪性新生物の診断名 を有するレセプト件数は,平均240万件であり,患者 調査の総患者数150万人と比較して1.6倍上回った。 Hiromi Hagiwara 2015 J Clin Pharm Ther 2010年3⽉の安全性情報の発出前後3か⽉間に,メト トレキサート処方を受けた患者における,肝炎ウィ ルマーカーのモニタリング実施率は,1.4%から1.8% に上昇した。 Kiyoshi Kubota 2015 BMJ Open 2010年4⽉~2011年3⽉の間に,乾癬 (かんせん) ある いは掌蹠膿疱症 (しょうせきのうほうしょう) の診断 名を有する人⼝あたり患者数は,それぞれ,0.34%と 0.12%であった。 Tetsuya Otsubo 2015 J Stroke Cerebrovasc Dis 2010年4⽉~2012年3⽉の間に急性脳梗塞により⼊院 した患者のうち,二次医療圏内の循環器医師が高配 置地域 (上位20%) における院内死亡率は6.7%である, ⼀方で,低配置地域における (下位20%) 院内死亡率 は8.7%であった。 73

74.

特別抽出③ 主著者 出版年 雑誌 内容 細⾒光⼀ 2016 医療薬学 2010年7⽉~2012年12⽉の間に,抗精神病薬の処方を 新たに受けた患者において,非定型抗精神病薬処方 と錐体外路症状診断との関連性が認められた⼀方で, 定型抗精神病薬処方では関連性が認められなかった。 恒⽯美登⾥ 2016 日本⻭科医 療管理学会 雑誌 2013年3⽉に,⻭周炎の診断名を有する40歳以上の患 者において,⻭数が20以上の者は,19以下の者と比 べて,医療費が低かった。 Takefumi Kitazawa 2017 Transplant Proc 2009年4⽉~2010年3⽉の間に,臓器移植 (腎臓・肝 臓・骨髄・末梢血幹細胞) を受けた患者において,移 植⽉の平均医療費は生体肝移植が最も高く495万円で あった。 野田龍也 2017 厚生の指標 2013年4⽉~2014年3⽉の間のレセプト情報を基に, 追跡可能性が向上する名寄せ方法を開発した。 Satoshi Toyokawa 2017 Dev Med Child Neurol 2012年6⽉~2013年3⽉の間に,脳性⿇痺の診断名を 有する20歳未満の人⼝1000人あたり患者数は,4歳に ピークに達し (2.39人),その後,年齢と共に減少する ことが示された。 74

75.

特別抽出④ 主著者 出版年 雑誌 内容 恒⽯美登⾥ 2017 ⽼年⻭学 2013年3⽉に⻭周炎あるいは欠損⻭の診断名を有する 65歳以上の患者において,⻭数が少ないほど,誤嚥 性肺炎の診断オッズが高かった。 Akazawa Manabu 2018 Neuromodul ation 2009年3⽉~2015年12⽉の間に脳深部刺激療法を受け た患者を対象として,20年間の維持費⽤は,非充電 式よりも充電式の方が837万円低いことが示された。 Misuzu Fujita 2018 J Viral Hepat 2013年4⽉~2014年3⽉の間に免疫抑制療法を開始し たリウマチ患者を対象として,2年間の追跡時点にお けるB型肝炎ウィルスの再活性化率は,HBV-DNAモ ニタリング実施者では1.57%であることが示された。 Haruhisa Fukuda 2018 Pharmacoec onomics 2010年4⽉~2016年12⽉の間の⼊院患者を対象に, ディフィシル菌感染症を発症することによる増分医 療費は$3213であることが示された。 75

76.

特別抽出⑤ 主著者 出版年 雑誌 内容 Miho Ishimaru 2018 Br J Surg 2012年5⽉~2015年12⽉の間に,腫瘍 (頭頸部) 切除・ 摘出術を受けた患者のうち,術前に⻭科医による⼝ 腔ケアを受けた者は,受けていない者と比較して, 術後30日以内の死亡率が0.48%低かった。 Yoko Nakao 2018 PLoS One 2008年4⽉~2009年3⽉の間における特定保健指導の 該当者のうち,指導を受けた者は,受けていない者 より,3年後の腹囲とBMIの改善率が高かった。 Shuichiro Hayashi 2019 Bone 2013年4⽉~2016年3⽉の間に,骨折の傷病名を受け た患者のうち,0~19歳の者は春と秋,65歳以上の者 は冬に,発生率が高かった。 Naomi Iihara 2019 Biol Pharm Bull 2013年3⽉~2014年9⽉の間に,4部位 (上腕骨近位部, 橈骨遠位端,椎体,大腿骨近位部) に関する脆弱性骨 折の定義を満たす65歳以上の患者のうち,⼊院を要 する割合は,大腿骨近位部骨折では80%であるのに対 し,他の骨折では10%であった。 Kiyohiko Izumi 2019 Ann Am Thorac Soc 2011年1⽉~12⽉の間に非結核性抗酸菌症の傷病名か つ処方薬を受けている患者を対象に,非結核性抗酸 菌症の発症率は人⼝10万人年あたり8.6であることが 示された。 76

77.

