[DL輪読会]マルチエージェント強化学習と?の理論 ?Hanabiゲームにおけるベイズ推論を?いたマルチエージェント 強化学習?法?

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September 17, 21

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2021/09/16
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1.

マルチエージェント強化学習と⼼の理論 DEEP LEARNING JP 〜Hanabiゲームにおけるベイズ推論を⽤いたマルチエージェント [DL Papers] 強化学習⼿法〜 9/17 今井翔太 えるエル@ImAI̲Eruel Matsuo Lab http://deeplearning.jp/ 1

2.

書誌情報 2 マルチエージェント強化学習で「⼼の理論」と関連する(と主張する)研究の⼀部を紹介 1. The Hanabi Challenge: A New Frontier for AI Research - 著者:Nolan Bard, , Jakob N. Foerster et al. - arXiv:1902.00506 2. Bayesian Action Decoder for Deep Multi-Agent Reinforcement Learning - 著者:Jakob N. Foerster, H. Francis Song et al. - ICML2019 3. Simplified Action Decoder for Deep Multi-Agent Reinforcement Learning - 著者:Hengyuan Hu, Jakob N Foerster - ICLR2020 Shota Imai | The University of Tokyo

3.

今⽇の発表について 3 n 「⼼の理論」という若⼲⼼理学・⼈⼀般の知能論っぽいタイトルがついていますが、今 回の発表で紹介する論⽂はベイズ推論でゴリゴリ計算する内容 n 時間の都合上、全ての話題を⼊れる余地がないので、メインの3論⽂以外は概要に触れ る程度 n 数式はきれいに書く時間がなかったので、論⽂中の式の他、発表中に限り論⽂の著者の 講演スライドのものを⼀部借りています(あとで訂正します) - 出典:https://www.youtube.com/watch?v=9qPhrEYIRF4&t=1988s n ベンチマークのゲーム含め、聴き慣れない概念が多数登場しますが、「こんな話題があ るのか」くらいに思ってもらえれば 発表者本⼈は ベイズ弱者です Shota Imai | The University of Tokyo

4.

マルチエージェント強化学習(MARL; Multi-Agent Reinforcement Learning) n マルチエージェント分野の研究分野全体はマルチエージェントシステム(MAS)とよば れる n MASの中でもエージェントの「学習(機械学習)」に興味があるものはマルチエージェ ント学習と呼ばれる分野 n マルチエージェント強化学習はマルチエージェント学習の中でもエージェントの学習ア ルゴリズムとして強化学習を使っている⼿法 n 端的に⾔うと、環境中に学習するエージェントが複数いる環境における強化学習 - 囲碁や将棋などのボードゲームもMARLの⼀部 - 最近の例ではStarCraftのAlphaStarが有名 - なお、エージェントして⼈間を含んでも良い Shota Imai | The University of Tokyo 4

5.

注意 / MARLに特有の概念 (CTDE; Centralized Learning Distributed Execution 中央集権型学習分散型実⾏) n 現在のMARLの最重要概念(だが、今回の発表の本質ではない) n 後ほど、「学習中はお互いの⽅策は既知」、「2種類の⾏動のうち⼀つを他のエージェ ントに送信」など、普通の設定では⾮現実的な概念が出てくるが、MARLではこのCTDE の仮定を置いて許容している n 中央集権型学習:学習時のみ,勾配を計算する時に全体のエージェントの情報を含む環 境の「中央の状態」を使う n 分散型実⾏:テスト時には,各エージェントは⾃⾝の部分観測のみを⼊⼒として⽅策を 実⾏ n COMA[Foerster+ 2017]以降,特に⽤いられるアプローチで, “in many cases, learning can take place in a simulator or a laboratory in which extra state information is available and agents can communicate freely”(Foerster+ 2016) つまり,「マルチエージェントの学習は,研究的な環境でシミュレータ等を使えるため, 学習を促進するために追加の状態の情報を使ってもよい」という仮定によるアプローチ n 当然,本来エージェントが動作するテスト環境は,基本的に各エージェントが個別の観 測だけを受け取って強調しているため,状態の追加情報は使えない Shota Imai | The University of Tokyo 5

6.

