2023 08 02 教育課程論 第3-4回(閲覧用)

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February 03, 24

スライド概要

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教育方法学・教科教育学という「一般的な教育」と,外国人児童生徒教育学という「特別な教育」をどちらも行っています。 このどちらもを同時に行う研究室は,日本の中ではほとんどありません。その結果,大学を含む多くの教育の場でこの両者は別々のものになってしまっています。

関連スライド

各ページのテキスト
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論 程 課 育 教 在 現 の 領 要 導 指 習 学 4 # , 遷 変 の 領 要 導 指 習 学 #3 南浦 涼介

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1 授業を見てみよう あ〜えの授業を、年代の古い順番に並び替えよ! あ い う え ©

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1 「授業の違い」に込められた「学習指導要領」の影響 え う 1930年代 あ い 1940年代後半 1960年代 2022年 トモエ学園 西条プラン 窓ぎわのトットちゃん より 賀茂郡西条町西条小学校 教育科学研究会 社会科部会 日立市河原子小学校 鈴木正気実践 広島大学附属 東雲小学校 以下の文献をもとに教材に合わせて一部修正 教育科学研究会社会科部会『小学校社会科の授業』国土社, 1966年 小原友行『初期社会科授業論の展開』風間書房, 1998年 黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』講談社, 1981年 広島大学附属東雲小学校『東雲研究会実施要項』2022年 ©

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情報 「授業の違い」に込められた「学習指導要領」の影響 ①1947年版学習指導要領 ②1951年版学習指導要領 ③1958年版学習指導要領 ④1968年版学習指導要領 ⑤1977年版学習指導要領 ⑥1989年版学習指導要領 ⑦1998年版学習指導要領 ⑧2008年版学習指導要領 ⑨2017年版学習指導要領 学習指導要領(試案) 戦前の修身・地理・歴史の廃止 社会科の新設・総合的な教育の重視 経験主義 教育 系統的な内容への変更 道徳の時間の新設 教育内容の現代化 系統主義 教育 ゆとりカリキュラム・授業の削減 新学力観(個性重視の教育) 生活科の新設 総合的な学習の時間の新設 学校週5日制 「生きる力」の重視 基礎・基本の習得と活用 総合の削減・授業数の増加 小学校高学年の外国語活動 ゆとり 教育 ○○ 教育? 主体的・対話的で深い学び ©

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情報 「授業の違い」に込められた「学習指導要領」の影響 学習指導要領(試案) 戦前の修身・地理・歴史の廃止 社会科の新設・総合的な教育の重視 経験主義 教育 教育科学研究会 ③1958年版学習指導要領 系統的な内容への変更 道徳の時間の新設 教育内容の現代化 系統主義 教育 ⑤1977年版学習指導要領 ゆとりカリキュラム・授業の削減 新学力観(個性重視の教育) 生活科の新設 総合的な学習の時間の新設 学校週5日制 「生きる力」の重視 基礎・基本の習得と活用 総合の削減・授業数の増加 小学校高学年の外国語活動 ①1947年版学習指導要領 西条プラン 賀茂郡西条町西条小学校 ②1951年版学習指導要領 社会科部会 日立市河原子小学校 ④1968年版学習指導要領 鈴木正気実践 ⑥1989年版学習指導要領 ⑦1998年版学習指導要領 ⑧2008年版学習指導要領 広島大学附属 ⑨2018年版学習指導要領 東雲小学校 ゆとり 教育 ○○ 教育? 主体的・対話的で深い学び ©

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2 どうして「経験主義」は戦後の民主主義を 込めていたのに、「系統主義」に切り替わったのか 社会編 学校をめぐる大人の世界の人たちの「経験主義」に対する 反対意見はどういうものなのだろうか? 想像してみよう 子どもたちは戦後の新しい学 校制度。 親世代は戦前の学校制度 A 保護者 B 地域の人 戦後の焼け跡から産業を復活 させていくことが必要 戦前と戦後の教育のギャップ に対する大人側のずれ 人口の多い中で、第二次産業 に進むことを念頭に置いた学 習イメージ C 企業・財界 アメリカとソビエトの冷戦構 造が始まる中、ソビエトが先 に宇宙開発を始めた。 D 国会議員 復興から高度成長に向かう中 冷戦構造の中での「体系的な 知識」を要求する社会 ©

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2 どうして「経験主義」は戦後の民主主義を 込めていたのに、「系統主義」に切り替わったのか 左「昔と今の乗りもの」と 実践編 右「野菜作り」は同じ経験主義的だけどどう違う? ©