サンプリングデータ① 主著者 出版年 雑誌 内容 飯原なおみ 2014 医療薬学 2011年10⽉診療分の外来で処方を受けた患者のうち, 43%に運転等禁止薬が処方されていた。 關真美 2014 医療情報学 2011年10⽉診療分の外来で内服薬併⽤処方を受けた 患者のうち,47.3%に併⽤注意薬,0.2%に原則併⽤注 意薬,0.1%に原則併⽤禁忌薬が処方されていた。 木村通男 2015 医療情報学 2011年10⽉診療分の⼊院と外来で診療情報提供料が 算定された患者を対象に,紹介時同⽉内異施設同⼀ 検査の不必要な実施率が,αFPでは2.7%,HbA1cでは 3.3%,CTでは0.61%,MRIでは0.25%にみられること が示された。 Naomi Iihara 2016 J Clin Pharm Ther 2011年と2012年の10⽉診療分の外来で処方を受けた 患者を対象に,転倒関連骨折と運転等禁止薬との間 に⽤量反応関が示された。 77

78.

サンプリングデータ② 主著者 出版年 雑誌 内容 佐藤悠子 2016 Palliat Care Res 2012年10⽉診療分の⼊院と外来で死亡したがん患者 を対象に,死亡14日以内の心肺蘇生術の実施割合は, ⼊院では8.2%,外来では3.3%であることが示された。 Hiromi Hagiwara 2017 Yakugaku Zasshi 2011年10⽉診療分の⼊院と外来で降圧薬処方を受け ている55歳以上の患者のうち,心血管疾患と腎障害 を併発していない患者と比べ,併発している患者は, 多剤併⽤療法で厳密な血圧コントロールがなされて いる傾向が示された。 Mai Sato 2018 J Matern Fetal Neonatal Med 2011年~2014年10⽉診療分の⼊院患者を対象として, 分娩後異常出血となる症例は,年々増加しているこ とが示された。 78

79.

集計表情報① 主著者 出版年 雑誌 内容 中村裕樹 2015 感染症学雑誌 2010年4⽉~2013年3⽉の間における水痘患者数は, NDBと薬局サーベイランスでは48%乖離していた。 中村裕樹 2015 厚生の指標 2010年~2013年の9⽉から3⽉の間におけるインフル エンザ患者数は,NDBと薬局サーベイランスでは 25%乖離していた。 Yuuki Nakamura 2015 Jpn J Infect Dis 2010年~2013年の9⽉から3⽉の間におけるインフル エンザ患者数は,NDBと比較し,感染症サーベイラ ンスは1.6~1.9倍の値であった。 Yuuki Nakamura 2015 J Infect Chemother NDBと感染症サーベイランスにおける感染症患者数 の乖離率は,⼿⾜⼝病とインフルエンザでは20%以 上であった。 Yuta Hayashi 2018 Asian Pacific Journal of Health Economics and Policy 2010年4⽉~2016年3⽉の間において,全国で認知療 法の算定を受けた患者は,年間1万人前後を推移し ていた。 79

80.

集計表情報② 主著者 出版年 雑誌 内容 Eri Maeda 2018 J Obstet Gynaecol Res 2013年1⽉~12⽉の間に,出生数に対する帝王切開術 を受けた人の割合は19%であり,都道府県間で1.5倍 の開きがあった。 Yasushi Ohkusa 2018 Biosci Trends 2010年~2013年のシーズン (9⽉から3⽉) の間におい て,感染症サーベイランスとNDBの都道府県別の, インフルエンザの発生率の相関は,0.39~0.78であっ た。 Daisuke Ya masaki 2018 Infection 2011年1⽉~2013年12⽉の間において,NDBと販売 実績の抗菌薬処方量の相関は0.98以上であった。 Junko Tamaki 2019 Osteoporos Int 2012年~2015年の間における,大腿骨頸部骨折の年 齢調整済み発症率は,男⼥ともに経年変化が認めら れなかった。 80

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体制整備に向けて 81

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研究体制,多職種共同が不可欠 着想 計画 整理 • 医療従事者 • レセプト構造 • レセプト構造 • 政策担当者 • 疫学 • データハンドリング 解析 解釈 報告 • 疫学 • 医療従事者 • 疫学 • 統計学 • 政策担当者 • 医学 82

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出版までのエフォート感覚 研研集研 メセセデセデリセサ 統集統統 執執 エンジニアの要素が膨大 10 0 60 20 40 10 60 20 80 100 エメエセアの構構構 (%) 83

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ハンドリング委託の留意点 レセプト構造の理解 疫学の理解 依頼元 レセプト構造の理解 医学の理解 ハンドリング担当者 無数の意思決定の 情報共有と記録 84

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緩やかにステップ・アップ いきなり高ハードルに ⾶び込まない︕︕ 年齢 主なデータ源 37~39歳 NDB特別抽出 2回目: 900万人年 1回目: 6万人年 34~36歳 NDBサンプリングデータ JMDCデータベース 処方箋データベース 31~33歳 DPCデータベース 27~30歳 大規模調査データ 85

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Take Home Messages NDBには無数の落とし⽳がある 経験者へのコンサルを 経験者間のノウハウ共有が課題 科学的批判の⽂化醸造が必要 奥村泰之, 佐方信夫, 清水沙友⾥, 松居宏樹: Monthly IHEP 268: 16-25, 2017. 福田治久, 佐藤大介, 白岩健, 福田敬: 保険医療科学 68: 158-167, 2019 87