マルチエージェント強化学習の課題 n 学習時の⾮定常性 - ⾃分以外のエージェントも⽅策を学習するので、普通に⽅策を更新しても最適⽅策への収束が ⾒込めない(他のエージェントの学習によって環境の挙動が変化) n 不完全情報性 - ⾃分以外のエージェントに関して⾒えない情報が多く、エージェントが利⽤できる観測だけで は学習の情報が不⾜ →学習時 or テスト時の推論で、⾃分以外のエージェントの意図を読むことができれば、こ の辺の問題を軽減できる Shota Imai | The University of Tokyo 6

7.

他のエージェントの意図を「読む」⼿法の研究 n 他者モデリング(Opponent Modeling) - 学習時の⾮定常性を解決するために使⽤されるのが主 - ⾃分以外のエージェントの⽅策をモデリングし、それを⾃分のモデルの⼊⼒とすることで、⾮ 定常性を緩和 n ⼼の理論(Theory of Mind) - 不完全情報ゲームなどで、推論時に相⼿がどのような意図を持っているか推定 Shota Imai | The University of Tokyo 7

8.

⼼の理論 8 n 1978年霊⻑類学者David Premackが「チンパンジーは⼼の理論を持つか」という論⽂で 提唱した概念で、⾃分以外の他者の意図を適切に推測する能⼒ - ⾼度な知能を持ち、集団⽣活をするチンパンジーは他の仲間の⼼の状態を推測できるかもしれ ないと考え、他者の⽬的、意図などが適切に推測できれば「⼼の理論を持つ」とした - 「理論」という表現は、⼼の状態は直接⾒る(魔法!)ことができず、何らかの基礎的な法則、 経験則から物理法則のように推論に基づいて構成されることから n 1983年のWimmer&Pernerは誤信念課題(後述)を⽤いて、⼈間の⼦供が、4~7歳にかけ て⼼の理論を持つようになることを⽰した n 最近、機械学習、特に複数エージェントが存在するマルチエージェント強化学習の分野 でこの概念と絡めた研究が複数発表されている Shota Imai | The University of Tokyo

9.

誤信念課題 9 n 通称「サリーとアン課題」と呼ばれる、 被験者に以下の展開を⾒せる 1. サリーがカゴにボールを⼊れる 2. サリーが部屋を去る 3. アンがサリーがいない間にカゴから箱の中にボールを移動させる 4. アンが帰ってくる 被験者に対し「このときアンはボールがどこにあると思っているか」 を問う n アンが「カゴの中にボールがある」という誤った信念を持っている ことを、被験者⾃⾝の知識と切り離して、アンの⼼を推論して 答える必要がある n 4歳〜7歳にかけて正答率が向上 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/File:Sally-Anne_test.jpg Shota Imai | The University of Tokyo

10.

機械学習の世界における⼼の理論 n 定義は完全に混沌としている n 強化学習のみならず、⾃然⾔語処理、画像認識など様々な場⾯で⼿法を「⼼の理論」と関連 づけた例が多数 n マルチエージェント強化学習だけで⾒ても、⾮常に多様な⼿法に分類可能 n ⾃分以外のエージェントに関する、 - ⽅策 次の⾏動 以前の⾏動の意味 RNN、LSTMなどの内部状態 相⼿の信念 不完全情報で隠されている特徴 を推論し、他のエージェントとの協調・競争に役⽴てる⼿法で、 学習時のみに興味がある→Opponent Modeling テスト時にも興味あり→Theory of Mind n かなり適当に⼈間の知能と結び付けて、論⽂の貢献のアピールに使われているっぽい例があ るので、知能論と関連づけて考えすぎるのはNG Shota Imai | The University of Tokyo 10

11.

余談 /「⼼の理論」を安易に使って燃えた例 Shota Imai | The University of Tokyo 11

12.