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2 どうして「経験主義」は戦後の民主主義を 込めていたのに、「系統主義」に切り替わったのか 学び手の関心を中心 A 教育編 社会の側の期待を中心 昔と今の乗りもの 適応する (社会化する) 社会(生活)適応主義 その社会の秩序や習 慣,考え方を教え, 身につけていく よりよくする (主体化する) より強い「個」とし て考え,変えたり 提案したりしていく 社会的効率主義 子ども中心であるが,知性への 向き合い方よりは態度形成を重 視して,社会・生活への適応を 重視する。 社会の中で貢献できることを主 軸にして,「役に立つ」学問を 合理的・効率的に学んでいくこ とを重視する 子ども中心主義 社会改造主義 C 野菜作り デューイの教育 子どもの関心をもとにしながら 子どもが知を練り上げていく 社会をよりよいものに変えてい くこと,社会変革のためのクリ ティカルな考え方の育成などを 重視する。 多くの経験主義教育は子どもの関心から生活や社会を学ぶのだが 「社会(生活)適応主義」的なものが多く,「子ども中心主義」的なものは少なかった 結果,「知」「考え」の練り上げという点が見えにくく,「体験に終始」になりやすい ©

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2 どうして「経験主義」は戦後の民主主義を 込めていたのに、「系統主義」に切り替わったのか 教育関係者たちの憂い 学力編 「生活と学力」 ある小学校のある学級での算数の文章題 すすむ君の家から、駅までいくには、15分かかり ます。午前9時20分に発車する電車にまにあうため には、何時何分に家を出たらいいでしょう。 大部分の子が9時5分と回答 9時4分と回答している子が4、5人 1947 基礎学力低下 196 8 1958 学力のゆがみ 19 77 それが相当優秀な力の持ち主に多かった」と い うのである。その理由は「だって、ちょっ きり9時5分に出たら、電車のドアがしまっ てしまうかもしれないから、9時5分と出し たあとで1分引いて9時4分としたの 系統 主義 51 9 1 8 1989 199 2008 学力低下論争 経験 主義 これがもし、ただ単に○と×をつけるだけで、それを平均して通信簿につけるだけの方法でテストが利用され ていたとしたらどうでしょう。この四、五人の子どもは当然、×の部に入るでしょうし、他の子どもも算数と いう教科と生活の事実の関係に目を開くこともできなかったでしょう」、「教師は次の指導のめあてをはっき りさせ、子どもには学習のめあてをはっきりさせる役目をもつのが、評価ではなかろうか。 振り子の図は,志水宏吉(2005)『学力を育てる』岩波新書, 2005年,p.30 を参考にした。 生活と学力の問題は,コアカリキュラム連盟編『カリキュラム』1958年2月号, p.68をもとにしている。 ©

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2 どうして「経験主義」は戦後の民主主義を 込めていたのに、「系統主義」に切り替わったのか 教育関係者たちの憂い 「生活と学力」 4×8の計算で答えを出す問題(おはな し)を作って下さい 1947 196 8 1958 学力のゆがみ 4このボールと8このボールがありま す。これをかけるとなんこになります か。 19 77 系統 主義 51 9 1 基礎学力低下 正答率:50%未満 大学生たちへの追跡調査 学力編 8 1989 199 2008 学力低下論争 経験 主義 一日肉4kgを食べ、8日間食べ続けた ら全部で何kg食べたことになるの か。 1987年の調査より ©

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3 「経験主義」と「系統主義」の振り子が持つ問題とは? 学び手の関心を中心 A 昔と今の乗りもの 適応する (社会化する) 社会(生活)適応主義 その社会の秩序や習 慣,考え方を教え, 身につけていく よりよくする (主体化する) より強い「個」とし て考え,変えたり 提案したりしていく 社会の側の期待を中心 系統主義はココが多い 社会的効率主義 子ども中心であるが,知性への 向き合い方よりは態度形成を重 視して,社会・生活への適応を 重視する。 社会の中で貢献できることを主 軸にして,「役に立つ」学問を 合理的・効率的に学んでいくこ とを重視する 子ども中心主義 社会改造主義 C 野菜作り デューイの教育 子どもの関心をもとにしながら 子どもが知を練り上げていく 社会をよりよいものに変えてい くこと,社会変革のためのクリ ティカルな考え方の育成などを 重視する。 系統的な知識の教育は,生活と結びついた「ホンモノの知」になりにくい問題 ©

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3 「経験主義」と「系統主義」の振り子が持つ問題とは? 51 9 1 1947 基礎学力低下 196 8 1958 学力のゆがみ 19 77 系統 主義 8 1989 199 2008 学力低下論争 経験 主義 戦後の経験主義教育批判の「基礎学力低下論」と, 近年のゆとり教育批判だった「学力低下論争」は何が共通しているだろう? ①共通して批判者たちが問題視していたこと,見落としていたことは何だろう? ②共通して新しい教育の推進者たちが見落としていたことは何だろう? Padlet①に書き込みましょう ©