⼼の理論を適⽤する場合の問題点(⼈間の思考例) n お互いに「相⼿の意図を読む」機能があることが既知だとした場合、無限に再起的な読 み合いが発⽣する n 普通の場合(アリスだけが読む能⼒を持ち、ボブにはできないことを知っている) - ボブ「(Aという⾏動をしよう)」 - アリス「(ボブはAという⾏動をするだろうからそれに強いBをしよう)」 n お互いに相⼿の⾏動を予測できる場合 - ボブ「(アリスは僕がAをすると思っているだろうからBを選ぶだろう。だからそれに強いCを しよう」 - ボブ「いやだけど、アリスは僕がこんなことを考えているのも読んでいるだろうからCに強い Dをしてくるかもしれない。Dに強いEをしよう」 - ボブ「それすらもアリスは読んでいるかもしれないから、Eを読んでFをしてくるかもしれな い。やっぱりFに強いGで・・・」 - 以後、相⼿の推論能⼒の仮定をどこかでストップさせない限り、無限に続く(アリス側の思考 も同じ) Shota Imai | The University of Tokyo 12

13.

⼼の理論を適⽤する場合の問題点(MARL) n シングルエージェントでPOMDPを扱う場合、LSTMやRNNをナイーブに適⽤し、環境に 対する信念を獲得すれば、部分的な観測から⼤体正しい⾏動が可能 n MARLの場合、他のエージェントの⽅策モデルのパラメータ(これは既知という仮定も 多い)、相⼿のRNNやLSTMの内部状態、さらに「相⼿が⾃分に対して推論している何 らかの機構」のモデルも信念として持つ必要がある →再起的な推論が発⽣し、計算不可能 ※MARLにおいてどの程度の読みが有効か実験的に⽰している例も Shota Imai | The University of Tokyo 13

14.

参考/レベルK理論 14 n 相⼿が何段階読むかを、レベル0(まったく読まない)、レベル1(⼀⼿先を読む)などと いうKレベルで表現し、どれくらいの合理性を持った相⼿なのか予測する n 予測した相⼿のレベルに応じて⾏動を実⾏する - レベル0(相⼿が何も読まない)なら、⼀⼿先を読めば勝てる - レベル1(相⼿も⼀⼿先を読む)なら、2⼿先を読めば勝てる n ここでの相⼿に対するKの値はあくまでも推測であり、現実的には相⼿の合理性を完璧に は評価できないが、ゲームのトッププレイヤーや理系の⼈間などは⼀般的に⾼い (例)数当てゲーム - 複数の被験者に、1~100のどれかの数字を書かせ、全員の書いた数字の平均の2/3に最も近い 数字を書いたものが勝利というゲームをさせる - 簡単に推論すると、全員がランダムに数字を選ぶとして平均50。その2/3の33周辺がよさそう - ここで、推論のレベルを⼀つあげると「他のみんなも同じことを考えて33と書いてきそうだか ら、平均は33近くなる。その2/3の22がよさそう」となる - 以降、推論のレベルをあげるたびに数値は⼩さくなり、全員が合理的なプレイヤーという予測 では、0になるまでレベルが上がる - 実験的には、ほとんどのプレイヤーがレベル1で、⾃分はレベル2の推論で⼗分なことが多い Shota Imai | The University of Tokyo

15.

Hanabi MARLにおける⼼の理論系研究の主要ベンチマーク n 2〜5⼈の協⼒ゲーム n RLで頻繁にベンチマークとなる主要なボードゲームなどと異なり、ゲーム⽊探索による 必勝法やナッシュ均衡など、ゲーム情報学的な解を持たない n 相⼿の意図によって、理想的な⾏動が異なる&理想的な⾏動ではなく、メッセージ的な ⾏動をも要求されるなど、相⼿の意図をモデリングして積極的に利⽤する必要 n ⼼の理論系(相⼿の⾏動を読んで⾃分の⽅策のinputとして使う等)の主要ベンチマーク Shota Imai | The University of Tokyo 15

16.

Hanabiのルール 1/2 16 n 各プレイヤーは⼿札として、4枚(プレイヤー数が2 or 3名の場合は5枚)のカードを持 つ n 各カードは⾚緑⻘⽩の5⾊と1~5の数字の組み合わせ(例:⾚の5など)で分類され、全 50枚、各⾊10枚のカードがある(各⾊について1は3枚、2, 3, 4は2枚、5は1枚) n プレイヤーは⾃分の⼿番に、⾃分の⼿札を場に出す(プレイ)、⼿札を捨てる、他のプ レイヤーにヒントを与える、のいずれかの⾏動を選択 n ゲームの最終⽬的は、各⾊について1から順番に場に出して5まで揃えること(各⾊につ いて5枚揃うことを”花⽕を打ち上げる”と表現) n ⾃分の⼿札は⾒えないが、他のプレイヤーの⼿札は全て⾒える プレイヤー0(P0)視点のHanabi Shota Imai | The University of Tokyo

17.

Hanabiのルール 2/2 17 n 他のプレイヤーに与えるヒントは、ある個⼈プレイヤーに対し、「そのプレイヤーが持 つ同じ数字のカードを全て教える(⾊は教えてはいけない)」、「そのプレイヤーが持 つ同じ⾊のカードを全て教える(数は教えてはいけない) 」のどちらかで、⼀部だけ教 える等は不可能 - 例:P2に対して「1枚⽬と3枚⽬は⾚⾊」 n ヒントを与えるとトークンを1つ消費するが、カードを捨てる⾏動を選択するとトーク ンが1つ回復する(MAXは8つ) - 捨てられたカードは全プレイヤーが⾒れるようになる - カードを捨てた後、1枚カードを引いて補充する n 各⾊について、必ず数字順にプレイしなければならない - 例えば、⽩1、⽩2が揃っている時に⽩4を出したら1ミス n 3回ミスするか、5⾊全て揃えるとゲーム終了 この場⾯では、プレイすることを許さ れるカードはG2、B1、W2、Y2、R1 - 終了時点で場に正しくプレイされていたカードの総数が得点になる(MAX25点) Shota Imai | The University of Tokyo

18.

Hanabiの戦略・駆け引き的な部分 n ⾏動による暗黙のコミュニケーション - ヒントの与え⽅によって、ヒントで陽に⽰している以上の情報を与えることが可能 - 例:右下図の状況でP0が、P1に対し、「4枚⽬は⾚」のヒントを与える - P1視点だと4枚⽬のカードが⾚以外の情報はないので、本来はプレイする情報が⾜りていないが、逆に考 えると「わざわざ不完全なヒントを与えたということは⾚は1なのでは」という発想につながる n Finesse(もう少し⾼度な暗黙コミュニケーション) - P0がP2に対し「3枚⽬は2」のヒントを与える - P2視点だと、このヒントをもらった場合に考えることは「おそらくこの2は⽩」(場にG1とW1がある が、緑2はすでに2枚とも捨てられているため⽩2以外あり得ない) - これは間違いで、実際は⾚2なので、このままいくとP2はミスする - P0の次の⼿番のP1視点だと「このままだとP2は失敗する。だが、P0があのようなヒントを出したからに は理由があるはずで、おそらくそれは⾃分が最近引いたカードが⾚2でそれをプレイしろということか」 Shota Imai | The University of Tokyo 18

19.

Hanabiの難しさ 19 n 今回発表する⼿法以前は、機械的な⼿法では⼈間の知識を⼤量に⼊れたbotが主流で、学 習ベースのアプローチはこれらの⼿法に勝てなかった - ⼈間に特有の⾮⾔語的なコミュニケーションを読み取れない - テスト環境で学習時と別のエージェントとプレイすると、学習した⽅策が機能しない n 今回紹介する⼿法についても、⼆⼈以上のプレイではスコアが極端に下がる Shota Imai | The University of Tokyo

20.

BAD; Bayesian Action Decoder n マルチエージェント強化学習(ここではHanabi)において、相⼿の⾏動から⾒えない情 報について何らかの推測ができれば、適切な⾏動と協調が可能 n 相⼿の信念の推論はベイズ推論により、割と簡単に定式化可能だが、再起的に信念を推 論する部分で計算が爆発する n BADでは全てのエージェントに公開されている情報(public features)を⽤いて、全て のエージェントに共通の信念(public belief)を推論し、適切な決定論的⽅策を実⾏する ⼿法を提案 Shota Imai | The University of Tokyo 20

21.