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4 「経験主義」と「系統主義」の相克 現代の私たちはどう乗り越えるか? ⑨2018年版学習指導要領 広島大学附属 東雲小学校 ①「知識体系の詰め込み」問題を どう回避しようとしているか? ②「ただの体験的学び」問題を どう回避しようとしてるか? 考える力(探究的学び)の重視 何を学ぶか どう学ぶか 何ができるか? 主体的・対話的で深い学び ©

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4 「経験主義」と「系統主義」の相克 現代の私たちはどう乗り越えるか? 「あ」の系統主義の授業は実際どんな授業だったのか? 教科研で実践を積み重ねた先生の授業 (1966年) 実際の様子を見てみましょう(資料) ©

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4 「経験主義」と「系統主義」の相克 現代の私たちはどう乗り越えるか? 系統主義教育=詰め込み教育 でもない「楽しい授業」の存在 2018年指導要領の授業は これまでの歴史のどれとも似ている? ©

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4 「経験主義」と「系統主義」の相克 現代の私たちはどう乗り越えるか? 学び手の関心を中心 A 昔と今の乗りもの 適応する (社会化する) 社会(生活)適応主義 その社会の秩序や習 慣,考え方を教え, 身につけていく よりよくする (主体化する) より強い「個」とし て考え,変えたり 提案したりしていく 社会の側の期待を中心 系統主義はココが多い 社会的効率主義 子ども中心であるが,知性への 向き合い方よりは態度形成を重 視して,社会・生活への適応を 重視する。 社会の中で貢献できることを主 軸にして,「役に立つ」学問を 合理的・効率的に学んでいくこ とを重視する 子ども中心主義 社会改造主義 C 野菜作り デューイの教育 子どもの関心をもとにしながら 子どもが知を練り上げていく 社会をよりよいものに変えてい くこと,社会変革のためのクリ ティカルな考え方の育成などを 重視する。 「ホンモノの知」(真正な知識)を学ぶこと(生活や社会との関係性の中で知を探る) 「協働の知」(関係性・間主観性の知)を育むこと(知識は個人と個人の間にある) ©

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4 「よい授業」は、カリキュラムの影響を乗り越えるのか? カリキュラムの影響は、「よい授業」を越えてくるのか? 授業>教育課程? 教育課程>授業? (教育全体の方向)目的 それぞれの授業は全体のカリキュラム の中にあり、カリキュラムは「目的-評 価」の中で制度的につながっている カリキュラムの制度的規定性 (単元や授業の)目標 内容 方法 技術 教師の解釈の中で、決められた カリキュラムの想定を越えて「は みだす」部分がある 授業の柔軟な解釈性 評価 ©

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5 わたしたちは,「先生」になるときに 教育課程とどうつきあっていくか? 青の領域の部分にのみ目が行ってしまい 赤の教育の全体像(何を目的にしているのか) それと自分の実践がどうつながっているのか をみうしなってしまう いい授業をしたい つまづく子どもを 救いたい 青は「先生がひとりでがんばる」像になる でも赤は「みんなでがんばる」像である カリキュラムの視点を持って みんなでいい実践をなす人に ©

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本日の 命題 「カリキュラム」をめぐる本日の命題 命題⑤ 教育課程の変遷の中で「授業」も変わる。 その変化は必ずしも「知識中心→経験中心」ではない 命題⑥ 学力とは,能力。「何を大事な能力とするか」によって,「学力」の像自 体が変わる。 学習指導要領は「何を大事な能力とするか」という目的方向性とその方策をしめし たものでもある。 命題⑦ 学習指導要領は「学力」像によって振り子のように揺れ動いてきた。ただ し,近年の学習指導要領「主体的で対話的で深い学び」や「真正の学び」を見ると 完全な振り子ではなく,「振り子自体が前進している」イメージに近い。 命題⑧ 教育課程と授業は「同じではない」が「影響がある」 どのような教育課程の中でも,解釈と工夫の中で「おもしろい授業」にも「つまら ない授業」にもなる。 ただし授業だけで考えるのは「ひとりでがんばる先生」像になりやすく,全体で育 てる目線がなくなりやすい(また,疲弊しやすい)。 だからこそ「カリキュラム」の目線は重要。 ©

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考える 「教育課程」と「カリキュラム」 私たちは同じもので,同じことを学んできたのか? 解釈! こういう力を 育むべきだ! 政策立案者たち 解釈! ほうほう こういうことね! 学校たち 解釈! あーね こういうことね! なるほど こういうことね! 教師たち 子どもたち どっちなの?! 「ズレ」はないほうがいい? 「ズレ」はあったほうがいい? 「公的な教育」が持つ「統一性と多様性」のジレンマ 教育をする人も,教育を受ける人も,色々な人がいる。だからこそどうする? 統一性を重視したい 違い=格差 格差は埋めていくべきもの すると多様な差異は認められにくい 多様性を重視したい 違い=差異 差異は認めていくべきもの すると格差が生まれやすい ©