記号定義 21 n 𝑎 ∈ 1. . 𝑁:エージェント n 𝑢!" :時刻tにおけるエージェントaの⾏動 n 𝑜!" :時刻tにおけるエージェントaの観測 n 𝑠! :時刻tにおける環境の真の状態 n 𝑂(𝑎, 𝑠! ):観測関数 n 𝜏!" =(𝑜#" , 𝑢#" , … , 𝑜!" ):エージェントaの⾏動観測の履歴 n 𝜋 " (𝑢!" |𝜏!" ):エージェントaの⽅策 n 𝐮! = (𝑢!$ , . . , 𝑢!% ):共同⾏動 n 𝑃 𝑠!&$ 𝑠! , 𝐮! ):遷移関数 n 𝑟!&$ (𝑠! , 𝐮! ):チーム報酬 n 𝐵! :信念(これまでの履歴などからどんな隠れ状態にあるか確率的に表す) Shota Imai | The University of Tokyo

22.

Hanabiでベイズ推論を⽤い,⾃分の⼿札を予測する場合 n ℎ! :エージェントの⼿札 n ボブの⾃分の⼿札に関する信念 𝐵" = 𝑃(ℎ" |𝑢# ) n ここでは、アリス(ボブの⼿札ℎ" を知っている)が、アリスのターンであるカードを捨てる ⾏動𝑢# を選択した場合、ボブの⼿札が何かを推論 n 𝑃(𝑢# |ℎ" )は普通のRLの⽅策とみなせる Shota Imai | The University of Tokyo 22

23.

お互いが何らかの信念を持っており、環境の公開情報も利⽤する場合(⾒ えない情報に対して何らかの「読み」を⾏っている場合) n アリスの⽅策は、アリスの信念𝐵% と公開情報𝑃𝑢𝑏に条件づけられているとみなせる n 信念は⾃分の⾒えていない⼿札の予測(B' = 𝑃(ℎ% )) n 𝐵% はどのように推論する? →お互いに同じ推論を⾏っていると考えると、再起的に推論が爆発 Shota Imai | The University of Tokyo 23

24.

BADのアイディア 24 n 全てのエージェントに公開されている情報で条件づけて、全エージェントの信念をまと めて推測した信念をPublic beliefとすれば、全エージェントで共通の信念を共有できそう 𝐵% = 𝑃 ℎ% ℎ( , 𝑓 )*+ 𝐵( = 𝑃(ℎ( |ℎ% , 𝑓 )*+ ) → 𝐵! = 𝑃(ℎ% , ℎ( |𝑓 )*+ ) n Public beliefを利⽤する⽅策𝜋(%, (Public agent)を導⼊し、𝜋(%, によって、ある時刻に おける個別エージェントの決定論的⽅策を選択、privateな観測から⾏動を決定する (上記より、各エージェントが共通の⽅策パラメータを持つことは既知とする) Shota Imai | The University of Tokyo

25.
[beta]
BADで登場する概念と記号定義
)*+

n 𝑓!

:全てのエージェントに公開されている特徴 (public features)

→テーブル上に置かれていて全プレイヤーが⾒れるカード、⼭札の残りなど
)-.

n 𝑓!

:⼀部のエージェントのみが⾒れる情報 (private features)

- 𝑓!" :エージェントaのみが参照できるprivate feature
- ⾃分だけが⾒れる⼿札、ℎ# など

)-.

n Public belief 𝐵! = 𝑃(𝑓!
#$%

- 𝑓!"

#$%

=( 𝑓&

#$%

, . . , 𝑓"

)*+

|𝑓/! )

)

n 𝜋(%, :Public agentの⽅策
n 𝜋D ∶ {𝑓 " } → 𝒰:個別エージェントの決定論的⽅策(Partial Policy)
n 𝑠(%, : 𝐵! と𝑓 )*+ を⼀まとめにした概念
n 𝜋D ~ 𝜋(%, (𝜋D |𝑠(%, )

Shota Imai | The University of Tokyo

25

26.

PuB-MDP(Public belief MDP) Shota Imai | The University of Tokyo 26

27.
[beta]
Public Belief

27

n 全てのエージェントの可能な𝑓 )-. の組み合わせに確率を割り振った⾏列
(例)

𝐵! =

{

アリスの⼿札ℎ' 、ボブの⼿札ℎ( 、𝑃(ℎ' , ℎ( )
23344,
11122,
0.000
23344,
11123,
0.002
・
・
・
44444,
55555,
0.001

}

Shota Imai | The University of Tokyo

28.

Partial PolicyとPublic Policy ) に対応する⾏動リスト、Public Policy 𝜋 n Partial Policy 𝜋は特定の𝑓 D D (%, はいくつかある𝜋 を選択するための確率分布 { 𝜋# = 23344→5のカードをプレイ 23344→⻘のカードに関するヒント ・ ・ 55555→3のカードを捨てる } Shota Imai | The University of Tokyo 28

29.

Public Policyの更新 29 n プレイヤーが⾏動する各時間ステップごとに、その時刻のプレイヤーの⾏動𝑢!" 、信念 0)*+ (残りのカード枚数など)を⽤ 𝐵! 、選択されたpartial policy 𝜋、その他の公開情報𝑓 D いて、次の時刻の信念𝐵!&$ を得る Shota Imai | The University of Tokyo

30.

その他 30 n 実際には、Public belief⾏列はかなり⼤きいので、いくつか計算上の⼯夫を⾏って⼩さく している(論⽂中”Factorised Belief Updates”, Self-Consistent Beliefsの部分) n 実装上は、 𝜋D ~ 𝜋(%, (𝜋D |𝑠(%, ) = 𝜋(%, (𝜋D |𝐵! , 𝑓 )*+ )の部分については、パラメータθを持 つMLPネットワーク 𝜋 1 (𝑢|𝑓 " , 𝑠(%, ) を使って近似している(出⼒の𝑢は全ての⾏動候補) Shota Imai | The University of Tokyo

31.

実験:定量評価 31 n 異なる公開情報をベースにした⼊⼒を⾏うLSTMベースのエージェントと、既存の最強の BotとHanabiにおける平均スコアを⽐較(マックスは25点) n ⽅策更新のRL⼿法としてはActor-Criticの⽅策オフ⼿法(IMPALA)を使⽤ n 注意として、ここでは2⼈のHanabiしか評価していないため、BADの強さは限定的 Shota Imai | The University of Tokyo

32.

実験:定性的な部分 n テスト時に、エージェント間で、特定の⾏動が暗黙的なメッセージになっているプレイ が複数⾒られた - 例えば、⾚⾊or⻩⾊のカードに関するヒントを与えた場合には、「⼀番新しいカードをプレイ しろ」の意味、⻘か⽩の場合は「⼀番新しいカードを捨てろ」の意味を持っている n 論⽂Appendixにおいて、過去のHanabiの最強botの作者がテスト時のBADエージェント のプレイを分析したコメントを載せている Shota Imai | The University of Tokyo 32

33.

BADの問題点 33 n テスト環境が2⼈のHanabiで⽐較的簡単(⼈間の普通のゲームなら普通もっと多⼈数) n Public Agent、⽅策パラメータが同じという仮定が⾮現実的 n 公開情報がドメイン依存で、汎⽤性が低い n 計算コストが⼤きい(𝑓 )*+ が膨⼤) Shota Imai | The University of Tokyo

34.

SAD; Simplified Action Decoder n 公開情報をベイズ推論に組み込むBADの⼿法は、⼆⼈プレイHanabiで⾼パフォーマンス だったが、公開情報の利⽤が計算コストの増⼤と汎⽤性の低さにつながる n SADでは公開情報を必要とする部分(Public Policy、決定論的Partial Policy)を廃し個 別の信念を持つRNNエージェントが個別の⽅策を表現 - 個別エージェントはε-greedy探索を採⽤して学習時に探索を⾏う - BADでは探索の部分を、Public policyが公開情報で条件づけて確率的に選択するpartial policy で代替していた ※ここでの公開情報とは、普通にプレイして観測できる他エージェントの⾏動𝑢) などではなく、⼭札 中の残りのカード数や、ヒントから推論できるカードの詳細情報など、利⽤にコストがかかるもの n 個別のエージェントの確率的な探索の導⼊により、不安定になった信念のベイズ推論を 解決するため、学習中に環境に対して実⾏される⾏動と単に他のエージェントの⼊⼒と なる⾏動の⼆つを利⽤ n 「Simplified」の名の通り、⼿法は⾮常にシンプルで簡潔な発想 Shota Imai | The University of Tokyo 34

35.

SADで登場する概念と記号定義 n 𝜏! :環境の⾏動-状態履歴 n 𝜏!" :エージェントaの⾏動-観測履歴 ※SADのエージェントにはRNNを使⽤ n 𝐵(𝜏! )環境の履歴に関する信念 n SADにおける推論 n BADの時と同じく、⾃分の参照できる情報(⾃分の履歴)と相⼿の⾏動を観測したと き、⾃分が⾒えない環境の情報𝜏を推論する機構(⼼の理論部分)を表現 Shota Imai | The University of Tokyo 35

36.

公開情報を使わないことによる問題 n 個別のRNNエージェントは学習中に、ε-greedy探索を採⽤ n 各エージェントの⾏動は、確率εでランダムに実⾏された⾏動かもしれず、信念状態の 更新に利⽤するのは妥当ではない (ランダムな⾏動は環境の状態に関する情報を含まない) n ε-greedy探索を⾏う場合の⽅策の表現 " n 𝑢∗(𝜏! )はgreedyな⾏動、 𝑢∗ 𝜏! = 𝑎𝑟𝑔𝑚𝑎𝑥 * 𝑄" (𝑢, 𝑂(𝑎0 , 𝜏! ))、𝑰は指⽰関数 n 上記を信念の推論に適⽤すると、計算困難 Shota Imai | The University of Tokyo 36

37.

SADのアイディア 37 n 学習中に、エージェントは2種類の⾏動を実⾏する - 𝒖𝒂 :実際に環境に対して実⾏されるアクション(greedyかランダム選択かは問わない) →ベイズ推論・更新にとっては邪魔だが、探索のため必要 - 𝒖∗ :greedy(⾏動価値が最も⾼い)な⾏動。ε-greedy探索だとεの確率で実⾏されない →これのみを実⾏すると探索が進まないが、本来はベイズ推論・更新に必要なアクション 上記のうち𝒖𝒂 はそのまま環境に対して実⾏。そして、 𝒖∗ については環境に対して実⾏せず、他 のエージェントの観測の⼊⼒のみに使⽤ n 本来は最適でなかった⾏動𝒖𝒂 を実⾏した後「俺は本当は⾏動𝒖∗ をやりたかった」とメッセー ジを送るイメージ n テスト時はεの値が0で、 𝒖𝒂 と𝒖∗ は常に⼀致するため、⾏動を送信する必要はない Shota Imai | The University of Tokyo

38.

実験 38 n SADと他のMARLのRNNを使う⼿法を、⼆⼈以上のプレイヤーによるHanabiで評価 n 強化学習はDQNベース n BADより⾼パフォーマンス&⼆⼈以上のゲームでもほぼSOTA Shota Imai | The University of Tokyo

39.

その他の⼼の理論周りの話題 n ロボット&Visual observation✖⼼の理論 Visual behavior modelling for robotic theory of mind - 実機ロボットの軌道の観測から別の時間の観測を予測できるか n ⾔語✖⼼の理論 Few-shot Language Coordination by Modeling Theory of Mind - 指⽰ゲームで、相⼿の⾔語認識レベルに応じた指⽰を⾏えるか n 実験的な⼈間の知能との関連性 Negotiating with other minds: the role of recursive theory of mind in negotiation with incomplete information - ⼈間のレベルK理論では、レベル2の寿司論を⾏うのがちょうどいいとされているが、機械的 なエージェントではどの程度のレベルが最適か実験的に明らかに - 機械的なエージェントのシミュレーションでもレベル2程度を採⽤すると⼀番効率がよい Shota Imai | The University of Tokyo 39